(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】配電盤
(51)【国際特許分類】
H02B 1/32 20060101AFI20220628BHJP
H02B 1/04 20060101ALI20220628BHJP
H02B 1/14 20060101ALI20220628BHJP
H01F 38/38 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H02B1/32 Z
H02B1/04 F
H02B1/14 Z
H01F38/38
(21)【出願番号】P 2017219927
(22)【出願日】2017-11-15
【審査請求日】2020-10-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】北村 高晃
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/218065(US,A1)
【文献】特開2001-008316(JP,A)
【文献】実開昭62-038005(JP,U)
【文献】特開2012-059899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/32
H02B 1/04
H02B 1/14
H01F 38/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる複数の計器用変圧器と、
前記計器用変圧器内の電気回路に通電導体を接続するための端子部を絶縁するための絶縁部材と、
前記計器用変圧器および前記絶縁部材が収納される金属製の筐体と、
を備え、
前記計器用変圧器は、前記通電導体を取り付け可能に構成され、互いに離間して設けられた第1導体支持部および第2導体支持部を含み、
前記通電導体は、前記第2導体支持部ではなく前記第1導体支持部に取り付けられており、
前記絶縁部材は、前記筐体から離間した状態で前記計器用変圧器
の前記第2導体支持部に固定されているとともに、
前記絶縁部材は、前記計器用変圧器の前記端子部と前記筐体との間に配置され前記計器用変圧器の前記端子部と前記筐体の側壁部とを絶縁するための第1部分を含む、配電盤。
【請求項2】
前記絶縁部材は、平板状に形成されているとともに、前記計器用変圧器の前記端子部間に配置され前記計器用変圧器の前記端子部間を絶縁するための第2部分と、前記第1部分および前記第2部分を接続する第3部分とをさらに含み、
前記第1部分と前記第2部分と前記第3部分とは、一体的に形成されている、請求項1に記載の配電盤。
【請求項3】
前記絶縁部材は、前記第1部分と前記第2部分と前記第3部分とにより、前記計器用変圧器の前記端子部を覆うように設けられている、請求項2に記載の配電盤。
【請求項4】
前記計器用変圧器は、3相の前記交流電力に対応するように3つ設けられ、
3つの前記計器用変圧器は、所定の方向に沿うように1列に配列されており、
前記計器用変圧器の前記端子部を覆うように設けられている前記絶縁部材は、所定の方向に沿うように1列に配列されている3つの前記計器用変圧器のうちの、両端部に配置されている前記計器用変圧器の前記端子部を覆うように2つ設けられている、請求項3に記載の配電盤。
【請求項5】
前記通電導体は、前記計器用変圧器が配列される方向と直交する方向に前記計器用変圧器から引き出されるように設けられており、
前記第1部分、前記第2部分および前記第3部分のうち少なくとも前記第1部分または前記第2部分は、前記通電導体が引き出される方向に延びるように設けられている、請求項2~4のいずれか1項に記載の配電盤。
【請求項6】
前記第1部分または前記第2部分の少なくともいずれかは、前記筐体の側壁部に対して略平行に設けられている、請求項2~5のいずれか1項に記載の配電盤。
【請求項7】
交流電力の電圧を変圧するように設けられる計器用変圧器と、
前記計器用変圧器の端子部を他部材と絶縁するための絶縁部材と、
前記計器用変圧器および前記絶縁部材が収納される金属製の筐体と、
を備え、
前記計器用変圧器は、通電導体を取り付け可能に構成され、互いに離間して設けられた第1導体支持部および第2導体支持部を含み、
前記通電導体は、前記第2導体支持部ではなく前記第1導体支持部に取り付けられており、
前記絶縁部材は、前記筐体から離間し前記計器用変圧器
の前記第2導体支持部に固定されるとともに、
前記絶縁部材は、前記計器用変圧器の前記端子部と前記筐体の側壁部との空間距離を確保するための第1部分を含む、配電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配電盤に関し、特に、複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる複数の計器用変圧器を備えた配電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる複数の計器用変圧器を備えた計器用変成器装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の計器用変成器装置では、各相毎に設けられた計器用変圧器は、一次コイルと二次コイルとから構成される環状のコイルを備えている。また、計器用変圧器では、コイルは、エポキシ樹脂でモールドされている。また、コイルの中央開口部を貫通するコアが設けられている。また、計器用変圧器には、一次コイルに接続された一次端子と、二次コイルに接続された二次端子とが設けられている。この各相(R相、S相およびT相)毎に設けられた3つの計器用変圧器は、所定の間隔で一列に配置されるとともに、床板に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1のような従来の計器用変成器装置を備えた配電盤では、小型化の要望がある。小型化を図る場合、各相毎の端子同士の間および端子と筐体との間の距離が小さくなるため、各相毎の端子同士の間(相間)と、端子と接地された筐体との間(対地間)の絶縁性を確保する必要がある。そこで、上記特許文献1のような従来の計器用変成器装置では、相間および対地間に絶縁部材を設けることが考えられる。また、絶縁部材は、絶縁部材の重量を支えるため、金属製の取付脚により筐体に取り付けられる場合がある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような従来の計器用変成器装置において、小型化を図る場合に、金属製の取付脚により絶縁部材を筐体に取り付けた場合には、各相毎の端子と、金属製の取付脚との間の距離が短くなるため、相間および対地間における絶縁性を確保するのが困難になる場合がある。この場合、相間および対地間の絶縁を確保するために、相間および対地間の距離を長くする必要があるため、計器用変成器装置(配電盤)の筐体を小型化するのが困難になるという問題点がある。
【0007】
この発明は、複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる計器用変圧器を備えた配電盤において、絶縁性を確保しながら筐体を小型化することが可能な配電盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による配電盤は、複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる複数の計器用変圧器と、計器用変圧器内の電気回路に通電導体を接続するための端子部を絶縁するための絶縁部材と、計器用変圧器および絶縁部材が収納される金属製の筐体と、を備え、計器用変圧器は、通電導体を取り付け可能に構成され、互いに離間して設けられた第1導体支持部および第2導体支持部を含み、通電導体は、第2導体支持部ではなく第1導体支持部に取り付けられており、絶縁部材は、筐体から離間した状態で計器用変圧器の第2導体支持部に固定されているとともに、絶縁部材は、計器用変圧器の端子部と筐体との間に配置され計器用変圧器の端子部と筐体の側壁部とを絶縁するための第1部分を含む。
【0009】
この発明の第1の局面による配電盤では、上記のように、絶縁部材は、筐体から離間した状態で計器用変圧器に固定されているとともに、端子部と筐体との間に配置され端子部と筐体の側壁部とを絶縁するための第1部分を含む。これにより、金属製の取付脚を用いることなく絶縁部材を固定することができるので、金属製の取付脚を用いる場合(絶縁距離が端子部と金属製の取付脚との間の距離に相当する場合)と異なり、絶縁距離(端子部と筐体との間の距離に相当)が短くなるのが抑制される。その結果、端子部と筐体との間(対地間)の距離を長くすることなく絶縁性を確保することができるので、複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる計器用変圧器を備えた配電盤において、絶縁性を確保しながら配電盤の筐体を小型化することができる。
【0010】
上記第1の局面による配電盤において、好ましくは、絶縁部材は、平板状に形成されているとともに、計器用変圧器の端子部間に配置され計器用変圧器の端子部間を絶縁するための第2部分と、第1部分および第2部分を接続する第3部分とをさらに含み、第1部分と第2部分と第3部分とは、一体的に形成されている。このように構成すれば、端子部間に配置され端子部間を絶縁するための第2部分においても、第1部分と同様に、金属製の取付脚を用いる場合と異なり、絶縁距離(端子部間の距離に相当)が短くなるのが抑制される。その結果、端子部間(相間)の距離を長くすることなく絶縁性を確保することができるので、複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる計器用変圧器を備えた配電盤において、絶縁性を確保しながら配電盤の筐体をより小型化することができる。
【0011】
また、第1部分と第2部分と第3部分とが、一体的に形成されているので、第1部分と第2部分と第3部分とを別体として構成する場合と異なり、少ない部品点数で相間および対地間における絶縁性を確保することができるとともに、絶縁部材の構成を簡略化することができる。また、第1部分と第2部分と第3部分とを一体的に形成することによって、隣り合う計器用変圧器のうちの一方に第1部分と第2部分と第3部分とが一体的に形成された絶縁部材を設ければ、隣り合う計器用変圧器の端子部同士は、この計器用変圧器のうちの一方に設けられた絶縁部材の第2部分により絶縁される。すなわち、隣り合う計器用変圧器のうちの他方に、端子部同士を絶縁するための絶縁部材を設ける必要が無いので、少ない部品点数で相間および対地間における絶縁性を確保することができるとともに、配電盤の構成を簡略化することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、絶縁部材は、第1部分と第2部分と第3部分とにより、記計器用変圧器の端子部を覆うように設けられている。このように構成すれば、端子部が第1部分と第2部分と第3部分とにより覆われるので、端子部と筐体との間(対地間)、および、端子部同士の間(相間)の絶縁をより効果的に確保することができる。
【0013】
上記絶縁部材が端子部を覆うように設けられている構成において、好ましくは、計器用変圧器は、3相の交流電力に対応するように3つ設けられ、3つの計器用変圧器は、所定の方向に沿うように1列に配列されており、計器用変圧器の端子部を覆うように設けられている絶縁部材は、所定の方向に沿うように1列に配列されている3つの計器用変圧器のうちの、両端部に配置されている計器用変圧器の端子部を覆うように2つ設けられている。このように構成すれば、3つの計器用変圧器のうちの中央部に配置されている端子部を覆わなくても、両端部の計器用変圧器に設けられる絶縁部材の第2部分により、端子部間(相間)の絶縁を確保することができる。その結果、配電盤(絶縁部材)の構成をより簡略化することができる。
【0014】
上記第1部分と第2部分と第3部分とを含む構成において、好ましくは、通電導体は、計器用変圧器が配列される方向と直交する方向に計器用変圧器から引き出されるように設けられており、第1部分、第2部分および第3部分のうち少なくとも第1部分または第2部分は、通電導体が引き出される方向に延びるように設けられている。このように構成すれば、端子部と同様に比較的高い電圧が印加される通電導体を、対地間および相間を絶縁する絶縁部材により絶縁することができる。その結果、通電導体を絶縁するための絶縁部材を別途設ける場合と異なり、配電盤(絶縁部材)の構成をさらに簡略化することができる。
【0015】
上記第1部分と第2部分と第3部分とを含む構成において、好ましくは、第1部分または第2部分の少なくともいずれかは、筐体の側壁部に対して略平行に設けられている。このように構成すれば、第1部分または第2部分の少なくともいずれかと筐体の側壁部との間の距離が一定になるので、平板状に形成された第1部分または第2部分の筐体の側壁部が延びる方向に沿った一方の端部側と他方の端部側とで、相間または対地間における絶縁距離を容易に等しくすることができる。その結果、第1部分または第2部分を、相間または対地間における絶縁性を確保するように容易に配置することができる。また、第1部分または第2部分を筐体の側壁部に対して非平行に配置する場合と異なり、上下方向の所定の絶縁範囲を最短の長さでカバーすることができる。
【0017】
この発明の第2の局面による配電盤は、交流電力の電圧を変圧するように設けられる計器用変圧器と、計器用変圧器の端子部を他部材と絶縁するための絶縁部材と、計器用変圧器および絶縁部材が収納される金属製の筐体と、を備え、計器用変圧器は、通電導体を取り付け可能に構成され、互いに離間して設けられた第1導体支持部および第2導体支持部を含み、通電導体は、第2導体支持部ではなく第1導体支持部に取り付けられており、絶縁部材は、筐体から離間し計器用変圧器の第2導体支持部に固定されるとともに、絶縁部材は、計器用変圧器の端子部から筐体の側壁部までの空間距離を確保するための第1部分を含む。
【0018】
この発明の第2の局面による配電盤では、上記のように、絶縁部材は、筐体から離間し計器用変圧器に固定されるとともに、端子部と筐体の側壁部との空間距離を確保するための第1部分を含む。これにより、金属製の取付脚を用いることなく絶縁部材を固定することができるので、金属製の取付脚を用いる場合(絶縁距離が端子部と金属製の取付脚との間の距離に相当する場合)と異なり、端子部と筐体の側壁部との空間距離を確保し易くなるので、絶縁距離(端子部と筐体との間の距離に相当)が短くなるのが抑制される。その結果、端子部と筐体との間(対地間)の距離を長くすることなく絶縁性を確保することができるので、複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる計器用変圧器を備えた配電盤において、絶縁性を確保しながら配電盤の筐体を小型化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる計器用変圧器を備えた配電盤において、絶縁性を確保しながら筐体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態による配電盤の全体構成を示す側面図である。(b)は、本発明の一実施形態による配電盤の全体構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による配電盤における計器用変圧器の構成を示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による配電盤における計器用変圧器の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
[本実施形態]
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態による配電盤100の全体構成について説明する。なお、配電盤100は、たとえば、高圧受変電設備として内部に電気機器等が収納される金属閉鎖型配電盤である。
【0023】
(配電盤の構成)
図1(a)に示すように、配電盤100は、筐体10と、遮断器20と、計器用変流器30と、接地用開閉器40と、計器用変圧器50と、を備えている。
【0024】
筐体10は、金属製であり、内部に収納される電気機器等を保護するため、接地されている。筐体10の内部には、遮断器20と、計器用変流器30と、接地用開閉器40と、計器用変圧器50と、後述する絶縁カバー70とが収納されている。遮断器20、計器用変流器30、接地用開閉器40および計器用変圧器50は、この順に通電導体60により接続されており、筐体10の内部において、電力回路が形成されている。
【0025】
遮断器20は、電力回路で事故が発生した場合等に上流側からの電流を遮断するための機器である。計器用変流器30は、電力回路の電流を、大電流から計器類等において扱いやすい小電流に変換するための機器である。接地用開閉器40は、遮断器20により上流側とが遮断された状態で、遮断器20から下流の電力回路(計器用変流器30、計器用変圧器50等の電気機器)を接地させるための機器である。計器用変圧器50は、電力回路の電圧を、高電圧から計器類等において扱い易い低電圧に変換するための機器である。
【0026】
なお、配電盤100では、筐体10の内部に収納される電気機器は、3相(R相、S相およびT相)の交流電力に対応するように構成されている。たとえば、
図1(b)に示すように、計器用変圧器50は、3相の交流電力に対応するように3つ(計器用変圧器51、52および53)設けられている。すなわち、計器用変圧器50は、3相の交流電力の電圧を変圧するように、3相の各相毎に設けられている。また、本実施形態では、計器用変圧器50(計器用変圧器51、52および53)内の電気回路に通電導体60を接続するための導体接続端子部50dを絶縁するための絶縁カバー70が設けられている。なお、導体接続端子部50dは、特許請求の範囲の「端子部」の一例である。また、絶縁カバー70は、特許請求の範囲の「絶縁部材」の一例である。
【0027】
(計器用変圧器および絶縁部材の構成)
次に、
図2および
図3を参照して、計器用変圧器50および絶縁カバー70の構成について説明する。
【0028】
3つの計器用変圧器50(51、52、53)は、
図2に示すように、筐体10の左右方向(X方向)に沿うように一列に配置されている。具体的には、計器用変圧器51、52および53が、この順に、筐体10の左側から右側に一列に並んで配置されている。なお、本明細書では、筐体10の左右方向、前後方向および上下方向を、それぞれ、X方向、Y方向およびZ方向とする。また、筐体10の左方向、右方向、上方向、下方向、前方向および後方向を、それぞれ、X1方向、X2方向、Y1方向、Y2方向、Z1方向およびZ2方向とする。
【0029】
図2および
図3に示すように、計器用変圧器50(51、52、53)は、本体部50aと、突出部50bと、突出部50cと、を備えている。なお、突出部50cは、特許請求の範囲の「導体支持部」の一例である。
【0030】
本体部50aは、筐体10の床面10aに設置されている。突出部50bおよび50cは、
図3に示すように、それぞれ、X方向から見て、本体部50aから上方(Z1側)に突出するように配置されている。また、突出部50bおよび50cは、それぞれ、X方向から見て、Y方向に沿って互いに隣り合うように配置されている。なお、突出部50bは、筐体10の後方側(Y2側)に配置され、突出部50cは、筐体10の前方側(Y1側)に配置されている。
【0031】
導体接続端子部50dは、突出部50bの上端部に配置されている。また、導体接続端子部50dには、3相の各相毎に対応するように、通電導体60が接続されている。具体的には、
図3に示すように、突出部50bの上端部には、ボルト80を嵌め込むためのボルト穴形状を有する導体接続端子部50dが設けられている。配電盤100では、通電導体60は、平板状に形成され、かつ、ボルト穴(図示しない)が形成された先端部60aを有する。そして、先端部60aを突出部50bの上端部に載置させた上で、ボルト80を先端部60aに形成されたボルト穴を介して突出部50bの導体接続端子部50dに螺合させるにより、通電導体60が導体接続端子部50dに固定される。なお、導体接続端子部50dは、計器用変圧器50内の電気回路と接続された端子として構成されている。計器用変圧器51、52および53の各々の導体接続端子部50dには、それぞれ、通電導体61、62および63が接続されている。なお、配電盤100では、導体接続端子部50dに接続される通電導体60は、計器用変圧器50に対して筐体10の後方側(Y2方向側)に引き出されている。
【0032】
ここで、本実施形態では、2つの絶縁カバー71および73は、それぞれ、筐体10から離間した状態で計器用変圧器51および53に固定されている。また、絶縁カバー71および73は、平板状に形成されている。そして、絶縁カバー71および73は、それぞれ、導体接続端子部50dと筐体10との間に配置され導体接続端子部50dと筐体10の側壁部10bとを絶縁するための対地間絶縁用部分70aを含む。さらに、本実施形態では、導体接続端子部50d間に配置され導体接続端子部50d間を絶縁するための相間絶縁用部分70bと、対地間絶縁用部分70aおよび相間絶縁用部分70bを接続する接続用部分70cを含む。なお、対地間絶縁用部分70a、相間絶縁用部分70bおよび接続用部分70cは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1部分」、「第2部分」および「第3部分」の一例である。
【0033】
また、本実施形態では、対地間絶縁用部分70aは、導体接続端子部50dと筐体10の側壁部10bとを絶縁するために、導体接続端子部50dと筐体10の側壁部10bとの間の空間距離を確保するように構成されている。具体的には、対地間絶縁用部分70aは、
図2に示すように、導体接続端子部50dと側壁部10bとを結ぶ最短距離を阻むように、側壁部10bに対して略平行に設けられている。
【0034】
また、2つの絶縁カバー70(71、73)は、
図2および
図3に示すように、絶縁カバー70を突出部50cに固定するための固定用部分70dを含む。なお、接続用部分70cと固定用部分70dとは、段差状に(互いの高さ位置が異なるように)設けられている。
【0035】
具体的には、
図2に示すように、絶縁カバー71の対地間絶縁用部分70aは、Y方向から見て、計器用変圧器51の導体接続端子部50dと筐体10のX1側(左側)の側壁部10bとの間に配置されている。また、絶縁カバー73の対地間絶縁用部分70aは、Y方向から見て、計器用変圧器53の導体接続端子部50dと筐体10のX2側(右側)の側壁部10bとの間に配置されている。これにより、導体接続端子部50dと筐体10の側壁部10bとの間を絶縁することが可能である。
【0036】
また、
図2に示すように、絶縁カバー71の相間絶縁用部分70bは、Y方向から見て、計器用変圧器51の導体接続端子部50dと、計器用変圧器52の導体接続端子部50dとの間に配置されている。また、絶縁カバー73の相間絶縁用部分70bは、Y方向から見て、計器用変圧器52の導体接続端子部50dと、計器用変圧器53の導体接続端子部50dとの間に配置されている。これにより、計器用変圧器51~53の各々の導体接続端子部50d同士の間を絶縁することが可能である。
【0037】
また、本実施形態では、対地間絶縁用部分70aと相間絶縁用部分70bと接続用部分70cとは一体的に形成されている。そして、本実施形態では、絶縁カバー70は、対地間絶縁用部分70aと相間絶縁用部分70bと接続用部分70cとにより、導体接続端子部50dを覆うように設けられている。より詳細には、絶縁カバー70(71、73)は、X方向に沿うように1列に配列されている3つの計器用変圧器50のうちの、両端部に配置されている計器用変圧器51および53のそれぞれの導体接続端子部50dを覆うように2つ設けられている。また、2つの絶縁カバー70(71、73)は、箱形状を有する。
【0038】
具体的には、
図2に示すように、導体接続端子部50dの両側にそれぞれ配置される対地間絶縁用部分70aおよび相間絶縁用部分70bは、Y方向から見て、上下方向(Z方向)に延びるように配置されている。すなわち、本実施形態では、対地間絶縁用部分70aおよび相間絶縁用部分70bは、Y方向から見て、側壁部10bに対して略平行に設けられている。そして、接続用部分70cは、Y方向から見て、対地間絶縁用部分70aの上側(Z1側)の端部と、相間絶縁用部分70bの上側(Z1側)の端部とを接続するように、左右方向(X方向)に延びるように配置されている。また、
図3に示すように、本実施形態では、対地間絶縁用部分70a、相間絶縁用部分70bおよび接続用部分70cは、通電導体60が引き出される方向であるY方向に延びるように構成されている。その結果、導体接続端子部50dは、絶縁カバー71(73)の一体的に形成された対地間絶縁用部分70a、相間絶縁用部分70bおよび接続用部分70cにより、左側(X1側)、右側(X2側)、上側(Z1側)が覆われている。
【0039】
また、本実施形態では、上記のように、絶縁カバー70は、筐体10から離間した状態で計器用変圧器50に固定されている。詳細には、本実施形態では、計器用変圧器50は、通電導体60を取り付け可能に構成されている突出部50cを含む。そして、絶縁カバー70の固定用部分70dが突出部50cに取り付けられることにより、絶縁カバー70は、計器用変圧器50に固定されるように構成されている。
【0040】
具体的には、
図3に示すように、突出部50bに設けられた導体接続端子部50dと同様の構成の導体接続端子部50dが突出部50cにも設けられている。これにより、固定用部分70dを突出部50cに接触させた状態で、ボルト80を導体接続端子部50dに螺合させることにより、固定用部分70dが突出部50cに固定される。その結果、絶縁カバー70は、筐体10に取り付けられることなく、筐体10から離間した状態で計器用変圧器50に固定される。
【0041】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0042】
本実施形態では、上記のように、絶縁カバー70を、筐体10から離間した状態で計器用変圧器50に固定させているとともに、導体接続端子部50dと筐体10との間に配置され導体接続端子部50dと筐体10の側壁部10bとを絶縁するための対地間絶縁用部分70aを含むように構成する。これにより、金属製の取付脚を用いることなく絶縁カバー70を固定することができるので、金属製の取付脚を用いる場合(絶縁距離が導体接続端子部50dと金属製の取付脚との間の距離に相当する場合)と異なり、絶縁距離(導体接続端子部50dと筐体10との間の距離に相当)が短くなるのが抑制される。その結果、導体接続端子部50dと筐体10との間(対地間)の距離を長くすることなく絶縁性を確保することができるので、複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる計器用変圧器50を備えた配電盤100において、絶縁性を確保しながら配電盤100の筐体10を小型化するのを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、絶縁カバー70を、平板状に形成させているとともに、導体接続端子部50d間に配置され導体接続端子部50d間を絶縁するための相間絶縁用部分70bと、対地間絶縁用部分70aおよび相間絶縁用部分70bを接続する接続用部分70cとを含み、対地間絶縁用部分70aと相間絶縁用部分70bと接続用部分70cとは、一体的に形成させている。これにより、導体接続端子部50d間に配置され導体接続端子部50d間を絶縁するための相間絶縁用部分70bにおいても、対地間絶縁用部分70aと同様に、金属製の取付脚を用いる場合と異なり、絶縁距離(導体接続端子部50d間の距離に相当)が短くなるのが抑制される。その結果、導体接続端子部50d間(相間)の距離を長くすることなく絶縁性を確保することができるので、複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる計器用変圧器50を備えた配電盤100において、絶縁性を確保しながら配電盤100の筐体10をより小型化することができる。
【0044】
また、対地間絶縁用部分70aと相間絶縁用部分70bと接続用部分70cとが、一体的に形成されているので、対地間絶縁用部分70aと相間絶縁用部分70bと接続用部分70cとを別体として構成する場合と異なり、少ない部品点数で相間および対地間における絶縁性を確保することができるとともに、絶縁カバー70の構成を簡略化することができる。また、対地間絶縁用部分70aと相間絶縁用部分70bと接続用部分70cとを一体的に形成することによって、隣り合う計器用変圧器50のうちの一方に対地間絶縁用部分70aと相間絶縁用部分70bと接続用部分70cとが一体的に形成された絶縁カバー70を設ければ、隣り合う計器用変圧器50の導体接続端子部50d同士は、この計器用変圧器50のうちの一方に設けられた絶縁カバー70の相間絶縁用部分70bにより絶縁される。すなわち、隣り合う計器用変圧器50のうちの他方に、導体接続端子部50d同士を絶縁するための絶縁カバー70を設ける必要が無いので、少ない部品点数で相間および対地間における絶縁性を確保することができるとともに、配電盤100の構成を簡略化することができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、絶縁カバー70を、対地間絶縁用部分70aと相間絶縁用部分70bと接続用部分70cとにより、導体接続端子部50dを覆うように設けている。これにより、導体接続端子部50dが対地間絶縁用部分70aと相間絶縁用部分70bと接続用部分70cとにより覆われるので、導体接続端子部50dと筐体10との間(対地間)、および、導体接続端子部50d同士の間(相間)の絶縁をより効果的に確保することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、計器用変圧器50を、3相の交流電力に対応するように3つ設け、3つの計器用変圧器50(51、52、53)を、所定の方向(X方向)に沿うように1列に配列させており、導体接続端子部50dを覆うように設けられている絶縁カバー70を、所定の方向(X方向)に沿うように1列に配列されている3つの計器用変圧器50(51、52、53)のうちの、両端部に配置されている計器用変圧器51の導体接続端子部50dおよび計器用変圧器53の導体接続端子部50dを覆うように2つ設けている。これにより、3つの計器用変圧器50(51、52、53)のうちの中央部に配置されている計器用変圧器52の導体接続端子部50dを覆わなくても、両端部の計器用変圧器51および53に設けられる絶縁カバー70の相間絶縁用部分70bにより、導体接続端子部50d間(相間)の絶縁を確保することができる。その結果、配電盤100(絶縁カバー70)の構成をより簡略化することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、通電導体60を、計器用変圧器50が配列される方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に計器用変圧器50から引き出されるように設けており、対地間絶縁用部分70aおよび相間絶縁用部分70bを、通電導体60が引き出される方向(Y方向)に延びるように設けている。これにより、導体接続端子部50dと同様に比較的高い電圧が印加される通電導体60を、対地間および相間を絶縁する絶縁カバー70により絶縁することができる。その結果、通電導体60を絶縁するための絶縁カバー70を別途設ける場合と異なり、配電盤100(絶縁カバー70)の構成をさらに簡略化することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、対地間絶縁用部分70aおよび相間絶縁用部分70bを、筐体10の側壁部10bに対して略平行に設けている。これにより、対地間絶縁用部分70aおよび相間絶縁用部分70bと筐体10の側壁部10bとの間の距離が一定になるので、平板状に形成された対地間絶縁用部分70aおよび相間絶縁用部分70bの筐体10の側壁部10bが延びる方向(Z方向)に沿った一方の端部側と他方の端部側とで、相間および対地間における絶縁距離を容易に等しくすることができる。その結果、対地間絶縁用部分70aおよび相間絶縁用部分70bを、相間および対地間における絶縁性を確保するように容易に配置することができる。また、対地間絶縁用部分70aおよび相間絶縁用部分70bを筐体10の側壁部10bに対して非平行に配置する場合と異なり、上下方向(Z方向)の所定の絶縁範囲を最短の長さでカバーすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、計器用変圧器50を、通電導体60を取り付け可能に構成されている突出部50cを含むように構成させ、絶縁カバー70が、突出部50cに取り付けられることにより計器用変圧器50に固定されるように構成させている。これにより、予め計器用変圧器50に設けられている突出部50cを用いて絶縁カバー70を取り付けることができるので、絶縁カバー70を取り付けるための部材を別途設けることなく絶縁カバー70を取り付けることができる。その結果、計器用変圧器50の構成が複雑になるのを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、絶縁カバー70を、筐体10から離間し計器用変圧器50に固定されるとともに、導体接続端子部50dと筐体10の側壁部10bとの空間距離を確保するための対地間絶縁用部分70aを含むように構成する。これにより、金属製の取付脚を用いることなく絶縁カバー70を固定することができるので、金属製の取付脚を用いる場合(絶縁距離が端子部と金属製の取付脚との間の距離に相当する場合)と異なり、導体接続端子部50dと筐体10の側壁部10bとの空間距離を確保し易くなるので、絶縁距離(導体接続端子部50dと筐体10との間の距離に相当)が短くなるのが抑制される。その結果、導体接続端子部50dと筐体10との間(対地間)の距離を長くすることなく絶縁性を確保することができるので、複数相の交流電力の電圧を変圧するように、各相毎に設けられる計器用変圧器50を備えた配電盤100において、絶縁性を確保しながら配電盤100の筐体10を小型化することができる。
【0051】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0052】
たとえば、上記実施形態では、対地間絶縁用部分70aおよび相間絶縁用部分70bを、筐体10の側壁部10bに対して略平行に設けるように構成させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、対地間絶縁用部分または相間絶縁用部分のいずれかのみを、筐体の側壁部に対して略平行に設けるように構成してもよい。また、対地間絶縁用部分および相間絶縁用部分を、筐体の側壁部に対して略平行に設けないように構成してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、絶縁カバー70において、接続用部分70cと固定用部分70dとが段差状に(高さ位置が互いに異なるように)設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、接続用部分と固定用部分との高さ位置が同一であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、接続用部分70cが導体接続端子部50dの上方を覆うように設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接続用部分は、対地間絶縁用部分と相間絶縁用部分とを接続していればよく、接続用部分が導体接続端子部を覆わないように構成してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、絶縁カバー70を、平板状に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、対地間または相間の絶縁することが可能であれば、絶縁カバー70が、平板状以外の形状によって形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 筐体
10b (筐体の)側壁部
50(51、52、53) 計器用変圧器
50c 突出部(導体支持部)
50d 導体接続端子部(端子部)
60(61、62、63) 通電導体
70(71、73) 絶縁カバー(絶縁部材)
70a 対地間絶縁用部分(第1部分)
70b 相間絶縁用部分(第2部分)
70c 接続用部分(第3部分)
100 配電盤