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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】自動二輪車の排気装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20220628BHJP
【FI】
F01N13/08 B
F01N13/08 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018122812
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020002856
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】松本 明男
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-067417(JP,A)
【文献】特開平09-242526(JP,A)
【文献】特開2014-047762(JP,A)
【文献】特開2007-255395(JP,A)
【文献】特開2011-085113(JP,A)
【文献】特開2010-065535(JP,A)
【文献】特開2001-248435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0261395(US,A1)
【文献】実公昭48-016002(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ポートに接続される複数の排気パイプと、前記複数の排気パイプを集合させる集合パイプと、前記集合パイプとマフラーとを接続するジョイントパイプと、前記ジョイントパイプに取り付けられ排気通路の通路面積を変更する排気制御バルブと、を備える自動二輪車の排気装置であって、
前記排気制御バルブの上流側および下流側の排気通路を連通させるバイパスパイプを有し、
前記ジョイントパイプは、排気通路をメイン通路とサブ通路とに分ける隔壁部が設けられるとともに、前記マフラーのコネクタ部材に挿入された状態で固定され、
前記バイパスパイプは、下流端が前記ジョイントパイプに接続されるとともに、前記サブ通路に曲部を介して接続され、
前記隔壁部は、前記ジョイントパイプに設けられる第1の隔壁と、前記マフラーに設けられる第2の隔壁とを有していることを特徴とする自動二輪車の排気装置。
【請求項2】
前記サブ通路は、前記マフラー内に到るまで設けられていることを特徴とする請求項に記載の自動二輪車の排気装置。
【請求項3】
前記マフラー内における前記サブ通路の出口は、車両の下側を指向していることを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車の排気装置。
【請求項4】
前記バイパスパイプは、前記ジョイントパイプの下側であって、前記ジョイントパイプの外端よりも車両の内側に位置していることを特徴とする請求項1ないしの何れか1項に記載の自動二輪車の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の排気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、自動二輪車は、内燃機関からの排気が外部へ排出されるときに生じる排気音を消音させるためにマフラー等を有する排気装置を備えている。一方、排気装置を備えることで背圧が高くなることから、高速走行時における出力性能が抑制されてしまうことがある。高速走行時の出力性能を向上させるためには、排気装置における排気通路の通路面積を大きくしたり排気通路長さを短くしたりすることが考えられるが、逆に低速走行時には出力性能が低下し過ぎてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4749982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような課題に対して、特許文献1には排気装置に排気バルブを備えた自動二輪車が開示されている。排気バルブを備えた自動二輪車では、高速走行時と低速走行時とで排気の通路面積を調整することで出力性能を向上させている。
一方、低速走行時には、市街地や住宅地等の騒音の影響が大きい場所を走行している場合が多いために高い消音性能が望まれる。低速走行時に消音性能を向上させるためには排気バルブを閉じればよいが、閉じ過ぎると背圧が高くなり過ぎてしまうという相反する問題がある。なお、マフラーを大型化することで解決することが考えられるものの、車両の外観や重量、バンク角等に悪い影響を及ぼす虞がある。
【0005】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、低速走行時の消音性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動二輪車の排気装置は、内燃機関の排気ポートに接続される複数の排気パイプと、前記複数の排気パイプを集合させる集合パイプと、前記集合パイプとマフラーとを接続するジョイントパイプと、前記ジョイントパイプに取り付けられ排気通路の通路面積を変更する排気制御バルブと、を備える自動二輪車の排気装置であって、前記排気制御バルブの上流側および下流側の排気通路を連通させるバイパスパイプを有し、前記ジョイントパイプは、排気通路をメイン通路とサブ通路とに分ける隔壁部が設けられるとともに、前記マフラーのコネクタ部材に挿入された状態で固定され、前記バイパスパイプは、下流端が前記ジョイントパイプに接続されるとともに、前記サブ通路に曲部を介して接続され、前記隔壁部は、前記ジョイントパイプに設けられる第1の隔壁と、前記マフラーに設けられる第2の隔壁とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低速走行時の消音性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動二輪車の構成の一例を示す右側面図である。
図2】自動二輪車の構成の一例を示す底面図である。
図3】排気装置の構成の一例を示す左側面図である。
図4】排気装置の構成の一例を示す断面図である。
図5】排気装置の一部を拡大した断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施形態は、内燃機関の排気ポートに接続される複数の排気パイプ21a~21dと、複数の排気パイプ21a~21dを集合させる集合パイプ23と、集合パイプ23とマフラー35とを接続するジョイントパイプ26と、ジョイントパイプ26に取り付けられ排気通路の通路面積を変更する排気制御バルブ28と、を備える自動二輪車1の排気装置20であって、排気制御バルブ28の上流側および下流側の排気通路を連通させるバイパスパイプ55を有し、バイパスパイプ55は、下流端がジョイントパイプ26に接続されている。このため、低速走行時にはバイパスパイプ55を通って排気することで、排気制御バルブ28を従来よりも閉めることができる。したがって、排気制御バルブ28によって排気音を遮断でき、消音性能を向上させることができる。また、排気制御バルブ28を従来よりも閉めることで、排気ガスが主にバイパスパイプ55を通ることから排気通路長さを長くでき、消音性能を向上させることができる。
【0010】
(実施例)
以下、添付図面を参照して、本実施形態に係る自動二輪車の排気装置の好適な実施例について説明する。
図1は、自動二輪車1の構成の一例を示す右側面図である。なお、必要に応じて図面には、車両の前側を矢印「前」で示し、その逆を後側とする。また、車両の左側を矢印「左」で示し、その逆を右側とする。また、車両の上側を矢印「上」で示し、その逆を下側とする。
【0011】
自動二輪車1は、鋼製あるいはアルミニウム合金製の車体フレーム100により車体骨格を形成する。車体フレーム100はエンジン10を始めとする構成部材もしくは部品を支持する。車体フレーム100の前部には、ステアリングヘッドパイプ102によって左右に回動可能に一対のフロントフォーク103が支持される。フロントフォーク103の上端にはステアリングブラケットを介してハンドルバーが固定される。フロントフォーク103の下部には前輪104が回転可能に支持される。前輪104の上側にはフロントフェンダが取り付けられる。
【0012】
車体フレーム100は、メインフレーム部101aとピボットフレーム部101bとを有する、いわゆるツインスパータイプのフレームとして構成される。メインフレーム部101aは、ステアリングヘッドパイプ102の後部に一体的に結合され、後側に向けて左右一対で二又状に分岐する。ピボットフレーム部101bは、メインフレーム部101aから後下側に向けて延出する。車体フレーム100は、メインフレーム部101aおよびピボットフレーム部101bによって内側に空間を有する立体的構造である。車体フレーム100の内側には内燃機関としてのエンジン10が搭載される。
【0013】
ピボットフレーム部101bは、上下方向における略中央にピボットシャフト105を介して、上下方向に揺動可能にスイングアーム106が支持される。スイングアーム106の後端には後輪107が回転可能に支持される。後輪107の前上側にはリヤフェンダが取り付けられる。エンジン10の動力は、動力伝達用チェーンを介して後輪107に伝達されることで後輪107が回転し、自動二輪車1が走行する。なお、車体フレーム100とスイングアーム106の間にはリンク機構を介してリヤショックアブソーバ108が装架される。
メインフレーム部101aの後部付近から後輪107の上側にかけて、後上側に適度に傾斜してシートレール109が延出する。シートレール109は着座シートを支持する。着座シートの前側にはタンクカバーによって覆われる燃料タンクが搭載される。
【0014】
エンジン10は、例えば、水冷多気筒の4サイクルガソリンエンジンが用いられる。なお、本実施例では気筒が左右方向(車幅方向)に4つ並設された並列4気筒エンジンについて説明するが、この場合に限られない。
エンジン10は、左右方向に沿ったクランクシャフト11を収容して支持するクランクケース12と、シリンダブロック13と、シリンダヘッド14と、シリンダヘッドカバー15とが順次重なるように一体的に結合して構成される。クランクケース12の下部にはオイルパン16が付設される。エンジン10は、シリンダ軸線が前側に適度に傾斜した状態で車体フレーム100によって支持される。エンジン10は複数のエンジンマウントを介して懸架されることで車体フレーム100の内側に一体的に結合支持され、エンジン10自体が車体フレーム100の剛性部材として作用する。
【0015】
クランクケース12の後部にはトランスミッションケース17が一体的に形成される。トランスミッションケース17の内部には、カウンタシャフトや複数のトランスミッションギヤが配設される。エンジン10の動力はクランクシャフト11からトランスミッションを経て最終的に、動力伝達用チェーンを介して後輪107を回転させる。なお、クランクケース12とトランスミッションケース17は相互に一体的に結合し、全体としてエンジン10を含むエンジンユニットのケーシングアセンブリを構成する。ケーシングアセンブリの適所にはエンジン始動用のスタータモータやクラッチ装置等を始めとする複数の補機類が結合される。
【0016】
また、自動二輪車1はエアクリーナから供給される吸気と燃料供給装置から供給される燃料とからなる混合気を供給する吸気装置と、燃焼後の排気ガスをエンジン10から排出する排気装置等を有する。
まず、吸気装置について説明する。
吸気装置は、エアクリーナ、吸気パイプ、スロットルボディ等を有する。エンジン10のシリンダヘッド14の後側には複数(ここでは4つ)の気筒に対応した吸気ポートが形成され、各吸気ポートに吸気パイプを介してスロットルボディが接続される。スロットルボディは、アクセル開度に応じて吸気通路を開閉するスロットルバルブを有し、エアクリーナから供給される吸気の量を制御する。スロットルボディは、下流側に燃料噴射用のインジェクタが配置される。インジェクタは所定タイミングでスロットルボディ内の吸気流路に燃料を噴射することで、シリンダヘッド14の各気筒に混合気を供給する。
【0017】
次に、排気装置20について図1図5を参照して説明する。
図2は、自動二輪車1の構成の一例を示す底面図である。
排気装置20は、第1の排気パイプ21a~第4の排気パイプ21d、第1の合流パイプ22a、第2の合流パイプ22b、集合パイプ23、触媒ケース24、ジョイントパイプ26、マフラー35等を有する。第1の排気パイプ21a~第4の排気パイプ21d、第1の合流パイプ22a、第2の合流パイプ22b、集合パイプ23、触媒ケース24およびジョイントパイプ26は、例えば溶接によって一体で構成される。
【0018】
エンジン10のシリンダヘッド14の前側には複数(ここでは4つ)の気筒に対応した排気ポートが形成され、各排気ポートに第1の排気パイプ21a~第4の排気パイプ21dが接続される。ここで、第1の排気パイプ21aは左から1つ目、第2の排気パイプ21bは左から2つ目、第3の排気パイプ21cは左から3つ目、第4の排気パイプ21dは左から4つ目にそれぞれ位置する。第1の排気パイプ21a~第4の排気パイプ21dは、排気ポートからそれぞれシリンダブロック13の前側およびクランクケース12の前側を通って下側に向かって延出し、湾曲した後に後側に向かって延出する(図1を参照)。
【0019】
第1の排気パイプ21aおよび第2の排気パイプ21bは第1の合流パイプ22aに接続され、第3の排気パイプ21cおよび第4の排気パイプ21dは第2の合流パイプ22bに接続される(図2を参照)。各排気パイプと合流パイプとは、例えば溶接によって接続される。第1の合流パイプ22aおよび第2の合流パイプ22bはそれぞれ左右に並列した状態で配置される。また、第1の合流パイプ22aおよび第2の合流パイプ22bはクランクケース12の下側に位置する。なお、クランクケース12に付設されたオイルパン16は、クランクケース12の下部のうち車幅方向の右側(一方側)に偏って位置している。したがって、第1の合流パイプ22aおよび第2の合流パイプ22bは、オイルパン16と干渉しないように、車両中心線Cから車幅方向の左側(他方側)に偏って配置される。
【0020】
第1の合流パイプ22aおよび第2の合流パイプ22bは集合パイプ23に接続される。第1の合流パイプ22aおよび第2の合流パイプ22bと、集合パイプ23とは、例えば溶接によって接続される。集合パイプ23はクランクケース12の下側に位置する。第1の合流パイプ22aおよび第2の合流パイプ22bと同様に、集合パイプ23もオイルパン16と干渉しないように、車両中心線Cから車幅方向の他方側(ここでは左側)に偏って配置される。
【0021】
集合パイプ23は触媒ケース24に接続される。集合パイプ23と触媒ケース24とは、例えば溶接によって接続される。触媒ケース24は略パイプ状であって、内部に排気ガスの有害成分を浄化するための触媒コンバータが配置される。触媒ケース24は、ピボットフレーム部101bの下側に位置し、ピボットフレーム部101bにブラケット25を介して固定される。なお、図2に示すように、集合パイプ23および触媒ケース24は、前側から後側に向かうにしたがって軸線が左側から右側に傾斜するように延出する。
【0022】
触媒ケース24は、ジョイントパイプ26に接続される。触媒ケース24とジョイントパイプ26とは、例えば溶接によって接続される。ジョイントパイプ26は、触媒ケース24を介して集合パイプ23とマフラー35とを接続する。図1に示すように、ジョイントパイプ26は前側から後側に向かうにしたがって後上側に傾斜するように延出する。また、ジョイントパイプ26は一部がリンク機構と重なり合うように配置される。また、図2に示すように、ジョイントパイプ26は前側から後側に向かうにしたがって軸線が左側から右側に傾斜するように延出する。
【0023】
本実施例のジョイントパイプ26は、第1のジョイントパイプ部材27aと第2のジョイントパイプ部材27bとから構成される。第1のジョイントパイプ部材27aおよび第2のジョイントパイプ部材27bとは、例えば溶接によって接続されることで、一つのジョイントパイプ26として機能する。
ここで、第1のジョイントパイプ部材27aの内部には排気制御バルブ28を取り付けられる。排気制御バルブ28は、開閉角度を調整することでジョイントパイプ26内の排気通路の通路面積を変更することができる。すなわち、排気制御バルブ28は、第1のジョイントパイプ部材27aを流れる排気ガスの量を制御する。
【0024】
図3は、排気装置20の構成の一例を示す左側面図である。図4は、排気装置20の構成の一例を示す断面図である。図5は、排気装置20の一部を拡大した断面斜視図である。
図3に示すように、排気制御バルブ28は、第1のジョイントパイプ部材27aの延出方向に対して直交する回動軸29を中心にして回動する。排気制御バルブ28が開く方向に回動することで排気通路の通路面積が増加し、排気制御バルブ28が閉じる方向に回動することで排気通路の通路面積が減少する。排気制御バルブ28は、第1のジョイントパイプ部材27aの外側でワイヤあるいはケーブルを介してアクチュエータと接続される。自動二輪車1に備えられたECUはエンジン回転数等の情報を取得して、取得した情報に基づいてアクチェエータを制御することにより排気制御バルブ28が回動する。
【0025】
ジョイントパイプ26は、後述するコネクタ部材39を介してマフラー35に接続される。マフラー35は、前側から後側に向かうにしたがって後上側に傾斜するように延出する。また、マフラー35は、本体部45の上部に結合された取付ブラケット52を介してシートレール109に固定される。図4に示すように、マフラー35は、コーン部36、本体部45、バッフルパイプ60等を有する。
【0026】
コーン部36は二重構造であって、外側コーン部材37aと、内側コーン部材37bとを有する。外側コーン部材37aと内側コーン部材37bは、それぞれ前側から後側に向かうにしたがって外径が徐々に大きく形成される。外側コーン部材37aの前端側には、直線状であって略筒状の接続部38が形成される(図5も参照)。接続部38はコネクタ部材39が接続される。コネクタ部材39は、ジョイントパイプ26の後端と連結することで、ジョイントパイプ26とマフラー35とが接続される。コネクタ部材39の内径はジョイントパイプ26の外径よりも大きいことから、ジョイントパイプ26はコネクタ部材39内に嵌まり込んだ状態で接続される。なお、コネクタ部材39とジョイントパイプ26とが接続された状態では、コネクタ部材39の内周とジョイントパイプ26の外周との間にガスケットが介在することで排気ガスが外部に漏洩するのを防止する。
【0027】
本体部45は二重構造であって、外筒部材46aと、内筒部材46bとを有する(図4を参照)。外筒部材46aと内筒部材46bとの間には隙間が形成され、この隙間にグラスウール等の各種吸音材が設けられる。
本体部45は、後壁47によって閉塞されると共に、仕切部としてのバッフルプレート48によって区画されることで複数の膨張室が形成される。本実施例の本体部45は、前側に位置する第1の膨張室49aと、後側に位置する第2の膨張室49bとの2室が形成される。なお、バッフルプレート48は本体部45を前側と後側とで略3:5に区画することで、第1の膨張室49aの容積は第2の膨張室49bの容積よりも小さい。
【0028】
第1の膨張室49aと第2の膨張室49bとの間には連通パイプ50によって連通される。連通パイプ50は、延出方向が本体部45の延出方向と平行になるように直線状に配置される。具体的に、連通パイプ50はバッフルプレート48の中央よりもやや上側寄りに穿設された孔に挿入された状態で固定される。このように連通パイプ50が配置されることで、第1の膨張室49aの排気ガスは、連通パイプ50を通って第2の膨張室49bに流れる。
また、第2の膨張室49と外部とはテールパイプ51によって連通される。テールパイプ51は、延出方向が本体部45の延出方向と平行になるように直線状に配置される。具体的に、テールパイプ51は後壁47の中央よりもやや上側寄りに穿設された孔に挿入された状態で固定される。このようにテールパイプ51が配置されることで、第2の膨張室49bの排気ガスは、テールパイプ51を通って外部に排出される。
なお、連通パイプ50とテールパイプ51とは内径が略同一であり、それぞれの中心軸線が直線状に略一致する。また、連通パイプ50の後端とテールパイプ51の前端とは、第2の膨張室49内で隙間を介して対向する。
【0029】
次に、本実施例の排気装置20において、高速走行時には出力性能を向上させつつ低速走行時には消音性能を向上させることができる構造について説明する。
本実施例の排気装置20には、ジョイントパイプ26内の排気通路の一部を排気ガスが迂回するためのバイパスパイプ55を有する。バイパスパイプ55の内部は排気ガスの排気通路として機能する。なお、バイパスパイプ55の内径(あるいは外径)は、ジョイントパイプ26の内径(あるいは外径)よりも大きい。したがって、バイパスパイプ55の通路面積はジョイントパイプ26の通路面積よりも小さい。
図3に示すように、バイパスパイプ55は略U字状に形成される。バイパスパイプ55は、上流部56aと、中間部56bと、下流部56cとが一体で構成される。上流部56aおよび下流部56cは緩やかに湾曲し、中間部56bは略直線状に形成される。ここで、上流部56aおよび下流部56cは曲部の一例に対応する。
【0030】
図3および図4に示すように、バイパスパイプ55はジョイントパイプ26に結合される。具体的には、バイパスパイプ55の上流部56aは、第1のジョイントパイプ部材27aの下部であって排気制御バルブ28よりも上流側に穿設された第1の開口部30と連通するように例えば溶接によって結合される。上流部56aは、第1のジョイントパイプ部材27aの延出方向に対して略直交する方向から結合される。一方、バイパスパイプ55の下流部56cは、第2のジョイントパイプ部材27bの延出方向の略中央かつ下部に穿設された第2の開口部31と連通するように例えば溶接によって結合される。下流部56cは、第2のジョイントパイプ部材27bの延出方向に対して略直交する方向から結合される。
このように、バイパスパイプ55がジョイントパイプ26に結合されることで、ジョイントパイプ26により形成される排気通路のうち排気制御バルブ28の上流側および下流側の排気通路が連通する。ここで、バイパスパイプ55のうち上流部56aおよび下流部56cは湾曲しているために、図4に示す範囲L(第1の開口部30から第2の開口部31までの範囲)で比較すると、バイパスパイプ55の排気通路長さはジョイントパイプ26の排気通路長さよりも長くなる。
【0031】
また、図2に示すように、バイパスパイプ55はジョイントパイプ26の下側に位置し、バイパスパイプ55の一部(あるいは全部)がジョイントパイプ26と重なり合う。更に、バイパスパイプ55はジョイントパイプ26のうち外端(外側の外形線)よりも車両の内側に位置する。したがって、排気装置20の外観やバンク角に与える影響を抑制することができる。また、バイパスパイプ55は例えば接地した乗員の脚と干渉することを防止することができる。
また、図4および図5に示すように、ジョイントパイプ26のうち第2のジョイントパイプ部材27bは、排気通路を2つの通路に区画する第1の隔壁32を有する。具体的には、第1の隔壁32は上側に突出するように湾曲された略板状であって、第2のジョイントパイプ部材27bのうち右側の内周面と左側の内周面とに亘って架け渡されるように結合される。したがって、第2のジョイントパイプ部材27bの内部には、第1の隔壁32に区画されることで、上側に第1のメイン通路33a、下側に第1のサブ通路33bが形成される。第1のメイン通路33aの通路面積は、第1のサブ通路33bの通路面積よりも大きい。なお、第1のサブ通路33bの通路面積は、バイパスパイプ55の通路面積よりも大きい。
ここで、第1の隔壁32は、前端が排気制御バルブ28よりも下流側に位置する。また、第1の隔壁32は、前端側がバイパスパイプ55の第2の開口部31を第2のジョイントパイプ部材27bの内部かつ上側から覆っている。したがって、バイパスパイプ55の排気通路と第2のジョイントパイプ部材27bの第1のサブ通路33bとが連通する。すなわち、バイパスパイプ55を流れる排気ガスは、第1のメイン通路33aに流れることなく第1のサブ通路33bに流れる。一方、第1の隔壁32のうち後端は、第2のジョイントパイプ部材27bの後端に位置する。
【0032】
また、図5に示すように、外側コーン部材37aの接続部38および内側コーン部材37bの前端には、バッフルパイプ60が例えば溶接によって結合される。バッフルパイプ60は、延出方向がマフラー35の延出方向と平行になるように直線状に配置される。
バッフルパイプ60は、前側に位置する前側部61aと後側に位置する後側部61bとを有する。前側部61aは、接続部38とコネクタ部材39との間に挟まれた状態で、例えば溶接によって結合される。また、後側部61bは、外周面に内側コーン部材37bの前端が、例えば溶接によって結合される。後側部61bは、前側部61aからマフラー35内に向かって延出し、マフラー35のコーン部36内および本体部45内にまで到っている。
図4に示すように、後側部61bと連通パイプ50とはそれぞれ中心軸線が直線状に略一致する。ここでは、後側部61bの後端と連通パイプ50の前端とは第1の膨張室49a内で隙間を介して対向する。後側部61bの内径は、連通パイプ50の内径よりも大きい。また、後側部61bは、第2のジョイントパイプ部材27bの内径と略同一であり、それぞれの中心軸線が直線状に略一致する。
バッフルパイプ60の後側部61bにはマフラー35内、具体的にはコーン部36内に位置する部位に開口部62が穿設される。開口部62は、第2のサブ通路33bの出口として機能し、バッフルパイプ60の延出方向に対して直交する方向、ここでは車両の下側に向かって指向し、第1の膨張室49aと連通する。
【0033】
また、バッフルパイプ60は、第2のジョイントパイプ部材27bに設けられた第1の隔壁32と同じように、内部の排気通路を2つの通路に区画する第2の隔壁63を有する。具体的には、第2の隔壁63は、上側に突出するように湾曲された略板状であって、バッフルパイプ60のうち右側の内周面と左側の内周面とに亘って架け渡されるように結合される。したがって、バッフルパイプ60の内部には第2の隔壁63に区画されることで、上側に第2のメイン通路64a、下側に第2のサブ通路64bが形成される。第2のメイン通路64aの通路面積は、第2のサブ通路64bの通路面積よりも大きい。なお、第2のサブ通路64bの通路面積は、バイパスパイプ55の通路面積よりも大きい。
ここで、第2の隔壁63は、後端側が開口部62をバッフルパイプ60の内部かつ上側から覆っている。したがって、第2のサブ通路64bと第1の膨張室49aとが連通する。一方、第2の隔壁63のうち前端は、バッフルパイプ60の後側部61bの前端に位置する。
【0034】
ここで、第2の隔壁63は、第1の隔壁32と略同一の曲率半径で湾曲し、第1の隔壁32と略同様に区画する。したがって、第1のメイン通路33aと第2のメイン通路64aとは、略同一の断面形状で連通する。同様に、第1のサブ通路33bと第2のサブ通路64bとは、略同一の断面形状で連通する。したがって、第1のメイン通路33aからの排気ガスはそのまま第2のメイン通路64aに流れ、第1のサブ通路33bからの排気ガスはそのまま第2のサブ通路64bに流れる。
なお、第1の隔壁32の後端と第2の隔壁63の前端とは、接触せずに隙間を介して対向している。しかしながら、第1の隔壁32と第2の隔壁63との間の隙間は僅かであると共に隙間は排気ガスの流れに対して交差しないように位置している。したがって、隙間を通して排気ガスが第1のメイン通路33aから第2のサブ通路64bに漏洩したり、第1のサブ通路33bから第2のメイン通路64aに漏洩したりすることを抑制することができる。
ここで、第1の隔壁32と第2の隔壁63は、排気通路をメイン通路とサブ通路とに分ける隔壁部の一例に対応する。このように、隔壁部をジョイントパイプ26側である第1の隔壁32とマフラー35側である第2の隔壁63とで別体にすることで、一体で構成するよりも製造性および組立性が向上させることができる。
【0035】
次に、ジョイントパイプ26とマフラー35とを接続する場合について説明する。まず、予めユニットとして完成されたジョイントパイプ26とマフラー35とを用意する。ここで、ジョイントパイプ26側に含まれる部品は、第1の隔壁32等である。なお、ジョイントパイプ26のうちマフラー35と接続される部位の外周にはガスケットが取り付けられている。一方、マフラー35側に含まれる部品はコネクタ部材39、バッフルパイプ60、第2の隔壁63等である。
作業者はジョイントパイプ26の後端を、マフラー35のコネクタ部材39内に挿入する。このとき、ジョイントパイプ26の第1の隔壁32の後端と、マフラー35の第2の隔壁63の前端とが僅かな隙間を介して対向するように位置合わせを行う。したがって、第1の隔壁32と第2の隔壁63とによって、ジョイントパイプ26の第1のメイン通路33aとバッフルパイプ60の第1のメイン通路64aとが連通し、ジョイントパイプ26の第1のサブ通路33bとバッフルパイプ60の第2のサブ通路64bとが連通する。最後に、作業者はコネクタ部材39の外周をクランク部材で固定することで、ジョイントパイプ26とマフラー35とが接続される。
【0036】
次に、上述したように構成される排気装置20について高速走行時および低速走行時での排気ガスの流れについて説明する。
高速走行時、すなわちエンジン回転数が所定の高速範囲内である場合には、ECUからの排気制御バルブ28を開く指示に応じてアクチュエータは排気制御バルブ28を開く方向に回動させる。この場合、図4の白色の矢印に示すように、エンジン10からの排気ガスは主にジョイントパイプ26の第1のメイン通路33aからバッフルパイプ60の第2のメイン通路64aに流れ、続いてバッフルパイプ60から第1の膨張室49a、連通パイプ50、第2の膨張室49b、テールパイプ51を通ってストレートに排気される。すなわち、排気ガスの多くはジョイントパイプ26に結合されたバイパスパイプ55を通らないことから、排気通路長さが短くなり、高速走行時の出力性能を向上させることができる。特に、バッフルパイプ60の後端と連通パイプ50の前端とは対向して配置されることで、第1のメイン通路64aからの排気ガスの多くは、バッフルパイプ60からダイレクトに連通パイプ50内に流れる。
【0037】
一方、低速走行時、すなわちエンジン回転数が所定の低速範囲内である場合には、ECUからの排気制御バルブ28を閉じる指示に応じてアクチュエータは排気制御バルブ28を閉じる方向に回動させる。この場合、図4の黒色の矢印に示すように、エンジン10からの排気ガスは主にバイパスパイプ55を通ってジョイントパイプ26の第1のサブ通路33bからバッフルパイプ60の第2のサブ通路64bに流れ、続いて第1の膨張室49a、連通パイプ50、第2の膨張室49b、テールパイプ51を通って排気される。すなわち、排気ガスの多くは、バイパスパイプ55を通ることから、バイパスパイプ55が湾曲している分だけ排気通路長さが長くなり、低速走行時の消音性能を向上させることができる。特に、第2のサブ通路64bの開口部62は、連通パイプ50の前端と対向しておらず、車両の下側に向かって指向する。開口部62が指向する側には第1の膨張室49aが位置し、バイパスパイプ55からの排気ガスの多くがバッフルパイプ60から第1の膨張室49aを通ることから、第1の膨張室49aを有効に利用して消音させることができる。また、バイパスパイプ55を有することで、低速走行時には排気制御バルブ28を従来よりも閉じることができることから、更に消音性能を向上させることができる。
【0038】
このように、本実施例の排気装置20によれば、排気制御バルブ28の上流側および下流側の排気通路を連通させるバイパスパイプ55を有し、このバイパスパイプ55は下流部56cの端部(下流端)がジョイントパイプ26に接続される。
したがって、低速走行時にはバイパスパイプ55を通って排気することで、排気制御バルブ28を従来よりも閉めることができる。したがって、排気制御バルブ28によって排気音を遮断でき、消音性能を向上させることができる。また、排気制御バルブ28を従来よりも閉めることで、排気ガスが主にバイパスパイプ55を通ることから排気通路長さを長くでき、消音性能を向上させることができる。また、マフラー35を大型化する必要がないことから、車両の外観や重量、バンク角等の悪い影響を排除することができる。
【0039】
また、バイパスパイプ55はマフラー35に接続されずにジョイントパイプ26に接続されているので、ジョイントパイプ26とマフラー35とを容易に接続でき、製造性を向上させることができると共にシール性を向上させることができる。仮に、ジョイントパイプ26およびバイパスパイプ55を共に、マフラー35に接続する場合には製造が容易ではなく、シール性も悪化して排気漏れの虞がある。
【0040】
また、本実施例の排気装置20によれば、ジョイントパイプ26は排気通路を第1のメイン通路33aと第1のサブ通路33bとに分ける第1の隔壁32が設けられ、バイパスパイプ55は、第1のサブ通路33bに曲部としての下流部56cを介して接続されている。したがって、低速走行時には排気ガスは主にバイパスパイプ55を通って、排気通路面積が小さい第1のサブ通路33bを通ることから消音性能を向上させることができる。また、バイパスパイプ55は曲部を有することから排気通路長さを長くでき、消音性能を向上させることができる。また、第2のサブ通路33bをジョイントパイプ26内に設けることで、排気装置20の外観やバンク角に与える影響を抑制することができる。
【0041】
また、本実施例の第2のサブ通路64bは、マフラー35内に到るまで設けられている。したがって、第2のサブ通路64bの排気通路長さを長くすることができ、低速走行時の消音性能を向上させることができる。
また、本実施例のジョイントパイプ26は、マフラー35のコネクタ部材39に挿入された状態で固定され、ジョイントパイプ26に設けられる第1の隔壁32と、マフラー35に設けられる第2の隔壁63とを有する。ジョイントパイプ26がマフラー35のコネクタ部材39に挿入された状態で固定されることから製造性およびシール性を向上させることができる。また、ジョイントパイプ26とマフラー35とをそれぞれ別体の隔壁にすることで排気装置20の製造性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施例のマフラー35内における第2のサブ通路64bの出口としての開口部62は、車両の下側を指向している。すなわち、第2のサブ通路64bの出口を連通パイプ50と対向させないことで、第2のサブ通路64bを通る排気通路長さを長くすることができ、消音性能を向上させることができる。
また、本実施例のバイパスパイプ55は、ジョイントパイプ26の下側であって、ジョイントパイプ26の外端よりも車両の内側に位置している。したがって、新たにバイパスパイプ55を設けても、外観やバンク角に与える影響を抑制することができる。
【0043】
以上、本発明に係る実施例について説明したが、本発明は上述した実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上述した実施例では、エンジン10が並列4気筒エンジンであり、排気装置20が第1の排気パイプ21a~第4の排気パイプ21dを有する場合について説明したが、この場合に限られない。すなわち、多気筒エンジンであればよく、排気装置20が2つ以上の排気パイプを有していればよい。例えば、2つの排気パイプの場合には、上述した合流パイプ22a~22bをなくし、2つの排気パイプから直接、集合パイプ23に接続することができる。
【0044】
上述した実施例では、集合パイプ23が触媒ケース24に接続され、触媒ケース24がジョイントパイプ26に接続される場合について説明したが、この場合に限られない。触媒ケース24は、排気装置20における排気通路のうち何れかの位置に配置されていればよい。
上述した実施例では、ジョイントパイプ26が第1のジョイントパイプ部材27aと第2のジョイントパイプ部材27bとから構成される場合について説明したが、この場合に限られない。ジョイントパイプ26は一つのパイプ部材あるいは3つ以上のパイプ部材から構成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1:自動二輪車 10:エンジン(内燃機関) 20:排気装置 21a~21d:排気パイプ 24:集合パイプ 26:ジョイントパイプ 28:排気制御バルブ 31:第2の開口部 32:第1の隔壁 33a:第1のメイン通路 33b:第1のサブ通路 35:マフラー 39:コネクタ部材 55:バイパスパイプ 62:開口部(出口) 63:第2の隔壁 64a:第2のメイン通路 64b:第2のサブ通路
図1
図2
図3
図4
図5