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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】燃料電池用セパレータの表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0228 20160101AFI20220628BHJP
   H01M 8/0254 20160101ALI20220628BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20220628BHJP
   H01M 8/0213 20160101ALI20220628BHJP
   H01M 8/0221 20160101ALI20220628BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220628BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0254
H01M8/0206
H01M8/0213
H01M8/0221
H01M8/10 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018240828
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020102394
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】両角 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】羽柴 美智
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和也
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-052048(JP,A)
【文献】特開2018-056048(JP,A)
【文献】特開2007-324146(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038165(WO,A1)
【文献】特開2015-210976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0228
H01M 8/0254
H01M 8/0206
H01M 8/0213
H01M 8/0221
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板材からなり、それぞれ延在する凸部及び凹部が交互に設けられた基材と、前記基材の前記凸部の頂面に設けられ、熱硬化性樹脂からなる第1結合材及び導電性粒子を含む第1層と、前記第1層の表面に設けられ、熱硬化性樹脂からなる第2結合材及び導電性炭素材を含む第2層とを備える燃料電池用セパレータの表面処理方法であって、
前記基材の前記凸部の頂面に前記第1層を形成する第1層形成工程と、
対向して配置される第1型と第2型との間に、フィルムの一方の面に設けられた前記第2層を前記第1層の表面に当接させ、前記フィルムの他方の面を前記第1型に対向させた状態で前記基材及び前記フィルムを配置し、前記第1型と前記第2型とにより前記基材及び前記フィルムを加圧するとともに前記第2型を前記第1型よりも高い温度にして前記基材及び前記フィルムを加熱することで、前記第1結合材及び前記第2結合材を熱硬化させて前記第1層の表面に前記第2層を熱転写することにより形成する第2層形成工程と、を備
前記第2結合材が前記フィルムに結着する前に前記第1型及び前記第2型を型開きして前記第2結合材から前記フィルムを剥離する、
燃料電池用セパレータの表面処理方法。
【請求項2】
前記第2層形成工程において、前記第1型による加熱を行わない、
請求項1に記載の燃料電池用セパレータの表面処理方法。
【請求項3】
前記第2層形成工程において、前記第1型及び前記第2型の双方により加熱を行うとともに、前記第1型の温度を前記第2型よりも低くする、
請求項1に記載の燃料電池用セパレータの表面処理方法。
【請求項4】
前記第1結合材と前記第2結合材とは、同一の熱硬化性樹脂により構成されている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの表面処理方法。
【請求項5】
前記第1層形成工程において、前記基材の表面全体に前記第1層を形成する、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータの表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータの表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体高分子形燃料電池は、複数の単セルが積層された構成を有している。単セルは、膜電極接合体と、膜電極接合体を挟持する一対のセパレータとを備えている。セパレータには、それぞれ延在する凸部及び凹部が交互に形成されている。こうした燃料電池用のセパレータは、例えばステンレス鋼などの金属板材からなる基材を有している。
【0003】
また従来、セパレータを構成する基材の表面に存在する酸化被膜によってセパレータと膜電極接合体との間の接触抵抗が増大することが知られている。
特許文献1には、セパレータの凸部の頂面に導電層を形成する表面処理方法が開示されている。上記導電層は、基材の凸部の頂面に形成される第1層と、第1層の表面に形成される第2層とから構成されている。第1層は、熱硬化性樹脂からなる第1結合材と、基材の酸化被膜よりも硬度が高い導電性粒子とを含む。また、第2層は、熱可塑性樹脂からなる第2結合材とグラファイト粒子とを含む。
【0004】
上記文献1に記載の表面処理方法では、まず、セパレータの基材の凸部の頂面上に、導電層が形成された熱転写用フィルムを載置する。次に、加熱部をそれぞれ有する下型及び上型を備える塗膜形成装置により、熱転写用フィルムを基材に対して加圧するとともに加熱することで、基材の凸部の頂面に導電層を熱転写する。
【0005】
こうした導電層が形成されたセパレータによれば、第1層の導電性粒子が基材の酸化被膜を貫通して基材の母材に接触しているため、母材、第1層の導電性粒子、及び第2層のグラファイト粒子によって酸化被膜を経由しない導電経路が形成される。これにより、セパレータの接触抵抗を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/38165号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記文献1に記載の方法により形成されたセパレータでは、第2結合材が熱可塑性樹脂であるため、第1結合材(第1層)との間の結着力が不足しやすく、第2層が第1層から脱落しやすい。
【0008】
また、こうした問題を解消するために、第1結合材及び第2結合材のそれぞれに熱硬化性樹脂を適用すると、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、熱転写によって第2結合材が熱硬化すると、第2結合材がフィルムに結着することでフィルムを第2層から剥離しにくくなる。また、第2層からフィルムを無理に剥離させようとすると、第2層を介してフィルムに結着されたグラファイト粒子が第1層から脱落するおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、表面処理を適切に行うことができる燃料電池用セパレータの表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための燃料電池用セパレータの表面処理方法は、金属板材からなり、それぞれ延在する凸部及び凹部が交互に設けられた基材と、前記基材の前記凸部の頂面に設けられ、熱硬化性樹脂からなる第1結合材及び導電性粒子を含む第1層と、前記第1層の表面に設けられ、熱硬化性樹脂からなる第2結合材及び導電性炭素材を含む第2層とを備える燃料電池用セパレータの表面処理方法であって、前記基材の前記凸部の頂面に前記第1層を形成する第1層形成工程と、対向して配置される第1型と第2型との間に、フィルムの一方の面に設けられた前記第2層を前記第1層の表面に当接させ、前記フィルムの他方の面を前記第1型に対向させた状態で前記基材及び前記フィルムを配置し、前記第1型と前記第2型とにより前記基材及び前記フィルムを加圧するとともに前記第2型を前記第1型よりも高い温度にして前記基材及び前記フィルムを加熱することで、前記第1結合材及び前記第2結合材を熱硬化させて前記第1層の表面に前記第2層を熱転写することにより形成する第2層形成工程と、を備える。
【0011】
同方法によれば、第2層形成工程において、基材を介してフィルムとは反対側に位置する第2型を第1型よりも高い温度にして基材及びフィルムの加熱が行われる。このため、フィルムの一方の面に設けられた第2層は、主に第1層側からの受熱によって加熱されるようになる。これにより、第2層における第1層側の部分の熱硬化を早めることで第1層との結着性を高めつつ、第2層のフィルム側の部分の熱硬化を遅らせることができる。これにより、第2結合材のフィルム側の部分が熱硬化する前、すなわち第2結合材とフィルムとが結着される前に型開きしてフィルムを剥離するようにすれば、フィルムを第2層から容易に剥離させることができる。したがって、セパレータの表面処理を適切に行うことができる。
【0012】
上記燃料電池用セパレータの表面処理方法では、前記第2層形成工程において、前記第1型による加熱を行わないことが好ましい。
同方法によれば、第2型にのみ加熱部を設ければよく、第1型に加熱部を設けなくて済む。このため、第1型の構成を簡単にすることができる。
【0013】
上記燃料電池用セパレータの表面処理方法では、前記第2層形成工程において、前記第1型及び前記第2型の双方により加熱を行うとともに、前記第1型の温度を前記第2型よりも低くすることが好ましい。
【0014】
同方法によれば、第1型による加熱を行わない方法と比較して、第1結合材及び第2結合材の昇温を促進させることができる。したがって、燃料電池用セパレータの生産性を向上させることができる。
【0015】
上記燃料電池用セパレータの表面処理方法では、前記第1結合材と前記第2結合材とは、同一の熱硬化性樹脂により構成されていることが好ましい。
同方法によれば、第1結合材と第2結合材とが同一の熱硬化性樹脂であることから、第1結合材と第2結合材との親和性が高くなる。このため、第1結合材と第2結合材とが異なる熱硬化性樹脂からなる構成と比較して、第1層と第2層とが強固に結着される。
【0016】
上記燃料電池用セパレータの表面処理方法では、前記第1層形成工程において、前記基材の表面全体に前記第1層を形成することが好ましい。
同方法によれば、基材の表面全体に第1層が形成されるため、基材の表面からの金属イオンの溶出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料電池用セパレータの表面処理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】燃料電池用セパレータの表面処理方法の一実施形態について、当該セパレータを有する単セルを中心とした燃料電池のスタックの拡大断面図。
図2】同実施形態の燃料電池用セパレータの断面図。
図3】第1層形成工程によって表面全体に第1層が形成された基材の断面図。
図4】第2層形成工程において基材及びフィルムが加圧される直前の状態を示す断面図。
図5】第2層形成工程において基材及びフィルムが加圧及び加熱されている状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図5を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の燃料電池用セパレータ(以下、セパレータ20)は、固体高分子形燃料電池のスタック100に用いられるものである。なお、セパレータ20は、後述する第1セパレータ30及び第2セパレータ40の総称である。
【0020】
スタック100は、複数の単セル10が積層された構造を有している。単セル10は、第1セパレータ30及び第2セパレータ40により挟持された膜電極接合体11を備えている。膜電極接合体11と各セパレータ30,40との間には、炭素繊維からなるアノード側ガス拡散層14及びカソード側ガス拡散層15が介設されている。膜電極接合体11は、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を有する固体高分子材料からなる電解質膜12と、電解質膜12を挟持する一対の電極触媒層13とを備えている。各電極触媒層13には、燃料電池における反応ガスの電気化学反応を促進するための触媒(例えば白金)が担持されている。
【0021】
第1セパレータ30は、ステンレス鋼などの金属板材からなり、金属板材の面方向(この場合、同図の紙面に直交する方向)に沿ってそれぞれ延在する第1凸部32及び第1凹部33が交互に形成された基材31を有している。第1凸部32及び第1凹部33は複数設けられている。基材31の各第1凸部32は、アノード側ガス拡散層14に向かって突出している。
【0022】
第2セパレータ40は、ステンレス鋼などの金属板材からなり、金属板材の面方向(この場合、同図の紙面に直交する方向)に沿ってそれぞれ延在する第2凸部42及び第2凹部43が交互に形成された基材41を有している。第2凸部42及び第2凹部43は複数設けられている。基材41の各第2凸部42は、カソード側ガス拡散層15に向かって突出している。
【0023】
図2に示すように、各セパレータ30,40の基材31,41の表面全体には、熱硬化性樹脂からなる第1結合材51及び導電性粒子52を含む第1層50が形成されている。本実施形態の第1結合材51はエポキシ樹脂であり、導電性粒子52は窒化チタンである。なお、窒化チタンは、基材31,41の表面に形成された酸化被膜31a,41aよりも硬度が高い。
【0024】
第1層50の表面のうち、基材31,41の各凸部32,42の頂面に対応する部分には、熱硬化性樹脂からなる第2結合材61及び導電性炭素材62を含む第2層60が形成されている。本実施形態の第2結合材61は、第1結合材51と同一のエポキシ樹脂であり、導電性炭素材62はグラファイト粒子である。
【0025】
導電性粒子52は、各凸部32,42の表面に形成された酸化被膜31a,41aを貫通して基材31,41に接触している。また、導電性粒子52と導電性炭素材62とは互いに接触している。このため、基材31,41、導電性粒子52、及び導電性炭素材62によって酸化被膜31a,41aを経由しない導電経路が形成される。
【0026】
図1に示すように、第1セパレータ30の第1凹部33に対応する部分とアノード側ガス拡散層14とで区画される部分は、燃料ガス(例えば、水素ガス)が流通されるガス流路とされている。第2セパレータ40の第2凹部43に対応する部分とカソード側ガス拡散層15とで区画される部分は、酸化剤ガス(例えば、空気)が流通されるガス流路とされている。
【0027】
また、第1セパレータ30における第1凹部33の底部に対応する部分と、同第1セパレータ30に隣り合う第2セパレータ40の第2凹部43の底部に対応する部分とは、レーザ溶接などにより互いに接合されている。第1セパレータ30の第1凸部32の裏面に対応する部分と、第2セパレータ40の第2凸部42の裏面に対応する部分とで区画される部分は、冷却水が流通する冷却流路とされている。
【0028】
次に、セパレータ20の表面処理方法について説明する。
なお、第1セパレータ30及び第2セパレータ40の表面処理方法は同一であるため、以降においては、第1セパレータ30の表面処理方法について説明することで、第2セパレータ40の表面処理方法の説明を省略する。
【0029】
まず、図3に示すように、基材31の表面全体に対して、第1結合材51及び導電性粒子52を含む塗料をスプレーするなどして第1層50を形成する(第1層形成工程)。
次に、第1層50が設けられた基材31に対して、以下に説明する熱転写装置110を用いて第2層60を熱転写する。
【0030】
図4に示すように、熱転写装置110は、第1型と、第1型111に対向して配置される第2型112とを備えている。第2型112は、固定型であり、第1型111は、第2型112に対して進退可能に設けられた可動型である。第2型112は、内部に電熱線113が設けられており、電熱線113に通電することにより第2型112が所定の温度まで加熱される。本実施形態における上記所定の温度は、熱硬化性樹脂である第1結合材51及び第2結合材61が熱硬化する温度であり、例えば200℃以上である。
【0031】
次に、図4に示すように、第1凸部32を上側にして基材31を第2型112上に載置する。そして、一方の面に第2層60が塗工されたフィルム90を、第2層60を下側にした状態で、すなわちフィルム90の他方の面を第1型111に対向させた状態で基材31上に載置する。
【0032】
次に、図5に示すように、第1型111と第2型112とにより基材31及びフィルム90を加圧するとともに加熱する。ここで、熱転写装置110は、第2型112にのみ電熱線113が設けられているため、基材31及びフィルム90は、第2型112により加熱され、第1型111によっては加熱されない。これにより、各結合材51,61が熱硬化することで第1層50及び第2層60が形成される(第2層形成工程)。
【0033】
なお、熱転写装置110により基材31及びフィルム90が加圧されることにより、第1層50の導電性粒子52が酸化被膜31aを貫通して基材31に接触するようになる(図2参照)。なお、熱転写装置110による基材31の加圧は、基材31が塑性変形しない程度の圧力により行われる。
【0034】
最後に、熱転写装置110を型開きして、フィルム90を基材31から剥離する。
こうして第1セパレータ30(セパレータ20)の表面処理が行われる。
本実施形態の作用効果について説明する。
【0035】
(1)セパレータ20の表面処理方法は、第1層形成工程と、第2層形成工程とを備える。第1層形成工程では、基材31(41)の表面全体に第1層50を形成する。第2層形成工程では、対向して配置される第1型111と第2型112との間に、フィルム90の一方の面に塗工された第2層60を第1層50の表面に当接させ、フィルム90の他方の面を第1型111に対向させた状態で基材31(41)及びフィルム90を配置する。次いで、第1型111と第2型112とにより基材31(41)及びフィルム90を加圧するとともに第2型112のみにより基材31(41)及びフィルム90を加熱することで、第1結合材51及び第2結合材61を熱硬化させて第1層50の表面に第2層60を熱転写する。
【0036】
こうした方法によれば、第2層形成工程において、基材31(41)を介してフィルム90とは反対側に位置する第2型112のみにより基材31(41)及びフィルム90の加熱が行われる。このため、フィルム90の一方の面に設けられた第2層60は、主に第1層50側からの受熱によって加熱されるようになる。これにより、第2層60における第1層50側の部分の熱硬化を早めることで第1層50との結着性を高めつつ、第2層60のフィルム90側の部分の熱硬化を遅らせることができる。これにより、第2結合材61のフィルム90側の部分が熱硬化する前、すなわち第2結合材61とフィルム90とが結着される前に型開きしてフィルム90を剥離するようにすれば、フィルム90を第2層60から容易に剥離させることができる。したがって、セパレータ20の表面処理を適切に行うことができる。
【0037】
また、上記方法によれば、第2型112にのみ電熱線113を設ければよく、第1型111に電熱線を設けなくて済む。このため、第1型111の構成を簡単にすることができる。
【0038】
また、基材31(41)の表面全体に第1層50が形成されるため、基材31(41)の表面からの金属イオンの溶出を抑制することができる。
(2)第1結合材51と第2結合材61とは、同一の熱硬化性樹脂により構成されている。
【0039】
こうした方法によれば、第1結合材51と第2結合材61とが同一の熱硬化性樹脂であることから、第1結合材51と第2結合材61との親和性が高くなる。このため、第1結合材51と第2結合材61とが異なる熱硬化性樹脂からなる構成と比較して、第1層50と第2層60とが強固に結着される。
【0040】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・基材31(41)からフィルム90を剥離した後に、基材31(41)の第2層60の表面に異物が存在する場合には、異物を除去する後処理を行うようにすればよい。上述したように、本発明によれば、第2層60からフィルム90が剥離しやすいため、上記後処理を容易に行うことができる。
【0041】
・基材31(41)と第2型112との間に離型フィルムを配置するようにしてもよい。
・第1層50は、基材31,41の表面全体に形成されていなくてもよい。例えば、基材31,41の各凸部32,42の頂面にのみ形成されていてもよい。
【0042】
・第1結合材51と第2結合材61とが異なる種類の熱硬化性樹脂により構成されていてもよい。この場合であっても、上記実施形態の作用効果(1)に準じた効果を奏することができる。
【0043】
・第1層50は、少なくとも第1結合材51及び導電性粒子52を含むものであればよく、溶剤などのその他の成分が含まれていてもよい。
・第2層60は、少なくとも第2結合材61及び導電性炭素材62を含むものであればよく、溶剤などのその他の成分が含まれていてもよい。
【0044】
・第1型111が電熱線を有するものであってもよい。この場合、第1型111と第2型112とにより基材31(41)及びフィルム90を加圧するとともに、第1型111の温度を第2型112よりも低い温度にして基材31(41)及びフィルム90を加熱するようにしてもよい。このとき、第2型112の温度は、第1結合材51及び第2結合材61の熱硬化温度よりも低い温度であることが好ましい。こうした方法によれば、第1型111による加熱を行わない方法と比較して、第1結合材51及び第2結合材61の昇温を促進させることができる。したがって、燃料電池用セパレータの生産性を向上させることができる。
【0045】
・第1型111を固定型とし、第2型112を可動型としてもよい。この場合であっても、第1型111と第2型112との間に、フィルム90の一方の面に設けられた第2層60を第1層50の表面に当接させ、フィルム90の他方の面を第1型111に対向させた状態で基材31(41)及びフィルム90を配置すればよい。
【0046】
・導電性炭素材62は、グラファイト粒子に限定されず、カーボンブラックなどの他の導電性炭素材であってもよい。
・導電性粒子52は、窒化チタンに限定されず、炭化チタンや硼化チタンなどの他の導電性粒子であってもよい。
【0047】
・基材31,41をステンレス鋼以外の他の金属板材により形成こともできる。こうした金属としては、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金などが挙げられる。
【符号の説明】
【0048】
10…単セル、11…膜電極接合体、12…電解質膜、13…電極触媒層、14…アノード側ガス拡散層、15…カソード側ガス拡散層、20…セパレータ、30…第1セパレータ、31…基材、31a…酸化被膜、32…第1凸部、33…第1凹部、40…第2セパレータ、41…基材、41a…酸化被膜、42…第2凸部、43…第2凹部、50…第1層、51…第1結合材、52…導電性粒子、60…第2層、61…第2結合材、62…導電性炭素材、90…フィルム、100…スタック、110…熱転写装置、111…第1型、112…第2型、113…電熱線。
図1
図2
図3
図4
図5