(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】車両用発電機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20220628BHJP
H02K 19/22 20060101ALI20220628BHJP
B60K 5/04 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K19/22
B60K5/04 E
(21)【出願番号】P 2018215263
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】赤間 亮史
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 輝展
(72)【発明者】
【氏名】上村 允
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 裕貴
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-335192(JP,A)
【文献】特開平04-165949(JP,A)
【文献】特開2002-010568(JP,A)
【文献】特開2014-076745(JP,A)
【文献】国際公開第2012/063399(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02K 19/22
B60K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両用発電機であって、
前記発電機で発電した電力を出力する第1端子と、
前記第1端子と前記第1端子の周囲を絶縁する絶縁部材と、
を備え、
前記第1端子には、前記電力を前記車両に供給する電力線に設けられた第2端子が接続され、
前記第2端子は、前記絶縁部材に向けて突設する凸部を有し、
前記絶縁部材は、前記電力線と前記発電機とが、前記第1端子が配置された側の面上で重ならない位置で前記凸部を受ける第1受
面と、
前記電力線が回動し、前記電力線と前記発電機とが、前記第1端子が配置された側の面上で重なる位置で前記凸部を受ける第2受
面と、
を有する、
車両用発電機。
【請求項2】
前記第1端子は、ナットを締め付け可能な螺子溝が設けられた棒状部材を有し、
前記第2端子は、前記棒状部材を挿通する穴を具備する板状部材をさらに有し、
前記第1受
面は、前記絶縁部材の前記ナットの締め付け回転方向側に設けられ、
前記第2端子は、前記凸部が前記第1受
面に当接した状態で、前記板状部材が前記ナットと前記第1端子とに挟みこまれて前記第1端子と圧着され、
前記電力線が前記発電機の方向に押された際に、前記凸部が前記第1受
面から前記第2受
面に向けて回動するともに前記電力線が回動する、
請求項1に記載の車両用発電機。
【請求項3】
前記発電機は、回転軸をさらに備え、
前記第1受
面は、前記第2受
面よりも、前記回転軸から離れた位置に配置される、
請求項1または2に記載の車両用発電機。
【請求項4】
前記発電機は、前記第1端子と前記第2端子とが圧着された状態で、前記第1端子および前記第2端子を覆う保護部材と、をさらに備え、
前記絶縁部材は、円筒形の外壁部と、をさらに有し、
前記保護部材は、前記凸部の回動方向側に配置され前記外壁部に前記円筒形の外周側から当接する第1当接部と、前記凸部の反回動方向側に配置され前記外壁部に前記円筒形の外周側から当接する第2当接部と、を有し、前記絶縁部材に対し回動可能に設けられる、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用発電機。
【請求項5】
前記発電機には、前記発電機を制御する制御線が接続され、
前記制御線は、前記電力線の回動方向側に配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられる車両用発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたエンジンによって駆動するオルタネータ(車両用発電機)が知られている(例えば特許文献1)。このような、オルタネータは、出力端子を備え、バッテリに電力を供給するバッテリハーネス(電力線)の接続端子が出力端子に電気的に接続される。出力端子の周囲は、絶縁部材で絶縁され、出力端子が外部に露出することを防止している。
【0003】
また、特許文献1の車両用発電機の絶縁部材は、周方向に間隔を隔てて配置された複数の凹部を有する。バッテリハーネスの接続端子は、凹部に係合する凸部を有する。接続端子の凸部が出力端子の凹部に係合することによって、バッテリハーネスの出力端子回りの取り出し方向が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用発電機では、衝突などによって、バッテリハーネスに対して、出力端子回りに負荷がかかった際に、絶縁部材を破壊するおそれがある。具体的には、バッテリハーネスの端子の凸部が、絶縁部材の凹部を押すことで、絶縁部材を破壊するおそれがある。絶縁部材が破壊されると、出力端子が露出するという問題がある。出力端子が露出した状態で、例えば、車両の金属部品などと接触すると、短絡が発生する。短絡が発生すると、車両の機器などに供給する電力が失われるおそれがある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、車両が衝突した際であっても短絡が生じにくい車両用発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発電機は、車両に搭載される車両用発電機である。車両用発電機は、発電機で発電した電力を出力する第1端子と、第1端子と端子の周囲を絶縁する絶縁部材と、を備える。第1端子には、第2端子が接続される。第2端子は、電力を車両に供給する電力線に設けられる。第2端子は、絶縁部材に向けて突設する凸部と、を有する。絶縁部材は、電力線と発電機とが、第1端子が配置された側の面上で重ならない位置で凸部を受ける第1受面と、前記電力線が回動し、電力線と発電機とが、第1端子が配置された側の面上で重なる位置で凸部を受ける第2受面と、を有する。
【0008】
この車両用発電機では、電力線は、第1受部の位置から第2受部の位置まで回動可能である。すなわち、電力線は、電力線と発電機とが、第1端子が配置されている側の面上で重ならない位置から、重なる位置まで回動する。電力線が、発電機の第1端子が配置された側の面上で重ならない位置にあれば、例えば、発電機の第1端子が配置されている側の面に車両用発電機を冷却する通気口がある場合、通気口を電力線で覆うことを防止することができる。一方、例えば、車両が衝突し車両の搭載物と電力線が接触することで電力線に対して負荷がかかった際に、電力線は、発電機と第1端子が配置された側の面上で重なる位置まで回動することができる。これにより、搭載物から受ける負荷を、発電機で受けることができる。このため、第2端子を介して絶縁部材に負荷がかかることを防止し、絶縁部材が破壊されることを防止することができる。この結果、例えば車両が衝突した際であっても、第1端子が露出し、短絡が発生することを防止できる。すなわち、車両が衝突したい際であっても短絡が発生しにくい車両用発電機を提供できる。
【0009】
第1端子は、ナットを締め付け可能な螺子溝が設けられた棒状部材を有してもよい。第2端子は、棒状部材を挿通する穴を具備する板状部材をさらに有してもよい。第1受部は、絶縁部材のナットの締め付け回転方向側に設けられてもよい。第2端子は、凸部が第1受部に当接した状態で、板状部材がナットと第1端子とに挟みこまれて第1端子と圧着されてもよい。第2端子は、電力線が発電機の方向に押された際に、凸部が第1受部から第2受部に向けて回動してもよい。電力線は、第2端子とともに回動してもよい。
【0010】
この構成によれば、第1端子と第2端子を圧着する際にナットを締めつける。ナットを締め付ける際は、第2端子の凸部が第1受部に当接して回り止めとして機能する。これにより、電力線は、第1端子が配置された側の面上で重ならない位置に確実に配置される。また、例えば、車両が衝突した際に、搭載物が発電機の方向に押されることで電力線も発電機の方向に押される。この際に、電力線が受けた負荷によって、凸部が第1受部から第2受部に向けて回動する。すなわち、電力線は第1端子を中心として第1受部から第2受部に向けて回動する。これにより、電力線は、第1端子が配置された側の面上で発電機と重なる位置まで回動し、その後搭載物は凸部が第2受部に当接する前に発電機と当接することで、電力線が搭載物から負荷を受けなくなる。この結果、絶縁部材が凸部によって破壊されることを、確実に防止できる。
【0011】
車両用発電機は、回転軸をさらに備えてもよい。第1受面は、第2受面よりも、回転軸
から離れた位置に配置されてもよい。
【0012】
この構成によれば、第2端子の凸部は、第1受部から第2受部に向けて回動する際に、電力線が回転軸に近づく方向に回動する。これにより、発電機と電力線とが、第1端子が配置された側の面で重なる。
【0013】
車両用発電機は、第1端子と第2端子とが圧着された状態で、第1端子および第2端子を覆う保護部材と、をさらに備えてもよい。絶縁部材は、円筒形の外壁部と、をさらに有しもよい。保護部材は、凸部の回動方向側に配置され、外壁部に円筒形の外周側から当接する第1当接部と、凸部の反回動方向側に配置され、外壁部に円筒形の外周側から当接する第2当接部材と、をさらに有してもよい。保護部材は、絶縁部材に対し回動可能に設けられてもよい。
【0014】
この構成によれば、保護部材は第2端子とともに回動する。また、保護部材は、絶縁部材の外壁部を介して凸部の回動方向および反回動方向の両方から第1端子に向けて抑える。これにより、例えば電力線に対してねじれなどの負荷が加わることで、凸部が外壁部を押し出す方向に負荷が加わった際に、第1当接部と、第2当接部で反力を与えることができる。これにより、絶縁部材が破壊されることを防止することができる。また、例えば、第2端子の回動中に、第2端子の凸部の回動方向側に局所的な負荷が加わることで、凸部の回動方向側に対応する外壁部に割れなどが発生しても、凸部の反回動方向側に配置された第2当接部が、外壁部を抑えることで、割れの広がりを防止することができる。
【0015】
車両用発電機には、発電機を制御する制御線が接続されてもよい。制御線は、電力線の回動方向側に配置されてもよい。
【0016】
この構成によれば、例えば、車両が衝突した際に、搭載物は電力線とまず当接する。電力線は搭載物からの負荷を受けながら回動することで、回動方向に位置する制御線を保護する。これにより、制御線が切断されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両が衝突した際であっても短絡が生じにくい車両用発電機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の車両用発電機とバッテリハネ―スおよび保護部材の分解斜視図。
【
図2】本発明の車両用発電機を車両に搭載した状態の図。
【
図4】本発明の車両用発電機の通常状態における出力端子が配置された側の側面図。
【
図5】本発明の車両用発電機の衝突状態における出力端子が配置された側の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明のオルタネータ(車両用発電機)1とバッテリハーネス14および保護部材6の分解斜視図である。
図2は、本発明の発電機を車両Cに搭載した状態の図である。
図2の矢印Fの方向が車両前方側であり、反対が車両後方側である。
図1および
図2に示すように、オルタネータ1は、車両Cに搭載され、車両Cに電力を供給する発電機である。
図1に示すように、オルタネータ1は、固定子および回転子などからなる発電機本体Gと、出力端子(第1端子)2と、絶縁部材4と、保護部材6と、コネクタ10と、プーリ12と、回転軸Rと、第1ハウジング102と、第2ハウジング104と、を備える。出力端子2は、オルタネータ1で発電した電力を出力する。絶縁部材4は、出力端子2とその周辺の部品が接触することを防止する。出力端子2には、圧着端子(第2端子)8が接続される。圧着端子8は、バッテリハーネス14に設けられる。バッテリハーネス14は、車両Cに搭載されるバッテリ(図示せず)に電力を供給する。保護部材6は、出力端子2と圧着端子8を覆う。コネクタ10には、コントロールハーネス16が接続される。
図2に示すように、オルタネータ1は、車両Cの車幅方向に配置されたエンジンEの車両前方側に、第1ハウジング102および第2ハウジング104に一体形成されたブラケットを介して固定される。本実施形態では、エンジンEおよびオルタネータ1の車両前方側にエンジンEを冷却するラジエータLが配置され、オルタネータ1は、ラジエータLと対向して配置される。
【0021】
図1に示すとおり、第1ハウジング102および第2ハウジング104は、発電機本体Gの形状に沿って略円形に形成された椀状の部材である。第1ハウジング102および第2ハウジング104には、オルタネータ1をエンジンEに固定するためのボルト穴が設けられたブラケットが一体形成される。本実施形態では、第1ハウジング102および第2ハウジング104は、ともにアルミなどの金属材料を鋳造することで形成される。第1ハウジング102および第2ハウジング104は、互いの開口部に発電機本体Gを格納した状態で、ボルト106によって締結される。発電機本体Gの中心には、発電機本体Gを駆動する回転軸Rが配置される。回転軸Rは、先端が第1ハウジング102から突出して配置され、その先端にはプーリ12が配置される。プーリ12は、エンジンEのダンパプーリ(図示せず)にかけられたベルトによって駆動されることで、発電機本体Gを駆動し発電する。
図2に示すとおり、本実施形態では、オルタネータ1は、エンジンEに沿って車両Cの前進方向に対し右側(
図2の紙面奥側)にプーリ12が配置されるように、エンジンEに固定される。
【0022】
図1に示すとおり、第2ハウジング104のプーリ12と反対側(以下反プーリ側と記す)の面には、発電機本体Gを冷却するフィン(図示せず)や、発電機本体Gを制御する制御装置(図示せず)や、これらをフィンおよび制御装置を覆う樹脂カバー112が設けられる。樹脂カバー112には、複数の通気口108が設けられ、発電機本体Gを冷却する空気を取り込む。なお、冷却フィンおよび樹脂カバー112は、必ずしも必要ではなく、第2ハウジング104に直接通気口を設けてもよいし、第2ハウジング104と樹脂カバー112を一体化してもよい。
【0023】
樹脂カバー112の反プーリ側には、出力端子(第1端子)2が配置される。出力端子2は、発電機本体Gで発電した電力を出力するための端子である。
図3は、
図1の出力端子2近傍を拡大した拡大図である。
図3に示すように、出力端子2は、ナット部材202と、ボルト部材(棒状部材)204とを有する。出力端子2は、第2ハウジング104の反プーリ側の面の外周近傍に固定されたボルト部材204に対し、樹脂カバー112および後述する絶縁部材4とともにナット部材202を締め付けることで形成される。出力端子2は、このナット部材202とボルト部材204を通じて、発電機本体Gで発電した電力を出力する。
【0024】
出力端子2の周囲には、絶縁部材4が設けられる。絶縁部材4は、出力端子2と出力端子2の周囲の部品を絶縁するための部材である。絶縁部材4は、皿形状の樹脂部材であり、円筒形の外壁部402と、フランジ部404と、第1受部406と、第2受部408と、を有する。フランジ部404は、円筒形の外壁部402の開口の縁部分に設けられる。外壁部402の円筒の内周面には、第1受部406と、第2受部408がそれぞれ、出力端子2に向けて突出して設けられる。第1受部406は、後述する圧着端子8の凸部804を受ける受面406aと、受面406bと、を具備する。同様に第2受部408は、受面408aと、受面408bと、を具備する。受面406aおよび受面408aは、圧着端子8と出力端子2を圧着する際のまわり止めとして機能する。一方、受面406bと受面408bは、バッテリハーネス14が回動した際のまわり止めとして機能する。すなわち、圧着端子8は、第1受部406の受面406aから第2受部408の受面408bに向けて回動することができる。より具体的には、バッテリハーネス14は、出力端子2のボルト部材204を中心としてオルタネータ1の回転軸Rに近づく方向(以下単に回動方向と記す)に回動する。本実施形態では、バッテリハーネス14は、車両Cが衝突した際に、ラジエータL(搭載物)に押されることで回動する。すなわち、バッテリハーネス14は、出力端子2のボルト部材204を中心としてラジエータL(搭載物)が進入する方向(車両後方)に向かって反時計回りに回動する。しかし、回動方向は時計回りであってもよい。絶縁部材4は、皿形状の底部410を、ナット部材202によって締め付けられることで、樹脂カバー112に固定される。
【0025】
出力端子2には、圧着端子(第2端子)8が接続される。圧着端子8は、バッテリハーネス14に設けられる。バッテリハーネス14は、オルタネータ1で発電された電力を車両Cに搭載されたバッテリに供給するための電線である。圧着端子8は、板状部材802と、2つの凸部804および凸部806と、を有する。板状部材802は、圧着端子8の一端に配置され、中央に出力端子2のボルト部材204が挿通する穴802aを具備する。凸部804と、凸部806は、板状部材802の端部が絶縁部材4の方向に折り曲げられて突出することで形成される。圧着端子8は、穴802aにボルト部材204が挿通した状態で、ナット808がボルト部材204に対して螺合されて締め付けられることで、出力端子2と圧着される。このとき、第1受部406の受面406aが、ナット808の締め付け回転方向側に設けられることで、凸部804が受面406aに当接し、回り止めとして機能する。同様に、第2受部408の受面408aも回り止めとして機能する。本実施形態では凸部804と凸部806を用いて説明するが、凸部は凸部804および凸部806のいずれか1つであってもよい。しかし、凸部を2個設けることで、ナット808を締め付ける際に、受面406aおよび受面406bにかかる負荷を半減させることができる。圧着端子8の他端には、電線部分14aが、板状部材802が折り曲げて形成したかしめ部810によって固定される。
【0026】
コントロールハーネス(制御線)16は、オルタネータ1の制御を行う制御装置に信号を送るための電線である。コントロールハーネス16は、オルタネータ1の制御装置に信号送信するための複数の通信線などを含んで構成され、オルタネータ1のコネクタ10に接続される。コントロールハーネス16は、バッテリハーネス14に対して、バッテリハーネス14の回動方向側に配置される。このような配置とすることで、コントロールハーネス16よりも太く頑丈なバッテリハーネス14によって、車両Cの衝突時にコントロールハーネス16を保護する。バッテリハーネス14と、コントロールハーネス16は、ともにコルゲートなどで束ねられたのち再び分岐して、車両Cに搭載されたバッテリ(図示せず)または、エンジンEの制御装置(図示せず)に接続される。
【0027】
図4は、オルタネータ1がエンジンEに取り付けられた状態(以下通常状態と記す)における、本発明の車両用発電機の出力端子2が配置された側の側面(以下単に側面と記す)の図である。
図4の拡大図は、バッテリハーネス14、および保護部材6を拡大した図である。
図4および
図4の拡大図の破線は、保護部材6で隠れる、絶縁部材4、圧着端子8、およびバッテリハーネス14の電線部分14aを示す。
図4の拡大図に示すように、保護部材6は、出力端子2と圧着端子8とが圧着された状態で、出力端子2、圧着端子8、およびバッテリハーネス14の電線部分14aを覆うことで、これら部品を保護する部材である。保護部材6は、第1当接部602と、第2当接部604と、第3当接部606と、第4当接部608と、を有する。第1当接部602は、凸部804の回動方向側に配置される。第2当接部604は、凸部804の反回動方向側に配置される。同様に、第3当接部606は、凸部806の回動方向側に配置され、第4当接部608は、凸部806の反回動方向側に配置される。第1当接部602から第4当接部608は、それぞれ外壁部402に外周側から当接して、外壁部402を出力端子2の方向に押す。一方で、第1当接部602から第4当接部608は、フランジ部404によって押され、保護部材6が回転軸Rの反プーリ側に抜けることを防止している。また、第1当接部602から第4当接部608は、外壁部402の外周に沿って回動可能に設けられ、圧着端子8およびバッテリハーネス14の回動よって、保護部材6も回動する。このように、第1当接部602から第4当接部608を設けることで、例えばバッテリハーネス14に対してねじれなどにより凸部804および凸部806が外壁部402を押し出す方向に負荷が加わった際に、第1当接部602から第4当接部608で反力を与えることができる。これにより、絶縁部材4が破壊されることを防止することができる。また、例えば、圧着端子8の回動中に、凸部804の回動方向側に局所的な負荷が加わることで、凸部804の回動方向側に対応する外壁部402に割れなどが発生しても、凸部804の反回動方向側に配置された第2当接部604が、外壁部402を抑えることで、割れの広がりを防止することができる。
【0028】
次に、
図4および
図5を用いて、車両Cが衝突した際の、バッテリハーネス14、および保護部材6の回動状態について説明する。
図5は、車両Cが衝突し、ラジエータLが車両Cの後方へ進入し、バッテリハーネス14がラジエータLに当接することで負荷を受けた状態(以下衝突状態と記す)の側面図である。
図5の拡大図は、
図4の拡大図と同様に、バッテリハーネス14、および保護部材6を拡大し、これら構成が保護部材6で隠れる部分を破線で示した図である。
図4および
図5の2点鎖線に示す接線Sは、回転軸Rの中心(2点鎖線AとBの交点)から出力端子2の中心を通る線Aと、第2ハウジング104の外周との交点における接線である。線Bは回転軸Rの中心をとおり、線Aと直角な線である。
【0029】
図4の拡大図に示すように、圧着端子8は、通常状態では、凸部804が受面406aに当接する。また、
図4に示すとおり、この状態では、バッテリハーネス14の電線部分14aと、オルタネータ1は、出力端子2が配置された側の側面上(以下側面上と記す)で重ならない。すなわち、第1受部406は、オルタネータ1と、バッテリハーネス14の電線部分14aが、側面上で重ならない位置で凸部804を受けている。このように、バッテリハーネス14を配置することで、オルタネータ1を冷却する空気が流れる通気口108が、バッテリハーネス14によって塞がれることを防止している。また、凸部804が、受面406aよりも反回動方向側に回動しないようにすることで、通常状態でバッテリハーネス14が、ラジエータLに近づくことを防止している。
【0030】
一方、
図4に示す通常状態から
図5に示す衝突状態になると、ラジエータLからバッテリハーネス14が負荷を受けて回動する。この状態が進むと、バッテリハーネス14の電線部分14aは、徐々にオルタネータ1と側面上で重なる。最終的には、
図5に示すように、バッテリハーネス14の電線部分14aが、オルタネータ1と側面上で重なった状態となる。
図5の拡大図に示すように、凸部804は、凸部804が第2受部408の受面408bまで回動可能である。しかし、ラジエータLは、バッテリハーネス14と、オルタネータ1とが側面上で重なった状態となると、オルタネータ1の第1ハウジング102および第2ハウジング104に当接し、凸部804が第2受部408の受面408bに当接する前にオルタネータ1が負荷を受ける。これによって、バッテリハーネス14は負荷を受けなくなり、回動が止まる。すなわち、第2受部408の受面408bは、少なくともバッテリハーネス14の電線部分14aと、オルタネータ1が側面上で重なる位置にあればよい。このように、車両Cが衝突した際にラジエータLから受ける負荷を、凸部804が第2受部408の受面408bに当接する前にオルタネータ1が受けることで、絶縁部材4が破壊されることを防止している。
【0031】
なお、
図4に示すとおり、バッテリハーネス14は、通常状態では接線Sと交差して配置される。バッテリハーネス14がこのような配置であれば、オルタネータ1とバッテリハーネス14の電線部分14aは、側面上で重ならない。一方、
図5に示すとおり、衝突状態では、バッテリハーネス14は、接線Sよりも回転軸Rに近づく側に回動し、線Bと第2ハウジング104の外周との交点よりも回転軸Rの中心に近い位置(以下外周の内側と記す)まで移動する。これにより、オルタネータ1とバッテリハーネス14の電線部分14aは、側面上で重なる。また、
図5に示すとおり、バッテリハーネス14は、凸部804が第2受部408の受面408bに当接するまで回動可能である。しかし、実際には、凸部804が第2受部408の受面408bに当接する前の、バッテリハーネス14の電線部14aが、第2ハウジング104の外周の内側に移動した時点で、オルタネータ1がバッテリハーネス14に代わって搭載物からの負荷を受ける。すなわち、凸部804が第2受部408の受面408bに当接する前に回動が止まる。
【0032】
また、
図4に示すとおり、第1受部406は、第2受部408よりも、回転軸Rから離れた位置に配置される。より具体的には、第1受部406の受面406aの中心から回転軸Rの中心までの距離T1が、第2受部408の受面408bの中心から回転軸Rの中心までの距離T2よりも長い位置に配置される。すなわち、第2受部408は、第1受部406よりも、第2ハウジング104の外周からの距離が離れた位置に配置される。さらに、
図4の拡大図に示すように、受面406aと受面408bのなす角度Wは90度である。同様に、受面406bと、受面408aのなす角度も90度である。すなわち、圧着端子8およびバッテリハーネス14は、90度回動可能である。また、受面406bと受面408bは、略平行な面である。すなわち、バッテリハーネス14は、通常状態では受面406aと直角の方向(受面408bと平行な方向)に延びる。一方、
図5および
図5の拡大図に示すとおり、衝突状態では、バッテリハーネス14の電線部分14aは、受面406aと略平行な方向まで回動可能である。
図4および
図5に示すように、距離T1が距離T2よりも長ければ、バッテリハーネス14は、電線部分14aが接線Sと交わる位置から第2ハウジング104の外周の内側まで確実に回動可能である。これにより、オルタネータ1とバッテリハーネス14の電線部分14aは側面上で重なる。この結果、オルタネータ1がバッテリハーネス14に代わって負荷を受ける。また、距離T1が距離T2よりも長ければ、凸部804が第2受部408の受面408bに当接するまでに回動の余裕がある。すなわち、凸部804が第2受部408の受面408bに当接する前に回動が止まる。これにより、凸部804が絶縁部材4を破壊することを確実に防止できる。なお、受面406aと受面408bのなす角度Wは、バッテリハーネス14の電線部分14aが接線Sと交わる位置から第2ハウジング104の外周の内側まで回動できれば、適宜設定してもよい。
【0033】
以上説明した通り、本発明のオルタネータ1では、車両Cが衝突した際でも、短絡等が発生せず、安全を確保できる。
【0034】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0035】
(a)本実施形態では、一例として、オルタネータ1を例に説明したが、これに限定されるものではない。オルタネータ1に変えて、発電と駆動の両方を行う回転電機(スタータ・ジェネレータ)に本発明を適用してもよい。この場合、出力端子は、バッテリからの電力を回転電機に入力する入力端子として機能してもよい。すなわち、出力端子は、バッテリにつながる電力線が接続される端子であればよい。
【0036】
(b)本実施形態では、エンジンEを車幅方向に配置する車両Cを例に説明したが、これに限定されるものではない。エンジンEを車両前後方向に配置する車両に本発明を適用してもよい。
【0037】
(c)また、本実施形態では、バッテリハーネス14およびオルタネータ1に衝突する車両Cの搭載物の一例として、ラジエータLを用いて説明したが、これに限定されるものではない。搭載物は、バッテリハーネス14を回動させる位置にある搭載物であれば、その他の搭載物であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1:オルタネータ(車両用発電機),2:出力端子(第1端子),4:絶縁部材,
6:保護部材,8:圧着端子(第2端子),14:バッテリハーネス(電力線)
16:コントロールハーネス(制御線),204:ボルト部材(棒状部材)
402:外壁部,406:第1受部,408:第2受部,
602:第1当接部,604:第2当接部,802:板状部材
802a:穴,804:凸部,806:凸部,808:ナット
C:車両,R:回転軸,T1:距離,T2:距離