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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】シート状物の欠陥検査装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20220628BHJP
   G01N 21/894 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G01N21/894 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018213269
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079753
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】坂野 賀津士
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-257905(JP,A)
【文献】特開2010-223613(JP,A)
【文献】特開2005-127989(JP,A)
【文献】特許第4810665(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0195096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物の欠陥検査装置であって,
前記シート状物の一方面側に配置され,当該シート状物を撮影して当該シート状物の画像を得る撮影装置と,
前記シート状物の他方面側で,平面視において前記撮影装置による前記シート状物の検査範囲全域を覆うように配置された照明装置と,
前記撮影装置によって取得された前記シート状物の画像を解析して,当該画像中の所定の明度範囲よりも明度の高い部分を前記シート状物に形成された穴であると判断し,当該画像中の所定の明度範囲よりも明度の低い部分を前記シート状物に形成された穴以外の欠陥であると判断する画像解析装置と,を備える
欠陥検査装置。
【請求項2】
前記照明装置は面発光光源である
請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記照明装置と前記シート状物の間の間隙は0~500mmである
請求項1又は請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記シート状物の前記一方面側に配置され,前記シート状物の前記検査範囲を照明する一又は複数の光源をさらに備える
請求項1から請求項3のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記シート状物の前記他方面側に配置され,前記シート状物と前記照明装置の間の空間を照明する一又は複数の光源をさらに備える
請求項1から請求項4のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記照明装置に付着する塵芥を除去する除去手段をさらに備える
請求項1から請求項5のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
シート状物を得る工程と,
前記シート状物の欠陥の有無を,請求項1から請求項6のいずれかに記載の欠陥検査装置を用いて検査する工程と,を含む,
シート状物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,衛生用紙などのシート状物の欠陥検査装置や,それを用いたシート状物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,例えばトイレットペーパーやティッシュペーパーのような家庭用の衛生用紙に関し,その製造過程で生じた欠陥(穴や,汚れ,スジ,異物等)を検査する手法として,衛生用紙の原紙をローラなどによって高速で搬送しつつ,その搬送中に紙面をカメラで撮影することにより,紙面上に生じた欠陥を検出することが知られている。
【0003】
例えば紙・フィルム等のようなシート状物の被検査体の欠陥検査技術に関し,特許文献1には,シート状物に照射光を照射する照明装置と,シート状物を透過した透過光を連続して撮像する撮像装置とを備え,シート状物の撮像画像を解析して良否判定を行う検査装置が開示されている。このように,照明装置から照射されてシート成物を透過した光をカメラで検出する検査手法は,「透過方式」とも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-238304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,特許文献1に記載の欠陥検査装置ように,検査対象となるシート状物の一方面側に撮影装置を配置し他方面側に照明装置を配置する「透過方式」の装置では,シート状物に付着した異物やそこに生じた穴が,例えば図9に示すような状態で映り込むこととなる。すなわち,シート状物がほぼ白色のものであることを想定したときに,汚れ(機械油が付着したシミなど)はシート状物よりも明度の低い暗色に写る。他方で,撮影装置と照明装置が互いに対向する紙面上の範囲に穴が生じている場合(すなわち撮影装置がシート状物の穴を通じて照明装置を直接撮影できる場合)には,その穴はシート状物よりも高い明度で撮影画像に写ることとなるが,撮影装置と照明装置が互いに対向する紙面上の範囲の外側に穴が生じている場合には,その穴はシート状物よりも低い明度で撮影画像に写り込むこととなる。このように,同じ紙面上の穴でも,それが生じた紙面上の位置によっては撮影画像における明度が全く異なるものとなる。また,図9に示されるように,撮影装置と照明装置の対向範囲外に生じた穴と紙面上に付着した異物は共に,撮影画像中においてはシート状物よりも明度が低いものとなる。このため,シート状物に生じた欠陥が穴であるかそれとも別の異物であるかを判別するためには,欠陥の明度を解析するための複雑なアルゴリズムが必要になるという問題があった。
【0006】
そこで,本発明は,簡単な構成及びアルゴリズムでシート状物に生じた欠陥の種別を判別することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は,上記した従来技術の問題を解決する手段について鋭意検討した結果,シート状物の一方面側に撮影装置が配置され他方面側に照明装置が配置された「透過方式」の欠陥検査装置において,平面視において撮影装置によるシート状物の検査範囲全域を覆うように照明装置を配置することで,シート状物のどの位置に穴が生じている場合でも,その穴を通じて撮影装置が照明装置を直接撮影できるようになることに想到した。これにより,シート状物の検査範囲内に位置する穴はすべて紙面よりも高い明度で撮影画像に写り込むことになるため,シート状物に生じた欠陥が穴であるのかそれとも別の異物の付着であるのかを簡単に判別できるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成・工程を有する。
【0008】
本発明の第1の側面は,シート状物の欠陥検査装置に関する。本発明に係る欠陥検査装置は,撮影装置と照明装置を備える。撮影装置は,シート状物の一方面側に配置され,当該シート状物の表面を撮影して当該シート状物の画像を得る。照明装置は,シート状物の他方面側に配置され,平面視において撮影装置によるシート状物の検査範囲全域を覆うように配置される。撮影装置によるシート状物の「検査範囲」とは,撮影装置による撮影範囲とシート状物の紙面とが平面視において重なる範囲である。照明装置は,平面視において少なくとも撮影装置によるシート状物の検査範囲全域と重なる位置に発光面又は発光点を持つ。
【0009】
上記構成のように,透過方式の欠陥検査装置において,撮影装置の検査範囲全域と平面視において重なる範囲に照明装置の発光面や発光点を配置することで,シート状物のどの位置に穴が生じていても,その穴を通じて撮影装置が照明装置の発光点を直接撮影できる。これにより,シート状物に生じた穴は,すべて紙面よりも高い明度で撮影画像に写り込むこととなる。このため,紙面よりも明度の高い欠陥を,紙面上に生じた穴であると簡単に判別できる。他方で,シート状物に付着した汚れなどの異物は,紙面よりも高い明度で撮影画像に写り込むこととなる。これにより,紙面よりも明度の低い欠陥を,紙面上に付着した異物であると簡単に判別できる。このように,欠陥検査装置では,撮影画像を解析して,紙面自体の正常な明度範囲と紙面上に生じている欠陥の明度とを比較することで,その欠陥が穴であるか,それ以外の欠陥(汚れや異物等)であるかを容易に判別できる。
【0010】
本発明に係る欠陥検査装置において,照明装置は面発光光源であることが好ましい。「面発光光源」とは,面状に発光する光源の他,点光源が密集して複数個配置されることで実質的に面状に発光しているとみなされるものを含む。特に,面発光光源は,撮影装置によるシート状物の検査範囲をほぼ均一な明るさで照らすことができるものを採用するとよい。
【0011】
本発明に係る欠陥検査装置において,照明装置とシート状物の間の間隙は0~500mmであることが好ましい。つまり,照明装置とシート状物は接していてもよいし,500mm以下の間隙で離間していてもよい。このように,照明装置とシート状物の距離を近くすることで,照明装置の発光面のサイズを大きくしなくても撮影装置による検査範囲全域を照らすことができるため,検査装置全体の大きさをコンパクトに維持できる。また,照明装置とシート状物の間の間隙をゼロ(両者が接している状態)とすることで,浮遊している紙粉が照明装置に堆積することを防止できるため特に好ましい。
【0012】
本発明に係る欠陥検査装置は,さらに一又は複数の光源を備えることが好ましい。光源は,シート状物の一方面側(すなわち撮影装置と同じ面側)に配置され,シート状物の検査範囲を照明するものであってもよい。このように,撮影装置付近に光源を設けてシート状物の検査範囲を照らすことにより,シート状物と撮影装置の間に紙粉などの浮遊物が存在している場合でも,その浮遊物の影が撮影画像中に暗く写り込むことを回避できる。つまり,光源からの照射光によって撮影画像中に写り込む浮遊物の影を薄くすることができる。これにより,紙粉やその影の影響によって欠陥検査装置に誤作動が生じることを回避できる。
【0013】
本発明に係る欠陥検査装置において,一又は複数の光源は,シート状物の他方面側(すなわち照明装置と同じ面側)に配置され,シート状物と照明装置の間の空間を照明するものであってもよい。このように,照明装置付近に光源を配置することで,シート状物と照明装置の間に紙粉などの浮遊物が存在している場合でも,その浮遊物の影が撮影画像中に暗く写り込むことを回避できる。
【0014】
本発明に係る欠陥検査装置は,照明装置に付着する塵芥を除去する除去手段をさらに備えることが好ましい。照明装置の発光面にはシート状物から発生した塵芥(紙粉など)が堆積する恐れがある。そこで,このような塵芥を照明装置から除去するための装置を設けておくとよい。なお,例えば照明装置をシート状物に接した状態で配置する場合のように,照明装置に紙粉等が堆積する可能性がない場合あるいはその可能性が低い場合には,上記の除去手段を設ける必要はない。
【0015】
本発明の第2の側面は,シート状物の製造方法に関する。本発明に係る製造方法は,シート状物を得る工程と,シート状物の欠陥の有無を検査する工程とを含む。検査工程では,前述した第1の側面に係る欠陥検査装置を用いて,シート状物の欠陥の有無を検査する。特に,シート状物に欠陥が発生している場合に,その欠陥がシート状物に生じた穴であるのか,あるいはそれ以外の欠陥(汚れや異物の付着等)であるのかを判別することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,簡単な構成及びアルゴリズムでシート状物に生じた欠陥の種別を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は,抄紙機の構成の一例を示している。
図2図2は,本発明の実施形態に係る欠陥検査装置の構成例を示している。
図3図3は,撮影装置による撮影範囲,検査範囲,及び照明装置の発光範囲の関係性を模式的に示した平面視図である。
図4図4は,欠陥検査装置の機能構成例を示したブロック図である。
図5図5は,画像解析装置における欠陥検出処理の一例を示したフロー図である。
図6図6は,本発明に係る欠陥検査装置で取得した撮影画像の一例を模式的に示している。
図7図7は,欠陥検査装置の変形例を示している。
図8図8は,欠陥検査装置の変形例を示している。
図9図9は,従来の「透過方式」の欠陥検査装置で取得した撮影画像の一例を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0019】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
なお,本願明細書において,「A~B」というときは「A以上B以下」であることを意味する。
【0020】
本発明は,シート状物の欠陥検査装置や,その欠陥検査装置を用いてシート状物を製造する方法に関する。シート状物の例としては,紙製やプラスチック製のものを挙げることができる。特に,シート状物は,ティシュペーパーやトイレットペーパーとして利用される家庭用の衛生用紙であることが好ましい。「衛生用紙」とは,JISの「紙・板紙及びパルプ用語」(JISP 0001)で定義された「衛生用紙」を意味する。「衛生用紙」には,タオル,生理用紙,ティシュペーパー,トイレットペーパー,ちり紙が含まれる。本発明によって製造される衛生用紙は,坪量が10~25g/mの範囲にある薄葉紙であることが好ましい。また,本発明の衛生用紙は,1枚からなる1プライの製品であってもよいし,2枚又は3枚以上を重ね合わせた2プライ又は3プライ以上の製品であってもおよい。以下では,シート状物として,1プライの衛生用紙を例に挙げて説明を行う。
【0021】
衛生用紙の製造方法は,基本的に,原料パルプ繊維の懸濁液である抄紙原料(パルプスラリー)を得る調製工程と,抄紙原料から原料パルプ繊維を抄いて繊維ウェブを形成し乾燥させる抄紙工程を含む。
【0022】
調整工程では,衛生用紙の原料となる抄紙原料(パルプスラリー)を調整する。抄紙原料は,パルプを主原料としている。原料パルプとしては,例えば,広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)や針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP); サルファイトパルプ(SP)やソーダパルプ(AP)等の化学パルプ; セミケミカルパルプ(SCP)やケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ; 砕木パルプ(GP)やサーモメカニカルパルプ(TMP,BCTMP)等の機械パルプ; あるいは,楮,三椏,麻,ケナフ等を原料とする非木材パルプ,コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ,古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。抄紙原料は,薄葉紙の用途や要求される性能に応じて,1種類の原料パルプを使用してもよく,又は複数種類の原料パルプを任意の比率で使用してもよい。原料パルプは,未叩解パルプであってもよく,全体または一部が叩解されていてもよい。
【0023】
調整工程で調整された抄紙原料は,抄紙工程において抄紙され衛生用紙となる。抄紙工程は,抄紙機100を利用して行うことができる。図1に示されるように,抄紙機1000は,ワイヤパート110,プレスパート120,ドライパート130,カレンダパート140,及びリールパート150を含む。
【0024】
ワイヤパート110は,パルプスラリーに含まれる水分を搾水し,薄層状の湿紙を形成する部分である。ワイヤパート110は,抄き網を環状の無限軌道ベルトに構成した一対の上下2枚のワイヤ111と,パルプスラリーを2枚のワイヤ111の間に噴き付けるヘッドボックス112とを備える。ヘッドボックス112は,ワイヤ111のニップ部に向かってパルプスラリーを薄く噴き付ける。パルプスラリーに含まれる水分は,フォーミングロール113からの圧力で相互に圧着される2枚のワイヤ111の網目から搾水される。ワイヤ111は,駆動ロールとして機能するフォーミングロール113とドライブロール14によって走行させる。フォーミングロール113及びドライブロール114はワイヤ111と当接するように配置されており,フォーミングロール113及びドライブロール114の回転力がワイヤ111に伝達されることでワイヤ111に推進力が付与されている。
【0025】
プレスパート120は,ワイヤパート110で形成された薄層状の湿紙の水分を更に除去する部分である。プレスパート120は,フェルトを環状の無限軌道ベルトに構成したドライヤフェルト121と,このドライヤフェルト121に当接してドライヤフェルトの走行とともに回転する、複数のフェルトロール122とを備える。プレスパート120においては,ワイヤパート110ら送り込まれた湿紙をドライヤフェルト121の表面に載置し,繊維状のドライヤフェルト121を透過させて湿紙に含まれる水分を更に除去する。
【0026】
ドライパート130は,プレスパート120で水分の除去された湿紙を更に乾燥する部分である。ドライパート130は,加熱可能な円柱状のヤンキードライヤ131と,熱風の噴射口を有するフード132とを備える。ドライパート130においては,内部に蒸気を吹き込み加熱状態としたヤンキードライヤ131の外周面に湿紙を圧着させ,更にフード132内部に設置された噴射口からヤンキードライヤ131の外周側に熱風を噴き付けることによって湿紙を乾燥させる。また,ヤンキードライヤシリンダ131の表面に形成された乾燥した原紙をドクターブレード133によりクレープを付けながら引き剥がす。原紙のクレープ率は,例えば15~45%又は20~38%とすることが好ましい。なお,なお,クレープ率とは,[(ヤンキードライヤの周速)-(リールドラムの周速))/(ヤンキードライヤの周速)]×100(%)で算出される値である。
【0027】
カレンダパート140は,ドライパート130で乾燥させた原紙に対してカレンダー加工を施す部分である。カレンダパート140は,カレンダロール141と受けロール142を備える。カレンダパート140においては,原紙をカレンダロール141と受けロール142の間に挟みこんで押圧することで,原紙表面の平滑化,組織の緻密化,紙厚の均一化,及び光沢の付与等を行う。カレンダロール141や受けロール142の種類は特に限定されないが,例えば金属製のものを好適に用いることができる。
【0028】
リールパート150は,カレンダー加工を施した原紙を巻き取る部分である。リールパート150は,リールドラム151を備える。リールパート150においては,リールドラム151に巻芯152を固定した上で,原紙を巻芯152に巻き付け,リールドラム151を回転させることで原紙を巻芯152に巻き取る。これにより,原紙がロール状に巻取られた原反ロールを得ることができる。
【0029】
本実施形態では,抄紙機100のカレンダパート140とリールパート150の間に,欠陥検査装置200が備え付けられている。欠陥検査装置200は,衛生用紙の原紙の一面側(表側)に紙面と対面するように設置された撮影装置211(カメラ)と,原紙の他方面側(裏側)に配置された照明装置212と,撮影装置211と有線又は無線で接続された画像解析装置220を備える。抄紙機100は,カレンダパート140からリールパート150の間,特に撮影装置211と原紙が対面している部分において,この原紙を一定速度で一定方向に向かって搬送している。また,原紙は裏側から照明装置212によって照明されており,紙面を透過した光が撮影装置211に導入される。このように,撮影装置211は,照明装置212からの照射光のうち原紙の紙面を透過した透過光を撮像することで,撮影画像を取得する。撮影装置211によって取得された衛生用紙の撮影画像は,画像解析装置220に入力され,この画像解析装置220において衛生用紙の紙面上に欠陥が生じているかどうかの解析が実行される。また,画像解析装置220は,撮影画像に含まれる紙面上の欠陥の種別を判定する処理を行う。
【0030】
図2は,本発明の一実施形態に係る欠陥検査装置200について,撮影装置211と照明装置212の配置例を示している。図2に示されるように,衛生用紙Sの表面側(一方面側)に撮影装置211が配置され,衛生用紙の裏面側(他方面側)に照明装置212が配置される。このため,照明装置212から照射されて衛生用紙Sを透過した光が撮影装置211に導入されるようになっている。このようにして,撮影装置211は,「透過方式」で衛生用紙Sの撮影画像を取得する。また,図2では,衛生用紙S上に生じた欠陥を符号Dで示している。欠陥の例としては,穴や,汚れ,スジ,異物等など,衛生用紙の販売に適さない品質上の欠陥を挙げられる。
【0031】
撮影装置211は,静止画又は動画の画像データを取得するためのカメラである。撮影装置211によって取得された画像データは,画像解析装置220へと送信され欠陥検出のための所定の画像解析が行われる。カメラは,例えば,レンズ,メカシャッター,シャッタードライバ,CCDイメージセンサユニットやCMOSイメージセンサユニットといった光電変換素子,光電変換素子から電荷量を読み出し画像データを生成するデジタルシグナルプロセッサ(DSP),ICメモリなどで実現される。なお,カメラは,静止画を撮影するものであってもよいし,所定のフレームレートの動画を撮影するものであってもよい。
【0032】
撮影装置211は,その撮像面(レンズ)が積層シートの紙面に対してほぼ平行に配置されることが好ましい。このため,撮影装置211の撮像面から垂直に直線を引くと,その直線は紙面に対してほぼ垂直に交差する。これにより,撮影装置211によって積層シートの紙面を歪みなく撮影することができる。図2では,撮影装置211の撮影範囲を破線で示している。
【0033】
照明装置212は,撮影装置211によって撮影される衛生用紙Sの撮影範囲を裏面側から照明するライトである。照明装置212は,白色光を照射するものであることが好ましい。照明装置212としては,図2に示されるように面発光光源を用いることが好ましい。面発光光源は,例えば,一又は複数の光源と,この光源から発せられた光を乱反射する導光板(又は反射板)とを備え,衛生用紙Sの紙面を面状に照明するように構成される。なお,導光板としては,アクリル板やガラス板などの公知の導光部材を用いればよい。また,面発光光源は,導光板を有しないものであってもよく,その場合には多数の点光源を密集状態で配置することで,衛生用紙Sの紙面を面状に照射するように構成してもよい。ただし,点光源からの光を紙面に直接照射すると光の解説が発生し,紙面上に生じた穴のサイズ判定などの処理が困難になる場合があるため,面発光光源は,導光板を利用して光源からの光を紙面へと導光する構成とすることが好ましい。照明装置212を構成する光源としては,例えば,蛍光灯,LED(発光ダイオード),OLED(有機発光ダイオード),ランプ,アーク灯,白熱電球などが挙げられる。
【0034】
また,図3に示されるように,照明装置212の発光範囲は,平面視において,撮影装置211による衛生用紙Sの検査範囲を覆うように配置されている。具体的に説明すると,検査範囲とは,撮影装置211の撮影範囲と衛生用紙Sの紙面が重なる範囲であり,図3に示した例においては,衛生用紙Sの搬送方向の長さが符号I1で表され,衛生用紙Sの幅方向の長さが符号I2で表されていた矩形状の範囲となっている。他方で,照明装置212の発光範囲は,図3に示した平面視において,衛生用紙Sの搬送方向の長さが符号L1で表され,衛生用紙Sの幅方向の長さが符号L2で表された矩形状の範囲である。この場合に,撮影装置211の検査範囲は,平面視において照明装置212の発光範囲内に完全に収まることとなる。特に,撮影装置211の検査範囲の長さI1と幅I2は,それぞれ照明装置212の発光範囲の長さL1と幅L2よりも小さくなる(I1<L1,I2<L2)。さらに付言すると,図3に示されるように,撮影装置211の撮影範囲が,平面視において照明装置212の発光範囲内に完全に収まっていることが好ましい。つまり,撮影装置211の画角には,照明装置212の発光範囲外の背景などが写り込むことはない。このように,撮影装置211の撮影範囲,衛生用紙Sの検査範囲,及び照明装置212の発光範囲の関係性を設定することにより,衛生用紙Sの検査範囲内のどの位置に穴が生じていた場合であっても,その穴を通じて撮影装置211が照明装置212の発光部分を直接撮影するようになる。
【0035】
図2では,照明装置212の発光面と衛生用紙Sの間の間隙を符号Gで示している。照明装置212と衛生用紙Sは直接接していてもよいが,衛生用紙Sが照明装置212に触れたときに破損することを防止するために,照明装置212と衛生用紙Sの間には多少の間隙を設けておくとよい。例えば間隙Gは,0~500mmとすればよく,1~300mm,2~200mmであることが好ましく,5~100mmであることが特に好ましい。このように照明装置212を衛生用紙Sに近い位置に配置しておくことで,照明装置212から発せられた光の減衰を抑制され,その光が撮影装置211に高い強度で到達するため,撮影装置211による撮影感度を向上させることができる。
【0036】
また,図示は省略するが,欠陥検査装置200は,照明装置212に付着する塵芥(例えば紙粉など)を除去する除去手段をさらに備えていてもよい。除去手段としては,衛生用紙の紙面と照明装置212の間に連続的又は断続的に空気を送り込む送風装置や,照明装置212を自動又は手動で拭掃するブラシやワイパーを用いることができる。衛生用紙と照明装置212との間に間隔が空いている場合,その平面部に塵芥が堆積して光の強度が弱くなる恐れがある。そこで,除去手段を設けて,照明装置212から連続的又は定期的に塵芥を除去することで,撮影装置211に導入される反射光の光強度を維持することができる。
【0037】
図4は,撮影装置211に接続された画像解析装置220の機能構成例を示している。画像解析装置220は,前述した構成によって撮影装置211によって取得された衛生用紙の画像を解析して,当該衛生用紙の欠陥の有無を検査する。画像解析装置220には一般的なコンピュータを用いればよい。画像解析装置220は,撮影装置用のインターフェースを備えており,撮影装置211が取得した画像データが入力される。画像解析装置220は,制御演算部221,記憶部222,操作部223,及び表示部224を備える。制御演算部221は,各要素222~224を制御するとともに,記憶部222に記憶されている欠陥検査用のコンピュータプログラムに従って,撮影装置211から取得した画像データの画像解析処理を行う。制御演算部221は,CPU又はGPUといったプロセッサにより実現できる。記憶部222は,HDD又はSDDといった不揮発性メモリや,RAM又はDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。操作部223は,マウス,キーボード,タッチパネル,マイクなどの入力装置により構成され,人による操作情報を受け付ける。表示部224は,液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのような表示装置であって,撮影装置211から取得した画像データを表示することとしてもよい。なお,表示部224は,操作部223と一体となってタッチパネルディスプレイを構成していてもよい。
【0038】
画像解析装置220の制御演算部221は,基本的に,撮影装置211によって取得された撮影画像を解析して,衛生用紙の表面上に欠陥があるか否かを判断する。例えば,画像解析装置220は,衛生用紙の画像データの画素又は画素群ごとに明度(濃度)を測定し,正常な明度範囲よりも暗い部分又は明るい部分があったときに,その画像データの衛生用紙に欠陥があると判断する。例えば,衛生用紙に異物が付着している場合,その異物部分については明度が暗く表れる。また,衛生用紙に穴が開いている場合,撮影装置211(面発光光源)を用いた透過方式によって取得した画像データでは,その穴部分については明度が明るく表れる。このように,制御演算部221は画像データの明度に異常が発生している部位を,衛生用紙の欠陥部位であると判断する。
【0039】
図5は,画像解析装置220による欠陥検出処理のフローの一例を示している。また,図6は,撮影装置211によって取得された衛生用紙の紙面の画像であって,紙面上に穴と汚れなど異物が存在するものを模式的に示している。図5に示されるように,まず撮影装置211から画像解析装置220に撮影画像が入力される(ステップS1)。画像解析装置220は,撮影画像を解析して紙面上に欠陥が存在するか否かを判断する(ステップS2)。前述したとおり,紙面上の欠陥は,撮影画像における明度が,通常の紙面の明度範囲から逸脱している傾向にある。このため,画像解析装置220は,撮影画像の明度に基づいて欠陥の有無を判断する。そして,撮影画像中に明度の異常な箇所が存在しなければ,正常と判断する(ステップS3)。他方で,撮影画像中に,一定の閾値を超えて明度が高い箇所又は明度が低い箇所が存在する場合には,画像解析装置220は紙面上に欠陥が存在していると判断し,その欠陥の種類を判別する処理(ステップS4)へと進む。
【0040】
次に,画像解析装置220は,撮影画像内の欠陥の明度が,紙面の通常の明度範囲よりも高いか否かを判断する(ステップS4)。すなわち,図6に示されるように,衛生用紙の紙面上に穴が形成されている場合,その穴が形成された領域は明度が高くなる。これは,前述したように,衛生用紙の裏面側の広い範囲に照明装置212が配置されているためである。特に,図6に示されるように,照明装置212の発光範囲は,撮影装置211による衛生用紙Sの検査範囲全域を覆っているため,検査範囲内のどこに穴が位置している場合であっても,撮影画像中においてすべての穴は明度が高いものとして写り込むことになる。他方で,衛生用紙の紙面上に汚れ等の異物が付着している場合,その異物が付着した領域は明度が低くなる。このように,紙面の通常の明度と比較して,それよりも明度が高い欠陥を穴と判断し(ステップS5),それよりも明度が低い欠陥を異物(穴以外の欠陥)と判断することができる(ステップS6)。例えば,紙面の明度と同程度の明度範囲を正常とし,その正常な明度範囲を上回る明度の欠陥を穴と判断し,正常な明度範囲を下回る明度の欠陥を異物(穴以外の欠陥)と判断すればよい。
【0041】
図9に示したように,従来の透過方式で撮影した撮影画像では,撮影装置211と光源の対向範囲内に存在する穴は明度が高くなり,それ以外の範囲に存在する穴は明度が低くなるといったように,同じ穴でも紙面上の位置によって撮影画像中の明度が異なることとなっていた。また,紙面上に付着した異物も明度が暗く写り込むことになるため,撮影画像中に暗い欠陥がある場合に,その欠陥が異物であるのかあるいは穴であるのかを判別するためには,欠陥の明度(濃度)を解析するための複雑なアルゴリズムが必要となっていた。これに対して,図6に示すように,面発光光源を用いた本発明の透過方式によれば,紙面上の穴がすべて紙面より高い明度で表れ,それ以外の異物等の欠陥が紙面より低い明度で表れる。このため,図5に示したフローのように,欠陥の明度を紙面の正常な明度範囲と比較するだけの簡単なアルゴリズムで,欠陥の種類を判別することが可能になる。
【0042】
図7は,欠陥検査装置200の変形例を示している。図7に示した例において,欠陥検査装置200は,さらに,撮影装置211と同じ面側に配置された複数の光源213,214を備える。光源213,214は,撮影装置211によって撮影される衛生用紙Sの撮影範囲を照明する。光源213,214は,白色光を照射するものであることが好ましい。光源213,214の例としては,蛍光灯,LED(発光ダイオード),OLED(有機発光ダイオード),ランプ,アーク灯,白熱電球などが挙げられる。また,光源213,214は,スポット光源,平行光源(面光源),又は点光源を採用することができるが,その照明範囲(スッポットサイズ)や光軸を制御しやすいスポット光源を採用することが最も好ましい。スポット光源を利用すれば,光源から限定された方向と範囲に光を照射することができる。図7では,各光源213,214の照明範囲を破線で示し,各光源213,214の光軸を一点鎖線で示している。なお,「光軸」とは,光源の発光部分の中心を通り,発光面に対して垂直な直線を意味する。図7で示した例では,各光源213,214としては,光軸を中心として照明範囲(直径)がテーパー状に広がるスポット光源が採用されている。なお,スポット光源としては,照明範囲が無限遠に同一のものを用いることもできる。
【0043】
また,図7に示されるように,衛生用紙Sの長手方向断面視において,各光源213,214から射出された光の光軸は,衛生用紙Sの紙面に対して所定角度θで傾斜している。光源213,214の光軸の傾斜角度θは,例えば30度~90度,35度~85度,又は45度~80度であることが好ましい。なお,図7に示した例では,第1の光源213と第2の光源214の光軸の傾斜角度を等角としているが,それぞれの光源の光軸の傾斜角度は異なっていてもよい。
【0044】
図7に示した構成のように,撮影装置211と衛生用紙Sの間の空間を複数の光源213,214によって多方向から照明することで,この空間に紙粉などの浮遊物が存在している場合であってもその浮遊物の影を薄めることができ,その影が撮影画像中に色濃く写り込むことを回避できる。これにより,浮遊物やその影が原因となって,欠陥検査装置200による欠陥検査処理(図5等参照)にエラーが発生する可能性を低くすることができる。
【0045】
図8は,欠陥検査装置200の別の変形例を示している。図8に示した例において,欠陥検査装置200は,さらに,照明装置212と衛生用紙Sの間の空間を照明するように配置された複数の光源215,216を備える。これらの光源215,216については,基本的に前述した光源215,216と同じ構成のものを採用できる。図8に示した構成のように,照明装置212と衛生用紙Sの間の空間を複数の光源215,216によって多方向から照明することで,この空間に紙粉などの浮遊物が存在している場合であってもその浮遊物の影を薄めることができ,その影が撮影画像中に色濃く写り込むことを回避できる。これにより,浮遊物やその影が原因となって,欠陥検査装置200による欠陥検査処理にエラーが発生する可能性を低くすることができる。
【0046】
なお,図示は省略するが,図7に示されるように衛生用紙Sの表面側を照明する光源213,214と,図8に示されるように衛生用紙Sの裏側を照明する光源215,216を同時に採用することも可能である。
【0047】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【0048】
例えば,前述した実施形態では,シート状物をほぼ水平に走行させて,その上下に撮影装置211と照明装置212を配置しているが,シート状物をほぼ垂直あるいは斜めに走行させて,その左右に撮影装置211と照明装置212を配置することも可能である。シート状物が垂直又は斜めに走行させてその左右に撮影装置211と照明装置212を配置する場合,空気中に浮遊する紙粉等の塵芥が撮影装置211や照明装置212に堆積しにくくなるため,紙粉の堆積改善の効果が見込める。
【符号の説明】
【0049】
100…抄紙機 110…ワイヤパート
111…ワイヤ 112…ヘッドボックス
113…フォーミングロール 114…ドライブロール
120…プレスパート 121…ドライヤフェルト
122…フェルトロール 130…ドライパート
131…ヤンキードライヤ 132…フード
133…ドクターブレード 140…カレンダパート
141…カレンダロール 142…受けロール
150…リールパート 151…リールドラム
152…巻芯 200…欠陥検査装置
211…撮影装置 212…照明装置
213~216…光源 220…画像解析装置
221…制御演算部 222…記憶部
223…操作部 224…表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9