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特許7095402逆入力ブレーキ機構および電動式ブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】逆入力ブレーキ機構および電動式ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 51/12 20060101AFI20220628BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20220628BHJP
   F16D 41/10 20060101ALI20220628BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20220628BHJP
   F16D 65/22 20060101ALI20220628BHJP
   F16D 121/14 20120101ALN20220628BHJP
   F16D 125/32 20120101ALN20220628BHJP
【FI】
F16D51/12
B60T13/74 H
F16D41/10
F16D41/08 A
F16D65/22
F16D121:14
F16D125:32
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018097579
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019203530
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(72)【発明者】
【氏名】大黒 優也
(72)【発明者】
【氏名】金子 優香
(72)【発明者】
【氏名】豊田 俊郎
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03335831(US,A)
【文献】特公昭48-034018(JP,B1)
【文献】独国特許出願公開第102014011336(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00-13/74
F16D 41/00-47/06
F16D 49/00-71/04
F16D 121/14
F16D 125/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材と、
該入力部材と同軸に配置された出力部材と、
被押圧面を有する被押圧部材と、
前記入力部材に回転トルクが入力されると前記入力部材との係合に基づき前記被押圧面から離れる方向に移動して前記出力部材に回転トルクを伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると前記出力部材との係合に基づき前記被押圧面に近づく方向に移動して前記出力部材の回転を制動する係合子と、を備え、
前記係合子に作用して前記出力部材の回転を制動するブレーキトルクの大きさは、前記出力部材から前記係合子に伝達される回転トルクの大きさより小さく設定され
前記被押圧面が円弧状の凹面であり、前記被押圧面に対して押し付けられる前記係合子の押圧面が、前記被押圧面よりも曲率半径が小さくかつ周方向に離隔して設けられた1対の円弧状の凸面である
ことを特徴とする逆入力ブレーキ機構。
【請求項2】
前記係合子が、前記被押圧面と前記出力部材に設けられた出力係合凸部との間に配置されており、前記入力部材の端面のうちで回転中心から径方向に外れた部分に設けられた入力係合凸部を、前記係合子に設けられた入力係合孔の内側に、前記被押圧面に対する遠近移動を可能に係合させていることを特徴とする請求項1に記載の逆入力ブレーキ機構。
【請求項3】
前記係合子のうちで、前記出力部材に設けられた出力係合凸部と係合する部分が、平坦面状であることを特徴とする請求項1または2に記載の逆入力ブレーキ機構。
【請求項4】
前記係合子のうちで、前記出力係合凸部と係合する部分を含む底面全体が、平坦面状であることを特徴とする請求項に記載の逆入力ブレーキ機構。
【請求項5】
前記係合子が前記出力部材に設けられた出力係合凸部を径方向外側から挟むように複数備えられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の逆入力ブレーキ機構。
【請求項6】
前記係合子がそれぞれの底面により前記出力係合凸部を挟むように1対備えられていることを特徴とする請求項に記載の逆入力ブレーキ機構。
【請求項7】
前記1対の係合子のそれぞれの底面に設けられたガイド凹部に架け渡すように弾性部材が配置されていることを特徴とする請求項に記載の逆入力ブレーキ機構。
【請求項8】
前記出力部材と前記係合子との間に弾性部材が配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の逆入力ブレーキ機構。
【請求項9】
前記被押圧面の断面形状、および、前記被押圧面に対して押し付けられる前記係合子の押圧面の断面形状がともに、直線状または円弧状であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の逆入力ブレーキ機構。
【請求項10】
前記押圧面の断面形状が直線状であり、前記押圧面の軸方向両側には平面状または曲面状の面取りが設けられていることを特徴とする請求項に記載の逆入力ブレーキ機構。
【請求項11】
電動モータの回転駆動により直動するボールねじによってブレーキパッドを直線駆動し、前記ブレーキパッドでブレーキローターを押圧して、前記ブレーキローターに制動力を付与する電動式ブレーキ装置であって、
前記電動モータと前記ボールねじとの間に、請求項1から10のいずれか1項に記載の逆入力ブレーキ機構を備え、
前記電動モータは前記入力部材に接続されているとともに、前記ボールねじは前記出力部材に接続されている、
ことを特徴とする電動式ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材に入力される回転トルクを出力部材に伝達させるのに対し、出力部材に逆入力される回転トルクを制動して入力部材に一部の回転トルクを伝達させる機能を有する逆入力ブレーキ機構および電動式ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、逆入力遮断機構として、例えば、ねじりばねが捩じられたときの径変化を利用して逆入力に対してブレーキトルクを発生させて、出力部材に逆入力される回転トルクを遮断して入力部材に伝達させないものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、円錐クラッチの締結により逆入力を遮断し、締結解除によって入力部材から出力部材へ動力を伝達するようにした逆入力遮断機構が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、従来、電動式ブレーキ装置として、例えば、駐車時に電動モータに対する通電を遮断する状態においても制動力を維持するために、ロックピンをリニアソレノイドにより駆動してロックを行うロック機構を設けたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-185086号公報
【文献】特開2006-57804号公報
【文献】特開2015-1238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の逆入力遮断装置では、大きなブレーキトルクを発生させようとすると、ねじりばねの軸方向寸法がある程度必要となり、逆入力遮断機構の軸方向寸法が大きくなってしまうという問題がある。
また、ねじりばねでは、ブレーキトルクにより摩耗するので、耐久性に問題がある。そして、ねじりばねでは、耐摩耗性を高めるために、熱処理やコーティングにより表面硬度を高めることもできない。すなわち、ねじりばねには弾性体としての機能が必要であるので、ねじりばねに熱処理を行うと割れてしまうおそれがある。また、ねじりばねにコーティングを施しても、ねじりばねの弾性変形によりコーティングが剥離するおそれがある。
【0006】
また、特許文献2に記載の逆入力遮断装置では、大きなブレーキトルクを発生させようとすると、円錐クラッチの軸方向寸法を大きくしなくてはならず、逆入力遮断装置の軸方向寸法が大きくなってしまう問題がある。
さらに、特許文献1および2はいずれも、逆入力遮断装置の発明であって、出力部材に逆入力される回転トルクを遮断して入力部材に伝達させない装置に関するものである。
【0007】
また、特許文献3に記載の電動式ブレーキ装置では、バッテリー切れ等により駆動モータが失陥した場合に、ブレーキを解除することができないため、フェールオープン(Fail Open)に問題がある。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、軸方向寸法を短くでき、かつ、部品点数を抑えられる逆入力ブレーキ機構および電動式ブレーキ装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、電動モータが失陥しても、電動モータを逆駆動することができる電動式ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の逆入力ブレーキ機構は、
入力部材と、
該入力部材と同軸に配置された出力部材と、
被押圧面を有する被押圧部材と、
前記入力部材に回転トルクが入力されると前記入力部材との係合に基づき前記被押圧面から離れる方向に移動して前記出力部材に回転トルクを伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると前記出力部材との係合に基づき前記被押圧面に近づく方向に移動して前記出力部材の回転を制動する係合子と、を備え、
前記係合子に作用して前記出力部材の回転を制動するブレーキトルクの大きさは、前記出力部材から前記係合子に伝達される回転トルクの大きさより小さく設定されている、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の上記構成において、前記係合子を、前記被押圧面と前記出力部材に設けられた出力係合凸部との間に配置し、前記入力部材の端面のうちで中心から径方向に外れた部分に設けられた入力係合凸部を、前記係合子に設けられた入力係合孔の内側に、前記被押圧面に対する遠近移動を可能に係合させるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の上記構成において、前記被押圧面を例えば円筒面状などの円弧状の凹面とし、前記被押圧面に対して押し付けられる前記係合子の押圧面を、前記被押圧面の曲率半径と同じ大きさの曲率半径を有する、例えば円筒面状などの円弧状の凸面とするようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の上記構成において、前記被押圧面を円弧状の凹面とし、前記被押圧面に対して押し付けられる前記係合子の押圧面を、前記被押圧面よりも曲率半径が小さくかつ周方向に離隔して設けられた1対の円弧状の凸面にしてもよい。
【0013】
また、本発明の上記構成において、前記係合子のうちで、前記出力部材に設けられた出力係合凸部と係合する部分を、平坦面状にしてもよい。
この場合には、前記係合子のうちで、前記出力係合凸部と係合する部分を含む底面全体を、平坦面状としてもよい。
【0014】
また、本発明の上記構成において、前記係合子を、前記出力部材に設けられた出力係合凸部を径方向外側から挟むように複数備えるようにしてもよい。
この場合には、前記係合子を、それぞれの底面により前記出力係合凸部を挟むように1対備えるようにしてもよい。さらに、前記1対の係合子のそれぞれの底面に設けたガイド凹部に架け渡すように、例えばコイル状や板状のばねやゴムなどの弾性部材を配置するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明の上記構成において、前記出力部材と前記係合子との間に弾性部材を配置するようにしてもよい。
【0016】
また、本発明の上記構成において、前記被押圧面および前記押圧面の断面形状をともに、直線状または円弧状にするようにしてもよい。
この場合には、前記押圧面の断面形状を直線状とし、前記押圧面の軸方向両側に平面状または曲面状の面取りを設けるようにしてもよい。
【0017】
本発明の電動式ブレーキ装置は、電動モータの回転駆動により直動するボールねじによってブレーキパッドを直線駆動し、前記ブレーキパッドでブレーキローターを押圧して、前記ブレーキローターに制動力を付与する電動式ブレーキ装置であって、
前記電動モータと前記ボールねじとの間に、請求項1から12のいずれか1項に記載の逆入力ブレーキ機構を備え、
前記電動モータは前記入力部材に接続されているとともに、前記ボールねじは前記出力部材に接続されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、逆入力ブレーキ機構の軸方向寸法を短くでき、かつ、その部品点数を抑えることができる。このため、本発明の逆入力ブレーキ機構を用いることで、電動式ブレーキ装置のように、逆入力ブレーキ機構が適用される装置の小型化および低コスト化を図ることができる。
また、本発明の電動式ブレーキ装置によれば、電動モータが失陥しても、電動モータを逆駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施の形態に係る逆入力ブレーキ機構を示す図であって、正面図である。
図2】同、斜視図である。
図3】同、入力部材の一部を示す斜視図である。
図4】同、出力部材の一部を示す斜視図である。
図5】同、入力部材に回転トルクが入力された状態を示す正面図である。
図6】同、出力部材に回転トルクが逆入力された状態を示す正面図である。
図7】同、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、出力部材から係合子に作用する力の関係を示す図6の部分拡大図である。
図8】同、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、出力部材がロックする条件を説明するための正面図である。
図9】本発明の第2実施の形態に係る逆入力ブレーキ機構を示す図であって、出力部材に回転トルクが逆入力された状態を示す正面図である。
図10】本発明の第3実施の形態に係る逆入力ブレーキ機構を示す図であって、出力部材に回転トルクが逆入力された状態を示す正面図である。
図11】同、ガイドの斜視図である。
図12】本発明の第4実施の形態に係る逆入力ブレーキ機構を示す図であって、正面図である。
図13】本発明の第5実施の形態に係る逆入力ブレーキ機構を示す図であって、正面図である。
図14】同、出力部材の一部を示す斜視図である。
図15】本発明の第6実施の形態に係る逆入力ブレーキ機構を示す図であって、正面図である。
図16】本発明の第7実施の形態に係る逆入力ブレーキ装置を示す図であって、正面図である。
図17】本発明の第8実施の形態に係る逆入力ブレーキ機構を示す図であって、正面図である。
図18】同、係合子の斜視図である。
図19】(a)~(d)はそれぞれ、逆入力ブレーキ機構を構成する被押圧面および押圧面として採用可能な断面形状を示す図であって、図6のC-C断面に相当する断面図である。
図20】本発明の実施の形態に係る電動式ブレーキ装置を示す図であって、斜視図である。
図21】同、断面図である。
図22】同、一部の部材を省略して示す要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
(第1実施の形態)
図1図8は、本発明の逆入力ブレーキ機構の第1実施の形態を示す図である。
(逆入力ブレーキ機構の構造の説明)
本実施の形態の逆入力ブレーキ機構1は、入力部材2と、出力部材3と、被押圧部材4と、1対の係合子5とを備えている。逆入力ブレーキ機構1は、入力部材2に入力される回転トルク(以下、単に「トルク」ともいう。)を出力部材3にほぼ全て伝達させるのに対し、出力部材3に逆入力される回転トルクを入力部材2にその一部を伝達する機能を有している。すなわち、出力部材3に逆入力される回転トルクに対してブレーキトルクを発生し、これにより出力部材3に逆入力される回転トルクの一部を入力部材2に伝達するようになっている。
【0021】
入力部材2は、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。入力部材2は、入力軸部6と、1対の入力係合凸部7とを有している。入力軸部6は、段付円柱状で、その基端部が前記入力側機構の出力部にトルク伝達可能に接続されるか、または、前記入力側機構の出力部と一体に設けられている。1対の入力係合凸部7は、略楕円柱状で、入力軸部6の先端面の直径方向反対側2個所位置から軸方向に伸長している。1対の入力係合凸部7は、入力部材2の直径方向に互いに離隔している。このため、1対の入力係合凸部7は、入力軸部6の先端面のうちで回転中心から径方向外方に外れた部分にそれぞれ設けられている。入力係合凸部7は、その径方向外側面が、入力軸部6の先端部の外周面と同じ円筒面状の輪郭形状を有しており、その径方向内側面が、円周方向中央部が径方向内方に突出した円弧状の凸面となっている。
【0022】
出力部材3は、減速機構などの出力側機構に接続され、回転トルクを出力する。出力部材3は、入力部材2と同軸に配置されており、出力軸部8と出力係合凸部9とを有している。出力軸部8は、円柱状で、その先端部が前記出力側機構の入力部にトルク伝達可能に接続されるか、または、前記出力側機構の入力部と一体に設けられている。出力係合凸部9は、略長円柱状で、出力軸部8の基端面の中央部から軸方向に伸長している。出力係合凸部9の外周側面は、互いに平行な1対の平坦面と、1対の円弧状の凸面とから構成されている。このため、出力係合凸部9の回転中心から外周側面までの距離は、円周方向にわたり一定でない。出力係合凸部9は、1対の入力係合凸部7の間部分に配置される。
【0023】
被押圧部材4は、薄肉円環状に構成されており、図示しない他の部材に固定されて、その回転が拘束されている。被押圧部材4は、入力部材2および出力部材3と同軸に、かつ、入力部材2および出力部材3よりも径方向外側に配置されている。具体的には、1対の入力係合凸部7および出力係合凸部9が、逆入力ブレーキ機構1の組立状態で、被押圧部材4の径方向内側に配置されている。被押圧部材4は、その内周面に円筒面状の凹面である被押圧面10を有している。
【0024】
1対の係合子5は、略半円形板状に構成されており、被押圧部材4の径方向内側に配置されている。1対の係合子5のそれぞれは、被押圧面10に対して押し付けられる径方向外側面を円筒面状の凸面である押圧面11とし、径方向内側面を、後述する出力係合凹部15が形成された部分以外が平坦面状となった底面12としている。また、それぞれの係合子5の幅方向両側は、底面12に対して直角な平坦面状の側面13となっている。なお、係合子5に関して径方向とは、図1に矢印Aで示した底面12に対して直角な方向をいい、図1に矢印Bで示した底面12に対して平行な方向を、係合子5に関して幅方向という。押圧面11の曲率半径は、被押圧面10の曲率半径と同じかこれよりも僅かに小さい。押圧面11は、係合子5のその他の部分に比べて摩擦係数の大きい表面性状を有している。押圧面11は、係合子5の表面によって直接構成しても良いし、係合子5に貼着や接着などにより固定した摩擦材によって構成しても良い。
【0025】
本実施の形態では、1対の係合子5の押圧面11を被押圧部材4の直径方向反対側に向け、かつ、1対の係合子5の底面12を互いに対向させている。また、1対の係合子5を被押圧部材4の径方向内側に配置した状態で、被押圧面10と押圧面11との間または底面12同士の間に隙間が存在するように、被押圧部材4の内径寸法と係合子5の径方向寸法を規制している。
【0026】
係合子5は、入力係合孔14と、出力係合凹部15とを有している。入力係合孔14は、係合子5の径方向中間部を軸方向に貫通し、かつ、幅方向に長い矩形状の長孔である。入力係合孔14は、入力係合凸部7を緩く挿入できる大きさを有している。具体的には、入力係合孔14の内側に入力係合凸部7を挿入した際に、入力係合凸部7と入力係合孔14の内面との間に、幅方向および径方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、入力係合凸部7は、入力係合孔14の内側に、被押圧面10に対する遠近移動を可能に、かつ、入力部材2の回転方向に関する移動を可能に係合している。
【0027】
出力係合凹部15は、1対の係合子5のそれぞれの底面12の幅方向中央部から径方向外方に向けて凹んだ略矩形状の凹部である。出力係合凹部15は、その内側に出力係合凸部9の短軸方向の先半部をがたつきなく配置できる大きさおよび形状を有している。具体的には、出力係合凹部15は、その開口幅が、出力係合凸部9の長軸方向に関する寸法とほぼ同じであり、その径方向深さが、出力係合凸部9の短軸方向に関する寸法の1/2よりも少しだけ小さくなっている。出力係合凹部15の底部は、底面12と平行な平坦面となっている。
【0028】
本実施の形態では、逆入力ブレーキ機構1は、その組立状態で、軸方向一方側に配置した入力部材2の1対の入力係合凸部7を、1対の係合子5のそれぞれの入力係合孔14に軸方向に挿入し、かつ、軸方向他方側に配置した出力部材3の出力係合凸部9を、1対の出力係合凹部15同士の間に軸方向に挿入している。すなわち、1対の係合子5は、それぞれの出力係合凹部15により、出力係合凸部9を径方向外側から挟むように配置されている。また、本実施の形態では、入力係合凸部7の軸方向寸法、出力係合凸部9の軸方向寸法、被押圧部材4の軸方向寸法および係合子5の軸方向寸法をそれぞれほぼ同じとしている。
【0029】
(逆入力ブレーキ機構の動作説明)
逆入力ブレーキ機構1の動作について説明する。
先ず、入力部材2に入力側機構から回転トルクが入力された場合を説明する。
入力部材2に回転トルクが入力されると、図5に示すように、入力係合孔14の内側で、入力係合凸部7が入力部材2の回転方向(図5の例では時計方向)に回転する。すると、入力係合凸部7の径方向内側面が入力係合孔14の内面を径方向内方に向けて押圧し、1対の係合子5を、被押圧面10から離れる方向にそれぞれ移動させる。つまり、1対の係合子5を、入力部材2との係合に基づき、互いに近づく方向である径方向内方に(図5の上側に位置する係合子5を下方に、図5の下側に位置する係合子5を上方に)それぞれ移動させる。これにより、1対の係合子5の底面12が互いに近づく方向に移動し、1対の出力係合凹部15が出力部材3の出力係合凸部9を径方向両側から挟持する。すなわち、出力部材3を、出力係合凸部9の長軸方向が係合子5の底面12と平行になるように回転させつつ、出力係合凸部9と1対の出力係合凹部15とをがたつきなく係合させる。したがって、入力部材2に入力された回転トルクは、1対の係合子5を介して、出力部材3に伝達され、出力部材3から出力される。この逆入力ブレーキ機構1は、入力部材2に回転トルクが入力されると、入力部材2の回転方向に関係なく、1対の係合子5を、被押圧面10から離れる方向にそれぞれ移動させる。そして、入力部材2に入力された回転トルクを、1対の係合子5を介して、出力部材3に伝達する。
【0030】
次に、出力部材3に出力側機構から回転トルクが逆入力された場合を説明する。
出力部材3に回転トルクが逆入力されると、図6に示すように、出力係合凸部9が、1対の出力係合凹部15同士の内側で、出力部材3の回転方向(図6の例では時計方向)に回転する。すると、出力係合凸部9の角部が出力係合凹部15の底面を径方向外方に向けて押圧し、1対の係合子5を、被押圧面10に近づく方向にそれぞれ移動させる。つまり、1対の係合子5を、出力部材3との係合に基づき、互いに離れる方向である径方向外方に(図5の上側に位置する係合子5を上方に、図5の下側に位置する係合子5を下方に)それぞれ移動させる。これにより、1対の係合子5のそれぞれの押圧面11を、被押圧面10に対して押し付ける。この際、押圧面11と被押圧面10とは、押圧面11の周方向にわたる全範囲で面接触する。この結果、係合子5が出力係合凸部9と被押圧部材4との間で突っ張るため、出力部材3の回転が抑制される。すなわち、出力部材3の回転が制動される。この逆入力ブレーキ機構1は、出力部材3に回転トルクが逆入力されると、出力部材3の回転方向に関係なく、1対の係合子5を、被押圧面10に近づく方向にそれぞれ移動させる。そして、出力係合凸部9と被押圧部材4との間で1対の係合子5が突っ張り、出力部材3の回転を制動し、出力部材3に入力された回転トルクの一部を、1対の係合子5を介して、入力部材2に伝達する。
【0031】
上述のように、出力部材3に回転トルクが逆入力された場合に、出力部材3の回転を制動し、出力部材3に入力された回転トルクの一部を、1対の係合子5を介して、入力部材2に伝達する原理および条件について、図7および図8を参照して、より具体的に説明する。
出力部材3に回転トルクが逆入力されることで、出力係合凸部9の角部が出力係合凹部15の底面に当接すると、図7に示すように、出力係合凸部9の角部と出力係合凹部15の底面との当接部Xには、出力係合凹部15の底面に対し垂直方向に法線力Fcが作用する。また、当接部Xには、出力係合凸部9と出力係合凹部15との間の摩擦係数をμとすると、出力係合凹部15の底面と平行な方向に摩擦力μFcが作用する。ここで、当接部Xに作用する接線力Ftの作用線の方向と出力係合凹部15の底面との間のくさび角をθとすると、接線力Ftは、次の式(1)により表される。
Ft=Fc・sinθ+μFc・cosθ ・・・(1)
このため、法線力Fcは、接線力Ftを用いて、次の(2)式により表される。
Fc=Ft/(sinθ+μ・cosθ) ・・・(2)
【0032】
出力係合凸部9の角部が出力係合凹部15の底面に当接した際に、出力部材3から係合子5に伝達されるトルクTの大きさは、出力部材3の回転中心Oから当接部Xまでの距離をrとすると、次の(3)式で表される。
T=r・Ft ・・・(3)
【0033】
上述したように、当接部Xには法線力Fcが作用するため、図8に示すように、係合子5の押圧面11は、被押圧部材4の被押圧面10に対して法線力Fcの力で押し付けられる。このため、押圧面11と被押圧面10との間の摩擦係数をμ´とし、出力部材3の回転中心Oから押圧面11と被押圧面10との当接部Yまでの距離をRとすると、係合子5に作用するブレーキトルクT´の大きさは、次の(4)式で表される。
T´=μ´RFc ・・・(4)
したがって、より大きなブレーキ力を得るには、摩擦係数μ´、距離R、法線力Fcを大きくすれば良いことが分かる。
【0034】
また、出力部材3の回転を制動し、出力部材3に入力された回転トルクの一部を入力部材2に伝達するには、トルクTとブレーキトルクT´とが、次の(5)式の関係を満たす必要がある。
T>T´ ・・・(5)
また、上記(5)式に上記(1)~(4)式を代入すると次の(6)式が得られる。
μ´R/(sinθ+μ・cosθ)<r ・・・(6)
上記(6)式からは、押圧面11と被押圧面10との間の摩擦係数μ´を大きくすれば、距離Rを小さくしても、出力部材3を制動する力を強め、出力部材3から入力部材2に伝達されるトルクを小さくできることが分かる。
【0035】
また、摩擦係数μおよび摩擦係数μ´がそれぞれ0.1であると仮定すると、上記(6)式から次の(7)式が得られる。
R<10r(sinθ+0.1cosθ) ・・・(7)
上記(7)式からは、出力部材3の回転中心Oから当接部Xまでの距離rと、出力部材3の回転中心Oから当接部Yまでの距離Rと、接線力Ftの作用線の方向と出力係合凹部15の底面との間のくさび角θとを適切に設定することで、出力部材3の回転を制動し、出力部材3に入力された回転トルクの一部を入力部材2に伝達させられることがわかる。
【0036】
また、出力部材3が制動された状態で、入力部材2に回転トルクが入力された場合、入力部材2から係合子5に作用する法線力が、出力部材3から係合子5に作用する法線力Fcよりも大きくなると、係合子5は径方向内方に移動し、入力部材2から出力部材3に回転トルクが伝達される。
なお、T´は、0.1T以上であることが好ましく、さらには0.9T以下であることが好ましい。T´が0.1Tより小さいとすべりが発生し、コーティングが剥離する虞があるからである。また、T´が0.9Tより大きいとロックするため、さらにトルクを大きくすると軸方向寸法が大きくなるからである。
【0037】
以上の構成を有し、上述のように動作する逆入力ブレーキ機構1によれば、軸方向寸法を短くでき、かつ、部品点数を抑えられる。
この逆入力ブレーキ機構1は、入力部材2および出力部材3のそれぞれの回転を、係合子5の径方向移動に変換する。そして、このように入力部材2および出力部材3の回転を係合子5の径方向移動に変換することで、係合子5を、該係合子5の径方向内側に位置する出力部材3に係合させたり、あるいは、係合子5を、該係合子5の径方向外側に位置する被押圧部材4に押し付けるようにしている。このように、逆入力ブレーキ機構1は、入力部材2および出力部材3のそれぞれの回転によって制御される係合子5の径方向移動に基づき、入力部材2から出力部材3に回転トルクが伝達可能になる状態と、出力部材3に入力された回転トルクの一部を入力部材2に伝達する状態とを切り替えることができるため、逆入力ブレーキ機構1の装置全体の軸方向寸法を短くできる。
【0038】
しかも、係合子5に、入力部材2に入力された回転トルクを出力部材3に伝達する機能と、出力部材3の回転を制動する機能との両方の機能を持たせている。このため、逆入力ブレーキ機構1の部品点数を抑えることができ、かつ、両機能をそれぞれ別の部材に持たせる場合に比べて、動作を安定させることができる。たとえば、回転トルクを伝達する機能と制動する機能とを別の部材に持たせる場合、制動解除のタイミングと回転トルクの伝達開始のタイミングとがずれる虞がある。この場合、制動解除から回転トルクの伝達開始までの間に出力部材に回転トルクが逆入力されると、出力部材が再び制動されてしまい、回転トルクの全てが伝達されなくなる。本実施の形態では、係合子5に、回転トルクを出力部材3に伝達する機能と、出力部材3を制動する機能との両方の機能を持たせているため、このような不都合が生じることを防止できる。
【0039】
また、入力部材2から係合子5に作用する力の向きと、出力部材3から係合子5に作用する力の向きとを逆向きにしているため、両方の力の大小関係を規制することで、係合子5の移動方向を制御できる。このため、出力部材3の制動状態と制動解除状態の切り替え動作を安定して確実に行うことができる。
【0040】
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態について、図9を用いて説明する。
本実施の形態の特徴は、1対の係合子5のそれぞれの姿勢を安定させ、係合子5の径方向移動を正確に行わせる点にある。このために、本実施の形態では、係合子5の底面12のうち、出力係合凹部15を挟んで幅方向両側部に、それぞれ底面12から垂直方向に伸長した案内スリット16を設けている。そして、1対の係合子5のそれぞれの底面12を互いに対向させた状態で、同一直線上に存在する1対の案内スリット16内に、これら1対の案内スリット16を跨ぐようにして、円柱状または矩形柱状のガイド17を配置している。ガイド17は、案内スリット16の内側にがたつきなく、かつ、ガイド17の軸方向に関する移動を可能に配置されている。
【0041】
上述の構成により、1対の係合子5は、径方向の移動および同期した回転は可能でありながら、互いに相対回転したり、幅方向に移動したりすることが防止される。このため、1対の係合子5のそれぞれの姿勢を安定させることができる。また、1対の係合子5を、正確にかつスムーズに径方向に移動させることができる。したがって、入力係合凸部7や出力係合凸部9から係合子5に作用する力を、該係合子5の径方向移動に効率良く利用することができ、所期の伝達トルクおよびブレーキトルクを発生させることができる。その他の構成および作用効果については、第1実施の形態と同様である。
【0042】
(第3実施の形態)
次に、本発明の第3実施の形態について、図10および図11を用いて説明する。
本実施の形態の特徴も、第2実施の形態と同様に、1対の係合子5のそれぞれの姿勢を安定させ、係合子5の径方向移動を正確に行わせる点にある。このために、本実施の形態では、1対の係合子5の径方向内端部の幅方向両側部を、断面略U字形のガイド17aによりそれぞれ案内している。これにより、1対の係合子5は、径方向の移動および同期した回転は可能でありながら、互いに相対回転したり、幅方向に移動したりすることが防止される。
【0043】
本実施の形態では、第2実施の形態のように、係合子に案内スリットを形成しなくて済むため、案内スリットの加工を省略できる。また、本実施の形態のガイド17aによれば、1対の係合子5が、被押圧部材4の軸方向に傾いたり相対変位したりすることも防止できる。その他の構成および作用効果については、第1実施の形態および第2実施の形態と同様である。
【0044】
(第4実施の形態)
次に、本発明の第4実施の形態について、図12を用いて説明する。
本実施の形態の特徴も、第2実施の形態および第3実施の形態と同様に、1対の係合子5a、5bのそれぞれの姿勢を安定させ、係合子5a、5bの径方向移動を正確に行わせる点にある。このために、本実施の形態では、一方(図12の上方)の係合子5aの底面12の幅方向両側部に、他方の係合子5bに向けて伸長した1対の張出部18を設けている。これに対し、他方(図12の下方)の係合子5bの底面12の幅方向両側部に切り欠き19を設けている。これにより、他方の係合子5bの径方向内端部の幅寸法を、1対の切り欠き19分だけ小さくしている。そして、1対の係合子5a、5bを被押圧部材4の径方向内側に配置した状態で、1対の張出部18の間に、他方の係合子5bの径方向内端部をがたつきなく配置している。このために、1対の張出部18の内側面同士の幅寸法を、他方の係合子5bの径方向内端部の幅寸法よりも僅かに大きくしている。
【0045】
本実施の形態では、第2実施の形態および第3実施の形態のように、別途ガイドを設ける必要がないため、部品点数の削減によるコスト低減を図れ、かつ、ガイドの組み付け忘れを防止できる。その他の構成および作用効果については、第1実施の形態および第2実施の形態と同様である。
【0046】
(第5実施の形態)
次に、本発明の第5実施の形態について、図13および図14を用いて説明する。
本実施の形態の特徴は、出力部材3のがたつきを防止する点にある。このために、本実施の形態では、図14に示すように、出力係合凸部9を長軸方向に挿通するように補助軸部20を設け、該補助軸部20の軸方向両側部を出力係合凸部9の外部に露出させている。そして、図13に示すように、補助軸部20の軸方向両側部を、1対の係合子5の底面12同士の間に配置している。
【0047】
また、補助軸部20の軸方向一方側部と軸方向他方側部にそれぞれ対向するにように、係合子5の底面12の幅方向一部に、それぞれ底面12から垂直方向に伸長した収納凹部21を設けている。具体的には、図13の上側の係合子5には、底面12のうち出力係合凹部15よりも左側部分に収納凹部21を設けており、図13の下側の係合子5には、底面12のうち出力係合凹部15よりも右側部分に収納凹部21を設けている。そして、それぞれの収納凹部21の内側に弾性部材22を配置し、これら弾性部材22を、収納凹部21の底部と補助軸部20の軸方向一方側部および軸方向他方側部との間で弾性的に圧縮している。これにより、補助軸部20を介して、出力部材3に所定方向(図13の例では反時計方向)のモーメントを付与している。また、補助軸部20の軸方向一方側部および軸方向他方側部をそれぞれ、係合子5の底面12に押し当てている。
【0048】
本実施の形態では、出力部材3にモーメントを付与できるため、出力部材3に負荷が加わっていない状態においても、出力部材3が係合子5に対してがたつくことを防止できる。その他の構成および作用効果については、第1実施の形態と同様である。
【0049】
(第6実施の形態)
第1実施の形態で説明したように、逆入力ブレーキ機構1に関して、出力部材3に回転トルクが逆入力された際に、出力部材3の回転を制動し、出力部材3に入力された回転トルクの一部を入力部材2に伝達するには、出力部材3から係合子5に伝達されるトルクTと、被押圧部材4に対して押し付けられた係合子5に作用するブレーキトルクT´とが、T>T´の関係を満たしている必要がある。また、押圧面11と被押圧面10との間の摩擦係数をμ´とし、出力部材3の回転中心Oから押圧面11と被押圧面10との当接部までの距離をRとし、被押圧面10に対する押圧面11の押し付け力である法線力をFcとした場合に、係合子5に作用するブレーキトルクT´の大きさは、T´=μ´RFcで表される。
【0050】
ところで、逆入力ブレーキ機構1の適用対象となる自動車においては、近年、燃費の向上を目的として車両重量の低減が進められており、同時に車両の構成部品に関しても重量の低減が求められている。このため、自動車に組み込む逆入力ブレーキ機構1に関しては、逆入力ブレーキ機構1のサイズに影響がある、出力部材3の回転中心Oから押圧面11と被押圧面10との当接部までの距離Rを小さくしたいとの要求がある。ところが、距離Rを小さくすると、ブレーキトルクT´が小さくなる。
【0051】
このため、ブレーキトルクT´を大きくするために、摩擦係数μ´または法線力Fcを大きくすることが考えられる。摩擦係数μ´を大きくするためには、例えば、押圧面11に摩擦材を設けたり、押圧面11に供給する潤滑量を減らすことが考えられる。ただし、摩擦材を設ける場合には、コストが嵩むという問題を生じ、供給する潤滑量を減らす場合には、押圧面の摩耗が進行しやすくなるという耐久性の問題を生じる。一方、法線力Fcを大きくするためには、伝達トルクTを大きくする必要がある。
【0052】
そこで、本実施の形態では、図15に示すように、1対の係合子5cの径方向外側面の形状を工夫し、くさび効果を利用することで、より大きな法線力(ブレーキトルク)が得られるようにしている。
【0053】
本実施の形態では、係合子5cの径方向外側面のうち、周方向に離隔した2個所位置に、被押圧面10に対して押し付けられる押圧面11aを設けている。それぞれの押圧面11aは、被押圧面10の曲率半径Crよりも小さな曲率半径Cr´を有する、円筒面状の凸面である。係合子5cの径方向外側面の周方向中間部に位置する1対の押圧面11a同士の間には、被押圧面10に対して押し付けられない(被押圧面10との間に常に隙間が存在する)平坦面状の先端面36を設けている。このため、係合子5cの径方向に関する幅寸法は、第1実施の形態の構造に比べて小さくなっている。また、係合子5cの径方向外側面の輪郭形状は、第1実施の形態では全体が円弧状であったのに対し、本実施の形態では、1対の円弧部と直線部とから構成されている。
【0054】
また、係合子5cの径方向中間部には、略円弧状の長孔である入力係合孔14aを形成している。そして、入力係合孔14aの内側に、入力部材2に設けた入力係合凸部7を、被押圧面10に対する遠近移動を可能に、かつ、入力部材2の回転方向に関する移動を可能に緩く係合している。また、係合子5cの幅方向両側面を、底面12aとのなす角度が鈍角になった傾斜面37としている。
【0055】
以上のように構成された本実施の形態の逆入力ブレーキ機構1では、出力部材3に回転トルクが逆入力され、係合子5cに出力係合凸部9から法線力Fcが作用した際に、係合子5cの径方向外側面に設けられた1対の押圧面11aを、被押圧面10に対して押し付ける。ここで、押圧面11aの曲率半径Cr´は、被押圧面10の曲率半径Crよりも小さいため、それぞれの押圧面11aと被押圧面10とは1点で線接触または点接触する。したがって、2つの押圧面11aを有する係合子5cと被押圧部材4とは、合計2点で接触する。
【0056】
この際、それぞれの押圧面11aの曲率中心は、被押圧部材4の中心O(=入力部材2および出力部材3の回転中心)と、押圧面11aと被押圧面10とのそれぞれの当接部M1、M2とを結んだ仮想線上に存在している。また、各当接部M1、M2における接線同士の間のくさび角を2αとし、押圧面11aと被押圧面10との間の摩擦係数をμ´とすると、当接部M1、M2に作用する法線力Pは、次の式(8)で表される。
P=Fc/2(sinα+μ´・cosα) ・・・(8)
【0057】
また、係合子5aにブレーキ力を生じさせる当接部M1、M2に作用する接線力Ft´は、次の(9)式で表される。
Ft´=μ´P ・・・(9)
【0058】
また、出力部材3の回転中心Oから押圧面11aと被押圧面10との当接部M1、M2までの距離をRとすると、係合子5aに作用するブレーキトルクT´の大きさは、次の(10)式で表される。
T´=2Ft´R ・・・(10)
【0059】
上述した(8)式、(9)式および(10)式より、ブレーキトルクT´の大きさは、摩擦係数μ´、距離R(ブレーキサイズ)、法線力Fc、くさび角αを、それぞれ用いて、次の(11)式で表される。
T´=μ´RFc/(sinα+μ´・cosα) ・・・・(12)
ここで、第1実施の形態の構造に関しては、前記(4)式に示したように、ブレーキトルクT´の大きさは、T´=μ´RFcとなる。
【0060】
このため、より大きなブレーキトルクT´を得るためには、本実施の形態の構造の場合にも、第1実施の形態と同様に、摩擦係数μ´、距離R、法線力Fcを大きくすれば良いことが分かる。また、本実施の形態の特徴であるくさび効果を利用して、ブレーキトルクT´をより大きくするには、くさび角αをできるだけ小さくすれば良いことになる。
【0061】
例えば、摩擦係数μ´を0.1、距離Rを15mm、くさび角αを25度、法線力Fcを1000Nと仮定する。この場合、第1実施の形態の構造で得られるブレーキトルクT´は、1.5Nmになるのに対して、本実施の形態の構造で得られるブレーキトルクT´は、2.9Nmになる。このように、本実施の形態では、くさび効果を利用することで、第1実施の形態の構造に比べて、おおよそ2倍の大きさのブレーキトルクT´を得られる。言い方を代えれば、第1実施の形態の構造と同じ大きさのブレーキトルクT´を、距離Rを1/2にした場合にも得られる。
【0062】
以上のように、本実施の形態では、第1実施の形態の構造と比較して、同等の摩擦係数μ´、同等の距離R、同等の伝達トルクTであっても、より大きなブレーキトルクT´を得ることができる。したがって、摩擦係数μ´および法線力Fcを大きくしなくても、距離Rを容易に小さくすることができる。しかも、係合子5cの径方向外側面の形状を工夫するだけで、このような効果を得られるため、コストの上昇を抑えることもできる。その他の構成および作用効果については、第1実施の形態と同じである。
【0063】
(第7実施の形態)
次に、本発明の第7実施の形態について、図16を用いて説明する。
本実施の形態では、係合子5dの径方向内側面である底面12aの形状を工夫している。すなわち、係合子5dのうちで、出力係合凸部9と係合する部分を含む底面12a全体を、平坦面状に構成している。このため、底面12aの幅方向中央部には、第1実施の形態のような、径方向外方に凹んだ出力係合凹部15(図1等参照)は設けられていない。
【0064】
係合子5dの底面12aは、出力部材3の出力係合凸部9と接触する部分であるため、高精度な仕上加工を行う必要がある。ただし、本実施の形態の逆入力ブレーキ機構1では、底面12a全体を平坦面状としており、第1実施の形態のような出力係合凹部15が設けられていないため、平面研削盤などの工作機械を用いて、高精度な仕上加工を低コストで行うことができる。その他の構成および作用効果については、第1実施の形態と同じである。
【0065】
(第8実施の形態)
次に、本発明の第8実施の形態について、図17および図18を用いて説明する。
本実施の形態の特徴は、1対の係合子5eのそれぞれの姿勢を安定させ、係合子5eの径方向移動を正確に行わせる点にある。このために、係合子5eの底面12aの幅方向両側部に、底面12aに対して垂直方向に凹入した、円柱状のガイド凹部38を設けている。そして、1対の係合子5eのそれぞれの底面12aを互いに対向させた状態で、同一直線上に存在する1対のガイド凹部38の内側に、これら1対のガイド凹部38に架け渡すように、コイル状のばね39を配置している。そして、1対のばね39が発揮する弾力を利用して、1対の係合子5eを、被押圧面10に向けてそれぞれ付勢している。なお、ばね39が発揮する弾力の大きさ(ばね荷重の大きさ)は、係合子5eが重力の影響で下方に移動するのを防止すべく、係合子5eの自重よりも大きく設定している。
【0066】
本実施の形態では、1対の係合子5eのそれぞれの姿勢を同期させつつ安定させることで、1対の係合子5eの径方向移動を正確に行わせることができる。また、1対の係合子5eに1対のばね39を架け渡すように設けるといった簡易な構成でありながら、係合子5eが重力の影響で下方に移動して、姿勢が不安定になることを有効に防止できる。その他の構成および作用効果については、第1実施の形態および第7実施の形態と同じである。
【0067】
(第9実施の形態)
次に、本発明の第9実施の形態について、図19を用いて説明する。
本実施の形態では、被押圧部材4の内周面に形成された被押圧面10、および、係合子5の径方向外側面に形成された押圧面11に関して、それぞれ採用し得る断面形状の4例について説明する。
【0068】
図19の(a)に示した第1例では、被押圧面10および押圧面11のそれぞれの断面形状を直線状としている。このような構造は、被押圧面10および押圧面11の加工を容易に行えるため、加工コストを低く抑えられるというメリットがある。ただし、係合子5の中心軸が被押圧部材4の中心軸に対して傾斜した際に、押圧面11の軸方向両端部に存在する角部と被押圧面10との間でエッジロードが発生しやすい。このため、摩耗が進行しやすく、耐久性が低くなりやすい。
【0069】
図19の(b)に示した第2例に関しても、被押圧面10および押圧面11のそれぞれの断面形状を直線状としている。ただし、本実施の形態では、係合子5の径方向外側面の軸方向両端部に位置する、押圧面11aの軸方向両側に、平面状(部分円すい面状)の面取り部40を設けている。このような構成によれば、係合子5の中心軸と被押圧部材4の中心軸との傾斜角度が小さい場合に、エッジロードを生じずに済む。
【0070】
図19の(c)に示した第3例に関しても、被押圧面10および押圧面11のそれぞれの断面形状を直線状としている。ただし、本実施の形態では、係合子5の径方向外側面の軸方向両端部に位置する、押圧面11の軸方向両側に、凸曲面状の面取り部40aを設けている。このような構成によれば、上述した第2例に比べて、エッジロードを生じずに済む係合子5の傾斜角度を大きくできる。ただし、第2例に比べて、面取り部40aの加工が面倒であり、加工コストが嵩みやすい。
【0071】
図19の(d)に示した第4例では、被押圧面10および押圧面11のそれぞれの断面形状を円弧状としている。具体的には、被押圧面10の断面形状を凹円弧状としており、押圧面11の断面形状を凹円弧状としている。また、被押圧面10の断面形状の曲率半径よりも、押圧面11の断面形状の曲率半径を小さくしている。このような構成によれば、上述した第3例の場合よりも、エッジロードを生じずに済む係合子5の傾斜角度を大きくできる。ただし、第3例の場合よりも、被押圧面10および押圧面11の加工が面倒で、加工コストが嵩みやすい。
【0072】
(第10実施の形態)
次に、本発明の電動式ブレーキ装置の実施の形態について、図20図22を参照して説明する。
本実施の形態の特徴は、逆入力ブレーキ機構1を、電動式ブレーキ装置50に適用した点にある。以下、本実施の形態の電動式ブレーキ装置について具体的に説明する。
本実施の形態の電動式ブレーキ装置50は、例えば、自動車の駐車ブレーキ等に組み込まれる。
図20図22に示すように、電動式ブレーキ装置50は、電動モータ60と、ボールねじ70と、これらの電動モータ60とボールねじ70との間に設けられた逆入力ブレーキ機構1とを備えている。
【0073】
逆入力ブレーキ機構1は、上述の第1実施形態の構成と同様の構成を有し同様に動作するものであって、入力部材2と出力部材3と被押圧部材4と1対の係合子5とを備えている。以下、第1実施の形態と同様の構成要素には同一符号を付して、その説明を簡略化または省略する。
【0074】
被押圧部材4は、ブラケット81に複数個のボルト82により固定されている。ブラケット81は、固定部材83にボルト83Aにより固定されている。この実施の形態では、被押圧部材4は、径方向内側に1対の係合子5が配置される円環状部分4aと、径方向内側に軸受84が回転自在に配置される軸受ホルダ部分4bとを一体的に備えている。円環状部分4aの端部には、Oリング85を介在させてカバー86が複数個のボルト87により固定されている。
【0075】
入力部材2は、電動モータ60の出力軸61と一体的に形成され、一方出力部材3は、ボールねじ70のねじ軸71の一方の端部にねじ軸71と一体的に形成されている。なお、入力部材2および出力部材3はそれぞれ、電動モータ60の出力軸61およびねじ軸71と別体で構成するようにしてもよい。
入力部材2の先端部は、カバー86の中央部の貫通孔に貫通し、そして入力部材2の1対の入力係合凸部7がそれぞれ、1対の係合子5の各入力係合孔14に挿入されている。入力部材2は、軸受ホルダ88に回転自在に配置された軸受89により回転自在に支持されている。軸受ホルダ88は、ブラケット90にボルト90Aにより固定されている。ブラケット90は、ボルト90Bにより固定部材83に固定されている。
【0076】
出力部材3の先端部分は、ブラケット81の中央部の貫通孔に貫通し、そして出力軸部8の先端部が軸受84に回転自在に支持されているとともに、出力係合凸部9が出力係合凹部15に挿入されている。この実施の形態では、出力係合凸部9の先端側に小径の円柱状の嵌合部91が形成されており、この嵌合部91が入力部材2の入力軸部6の先端中央部に形成された小径の円柱状の凹部92に互いに回転自在に嵌合されている。入力部材2と出力部材3とは、同軸に配置されている。
一対の係合子5が収容されている被押圧部材4の内部空間は、軸受84とOリング85とにより液密に密閉されており、この内部空間に潤滑剤が封入されている。
【0077】
ボールねじ70は、ねじ軸71と、このねじ軸71に螺合されるナット72と、ねじ軸とナット72との間に介在されるボール73とを備えている。ナット72の出力部材3側の端部には、フランジ72aが形成されており、このフランジ72aにブレーキパッド押圧部材74がボルト74Aにより固定されている。このブレーキパッド押圧部材74は、ナット72の回転止めとしても機能している。ボールねじ70の他端部は、軸受ホルダ76に設けられた軸受77に回転自在に支持されている。軸受ホルダ76は、固定部材83に固定されている。軸受ホルダ75のナット72側には、ブレーキパッド押圧部材78が固定されている。ブレーキパッド押圧部材74およびブレーキパッド押圧部材78にはそれぞれ、ブレーキパッド(図示せず)が固定されている。これらのブレーキパッド(ディスクパッド)の間には、ブレーキローター(図示せず)が配置される。
【0078】
このように構成された電動式ブレーキ装置50においては、駐車のために、電動モータ60を作動させると、入力部材2が回転駆動され、1対の係合子5を介して入力部材2の回転トルクはほぼすべて出力部材3に伝達される。そうすると、ボールねじ70のねじ軸71が回転して、ナット72がねじ軸71の他端側(軸受ホルダ76側)に直線移動する。これにより、ナット72に固定されたブレーキパッド押圧部材74が軸受ホルダ76側のブレーキパッド押圧部材78側に移動し、ブレーキパッド押圧部材74のブレーキパッドとブレーキパッド押圧部材78のブレーキパッドとでブレーキローター(ディスクローター)を挟んで押圧し、ブレーキローターが回転しないようなる。
【0079】
そして、この駐車時において、バッテリー切れ等により電動モータ60が失陥しても、ブレーキが解除されて、フェールオープンとなる。すなわち、ブレーキパッドからの反力がボールねじ70を介して出力部材3に逆入力として伝達される。逆入力ブレーキ機構1に出力部材3から逆入力されると、係合子5aに作用するブレーキトルクT´の大きさが出力部材3から係合子5に伝達されるトルクTの大きさよりも小さく設定されているので、出力部材3から逆入力される回転トルクの一部が入力部材2に伝達される。これにより、電動モータ60が逆駆動されて、ブレーキが解除される。また、本実施の形態では、逆入力ブレーキ機構1において逆入力として通過させる回転トルクを非常に小さく設定することで、駐車時に電動モータ60に供給する通電量を非常に小さくできる。
【0080】
本実施の形態の電動式ブレーキ装置50において、第1実施の形態の逆入力ブレーキ機構に代えてまたは追加的に第2実施の形態~第9実施の形態の逆入力ブレーキ機構を適用するようにしても良い。
【0081】
また、逆入力ブレーキ機構を構成する係合子の数は、第1実施の形態~第10実施の形態で示した2個に限らず、1個でも良いし、3個以上としても良い。また、入力部材および出力部材と係合子との係合構造に関しても、第1実施の形態~第10実施の形態で示した構造に限定されない。入力部材および出力部材のそれぞれの回転を係合子の径方向移動に変換可能であれば、従来から知られた各種構造を採用することができる。また、出力部材のがたつきを防止するために使用する弾性部材として、コイル状のばね以外に、板ばねやゴムなどを使用しても良い。
【0082】
本発明の逆入力ブレーキ機構は、電動式ブレーキ装置に好ましく適用できるほか、内燃機関のピストン工程を変化させて機関圧縮比を可変とする可変圧縮比装置や、電動パワーステアリング等に適用することができる。
【0083】
また、本発明の逆入力ブレーキ機構は、ウォームギアの逆効率を低く設計して逆入力に対してブレーキを行っているセルフロック機構に代わりに用いることもできる。すなわち、このように設計されたウォームギアは、正効率も低くなってしまうため、アクチュエータのサイズが大きくなる課題がある。それに対し、本発明の逆入力ブレーキ機構は、セルフロック機構の代わりとして機能するため、正効率が高いギア機構と組み合わせることで、アクチュエータの小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 逆入力ブレーキ機構
2 入力部材
3 出力部材
4 被押圧部材
5、5a~5e 係合子
6 入力軸部
7 入力係合凸部
8 出力軸部
9 出力係合凸部
10 被押圧面
11、11a 押圧面
12、12a 底面
13 側面
14、14a 入力係合孔
15 出力係合凹部
16 案内スリット
17、17a ガイド
18 張出部
19 切り欠き
20 補助軸部
21 収納凹部
22 弾性部材
50 電動式ブレーキ装置
60 電動モータ
70 ボールねじ
図1
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