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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20220628BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B60C11/03 100B
B60C11/12 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018074059
(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2019182146
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】兼松 義明
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-071282(JP,A)
【文献】特開2000-142035(JP,A)
【文献】特開2013-189131(JP,A)
【文献】特開2008-222158(JP,A)
【文献】特開2011-105180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に延びる第1エッジと、タイヤ周方向に延びる第2エッジとで区分された踏面を有する陸部を含み、
前記陸部には、
前記第1エッジから前記第2エッジに延びるロングサイプと、
前記第1エッジ又は前記第2エッジから延び、かつ、前記陸部のタイヤ軸方向の中心位置を越えて前記陸部内で途切れるミドルサイプと、
前記第1エッジ又は前記第2エッジから延び、かつ、前記中心位置を越えずに前記陸部内で途切れるショートサイプとが設けられており、
前記ミドルサイプは、前記第1エッジから延びる第1ミドルサイプを含み、前記ショートサイプは、前記第2エッジから延びる第2ショートサイプを含み、
前記ミドルサイプは、前記第2エッジから延びる第2ミドルサイプを含み、前記ショートサイプは、前記第1エッジから延びる第1ショートサイプを含み、
前記陸部には、前記第1ミドルサイプの途切れ端と前記第2ミドルサイプの途切れ端とをつなぐ浅溝が設けられている、
タイヤ。
【請求項2】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に延びる第1エッジと、タイヤ周方向に延びる第2エッジとで区分された踏面を有する陸部を含み、
前記陸部には、
前記第1エッジから前記第2エッジに延びるロングサイプと、
前記第1エッジ又は前記第2エッジから延び、かつ、前記陸部のタイヤ軸方向の中心位置を越えて前記陸部内で途切れるミドルサイプと、
前記第1エッジ又は前記第2エッジから延び、かつ、前記中心位置を越えずに前記陸部内で途切れるショートサイプとが設けられており、
前記ロングサイプは、浅底部と、前記浅底部よりも大きい深さを有する深底部とを含む、タイヤ。
【請求項3】
前記陸部には、前記浅底部が設けられているタイヤ軸方向の位置が異なる複数種類の前記ロングサイプが設けられている、請求項2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記深底部は、前記中心位置を横切っている、請求項2又は3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ショートサイプは、前記ミドルサイプの延長線の上又は前記延長線に対して±2mmのずれを伴って配置されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ロングサイプ、前記ミドルサイプ及び前記ショートサイプは、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している、請求項1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記陸部には、同じ種類のサイプがタイヤ周方向に連続して配置されていない、請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸部にサイプを有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷雪上での走行性能を高めるために、陸部にサイプが設けられたタイヤが種々提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のタイヤの様に、陸部に、その全幅を横切って延びる横サイプが複数設けられている場合、陸部の剛性が著しく低下し、ドライ路面での満足のゆく操縦安定性が得られない傾向がある。一方、各サイプの長さを小さくした場合、氷雪上で十分な摩擦力が得られない傾向がある。このため、ドライ路面での操縦安定性と氷雪上性能との両立について、従来から改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-144763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題に鑑み案出されたもので、ドライ路面での操縦安定性と氷雪上性能とを両立し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に延びる第1エッジと、タイヤ周方向に延びる第2エッジとで区分された踏面を有する陸部を含み、前記陸部には、前記第1エッジから前記第2エッジに延びるロングサイプと、前記第1エッジ又は前記第2エッジから延び、かつ、前記陸部のタイヤ軸方向の中心位置を越えて前記陸部内で途切れるミドルサイプと、前記第1エッジ又は前記第2エッジから延び、かつ、前記中心位置を越えずに前記陸部内で途切れるショートサイプとが設けられている。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドルサイプは、前記第1エッジから延びる第1ミドルサイプを含み、前記ショートサイプは、前記第2エッジから延びる第2ショートサイプを含むのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記ショートサイプは、前記ミドルサイプの延長線の上又は前記延長線に対して±2mmのずれを伴って配置されているのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記ロングサイプは、浅底部と、前記浅底部よりも大きい深さを有する深底部とを含むのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記陸部には、前記浅底部が設けられているタイヤ軸方向の位置が異なる複数種類の前記ロングサイプが設けられているのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記深底部は、前記中心位置を横切っているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記ロングサイプ、前記ミドルサイプ及び前記ショートサイプは、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜しているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドルサイプは、前記第2エッジから延びる第2ミドルサイプを含み、前記ショートサイプは、前記第1エッジから延びる第1ショートサイプを含むのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記陸部には、前記第1ミドルサイプの途切れ端と前記第2ミドルサイプの途切れ端とをつなぐ浅溝が設けられているのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記陸部には、同じ種類のサイプがタイヤ周方向に連続して配置されていないのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタイヤのトレッド部の陸部には、第1エッジから第2エッジに延びるロングサイプと、第1エッジ又は第2エッジから延び、かつ、陸部のタイヤ軸方向の中心位置を越えて陸部内で途切れるミドルサイプと、第1エッジ又は第2エッジから延び、かつ、中心位置を越えずに陸部内で途切れるショートサイプとが設けられている。
【0017】
各サイプは、そのエッジによって氷雪上走行時の摩擦力を高めることができる。ミドルサイプは、陸部の中心位置を越えて途切れているため、陸部の過度な剛性低下を抑制しつつ、前記中心位置付近で比較的大きな摩擦力を発生させる。ショートサイプは、陸部の中心位置を越えずに途切れているため、陸部の剛性低下を顕著に抑制でき、ドライ路面での操縦安定性を維持する。さらに、各サイプは、いずれも一端が第1エッジ又は第2エッジに連通しているため、適度に開くことができ、氷雪上での摩擦力を高めることができる。従って、本発明のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性と氷雪上性能とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のクラウン陸部の拡大図である。
図3図2のロングサイプ、ミドルサイプ及びショートサイプの拡大図である。
図4】(a)は、図3のA-A線断面図であり、(b)は、図3のB-B線断面図であり、(c)は、図3のC-C線断面図である。
図5図1のミドル陸部の拡大図である。
図6】(a)は、図5のD-D線断面図であり、(b)は、図5のE-E線断面図であり、(c)は、図5のF-F線断面図である。
図7図1のショルダー陸部の拡大図である。
図8】比較例のタイヤのクラウン陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤであって、氷雪上走行にも対応し得るオールシーズン用として好適に用いられる。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2は、例えば、車両への装着の向きが指定されていない。望ましい態様では、トレッド部2は、例えば、点対称のトレッドパターンを有している。
【0021】
トレッド部2には、タイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝が設けられている。複数の主溝は、例えば、トレッド端Te側に配されたショルダー主溝3と、ショルダー主溝3とタイヤ赤道Cとの間に配されたクラウン主溝4とを含んでいる。ショルダー主溝3及びクラウン主溝4は、直線状に延びているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、ジグザグ状に延びるものでも良い。
【0022】
トレッド端Teは、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0023】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0024】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0025】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0026】
ショルダー主溝3は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までの距離L1がトレッド幅TWの0.20~0.30倍であるのが望ましい。クラウン主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までの距離L2がトレッド幅TWの0.05~0.15倍であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態での一方のトレッド端Teから他方のトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0027】
各主溝の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの3.0~6.0%であるのが望ましい。このような主溝は、氷雪上性能とドライ路面での操縦安定性とをバランス良く高めることができる。
【0028】
上述の主溝が設けられることにより、トレッド部2には、複数の陸部が区分されている。本実施形態のトレッド部2には、クラウン陸部5、ミドル陸部6及びショルダー陸部7が区分されている。クラウン陸部5は、2本のクラウン主溝4の間に区分されている。ミドル陸部6は、クラウン主溝4とショルダー主溝3との間に区分されている。ショルダー陸部7は、ショルダー主溝3とトレッド端Teとの間に区分されている。本実施形態のトレッド部2は、5つの陸部に区分されているが、このような態様に限定されるものではなく、本発明のタイヤにおいて、トレッド部2は、例えば、4つの陸部に区分されるものでも良い。
【0029】
図2には、陸部の一例を説明する図として、クラウン陸部5の拡大図が示されている。図2に示されるように、クラウン陸部5は、タイヤ周方向に延びる第1エッジ5aと、タイヤ周方向に延びる第2エッジ5bとで区分された踏面を有する。なお、第1エッジ5a及び第2エッジ5bは、タイヤ周方向に沿って延びるエッジのみならず、クラウン主溝4と連なるラグ溝で形成されるエッジも含む。
【0030】
クラウン陸部5には、ロングサイプ9、ミドルサイプ10、ショートサイプ15が設けられている。本明細書において、サイプとは、幅が0.8mm未満の切れ込みである。
【0031】
図3には、ロングサイプ9、ミドルサイプ10及びショートサイプ15の拡大図が示されている。図4に示されるように、ロングサイプ9は、第1エッジ5aから第2エッジ5bに延びている。ミドルサイプ10は、第1エッジ5a又は第2エッジ5bから延び、かつ、陸部のタイヤ軸方向の中心位置5cを越えて陸部内で途切れている。ショートサイプ15は、第1エッジ5a又は第2エッジ5bから延び、かつ、前記中心位置5cを越えずに陸部内で途切れている。
【0032】
各サイプは、そのエッジによって氷雪上走行時の摩擦力を高めることができる。ミドルサイプ10は、陸部の中心位置を越えて途切れているため、陸部の過度な剛性低下を抑制しつつ、前記中心位置5c付近で比較的大きな摩擦力を発生させる。ショートサイプ15は、陸部の中心位置5cを越えずに途切れているため、陸部の剛性低下を顕著に抑制でき、ドライ路面での操縦安定性を維持する。さらに、各サイプは、いずれも一端が第1エッジ5a又は第2エッジ5bに連通しているため、適度に開くことができ、氷雪上での摩擦力を高めることができる。従って、本発明のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性と氷雪上性能とを両立させることができる。
【0033】
本実施形態では、上述のサイプ要素がクラウン陸部5に配置されている。このため、各サイプに高い接地圧が作用し、氷雪上性能がより顕著に高められる。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、上述のサイプ要素がミドル陸部6やショルダー陸部7に配置されても良い。
【0034】
ロングサイプ9は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜しているのが望ましい。本実施形態のロングサイプ9は、例えば、第1エッジ5aから第2エッジ5bまで、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜しており、望ましい態様では直線状に延びている。また、ロングサイプ9は、第1エッジ5aから第2エッジ5bまで、一定の幅で延びている。
【0035】
ロングサイプ9のタイヤ軸方向に対する角度θ1は、例えば、20~30°であるのが望ましい。このようなロングサイプ9は、氷雪上において、タイヤ軸方向にも摩擦力を提供し、ひいては旋回性能を高めることができる。
【0036】
本実施形態のクラウン陸部5には、ロングサイプ9がタイヤ周方向に複数設けられている。図4(a)には、ロングサイプ9のA-A線断面図が示されている。図4(a)に示されるように、ロングサイプ9は、浅底部9aと、浅底部9aよりも大きい深さを有する深底部9bとを含んでいる。
【0037】
浅底部9aは、例えば、ロングサイプ9のタイヤ軸方向のいずれか一方の端部を含む領域に設けられている。また、本実施形態の浅底部9aは、クラウン陸部5の中心位置5c(図3に示す)を横切っていない。浅底部9aのタイヤ軸方向の長さL3は、例えば、クラウン陸部5のタイヤ軸方向の幅W2(図2に示す)の0.35~0.45倍であるのが望ましい。このような浅底部9aは、ドライ路面での操縦安定性の低下を抑制しつつ、氷雪上においてロングサイプ9の適度な開口量を確保することができる。
【0038】
同様の観点から、浅底部9aの深さd3は、例えば、深底部9bの深さd2の0.50~0.65倍であるのが望ましい。
【0039】
深底部9bは、例えば、クラウン陸部5の中心位置を横切っているのが望ましい。このような深底部9bを有するロングサイプ9は、氷雪上性能をさらに高めることができる。
【0040】
深底部9bの深さd2は、例えば、クラウン主溝4の深さd1の0.60~0.80倍であるのが望ましい。このような深底部9bは、ドライ路面での操縦安定性と氷雪上性能とをバランス良く高めることができる。
【0041】
図4(b)には、図4(a)で示されるロングサイプ9と隣り合うロングサイプ9のB-B線断面図が示されている。図4(b)に示されるように、本実施形態のクラウン陸部5には、浅底部9aが設けられているタイヤ軸方向の位置が異なる複数種類のロングサイプ9が設けられている。
【0042】
図4(a)及び(b)に示されるように、本実施形態のクラウン陸部5には、タイヤ軸方向の一方側の端部を含む領域に浅底部9aが設けられたロングサイプ9と、タイヤ軸方向の他方側の端部を含む領域に浅底部9aが設けられたロングサイプ9とが、タイヤ周方向に交互に設けられている。さらに望ましい態様では、各ロングサイプ9の深底部9bが、クラウン陸部5の中心位置5cを横切っている。このようなロングサイプ9の配置は、優れた氷雪上性能を発揮するとともに、陸部の剛性を均一に緩和し、陸部の偏摩耗を抑制することができる。
【0043】
図2に示されるように、ミドルサイプ10のタイヤ軸方向の長さL4は、例えば、クラウン陸部5のタイヤ軸方向の幅W2の0.55~0.65倍であるのが望ましい。また、ショートサイプ15のタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、クラウン陸部5のタイヤ軸方向の幅W1の0.15~0.30倍であるのが望ましい。
【0044】
図3に示されるように、ミドルサイプ10は、例えば、第1エッジ5aから延びる第1ミドルサイプ11と、第2エッジ5bから延びる第2ミドルサイプ12とを含んでいる。ショートサイプ15は、例えば、第1エッジ5aから延びる第1ショートサイプ16と、第2エッジ5bから延びる第2ショートサイプ17とを含んでいる。本実施形態では、第1ミドルサイプ11と第2ショートサイプ17とが隣り合い、第2ミドルサイプ12と第1ショートサイプ16とが隣り合っている。本実施形態では、2本のロングサイプ9の間に、第1ミドルサイプ11及び第2ショートサイプ17からなるサイプ対と、第2ミドルサイプ12と第1ショートサイプ16からなるサイプ対とが配されている。
【0045】
ミドルサイプ10及びショートサイプ15のそれぞれは、例えば、直線状に延びている。ミドルサイプ10及びショートサイプ15は、タイヤ軸方向の角度について、上述したロングサイプ9と同様の構成を有している。これにより、ロングサイプ9、ミドルサイプ10及びショートサイプ15は、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。さらに望ましい態様では、ロングサイプ9、ミドルサイプ10、及びショートサイプ15は、互いに平行に延びている。また、ミドルサイプ10のタイヤ軸方向に対する角度θ2、及び、ショートサイプ15のタイヤ軸方向に対する角度θ3は、例えば、20~30°であるのが望ましい。
【0046】
クラウン陸部5には、同じ種類のサイプがタイヤ周方向に連続して配置されていないのが望ましい。換言すれば、ロングサイプ9のタイヤ周方向の両側には、ミドルサイプ10又はショートサイプ15が隣り合っている。ミドルサイプ10のタイヤ周方向の両側には、ロングサイプ9又はショートサイプ15が隣り合っている。ショートサイプ15のタイヤ周方向の両側には、ロングサイプ9又はミドルサイプ10が隣り合っている。このようなサイプの配置は、上述の効果を発揮しつつ、陸部の偏摩耗を抑制することができる。
【0047】
同様の観点から、各サイプは、例えば、タイヤ周方向に等間隔で配されているのが望ましい。
【0048】
ショートサイプ15は、ミドルサイプ10の延長線の上又は前記延長線に対して±2mmのずれを伴って配置されているのが望ましい。より具体的には、第1ショートサイプ16は、第2ミドルサイプ12の延長線に対して±2mmのずれを伴って配置されている。第2ショートサイプ17は、第1ミドルサイプ11の延長線に対して±2mmのずれを伴って配置されている。
【0049】
図4(c)には、ミドルサイプ10及びショートサイプ15のC-C線断面図が示されている。なお、図4(c)は、第1ミドルサイプ11及び第2ショートサイプ17の断面図である。図4(c)に示されるように、ミドルサイプ10は、例えば、クラウン主溝4側の深底部10bと、クラウン陸部5内の途切れ端側の浅底部10aとを有している。ミドルサイプ10の浅底部10aは、例えば、クラウン陸部5の中心位置5cを横切っているのが望ましい。このようなミドルサイプ10は、ドライ路面での操縦安定性を維持するのに役立つ。
【0050】
深底部10bの深さd4は、例えば、クラウン主溝4の深さd1の0.60~0.80倍である。浅底部10aの深さd5は、例えば、深底部10bの深さd4の0.50~0.65倍である。このようなミドルサイプ10は、ドライ路面での操縦安定性と氷雪上性能とを両立させるのに役立つ。
【0051】
ショートサイプ15は、例えば、一定の深さを有している。ショートサイプ15の最大の深さd6は、例えば、クラウン主溝4の深さd1の0.60~0.80倍である。さらに望ましい態様では、ショートサイプ15は、例えば、ミドルサイプ10の深底部10bと同じ深さを有している。
【0052】
図2に示されるように、ミドルサイプ10のクラウン主溝4側の端部には、ラグ溝20が設けられているのが望ましい。ラグ溝20は、例えば、一端がクラウン主溝4に連なり、他端がクラウン陸部5内で途切れている。ラグ溝20のタイヤ軸方向の長さL6は、例えば、クラウン陸部5の幅W2の0.05~0.10倍である。このようなラグ溝20は、氷雪上性能をさらに高めることができる。
【0053】
ラグ溝20は、例えば、ミドルサイプ10の最大の深さよりも大きい深さを有しているのが望ましい。ラグ溝20の深さd7(図4(c)に示す)は、例えば、クラウン主溝4の深さd1の0.60~0.80倍であるのが望ましい。
【0054】
図3に示されるように、クラウン陸部5には、第1ミドルサイプ11の途切れ端と第2ミドルサイプ12の途切れ端とをつなぐ浅溝22が設けられているのが望ましい。浅溝22は、0.8mm以上の溝幅を有し、より具体的には、0.8~1.5mmの溝幅を有している。また、浅溝22は、例えば、ロングサイプ9又はミドルサイプ10の浅底部よりも小さい深さを有しているのが望ましい。浅溝22の深さは、例えば、1.5~2.5mmである。このような浅溝22は、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、氷雪上性能をさらに高めることができる。
【0055】
図5には、ミドル陸部6の拡大図が示されている。図5に示されるように、ミドル陸部6には、例えば、複数のミドル横溝25及びサイプ29が設けられている。
【0056】
ミドル横溝25は、例えば、クラウン主溝4から延びかつミドル陸部6内で途切れる複数の第1ミドル横溝26と、ショルダー主溝3から延びかつミドル陸部6内で途切れる複数の第2ミドル横溝27と設けられている。
【0057】
第1ミドル横溝26及び第2ミドル横溝27は、例えば、ミドル陸部6のタイヤ軸方向の中心位置を横切っているのが望ましい。換言すれば、第1ミドル横溝26及び第2ミドル横溝27のそれぞれは、タイヤ軸方向で互いにオーバーラップしている部分を含む。このような第1ミドル横溝26及び第2ミドル横溝27は、ドライ路面での操縦安定性と氷雪上性能とを両立させることができる。
【0058】
第1ミドル横溝26及び第2ミドル横溝27は、タイヤ軸方向に対して互いに同じ向きに傾斜している。望ましい態様では、各ミドル横溝25は、クラウン陸部5に配されたサイプとは逆向きに傾斜している。ミドル横溝25のタイヤ軸方向に対する角度θ4は、例えば、35~45°であるのが望ましい。このようなミドル横溝25は、氷雪上において、タイヤ軸方向にも大きな摩擦力を提供し得る。
【0059】
図6(a)には、ミドル横溝25のD-D線断面図が示されている。なお、図6(a)は、ミドル横溝25に連通するサイプの断面図も含んでいる。図6(a)に示されるように、ミドル横溝25は、例えば、ミドル陸部6の中心位置に向かって深さが漸減しているのが望ましい。
【0060】
さらに望ましい態様では、ミドル横溝25は、一定の深さで延びる一対の平底部25aの間に、斜めに延びる傾斜底部25bを有している。このようなミドル横溝25は、ミドル陸部6の剛性を維持しつつ、優れた排水性を発揮することができる。
【0061】
図5に示されるように、ミドル陸部6には、第1ミドル横溝26の途切れ端と第2ミドル横溝27の途切れ端とをつなぐミドル縦溝28が設けられているのが望ましい。ミドル縦溝28は、例えば、ミドル横溝25よりも小さい溝幅及び深さを有している。ミドル縦溝28の溝幅は、例えば、0.8~2.0mmであるのが望ましい。ミドル縦溝28の深さは、例えば、1.5~2.5mmであるのが望ましい。このようなミドル縦溝28は、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、氷雪上での旋回性能を高めることができる。
【0062】
ミドル縦溝28は、例えば、タイヤ軸方向に対してミドル横溝25と同じ向きに傾斜している。ミドル縦溝28のタイヤ軸方向に対する角度θ5は、例えば、75~85°であるのが望ましい。
【0063】
ミドル陸部6に設けられたサイプ29は、例えば、タイヤ軸方向に対してミドル横溝25と同じ向きに傾斜している。より望ましい対応では、サイプ29は、ミドル横溝25と平行に延びている。このようなサイプ29は、ミドル陸部6の偏摩耗を抑制しつつ、氷雪上性能を高めることができる。
【0064】
ミドル陸部6に設けられたサイプ29は、例えば、ショルダー主溝3に連通する第1サイプ群30Aと、クラウン主溝4に連通する第2サイプ群30Bとに分類される。
【0065】
第1サイプ群30は、例えば、ショルダー主溝3からミドル横溝25の途切れ端まで延びる第1サイプ31と、第1サイプ31よりもタイヤ軸方向の長さが大きい第2サイプ32と、第2サイプ32よりもタイヤ軸方向の長さが小さい第3サイプ33とを含んでいる。第2サイプ32及び第3サイプ33は、ショルダー主溝3から延び、ミドル陸部6内で途切れている。
【0066】
図6(a)に示されるように、第1サイプ31は、例えば、ショルダー主溝3側の浅底部31aとミドル横溝25側の深底部31bとを含んでいる。浅底部31aの深さd9は、例えば、深底部31bの深さd8の0.50~0.65倍である。
【0067】
図6(b)には、第2サイプ32のE-E線断面図が示されている。図6(b)に示されるように、第2サイプ32は、例えば、ショルダー主溝3側の浅底部32aと、ミドル横溝25側の深底部32bとを含んでいる。第2サイプ32の浅底部32a及び深底部32bは、例えば、第1サイプ31の浅底部31a及び深底部31bと同様の深さを有している。このような第2サイプ32は、ミドル陸部6の偏摩耗を抑制しつつ、上述の効果を発揮することができる。
【0068】
図6(c)には、第3サイプ33のF-F線断面図が示されている。図6(c)に示されるように、第3サイプ33は、例えば、一定の深さを有しているのが望ましい。本実施形態の第3サイプ33は、例えば、第1サイプ31及び第2サイプ32の深底部と同様の深さで構成されている。
【0069】
図5に示されるように、第2サイプ群30Bは、例えば、クラウン主溝4からミドル横溝25の途切れ端まで延びる第4サイプ34と、第4サイプ34よりもタイヤ軸方向の長さが小さい第5サイプ35と、第5サイプ35よりもタイヤ軸方向の長さが大きい第6サイプ36とを含んでいる。第4サイプ34は、図6(a)に示される第1サイプ31と同様の断面形状を有し、これらの構成を適用することができる。第5サイプ35は、図6(c)に示される第3サイプ33と同様の断面形状を有し、これらの構成を適用することができる。第6サイプ36は、図6(b)に示される第2サイプ32と同様の断面形状を有し、これらの構成を適用することができる。
【0070】
第2サイプ32及び第3サイプ33並びに第5サイプ35及び第6サイプ36は、少なくとも、ミドル縦溝28の両側に配されているのが望ましい。なお、本実施形態において、これらのサイプは、ミドル縦溝28が配されていない領域にも配置されている。
【0071】
図7には、ショルダー陸部7の拡大図が示されている。図7に示されるように、ショルダー陸部7には、複数のショルダー横溝41及び複数のショルダーサイプ42が設けられている。
【0072】
ショルダー横溝41は、例えば、ショルダー主溝3からトレッド端Teまで延びている。ショルダー横溝41は、例えば、ミドル横溝25と同じ向きに傾斜している。ショルダー横溝41 のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、ショルダー主溝3からトレッド端Te側に向かって漸減している。ショルダー横溝41のタイヤ軸方向に対する最大の角度θ7は、例えば、20~35°であるのが望ましい。
【0073】
ショルダー横溝41は、例えば、ショルダー主溝3から一定の溝幅で延びる第1部分41aと、第1部分41aからトレッド端Te側に向かって少なくとも一部の溝幅が漸増する第2部分41bとを含んでいる。このようなショルダー横溝41は、ショルダー陸部7のショルダー主溝3付近の剛性を維持でき、ドライ路面での操縦安定性を高めることができる。
【0074】
ショルダーサイプ42は、例えば、ショルダー主溝3からトレッド端Teまで延びている。本実施形態のショルダーサイプ42は、例えば、少なくとも一部がジグザグ状に延びている。このようなショルダーサイプ42は、ジグザグ状に延びる部分において、互いに向き合うサイプ壁が互いに噛み合って接触するため、陸部の剛性を高めることができる。
【0075】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0076】
図1の基本パターンを有するサイズ215/60R16のタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、図8に示されるように、クラウン陸部aに、ロングサイプbのみが設けられたタイヤが試作された。比較例のタイヤは、クラウン陸部の構成を除き、図1で示されるパターンと実質的に同一の構成を有している。各テストタイヤのドライ路面での操縦安定性及び氷雪上性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×6.5J
タイヤ内圧:240kPa
テスト車両:四輪駆動車、排気量2500cc
タイヤ装着位置:全輪
【0077】
<ドライ路面での操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの走行性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
【0078】
<氷雪上性能>
上記テスト車両で、氷雪上を走行したときの走行性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、優れた氷雪上性能を有していることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0079】
【表1】
【0080】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、氷雪上性能を維持しつつ、ドライ路面での操縦安定性を高めている。即ち、本発明のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性と氷雪上性能とを両立しているのが確認できた。
【符号の説明】
【0081】
2 トレッド部
5 陸部
5a 第1エッジ
5b 第2エッジ
9 ロングサイプ
10 ミドルサイプ
15 ショートサイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8