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特許7095405感光性樹脂組成物用のノボラック型フェノール樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物用のノボラック型フェノール樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/12 20060101AFI20220628BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C08G8/12
G03F7/039 601
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018100136
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019203097
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】眞鳥 純
(72)【発明者】
【氏名】関戸 豊和
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-223120(JP,A)
【文献】特表2001-518553(JP,A)
【文献】特開2002-265443(JP,A)
【文献】特開2005-049867(JP,A)
【文献】特開2008-197226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 8/12
G03F 7/039
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類に由来する構造単位(a1)と、アルデヒド類に由来する構造単位(a2)とを含む感光性樹脂組成物用のノボラック型フェノール樹脂であって、
前記ノボラック型フェノール樹脂中に含まれる前記構造単位(a1)の少なくとも70モル%以上が、o-クレゾール、m-クレゾールおよびp-クレゾールからなる群より選ばれる少なくともいずれかのクレゾール化合物に由来する構造単位であり、
前記ノボラック型フェノール樹脂中のフェノール性水酸基の5~50モル%が、1-エトキシエチル基で保護されており、
分散度が2.0以下であるノボラック型フェノール樹脂であって、
前記ノボラック型フェノール樹脂中に含まれる前記構造単位(a1)のうち、少なくとも70モル%以上が、o-クレゾールに由来する構造単位であるノボラック型フェノール樹脂
【請求項2】
請求項1に記載のノボラック型フェノール樹脂であって、
前記樹脂中のフェノール性水酸基の20~45モル%が、1-エトキシエチル基で保護されているノボラック型フェノール樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載のノボラック型フェノール樹脂であって、
重量平均分子量が1000~10000であるノボラック型フェノール樹脂。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のノボラック型フェノール樹脂であって、
重量平均分子量が2700~8000であるノボラック型フェノール樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物用のノボラック型フェノール樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物には様々なものが知られている。
例えば、アルカリ可溶性基を酸分解性の保護基で保護した樹脂(酸分解性樹脂)と、光照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)とを含む感光性樹脂組成物が知られている。
この感光性樹脂組成物で形成された感光性樹脂膜に光を照射すると、光酸発生剤から酸が発生する。発生した酸(プロトン)は、酸触媒として、酸分解性樹脂の保護基を脱離させ、アルカリ可溶性基が発生する。保護基の脱離後、酸(プロトン)は触媒的に再生され、別の保護基を脱離させることができる(このメカニズムは「化学増幅」と呼ばれる)。
保護基の脱離およびアルカリ可溶性基の発生により、感光性樹脂膜において光が照射された部分の、アルカリ現像液に対する溶解度が上昇する。つまり、光を照射した感光性樹脂膜をアルカリ現像液で現像することで、ポジ型のパターンを得ることができる。
【0003】
このような「酸分解性樹脂および光酸発生剤」を含む感光性樹脂組成物は、例えば、電子デバイスの製造に用いられる「フォトレジスト」として知られている。
例えば、特許文献1には、酸分解性樹脂としてノボラック樹脂を含むフォトレジスト組成物が記載されている。ノボラック樹脂として具体的には、m-クレゾール系繰返し単位を全フェノール系繰返し単位中少なくとも20モル%含有し、フェノール性水酸基の一部の水素原子が1-エトキシエチル基で置換されているノボラック樹脂などが記載されている。ここで、「1-エトキシエチル基」が、酸分解性の保護基に該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3738420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、フォトレジスト等の感光性樹脂組成物の分野において、酸分解性樹脂としてノボラック樹脂を用いることが知られている。
しかし、本発明者らの知見によれば、従来の、酸分解性基を含むノボラック樹脂には、更なる改善の余地があった。例えば、アルカリ溶解性の高さに起因する感度、良好な残膜率および良好なパターン形状などのバランスを取ることが難しく、この点で改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。つまり、本発明は、十分に高感度であり、かつ、残膜率が良好で、さらには良好な形状のパターンを形成可能な感光性樹脂組成物を調製するための、ノボラック型フェノール樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、検討の結果、以下に提供される発明をなし、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
本発明によれば、
フェノール類に由来する構造単位(a1)と、アルデヒド類に由来する構造単位(a2)とを含む感光性樹脂組成物用のノボラック型フェノール樹脂であって、
前記ノボラック型フェノール樹脂中に含まれる前記構造単位(a1)の少なくとも70モル%以上が、o-クレゾール、m-クレゾールおよびp-クレゾールからなる群より選ばれる少なくともいずれかのクレゾール化合物に由来する構造単位であり、
前記ノボラック型フェノール樹脂中のフェノール性水酸基の5~50モル%が、1-エトキシエチル基で保護されており、
分散度が2.0以下であるノボラック型フェノール樹脂
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のノボラック型フェノール樹脂を用いることで、感度が十分に高く、かつ、残膜率が良好で、さらには良好な形状のパターンを形成可能な感光性樹脂組成物を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」の意である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「電子デバイス」の語は、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池など、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する意味で用いられる。
【0011】
<ノボラック型フェノール樹脂>
本実施形態のノボラック型フェノール樹脂は、
フェノール類に由来する構造単位(a1)と、アルデヒド類に由来する構造単位(a2)とを含む感光性樹脂組成物用のノボラック型フェノール樹脂であって、
このノボラック型フェノール樹脂中に含まれる構造単位(a1)の少なくとも70モル%以上が、o-クレゾール、m-クレゾールおよびp-クレゾールからなる群より選ばれる少なくともいずれかのクレゾール化合物に由来する構造単位であり、
このノボラック型フェノール樹脂中のフェノール性水酸基の5~50モル%は、1-エトキシエチル基で保護されており、
分散度は2.0以下である。
【0012】
なお、以下において、本実施形態のノボラック型フェノール樹脂を、単に「樹脂」「本実施形態の樹脂」などとも表記する。
【0013】
上記の樹脂を用いることで、感度が十分に高く、かつ、残膜率が良好で、さらに良好な形状のパターンを形成可能な感光性樹脂組成物を得ることができる理由については、以下観点から説明することができる。なお、以下説明は推測を含み、また、以下説明の内容により本発明が限定されるものでもない。
【0014】
(1)樹脂が、クレゾール(すなわち、1つのメチル基で置換されたフェノール)に由来する構造単位を含むことで、樹脂の構造が制御され、アルカリ可溶性基(フェノール性水酸基)が樹脂の「外側」を向きやすくなると推測される。これにより、樹脂のアルカリ溶解性が高くなる。その結果、感度が十分に高くなる。
(2)酸分解性の保護基が1-エトキシエチル基であり、かつ、保護基の量が適当である(フェノール性水酸基の5~50モル%を保護)ことにより、露光部(保護基が脱離した部分)と未露光部(保護基で保護されたままの部分)の溶解速度の「差」が適当になる。つまり、溶解すべきところは溶解し、溶解すべきではないところは溶解しない、という状態が実現されやすくなる。このことが、良好な残膜率や良好なパターン形状に繋がっている。
(3)分散度が2.0以下であるということは、樹脂の鎖長が比較的揃っていることを意味する。そうすると、露光部が溶解するときに溶解速度が全体として均一になりやすい(樹脂の鎖長が長いと溶解速度は小さくなり、樹脂の鎖長が短いと溶解速度は大きくなると考えられる)。このことも、現像時に良好な形状のパターンを形成可能であることに繋がっている。
なお、実際は、「樹脂が、クレゾールに由来する構造単位を含むこと」「酸分解性の保護基が1-エトキシエチル基であり、フェノール性水酸基の5~50モル%が保護されていること」および「分散度が2.0以下であること」の各々の特徴は各々独立して各性能に寄与するのではなく、(各性能への寄与の軽重はあるものの)これら特徴は一体不可分のものとして感光性樹脂組成物の性能良化に寄与するものと考えられる。
【0015】
樹脂についてより具体的に説明する。
【0016】
樹脂は、フェノール類に由来する構造単位(a1)として、o-クレゾール、m-クレゾールおよびp-クレゾールからなる群より選ばれる1種または2種以上のクレゾール化合物に由来する構造単位を、構造単位(a1)全体に対して、70モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上含む。とりわけ好ましくは、樹脂は、フェノール類に由来する構造単位(a1)としては、o-クレゾール、m-クレゾールおよびp-クレゾールからなる群より選ばれる1種または2種以上のクレゾール化合物に由来する構造単位のみを含む。
【0017】
特に、樹脂は、フェノール類に由来する構造単位(a1)のうち、少なくとも70モル%以上が、o-クレゾールに由来する構造単位であることが好ましい。これにより、樹脂の構造が一層制御され、アルカリ可溶性基(フェノール性水酸基)が樹脂の「外側」をより向きやすくなると推測される(これは、o-クレゾールは、縮合の際の反応点が4位と6位であることに起因する)。これにより、アルカリ溶解性が一層高まる(つまり感度が高くなる)と考えられる。
【0018】
さらに好ましくは、樹脂中のフェノール類に由来する構造単位(a1)のうち、少なくとも90モル%以上が、o-クレゾールに由来する構造単位である。
特に好ましくは、樹脂中のフェノール類に由来する構造単位(a1)のうち、少なくとも95モル%以上が、o-クレゾールに由来する構造単位である。
とりわけ好ましくは、樹脂中のフェノール類に由来する構造単位(a1)の全てが、o-クレゾールに由来する構造単位である。
【0019】
樹脂は、フェノール類に由来する構造単位(a1)として、o-クレゾール、m-クレゾールおよびp-クレゾール以外のフェノール類に由来する構造単位を含んでもよいし、含まなくてもよい。
o-クレゾール、m-クレゾールおよびp-クレゾール以外のフェノール類としては、特に限定されず、例えば、フェノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、2,5-ジエチルフェノール、3,5-ジエチルフェノール、2,3,5-トリエチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、p-フェニルフェノール、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,3-ジメトキシフェノール、2,5-ジメトキシフェノール、3,5-ジメトキシフェノール、2-メトキシレゾルシノール、ホドロキノン、4-tert-ブチルカテコール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α-ナフトール、β-ナフトール、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレンなどを挙げることができる。
樹脂は、これらのフェノール類に由来する構造単位を、フェノール類に由来する構造単位(a1)の全体に対して30モル%以下で含んでもよい。
【0020】
樹脂中のアルデヒド類に由来する構造単位(a2)のアルデヒドとしては、フェノール樹脂の合成において公知のアルデヒド類を挙げることができる。
具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド類、シクロヘキサンアルデヒド、シクロペンタンアルデヒド、フリルアクロレインなどの脂環式アルデヒド類、フルフラール、ベンズアルデヒド、o-、m-又はp-メチルベンズアルデヒド、p-エチルベンズアルデヒド、2,4-、2,5-、3,4-又は3,5-ジメチルベンズアルデヒド、o-、m-又はp-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-、m-又はp-ニトロベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類、フェニルアセトアルデヒド、ケイ皮アルデヒドなどの芳香脂肪族アルデヒド類を挙げることができる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルデヒド類としては、工業的な入手性などから、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0021】
樹脂中の、構造単位(a1)と構造単位(a2)との量比は、特に限定されないが、構造単位(a2)に対する構造単位(a1)のモル比は、好ましくは0.8~1.5、より好ましくは0.8~1.4である。
【0022】
樹脂中のフェノール性水酸基の少なくとも一部は、1-エトキシエチル基(-CH(CH)-O-C)で保護される。この基は、通常、化学増幅型フォトレジスト組成物の分野で知られている光酸発生剤から発生する酸により脱離させることができる。
なお、樹脂は、1-エトキシエチル基に加え、1-エトキシエチル基以外の保護基により保護されていてもよい。しかし、好ましくは、樹脂は、保護基として1-エトキシエチル基のみを含む。
樹脂の保護率(樹脂中のフェノール性水酸基がどれくらいの割合で酸分解性基により保護されているか)は、アルカリ現像液に対する溶解速度を適当とする観点などから、5~50モル%、好ましくは10~45モル%、より好ましくは15~45モル%、さらに好ましくは20~45モル%、特に好ましくは25~40モル%である。
【0023】
なお、保護率は、任意の方法により求めることができるが、例えば、以下のいずれかの方法によることができる。
(1)フェノール性水酸基の保護前後の水酸基当量を滴定よって算出し、保護化率を算出する方法
(2)H-NMRのピーク面積に基づき算出する方法
【0024】
樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、感度と残膜率との高度な両立の観点などから、好ましくは1000~10000、より好ましくは2000~8000、さらに好ましくは2700~8000、特に好ましくは2700~6000である。また、樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、2.0以下であればよい。好ましくは1.0~2.0である。これらの値は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めることができる。
【0025】
<樹脂の製造方法>
樹脂は、任意の方法で製造すればよく、公知の合成方法を適宜適用することができる。
典型的には、まず、付加縮合によりフェノール類とアルデヒド類とから原料樹脂を合成し(原料樹脂の合成)、次に、その原料樹脂に保護基を導入すること(保護基の導入)により製造することができる。
以下、原料樹脂の合成と、保護基の導入について、説明を加える。
【0026】
(原料樹脂の合成)
モノマー原料としては、前述のフェノール類やアルデヒド類を用いることができる。
フェノール類とアルデヒド類の量は、前述のように、好ましくは、構造単位(a2)に対する構造単位(a1)のモル比が0.8~1.5程度となるように適宜調整される。
【0027】
付加縮合の反応は、常法に従って、酸触媒を用いるなどして行えばよい。例えば、60~150℃で2~30時間の条件で行うことができる。
この反応では、反応溶媒を使用してもよい。溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エタノ-ル、ブタノ-ルなどのアルコ-ル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどエステル類、エトキシエチルアルコ-ルなどのエ-テルアルコ-ル類、プロピレングリコ-ルモノメチルエ-テルアセテ-トのエ-テルエステルなどを挙げることができる。
また、反応終了後、酸触媒を除去するために塩基性化合物を添加して中和し、中和塩を水洗により除去してもよい。
【0028】
さらに、反応終了後または上記の水洗後、必要に応じてアルデヒド類を再度添加して高分子量化を図ってもよい。かつ/または、常圧下および/または減圧下で脱水・脱モノマーを行ってもよい。減圧の際の減圧度は特に限定されないが、例えば0.1~200torr程度である。
【0029】
付加縮合で用いることができる触媒としては、塩酸、硫酸、過塩素酸及び燐酸のような無機酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、トリクロロ酢酸及びp-トルエンスルホン酸のような有機酸、酢酸亜鉛、塩化亜鉛及び酢酸マグネシウムのような二価金属塩などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2以上を組合せて用いてもよい。
触媒の使用量は、通常、アルデヒド類1モルに対して0.01~1モルである。
【0030】
(保護基の導入)
保護基の導入方法は特に限定されない。例えば、原料樹脂中のフェノール性水酸基を1-エトキシエチル基で保護する場合、室温にて、ノボラック樹脂に所定量のエチルビニルエーテルを添加し、酸触媒下で所定時間反応させ、その後、ジエチルエーテルを添加し、水洗することで得ることができる。
【0031】
<樹脂を用いた感光性樹脂組成物>
上記の樹脂は、好ましくは、光照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)などと一緒に有機溶剤に溶解させ、感光性樹脂組成物とすることができる。
感光性樹脂組成物が含むことができる、樹脂以外の成分について説明する。
【0032】
・光酸発生剤
光酸発生剤は、光の作用により酸を発生するものであれば特に限定されない。
例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨ-ドニウム塩のCFSO 、p-CHPhSO 、p-NOPhSO (Phはフェニル基)などの塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノンジアジドスルホニルクロリドまたはスルホン酸エステル、ビススルホニルジアゾメタンなどのジアゾメタン化合物、ニトロベンジル化合物、ナフチルイミジルスルホネ-ト等を挙げることができる。また、公知のトリアジン系光酸発生剤などを挙げることもできる。
【0033】
具体的には、ビス(p-t-ブチルフェニル)ヨ-ドニウムトリフルオロメタンスルホネ-ト、ジフェニルヨ-ドニウムトリフルオロメタンスルホネ-ト、ベンゾイントシレ-ト、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネ-ト、トリ(t-ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネ-ト、ベンゼンジアゾニウムパラトルエンスルホネ-ト、4-(ジ-n-プロピルアミノ)-ベンゾニウムテトラフルオロボレ-ト、4-p-トリル-メルカプト-2,5-ジエトキシ-ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオコホスフェ-ト、ジフェニルアミン-4-ジアゾニウムサルフェ-ト、4-メチル-6-トリクロロメチル-2-ピロン、4-(3,4,5-トリメトキシ-スチリル)-6-トリクロロメチル-2-ピロン、4-(4-メトキシ-スチリル)-6-(3,3,3-トリクロロ-プロペニル)-2-ピロン、2-トリクロロメチル-ベンズイミダゾ-ル、2-トリブロモメチル-キノリン、2,4-ジメチル-1-トリブロモアセチル-ベンゼン、4-ジブロモアセチル-安息香酸、1,4-ビス-ジブロモメチル-ベンゼン、トリス-ジブロモメチル-S-トリアジン、2-(ナフチル-1-イル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-S-トリアジン、2-(4-エトキシエチル-ナフチル-1-イル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-S-トリアジン、2-(ベンゾピラニ-3-イル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-S-トリアジン、2-(4-メトキシ-アントラシ-1-イル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-S-トリアジン、2-(フェナンチ-9-イル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-S-トリアジン、o-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸クロリド、ビスシクロヘキシルスルホニウムジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン、1-シクロヘキシルスルホニル-1-(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1-メチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、p-トルエンスルホン酸-2-ニトロベンジルなどを挙げることができる。
【0034】
光酸発生剤としては、透明性、感度、経済的観点などから、トリアジン系光酸発生剤、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネ-トまたはビスシクロヘキシルスルホニウムジアゾメタンが好ましい。
光酸発生剤の使用量は、感度などから勘案すると、上述の樹脂100質量部対して、例えば0.01~20質量%、好ましくは0.01~10質量%、さらに好ましくは0.02~5質量%である。
【0035】
・溶剤
溶剤は、樹脂や光酸発生剤などを溶解するものであれば特に限定なく使用することができる。
溶剤としては、典型的には有機溶剤が用いられる。
具体的には、乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、エトキシエチルアルコ-ルのなどのセロソルブ類、エチルセロソルブアセテ-ト、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテ-ト(PGMEA)などのエ-テルエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン類などが挙げられる。
【0036】
溶剤の使用量は、特に限定されず、所望する膜厚などにより適宜調整することができる。例えば、感光性樹脂組成物の不揮発成分の濃度が20~70質量%となるように調整される。
なお、後述する、高アスペクト比のパターンを形成する場合、感光性樹脂組成物の不揮発成分の濃度は、好ましくは30~65質量%に調整される。
【0037】
・その他成分
感光性樹脂組成物は、樹脂、光酸発生剤および溶剤以外に、種々の成分を含んでもよい。
例えば、光酸発生剤から発生した酸の拡散長を適切に制御するため、化学増幅型フォトレジストの分野で知られているクエンチャー(酸捕捉能のある物質)を含んでもよい。クエンチャーとして具体的には、アミンやアンモニウム塩が挙げられる。クエンチャーとしてより具体的には、特開2017-9999号公報の段落0128~0137に説明されているものなどを挙げることができる。
【0038】
また、塗布性や、膜形成時の平滑性向上などの為に界面活性剤を含んでもよい。さらに、感光性樹脂組成物の経時安定性向上の為に各種の安定剤や酸化防止剤などを含んでもよい。その他、増感剤、溶解抑止剤、溶解促進剤、防食剤、特定の波長の光を吸収する色素などを含んでもよい。
なお、樹脂、光酸発生剤、溶剤等の各成分については、金属不純物等の不純物が少ないことが好ましいことは言うまでもない。
【0039】
感光性樹脂組成物は、上記の溶剤以外の成分を溶剤に溶解させ、好ましくはフィルターなどを使用して異物を除去することで製造することができる。フィルターの孔径は、0.2μm以下であることが好ましい。また、フィルターの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリエチレンなどが好ましい。
【0040】
<感光性樹脂組成物の使用法など>
上記の感光性樹脂組成物を用いて、適当な基板上に感光性樹脂膜を形成し、その感光性樹脂膜を露光・現像するなどしてパターン形成することができる。このパターン形成方法は、電子デバイスの製造に応用することができる。
パターン形成方法について簡単に説明する。
【0041】
・感光性樹脂膜の形成
感光性樹脂膜を形成する基板は特に限定されず、例えばガラス基板、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミ基板、SiCウエハー、GaNウエハー、銅基板、銅メッキ基板などが挙げられる。基板は、未加工の基板であっても、電極や素子が表面に形成された基板であってもよい。
感光性樹脂膜の形成方法は特に限定されない。スピナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング、インクジェット法などにより行うことができる。
【0042】
基板上に塗布された感光性樹脂組成物の乾燥は、典型的にはホットプレート、熱風、オーブン等で加熱処理することで行われる。加熱温度は、通常80~140℃、好ましくは90~120℃である。また、加熱の時間は、通常30~600秒、好ましくは30~300秒程度である。
【0043】
感光性樹脂膜の膜厚は、特に限定されず、最終的に得ようとするパターンに応じて適宜調整すればよい。例えば、通常2~150μm、好ましくは5~120μmである。なお、膜厚は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分濃度の調整や塗布方法の変更などにより調整可能である。
【0044】
なお、本実施形態の樹脂を含む感光性樹脂組成物は、詳細な理由は不明であるが、高アスペクト比のパターン形成に好ましく用いることができる。つまり、本実施形態の樹脂を含む感光性樹脂組成物を用いて高アスペクト比のパターンを形成することで、パターンの倒壊が抑えられたり、かつ/または、パターンの形状を良好としやすかったりする。
なお、「高アスペクト比」とは、例えば、高さ/線幅で表されるアスペクト比が2以上(より具体的には2~10)のラインパターンのことを言う。高アスペクト比のパターンを形成する場合、感光性樹脂膜の膜厚は、好ましくは5~100μm程度に調整する。
【0045】
・露光
露光は、典型的には、適当なフォトマスクを介して活性光線を感光性樹脂膜に当てることで行う。
活性光線としては、例えばX線、電子線、紫外線、可視光線などが挙げられる。波長でいうと200~500nmの光が好ましい。パターンの解像度や取り扱い性の点で、光源は水銀ランプのg線、h線又はi線であることが好ましく、特にi線が好ましい。また、2つ以上の光線を混合して用いてもよい。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション又はステッパーが好ましい。
露光の光量は、感光性樹脂膜中の感光剤の量などにより適宜調整すればよいが、例えば100~500mJ/cm程度である。
【0046】
なお、露光後、必要に応じて、感光性樹脂膜を再度加熱してもよい(露光後加熱:Post Exposure Bake)。その温度は、例えば70~150℃、好ましくは90~120℃である。また、時間は、例えば30~600秒、好ましくは30~300秒である。
【0047】
・現像
露光された感光性樹脂膜を、適当な現像液により現像することで、パターンを得ることができる。現像は、例えば、浸漬法、パドル法、回転スプレー法などの方法を用いて現像を行うことができる。現像により、通常、感光性樹脂膜の露光部が溶出除去され、ポジ型のパターンが得られる。
【0048】
使用可能な現像液は、典型的にはアルカリ水溶液である。アルカリ水溶液として具体的には、(i)水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ水溶液、(ii)エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン水溶液、(iii)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩の水溶液などが挙げられる。
現像液としては、特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましい。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの濃度は、好ましくは0.1~10質量%であり、更に好ましくは0.5~5質量%である。
【0049】
以上の工程により、パターンを得ることができるが、現像の後、様々な処理を行ってもよい。
例えば、現像の後、リンス液によりパターンおよび基板を洗浄してもよい。リンス液としては、例えば蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
得られたパターンは、例えば、電子デバイス製造において、ドライエッチング時のマスクや、イオンインプランテーションプロセスにおけるマスクとして利用することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
フェノール類に由来する構造単位(a1)と、アルデヒド類に由来する構造単位(a2)とを含む感光性樹脂組成物用のノボラック型フェノール樹脂であって、
前記ノボラック型フェノール樹脂中に含まれる前記構造単位(a1)の少なくとも70モル%以上が、o-クレゾール、m-クレゾールおよびp-クレゾールからなる群より選ばれる少なくともいずれかのクレゾール化合物に由来する構造単位であり、
前記ノボラック型フェノール樹脂中のフェノール性水酸基の5~50モル%が、1-エトキシエチル基で保護されており、
分散度が2.0以下であるノボラック型フェノール樹脂。
2.
1.に記載のノボラック型フェノール樹脂であって、
前記ノボラック型フェノール樹脂中に含まれる前記構造単位(a1)のうち、少なくとも70モル%以上が、o-クレゾールに由来する構造単位であるノボラック型フェノール樹脂。
3.
1.または2.に記載のノボラック型フェノール樹脂であって、
前記樹脂中のフェノール性水酸基の20~45モル%が、1-エトキシエチル基で保護されているノボラック型フェノール樹脂。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載のノボラック型フェノール樹脂であって、
重量平均分子量が1000~10000であるノボラック型フェノール樹脂。
5.
1.~4.のいずれか1つに記載のノボラック型フェノール樹脂であって、
重量平均分子量が2700~8000であるノボラック型フェノール樹脂。
6.
1.~5.のいずれか1つに記載のノボラック型フェノール樹脂であって、
前記ノボラック型フェノール樹脂中の、前記構造単位(a2)に対する前記構造単位(a1)のモル比が、0.8~1.5であるノボラック型フェノール樹脂。
【実施例
【0052】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0053】
樹脂の合成例の説明の前に、まず、樹脂の各種パラメータの測定方法について説明しておく。
【0054】
<重量平均分子量および分散度>
以下の合成例で示されるベース樹脂およびフェノール性水酸基が保護された樹脂の重量平均分子量および分散度は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めた。測定条件の詳細は以下のとおりである。
・装置本体:TOSOH社製「HLC-8220」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製「UV-8220」
・分析用カラム:TOSOH社製「TSK-GELSuperHZ2000」、「TSK-GELSuperHZ3000」、「TSK-GELSuperHZM-M」をそれぞれ使用
・溶出溶媒:テトラヒドロフラン、流量0.350ml/min
・カラム温度:40℃
【0055】
<保護率の測定>
日本電子社製「JNM-AL300」を用いたH-NMR測定により、樹脂の保護率(樹脂中のフェノール性水酸基がどれくらいの割合で酸分解性基により保護されているか)を求めた。測定に際しては、重クロロホルムを溶媒とし、積算回数は128回とした。芳香環に結合されているメチル基のピーク面積に対する、保護化された箇所のメチル基のピーク面積を比較することで、保護基を求めた。
【0056】
<ベース樹脂(保護基で保護する前の樹脂)の合成>
[合成例1]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、o-クレゾール500質量部、シュウ酸10質量部を仕込み、内温97~103℃まで上昇させた。温度到達後、37質量%ホルマリン470質量部(全フェノール類に対する仕込みモル比=1.250)を、内温97~103℃を維持しながら3時間かけて添加し、その後2時間還流反応を行った。さらにその後、常圧下で180℃まで脱水・脱モノマーを行い、ノボラック型フェノール樹脂(1)560質量部を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は2700、分散度は1.70であった。
【0057】
[合成例2]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、o-クレゾール500質量部、シュウ酸10質量部を仕込み、内温97~103℃まで上昇させた。温度到達後、37質量%ホルマリン490質量部(全フェノール類に対する仕込みモル比=1.300)を、内温97~103℃を維持しながら3時間かけて添加し、その後2時間還流反応を行った。さらにその後、常圧下で180℃まで脱水・脱モノマーを行い、ノボラック型フェノール樹脂(2)560質量部を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は3500、分散度は1.83であった。
【0058】
[合成例3]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコにo-クレゾール500質量部、シュウ酸質量15部を仕込み、内温97~103℃まで上昇させた。温度到達後、37質量%ホルマリン450質量部(全フェノール類に対する仕込みモル比=1.200)を、内温97~103℃を維持しながら3時間かけて添加し、その後2時間還流反応を行った。さらにその後、常圧下で180℃まで脱水・脱モノマーを行い、ノボラック型フェノール樹脂(3)560質量部を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は4570、分散度は1.94であった。
【0059】
<フェノール性水酸基が保護された樹脂の合成>
[合成例4]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、合成例1で得られたフェノール樹脂(1)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み、樹脂を溶解させた。
その後、エチルビニルエーテル100質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミン0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテール100質量部と純水450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部が1-エトキシエチル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(A)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は2800、分散度は1.75、保護率は35%、固形分濃度は55質量%であった。
【0060】
[合成例5]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、合成例1で得られたフェノール樹脂(1)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み、樹脂を溶解させた。
その後、エチルビニルエーテル90質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミン0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテール100質量部と純水450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部が1-エトキシエチル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(B)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は2750、分散度は1.72、保護率は30%、固形分濃度は55質量%であった。
【0061】
[合成例6]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、合成例2で得られたフェノール樹脂(2)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み樹脂を溶解させた。
その後、エチルビニルエーテル105質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミン0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテール100質量部と純水450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部が1-エトキシエチル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(C)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は3700、分散度は1.88、保護率は35%、固形分濃度は55質量%であった。
【0062】
[合成例7]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、合成例3で得られたフェノール樹脂(3)を500質量部、THFを1000質量部仕込み樹脂を溶解させた。その後、エチルビニルエーテル105質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させ5時間反応させた。反応後、トリエチルアミンを0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテール100質量部と純水450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部が1-エトキシエチル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(D)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は4750、分散度は1.98、保護率は35%、固形分濃度は55質量%であった。
【0063】
<比較用ベース樹脂の合成>
[比較合成例1]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、o-クレゾール500質量部、シュウ酸10質量部を仕込み、内温97~103℃まで上昇させた。温度到達後、37質量%ホルマリン470質量部(全フェノール類に対する仕込みモル比=1.250)を、内温97~103℃を維持しながら3時間かけて添加し、その後2時間還流反応を行った。さらにその後、高分子量化のため、37質量%ホルマリンを20質量部再度添加し、5時間還流を行なう作業を3回繰り返した。そして、常圧下で180℃まで脱水・脱モノマーを行い、ノボラック型フェノール樹脂(4)544質量部を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は10160、分散度は2.63であった。
【0064】
[比較合成例2]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、o-クレゾール450質量部、フェノール50質量部、シュウ酸15質量部を仕込み、内温97~103℃まで上昇させた。温度到達後、37質量%ホルマリン420部(全フェノール類に対する仕込みモル比=1.100)を、内温97~103℃を維持しながら3時間かけて添加し、その後2時間還流反応を行った。さらにその後、常圧下で180℃まで脱水・脱モノマーを行い、ノボラック型フェノール樹脂(5)544質量部を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は4,400、分散度は2.42であった。
【0065】
[比較合成例3]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、o-クレゾール450質量部、メタクレゾール5質量0部、シュウ酸10質量部を仕込み、内温97~103℃まで上昇させた。温度到達後、37質量%ホルマリン質量380部(全フェノール類に対する仕込みモル比=1.000)を、内温97~103℃を維持しながら3時間かけて添加し、その後2時間還流反応を行った。さらにその後、常圧下で180℃まで脱水・脱モノマーを行い、ノボラック型フェノール樹脂(6)544質量部を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量4,400、分散度は2.42であった。
【0066】
[比較合成例4]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、m-クレゾール500質量部、ュウ酸1質量部を仕込み、内温97~103℃まで上昇させた。温度到達後、37%ホルマリン300質量部(全フェノール類に対する仕込みモル比=1.100)を、内温97~103℃を維持しながら3時間かけて添加し、その後2時間還流反応を行った。さらにその後、常圧下で180℃まで脱水・脱モノマーを行い、ノボラック型フェノール樹脂(7)520質量部を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は2,700、分散度は2.90であった。
【0067】
<比較用の、フェノール性水酸基が保護された樹脂の合成>
[比較合成例5]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、合成例2で得られたフェノール樹脂(2)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み、樹脂を溶解させた。
その後、エチルビニルエーテル180質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミン0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテール100質量部と純水450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部が1-エトキシエチル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(E)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は3700、分散度は1.89、保護率は60%、固形分濃度は55質量%であった。
【0068】
[比較合成例6]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、合成例2で得られたフェノール樹脂(2)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み樹脂を溶解させた。その後、t-ブチルジカルボネート91質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミンを0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテール100質量部と純水を450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部がt-ブトキシカルボニル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(F)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は3550、分散度は1.84、保護率は10%、固形分濃度は55質量%であった。
【0069】
[比較合成例7]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、合成例2で得られたフェノール樹脂(2)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み樹脂を溶解させた。その後、t-ブチルジカルボネート273質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミン0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテール100質量部と純水450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部がt-ブトキシカルボニル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(G)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は3750、分散度は1.99、保護率は30%、固形分濃度は55質量%であった。
【0070】
[比較合成例8]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、合成例3で得られたフェノール樹脂(3)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み樹脂を溶解させた。その後、ノルマルプロピルビニルエーテル109質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミン0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテールを100質量部と純水を450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部が1-プロポキシエチル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(H)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は4700、分散度は1.96、保護率は35%、固形分濃度は55質量%であった。
【0071】
[比較合成例9]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、合成例3で得られたフェノール樹脂(3)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み樹脂を溶解させた。その後、ノルマルプロピルビニルエーテル156質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミン0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテールを100質量部と純水450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部が1-プロポキシエチル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(I)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は4750、分散度は1.99、保護化率は50%、固形分濃度は55質量%であった。
【0072】
[比較合成例10]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、比較合成例1で得られたフェノール樹脂(4)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み樹脂を溶解させた。その後、エチルビニルエーテル143質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミンを0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテール100質量部と純水450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部が1-エトキシエチル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(J)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は10500、分散度は2.70、保護率は50%、固形分濃度は55質量%であった。
【0073】
[比較合成例11]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、比較合成例2で得られたフェノール樹脂(5)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み樹脂を溶解させた。その後、エチルビニルエーテル90質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミン0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテール100質量部と純水450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部が1-エトキシエチル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(K)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は4500、分散度は2.50、保護率は30%、固形分濃度は55質量%であった。
【0074】
[比較合成例12]
攪拌機、温度計、熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、比較合成例3で得られたフェノール樹脂(6)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み樹脂を溶解させた。その後、エチルビニルエーテル90質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミン0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテール100質量部と純水450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部が1-エトキシエチル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(L)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は3700、分散度は2.60、保護率は30%、固形分濃度は55質量%であった。
【0075】
[比較合成例13]
攪拌機、温度計および熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、比較合成例4で得られたフェノール樹脂(7)を500質量部、THF(テトラヒドロフラン)を1000質量部仕込み樹脂を溶解させた。その後、エチルビニルエーテル143質量部およびパラトルエンスルホン酸0.085質量部を追加で仕込み、内温37~43℃まで上昇させて5時間反応させた。反応後、トリエチルアミン0.096質量部により中和を行なった。
その後、ジエチルエテール100質量部と純水450質量部との混合物により水洗し、さらに乳酸エチルへ溶剤置換を実施した。これにより、フェノール性水酸基の一部が1-エトキシエチル基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(M)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は2760、分散度は3.00、保護化率は30%、固形分濃度は55質量%であった。
【0076】
<上記の樹脂を含む感光性樹脂組成物の調製>
イエローライト下の部屋で、室温にて、以下の原材料を3時間攪拌して均一な溶液を得た。
・保護基で保護されたノボラック型フェノール樹脂(後掲の表1に示すもの):固形分として100質量部
・光酸発生剤(日本カーバイド工業社製、TMEトリアジン(商品名)):2質量部
・界面活性剤:0.02質量部
・溶剤(乳酸エチル):適量(膜厚等により調整)
【0077】
上記の溶液を、孔径1.0μmのポリプロピレン製メンブランフィルターにより窒素加圧ろ過し、感光性樹脂組成物を得た。
【0078】
<性能評価>
[感度]
調製した各感光性樹脂組成物を、直径3インチのシリコンウエハにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で100秒間乾燥させた。これにより感光性樹脂膜を形成した。
この感光性樹脂膜にテストチャートマスクを重ね、600mJ/cm、1000mJ/cm、2000mJ/cmのi線をそれぞれ照射し、現像液(2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)を用い現像した。現像後の膜を走査型電子顕微鏡で観察し、以下の基準で評価した。
600mJ/cm未満で画像が形成できる:○(良好)
600~1000mJ/cmで画像が形成できる:△(普通)
1000~2000mJ/cmで画像が形成できる:×(悪い)
【0079】
[残膜率]
調製した各感光性樹脂組成物を、直径3インチのシリコンウエハにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で100秒間乾燥させた。これにより感光性樹脂膜を形成した。
これを、露光せずに、60秒、現像液(2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)に浸漬した。浸漬前後での残膜率(現像後膜厚/初期膜厚)を以下基準で評価した。
98%以上:◎(とても良い)
95%以上98%未満:○(良い)
90%以上95%未満:△(普通)
90%未満:×(悪い)
【0080】
[アスペクト比]
膜厚が30μmとなるように感光性樹脂組成物をウエハ上に塗布し、そして、線幅10μmとなるようにラインパターンの露光、および現像を行った。得られたパターンのアスペクト比(膜厚/線幅)を以下のように評価した。
2以上:○(良い)
2未満:×(悪い)
【0081】
[パターン形状]
上記[アスペクト比]の評価で得られたパターンの形状を、走査型電子顕微鏡で観察した。十分に矩形だったものについては良好、そうでないものは不良とした。なお、不良のものについては、どのような形状であったかも適宜観察、記録した。
【0082】
表1に、評価に用いた樹脂に関する情報をまとめて示す。また、表2に、評価結果をまとめて示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
表1および表2に示されるとおり、本実施形態のノボラック型フェノール樹脂を用いて調製された感光性樹脂組成物(実施例1~4)は、感度が十分に高く、残膜率が良好で、また、良好なパターン形状を示した。さらに、アスペクト比の評価についても良好な結果を示した。
一方、フェノール性水酸基の保護率が50%超である比較例1、保護基が1-エトキシエチル基ではない比較例2~5、樹脂の分散度が2.0超である比較例6~9の評価結果は、実施例1~4と比較して劣るものであった。