(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】表示板
(51)【国際特許分類】
G01D 13/04 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
G01D13/04 Z
(21)【出願番号】P 2018165071
(22)【出願日】2018-09-04
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 直司
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-286650(JP,A)
【文献】特開2011-75363(JP,A)
【文献】特開2014-169862(JP,A)
【文献】特開2017-102016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/00 - 13/28
G01D 7/00 - 7/12
B60K 35/00 - 37/06
G04B 19/06 - 19/18
G09F 7/00 - 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子を形成する複数の線と、前記線により形成される複数の内側領域と、を有し、第1方向に関し前記線、前記内側領域が交互に配置される模様部を有する表示板であって、
母材と、
前記母材の前面側において、前記線を形成する線形成層と、
前記線形成層の前面側において、前記内側領域を形成する内側領域形成層と、
前記内側領域形成層の前面側において、少なくとも各前記内側領域に対応する箇所に形成され、前記第1方向に沿って密から粗になるようグラデーションを有して形成される第1透明層と、
前記第1透明層の前面側において、少なくとも各前記内側領域に対応する箇所であって、各前記内側領域において前記第1透明層よりも狭い範囲で形成され、前記第1方向に沿って密から粗になるようグラデーションを有して形成される第2透明層と、を備える表示板。
【請求項2】
前記第2透明層は、前記第1透明層と異なる艶感を有する材料により形成される、請求項1に記載の表示板。
【請求項3】
前記第1透明層及び前記第2透明層は、前記第1方向に関し前記線部分が最も密になり、前記線から前記内側領域にかけて粗になるよう形成される、請求項1に記載の表示板。
【請求項4】
前記内側領域形成層と前記第1透明層の間において、少なくとも前記模様部上に形成される第3透明層を更に備える、請求項1に記載の表示板。
【請求項5】
前記線形成層の前面側において、前記線形成層の色彩とは異なる色彩で各前記線に対応する箇所に形成され、第2方向に沿って密から粗になるようグラデーションを有して形成される線グラデーション形成層を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の表示板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される表示装置の表示板に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、速度計、エンジン回転数計等の運転に必要な情報を表示する表示装置が搭載されている。表示装置は、表示板を有する。表示板は、透過性の基板に、目盛、文字、数字、記号等の意匠、背景となる模様や地色を、例えばスクリーン印刷により印刷することにより製造されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日のデザインの多様化に伴い、表示板の背景となる模様に応じた立体感を付与することが求められる場合がある。しかし、これまでの表示板は、単に単層の艶なしや艶ありのオーバーコート層(透明層)を表示板全面に亘って有することが一般的であり、表示板の模様に立体感を持たせるには不十分であった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、意匠性を向上させることができる表示板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表示板は、上述した課題を解決するために、格子を形成する複数の線と、前記線により形成される複数の内側領域と、を有し、第1方向に関し前記線、前記内側領域が交互に配置される模様部を有する表示板であって、母材と、前記母材の前面側において、前記線を形成する線形成層と、前記線形成層の前面側において、前記内側領域を形成する内側領域形成層と、前記内側領域形成層の前面側において、少なくとも各前記内側領域に対応する箇所に形成され、前記第1方向に沿って密から粗になるようグラデーションを有して形成される第1透明層と、前記第1透明層の前面側において、少なくとも各前記内側領域に対応する箇所であって、各前記内側領域において前記第1透明層よりも狭い範囲で形成され、前記第1方向に沿って密から粗になるようグラデーションを有して形成される第2透明層と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る表示板においては、意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る表示板の一実施形態である表示板を有する表示装置を示す正面図。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う断面図であり、特に表示板を示す断面図。
【
図5】
図1のV-V線に沿う断面図であり、特に表示板を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る表示板の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係る表示板は、例えば自動車や二輪車等の車両や、船舶、農業機械、建設機械に搭載される。本実施形態においては、本発明に係る表示板が、速度計を有する自動車用の表示装置の表示板である例を用いて説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る表示板の一実施形態である表示板10を有する表示装置1を示す正面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う断面図であり、特に表示板10を示す断面図である。
【0011】
以下の説明において、「前(前面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「右」、及び「左」は、
図1から
図3、及び後述する
図5における図中の定義「Fr.」、「Re.」、「To.」、「Bo.」、「R」、及び「L」に従う。
【0012】
表示装置1は、速度計3を有する。速度計3(計器)は、車両の速度を表示する指針式計器である。表示装置1は、指針20と、表示板10と、回路基板30と、ケース40と、見返し部材50と、を主に有する。
【0013】
指針20は、指針基部21を介して回路基板30上の指針駆動部32に接続される。指針20は、表示板10の面に平行する面上を回転することにより、速度に対応する表示板10の目盛11を指し示す。
【0014】
表示板10は、回路基板30の前側、且つ指針20の後側において、中ケース42上に支持される。表示板10は、母材61と、母材61に積層された複数の層62~69と、を有する。母材61及び母材61に積層された複数の層62~69の詳細については、後述する。
【0015】
回路基板30は、複数の光源31と、指針駆動部32と、光源31や指針駆動部32のドライバ等を含む制御部と、を主に有する。回路基板30は、下ケース41及び中ケース42により支持される。
【0016】
光源31は、回路基板30の前面30aに設けられる。光源31は、例えばトップビュー型(上面発光型)のLED(Light Emitting Diode)である。光源31は、表示装置1の意匠の数及び位置に応じて、複数個設けられる。
【0017】
指針駆動部32は、指針軸33を介して指針20(指針基部21)と接続されており、入力された車両の走行速度に応じて指針20を回転させる。
【0018】
制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有し、例えば、ROMに書き込まれたプログラムに従って所定の演算処理を実行する。制御部は、例えば、車両のECU(Electronic Control Unit)から各種車両情報を取得する。制御部は、取得した情報に基づき、光源31を点灯させたり、指針駆動部32を駆動したりする。
【0019】
ケース40は、下ケース41と、中ケース42と、を有する。
【0020】
下ケース41は、回路基板30の後側を覆い、見返し部材50と嵌合し表示装置1の外形を形成する。下ケース41は、遮光性の樹脂(例えば黒色ポリプロピレン)である。
【0021】
中ケース42は、遮光性の樹脂(例えば白色のポリプロピレン)であり、下ケース41の内部で回路基板30を支持する。中ケース42は、各光源31を囲い区画46を形成する仕切壁45を有する。仕切壁45は、光源31の照明(発光)領域を区切る後から前に延びた筒状の壁であり、光源31の光はこの区画46を後側から前側に向って通る。仕切壁45は、基板側開口端47と、表示板側開口端48と、を有する。基板側開口端47は、後側に位置する開口端であり、回路基板30と接する。表示板側開口端48は、前側に位置する開口端であり、表示板10と接する。
【0022】
見返し部材50は、遮光性の樹脂(例えば黒色のポリプロピレン樹脂)であり、表示板10の前面側に配置される。見返し部材50は、表示板10の表示領域以外を遮光する。見返し部材50は、透光性の樹脂材料からなるカバー51が取り付けられる開口52を有する。
【0023】
次に、表示板10の詳細について説明する。
【0024】
図4は、
図3の領域IVの拡大図である。
図5は、
図1のV-V線に沿う断面図であり、特に表示板を示す断面図である。
【0025】
表示板10は、後側から前側に向って、母材61と、意匠層62と、遮光層63と、線形成層64と、内側領域形成層65と、線グラデーション形成層66と、第1オーバーコート層67と、第2オーバーコート層68と、第3オーバーコート層69と、を有する。
【0026】
表示板10は、これら層を有することにより、
図1に示すように、特に正円形の模様部70を形成する。模様部70は、格子71を形成する複数の線72と、線72により形成される複数の内側領域73と、を有する。格子71は、左右方向に延びた横の線72aと、上下方向に延びた縦の線72bとが直角に交わることにより形成され、内側領域73は四角形状に形成される。本実施形態においては、下から上方向を特に第1方向として、この第1方向に関し線72、内側領域73が交互に配置される。
【0027】
母材61は、透過性(透光性)を有する樹脂(例えばポリカーボネート樹脂)からなる板状部材である。
【0028】
意匠層62は、白色の透光性インキで印刷される。意匠層62は、目盛11、数字・文字12等の意匠が設けられる、光源31の光を透過させる箇所に少なくとも形成される。すなわち、意匠層62は、目盛11、数字・文字12等の意匠の色彩を表現する。
【0029】
遮光層63は、黒色の遮光性インキで印刷される。遮光層63は、意匠部分を抜き文字状にして形成される。これにより、遮光層63は、意匠においては光源31の光を透過させ、それ以外の領域を遮光する。
【0030】
線形成層64は、母材61の前面側において、線72を形成する層である。線形成層64は、グレー色のインキで印刷された印刷層である。線形成層64は、模様部70の線72が設けられる箇所に少なくとも形成される。すなわち、線形成層64は、線72の色彩を表現する。
【0031】
内側領域形成層65は、線形成層64の前面側において、四角形の内側領域73を形成する層である。内側領域形成層65は、遮光層63と同様の黒色のインキで印刷される。これにより、内側領域形成層65が形成されない領域は、線形成層64が露出し、グレー色の線72が表現される。
【0032】
線グラデーション形成層66は、線形成層64の前面側において、線形成層64の色彩とは異なる色彩で各線72に対応する箇所に形成される。具体的には、線グラデーション形成層66は、内側領域形成層65と同様の黒色のインキで印刷され、内側領域形成層65と同一工程で形成される。線グラデーション形成層66は、
図5に示すように、第2方向に沿って密から粗になるようグラデーション75を有して形成される。本実施形態においては、模様部70の周縁70aから中心に向う方向を第2方向とする。
【0033】
第1オーバーコート層67(第3透明層)は、内側領域形成層65と第2オーバーコート層68(第1透明層)の間において、少なくとも模様部70上に形成される。第1オーバーコート層67は、艶なしの透明インキで印刷される。第1オーバーコート層67は、表示板10全体に形成され、表示板10の表面を保護するのが好ましい。
【0034】
第2オーバーコート層68(第1透明層)は、第1オーバーコート層67(内側領域形成層65)の前面側において、各線72及び各内側領域73に対応する箇所に形成される。第2オーバーコート層68は、艶なしの透明インキであって、第1オーバーコート層67のインキよりも艶感を有するインキにより印刷される。すなわち、第1オーバーコート層67のインキの艶消し度が、第2オーバーコート層68のインキの艶消し度よりも高い。第2オーバーコート層68は、
図1及び
図4に示すように、第1方向に沿って、密から粗になるようグラデーション76を有して形成される。
【0035】
具体的には、第2オーバーコート層68は、第1方向に関し線72部分が最も密になり(
図4の断面において、第1方向に沿う幅が大きくなり)、線72から内側領域73にかけて粗になる(第1方向に沿う幅が小さくなる)よう形成される。本実施形態においては、線72全体に第2オーバーコート層68aを形成し(ベタ塗りし)、各内側領域73には幅の異なる4本の筋状の第2オーバーコート層68bを形成した。第2オーバーコート層68においては、線72及び内側領域73の第1方向に関する繰り返しに伴い、このような粗密が繰り返し表れる。
【0036】
第3オーバーコート層69(第2透明層)は、第2オーバーコート層68の前面側において、各線72及び各内側領域73に対応する箇所に形成される。第3オーバーコート層69は、艶ありの透明インキであって、第2オーバーコート層68のインキよりも艶感を有するインキにより印刷される。すなわち、第2オーバーコート層68のインキの艶消し度が、第3オーバーコート層69のインキの艶消し度よりも高い。第3オーバーコート層69は、第2オーバーコート層68同様、第1方向に沿って、密から粗になるようグラデーション77を有して形成される。また、第3オーバーコート層69は、各内側領域73において第2オーバーコート層68よりも狭い範囲で形成される。
【0037】
具体的には、第3オーバーコート層69は、第1方向に関し線72部分が最も密になり、線72から内側領域73にかけて粗になるよう形成される。本実施形態においては、線72にベタ塗りされた第2オーバーコート層68aよりも小さい幅で第3オーバーコート層69aを形成し、各内側領域73には第2オーバーコート層68bよりも小さい幅であり、幅の異なる第2オーバーコート層68bよりも少ない本数である2本の筋状の第3オーバーコート層69bを形成した。第3オーバーコート層69は、線72及び内側領域73の第1方向に関する繰り返しに伴い、このような粗密が繰り返し表れる。
【0038】
このような本実施形態における表示板10は、各内側領域73に、第2オーバーコート層68及び第3オーバーコート層69の2層からなる透明層をグラデーション76、77を有して形成した。これにより、格子状の模様部70に立体感が生まれ、意匠性を向上させることができる。また、第1オーバーコート層67、第2オーバーコート層68、及び第3オーバーコート層69のインキを、光の反射の強弱を異ならせるよう、艶感を異ならせた。これにより、光の反射が階段状になり、表示板10はより立体感を有することができる。特に、最前面の第3オーバーコート層69のインキを、最も光の反射の強い艶ありの透明インキにした。これにより、最前面の光の反射が際立ち、表示板10は更に立体感を有することができる。
【0039】
また、表示板10は、正円形の模様部70の周縁70aから中心に向って線グラデーション形成層66でグラデーション75を形成した。このため、視認者に対しては、模様部70が例えば
図6に示すような曲面であるかのように視認させることができ、表示板10は更に立体感を有することができる。更に、線グラデーション形成層66による線72のグラデーション75と、第2オーバーコート層68及び第3オーバーコート層69の内側領域73のグラデーション76、77との相乗効果により、内側領域73がディンプルのような凹み78であるかのように、視認させることができる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0041】
例えば、格子は、直交する2方向に延びた複数の線により形成される場合に限らず、曲線により形成されてもよい。また、模様部は、鰐皮模様、畳模様、鱗模様、四角以外の多角形模様であってもよい。
【0042】
グラデーションの方向としての第1方向及び第2方向は、上述した一例に限らない。第1方向と第2方向が、同一方向であってもよい。
【0043】
上述した線形成層64や内側領域形成層65の色は一例であって、これに限らない。
【0044】
内側領域のグラデーションは、少なくとも内側領域に対応する箇所に形成されていればよく、線に対応する箇所については必須ではない。また、グラデーション75(線グラデーション形成層66)は必須ではなく、線72部分はベタ塗りであってもよい。
【0045】
上述した第1から第3オーバーコート層67~69の艶感の相対関係は、上述したものに限らず、模様部の視覚的効果に応じて設定されればよい。
【符号の説明】
【0046】
1 表示装置
3 速度計
10 表示板
11 目盛
12 数字・文字
20 指針
21 指針基部
30 回路基板
30a 前面
31 光源
32 指針駆動部
33 指針軸
40 ケース
41 下ケース
42 中ケース
45 仕切壁
46 区画
47 基板側開口端
48 表示板側開口端
50 見返し部材
51 カバー
52 開口
61 母材
62 意匠層
63 遮光層
64 線形成層
65 内側領域形成層
66 線グラデーション形成層
67 第1オーバーコート層
68、68a、68b 第2オーバーコート層
69、69a、69b 第3オーバーコート層
70 模様部
70a 周縁
71 格子
72、72a、72b 線
73 内側領域
75、76、77 グラデーション
78 凹み