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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20220628BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220628BHJP
【FI】
H02M7/06 N
H02M7/48 M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018202430
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020072480
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】坂井 伸一郎
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-112929(JP,A)
【文献】特開2018-119701(JP,A)
【文献】特開2010-178413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機を備えた空気調和機であって、前記室外機は、
交流電源を整流して直流電圧を出力する整流器と、
前記整流器の正極端と負極端の間に接続された平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサに並列に接続される負荷と、
前記整流器の正極端又は負極端と前記平滑コンデンサの一端に直列に接続されたスイッチと、
前記スイッチに並列に接続された突入電流防止抵抗と、
前記整流器の出力電圧を検出して第1直流電圧値として出力する第1直流電圧検出手段と、
前記平滑コンデンサの両端電圧を検出して第2直流電圧値として出力する第2直流電圧検出手段と、
前記第1直流電圧値と前記第2直流電圧値が共に予め定められた低電圧閾値以上に変化した場合に前記スイッチを短絡する電源管理手段とを備えたことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記電源管理手段は、前記第1直流電圧値が前記低電圧閾値未満に変化した場合、もしくは、前記第2直流電圧値が前記低電圧閾値未満に変化した場合に前記スイッチを開放することを特徴とする請求項1記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に係わり、より詳細には、入力電圧が空気調和機の動作可能な下限の電圧(以下、下限電圧と呼称する)よりも低下した時に動作を停止させ、入力電圧が下限電圧以上に復帰した時に動作を再開させる低電圧保護機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低電圧保護機能は、コンパレータを用いて実現している(例えば、特許文献1参照。)。このコンパレータの一方の入力端には、低電圧保護の対象となる機器、例えば空気調和機に下限電圧未満の入力電圧が供給されているか否かを判定するための基準電圧が入力され、他方の入力端には入力電圧と対応する被比較電圧が入力されている。そして低下した被比較電圧が基準電圧とクロスした時、このコンパレータの出力電圧が反転する。この出力電圧の変化を用いて被比較電圧が基準電圧未満となった時に、低電圧保護の対象となる空気調和機の電源を切断する、もしくは低電圧保護の対象となる空気調和機の制御部の動作を停止させる。なお、コンパレータの出力端と被比較電圧の入力端との間には、コンパレータの出力信号変化にヒステリシス電圧を発生させる帰還抵抗(ヒステリシス抵抗と呼称する)が接続されている。
【0003】
一方、例えば空気調和機においてこのような低電圧保護機能をソフトウェアで実現しているものも有る。
このような空気調和機が設置されている電源ラインには大きな入力電圧の変化を発生させる他の機器、例えば大型の冷蔵庫などが接続されている場合、これらの機器の動作に伴い入力電圧が常に変動している。また、空気調和機の直流電源装置に使用されている平滑コンデンサの電圧も負荷の状態により常に変動している。従って、これらの電圧変動を考慮してヒステリシス電圧を決定する場合、誤検出とならないようにマージンを持たせてヒステリシス電圧を大きく取る必要がある。この結果、空気調和機が低電圧保護機能により一旦動作が停止した後に再起動する電圧の閾値である上限低電圧閾値が相対的に高くなる。この結果、入力電圧の低下により整流器3の出力電圧が上限低電圧閾値よりも低く、下限電圧よりやや高い電圧で推移している時、低電圧保護機能により空気調和機が一旦停止すると再起動出来なくなる問題が有る。
【0004】
次に前述したソフトウェアによる低電圧保護機能を備えた空気調和機を詳細に説明する。
図3は三相交流電源を用いて動作する空気調和機100を示すブロック図である。
この空気調和機100は室外機140と室内機150を備えており、室外機140には三相交流電源2が接続されている。
【0005】
室外機140は、三相交流電源2が入力端に接続された整流器3と、整流器3の正極端と負極端に、正極入力端と負極入力端がそれぞれ接続されたインバータ部8と、インバータ部8の出力に接続された圧縮機のモータ9と、室外機140全体を制御する室外機制御部120を備えている。
【0006】
また、室外機140は整流器3の正極端とインバータ部8の正極入力端の間に直列に接続されたスイッチであるリレー5と、リレー5の両端に並列に接続された突入電流防止抵抗である抵抗4を備えている。さらに、室外機140はインバータ部8の正極入力端と負極入力端の間に、平滑コンデンサ10の負極端と平滑コンデンサ11の正極端を接続した直列回路、及び制御用電源部14がそれぞれ並列に接続されている。
【0007】
さらに、平滑コンデンサ10に抵抗12が、また、平滑コンデンサ11に抵抗13がそれぞれ並列に接続されている。この抵抗がバランス抵抗である。また、このバランス抵抗と制御用電源部14とインバータ部8に整流器3の出力電圧が印加される。また、整流器3の負極端と平滑コンデンサ11の負極端とインバータ部8の負極入力端の接続点はグランドに接続されている。
【0008】
また、室外機140は整流器3の出力電圧を検出し、検出結果を第1直流電圧値として室外機制御部120へ出力する第1直流電圧検出部6を備えている。なお、第1直流電圧値は入力電圧に追従して変化するため、空気調和機100の入力電圧と対応している。また、第1直流電圧検出部6とインバータ部8は制御用電源部14から電源の供給を受けている。
【0009】
一方、室外機制御部120は室内機150と通信接続されており、また、インバータ部8へインバータ制御信号を、リレー5へリレー制御信号を出力する。さらに、室外機制御部120の内部には三相交流電源2の電圧の低下/上昇に対応してインバータ部8への直流電圧を遮断/供給する電源管理部130を備えている。
【0010】
電源管理部130は、電源投入監視部131と、電源切断監視部132と、リレー5を「開」とする直流電圧の閾値であり、予め値が決められている上限低電圧閾値を出力する上限低電圧閾値記憶部133と、リレー5を「閉」とする直流電圧の閾値であり、予め値が決められている下限低電圧閾値を出力する下限低電圧閾値記憶部135と、リレー5へリレー制御信号を出力するフリップフロップ134を備えている。なお、上限低電圧閾値>下限低電圧閾値となっており、これらの電圧差がヒステリシス電圧となる。
【0011】
電源投入監視部131は、空気調和機100を動作させることが可能な最低の直流電圧である第1直流電圧が供給されている否かを常に監視している。このため、電源投入監視部131は第1直流電圧値と上限低電圧閾値が入力されており、第1直流電圧値が上限低電圧閾値以上になった時のみパルス信号からなる投入信号を出力する。
【0012】
投入信号がセット端子に入力されたフリップフロップ134はQ端子からハイレベルのリレー制御信号を出力し、ハイレベルのリレー制御信号が入力されたリレー5は接点を「閉」とし、整流器3から出力される直流電圧を平滑コンデンサ10、11へ供給する。この結果、インバータ部8に電源が供給されて室外機140は動作可能となる。
【0013】
一方、電源切断監視部132は、空気調和機100を運転させることが可能な第1直流電圧の供給が不可能か否かを常に監視している。このため、電源切断監視部132は、第1直流電圧値と下限低電圧閾値が入力されており、第1直流電圧値が下限低電圧閾値未満になった時のみパルス信号からなる切断信号を出力する。
【0014】
切断信号がリセット端子に入力されたフリップフロップ134はQ端子からローレベルのリレー制御信号を出力し、ローレベルのリレー制御信号が入力されたリレー5は接点を「開」とし、整流器3の正極端と平滑コンデンサ10の正極端の接続を切断する。この結果、インバータ部8への電圧が遮断されて室外機140は動作を停止する。
【0015】
次に三相交流電源2の投入から切断までの動作を説明する。なお、リレー5は電源投入前には「開」になっており、平滑コンデンサ10の正極端と平滑コンデンサ11の負極端の間の電圧はゼロボルトになっている。室外機140に電源が投入されると、整流器3の正極端と負極端の間から第1直流電圧が出力される。この電圧により抵抗4を介して平滑コンデンサ10、11が充電され、平滑コンデンサ10、11の電圧が徐々に上昇する。
【0016】
前述したように電源投入監視部131は、入力電圧、つまり整流器3の出力電圧が空気調和機100の動作可能な最低の直流電圧以上か否かを常に監視している。そして、電源管理部130は、第1直流電圧値が上限低電圧閾値以上なった時にリレー5を「閉」とする。逆に三相交流電源2が切断されると平滑コンデンサ10、11の電圧である第2直流電圧が徐々に下降する。
【0017】
このため、第1直流電圧も徐々に下降する。前述したように電源切断監視部132は、整流器3の出力電圧が空気調和機100の動作が可能な最低の直流電圧未満か否かを常に監視している。このため、電源管理部130は、第1直流電圧値が下限低電圧閾値未満になった時にリレー5を「開」とする。
【0018】
次に図4の説明図を用いて低電圧時の空気調和機100の動作を説明する。
図4の横軸は時間であり、縦軸に関して図4(1)は第1直流電圧(太い実線)及び第2直流電圧(細い破線)を、図4(2)はリレー制御信号を、それぞれ示している。なお、t50~t53は時刻である。
【0019】
一方、空気調和機100の定格電圧範囲は220V~240Vであり、このうち下限定格電圧値(220V-10%)は198V(相電圧)であるため、この電圧を整流すると約485Vとなる。また、図3の例における空気調和機100が動作可能な直流電圧は360Vである。つまり、第1直流電圧において360Vを下限低電圧閾値とし、また、下限低電圧閾値以上であり、かつ、485Vよりも小さい電圧を上限低電圧閾値とする必要がある。この空気調和機100の例では上限低電圧閾値を370Vとしている。
【0020】
図4(1)に示すように入力電圧の低下に対応して第1直流電圧がt50以降、徐々に低下しており、これがt51で下限低電圧閾値未満となった時、電源管理部130はリレー制御信号をローレベルにしてリレー5を「開」にする。同時に室外機制御部120は室外機140と室内機150の動作を停止、つまり、空気調和機100の動作を停止させる。リレー5が「開」の場合、制御用電源部14と平滑コンデンサ10、11及び抵抗12,13には抵抗4を介して電流が流れるため、抵抗4で発生する電位差だけ第1直流電圧よりも第2直流電圧が低くなる。
【0021】
その後、入力電圧の上昇により第1直流電圧が上限低電圧閾値以上になったt53の時、電源管理部130はリレー制御信号をハイレベルにしてリレー5を閉にするため空気調和機100は動作を再開する。
ここで、もし、t51~t53の期間で入力電圧が安定し第1直流電圧が368Vのまま推移した場合、空気調和機100は運転を停止したままとなる。従って整流器3の出力電圧が下限低電圧閾値より高く上限低電圧閾値よりも低い電圧で推移するような電源事情が悪い地域では現実的に運転停止時間が長くなってしまう。このため下限低電圧閾値と上限低電圧閾値の差であるヒステリシス電圧は適度に小さい値の方が電源事情が悪い地域では運転の可動時間が長くなってユーザーの快適性を向上させることができる。
【0022】
そこで、上限低電圧閾値を370ボルトよりも小さく、下限低電圧閾値を360ボルトよりも大きい下限低電圧閾値+α、例えば365Vを上限低電圧閾値としようとした場合、前述したように第2直流電圧が下限低電圧閾値よりもβボルトだけ低い場合がある。この、第1直流電圧が下限低電圧閾値+αにおいてt52の場合、ここでリレー5を閉としても室外機140が動作可能な360V以上になる保証はない。なぜなら、リレー5を閉としてインバータ部8の運転を開始した場合には低電圧での運転開始になる。インバータ方式の空気調和機は、定格の空調能力を出すためにインバータ8に入力される電圧が低い時には入力電圧が定格電圧の場合よりも電流を増加させて運転を開始する。このためリレー5に流れる電流が20アンペア程度と大きくなる。この結果、平滑コンデンサ10,11の電圧が低下し、また、リレー5の接点の接触抵抗により1~2ボルト程度の電圧降下が発生して、インバータ8に入力される電圧が低下することになる。
【0023】
このため、少なくとも実験的に求めた上限低電圧閾値を第1直流電圧が越えるt53までリレー5を「開」としておくように、下限低電圧閾値+αよりも大きい上限低電圧閾値にすることでヒステリシス電圧を大きく取る必要があった。さらに、種々の条件、例えばリレー5の経年変化による接点抵抗の増加や平滑コンデンサ10,11の容量低下、温度条件などを考慮して上限低電圧閾値にマージンを加算する必要があった。
【0024】
以上説明したように、入力電圧は空気調和機100が接続されている電源ラインに接続された他の機器の動作に伴い入力電圧が常に変動している。また、インバータ8に印加される平滑コンデンサの電圧も負荷の状態により常に変動しており、これらを考慮してヒステリシス電圧を決定する場合、マージンを持たせてヒステリシス電圧を大きく取る必要があり、この結果、上限低電圧閾値が相対的に高くなり、空気調和機100の動作が復帰する電圧が高くなる問題が有る。このため、電源事情の悪い地域で使用できる空気調和機が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】特開2000-4537号公報(段落番号0003~0011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は以上述べた問題点を解決し、本体機器に電源を供給/遮断するスイッチと、このスイッチに並列に接続された突入電流防止抵抗と、電源管理部を備えた空気調和機において、電源を供給/遮断する時のヒステリシス電圧を小さくして確実に空気調和機の起動を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は上述の課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は
室外機を備えた空気調和機であって、前記室外機は、
交流電源を整流して直流電圧を出力する整流器と、
前記整流器の正極端と負極端の間に接続された平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサに並列に接続される負荷と、
前記整流器の正極端又は負極端と前記平滑コンデンサの一端に直列に接続されたスイッチと、
前記スイッチに並列に接続された突入電流防止抵抗と、
前記整流器の出力電圧を検出して第1直流電圧値として出力する第1直流電圧検出手段と、
前記平滑コンデンサの両端電圧を検出して第2直流電圧値として出力する第2直流電圧検出手段と、
前記第1直流電圧値と前記第2直流電圧値が共に予め定められた低電圧閾値以上に変化した場合に前記スイッチを短絡する電源管理手段とを備えたことを特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、前述した室外機に備えられた前記電源管理手段は、前記第1直流電圧値が前記低電圧閾値未満に変化した場合、もしくは、前記第2直流電圧値が前記低電圧閾値未満に変化した場合に前記スイッチを開放することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上の手段を用いることにより、本発明による空気調和機によれば、電源管理手段において、第1直流電圧値と第2直流電圧値が共に低電圧閾値以上になった時にスイッチを短絡して整流器の出力電圧を負荷に供給する。つまり、入力電圧と対応する第1直流電圧と負荷、例えばインバータに供給する電圧が共に空気調和機の動作可能電圧以上であることを確認した後にスイッチを閉とするため、空気調和機の起動を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による空気調和機の実施例を示すブロック図である。
図2】本発明による電源管理部の動作を説明する説明図である。
図3】従来の空気調和機を示すブロック図である。
図4】従来の電源管理部の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。なお、熱交換器や膨張弁などの冷媒回路やファンモータなど、本発明に直接関係ない部分については図示と説明を省略している。また、背景技術で説明した部分と同じ部分については同じ番号を付与している。
【実施例1】
【0032】
図1は本発明による空気調和機1を示すブロック図である。この空気調和機1は室外機40と室内機50を備えており、室外機40には三相交流電源2が接続されている。
【0033】
室外機40は、三相交流電源2が入力端に接続された整流器3と、整流器3の正極端と負極端に、正極入力端と負極入力端がそれぞれ接続されたインバータ部8と、インバータ部8の出力に接続された圧縮機のモータ9と、室外機40全体を制御する室外機制御部20を備えている。
【0034】
また、室外機40は整流器3の正極端とインバータ部8の正極入力端の間に直列に接続されたスイッチであるリレー5と、リレー5の両端に並列に接続された抵抗4を備えている。さらに、室外機40はインバータ部8の正極入力端と負極入力端の間に、平滑コンデンサ10の負極端と平滑コンデンサ11の正極端を接続した直列回路、及び制御用電源部14がそれぞれ並列に接続されている。
【0035】
さらに、平滑コンデンサ10に抵抗12が、また、平滑コンデンサ11に抵抗13がそれぞれ並列に接続されている。この抵抗がバランス抵抗である。また、このバランス抵抗と制御用電源部14とインバータ部8に整流器3の電圧が印加される。また、整流器3の負極端と平滑コンデンサ11の負極端とインバータ部8の負極入力端の接続点はグランドに接続されている。
ここで、抵抗4は15.6オーム、平滑コンデンサ10と平滑コンデンサ11はそれぞれ3840マイクロファラッド、抵抗12と抵抗13はそれぞれ20.5キロオームである。
【0036】
また、室外機40は入力電圧に対応する整流器3の出力電圧を検出し、検出結果を第1直流電圧値として室外機制御部20へ出力する第1直流電圧検出部(第1直流電圧検出手段)6と、平滑コンデンサ10と平滑コンデンサ11の直列回路に印加される電圧を検出し、検出結果を第2直流電圧値として室外機制御部20へ出力する第2直流電圧検出部(第2直流電圧検出手段)7を備えている。なお、第1直流電圧値は空気調和機1の入力電圧と対応しており、第2直流電圧値はインバータ部8に印加される電圧値を示している。また、第1直流電圧検出部6と第2直流電圧検出部7は、例えば検出対象の電圧に接続された直列抵抗により検出する電圧を分圧し、これをアナログ/デジタル変換して電圧値を出力する。
【0037】
なお、第1直流電圧検出部6と第2直流電圧検出部7とインバータ部8と室外機制御部20は制御用電源部14から電源の供給を受けている。なお、制御用電源部14の入力端には、リレー5が「開」であっても抵抗4を介して整流器3から電源が供給されており、リレー5の状態に関わらず約0.3アンペア程度の電流が流れている。
【0038】
一方、室外機制御部20は室内機50と通信接続されており、また、インバータ部8へインバータ制御信号を、リレー5へリレー制御信号を出力する。さらに、室外機制御部20の内部には三相交流電源2の電圧の低下/上昇に対応してインバータ部8へ直流電圧を遮断/供給する電源管理部(電源管理手段)30を備えている。
【0039】
電源管理部30は、電源投入監視部31と、電源切断監視部32と、リレー5を開放/短絡(開/閉)する直流電圧の閾値であり、予め値が決められている低電圧閾値を出力する低電圧閾値記憶部33と、リレー5へリレー制御信号を出力するフリップフロップ34を備えている。
【0040】
電源投入監視部31は、空気調和機1が動作可能な最低の直流電圧(第1直流電圧と第2直流電圧)が供給されているか否かを常に監視している。このため、電源投入監視部31は第1直流電圧値と第2直流電圧値と低電圧閾値が入力されており、第1直流電圧値及び第2直流電圧値の電圧が低電圧閾値以上になった時のみパルス信号からなる投入信号を出力する。
【0041】
投入信号がセット端子に入力されたフリップフロップ34はQ端子からハイレベルのリレー制御信号を出力し、ハイレベルのリレー制御信号が入力されたリレー5は接点を「閉」とし、整流器3から出力される直流電圧を平滑コンデンサ10、11へ供給する。この結果、インバータ部8に電源が供給されて室外機40は動作可能となる。
【0042】
一方、電源切断監視部32は、空気調和機1が動作能な第1直流電圧と第2直流電圧を供給が不可能か否かを常に監視している。このため、電源切断監視部32は、第1直流電圧値と第2直流電圧値と低電圧閾値が入力されており、第1直流電圧値又は第2直流電圧値のいずれかの電圧が低電圧閾値未満になった時のみパルス信号からなる切断信号を出力する。
【0043】
切断信号がリセット端子に入力されたフリップフロップ34はQ端子からローレベルのリレー制御信号を出力し、ローレベルのリレー制御信号が入力されたリレー5は接点を「開」とし、整流器3の正極端と平滑コンデンサ10の正極端の接続を切断する。この結果、インバータ部8への電源供給が遮断されて室外機40は動作を停止する。
【0044】
次に三相交流電源2の投入から切断までの動作を説明する。なお、リレー5は電源投入前には「開」になっており、平滑コンデンサ10の正極端と平滑コンデンサ11の負極端の間の電圧はゼロボルトになっている。室外機40に電源が投入されると、整流器3の正極端と負極端の間から第1直流電圧が出力される。この電圧により抵抗4を介して平滑コンデンサ10、11が充電され、平滑コンデンサ10、11の電圧が徐々に上昇する。
【0045】
前述したように電源投入監視部31は、空気調和機1が動作可能な最低の直流電圧以上であるかを常に監視している。そして、電源管理部30は、第1直流電圧値と第2直流電圧値が共に低電圧閾値以上なった時、つまり、入力電圧と対応する整流器3の出力電圧と、インバータ部8に入力される電圧が共に空気調和機1が動作可能な電圧以上になった時にリレー5を「閉」として空気調和機1を起動させる。これにより、入力電圧不足や、インバータ部8の入力電圧不足を回避して空気調和機1の起動を確実に行うことができる。
【0046】
一方、三相交流電源2が切断されると平滑コンデンサ10、11の電圧である第2直流電圧が徐々に下降する。また、抵抗4を介して第1直流電圧も徐々に下降する。前述したように電源切断監視部32は、空気調和機1内で供給される電圧が空気調和機1を動作させることが可能な最低の直流電圧未満であるかを常に監視している。そして、電源管理部30は、第1直流電圧値又は第2直流電圧のいずれかが低電圧閾値未満になった時、つまり、入力電圧と対応する整流器3の出力電圧と、インバータ部8に入力される電圧のどちらかが空気調和機1が動作可能な電圧未満になった時にリレー5を「開」とする。これにより、入力電圧不足や、インバータ部8の入力電圧不足の時に空気調和機1の停止を確実に行うことができる。
以上説明したように入力電圧と対応する第1直流電圧値だけでなく、インバータ部8の入力電圧である第2直流電圧値を監視しているため、背景技術で説明したように第1直流電圧値に基づいた上限低電圧閾値や下限低電圧閾値を用いることがない。このため、ヒステリシス電圧のマージンを小さくできる。
【0047】
なお、空気調和機1の定格電圧範囲は220V~240Vであり、このうち下限定格電圧値(220V-10%)は198V(相電圧)であるため、この電圧を整流すると約485Vとなる。また、図1の例における空気調和機1が動作可能な直流電圧は360Vである。つまり、第1直流電圧において360Vを空気調和機1の動作を停止させる低電圧閾値とし、また、365Vを空気調和機1の運転を再開させる電圧としている。
【0048】
また、前述したように抵抗4は15.6オーム、抵抗12と抵抗13はそれぞれ20.5キロオームであるため、リレー5が「開」で、かつ、第1直流電圧が360Vの時、これらの抵抗に流れる電流は約0.009アンペアである。さらにインバータ部8が停止中であっても内部に約0.001アンペア程度が、さらに制御用電源部14に約0.3アンペアが流れる。このため、抵抗4には合計0.31アンペアが流れ、その電位差は約4.8ボルトになる。
【0049】
一方、リレー5が「閉」でインバータ部8が最大能力で運転中、約20アンペアがリレー5の接点に流れる。リレー5の接点抵抗は数ミリ~数十ミリオームであるが、最悪、経年変化により100ミリオーム前後になる場合もある。このため、リレー5が「閉」の時、リレー5の両端の電位差が約2ボルトとなる場合が想定される。つまり、入力電圧が安定し、かつ、リレー5が「閉」の時に第1直流電圧値よりも第2直流電圧がこの電位差だけ低くなる。
【0050】
次に図2の説明図を用いて低電圧時の空気調和機1の動作を説明する。
図2の横軸は時間であり、縦軸に関して図2(1)は第1直流電圧(太い実線)及び第2直流電圧(細い破線)を、図2(2)はリレー制御信号を、図2(3)は切断信号を、図2(4)は投入信号を、図2(5)はインバータ制御信号を、それぞれ示している。なお、t0~t6は時刻である。
【0051】
図2(1)に示すように入力電圧の低下に対応して、第1直流電圧と、第1直流電圧よりも前述したリレー5の接点抵抗による電位差だけ低い電圧の第2直流電圧がt0以降、徐々に低下しており、t1で急激な負荷の増加、例えばモータ9の機械的な負荷が増加し、これによってインバータ部8の電流が増加したことにより第2直流電圧が低電圧閾値未満となっている。
【0052】
そして、第2直流電圧が低電圧閾値未満となったことを検出した電源管理部30の電源切断監視部32は、図2(3)に示すようにt1で切断信号を出力し、この信号が入力されたフリップフロップ34はリレー制御信号をローレベルにしてリレー5を「開」にする。同時に室外機制御部20はインバータ制御信号の出力を停止させてインバータ部8の動作を停止させる。
【0053】
このように本発明では電源管理部30が入力電圧と対応した第1直流電圧だけでなく、実際にインバータ部8に供給される第2直流電圧も監視しているため、リレー5の接点抵抗による電位差が有ったとしても正確にインバータ部8を停止/運転させることができる。このため、ヒステリシス電圧を決定する際にマージンを小さくできる。
【0054】
一方、t1でリレー5が「開」となった場合、制御用電源部14や平滑コンデンサ10、11などには抵抗4を介して電流が流れるため、抵抗4で発生する電位差、つまり、前述した第1直流電圧が360ボルトの時、約4.8ボルトだけ第1直流電圧よりも第2直流電圧が低くなる。この電位差がヒステリシス電圧となる。
その後、負荷の減少により第2直流電圧が低電圧閾値以上となり、かつ、第1直流電圧が低電圧閾値以上になったt2の時、これを検出した電源管理部30の電源投入監視部31は、図2(4)に示すように投入信号を出力し、この信号が入力されたフリップフロップ34はリレー制御信号をハイレベルにしてリレー5を「閉」にすることでインバータ部8に直流電圧が供給される。そして室外機制御部20はインバータ制御信号の出力を開始し、インバータ部8を動作させて室外機40の運転を再開する。
【0055】
このように本発明では室外機40の運転を再開する場合、つまり、リレー5を「開」から「閉」にする条件は、第1直流電圧と第2直流電圧が共に低電圧閾値以上になることである。これは入力電圧の監視とともに、実際にインバータ部8に供給される第2直流電圧が確実に動作可能な電圧(低電圧閾値)以上となることも監視していることになり、室外機40の運転再開を確実に行うことができる。また、第2直流電圧でリレー5の開閉を監視することで抵抗4を突入電流防止抵抗としての機能だけでなく、ヒステリシス抵抗として利用することができる。
【0056】
図3の背景技術で説明した回路ではヒステリシス電圧は上限低電圧閾値と下限低電圧閾値との差である。このヒステリシス電圧は予め定められた値であり、実際のヒステリシス電圧とは異なるため、前述したようにヒステリシス電圧のマージンを多めに決定する必要がある。一方、本発明では抵抗4の電圧が実際のヒステリシス電圧となるため、ヒステリシス電圧のマージンは小さくてもよい。
【0057】
一方、t2以降に一時的に増加した第1直流電圧と第2直流電圧が減少を再開し、t3で第1直流電圧と第2直流電圧が共に低電圧閾値未満となっている。このため、前述したように、電源管理部30はリレー制御信号をローレベルにしてリレー5を「開」にする。
また、同時に室外機制御部20はインバータ部8の動作を停止させる。
【0058】
そして、入力電圧の上昇により第1直流電圧と第2直流電圧が上昇し、t4で第1直流電圧と第2直流電圧が共に低電圧閾値以上になったため、電源管理部30はリレー制御信号をハイレベルにしてリレー5を「閉」にする。一方、室外機制御部20はインバータ部8を動作させて室外機40の運転を再開する。
【0059】
一方、t4以降でゆるやかに増加した第1直流電圧と第2直流電圧が再び減少し始め、t5で第1直流電圧が低電圧閾値未満となっている。このため、前述したように、電源管理部30はリレー制御信号をローレベルにしてリレー5を「開」にする。また、同時に室外機制御部20はインバータ部8の動作を停止させる。なお、t5において第2直流電圧は低電圧閾値まで低下していない。これは、急激に第1直流電圧が低下した場合、平滑コンデンサ10、11に充電されていた電圧がリレー5を介して放電されるためである。リレー5の接点抵抗が経年変化によって増加した場合1~2ボルトの電位差が発生する場合がある。
【0060】
そして、入力電圧の上昇により第1直流電圧と第2直流電圧が上昇し、t6で第1直流電圧と第2直流電圧が共に低電圧閾値以上になると、電源管理部30はリレー制御信号をハイレベルにしてリレー5を「閉」にする。一方、室外機制御部20はインバータ部8を動作させて室外機40の運転を再開する。
【0061】
以上説明したように、電源管理部30が第1直流電圧に加えて第2直流電圧も監視しているため、リレー5の接点抵抗による電位差が有ったとしても正確にインバータ部8を停止/運転させることができる。このため、ヒステリシス電圧を決定する際にマージンを小さくでき、ヒステリシス電圧も小さくできるため、低電圧時の運転を可能な限り継続することができる。
【0062】
本実施例では三相入力の空気調和機を説明しているが、これに限るものでなく、単相入力であってもよい。また、本実施例ではバランス抵抗を用いた例を説明しているが、これに限るものでなく、平滑コンデンサに並列に接続された放電用の抵抗であってもよいし、制御用電源部などの大きい負荷を抵抗の代わりにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 空気調和機
2 三相交流電源
3 整流器
4 抵抗(突入電流防止抵抗)
5 リレー(スイッチ)
6 第1直流電圧検出部(第1直流電圧検出手段)
7 第2直流電圧検出部(第2直流電圧検出手段)
8 インバータ部(負荷)
9 モータ
10 平滑コンデンサ
11 平滑コンデンサ
12 抵抗(負荷)
13 抵抗(負荷)
14 制御用電源部(負荷)
20 室外機制御部
30 電源管理部(電源管理手段)
31 電源投入監視部
32 電源切断監視部
33 低電圧閾値記憶部
34 フリップフロップ
40 室外機
50 室内機
図1
図2
図3
図4