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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】浴槽
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/02 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
A47K3/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018060618
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019170532
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】小谷 麻美子
(72)【発明者】
【氏名】中村 遼太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智久
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-072192(JP,U)
【文献】特開2010-284398(JP,A)
【文献】特開2008-154886(JP,A)
【文献】特開2006-238942(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02473638(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00、3/02
A61H 33/00
日本意匠分類 D5-311
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴者が入浴可能な浴槽であって、
傾斜した背側面部と、前記背側面部と向かい合う面である脚側面部と、を備え、
前記脚側面部は、その左右方向において中央側が左右側より凸状に突出するように湾曲形成された凸部と、前記凸部より下方において、前記背側面部へ向かって前記凸部より突出するように形成されたフットレスト部とを有し、
前記凸部は、上方に向かうにつれ左右方向の領域が小さくなるように形成され、
前記凸部は、前記フットレスト部の上面から連続するように形成され、
前記フットレスト部の前記背側面部と向かい合う内壁は、その左右方向において凹状に湾曲形成された凹部を有することを特徴とする浴槽。
【請求項2】
前記凸部は、上方に向かうにつれ前記背側面部から離れる方向へ傾斜するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の浴槽。
【請求項3】
前記凸部は、上方に向かうにつれ徐々に曲率が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽。
【請求項4】
前記脚側面部において、前記凸部より上方に位置する浴槽内壁は、左右方向において直線状もしくは凹状に形成されていることを特徴とする請求項記載の浴槽。
【請求項5】
前記凸部は、前記脚側面部における前記凹部より上部の、左右方向における中央部分に形成されており、
前記凹部は、前記フットレスト部の前記内壁の、左右方向において前記凸部より左右端部側に形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の浴槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜している背当て部を備え、入浴者が背当て部に背中を当接させることで仰向けで寝るような体勢で入浴(寝浴)できるように形状を工夫した浴槽が知られている。このような浴槽においては、入浴者が仰向けになるように上体を倒した状態で入浴できるため、入浴時におけるリラクゼーション効果を高めることができる。このような浴槽において、背当て部の傾斜に沿って状態が下方へ落ち込み、入浴者の顔が水面より下へ沈んでしまうことを抑制するために、入浴者は、浴槽の背当て部と対面する面である脚当て部に足の裏を当て、この沈み込みを抑制することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-216076号公報
【文献】特開2010-253066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、一般的に男性は女性と比べ背が高いので、膝を曲げて脚当て部に足の裏を当てることになる。この際、男性の筋骨格構造上、足裏の当て方によってどうしても下半身に負荷がかかり、本来目的としていた入浴時におけるリラクゼーション効果が損なわれてしまうといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、入浴者が背当て部に背中を当接させることで仰向けで寝るような体勢において、脚に負荷をかけることなく足裏を脚側面部に接触させることができる浴槽を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の浴槽は、入浴者が入浴可能な浴槽であって、傾斜した背側面部と、前記背側面部と向かい合う面である脚側面部と、を備え、前記脚側面部は、その左右方向において中央側が左右側より凸状に突出するように湾曲形成された凸部を有することを特徴とする。
第1の発明によれば、男性は膝を曲げると脚が「O脚」状になりやすいことに着目し、一般的に背丈の高い男性が寝浴状態において足の裏を当てるための脚側面部を凸状に形成することで、寝浴状態の男性の脚が「O脚」状となった状態でも、脚に負荷をかけることなく足裏を脚側面部に接触させやすくできる。
第2の発明は、第1の発明において、前記凸部は、上方に向かうにつれ左右方向の領域が小さくなるように形成されていることを特徴とする。
第2の発明によれば、脚が「O脚」状となった状態で足裏を凸状領域に接触させた際にも、足首が足の脛側へ大きく曲がってしまうことを抑制でき、男性の足首にかかる負担を小さくできる。
第3の発明は、第1の発明において、前記凸部は、上方に向かうにつれ前記背側面部から離れる方向へ傾斜するように形成されていることを特徴とする。
第3の発明によれば、脚が「O脚」状となった状態で足裏を凸状領域に接触させた際にも、足首が足の脛側へ大きく曲がってしまうことを抑制でき、男性の足首にかかる負担を小さくできる。
第4の発明は、第1~第3の発明のいずれか1つにおいて、前記凸部は、上方に向かうにつれ徐々に曲率が小さくなるように形成されていることを特徴とする。
第4の発明によれば、仮に入浴者が脚側面部側に背中を当てて入浴してしまった際にも、腰より上方にある背中部分に対して浴槽内壁が点状に当接してしまうことを抑制でき、快適に入浴できる。したがって、男性入浴者の足首にかかる負担を小さくできつつも、入浴者が脚側面部側に背中を当てて入浴してしまった際の入浴快適性も保持することができる。
第5の発明は、第4の発明において、前記脚側面部において、前記凸部より上方に位置する浴槽内壁は、左右方向において直線状もしくは凹状に形成されていることを特徴とする。
第5の発明によれば、仮に入浴者が脚側面部側に背中を当てて入浴してしまった際にも、腰より上方にある背中部分に対して浴槽内壁が点状に当接してしまうことを抑制でき、快適に入浴できる。したがって、男性入浴者の足首にかかる負担を小さくできつつも、入浴者が脚側面部側に背中を当てて入浴してしまった際の入浴快適性も保持することができる。
第6の発明は、第1~第5の発明のいずれか1つにおいて、前記脚側面部は、前記凸部より下方において、前記背側面部へ向かって前記凸部より突出するように形成されたフットレスト部をさらに有し、前記フットレスト部の前記背側面部と向かい合う内壁は、その左右方向において凹状に湾曲形成された凹部を有することを特徴とする。
第6の発明によれば、女性は膝を曲げると脚が「X脚」状になりやすいことに着目し、一般的に背丈の低い女性が寝浴状態において足の裏を当てるためのフットレスト部の内壁を凹状に形成することで、脚に負荷をかけることなく、女性の脚が「X脚」状となった状態での足裏を接触させやすくできる。
第7の発明は、第6の発明において、前記凸部は、前記脚側面部における前記凹部より上部の、左右方向における中央部分に形成されており、前記凹部は、前記フットレスト部の前記内壁の、左右方向において前記凸部より左右端部側に形成されていることを特徴とする。
男性が膝を曲げた際には、脚が「O脚」状となるため、左右の足のかかと同士が近づき、足裏は脚側面部の左右方向において中央近傍に配置される。一方、女性が膝を曲げた際には、脚が「X脚」状となるため、左右の足のかかと同士が離れ、足裏は脚側面部の左右方向において左右端近傍に配置される。
第7の発明によれば、凸部を脚側面部における左右方向の中央部分に形成し、且つ凹部をフットレスト部の左右方向において凸部より左右端部側に形成することで、男女共に自然な体勢で、足裏を脚側面部に接触させやすくできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、入浴者が背当て部に背中を当接させることで仰向けで寝るような体勢で入浴(寝浴)したときの高いリラクゼーション効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る浴槽の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る浴槽の横断面図。
図3】本発明の実施形態に係る浴槽の脚側面部の正面図。
図4図3におけるA-A断面図。
図5】(a)及び(b)は、本発明の実施形態に係る浴槽の長手方向に沿った断面図。
図6】(a)は、寝浴状態の男性が足裏を脚側面部の上段側の内壁に接触させた様子を表す模式平面図であり、(b)は、寝浴状態の女性が足裏を脚側面部の下段側のフットレスト部の内壁に接触させた様子を表す模式平面図。
図7図4と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る浴槽1の斜視図である。
図2は、水平面に沿った浴槽1の横断面図である。図2は、例えば底面からの高さが250mmの位置での横断面図である。
【0011】
浴槽1は、底面部10と、背側面部20と、脚側面部30と、2つの側面部50とを有する。背側面部20と脚側面部30とは互いに向かい合っている。2つの側面部50は、互いに向かい合い、底面部10、背側面部20、および脚側面部30に隣接している。
【0012】
背側面部20と脚側面部30との間の距離は、2つの側面部50の間の距離より長い。2つの側面部50が延びる方向を浴槽1の長手方向とする。背側面部20および脚側面部30が延びる方向を浴槽の左右方向とする。
【0013】
図3は、脚側面部30の正面図である。
図4は、図3におけるA-A断面図である。
図5(a)及び(b)は、浴槽1の長手方向に沿った断面図である。図5(a)は浴槽1に男性101が入浴した様子を表し、図5(b)は浴槽1に女性102が入浴した様子を表す。
【0014】
図5(a)及び(b)に示すように、背側面部20は、脚側面部30から離れる方向に傾斜している。
【0015】
図2図4に示すように、脚側面部30は、凸部31を有する。図3において凸部31の領域をクロスハッチングで示す。
【0016】
図2に示すように、凸部31は、左右方向において中央側が左右側より背側面部20に向かって凸状に突出するよう湾曲形成されている。
【0017】
図3に示すように、凸部31は、上方に向かうにつれ左右方向の領域が小さくなるように形成されている。
【0018】
図4に示すように、凸部31は、上方に向かうにつれ背側面部20から離れる方向へ傾斜するように形成されている。その傾斜した部分は例えば湾曲しており、凸部31は上方に向かうにつれ徐々に曲率が小さくなるように形成されている。
【0019】
脚側面部30において、凸部31より上方に位置する浴槽内壁は、左右方向において直線状もしくは凹状に形成されている。図1に示す例では、凸部31より上方に位置する浴槽内壁は、左右方向において凹状に形成されている。
【0020】
図2図4に示すように、脚側面部30は、凸部31より下方において、背側面部20へ向かって凸部31より突出するように形成されたフットレスト部40をさらに有する。すなわち、脚側面部30と底面部10との間にステップが形成されている。
【0021】
フットレスト部40の背側面部20と向かい合う内壁は、図2に示すように、その左右方向において凹状に湾曲形成された凹部41を有する。また、凹部41は、図4に示すように、上下方向においても凹状に湾曲している。
【0022】
凸部31は、脚側面部30における凹部41より上部の、左右方向における中央部分に形成されている。図2に示すように、凹部41は、フットレスト部40の内壁の、左右方向において凸部31より左右端部側にも形成されている。すなわち、凹部41が形成された領域は、凸部31が形成された領域よりも左右方向に広がっている。
【0023】
凸部31の曲率は、凹部41の曲率より小さい。凹部41の左右方向の中央における高さ(上下方向の寸法)は、凸部31の左右方向の中央におけるフットレスト部40上面からの高さ(上下方向の寸法)より大きい。
【0024】
図5(a)及び(b)に示すように、入浴者101、102は、傾斜した背側面部20に背中を当てることで仰向けで寝るような体勢で入浴(寝浴)することができる。この体勢において、入浴者101、102は足裏を脚側面部30に当てることで、顔が水面より下へ沈み込んでしまうことを抑制する。
【0025】
一般的に女性よりも背丈の高いまたは脚が長い男性101は、図5(a)に示すように、足裏を脚側面部30の上段側の内壁に接触させることになり、男性よりも背丈の低いまたは脚が短い女性102は、図5(b)に示すように、足裏を脚側面部30の下段側のフットレスト部40に接触させることになる。男性101も女性102も膝を曲げて、足裏を脚側面部30に接触させる。
【0026】
図6(a)は、寝浴状態の男性101が足裏を脚側面部30の上段側の内壁に接触させた様子を表す模式平面図であり、図6(b)は、寝浴状態の女性102が足裏を脚側面部30の下段側のフットレスト部40の内壁に接触させた様子を表す模式平面図である。
【0027】
出願人は、男性101は膝を曲げると筋骨格上、図6(a)に示すように、「O脚」状になりやすいという点に着目した。そこで、実施形態によれば、一般的に背丈の高い男性101が寝浴状態において足の裏を当てるための脚側面部30を凸状に形成することで、寝浴状態の男性101の脚が「O脚」状となった状態でも、脚に負荷をかけることなく足裏を脚側面部30に接触させやすくできる。
【0028】
すなわち、脚が「O脚」状となった状態においては、左右の足(足首より先の部分)が「ハ」の字状に開き、凹形状の土踏まずの部分に凸部31をあてがうように、足裏を凸部31の湾曲形状に沿わせて脚側面部30に当てることができる。入浴者(男性)101は、「O脚」状となった状態において必要以上に足首を折り曲げなくて済み、自然な(楽な)体勢をとることが可能となる。
【0029】
図3に示すように、凸部31は、上方に向かうにつれ左右方向の領域が小さくなるように形成されているので、脚が「O脚」状となった状態で足裏を凸状領域に接触させた際にも、足の指側の部分が凸部31に押し返されずに、足首が足の脛側へ大きく曲がってしまうことを抑制でき、男性101の足首にかかる負担を小さくできる。
【0030】
図4に示すように、凸部31は、上方に向かうにつれ背側面部20から離れる方向へ傾斜するように形成されている。このことによっても、脚が「O脚」状となった状態で足裏を凸状領域に接触させた際にも、足の指側の部分が凸部31に押し返されずに、足首が足の脛側へ大きく曲がってしまうことを抑制でき、男性101の足首にかかる負担を小さくできる。
【0031】
図7は、図4と同様の脚側面部30の断面図であり、入浴者100が脚側面部30側に背中を当てて入浴してしまった様子を表す。
【0032】
凸部31は上方に向かうにつれ徐々に曲率が小さくなるように形成されているため、図7に示すように仮に入浴者100が脚側面部30側に背中を当てて入浴してしまった際にも、腰より上方にある背中部分に対して浴槽内壁が点状に当接してしまうことを抑制でき、快適に入浴できる。したがって、男性入浴者の足首にかかる負担を小さくできつつも、入浴者100が脚側面部30側に背中を当てて入浴してしまった際の入浴快適性も保持することができる。
【0033】
脚側面部30において、凸部31より上方に位置する浴槽内壁は左右方向において直線状もしくは凹状に形成されている(図1には凹状に湾曲した例を示す)。このことによっても、図7に示すように仮に入浴者100が脚側面部30側に背中を当てて入浴してしまった際にも、腰より上方にある背中部分に対して浴槽内壁が点状に当接してしまうことを抑制でき、快適に入浴できる。したがって、男性入浴者の足首にかかる負担を小さくできつつも、入浴者100が脚側面部30側に背中を当てて入浴してしまった際の入浴快適性も保持することができる。
【0034】
また、出願人は、図6(b)に示すように、女性102は膝を曲げると筋骨格上「X脚」状になりやすいという点に着目した。そこで実施形態によれば、一般的に背丈の低い女性102が寝浴状態において足の裏を当てるためのフットレスト部40の内壁を凹状に形成することで、脚に負荷をかけることなく、女性の脚が「X脚」状となった状態での足裏を接触させやすくできる。
【0035】
男性101が膝を曲げた際には、脚が「O脚」状となるため、左右の足のかかと同士が近づき、足裏は脚側面部30の左右方向において中央近傍に配置される。一方、女性102が膝を曲げた際には、脚が「X脚」状となるため、左右の足のかかと同士が離れ、足裏は脚側面部30のフットレスト部40の左右方向において左右端近傍に配置される。
【0036】
したがって、凸部31を脚側面部30の上段における左右方向の中央部分に形成し、且つ凹部41を脚側面部30の下段のフットレスト部40の左右方向において凸部31より左右端部側に形成することで、男女共に自然な体勢で、足裏を脚側面部30に接触させやすくできる。
【0037】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…浴槽、10…底面部、20…背側面部、30…脚側面部、31…凸部、40…フットレスト部、41…凹部、50…側面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7