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特許7095238インクジェット記録装置及びテストチャート検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置及びテストチャート検出方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
B41J2/01 127
B41J2/01 451
B41J2/01 501
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017142451
(22)【出願日】2017-07-24
(65)【公開番号】P2019022949
(43)【公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 康範
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-126060(JP,A)
【文献】特開2017-081008(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0085381(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体を含有したインクを含む複数種類のインクを記録媒体に吐出し、前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドと、
前記記録媒体に形成された画像に白色光を照射する白色光光源、及び、前記画像に照射された白色光の反射光を検知する白色光側撮像部からなる第1画像読取部と、
前記記録媒体に形成された画像に紫外線を照射する紫外線光源、及び、前記紫外線の照射によって前記画像が発する蛍光を検知する撮像部からなる第2画像読取部と、
を備え、
前記第1画像読取部、及び、前記第2画像読取部は、搬送方向における前記インクジェットヘッドの下流側に順に配置されており、
蛍光体を含有しないインクの画像を前記第1画像読取部で読み取ると共に、蛍光体を含有するインクの画像を前記第2画像読取部で読み取る
インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記蛍光体を含有したインクは、白又は透明である
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
蛍光体を含有したインクを含む複数種類のインクを記録媒体に吐出し、前記記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドと、
前記記録媒体に形成された画像に白色光を照射する白色光光源、及び、前記画像に照射された白色光の反射光を検知する白色光側撮像部からなる第1画像読取部と、
前記記録媒体に形成された画像に紫外線を照射する紫外線光源、及び、前記紫外線の照射によって前記画像が発する蛍光を検知する撮像部からなる第2画像読取部と、
を備え
前記第1画像読取部、及び、前記第2画像読取部は、搬送方向における前記インクジェットヘッドの下流側に順に配置されたインクジェット記録装置を用いたテストチャート検出方法であって、
前記蛍光体を含有しないインクのテストチャートを前記第1画像読取部で読み取り、
前記蛍光体を含有するインクのテストチャートを前記第2画像読取部で読み取る
テストチャート検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを記録媒体に吐出して画像形成を行うインクジェット記録装置、及び、そのインクジェット記録装置におけるテストチャート検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、記録ヘッドのノズルからインクを吐出して記録媒体に画像を形成する。このようなインクジェット記録装置では、記録ヘッドのノズルが目詰まりを起こし、インクが吐出されない吐出不良を起こすことがある。
【0003】
このような吐出不良を検出するため、記録ヘッドの各ノズルからインクを吐出させ、記録媒体に所定のテストチャートを形成し、そのテストチャートをインラインセンサで読み取ることにより不吐出ノズルを特定する方法が採用されている。
【0004】
ところで、インクジェット記録装置に用いられるインクは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の他にも、白色(W)や、他のインクと重ねて使用される透明なインクが知られている。透明インクは、例えば、画像の耐光性や耐水性を向上させたり、画像に光沢を付与したりする目的で使用される。
【0005】
このような白色インクや透明インクは、記録媒体に対して視認性が悪いため、テストチャートを形成した場合、インラインセンサでそのテストチャートを読み込むことができないという問題があった。このため、白色インクや透明インクを用いる場合には、テストチャートを作成してそのテストチャートをインラインセンサで読み込むことによる不吐出ノズルの特定が困難であった。
【0006】
これに対し、特許文献1では、「蛍光体を含有したインク受容層を有する被記録媒体にテストパターンを記録した後、テストパターンが記録された被記録媒体に紫外線を照射し、蛍光体が発する蛍光を検知することにより、テストパターンを検出する」テストパターン検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-110804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1におけるテストパターン検出方法は、蛍光体を含有したインク受容層を有する特別な記録媒体を用いた場合にのみ有効な方法であり、蛍光体を含有しない記録媒体を用いる場合には適用できない方法である。したがって、記録媒体の特性に左右されることなく、記録媒体に対して視認性の悪いインクで記録されたテストチャートを検出することができる技術が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、記録媒体の特性に左右されることなく、記録媒体に対して視認性の悪いインクで記録されたテストチャートの検出精度の向上を図ることができるインクジェット記録装置及びテストチャート検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のインクジェット記録装置は、蛍光体を含有したインクを含む複数種類のインクを記録媒体に吐出し、記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドと、記録媒体に形成された画像に白色光を照射する白色光光源、及び、画像に照射された白色光の反射光を検知する白色光側撮像部からなる第1画像読取部と、記録媒体に形成された画像に紫外線を照射する紫外線光源、及び、紫外線の照射によって画像が発する蛍光を検知する撮像部からなる第2画像読取部と、を備え、第1画像読取部、及び、第2画像読取部は、搬送方向におけるインクジェットヘッドの下流側に順に配置されており、蛍光体を含有しないインクの画像を第1画像読取部で読み取ると共に、蛍光体を含有するインクの画像を第2画像読取部で読み取る。
【0011】
本発明のテストチャート検出方法は、蛍光体を含有したインクを含む複数種類のインクを記録媒体に吐出し、記録媒体に画像を形成するインクジェットヘッドと、記録媒体に形成された画像に白色光を照射する白色光光源、及び、画像に照射された白色光の反射光を検知する白色光側撮像部からなる第1画像読取部と、記録媒体に形成された画像に紫外線を照射する紫外線光源、及び、紫外線の照射によって画像が発する蛍光を検知する撮像部からなる第2画像読取部と、を備え第1画像読取部、及び、第2画像読取部は、搬送方向におけるインクジェットヘッドの下流側に順に配置されたインクジェット記録装置を用いたテストチャート検出方法であって、蛍光体を含有しないインクのテストチャートを第1画像読取部で読み取り、蛍光体を含有するインクのテストチャートを第2画像読取部で読み取る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、記録媒体に対して視認性の悪いインクで記録されたテストチャートの検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の要部を上面から見た場合の図である。
図3】記録部を構成するヘッドユニットのうち1つを記録媒体側から見た状態を示す平面図である。
図4図4Aは、図2のA-A線上に沿う断面構成図である。図4Bは、第1画像読取部及び第2画像読取部を記録媒体側から見た状態の平面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の要部を示した構成図である。
図7図7Aは、図6のB-B線上に沿う断面構成図である。図7Bは、画像読取部を記録媒体側から見た状態の平面図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置、及び、テストチャート検出方法の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。また、説明は、以下の順に行う。
1.第1の実施形態(画像読取部を2つ設ける例)
1-1.インクジェット記録装置の全体構成
1-2.インクジェット記録装置の制御系の構成
1-3.テストチャート検出方法
2.第2の実施形態(画像読取部を1つ設ける例)
2-1.画像読取部の構成
2-2.テストチャート検出方法
【0015】
1.第1の実施形態(画像読取部を2つ設ける例)
1-1.インクジェット記録装置の全体構成
図1は、本発明の第1の実施形態(以下、本実施形態)に係るインクジェット記録装置1の全体構成図である。図1に示すように、インクジェット記録装置1は、媒体供給部2と、媒体加熱部3(温度調節部)と、第1搬送部4と、記録部8と、第2搬送部5と、定着部9と、冷却部10と、第3搬送部6とを備える。さらに、インクジェット記録装置1は、第1画像読取部11と、第2画像読取部12と、媒体排出部7と、制御部60とを備える。
【0016】
[媒体供給部]
媒体供給部2は、媒体積載部13と、位置合わせ部14とを有する。媒体積載部13には、平面状のプレート(トレー)が設けられており、記録媒体P、ここでは、特に限られるものではないが設定されたサイズの用紙が複数積載されている。媒体積載部13では、記録媒体Pの積載量に応じてプレートが上下することで、最上部の記録媒体Pが略水平に位置合わせ部14に順次送り出される。
【0017】
位置合わせ部14は、記録媒体Pの位置、特に記録媒体Pの搬送方向に垂直な幅方向について所定の位置に合わせるガイド部材などを備え、適切な位置及びタイミングで第1搬送部4に記録媒体Pを送り出す。
【0018】
[媒体加熱部]
媒体加熱部3は、複数の加熱ローラー15が記録媒体Pを両側から挟み込み、回転動作により記録媒体Pを搬送させながら記録媒体Pを加熱する。複数の加熱ローラー15には、媒体ヒーター(図示を省略する)が設けられており、加熱ローラー15の表面が加熱されて熱を記録媒体Pに伝えることで記録媒体Pを加熱する。媒体ヒーターとしては、例えば、電流によりジュール熱を生じる電熱シートなどが用いられる。
【0019】
また、加熱ローラー15から第1搬送部4の一部に亘って加熱室36が設けられている。空気ヒーター16により加熱室36の温度が一定に保たれて、加熱ローラー15により加熱された記録媒体Pの温度むらを軽減する。これにより、記録媒体Pを、略一様な温度とすることができる。空気ヒーター16としては、例えば、赤外線を照射する赤外線ヒーターなどが挙げられる。
【0020】
加熱室36は、記録媒体Pが後述する第1搬送部4を構成する搬送ベルト22の載置面上に載置される区間のうち搬送方向について上流部分の一部を囲うように設けられている。そして、記録媒体Pは、この加熱室36の内部で搬送ベルト22上に載置される。
【0021】
[第1搬送部]
第1搬送部4は、駆動ローラー20と、従動ローラー19と、無端状の搬送ベルト22と、第1吸着部21と、押圧ローラー17と、第1押圧モーター18とを備える。
【0022】
無端状の搬送ベルト22は、ここでは、例えば、スチールベルトである。搬送ベルト22は、駆動ローラー20と従動ローラー19との間に架け渡されて周回動作(移動動作)する。記録媒体Pは、搬送ベルト22の外周側の面(記録媒体Pの載置面)が上向きで水平に移動する区間において当該載置面に載置されて搬送ベルト22の周回移動に伴って搬送される。この区間では、記録媒体P及び搬送ベルト22は、記録部8の各ヘッドユニット8Y、8M、8C、8Kのノズルからインクが吐出される面(インク吐出面)と対向する。搬送ベルト22は、載置面側から当該載置面とは反対側の面へと空気が通過可能に両面間を貫通する多数の開口が所定のパターンで設けられた構造となっている。
【0023】
押圧ローラー17は、第1押圧モーター18の動作に従って記録媒体Pが搬送ベルト22の載置面に載置される際に、記録媒体Pの載置面からの浮き上がりを防止(抑制)して、記録媒体Pを載置面に密着させながら搬送方向に移動させる。押圧ローラー17は、記録媒体Pが圧縮されない程度に記録媒体Pを押圧し、押圧ローラー17の表面の移動速度が搬送ベルト22の移動速度と同一となるように回転速度が制御される。なお、押圧ローラー17は、回転駆動されず、記録媒体Pの移動に従って回転するのみの構成であっても良い。
【0024】
第1吸着部21は、記録媒体Pを搬送ベルト22の載置面に吸着させる。第1吸着部121は、例えば、載置面をなす搬送ベルト22を、載置面と反対側の面で支える支持板(図示を省略する)と、吸引ファン(図示を省略する)とを有する。吸引ファンは、搬送ベルト22の内周面に囲まれた内部に設けられている。また、支持板には、吸引ファンの動作により搬送ベルト22の載置面側から吸引ファンまで吸引された空気が通過可能となるように多数の透過孔が設けられている。或いは、人工的に設けられた透過孔を有する支持板の代わりに多孔質体を用いることもできる。
【0025】
[記録部]
記録部8は、記録媒体Pの搬送方向において媒体加熱部3よりも下流側に設けられている。記録部8は、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色について個別に設けられたヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkを有する。ヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkは、例えば、記録媒体Pの搬送方向に対して上流側からヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkの順に配置されている。
【0026】
図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置1の要部を上面から見た場合の図である。図2では、インクジェット記録装置1における記録部8、第1画像読取部11及び第2画像読取部12の部分を抜き出して示している。図2に示すように、ヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkは、それぞれ、記録媒体Pの搬送方向に垂直な方向(記録媒体Pの幅方向)について記録媒体Pの全体を覆う長さ(幅)に設けられている。すなわち、インクジェット記録装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。
【0027】
図3は、ヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkのうち1つを記録媒体P側から見た状態を示す平面図である。図3に示すように、それぞれのヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkは、複数(本実施形態では16個)のインクジェットヘッド242を有している。そして、2つのインクジェットヘッド242が1組となって、1つのインクジェットモジュール243を構成している。そのため、本実施形態のヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkのそれぞれには、8つのインクジェットモジュール243が設けられている。
【0028】
8つのインクジェットモジュール243は、記録媒体Pの搬送方向に沿って2列に並べられている。そして、一列のインクジェットモジュール243は、記録媒体Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)に沿って4つ並べて配置されている。また8つのインクジェットモジュール243は2列のインクジェットモジュール243が記録媒体Pの搬送方向に沿って互いに千鳥状に配置されている。
【0029】
なお、それぞれのヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkにおけるインクジェットモジュール243の数及び配置は上述したものに限定されるものではなく、6個又は10個以上のインクジェットモジュール243を配置してもよい。また、多ノズルを1ユニットに配置した1ヘッドユニットであってもよい。
【0030】
また、ヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkのそれぞれを構成するインクジェットヘッド242の、搬送ベルト22の外周面と対向する面に設けられた複数の開口部がノズル244となる。各ヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkにおけるインクジェットヘッド242の複数のノズル244からは、それぞれのヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkに対応した色のインクが吐出される。ノズル244から吐出されたインクは、記録媒体Pの記録部8と対向する面(記録面)に着弾する。本実施形態では、W、Y、M、C、Bkの各色のインクが各ヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkから記録媒体Pに順に吐出されることで、記録媒体P上に所望の画像を形成することができる。
【0031】
また、本実施形態におけるインクジェット記録装置1で用いられるインクは、例えば紫外線(UV)硬化型のインクである。このUV硬化型のインクは、UVが照射されない状態では、温度に応じてゲル状態と液体(ゾル)状態との間で相変化する。本実施形態では、公知のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの紫外線硬化型のインクを用いることができる。
【0032】
本実施形態におけるヘッドユニット8Wに供給されるホワイトのインクは、蛍光体が添加されたUV硬化型のインクである。ホワイトのインクに含有される蛍光体は、例えば、390nm以下の紫外線領域の波長の光を照射した場合に、450nm以上の可視領域の波長の光を発光することのできる物質であればよい。このような蛍光体としては、例えば、ZnSiO、MgWOのような無機蛍光体、又は、クマリン誘導体、スチルベン誘導体、ピレン誘導体、オキサドール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、ピラゾリン誘導体等のような有機蛍光体を用いることができる。
【0033】
本実施形態におけるホワイトのインクに添加する蛍光体としては、一般に対象物をより白く見せるために使用される蛍光増白剤を用いることもできる。本実施形態において、利用可能な蛍光増白剤としては、例えばチバスペシャリティケミカルズ社よりUvitex(登録商標)シリーズ及びTinopal(登録商標)シリーズ、日本曹達社よりKayacoll(登録商標)シリーズ、住友化学工業社よりWhitex(登録商標)シリーズ、日本化薬社よりKayaphor(登録商標)シリーズ、バイエル社よりBlankophor(登録商標)シリーズ等の商品名で市販されているものが挙げられる。これらの蛍光増白剤は、水溶性染料の場合、水溶性の置換基の種類によりアニオン性及びカチオン性のものがあるが、いずれを用いてもよく、油溶性染料を分散して利用することもできる。
【0034】
[第2搬送部]
図1に示すように、第2搬送部5は、第1搬送部4により搬送されてきた記録媒体Pを受けて、定着部9による紫外線の照射区間を通過させながらその記録媒体Pを搬送する。第2搬送部5は、駆動ローラー26と、従動ローラー25と、無端状の搬送ベルト27と、第2吸着部28と、押圧ローラー23、24と、第2押圧モーター37と、冷却部10とを有する。第2搬送部5の構成は、押圧ローラー17の代わりに2つの押圧ローラー24、24が設けられている点を除き、第1搬送部4の構成と同様であるので、第2搬送部5の詳しい説明を省略する。
【0035】
押圧ローラー23、24は、記録媒体Pの幅方向両端をそれぞれ押圧する。第1搬送部4上で記録部8により吐出されて記録媒体Pに着弾したインクは、第2搬送部5に受け渡された時点では、記録媒体Pに定着されていない。従って、この状況でインクの着弾部分を押圧して着弾したインクを乱さないように、押圧ローラー23、24は、幅方向両端の余白部分のみを押圧する。押圧ローラー23、24の幅方向についての位置は、ユーザーにより及び/又は制御部60の制御により変更可能となっている。
【0036】
搬送ベルト27の外周面(載置面)のうち記録媒体Pが載置されて平行移動される区間の高さは、搬送ベルト22の外周面(載置面)のうち記録媒体Pが載置されて平行移動される区間の高さと等しく定められている。このように、記録媒体Pが搬送ベルト22から搬送ベルト27に直接受け渡されることで、当該記録媒体Pの高さが変化せずに単一平面内で移動搬送される。
【0037】
ここでいう等しいとは、厳密に等しい場合に限られず、通常の機械装置の組み立て設定で目視上略等しい程度の精度で十分であり、例えば、1cm以下程度、より好ましくは1mm以下程度の範囲内で等しいことをいう。
【0038】
[定着部]
定着部9は、搬送ベルト27の載置面において、記録媒体Pに着弾したインクを記録媒体Pに定着させる。定着部9は、紫外線の照射部(図示を省略する)を備え、記録媒体P上の紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射する。
【0039】
定着部9から照射される紫外線は、搬送ベルト27の載置面に記録媒体Pが載置される区間において、大きなむら(強度のばらつき)が発生することなく、記録媒体Pに照射されるのが好ましい。一方で、当該区間外に漏れる紫外線強度を低減させるために、定着部9による紫外線の照射範囲を囲うように遮光板29が設けられている。遮光板29は、例えば、定着部9における照射部が設けられる位置よりも搬送ベルト側に延在し、かつ、搬送ベルトに接触しない程度の長さの板状部材で構成される。
【0040】
また、インクの種別に応じて、定着部9及び紫外線の照射範囲を含む領域を筐体内に収容し、筐体内に、例えば窒素ガスなどの特定の気体を充填することで定着部9における定着の効果を向上させることができる。また、筐体を設けない場合にも、遮光板29で囲われた領域内に特定の気体を充填させて同様の効果を得ることもできる。定着部9及び紫外線の照射範囲を含む所定の領域に特定の気体を充填させる場合、気体が充填された空間に熱がこもらないようにするため、気体の循環冷却や筐体の冷却などを適宜行うことが好ましい。
【0041】
[冷却部]
冷却部10は、定着部9の動作による記録媒体P上のインクの定着に係る発熱、及び定着部9自体の発熱に伴って加熱された搬送ベルト27を冷却する。冷却部10は、例えば、冷却ファンを有し、当該冷却ファンの動作により搬送ベルト27を空冷する。冷却部10は、搬送ベルト27の載置面に記録媒体Pが載置されない区間において当該載置面と対向して設けられる。
【0042】
なお、冷却部10は、ここでは、搬送ベルト27を冷却する構成として設けられたが、定着部9の紫外線の照射部自体を冷却する構成を備えて、長時間の画像記録時における照射部の過熱を防止する構成であっても良い。
【0043】
[第3搬送部]
第3搬送部6は、第2搬送部5により搬送されてきた記録媒体Pを受けて、第1画像読取部11及び第2画像読取部12の読み取り範囲内を通過させながらこの記録媒体Pを搬送する。第3搬送部6は、駆動ローラー33と、従動ローラー32と、無端状の搬送ベルト34と、第3吸着部38と、押圧ローラー30と、第3押圧モーター31とを有する。これらの駆動ローラー33、従動ローラー32、搬送ベルト34、第3吸着部38、押圧ローラー30及び第3押圧モーター31の構成は、それぞれ、駆動ローラー20、従動ローラー19、搬送ベルト22、第1吸着部21、押圧ローラー17及び第1押圧モーター18と同一であり、詳しい説明を省略する。
【0044】
搬送ベルト34の外周面(載置面)のうち記録媒体Pが載置されて平行移動される区間の高さは、搬送ベルト27の外周面(載置面)のうち記録媒体Pが載置される区間の高さと等しく定められ、記録媒体Pは、搬送ベルト27の載置面から搬送ベルト34の載置面に対して直接同一平面内で受け渡される。即ち、記録媒体Pは、第1搬送部4で搬送ベルト22に載置されてから第3搬送部6で搬送ベルト34から取り除かれるまで単一平面内で移動及び受け渡しがなされる。
【0045】
[第1画像読取部、第2画像読取部]
第1画像読取部11及び第2画像読取部12は、記録媒体Pの搬送方向における定着部9の下流側に設けられ、図1に示すように搬送ベルト34によって搬送される記録媒体Pの画像面を読み取る。また、本実施形態では、記録媒体Pの搬送方向に対して、定着部9側から第1画像読取部11、第2画像読取部12の順に配置されている。
【0046】
図4Aは、図2のA-A線上に沿う断面構成図であり、第1画像読取部11及び第2画像読取部12の内部構成を示した図である。また、図4Bは、第1画像読取部11及び第2画像読取部12を記録媒体Pに対向する面側から見た状態の平面図である。
【0047】
第1画像読取部11は、搬送ベルト34の載置面上を搬送される記録媒体Pに白色光を照射する第1照射部46と、記録媒体Pからの反射光を検知する第1撮像部42(白色光側撮像部に相当)と、第1照射部46及び第1撮像部42が設けられる第1筐体41とで構成されている。
【0048】
第1筐体41は、記録媒体Pの搬送方向に直交する幅方向よりも長い箱状部材で構成されている。そして、第1筐体41の搬送ベルト34における記録媒体Pの載置面に対向する面には、記録媒体Pの搬送方向に直交する幅方向に対応するライン状の第1開口部47が設けられている。第1開口部47の記録媒体Pの搬送方向に直交する幅方向の幅は、記録部8において可能な画像記録の最大幅と同等又はそれよりも若干広い範囲に設定されている。一方、第1開口部47の記録媒体Pの搬送方向に沿う方向の幅は、記録媒体Pからの反射光L2が入射可能な幅に設定されている。
【0049】
第1照射部46は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)からなる複数の白色光光源45で構成されている。第1照射部46は、第1筐体41の第1開口部47を挟むように2列に設けられており、第1照射部46では、複数の白色LEDが記録媒体Pの搬送方向に直交する幅方向に沿って列状に配置されている。このように構成された2列の第1照射部46は、照射された白色光L1が、第1開口部47の直下に位置する記録媒体Pの画像面に対して例えば45°の入射角で入射するように設定されている。本実施形態では、第1照射部46を2列に設ける構成としたが、これに限られるものではない。
【0050】
第1撮像部42は、第1筐体41内部に配置されており、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサー又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーで構成され、可視光領域の波長の光に感度を有するラインセンサーで構成されている。第1撮像部42は、記録部8において記録可能な画像の最大幅と同等又はそれよりも若干広い範囲を撮像可能に配置されている。なお、第1撮像部42に適用されるラインセンサーの解像度は一般的にノズルピッチよりも荒い。
【0051】
また、記録媒体Pの画像面で反射し、第1筐体41内に入射した反射光L2の第1撮像部42までの光路には、複数の反射ミラー44(図4では2個)や、所望のレンズ系43が配置されている。
【0052】
第1照射部46は、制御部60の制御の下、記録媒体Pに形成された画像Icが第1開口部47直下を通過する際に白色光L1を照射する。そして、第1撮像部42は、その画像面で反射した反射光L2を、第1筐体41内部に設けられた第1撮像部42で検知する。これにより、第1画像読取部11では、記録媒体Pに形成された画像の一次元画像を撮像することができる。また、第1画像読取部11では、記録媒体Pの搬送速度に応じた間隔で撮像を繰り返すことにより2次元画像を取得することができる。
【0053】
本実施形態では、制御部60の制御の下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクで形成された画像Icが第1画像読取部11で読み取られる。
【0054】
第2画像読取部12は、第2照射部56と、第2撮像部(撮像部に相当)52と、第2照射部56及び第2撮像部52が設けられる第2筐体51で構成されている。
【0055】
第2画像読取部12は、第2照射部56の構成のみが第1画像読取部11と異なる。第2画像読取部12における、第2筐体51、第2開口部57、第2撮像部52、複数の反射ミラー54、及び、レンズ系53の構成は、それぞれ、第1画像読取部11における、第1筐体41、第1開口部47、第1撮像部42、複数の反射ミラー44、及び、レンズ系43と同様である。したがって、これらの重複説明を省略する。
【0056】
第2照射部56は、紫外線を照射するLEDからなる複数の紫外線光源55で構成されている。第2照射部56は、第2筐体51の第2開口部57を挟むように2列に設けられており、第2照射部56では、複数の紫外線LEDが記録媒体Pの搬送方向に直交する幅方向に沿って列状に配置されている。このように構成された2列の第2照射部56は、照射された紫外線L3が、第2開口部57の直下に位置する記録媒体Pの画像面に対して例えば45°の入射角で入射するように設定されている。
【0057】
本実施形態では、第2照射部56は紫外線を照射する紫外線LEDで構成する例としたが、例えば360nm以下の紫外線を照射することができればよく、LEDの他、紫外線レーザーや、低圧水銀灯などの紫外線ランプを用いることができる。また、第2照射部56における紫外線の波長は、ホワイトのインクに含有された蛍光体に吸収されることで蛍光を発することのできる波長であればよく、使用するホワイトのインクに応じて適宜決定される。
【0058】
第2画像読取部12では、制御部60の制御の下、記録媒体Pに形成された画像のうち、ホワイトのインクで形成された画像Iwが第2開口部57直下を通過する際に、第2照射部56から紫外線L3を照射する。本実施形態では、ホワイトの画像Iwを形成するインクは蛍光体を含有している。このため、ホワイトのインクで形成された画像Iwに照射された紫外線L3は、画像面において吸収され、例えば450nm程度の蛍光(励起光)L4を発する。この可視光領域の蛍光L4が第2撮像部52に入射することで、第2撮像部52では、ホワイトのインクで形成された画像Iwを、可視光領域の波長の光として検知することができる。
【0059】
本実施形態においても、第2画像読取部12では、記録媒体Pの形成された画像の一次元画像を撮像することができる。また、第2画像読取部12では、記録媒体Pの搬送速度に応じた間隔で撮像を繰り返すことにより2次元画像を取得することができる。
【0060】
ところで、白色の記録媒体Pにホワイトのインクで画像を形成し、その画像に白色光を照射した場合、画像が形成された部分と、形成されていない部分とで、反射光の強度にあまり差が生じない。このため、白色の記録媒体Pにホワイトのインクで画像を形成した場合は視認性が悪く、第1画像読取部11では正確な画像を読み取ることができない。これにより、ホワイトのインクによるテストチャートの正確な読み取りができない。
【0061】
これに対し、本実施形態では、ホワイトのインクで形成された画像には、第2画像読取部12において、紫外線L3を照射し、蛍光体の効果によって可視光領域に変換された波長の光を検出することができる。これにより、白色の記録媒体Pにホワイトのインクで画像を形成した場合も、紫外線L3を照射することで、ホワイトのインクで形成された画像の視認性を高めることができる。したがって、第2撮像部52において、ホワイトのインクによるテストチャートの読み取りをより正確に行うことができる。
【0062】
[媒体排出部]
媒体排出部7は、第3搬送部6により搬送された記録媒体Pを載置して保持する。媒体排出部7は、排出トレー35(プレート)を備え、この排出トレー35上に画像記録の終了した記録媒体Pが順番に重ねられていく。排出トレー35は、記録媒体Pが第3搬送部6の搬送面から送出可能なように当該搬送面より低く設定されており、載置された記録媒体Pの分量によって上下可能であっても良い。
【0063】
1-2.インクジェット記録装置の制御系の構成
図5は、本実施形態のインクジェット記録装置1の制御系の構成を示すブロック図である。図5に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置1は、制御部60と、入出力インターフェース70と、媒体加熱部3と、記録部8と、定着部9と、搬送駆動部71と、操作表示部72と、第1画像読取部11と、第2画像読取部12とを備える。
【0064】
制御部60は、例えばCPU(Central Processing Unit)61と、CPU61の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)62と、CPU61が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)63とを有する。さらに、制御部60は、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)等からなる記憶部64を有している。記憶部64には、第1画像読取部11及び第2画像読取部12が読み取った画像のデータ、ノズルの吐出不良を検出するためのテストチャートや、ノズルの吐出不良検査動作をおこなうための情報が格納されている。
【0065】
制御部60のCPU61は、RAM62、ROM63、記憶部64、入出力インターフェース70、媒体加熱部3、記録部8、定着部9、搬送駆動部71、操作表示部72、第1画像読取部11及び第2画像読取部12に、システムバスを介して接続されている。そして、制御部60は装置全体を制御する。
【0066】
搬送駆動部71は、制御部60の制御の下、第1搬送部4、第2搬送部5、及び第3搬送部6のそれぞれを駆動制御する。また、操作表示部72は、液晶表示装置(LCD)又は有機LED等の画像表示装置からなるタッチパネルである。この操作表示部72は、ユーザーに対する指示メニュー、ノズルの吐出検出動作に関する情報や取得した画像データに関する情報等を表示する。さらに、操作表示部72は、複数のキーを備え、ユーザーのキー操作による各種の指示、文字、数字などのデータ入力を受け付ける入力部としての役割を持つ。
【0067】
入出力インターフェース70は、PC(パーソナルコンピューター)や、ファクシミリ装置等の外部装置100に接続されている。そして、入出力インターフェース70は、受信した画像データを制御部60に出力する。制御部60は、入出力インターフェース70から受信した画像データを画像処理する。また、制御部60は、受信した画像データに対し、必要に応じてシェーディング補正、画像濃度調整、画像圧縮等の画像処理を行う。
【0068】
記録部8は、制御部60によって画像処理された画像データを受け取り、画像データに基づいて記録媒体P上に所定の画像を形成する。具体的には、記録部8を構成する各ヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bkのそれぞれのヘッド駆動部241を駆動することで、それぞれのインクジェットヘッド242からインクを記録媒体Pの所定の位置に吐出させる。
【0069】
第1画像読取部11は、制御部60の制御の下、所定のタイミングで第1照射部46から白色光を照射し、その反射光を第1撮像部42で検知する。また、第2画像読取部12は、制御部60の制御の下、所定のタイミングで第2照射部56から紫外線を照射し、その反射光を第2撮像部52で撮像する。制御部60は、第1画像読取部11及び第2画像読取部12から送られた画像データに基づいて吐出不良が生じているノズルを判別する。
【0070】
1-3.テストチャート検出方法
次に、本実施形態のインクジェット記録装置1におけるテストチャート検出方法について説明する。本実施形態では、制御部60の制御の下、所定のテストチャートをそれぞれのヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bk毎に記録媒体Pに形成する。
【0071】
第1画像読取部11では、制御部60の制御の下、第1照射部46から出射された白色光L1を、記録媒体Pに形成されたイエロー、マゼンタ、シアン又はブラックのテストチャートに照射し、そのテストチャートを第1撮像部42において撮像する。これにより、第1画像読取部11では、第1撮像部42において、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれのインクで形成されたテストチャート画像データが取得される。第1撮像部42で取得されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれのテストチャートの画像データは制御部60に送られ、制御部60はそのテストチャートの画像データからヘッドユニット8Y、8M、8C、8Bkのそれぞれにおける吐出不良ノズルを検出する。
【0072】
一方、第2画像読取部12では、制御部60の制御の下、第2照射部56から出射される紫外線L3を、記録媒体Pに形成されたホワイトのテストチャートに照射し、そのテストチャートを撮像する。本実施形態では、ホワイトのインクには蛍光体が添加されているため、ホワイトのインクで形成されたテストチャートに照射された紫外線L3は、ホワイトのテストチャートに吸収され、可視光領域の蛍光L4を発する。この蛍光L4が第2撮像部52に入射する。これにより、第2撮像部52では、ホワイトのインクで形成されたテストチャートを、所定の可視光領域、例えば青色のテストチャートとして検知することができる。第2撮像部52で取得されたホワイトのテストチャートの画像データは制御部60に送られ、制御部60はそのテストチャートの画像データからヘッドユニットWにおける吐出不良ノズルを検出する。
【0073】
このように、本実施形態では、ホワイトのインクに蛍光体が添加されているため、紫外線L3を照射したときに、テストチャートに含有された蛍光体が紫外線L3を吸収して蛍光L4を発する。一方、テストチャートが形成されていない部分は、蛍光を発しない。これにより、第2撮像部52では、ホワイトのインクで形成されたテストチャートを可視光領域の光として検出することができる。
【0074】
本実施形態では、ホワイトのインクに蛍光体を添加し、ホワイトのインクで形成されたテストチャートの読み取りを行う例としたが、これに限られるものではない。例えば、画像の耐光性や耐水性の向上、画像への光沢の付与などを目的として用いられる透明インクについても、視認性が悪く、透明インクをインラインセンサで検出するのは困難である。したがって、透明なインクを用いる場合も、本実施形態において用いられる蛍光体を添加することで、透明なインクで形成された画像の紫外線照射下における視認性を高めることができ、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
すなわち、記録媒体Pに対して視認性の悪いインクを用いる場合に、そのインクに蛍光体を添加し、蛍光体が添加されたインクで形成された画像に紫外線を照射することで、可視光領域の画像として撮像部で検出することができる。これにより、記録媒体に対して視認性の悪いインクを用いる場合も、テストチャートの画像をより正確に取得することができるため、吐出不良ノズルの検出精度を高めることができる。
【0076】
また、本実施形態では、視認性の悪いインクに蛍光体を添加することで紫外線照射時における視認性の向上を図ることができるため、記録媒体の特性に左右されることなく、ノズルの吐出不良を検出することができる。
【0077】
2.第2の実施形態(画像読取部を1つ設ける例)
2-1.画像読取部の構成
次に、本発明の第2の実施形態に係るインクジェット記録装置300について説明する。図6は、本実施形態に係るインクジェット記録装置300の要部を示した構成図である。本実施形態のインクジェット記録装置300は、画像読取部301の構成のみが第1の実施形態と異なる例である。従って、本実施形態に係るインクジェット記録装置300の全体の構成の説明は省略する。また、図6において、図2に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0078】
本実施形態においても、画像読取部301は、記録媒体Pの搬送方向における定着部の下流側に設けられ、図6に示すように搬送ベルト34によって搬送される記録媒体Pの記録面を読み取る。本実施形態では、ホワイト、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれのインクで形成されたテストチャートを1つの画像読取部301で読み取る。
【0079】
図7Aは、図6のA-A線上に沿う断面構成図であり、図7Bは、画像読取部301を記録媒体P側から見た状態の平面図であり、一部ブロック図で示している。
【0080】
図7Aに示すように、画像読取部301は、搬送ベルト34の載置面上を搬送される記録媒体Pに白色光及び紫外線を照射可能な照射部302と、記録媒体Pを撮像する撮像部312と、照射部302及び撮像部312が設けられる筐体311とを備える。さらに、画像読取部301は、照射部302における光源を切り替える光源切替部304とで構成されている。
【0081】
画像読取部301は、照射部302の構成及び光源切替部304の構成が第1画像読取部11と異なる。画像読取部301における、筐体311、開口部317、撮像部312、複数の反射ミラー314、及び、レンズ系313の構成は、それぞれ、第1画像読取部11における、第1筐体41、第1開口部47、第1撮像部42、複数の反射ミラー44、及び、レンズ系43と同様である。したがって、これらの重複説明を省略する。
【0082】
照射部302は、互いに交互に配列された、白色LEDからなる複数の白色光光源305と紫外線LEDからなる複数の紫外線光源306とで構成されている。この照射部302は、筐体311の開口部317を挟むように2列に設けられており、記録媒体Pの搬送方向に直交する幅方向に沿って配置されている。すなわち、照射部302では、開口部317を挟む位置において、その開口部317の延在方向に沿って白色光光源305と紫外線光源306が交互に列状に配置されている。このように構成された2列の照射部302は、照射された白色光又は紫外線が、開口部317の直下に位置する記録媒体Pに対して例えば45°の入射角で入射するように設定されている。
【0083】
光源切替部304は、照射部302の白色光光源305に接続された第1配線308及び紫外線光源306に接続された第2配線307と、電源部(図示を省略する)との間の接続状態を切り替える。すなわち、光源切替部304において、第1配線308と電源部とが接続されることで、照射部302では白色光光源305から白色光が照射され、第2配線307と電源部とが接続されることで、照射部302では紫外線光源306から紫外線が照射される。すなわち、光源切替部304は、白色光光源305の発光と、紫外線光源306の発光とを切り替える。
【0084】
図8は、本実施形態のインクジェット記録装置300の制御系を示すブロック図である。図8において、図5に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0085】
図8に示すように、画像読取部301では、制御部60の制御の下、光源切替部304によって照射部302において、白色光光源305又は紫外線光源306に切り替えられる。本実施形態では、記録媒体P上に形成された画像がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクで形成された画像Icであれば白色光を照射し、その反射光を撮像部312が取得する。一方、記録媒体P上に形成された画像がホワイトのインクで形成された画像Iwであれば紫外線を照射し、その画像Iwから発生した蛍光を撮像部312が取得する。撮像部312では、記録媒体Pに形成された一次元画像を撮像することができる。また、撮像部312では、記録媒体Pの搬送速度に応じた間隔で撮像を繰り返すことにより二次元画像を取得することができる。
【0086】
2-2.テストチャート検出方法
次に、本実施形態のインクジェット記録装置300を用いたテストチャートの検出方法について説明する。本実施形態では、制御部60の制御の下、記録部8において、所定のテストチャートをそれぞれのヘッドユニット8W、8Y、8M、8C、8Bk毎に記録媒体Pに形成する。
【0087】
画像読取部301では、制御部60の制御の下、照射部302における照射位置を、記録媒体Pに形成されたイエロー、マゼンタ、シアン又はブラックのテストチャートが通過するタイミングで、光源切替部304によって照射部302を白色光光源305に切り替える。そして、白色光光源305から照射された白色光の反射光を撮像部312で検知することで、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色で形成されたテストチャートを撮像する。
【0088】
これにより、画像読取部301では、撮像部312において、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれのインクで形成されたテストチャート画像データが取得される。撮像部312で取得されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれのテストチャートの画像データは制御部60に送られ、制御部60はそのテストチャートの画像データから、ヘッドユニット8Y、8M、8C、8Bkのそれぞれにおける吐出不良ノズルを検出する。
【0089】
一方、光源切替部304では、制御部60の制御の下、照射部302における照射位置を、記録媒体Pに形成されたホワイトのテストチャートが通過するタイミングで、照射部302を紫外線光源306に切り替える。そして、紫外線光源306から、ホワイトで形成されたテストチャートに紫外線を照射する。ホワイトのインクには蛍光体が添加されているため、ホワイトのインクで形成されたテストチャートに照射された紫外線は、蛍光体に吸収され、可視光領域の蛍光を発する。そして、可視光領域の蛍光が撮像部312に検出されることにより、撮像部312において、ホワイトのテストチャートが撮像される。
【0090】
これにより、撮像部312では、ホワイトのインクで形成されたテストチャートを、所定の可視光領域、例えば青色のテストチャートとして撮像することができる。撮像部312で取得されたホワイトのテストチャートの画像データは制御部60に送られ、制御部60はそのテストチャートの画像データから、ヘッドユニット8Wの吐出不良ノズルを検出する。
【0091】
以上のように、本実施形態では、画像読取部301の照射部302を、白色光光源305と紫外線光源306とで構成し、両者を所望のタイミングで切り替えることで、1つの撮像部312で、全ての色のテストチャートを読み取ることができる。これにより、装置の小型化が可能となる。
【0092】
また、本実施形態においても記録媒体Pに対して視認性の悪いホワイトのインクには、蛍光体が含有されており、画像読取部301では、ホワイトのインクで形成されたテストチャートには紫外線を照射して反射光を撮像する構成である。これにより、ホワイトのインクで形成されたテストチャートを可視光領域の波長の光として撮像部312で読み取ることができるので、ノズルの吐出不良を精度良く検出することができる。
【0093】
なお、第1及び第2の実施形態では、イエローのインクで形成された画像は、画像読取部において、白色光を照射して検出する構成としたが、イエローのインクで形成された画像も視認性が低い場合がある。この場合には、イエローのインクに蛍光体を添加することで、イエローのインクで形成された画像に紫外線を照射させて画像を検知する構成としてもよい。さらに、用いる全ての色のインクに、蛍光体を含有させ、全ての画像に紫外線を照射させて画像を検知する構成としてもよい。
【0094】
また、上述した第1及び第2の実施形態では、ラインヘッドを有するインクジェットヘッド記録装置を例に説明したが、本発明の構成は、スキャン方式のインクジェット記録装置にも適用することができる。さらに、第1及び第2の実施形態では、紫外線硬化型のインクを用いる例としたが、これに限られるものではなく、例えば熱硬化型のインクを用いることもできる。
【0095】
また、上述した第1及び第2の実施形態では、画像読取部は、記録部から離れた位置に設けられている。このため、紫外線硬化型のインクを用いる場合には、画像読取部を構成する紫外線光源により、ノズルが詰まるのを防ぐことができる。また、第1及び第2の実施形態では、記録媒体の搬送方向において、定着部よりも下流側に画像読取部を設ける構成としたが、記録部と定着部との間に設ける構成としてもよい。この場合には、紫外線光源を白色光光源よりもインクヘッドから離れた位置に設けることで、紫外線硬化型のインクを用いた場合に、ノズルが詰まるのを防ぐことができる。
【0096】
上述した第1及び第2の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成について他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…インクジェット記録装置、2…媒体供給部、3…媒体加熱部、4…第1搬送部、5…第2搬送部、6…第3搬送部、7…媒体排出部、8…記録部、9…定着部、10…冷却部、11…第1画像読取部、12…第2画像読取部、13…媒体積載部、41…第1筐体、42…第1撮像部、46…第1照射部、51…第2筐体、52…第2撮像部、56…第2照射部、57…第2開口部、60…制御部、70…入出力インターフェース、71…搬送駆動部、72…操作表示部、100…外部装置、241…ヘッド駆動部、242…インクジェットヘッド、243…インクジェットモジュール、244…ノズル、300…インクジェット記録装置、301…画像読取部、302…照射部、304…光源切替部、305…白色光光源、306…紫外線光源、307…第2配線、308…第1配線、311…筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8