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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】排ガス再循環装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/35 20160101AFI20220628BHJP
   F02M 26/22 20160101ALI20220628BHJP
   F02M 26/74 20160101ALI20220628BHJP
【FI】
F02M26/35 D
F02M26/22
F02M26/74 301
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017122357
(22)【出願日】2017-06-22
(65)【公開番号】P2019007388
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 崇
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-535264(JP,A)
【文献】特開2012-117455(JP,A)
【文献】特開2015-068287(JP,A)
【文献】特開2015-086833(JP,A)
【文献】特開2015-131506(JP,A)
【文献】特開2016-044601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0028757(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排ガスの一部を、EGR通路を通して前記エンジンの吸気側へ還流する排ガス再循環装置であって、
前記EGR通路に設けられたEGRクーラーと、
前記EGR通路に設けられ、前記EGRクーラーによって冷却された排ガスの流量を調節するEGRバルブと、
前記EGRバルブに設けられ、前記EGR通路内で発生した凝縮水を外部に排出する通水孔と、
前記通水孔の下方に設けられ、前記通水孔から排出された前記凝縮水を捕集して外気にさらした状態で貯留する凝縮水捕集部と、
を具備し、
前記凝縮水捕集部は、ブラケット、スポンジ又は布である、
排ガス再循環装置。
【請求項2】
エンジンの排ガスの一部を、EGR通路を通して前記エンジンの吸気側へ還流する排ガス再循環装置であって、
前記EGR通路に設けられたEGRクーラーと、
前記EGR通路に設けられ、前記EGRクーラーによって冷却された排ガスの流量を調節するEGRバルブと、
前記EGRバルブに設けられ、前記EGR通路内で発生した凝縮水を外部に排出する通水孔と、
前記通水孔の下方に設けられ、前記通水孔から排出された前記凝縮水を捕集して外気にさらした状態で貯留する凝縮水捕集部と、
を具備し、
前記凝縮水捕集部は、前記通水孔の下方に設けられたブラケットであり、
前記ブラケットは、断面L字状であり、角部が下を向いている、
再循環装置。
【請求項3】
前記ブラケットは、
水平に対して傾斜を持たせて取り付けられており、下方側の一端は前記凝縮水が溜まるように閉塞されている、
請求項に記載の排ガス再循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラー及びEGRバルブを有する排ガス再循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排ガス中のNOxを低減するために、エンジンに排ガスを再循環する排ガス再循環装置(以下「EGR装置」と呼ぶことがある)が広く使用されている。EGR装置は、例えば特許文献1等に記載されている。
【0003】
EGR装置は、エンジンの排ガスの一部を、EGR通路(つまりEGRパイプ)を通してエンジンの吸気側へ還流する。EGR通路には、EGRクーラー及びEGRバルブが設けられている。EGRクーラーによって冷却された排ガスは、EGRバルブによって流量が調節されてエンジンの吸気口へと還流される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-243354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、排ガスがEGRクーラーによって冷却されると、煤混じり凝縮水が発生する。この凝縮水がERGバルブを駆動するためのモーターなどに達すると、モーターに悪影響を及ぼすおそれがあるため、従来、凝縮水を外部に排出するための通水孔をEGRバルブに設けるなどの対策が取られている。
【0006】
しかしながら、EGRバルブの下方にはエンジンやパイプなどが配置されており、この通水孔から排出される煤混じりの凝縮水によってエンジンやパイプなどが黒く汚れると見栄えが悪くなり、これが商品性の悪化に繋がるおそれがある。
【0007】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、煤混じりの凝縮水による汚れを簡易な構成により防止できる排ガス再循環装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の排ガス再循環装置の一つの態様は、
エンジンの排ガスの一部を、EGR通路を通して前記エンジンの吸気側へ還流する排ガス再循環装置であって、
前記EGR通路に設けられたEGRクーラーと、
前記EGR通路に設けられ、前記EGRクーラーによって冷却された排ガスの流量を調節するEGRバルブと、
前記EGRバルブに設けられ、前記EGR通路内で発生した凝縮水を外部に排出する通水孔と、
前記通水孔の下方に設けられ、前記通水孔から排出された前記凝縮水を捕集する凝縮水捕集部と、
を具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通水孔から滴下する凝縮水が凝縮水捕集部によって捕集されるので、簡易な構成により、煤混じりの凝縮水によるエンジンやパイプなどが汚れることを防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態の全体構成を示す概略図
図2】EGRバルブの構成を示す略線的断面図
図3】実施の形態による凝縮水捕集部の説明に供する側面図
図4】凝縮水捕集部での凝縮水の流れを示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
本実施の形態では、直列四気筒のディーゼルエンジンを例に説明するが、本発明はディーゼルエンジンに限定されずに、ガソリンエンジンにも適用することができ、その気筒数や、気筒の配列も限定されない。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0013】
図1は、実施の形態の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、エンジン(内燃機関)1は、エンジン本体2、排気通路Ex、吸気通路In、及びEGR(排ガス再循環)通路Egを備え、さらに、エキゾーストマニホールド3、インレットマニホールド4、可変タービン5aとコンプレッサ5bからなるターボチャージャー5、エアクリーナー6、インタークーラー7、吸気スロットル8、インテークダクト8a、DOC(ディーゼル酸化触媒)9aとDPF(捕集装置)9bからなる後処理装置9、及びEGR装置10を備える。
【0014】
EGR装置10は、EGRクーラー11と、EGRバルブ(EGRバルブユニットと言ってもよい)12と、リードバルブ(逆止弁と言ってもよい)13を備える。EGRクーラー11とEGRバルブ12とはEGRダクト14によって接続されている。
【0015】
エンジン1は、ターボチャージャー5の排ガス上流側からEGRガスを還流させる、所謂高圧式のEGRシステムを備えているため、EGRバルブ12の出入口の差圧が小さくなり、運転状態によっては負圧となる。そこで、EGR通路Eg内にリードバルブ13を設け、EGRガスの逆流を防ぐとともに、シリンダ吸排気行程の脈動により生じる周期的な差圧変動を利用してEGRガスを汲み出すことができるようになっている。
【0016】
図2は、EGRバルブ12の構成を示す略線的断面図である。EGRバルブ12は、ケース12aと、バタフライバルブからなるバルブ本体12bと、バルブ本体12bを駆動する駆動軸12cと、ギヤ12dと、モーター12eと、を有する。モーター12eの駆動力がギヤ12d及び駆動軸12cを介してバルブ本体12bに伝達されることにより、バルブ本体12dが駆動され、この結果、EGR通路Egからエンジン1に還流される排ガスの流量が調節される。
【0017】
モーター12e、ギヤ12d及び駆動軸12cなどはケース12a内に収容されている。ここで、駆動軸12cとパイプ(EGR通路Eg)との間はシール剤などによってシールされているが、このシール剤の隙間などからEGRクーラー11の冷却により生じた凝縮水が漏れることがある。漏れ出た凝縮水は、ケース12aの底面に溜まることになる。ケース12a内に溜まった凝縮水がモーター12eに悪影響を及ぼさないように、ケース12aの下面には通水孔12fが形成されており、凝縮水は通水孔12fからケース12aの外部に排出される。
【0018】
本実施の形態においては、図3に示すように、通水孔12fの下方に、凝縮水捕集部としてのブラケット20が設けられている。ブラケット20は、断面が略L字状の部材であり、EGRバルブ12の下方にボルト30によって固定されている。ボルト30は、EGR通路EgにEGRバルブ12を固定するためのボルトであり、本実施の形態ではこのボルト30を兼用して、ブラケット20を固定するようになっている。これにより、ブラケット20を固定するための部品点数を増やさずにすむ。
【0019】
ブラケット20は、水平に対して傾斜を持たせて取り付けられている。具体的には、ブラケット20の両端20a、20bのうち、一端20aは通水孔12fから落下する凝縮水を受けとめることができる位置に配置され、他端20bは上記一端20aよりも低い位置に配置されている。また、ブラケット20の下方側の一端20bは板状の閉塞部材20eによって閉塞されている。
【0020】
また、ブラケット20は、1枚の金属板がL字状に折り曲げられ、その結果、側板20c、底板20d、及び、側板20cと底板20dの間の角部を有する。ブラケット20は、底板20dの端から凝縮水が漏れずに角部を伝わるように底板20dの一端が若干上を向くように取り付けられている。これにより、ブラケット20の一端20aに滴下した凝縮水は、ブラケット20の角部を伝って流れ、ブラケット20の他端20b側に溜まるようになっている。
【0021】
また、ブラケット20は、黒色に塗られている。
【0022】
以上の構成において、EGRクーラー11の冷却により生じた煤混じりの凝縮水の一部は、通水孔12fから滴下するが、この煤混じりの凝縮水はブラケット20によって捕集されることにより、EGRバルブ12の下方に配置されているエンジンやパイプ類などの部品には付着しない。これにより、EGRバルブ12の下方に配置されているエンジンやパイプ類などの部品が、煤混じりの凝縮水によって汚れることを防止できる。
【0023】
ここで、ブラケット20の一端20a側に滴下した煤混じりの凝縮水は、図4の矢印Fで示したように、ブラケット20の角部を伝って、傾斜したブラケット20の上方側の一端20aから下方側の一端20bへと流れ、ブラケット20の下方側の一端20bに溜まる。この煤混じりの凝縮水は、時間の経過とともに水分が蒸発し、ブラケット20上には煤だけが残る。ブラケット20は、黒色で塗装されているので、ブラケット20の煤による汚れも目立たない。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態によれば、EGRバルブ12の下方にブラケット20を設け、EGRバルブ12の通水孔12fから滴下した煤混じりの凝縮水をブラケット20によって捕集したことにより、煤混じりの凝縮水によるエンジンやパイプなどの汚れを簡易な構成により防止できるようになる。
【0025】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0026】
上述の実施の形態では、通水孔12fから排出された凝縮水を捕集する凝縮水捕集部としてブラケット20を設けた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、凝縮水捕集部としては、例えばスポンジや布を用いてもよい。つまり、通水孔12fの下方にスポンジや布を配置するようにしてもよい。ただし、凝縮水捕集部が配置される位置は、高温になることも想定されるので、実施の形態のようにブラケット20を用いることがより好適である。
【0027】
また、上述の実施の形態では、断面がL字状のブラケット20を用いたが、ブラケットの形状はこれに限らず、要は凝縮水を捕集して一時的に貯留できるような形状であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、排ガス再循環装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 エンジン
2 エンジン本体
10 EGR(排ガス再循環)装置
11 EGRクーラー
12 EGRバルブ
12a ケース
12b バルブ本体
12c 駆動軸
12d ギヤ
12e モーター
12f 通水孔
20 ブラケット
20c 側板
20d 底板
20e 閉塞部材
Eg EGR(排ガス再循環)通路
Ex 排気通路
In 吸気通路
図1
図2
図3
図4