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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】フィラメントワインディング装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/32 20060101AFI20220628BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20220628BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B29C70/32
B29C70/16
B29C70/54
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018163398
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020032688
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池▲崎▼ 秀
(72)【発明者】
【氏名】谷川 元洋
(72)【発明者】
【氏名】魚住 忠司
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】五由出 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】松浦 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中村 大五郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮地 祥太
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/043345(WO,A1)
【文献】特開2009-119732(JP,A)
【文献】特開2010-036461(JP,A)
【文献】特開2016-172403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/32
B29C 70/16
B29C 70/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナーに繊維束をヘリカル巻きするヘリカル巻きユニットを備えたフィラメントワインディング装置であって、
前記ヘリカル巻きユニットは、
前記ライナーの軸を中心とする周方向に複数のノズル取付部が設けられたフレーム部材と、
前記ライナーの径方向に移動可能且つ前記径方向に延びる回転軸周りに回転可能、且つ、前記ライナーに複数の前記繊維束を案内可能なガイド体を有し、前記ノズル取付部に着脱可能に構成されたノズルユニットと、
1つ以上の前記ノズル取付部に取り付けられた1つ以上の前記ノズルユニットに、前記ガイド体を前記径方向に移動させるための動力を共通に伝達する、前記周方向に沿って環状に形成された移動用無端歯付環状体と、
1つ以上の前記ノズル取付部に取り付けられた1つ以上の前記ノズルユニットに、前記ガイド体を前記回転軸周りに回転させるための動力を共通に伝達する、前記周方向に沿って環状に形成された回転用無端歯付環状体と、
を備え
前記複数のノズル取付部は、前記周方向において第1角度で等間隔に設けられた複数の第1ノズル取付部と、前記周方向において前記第1角度よりも大きく且つ前記第1角度の倍数ではない第2角度で等間隔に設けられた複数の第2ノズル取付部とを少なくとも含むことを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項2】
前記第1ノズル取付部は前記周方向において40度間隔で設けられており、前記第2ノズル取付部は前記周方向において40度より大きい間隔で設けられていることを特徴とする請求項に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
前記フレーム部材に、前記ライナーの軸方向に貫通する貫通穴が形成されており、
前記軸方向における前記フレーム部材の一方側に取り付けられた前記ノズルユニットの一部が前記貫通穴を通って他方側まで延びることによって、前記フレーム部材の前記他方側に配置された前記移動用無端歯付環状体又は前記回転用無端歯付環状体から動力を受け取ることができるように構成されており、
前記貫通穴は、前記周方向に沿って2つ以上の前記ノズル取付部にわたって形成された長穴であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項4】
前記フレーム部材に、前記周方向に沿って前記ノズルユニットを案内するためのガイド部が設けられていることを特徴とする請求項に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項5】
ライナーに繊維束をヘリカル巻きするヘリカル巻きユニットを備えたフィラメントワインディング装置であって、
前記ヘリカル巻きユニットは、
前記ライナーの軸を中心とする周方向に複数のノズル取付部が設けられたフレーム部材と、
前記ライナーの径方向に移動可能且つ前記径方向に延びる回転軸周りに回転可能、且つ、前記ライナーに複数の前記繊維束を案内可能なガイド体を有し、前記ノズル取付部に着脱可能に構成されたノズルユニットと、
1つ以上の前記ノズル取付部に取り付けられた1つ以上の前記ノズルユニットに、前記ガイド体を前記径方向に移動させるための動力を共通に伝達する、前記周方向に沿って環状に形成された移動用無端歯付環状体と、
1つ以上の前記ノズル取付部に取り付けられた1つ以上の前記ノズルユニットに、前記ガイド体を前記回転軸周りに回転させるための動力を共通に伝達する、前記周方向に沿って環状に形成された回転用無端歯付環状体と、
を備え、
前記フレーム部材に、前記ライナーの軸方向に貫通する貫通穴が形成されており、
前記軸方向における前記フレーム部材の一方側に取り付けられた前記ノズルユニットの一部が前記貫通穴を通って他方側まで延びることによって、前記フレーム部材の前記他方側に配置された前記移動用無端歯付環状体又は前記回転用無端歯付環状体から動力を受け取ることができるように構成されており、
前記貫通穴は、前記周方向に沿って2つ以上の前記ノズル取付部にわたって形成された長穴であることを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項6】
前記フレーム部材に、前記周方向に沿って前記ノズルユニットを案内するためのガイド部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項7】
前記移動用無端歯付環状体及び前記回転用無端歯付環状体がリングギアであることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項8】
前記移動用無端歯付環状体及び前記回転用無端歯付環状体が無端ベルトであり、
前記無端ベルトが巻き掛けられるとともに、前記無端ベルトから伝達される動力を前記ノズルユニットに伝達可能な複数のプーリが配置されていることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載のフィラメントワインディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライナーに繊維束をヘリカル巻きするヘリカル巻きユニットを備えたフィラメントワインディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載のフィラメントワインディング装置は、ライナーに繊維束をヘリカル巻きするヘリカル巻きユニット(特許文献1ではヘリカルヘッド)を備えている。ヘリカル巻きユニットには、ライナーに繊維束を案内する繊維供給ガイドが、ライナーの軸を中心とする周方向に複数配置されている。繊維供給ガイドは、ライナーの径方向に移動可能且つライナーの径方向に延びる回転軸周りに回転可能に構成されている。そして、複数の繊維供給ガイドの動作を適切に制御することで、複数の繊維供給ガイドから引き出される複数の繊維束を同時にライナーにヘリカル巻きすることが可能となっている。
【0003】
ここで、繊維束の巻付態様を示すパラメータの1つとしてカバー率というものがある。単一の巻付層において、互いに隣り合う繊維束同士に重なりがなく、且つ、隙間がない状態で巻き付けられた状態がカバー率100%である。繊維束同士の間に隙間があればカバー率は100%よりも小さくなるし、繊維束同士に重なりが生じればカバー率は100%よりも大きくなる。一般的には、各巻付層のカバー率が概ね100%となるように巻き付けが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5643322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘリカル巻きの際にカバー率を100%にするのに必要な繊維束の本数は、ライナーの周面積、すなわち、ライナー径によって変わる。例えば、あるライナー径でカバー率100%を実現できる繊維束の本数をN本とする。上記ライナー径より径が大きいライナーにN本の繊維束を巻き付けると、繊維束同士の間に隙間が生じ、カバー率が100%を下回る。反対に、上記ライナー径より径が小さいライナーにN本の繊維束を巻き付けると、繊維束同士が一部重なり、カバー率が100%を超えてしまう。つまり、所望のカバー率を実現するためには、ライナー径に応じて繊維束の巻付本数を変える必要がある。しかしながら、特許文献1のヘリカル巻きユニットは、繊維供給ガイドの数が固定されており、繊維束の供給本数を変更することができない。このため、ライナー径の変更に対応できなかった。
【0006】
一方、1本又は少数本の繊維束を繰り返し巻き付ける、いわゆる単給糸型のフィラメントワインディング装置も従来より知られている。単給糸型のフィラメントワインディング装置では、巻付態様の自由度が高く、ライナー径が変わっても所望のカバー率を実現することが可能である。しかしながら、1本又は少数本の繊維束しか巻き付けることができないため、巻付効率が著しく悪化するという課題があった。
【0007】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、ライナー径の変更に容易に対応でき、且つ、巻付効率の高いフィラメントワインディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ライナーに繊維束をヘリカル巻きするヘリカル巻きユニットを備えたフィラメントワインディング装置であって、前記ヘリカル巻きユニットは、前記ライナーの軸を中心とする周方向に複数のノズル取付部が設けられたフレーム部材と、前記ライナーの径方向に移動可能且つ前記径方向に延びる回転軸周りに回転可能、且つ、前記ライナーに複数の前記繊維束を案内可能なガイド体を有し、前記ノズル取付部に着脱可能に構成されたノズルユニットと、1つ以上の前記ノズル取付部に取り付けられた1つ以上の前記ノズルユニットに、前記ガイド体を前記径方向に移動させるための動力を共通に伝達する、前記周方向に沿って環状に形成された移動用無端歯付環状体と、1つ以上の前記ノズル取付部に取り付けられた1つ以上の前記ノズルユニットに、前記ガイド体を前記回転軸周りに回転させるための動力を共通に伝達する、前記周方向に沿って環状に形成された回転用無端歯付環状体と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ノズルユニットが着脱可能な複数のノズル取付部がフレーム部材に設けられているので、ノズルユニットの個数を適宜変更することができる。しかも、各ノズルユニットは、共通の移動用無端歯付環状体及び回転用無端歯付環状体を介して動力が供給されるように構成されている。このため、ノズルユニットの個数を変更する際、すなわち、ノズルユニットをノズル取付部に着脱する際に、特に動力供給機構を追加したり取り外したりする必要はない。したがって、ノズルユニットの個数を容易に変更することができ、ひいては、繊維束の供給本数を容易に変更することができる。よって、ライナー径の変更に容易に対応することができる。さらに、本発明では、ノズルユニットのガイド体が複数の繊維束をライナーに案内できるように構成されている。このため、複数の繊維束を同時にライナーに巻き付けることができ、巻付効率を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記複数のノズル取付部は、前記周方向において第1角度で等間隔に設けられた複数の第1ノズル取付部と、前記周方向において前記第1角度よりも大きく且つ前記第1角度の倍数ではない第2角度で等間隔に設けられた複数の第2ノズル取付部とを少なくとも含むとよい。
【0011】
このような構成によれば、ノズルユニットを少なくとも第1角度及び第2角度で等間隔に配置することができる。したがって、ノズルユニットを等間隔で配置する場合に、ノズルユニットの数を調整できる自由度を向上させることができ、様々な径のライナーに対応することが可能となる。
【0012】
本発明において、前記第1ノズル取付部は前記周方向において40度間隔で設けられており、前記第2ノズル取付部は前記周方向において40度より大きい間隔で設けられているとよい。
【0013】
このような構成によれば、ノズルユニットを等間隔で9個(=360/40)配置できるとともに、8個以下のノズルユニットを等間隔で配置することもできる。さらに、9の約数、すなわち、3個のノズルユニットも等間隔で配置できる。したがって、ノズルユニットの数を調整できる自由度が高く、より様々な径のライナーに対応することが可能となる。
【0014】
本発明において、前記移動用無端歯付環状体及び前記回転用無端歯付環状体がリングギアであるとよい。
【0015】
リングギアは剛性が高いので、リングギアに噛み合うノズルユニットを一部取り外したとしても、リングギアの形状を略一定に維持することができる。したがって、ノズルユニットへの動力伝達を安定的に行うことができる。
【0016】
本発明において、前記移動用無端歯付環状体及び前記回転用無端歯付環状体が無端ベルトであり、前記無端ベルトが巻き掛けられるとともに、前記無端ベルトから伝達される動力を前記ノズルユニットに伝達可能な複数のプーリが配置されているとよい。
【0017】
無端ベルトを用いれば、無端ベルトが摩耗等した場合でも、容易に交換することができる。
【0018】
本発明において、前記フレーム部材に、前記ライナーの軸方向に貫通する貫通穴が形成されており、前記軸方向における前記フレーム部材の一方側に取り付けられた前記ノズルユニットの一部が前記貫通穴を通って他方側まで延びることによって、前記フレーム部材の前記他方側に配置された前記移動用無端歯付環状体又は前記回転用無端歯付環状体から動力を受け取ることができるように構成されており、前記貫通穴は、前記周方向に沿って2つ以上の前記ノズル取付部にわたって形成された長穴であるとよい。
【0019】
このような構成であれば、長穴(貫通穴)に挿入されているノズルユニットの一部を長穴から抜き出さなくても、当該一部を長穴内で移動させれば、ノズルユニットを周方向に移動させることができる。したがって、ノズルユニットの取付位置を容易に変更することができる。
【0020】
本発明において、前記フレーム部材に、前記周方向に沿って前記ノズルユニットを案内するためのガイド部が設けられているとよい。
【0021】
このようなガイド部を設けることで、ノズルユニットを周方向に円滑に移動させることができるので、ノズルユニットの取付位置を一層容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係るフィラメントワインディング装置を示す斜視図である。
図2】巻付装置を示す斜視図である。
図3】巻付装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】ヘリカル巻きユニットの正面図である。
図5】ノズルユニットを図4のa図のV方向から見た側面図である。
図6】ノズルユニットを図4のa図のVI方向から見た側面図である。
図7】ノズルユニットが取り外されたフレーム部材の正面図である。
図8】ノズルユニットが取り付けられたフレーム部材の正面図である。
図9】無端歯付環状体として無端ベルトを用いた場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(フィラメントワインディング装置)
本発明の一実施形態に係るフィラメントワインディング装置について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置を示す斜視図である。本明細書では、説明の便宜上、図1に示す方向語を適宜使用する。フィラメントワインディング装置1は、巻付装置2と、巻付装置2の後部の左右両側に配置された一対のクリールスタンド3とを備え、全体として概ね左右対称に構成されている。なお、図1では、図が煩雑になることを避けるため、巻付装置2のうち左右一対のクリールスタンド3に挟まれる部分の図示を省略している。
【0024】
巻付装置2は、概ね円筒状のライナーLに繊維束(図1では図示省略)を巻き付けるための装置である。繊維束は、例えば炭素繊維等の繊維材料に、熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂材が含浸されたものである。例えば、巻付装置2で圧力タンク等の圧力容器を製造する場合は、ライナーLとして、図1に示すような、円筒状の大径部の両側にドーム状の小径部を有する形状のものが用いられる。ライナーLは、例えば、高強度アルミニウム、金属、樹脂等によって作製されている。ライナーLに繊維束を巻き付けた後、焼成等の熱硬化工程又は冷却工程を経ることにより、高強度の圧力容器等の最終製品を生産することができる。
【0025】
クリールスタンド3は、巻付装置2の側方に配置された支持フレーム11によって、繊維束が巻かれた複数のボビン12が回転可能に支持された構成を有する。クリールスタンド3の各ボビン12から供給される繊維束は、後述のヘリカル巻きユニットによってヘリカル巻きを行う際に使用される。
【0026】
(巻付装置)
巻付装置2の詳細について説明する。図2は、巻付装置2を示す斜視図である。図3は、巻付装置2の電気的構成を示すブロック図である。図2に示すように、巻付装置2は、基台20と、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)と、フープ巻きユニット40と、ヘリカル巻きユニット50と、を備える。
【0027】
基台20は、支持ユニット30、フープ巻きユニット40、及び、ヘリカル巻きユニット50を支持する。基台20の上面には、前後方向に延びる複数のレール21が配設されている。支持ユニット30及びフープ巻きユニット40は、レール21上に配置され、レール21上を前後方向に往復移動可能である。一方、ヘリカル巻きユニット50は、基台20に固設されている。第1支持ユニット31、フープ巻きユニット40、ヘリカル巻きユニット50、及び、第2支持ユニット32は、この順番で前側から後側に配置されている。
【0028】
支持ユニット30は、フープ巻きユニット40よりも前側に配置される第1支持ユニット31と、ヘリカル巻きユニット50よりも後側に配置される第2支持ユニット32と、を有する。支持ユニット30は、ライナーLの軸方向(前後方向)に延びる支持軸33を介して、ライナーLを軸周りに回転可能に支持する。支持ユニット30は、移動用モータ34及び回転用モータ35を有する(図3参照)。移動用モータ34は、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ35は、支持軸33を回転させることでライナーLを軸周りに回転させる。移動用モータ34及び回転用モータ35は、制御装置10によって駆動制御される。
【0029】
フープ巻きユニット40は、ライナーLの周面にフープ巻きを施す。フープ巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね直角な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。フープ巻きユニット40は、本体部41と、回転部材42と、複数のボビン43と、を有する。本体部41は、レール21上に配置されており、円盤状の回転部材42をライナーLの軸周りに回転可能に支持する。回転部材42の中央部には、ライナーLが通過可能な円形の通過穴44が形成されている。回転部材42は、通過穴44の周りに周方向に等間隔で配置された複数のボビン43を回転可能に支持する。各ボビン43には、繊維束が巻かれている。
【0030】
フープ巻きユニット40は、移動用モータ45及び回転用モータ46を有する(図3参照)。移動用モータ45は、本体部41をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ46は、回転部材42をライナーLの軸周りに回転させる。移動用モータ45及び回転用モータ46は、制御装置10によって駆動制御される。フープ巻きの実行時には、制御装置10は、本体部41をレール21に沿って往復移動させながら回転部材42を回転させる。これによって、ライナーLの周りで回転している各ボビン43から繊維束が引き出され、複数の繊維束がライナーLの周面に一斉にフープ巻きされる。
【0031】
ヘリカル巻きユニット50は、ライナーLの周面にヘリカル巻きを施す。ヘリカル巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね平行な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。ヘリカル巻きユニット50は、本体部51と、フレーム部材52と、複数(本実施形態では9個)のノズルユニット53と、を有する。本体部51は、基台20に固設されている。フレーム部材52は、本体部51に取り付けられた円盤状の部材である。フレーム部材52の中央部には、ライナーLが通過可能な円形の通過穴54が形成されている。複数のノズルユニット53は、ライナーLの軸を中心とする周方向に並べられており、全体として放射状に配置されている。各ノズルユニット53は、フレーム部材52に固定されている。
【0032】
図4は、ヘリカル巻きユニット50の正面図である。図4に示すように、ノズルユニット53は、繊維束FをライナーLに案内するガイド体65を有する。ガイド体65は、ライナーLの径方向(以下、単に径方向と言う)に延びており、径方向に移動可能且つ径方向に延びる回転軸周りに回転可能に構成されている。ノズルユニット53の径方向外側には、ガイドローラ55が配置されている。クリールスタンド3の各ボビン12から引き出された繊維束Fは、ガイドローラ55を経由してガイド体65を通り、ライナーLに至る。
【0033】
ヘリカル巻きユニット50は、ガイド移動用モータ56及びガイド回転用モータ57を有する(図3参照)。ガイド移動用モータ56は、ガイド体65を径方向に移動させる。ガイド回転用モータ57は、ガイド体65を回転軸周りに回転させる。ガイド移動用モータ56及びガイド回転用モータ57は、制御装置10によって駆動制御される。ヘリカル巻きの実行時には、制御装置10は、支持ユニット30を駆動制御することにより、ライナーLを軸周りにゆっくり回転させながら通過穴54を通過させる。同時に、制御装置10は、各ノズルユニット53のガイド体65を、適宜径方向に移動させるとともに回転軸周りに回転させる。これによって、各ノズルユニット53のガイド体65から繊維束Fが引き出され、複数の繊維束FがライナーLの周面に一斉にヘリカル巻きされる。
【0034】
ガイド体65の径方向の移動制御は、ライナーLの周面の近傍にガイド体65の先端部を位置させるべく行われる。図4のa図は、ライナーLの大径部に繊維束Fを巻き付けるときを図示したものである。図4のb図は、ライナーLの小径部に繊維束Fを巻き付けるときを図示したものである。このように、ライナーLの小径部に繊維束Fを巻き付けるときは、大径部に繊維束Fを巻き付けるときよりもガイド体65を径方向内側に移動させる。また、ガイド体65の回転軸周りの回転制御は、ライナーLに対する繊維束Fの巻付方向が変わったとき等に、繊維束Fを適切な態様で引き出すべく行われる。
【0035】
(ノズルユニット)
ノズルユニット53の詳細について説明する。図5は、ノズルユニット53を図4のa図のV方向から見た側面図である。図6は、ノズルユニット53を図4のa図のVI方向から見た側面図である。図5及び図6は、ガイド体65が最も径方向外側に位置している状態を図示している。
【0036】
ノズルユニット53は、フレーム部材52の前面に不図示のボルトによって取り付けられており、フレーム部材52に対して着脱可能に構成されている。ノズルユニット53は、フレーム部材52に固定される支持体60と、支持体60によって径方向に移動可能に支持される移動体61と、を有して構成される。
【0037】
支持体60は、固定部62及び支持部63を有する。固定部62は、フレーム部材52に固定される部位である。支持部63は径方向に延びている。支持部63には、同じく径方向に延びる不図示のレールが設けられている。このレールに移動体61が係合されており、これによって、支持部63は移動体61を径方向に移動可能に支持している。支持部63は、後述する移動用リングギア58の端面の外側、且つ、回転用リングギア59の端面の外側に配置されている。
【0038】
移動体61は、本体64及びガイド体65を有する。本体64は、筒部66と被支持部67とが一体的に形成された構成を有する。筒部66は、径方向に延びる円筒状に構成されている。被支持部67は、筒部66から径方向外側に突出するように径方向に延びており、支持部63に設けられたレールに係合している。
【0039】
ガイド体65は、径方向に延びており、複数の繊維束FをライナーLに案内することができる。繊維束Fの走行方向(以下、単に走行方向と言う)におけるガイド体65の上流側の部分は、筒部66の内部に設けられた不図示のベアリングによって回転可能に支持されている。これによって、ガイド体65が径方向に延びる回転軸A周りに回転可能となっている。走行方向におけるガイド体65の上流側の端部には、複数の繊維束Fをガイド体65に導入するための繊維束導入ガイド68が設けられている。繊維束導入ガイド68を介してガイド体65に導入された複数の繊維束Fは、走行方向におけるガイド体65の下流側の端部(以下、先端部と言う)から引き出され、ライナーLの周面に巻き付けられる。
【0040】
(ノズルユニットの移動機構)
次に、ノズルユニット53の駆動機構、すなわち、移動体61を径方向に移動させるための移動機構70(図5参照)及びガイド体65を回転軸A周りに回転させるための回転機構80(図6参照)について説明する。
【0041】
まず、移動機構70について説明する。図5に示すように、移動機構70は、フレーム部材52の後側に配置された移動用リングギア58から動力を受け取る。移動用リングギア58は、ライナーLの軸を中心とする周方向に沿って環状に形成されており、フレーム部材52に樹脂製ブッシュを介してライナーLの周方向に回転可能に支持されている。
【0042】
移動機構70は、動力伝達方向の上流側から順番に、従動ギア71、駆動シャフト72、カップリング73、伝達シャフト74、ピニオンギア75、及び、ラックギア76を有する。従動ギア71からピニオンギア75までは、支持体60に取り付けられている。一方、ラックギア76は、移動体61に取り付けられている。
【0043】
従動ギア71は、駆動シャフト72の後端部に固定されており、移動用リングギア58の内周面に形成されたギアと噛み合っている。ピニオンギア75は、伝達シャフト74の前端部に固定されており、ラックギア76と噛み合っている。駆動シャフト72と伝達シャフト74とは、カップリング73によって連結されており、従動ギア71とピニオンギア75とは一体回転する。ただし、カップリング73を省略し、駆動シャフト72及び伝達シャフト74を1本のシャフトで構成してもよい。ラックギア76は、移動体61の被支持部67に固定されており、径方向に延びている。
【0044】
ガイド移動用モータ56によって移動用リングギア58を回転させると、図5において矢印で示すように、従動ギア71が回転することでピニオンギア75が回転する。そして、ピニオンギア75とラックギア76とからなるラックアンドピニオン機構によって、ピニオンギア75の回転動作が、移動体61の径方向への移動動作に変換される。こうして、移動機構70によって、移動体61を径方向に移動させることができる。
【0045】
各ノズルユニット53の従動ギア71は、共通の移動用リングギア58に噛み合っている。このため、移動用リングギア58を回転させると、移動用リングギア58から各ノズルユニット53に動力が共通に伝達され、各ノズルユニット53の移動体61を一斉に径方向に移動させることができる。なお、フレーム部材52には、ライナーLの軸方向に貫通する貫通穴52aが形成されている。よって、ノズルユニット53を取り付ける際は、従動ギア71を貫通穴52aの前側から後側に通過させることで、従動ギア71を移動用リングギア58に噛み合わせることが可能となっている。
【0046】
(ノズルユニットの回転機構)
続けて、回転機構80について説明する。図6に示すように、回転機構80は、フレーム部材52の前側に配置された回転用リングギア59から動力を受け取る。回転用リングギア59は、ライナーLの軸を中心とする周方向に沿って環状に形成されており、フレーム部材52に樹脂製ブッシュを介してライナーLの周方向に回転可能に支持されている。移動用リングギア58と回転用リングギア59とは同径である。
【0047】
回転機構80は、動力伝達方向の上流側から順番に、従動ギア81、駆動シャフト82、カップリング83、伝達シャフト84、第1ベベルギア85、第2ベベルギア86、ガイド軸87、中間ギア88、及び、回転用ギア89を有する。従動ギア81から第2ベベルギア86までは、支持体60に取り付けられている。一方、ガイド軸87から回転用ギア89までは、移動体61に取り付けられている。
【0048】
従動ギア81は、駆動シャフト82の後端部に固定されており、回転用リングギア59の内周面に形成されたギアと噛み合っている。第1ベベルギア85は、伝達シャフト84の前端部に固定されており、第2ベベルギア86と噛み合っている。駆動シャフト82と伝達シャフト84とは、カップリング83によって連結されており、従動ギア81と第1ベベルギア85とは一体回転する。ただし、カップリング83を省略し、駆動シャフト82及び伝達シャフト84を1本のシャフトで構成してもよい。ガイド軸87は、径方向に延びるスプライン軸や角柱によって構成されており、トルクを伝達可能である。ガイド軸87は、移動体61の被支持部67に軸周りに回転可能に取り付けられている。ガイド軸87は、第2ベベルギア86の中央部に形成された貫通穴に挿通されている。この貫通穴に挿通されたガイド軸87は、第2ベベルギア86と一体回転するが、第2ベベルギア86に対して径方向に相対移動可能である。ガイド軸87の径方向内側の端部には、中間ギア88が固定されている。中間ギア88には、ガイド体65に固定された回転用ギア89が噛み合っている。回転用ギア89は、ガイド体65の回転軸Aと同軸のギアであり、中間ギア88よりも歯数の多いギアとされている。
【0049】
ガイド回転用モータ57によって回転用リングギア59を回転させると、図6において矢印で示すように、従動ギア81が回転することで第1ベベルギア85が回転し、さらに第2ベベルギア86が回転する。そして、第2ベベルギア86の回転動作は、ガイド軸87を介して中間ギア88に伝達され、回転用ギア89が回転する。こうして、回転機構80によって、ガイド体65を回転軸A周りに回転させることができる。なお、移動体61が径方向に移動する際には、ガイド軸87が第2ベベルギア86の貫通穴を移動するので、移動体61の移動が妨げられることはない。
【0050】
各ノズルユニット53の従動ギア81は、共通の回転用リングギア59に噛み合っている。このため、回転用リングギア59を回転させると、回転用リングギア59から各ノズルユニット53に動力が共通に伝達され、各ノズルユニット53のガイド体65を一斉に回転軸A周りに回転させることができる。
【0051】
(フレーム部材の詳細)
図7は、ノズルユニット53が取り外されたフレーム部材52の正面図である。図8は、ノズルユニット53が取り付けられたフレーム部材52の正面図である。図7に示すように、フレーム部材52には、ノズル取付部100が周方向に複数形成されている。ノズル取付部100は、径方向に並んだ2つの取付穴52bを有する。ノズルユニット53は、取付穴52bに挿入される不図示のボルトを用いてフレーム部材52に固定される。つまり、ノズルユニット53は、ノズル取付部100に着脱可能に構成されている。ノズルユニット53は、従動ギア71が移動用リングギア58の内周側に形成されたギアに噛み合い、且つ、従動ギア81が回転用リングギア59の内周側に形成されたギアに噛み合うように、ノズル取付部100に取り付けられる。
【0052】
複数のノズル取付部100は、ノズル取付部100A~100Cを含む。ノズル取付部100Aは、周方向において40度間隔で配置されている。ノズル取付部100Bは、周方向において45度間隔で配置されている。ノズル取付部100Cは、周方向において60度間隔で配置されている。各ノズル取付部100A~100Cは、時計の12時の位置を起点として等間隔に配置されている。各ノズル取付部100A~100Cの一部は、互いに共通している。
【0053】
ノズル取付部100Aにノズルユニット53を取り付ければ、9個のノズルユニット53を周方向に等間隔に配置することができる(図8参照)。図示は省略するが、ノズル取付部100Bにノズルユニット53を取り付ければ、8個のノズルユニット53を周方向に等間隔に配置することができる。また、ノズル取付部100Cにノズルユニット53を取り付ければ、6個のノズルユニット53を周方向に等間隔に配置することができる。さらには、ノズルユニット53を取り付けるノズル取付部100を適切に選択することで、6、8、9の約数である2、3、4個のノズルユニット53を周方向に等間隔に配置することも可能である。
【0054】
次に、ノズルユニット53の取付位置を容易に変更可能とするための構成について説明する。既に説明したように、フレーム部材52には、ノズルユニット53の従動ギア71をフレーム部材52の後側に通すための貫通穴52aが形成されている(図5及び図6参照)。本実施形態では、この貫通穴52aが、図7に示すように、周方向に沿って2つ以上のノズル取付部100にわたって形成された長穴となっている。なお、本実施形態では、長穴52aの数を2つとしているが、長穴52aの数は変更可能である。貫通穴52aを周方向に延びる長穴とすることで、従動ギア71を貫通穴52aから抜き出すことなく、ノズルユニット53を周方向に移動させることができる。このため、ノズルユニット53の取付位置を容易に変更することができる。
【0055】
さらに、フレーム部材52の前面、すなわち、ノズルユニット53の取付面には、周方向に沿った環状のガイド部101が凸状に形成されている。一方、ノズルユニット53(詳細には支持体60の固定部62)には、図8に示すように、ガイド部101に係合する被ガイド部69が設けられている。被ガイド部69がガイド部101に係合した状態のノズルユニット53は、ガイド部101によって周方向に案内される。このため、従動ギア71を貫通穴52aから抜き出すことなく、ノズルユニット53を周方向に移動させる場合に、ノズルユニット53を円滑に移動させることができる。
【0056】
(効果)
本実施形態によれば、ノズルユニット53が着脱可能な複数のノズル取付部100がフレーム部材52に設けられているので、ノズルユニット53の個数を適宜変更することができる。しかも、各ノズルユニット53は、共通の移動用リングギア58(本発明の移動用無端歯付環状体に相当)及び回転用リングギア59(本発明の回転用無端歯付環状体に相当)を介して動力が供給されるように構成されている。このため、ノズルユニット53の個数を変更する際、すなわち、ノズルユニット53をノズル取付部100に着脱する際に、特に動力供給機構を追加したり取り外したりする必要はない。したがって、ノズルユニット53の個数を容易に変更することができ、ひいては、繊維束Fの供給本数を容易に変更することができる。よって、ライナー径の変更に容易に対応することができる。さらに、本発明では、ノズルユニット53のガイド体65が複数の繊維束FをライナーLに案内できるように構成されている。このため、複数の繊維束Fを同時にライナーLに巻き付けることができ、巻付効率を高めることができる。また、副次的な効果として、複数の繊維束Fを案内するガイド体65は、繊維束を1本のみ案内する従来のガイド体と比べて太くなる。このため、ガイド体65の剛性を向上させることができ、繊維束Fの張力によってガイド体65が変形する(しなる)ことを防止できる。
【0057】
本実施形態では、複数のノズル取付部100は、周方向において40度(本発明の第1角度に相当)で等間隔に設けられた複数のノズル取付部100A(本発明の第1ノズル取付部に相当)と、周方向において40度よりも大きく且つ40度の倍数ではない45度(本発明の第2角度に相当)で等間隔に設けられた複数のノズル取付部100B(本発明の第2ノズル取付部に相当)とを少なくとも含む。このような構成によれば、ノズルユニット53を少なくとも40度及び45度で等間隔に配置することができる。したがって、ノズルユニット53を等間隔で配置する場合に、ノズルユニット53の数を調整できる自由度を向上させることができ、様々な径のライナーLに対応することが可能となる。
【0058】
なお、ノズル取付部100Aを本発明の第1ノズル取付部、ノズル取付部100Cを本発明の第2ノズル取付部と読み替えることも可能である。この場合、本発明の第1角度は40度、本発明の第2角度は60度となる。あるいは、ノズル取付部100Bを本発明の第1ノズル取付部、ノズル取付部100Cを本発明の第2ノズル取付部と読み替えることも可能である。この場合、本発明の第1角度は45度、本発明の第2角度は60度となる。
【0059】
本実施形態では、ノズル取付部100A(本発明の第1ノズル取付部に相当)は周方向において40度間隔で設けられており、ノズル取付部100B(本発明の第2ノズル取付部に相当)は周方向において40度より大きい45度間隔で設けられている。このような構成によれば、ノズルユニット53を等間隔で9個(=360/40)配置できるとともに、等間隔で8個(=360/45)配置できる。さらに、9と8の約数、すなわち、2、3、4個のノズルユニット53も等間隔で配置できる。したがって、ノズルユニット53の数を調整できる自由度が高く、より様々な径のライナーLに対応することが可能となる。
【0060】
本実施形態では、本発明の移動用無端歯付環状体(移動用リングギア58)及び回転用無端歯付環状体(回転用リングギア59)がリングギアとされている。リングギア58、59は剛性が高いので、リングギア58、59に噛み合うノズルユニット53を一部取り外したとしても、リングギア58、59の形状を略一定に維持することができる。したがって、ノズルユニット53への動力伝達を安定的に行うことができる。
【0061】
本実施形態では、フレーム部材52に、ライナーLの軸方向に貫通する貫通穴52aが形成されており、軸方向におけるフレーム部材52の一方側に取り付けられたノズルユニット53の一部が貫通穴52aを通って他方側まで延びることによって、フレーム部材52の他方側に配置された移動用リングギア58から動力を受け取ることができるように構成されており、貫通穴52aは、周方向に沿って2つ以上のノズル取付部100にわたって形成された長穴とされている。このような構成であれば、長穴52a(貫通穴)に挿入されているノズルユニット53の一部を長穴52aから抜き出さなくても、当該一部を長穴52a内で移動させれば、ノズルユニット53を周方向に移動させることができる。したがって、ノズルユニット53の取付位置を容易に変更することができる。なお、長穴52aの数は自在に変更できる。長穴52aの数が多いと、その分、周方向において互いに隣り合う長穴52aの間の接続部分が増えるため、フレーム部材52の剛性が高くなる。一方、長穴52aの数が少ないと、ノズルユニット53を取り外す頻度を減らすことができる。
【0062】
本実施形態では、フレーム部材52に、周方向に沿ってノズルユニット53を案内するためのガイド部101が設けられている。このようなガイド部101を設けることで、ノズルユニット53を周方向に円滑に移動させることができるので、ノズルユニット53の取付位置を一層容易に変更することができる。
【0063】
(他の実施形態)
上記実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0064】
上記実施形態では、移動用リングギア58がフレーム部材52の後側、回転用リングギア59がフレーム部材52の前側に配置されるものとしたが、逆でもよい。
【0065】
上記実施形態では、移動用リングギア58及び回転用リングギア59を同径としたが、移動用リングギア58の径と回転用リングギア59の径が異なってもよい。
【0066】
上記実施形態では、移動用リングギア58を1つのガイド移動用モータ56で回転駆動するものとしたが、複数のモータで移動用リングギア58を回転駆動するようにしてもよい。同様に、上記実施形態では、回転用リングギア59を1つのガイド回転用モータ57で回転駆動するものとしたが、複数のモータで回転用リングギア59を回転駆動するようにしてもよい。
【0067】
上記実施形態では、ノズル取付部100が、ノズルユニット53を固定するためのボルトが挿入される取付穴52bによって構成されているものとした。しかしながら、ノズル取付部100の具体的な構成はこれに限定されず、例えば適当な係合機構等によってノズル取付部100を構成してもよい。また、周方向におけるノズル取付部100の形成位置は、適宜変更が可能である。
【0068】
上記実施形態では、周方向において40度間隔で配置されたノズル取付部100A、45度間隔で配置されたノズル取付部100B、及び、60度間隔で配置されたノズル取付部100Cを設けた。しかしながら、ノズル取付部100の具体的な配置はこれに限定されるものでない。例えば、周方向において72度間隔でノズル取付部100を設けてもよい。40度、45度、60度間隔に加えて72度間隔のノズル取付部100を設けた場合には、2、3、4、5、6、8、9個のノズルユニット53を周方向に等間隔で配置することができるようになる。また、ノズル取付部100を40度よりも小さい間隔で設けてもよい。例えば、30度間隔のノズル取付部100を設ければ、12個のノズルユニット53を周方向に等間隔で配置できる。さらに、24度間隔のノズル取付部100を設ければ、15個のノズルユニット53を周方向に等間隔で配置できる。
【0069】
上記実施形態では、ノズルユニット53を周方向に等間隔に配置する場合について説明したが、ノズルユニット53を等間隔に配置することは必須ではない。例えば、複数のノズルユニット53を非等間隔で配置してもよい。あるいは、フレーム部材52に取り付けるノズルユニット53を1つのみとしてもよい。
【0070】
上記実施形態では、フレーム部材52に形成された貫通穴52aが周方向に延びる長穴であるものとした。しかしながら、貫通穴52aを長穴とすることは必須ではない。例えば、ノズルユニット53の従動ギア71より一回り大きい貫通穴52aが、各ノズル取付部100に対応して形成されていてもよい。この場合、ノズルユニット53の取付位置を変更する際には、従動ギア71を貫通穴52aから一旦抜き出す必要が生じる。しかしながら、フレーム部材52の剛性を高めることができるという点においては有利である。
【0071】
上記実施形態では、フレーム部材52に環状のガイド部101を設けるものとした。しかしながら、ガイド部101は環状に限定されず、円弧状であってもよい。また、ガイド部101を設けることは必須ではない。
【0072】
上記実施形態では、本発明の移動用無端歯付環状体及び回転用無端歯付環状体(以下、まとめて無端歯付環状体と言う)をリングギアで構成するものとした。しかしながら、無端歯付環状体をリングギアでなく、例えば、無端ベルトで構成することも可能である。
【0073】
図9は、無端歯付環状体として無端ベルトを用いた場合の模式図である。図9では、フレーム部材52やノズルユニット53の図示は省略している。無端ベルト110は、複数の従動プーリ111と1つの駆動プーリ112とに巻き掛けられている。従動プーリ111は、ノズル取付部100(ここではノズル取付部100A)に対応する位置に配置されている。従動プーリ111には、段付きギア111aが一体的に形成されている。ノズルユニット53は、従動ギア71(又は従動ギア81)が段付きギア111aに噛み合うようにフレーム部材52に取り付けられる。駆動プーリ112は、不図示の駆動モータによって回転駆動されることで、無端ベルト110を周方向に回転させる。
【0074】
駆動プーリ112によって無端ベルト110を回転させると、各従動プーリ111の段付きギア111aが回転する。そして、段付きギア111aから従動ギア71(又は従動ギア81)に動力が伝達され、ガイド体65を径方向に移動(又は回転軸A周りに回転)させることができる。無端ベルト110を用いれば、無端ベルト110が摩耗等した場合でも、容易に交換することができる。なお、無端ベルト110の形状は、無端ベルト110の内周側に配置された複数の従動プーリ111によって一定に維持されている。このため、ノズルユニット53を着脱しても、無端ベルト110が弛むことはなく、動力を適切に伝達することができる。
【符号の説明】
【0075】
1:フィラメントワインディング装置
50:ヘリカル巻きユニット
52:フレーム部材
52a:貫通穴(長穴)
53:ノズルユニット
58:移動用リングギア(移動用無端歯付環状体)
59:回転用リングギア(回転用無端歯付環状体)
65:ガイド体
100:ノズル取付部
100A:ノズル取付部(第1ノズル取付部)
100B:ノズル取付部(第2ノズル取付部)
101:ガイド部
110:無端ベルト(無端歯付環状体)
111:従動プーリ(プーリ)
L:ライナー
F:繊維束
A:回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9