(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】衝撃試験機
(51)【国際特許分類】
G01N 3/30 20060101AFI20220628BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220628BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G01N3/30 Z
G03B15/00 R
H04N5/232 220
(21)【出願番号】P 2019058728
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳岡 信行
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-271289(JP,A)
【文献】国際公開第93/014602(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3119564(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第101141574(CN,A)
【文献】特開2006-047277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0005606(US,A1)
【文献】国際公開第2016/192696(WO,A1)
【文献】特開2011-007592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/30
G03B 15/00
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定速度の負荷を試験片に与えて試験する試験機本体と、
前記試験機本体を制御する制御装置と、
前記試験片を撮影するビデオカメラと、
パルスジェネレータと、を備え、
前記制御装置は、
所定の計測サンプリング周期で前記負荷の検出信号を取り込む検出信号取込部と、
前記計測サンプリング周期に同期したサンプリング同期信号を出力する同期信号出力部と、を有し、
前記パルスジェネレータは、
前記ビデオカメラに撮影を指示する撮影指示信号を、前記サンプリング同期信号を逓倍、又は分周して生成し、前記ビデオカメラに出力する撮影指示信号生成部を備える
ことを特徴とする衝撃試験機。
【請求項2】
前記ビデオカメラは、
前記撮影指示信号の入力ごとに、当該撮影指示信号に同期して1枚の撮影画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の衝撃試験機。
【請求項3】
前記ビデオカメラは、
100万コマ/秒以上の撮影速度で、1回の撮影動作あたり複数枚の撮影画像を生成する超高速度カメラであり、
前記撮影指示信号の入力に同期して、前記1回の撮影動作を行うことで前記複数枚の撮影画像を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の衝撃試験機。
【請求項4】
前記負荷の速度に応じた前記計測サンプリング周期を設定可能にした、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の衝撃試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の機械的な特性や性質を調べるための試験をする装置として、材料試験機が従来から工業、学術分野で広く用いられている。試験における主な測定値としては、材料の試験片を変形させる負荷を加えた際の、当該負荷の大きさや、試験片の変位などがある。
また材料試験機の1つに衝撃試験機が知られている。衝撃試験機は、例えば5m/秒以上の高速な速度(「衝撃速度」とも呼ばれる)で試験片に負荷(「衝撃力」とも呼ばれる)を与え、高速変形時の試験片の特性や性質を調べる試験機である(例えば、特許文献1参照)。衝撃試験機は、高速引張試験やパンクチャー衝撃試験などの試験に用いられており、これらの試験で得られたデータは、材料の高速変形を伴うような自動車衝突や電子機器の落下の解析などに活用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
試験片の変形過程を所定のフレームレート(「撮影速度」とも呼ばれる)で撮影するビデオカメラを材料試験機に設けることで、当該フレームレートの逆数に相当する時間(以下、「撮影サンプリング周期」と言う)ごとに、変形過程を記録した撮影画像を得ることができる。そして、これらの撮影画像に基づいて、変形過程における試験片の変位の量や歪みの量(以下、「変形量」と言う)を非接触に計測することができ、また、変形量の計測結果に基づいて、試験片に与えた負荷と変形量との対応関係を解析できる。
【0005】
しかしながら、負荷を計測する計測サンプリング周期と、撮影サンプリング周期との間に位相のずれ(すなわち、時間差)が生じている場合、ある時点の負荷に対しては、その時点から位相差分だけずれて撮影された撮影画像に基づく変形量が対応付けられることとなり、解析結果の信頼性が低下するという問題がある。
【0006】
特に、衝撃試験機においては、静的な負荷を加える一般的な材料試験機とは異なり、試験片に与える負荷も、この負荷による試験片の変形量も共に高速に変化するため、位相のずれが解析結果の信頼性に与える影響は顕著になる。
【0007】
本発明は、解析結果の信頼性の向上を図ることができる衝撃試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、所定速度の負荷を試験片に与えて試験する試験機本体と、前記試験機本体を制御する制御装置と、前記試験片を撮影するビデオカメラと、パルスジェネレータと、を備え、前記試験機本体は、所定の計測サンプリング周期で前記負荷の検出信号を取り込む検出信号取込部と、前記計測サンプリング周期に同期したサンプリング同期信号を出力する同期信号出力部と、を有し、前記パルスジェネレータは、前記ビデオカメラに撮影を指示する撮影指示信号を、前記サンプリング同期信号を逓倍、又は分周して生成し、前記ビデオカメラに出力する撮影指示信号生成部を備えることを特徴とする衝撃試験機に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビデオカメラが撮影指示信号の入力にしたがって撮影動作を実行するので、計測サンプリング周期と、ビデオカメラにおける撮影サンプリング周期との位相のずれが抑えられ、解析結果の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る高速引張試験機の構成を模式的に示す図である。
【
図2】制御装置、パルスジェネレータ、及びビデオカメラの機能的構成を示す図である。
【
図3】ストローク検出信号の時系列データ、力検出信号の時系列データ、及び撮影画像の時系列データの各々の生成タイミングと、サンプリング同期信号と、撮影指示信号Pbと、を示すタイミングチャートである。
【
図4】力検出信号の時系列データ、及び撮影画像Eの時系列データを解析した解析結果の一例を示す模式的に示す図である。
【
図5】本発明の変形例に係るタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る衝撃試験機として高速引張試験機を説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る高速引張試験機1の構成を模式的に示す図である。
高速引張試験機1は、試験対象の材料の試験片TPに、所定の衝撃速度で引張力(負荷)を与えて高速引張試験を実行するものであり、試験機本体2と、ビデオカメラ4と、制御装置6と、解析装置7と、パルスジェネレータ8と、を備える。衝撃速度は、例えば5m/秒以上であり、本実施形態では、約20m/秒である。試験対象は、各種材料や工業製品、当該工業製品の部品又は部材などであり、試験片TPは、材料試験のために所定の規格にしたがって作成される。
【0013】
試験機本体2は、テーブル11と、テーブル11に立設された一対の支柱12と、一対の支柱12に架け渡されたクロスヨーク13と、クロスヨーク13に固定された油圧シリンダ31を備える。
油圧シリンダ31は、試験機本体2において引張力を試験片TPに与える負荷機構を構成し、テーブル内に配置された油圧源(図示せず)からサーボバルブ34を介して供給される作動油によって動作する。
油圧シリンダ31のピストンロッド32には、助走治具25およびジョイント26を介して上つかみ具21が接続されている。一方で、テーブル11には、力検出器であるロードセル27を介して、下つかみ具22が接続されている。
【0014】
かかる構成の下、試験機本体2は、上述の5m/秒以上(本実施形態では20m/秒)の衝撃速度でピストンロッド32を引き上げる。これにより、一対の上つかみ具21及び下つかみ具22には、両者を急激に離間させる力が作用し、この力が両者によって把持された試験片TPに引張力として作用する。
【0015】
試験機本体2には、負荷機構の変位、すなわち、ピストンロッド32の移動量に応じたストローク検出信号D1を制御装置6に出力するストロークセンサ33と、引張力を示す力検出信号D2を制御装置6に出力する力検出器であるロードセル27と、が設けられている。負荷機構の変位(ピストンロッド32の移動量)は、試験片TPの変形量に対応し、当該変位を示すストローク検出信号D1に基づいて変形量が求められる。
【0016】
ビデオカメラ4は、高速引張試験時に、パルスジェネレータ8の後述する撮影指示信号Pbに同期して試験片TPの撮影動作を繰り返し実行し、試験片TPを記録した撮影画像Eを撮影動作ごとに生成し、それらの撮影画像Eを制御装置6に出力する。これらの撮影画像Eを例えば解析装置7で画像処理することで、試験片TPの変形量が計測される。この画像処理には公知の適宜の技術が用いられる。
【0017】
制御装置6は、試験機本体2の動作を制御することで高速引張試験を実行し、高速引張試験の間における、試験片TPの変形量を示すストローク検出信号D1の時系列データQ1、引張力を示す力検出信号D2の時系列データQ2、及び撮影画像Eの時系列データQ3を取得する装置である。制御装置6には、例えばパーソナルコンピュータ等で構成された解析装置7が有線、又は無線によって接続されている。そして、各時系列データQ1、Q2、Q3が制御装置6から解析装置7に適宜のタイミングで送られ、解析装置7が、これらの時系列データQ1、Q2、Q3に基づいて、試験片TPの高速変形に係る特性や性質を解析する。この解析装置7は、高速引張試験に係る各種の設定パラメータ(例えば衝撃速度など)を制御装置6に設定する入力インターフェースとしても機能する。
【0018】
なお、解析装置7が撮影画像Eの時系列データQ3に基づいて試験片TPの変形量を計測する場合には、試験機本体2において、必ずしもストローク検出信号D1の時系列データQ1が解析装置7に出力される必要はない。
【0019】
図2は、制御装置6、パルスジェネレータ8、及びビデオカメラ4の機能的構成を示す図である。
本実施形態では、制御装置6は、
図2に示すように、サーボ駆動部50と、検出信号取込部52と、撮影画像入力部54と、同期信号出力部56と、を備える。
制御装置6は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスと、HDDやSSDなどのストレージ装置と、センサ類や周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、解析装置7と通信する通信装置と、を備えたコンピュータを有し、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されているコンピュータプログラム(試験機制御プログラム)を実行することで、
図2に示す機能が実現されている。
【0020】
サーボ駆動部50は、所定の高速度でピストンロッド32が引き上げられるように、サーボバルブ34に制御信号を供給し、油圧シリンダ31を動作させる。
【0021】
検出信号取込部52は、ストローク検出信号D1と、力検出信号D2とのそれぞれを順次に取り込み、それらをA/D変換して出力するA/D変換回路53A、53Bを備える。これらA/D変換回路53A、53Bの出力がストローク検出信号D1の時系列データQ1、及び力検出信号D2の時系列データQ2となる。
これらA/D変換回路53A、53Bは、共通のクロック信号に同期して動作し、所定の計測サンプリング周期Tbでストローク検出信号D1、及び力検出信号D2の取り込みと、それらの時系列データQ1、Q2の出力とを同期して行う。かかるクロック信号の発生源には、適宜のクロック回路を用いてもよく、例えばプロセッサが備えるクロック回路を用いてもよい。
【0022】
計測サンプリング周期Tbは、静的な負荷を試験片TPに与える通常の材料試験機で用いられる値(一般的には数kHz程度)よりも速い値(数MHz以上のオーダー)であり、衝撃速度の設定値が大きくなるほど速い周期が例えばプロセッサによって設定される。これにより、より大きな衝撃速度が設定され、試験片TPの変化がより急激になる場合でも、常に、その急激な変化に対して十分な分解能でストローク検出信号D1、及び力検出信号D2を取り込み、変形量、及び引張力を計測できる。
【0023】
撮影画像入力部54は、ビデオカメラ4の撮影画像Eが入力される入力端子を有する。上述の通り、ビデオカメラ4は、パルスジェネレータ8の撮影指示信号Pbに同期して撮影画像Eを順次に生成しており、各撮影画像Eが適宜のタイミングで撮影画像入力部54に入力される。そして、制御装置6は、これらの撮影画像Eが撮影順に並んだデータを撮影画像Eの時系列データQ3として解析装置7に送る。
【0024】
同期信号出力部56は、検出信号取込部52における計測サンプリング周期Tbに同期した信号(以下、「サンプリング同期信号Pa」と言う)をパルスジェネレータ8に出力する。このサンプリング同期信号Paは、A/D変換回路53A、53Bに入力されるクロック信号から生成される。
【0025】
パルスジェネレータ8は、ビデオカメラ4に撮影を指示する撮影指示信号Pbを、制御装置6におけるストローク検出信号D1、及び力検出信号D2の計測サンプリング周期Tbに合わせて出力する撮影指示信号生成部70を備えることで、ビデオカメラ4における撮影サンプリング周期Taと、制御装置6における計測サンプリング周期Tbとの位相のずれを抑える装置である。
【0026】
具体的には、撮影指示信号生成部70は、
図2に示すように、サンプリング同期信号Paを逓倍した逓倍信号を出力する逓倍回路60と、サンプリング同期信号Paを分周した分周信号を出力する分周回路62と、逓倍信号、及び分周信号のいずれかを選択的に撮影指示信号Pbとしてビデオカメラ4に出力する選択回路64と、逓倍数、及び分周数を設定する設定部66と、を備える。
逓倍回路60、及び分周回路62は例えばPLL回路を用いて構成される。
【0027】
選択回路64には、逓倍信号、及び分周信号のどちらを選択するかが予め設定される。この選択は、制御装置6における計測サンプリング周期Tbと、ビデオカメラ4の撮影動作時間とに基づいて決定される。
撮影動作時間は、撮影動作時間は、1フレーム分の撮影動作に要する時間であり、撮影速度の仕様から求められ、一般的には、撮影画像のデータサイズが大きいほど撮影動作時間も長くなる。
この撮影動作時間が計測サンプリング周期Tbの1周期分よりも長い場合には分周信号が撮影指示信号Pbに選択される。また、ビデオカメラ4が高速度カメラである場合、一般的には撮影動作時間が計測サンプリング周期Tbの1周期よりも短くなる。この場合、撮影動作時間が計測サンプリング周期Tbの1周期のN分の1(Nは2以上の整数)以下であれば、逓倍信号が撮影指示信号Pbに選択される。
【0028】
設定部66には、計測サンプリング周期Tbの逓倍信号、又は分周信号に追従して撮影動作可能な逓倍数、又は分周数が撮影動作時間に基づいて設定され、上記逓倍回路60、又は分周回路62に入力される。この設定は手動でもよいし、パルスジェネレータ8が備えるプロセッサがユーザによって入力された撮影動作時間に基づいて逓倍数、又は分周数を演算して設定してもよい。
【0029】
ビデオカメラ4は、
図2に示すように、撮影指示信号入力部80と、撮影動作実行部82と、を備える。
撮影指示信号入力部80は、撮影指示信号Pbの入力を受け付ける入力端子を備え、当該撮影指示信号Pbを撮影動作実行部82に出力する。
撮影動作実行部82は、撮影指示信号Pbが入力されるごとに、試験片TPを撮影する撮影動作を実行することで1フレーム分の撮影画像Eを生成し、内蔵のメモリデバイスに格納する。
撮影画像出力部84は、新たな撮影画像Eがメモリデバイスに格納される都度、その撮影画像Eを制御装置6に出力し、或いは、1回の高速引張試験の間にメモリデバイスに格納された各撮影画像Eを、当該高速引張試験が完了するごとに制御装置6に出力する。
【0030】
図3は、ストローク検出信号D1の時系列データQ1、力検出信号D2の時系列データQ2、及び撮影画像Eの時系列データQ3の各々の生成タイミングと、サンプリング同期信号Paと、撮影指示信号Pbとを示すタイミングチャートである。
ストローク検出信号D1の時系列データQ1、及び力検出信号D2の時系列データQ2はいずれも、検出信号取込部52において、計測サンプリング周期Tbで互いに位相のずれが略ない状態で生成され、これらに同期したサンプリング同期信号Paがパルスジェネレータ8に出力される。
【0031】
パルスジェネレータ8では、サンプリング同期信号Paの逓倍信号又は分周信号が撮影指示信号Pbとして順次に出力され、それらの撮影指示信号Pbはビデオカメラ4に順次に入力される。なお、
図3には、サンプリング同期信号Paを1/2に分周した分周信号を撮影指示信号Pbとして選択した場合を示している。
【0032】
ビデオカメラ4では、撮影指示信号Pbの入力をトリガーとして、直ちに1フレーム分の撮影動作を行うことで、1枚の撮影画像Eを生成する。これにより、撮影画像Eの生成タイミングが、ストローク検出信号D1の時系列データQ1、及び力検出信号D2の時系列データQ2の生成タイミングと常に同期する。この結果、同図に破線で示す撮影サンプリング周期Taのような計測サンプリング周期Tbとの間の位相ずれが十分に抑えられる。
【0033】
図4は、力検出信号D2の時系列データQ2、及び撮影画像Eの時系列データQ3を解析した解析結果の一例を示す模式的に示す図である。
同図に示すように、撮影画像Eの時系列データQ3から求められた変形量が、力検出信号D2の時系列データQ2で示される引張力に対して直線的に変化するという解析結果が得られたとする。
この場合、撮影サンプリング周期Taと計測サンプリング周期Tbとの間に位相のずれがあるときには、その位相のずれ量(時間差)と、位相のずれ方向(撮影サンプリング周期Taが遅れる方向又は進む方向)に応じて、位相のずれがないとき(ずれ量=ゼロ)に比べ、変形量の値が見かけ上、大きく、或いは小さくなり、解析結果の信頼度が悪くなる。
これに対して、この高速引張試験機1では、撮影サンプリング周期Taと計測サンプリング周期Tbとの位相のずれが十分に抑えられるので、信頼性が高い解析結果が得られることとなる。
【0034】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0035】
本実施形態の高速引張試験機1では、試験機本体2は、引張力を示す力検出信号D2の取込周期である所定の計測サンプリング周期Tbに同期したサンプリング同期信号Paを出力し、パルスジェネレータ8が、このサンプリング同期信号Paの逓倍、又は分周によって撮影指示信号Pbを生成し、それをビデオカメラ4に出力する。
これにより、ビデオカメラ4が撮影指示信号Pbの入力にしたがって撮影動作を実行するので、制御装置6における計測サンプリング周期Tbと、ビデオカメラ4における撮影サンプリング周期Taとの位相のずれが抑えられ、解析結果の信頼性の向上が図られる。
【0036】
本実施形態の高速引張試験機1では、ビデオカメラ4は、撮影指示信号Pbの入力ごとに、当該撮影指示信号Pbに同期して1枚の撮影画像Eを生成する。
これにより、制御装置6の計測サンプリング周期Tbとの間で位相のずれがない撮影画像Eが得られるので、より信頼性の高い解析結果を得ることができる。
【0037】
本実施形態の高速引張試験機1では、衝撃速度に応じた計測サンプリング周期Tbを設定可能にしたので、より大きな衝撃速度で試験が行われる場合でも、試験片TPのより急激な変化に対して十分な分解能で力検出信号D2を取り込んで引張力を計測できる。
【0038】
[第2実施形態]
本実施形態では、ビデオカメラ4として、高速度ビデオカメラの中でも、撮影速度(フレームレート)が一段と速い、いわゆる超高速度ビデオカメラを用いた場合を例示する。
超高速度カメラは、イメージセンサ(撮像素子)にバーストイメージセンサと呼ばれるセンサを用いることで、少なくとも100万コマ/秒以上の超高速度での撮影を実現し、1回の撮影動作あたり、数十枚から数百枚の複数枚の撮影画像Eから成る撮影画像群Egを一度に生成するカメラである。
【0039】
本実施形態では、ビデオカメラ4には、株式会社島津製作所製の「Hyper Vision HPV-X2」を超高速度カメラとして用いており、この超高速度カメラは、1000万コマ/秒の撮影速度で、1回の撮影動作あたり256枚の撮影画像群Egを生成している。すなわち、この超高速度カメラは、1枚あたり約0.1μ秒のオーダーで撮影画像Eを生成し、また1回の撮影動作あたり約25.6μ秒という短い時間で撮影画像群Egの生成を完了する。
【0040】
この場合、計測サンプリング周期Tbに同期してビデオカメラ4が1回の撮影動作を行うことで、1回の撮影動作で得られた撮影画像群Egのそれぞれの撮影画像Eと、計測サンプリング周期Tbとの間では、位相のずれが略無視できる程度に抑えられる。
そこで、本実施形態では、
図5に示すように、ビデオカメラ4は、パルスジェネレータ8からの撮影指示信号Pbの入力をトリガーとして1回の撮影動作を実行することで、複数枚(本実施形態では128枚)の撮影画像Eを高速度で生成し、撮影画像群Egを生成する。
【0041】
これにより、毎回の撮影動作における最初の撮影画像Eが、計測サンプリング周期Tbと同期して撮影されるので、これら最初の撮影画像Eを、力検出信号D2の取込と位相のずれがない画像として用いることができる。
さらに、1回の撮影動作で得られる撮影画像群Egによって、試験片TPの変形過程を、より細かい時間間隔で観察できる。
【0042】
上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0043】
上述した各実施形態において、サンプリング同期信号Pa、又は撮影指示信号Pbを、各種の計測機器に入力してもよい。これにより、計測サンプリング周期Tb、撮影サンプリング周期Taに加え、当該計測機器のサンプリング周期との間の位相のずれも抑えることができ、高精度な試験を実現できる。かかる計測機器としては、例えば、温度、圧力等の物理的計測機器や、電気抵抗、分極による電圧等の電気的計測機器などが挙げられる。
【0044】
図2に示す機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために、構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、各構成要素は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0045】
また上述した実施形態において、各種の数値は、特段の断りがなされていない限り、その数値の周辺の範囲を意識的に除外するものではなく、同一の作用効果を奏し、また臨界的意義を有する限りにおいて、その数値の周辺の範囲(いわゆる、均等の範囲)を含む。
【0046】
なお、上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0047】
(第1項) 一態様に係る衝撃試験機は、所定速度の負荷を試験片に与えて試験する試験機本体と、前記試験機本体を制御する制御装置と、前記試験片を撮影するビデオカメラと、パルスジェネレータと、を備え、前記制御装置は、所定の計測サンプリング周期で前記負荷の検出信号を取り込む検出信号取込部と、前記計測サンプリング周期に同期したサンプリング同期信号を出力する同期信号出力部と、を有し、前記パルスジェネレータは、前記ビデオカメラに撮影を指示する撮影指示信号を、前記サンプリング同期信号を逓倍、又は分周して生成し、前記ビデオカメラに出力する撮影指示信号生成部を備えていてもよい。
【0048】
第1項によれば、ビデオカメラが撮影指示信号の入力にしたがって撮影動作を実行するので、計測サンプリング周期と、ビデオカメラにおける撮影サンプリング周期との位相のずれが抑えられ、解析結果の信頼性の向上を図ることができる。
【0049】
(第2項) 第1項に記載の衝撃試験機において、前記ビデオカメラは、前記撮影指示信号の入力ごとに、当該撮影指示信号に同期して1枚の撮影画像を生成してもよい。
【0050】
第2項によれば、制御装置6の計測サンプリング周期との間で位相のずれがない撮影画像が得られるので、より信頼性の高い解析結果を得ることができる。
【0051】
(第3項) 第1または第2項に記載の衝撃試験機において、前記ビデオカメラは、100万コマ/秒以上の撮影速度で、1回の撮影動作あたり複数枚の撮影画像を生成する超高速度カメラであり、前記撮影指示信号の入力に同期して、前記1回の撮影動作を行うことで前記複数枚の撮影画像を生成してもよい。
【0052】
第3項によれば、毎回の撮影動作における最初の撮影画像が、計測サンプリング周期と同期して撮影されるので、これら最初の撮影画像を、負荷の検出信号の取込と位相のずれがない画像として用いることができる。
さらに、1回の撮影動作で得られる複数枚の撮影画像により、試験片の変形過程を、より細かい時間間隔で観察できる。
【0053】
(第4項) 第1から第3項のいずれかに記載の衝撃試験機において、前記負荷の速度に応じた前記計測サンプリング周期を設定可能にしてもよい。
【0054】
第4項によれば、より大きな速度で試験が行われる場合でも、試験片のより急激な変化に対して十分な分解能で検出信号を取り込んで負荷を計測するこができる。
【符号の説明】
【0055】
1 高速引張試験機(衝撃試験機)
2 試験機本体
4 ビデオカメラ
6 制御装置
7 解析装置
8 パルスジェネレータ
27 ロードセル
33 ストロークセンサ
52 検出信号込部
56 同期信号出力部
70 撮影指示信号生成部
D1 ストローク検出信号
D2 力検出信号
E 撮影画像
Eg 撮影画像群
Pa サンプリング同期信号
Pb 撮影指示信号
TP 試験片
Ta 撮影サンプリング周期
Tb 計測サンプリング周期