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特許7095713粘着シート、積層体の製造方法および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】粘着シート、積層体の製造方法および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220628BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20220628BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20220628BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20220628BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220628BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220628BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/20
C09J133/00
C09J4/00
C09J11/06
B32B27/30 A
B32B27/00 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020038099
(22)【出願日】2020-03-05
(62)【分割の表示】P 2017203529の分割
【原出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2020111753
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴迪
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隼介
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/061938(WO,A1)
【文献】特開2014-214198(JP,A)
【文献】特開2017-066294(JP,A)
【文献】特開昭60-196956(JP,A)
【文献】特開2015-030765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0122599(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性アクリル重合体、架橋剤、分子内に反応性二重結合を少なくとも1つ有する単量体および重合開始剤を含有し、
前記単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が30℃以上である粘着剤組成物から半硬化状態の粘着剤層を有する粘着シートを形成する工程と、
前記粘着シートの一方の面を基材に、前記粘着シートの他方の面を光学部材に貼合する工程と、
前記基材側から活性エネルギー線を照射して前記粘着剤層を後硬化させる工程と、を含む積層体の製造方法であって、
後硬化後の粘着剤層は下記物性群(1)を満たす、積層体の製造方法;
物性群(1):23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が1×10 6 [Pa]以上であり、75℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が1×10 5 [Pa]以上であり、23℃かつ下記測定条件で測定されるプローブタック値が1.5N/5mmφ以下である。
(プローブタック値の測定条件)
測定機器:NSプローブタックテスター(ニチバン株式会社製)
プローブ直径:5mmφ
プローブ基材:ステンレススチール表面仕上げAA#400研磨による鏡面
ウェイト:19.6±0.2g(真鍮製)
プローブ移動速度:1.0cm/秒
デュエルタイム:1秒間。
【請求項2】
前記半硬化状態の粘着剤層は下記物性群(2)を満たす、請求項1に記載の積層体の製造方法;
物性群(2):23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が8×105[Pa]以下であり、75℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が1×105[Pa]以下であり、23℃かつ前記測定条件で測定されるプローブタック値が2.0N/5mmφ以上。
【請求項3】
前記後硬化後の粘着剤層のゲル分率が70~100質量%である、請求項1または2に記載の積層体の製造方法
【請求項4】
前記半硬化状態の粘着剤層のゲル分率が0質量%以上70質量%未満であり、かつ、
前記後硬化後の粘着剤層のゲル分率が、半硬化状態でのゲル分率より5質量%以上高くなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法
【請求項5】
前記架橋性アクリル重合体が有する架橋性官能基が、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、グリシジル基およびイソシアネート基から選択される1種類または2種類以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体の製造方法
【請求項6】
前記架橋剤が二官能以上のエポキシ化合物および二官能以上のイソシアネート化合物から選択される1種類または2種類以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体の製造方法
【請求項7】
前記粘着剤組成物が前記単量体を前記架橋性アクリル重合体100質量部に対して5~40質量部含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体の製造方法
【請求項8】
前記重合開始剤が活性エネルギー線照射により重合開始させる能力を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体の製造方法
【請求項9】
前記基材が、透明フィルム、透明樹脂またはガラスである、請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、積層体の製造方法および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられている。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合せる用途に透明な粘着シートが使用されており、表示装置と入力装置との貼合にも透明な粘着シートが使用されている。
【0003】
粘着シートを形成する架橋性アクリル重合体の重合方法としては、下記のような数通りの重合方法があることが知られている。具体的には、(1)熱による重合、(2)活性エネルギー線による重合、(3)熱(又は活性エネルギー線)による重合をした後に、活性エネルギー線(又は熱)による重合を行う2段重合、(4)活性エネルギー線による重合をした後に、活性エネルギー線による重合を行う2段重合といった方法がある。
【0004】
近年、上述したような用途に用いられる粘着シートを形成する方法としては、(3)熱(又は活性エネルギー線)による重合をした後に、活性エネルギー線(又は熱)による重合を行う2段重合により硬化する方法が用いられる場合がある。このような粘着シートは、熱硬化性および活性エネルギー線硬化性の両方を備える粘着剤組成物(以下、「デュアル硬化型粘着剤組成物」ということがある。)から形成されるため、熱硬化性と活性エネルギー線硬化性を有している。このため、被着体との貼合前に、例えば熱硬化のみを行うことで仮接着させることができ、その後、さらに活性エネルギー線により硬化させる(後硬化またはアフターキュアと言われる)ことで被着体に強固に接着できる。
【0005】
(3)の方法で粘着シートを形成する方法の例が知られている。
例えば、特許文献1には、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)及び架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を含むベースポリマー(A)と、ラウリルアクリレート(b1)を含む単量体(B)と、熱によりベースポリマー(A)と反応する架橋剤(C)と、活性エネルギー線の照射により単量体(B)の重合反応を開始させる重合開始剤(D)と、溶剤(E)と、を含有する粘着剤組成物を加熱により半硬化させてなる粘着剤層を含む粘着シートが記載されている。
特許文献2には、板材としてガラス板同士、ガラス板と合成樹脂板又は合成樹脂板同士を少なくとも2枚、紫外線硬化可能な粘着剤層を少なくとも1層以上有する粘着シートで貼り合せた後、板材側から紫外線照射して、粘着剤層を紫外線硬化させる透明積層体の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-084391号公報
【文献】特開2012-031059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らが特許文献1および2に記載の粘着シートの特性を検討したところ、後硬化後の粘着シートの加工性は、通常の上記(1)または(2)の方法で形成された粘着シートと同等程度の性能であることがわかった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、粘着剤層が後硬化性を有し、粘着剤層が後硬化される場合に加工性に優れる粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、後硬化性を有する粘着剤層を用いて、粘着剤層が後硬化される場合の剪断貯蔵弾性率G’を特定の範囲以上とし、粘着剤層が後硬化される場合のプローブタック値を特定の範囲以下とすることにより、粘着剤層が後硬化される場合に加工性に優れる粘着シートを提供できることを見出した。
【0010】
本発明および本発明の好ましい構成は以下のとおりである。
[1] 粘着剤組成物を半硬化状態とした粘着剤層を有し、
粘着剤組成物が架橋性アクリル重合体、架橋剤、分子内に反応性二重結合を少なくとも1つ有する単量体および重合開始剤を含有し、
単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が30℃以上であり、
粘着剤層は後硬化性を有し、
粘着剤層が後硬化される場合に下記物性群(1)を満たす、粘着シート。
物性群(1):23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が1×106[Pa]以上であり、75℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が1×105[Pa]以上であり、23℃かつ下記測定条件で測定されるプローブタック値が1.5N/5mmφ以下である。
(プローブタック値の測定条件)
測定機器:NSプローブタックテスター(ニチバン株式会社製)
プローブ直径:5mmφ
プローブ基材:ステンレススチール表面仕上げAA#400研磨による鏡面
ウェイト:19.6±0.2g(真鍮製)
プローブ移動速度:1.0cm/秒
デュエルタイム:1秒間。
[2] 粘着剤層が半硬化状態で下記物性群(2)を満たす[1]に記載の粘着シート。
物性群(2):23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が8×105[Pa]以下であり、75℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が1×105[Pa]以下であり、23℃かつ前記測定条件で測定されるプローブタック値が2.0N/5mmφ以上。
[3] 粘着剤層が後硬化される場合に後硬化後のゲル分率が70~100質量%である[1]または[2]に記載の粘着シート。
[4] 粘着剤層の半硬化状態でのゲル分率が0質量%以上70質量%未満であり、かつ、
粘着剤層が後硬化される場合に後硬化後のゲル分率が、半硬化状態でのゲル分率より5質量%以上高くなる[1]~[3]のいずれかに記載の粘着シート。
[5] 架橋性アクリル重合体が有する架橋性官能基が、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、グリシジル基およびイソシアネート基から選択される1種類または2種類以上である[1]~[4]のいずれかに記載の粘着シート。
[6] 架橋剤が二官能以上のエポキシ化合物および二官能以上のイソシアネート化合物から選択される1種類または2種類以上である[1]~[5]のいずれかに記載の粘着シート。
[7] 粘着剤組成物が単量体を架橋性アクリル重合体100質量部に対して5~40質量部含有する[1]~[6]のいずれかに記載の粘着シート。
[8] 重合開始剤が活性エネルギー線照射により重合開始させる能力を有する[1]~[7]のいずれかに記載の粘着シート。
[9] 剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを粘着剤層の両面に有する構成、または透明基材/粘着剤層/剥離シートの構成である[1]~[8]のいずれかに記載の粘着シート。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の粘着シートの粘着剤層を被着体に対して半硬化状態で貼合した後、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を後硬化させる工程を含む、積層体の製造方法。
[11] 被着体が、透明フィルム、透明樹脂またはガラスである[10]に記載の積層体の製造方法。
[12] [1]~[9]のいずれかに記載の粘着シートの粘着剤層に活性エネルギー線を照射して後硬化させた後硬化後の粘着剤層と、被着体とを有する、積層体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粘着剤層が後硬化性を有し、粘着剤層が後硬化される場合に加工性に優れる粘着シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の粘着シートの一例の断面を表す概略図である。
図2図2は、本発明の積層体の一例の断面を表す概略図である。
図3図3は、本発明の積層体の他の一例の断面を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
なお、本明細書において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、“(メタ)アクリル酸”はアクリル酸およびメタクリル酸の双方、または、いずれかを表す。
また、本明細書において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。
【0015】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、粘着剤組成物を半硬化状態とした粘着剤層を有し、
粘着剤組成物が架橋性アクリル重合体、架橋剤、分子内に反応性二重結合を少なくとも1つ有する単量体および重合開始剤を含有し、
単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が30℃以上であり、
粘着剤層は後硬化性を有し、
粘着剤層が後硬化される場合に下記物性群(1)を満たす。
物性群(1):23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が1×106[Pa]以上であり、75℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が1×105[Pa]以上であり、23℃かつ下記測定条件で測定されるプローブタック値が1.5N/5mmφ以下である。
(プローブタック値の測定条件)
測定機器:NSプローブタックテスター(ニチバン株式会社製)
プローブ直径:5mmφ
プローブ基材:ステンレススチール表面仕上げAA#400研磨による鏡面
ウェイト:19.6±0.2g(真鍮製)
プローブ移動速度:1.0cm/秒
デュエルタイム:1秒間。
この構成により、本発明の粘着シートは、粘着剤層が後硬化性を有し、粘着剤層が後硬化される場合に加工性に優れる。粘着剤層が後硬化される場合に剪断貯蔵弾性率G’が23℃および75℃で特定の範囲以上であることにより、加工性を良好とする硬さとなる。また、粘着剤層が後硬化される場合にプローブタック値が23℃で特定の範囲以下であることにより、例えば打抜き加工時の打抜き刃への粘着剤の付着やそれに伴う粘着剤層の変形など防ぐことが出来る。
【0016】
<粘着シートの構成>
まず、本発明の粘着シートの構成を簡単に説明する。図1は、本発明の粘着シートの一例の断面を表す概略図である。
本発明の粘着シート1は、粘着剤層11を有する。粘着シート1は、粘着剤層11のみから構成される単層の粘着シートであってもよい。また、粘着シートは、片面に基材(好ましくは透明基材)を備えた片面粘着シートでも、両面粘着シートでもよい。
片面粘着シートとしては、図1に示すように、粘着剤層11の片面に透明基材12aを備えた構成となる。粘着剤層11のもう一方の面は剥離シート12bによって覆われていることが好ましい。本粘着シートを使用する場合はこの剥離シート12bを剥がして所望の被着体に粘着剤層11が密着するように貼合し、その後エネルギー線照射などで後硬化をすることが好ましい。透明基材としてはポリエチレンテレフタレートフィルムやアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることが出来る。またこれらの透明基材の粘着剤層側には易接着層を設けていても良い。さらに、透明基材の粘着剤層とは逆面にはハードコート層や反射防止層、防汚層、紫外線吸収層などの機能層を備えていても良い。
両面粘着シートとしては、粘着剤層からなる単層の粘着シート、粘着剤層を複数積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に他の粘着剤層を積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に支持体を積層した多層の粘着シート、支持体の片面に粘着剤層が積層し、他方の面に他の粘着剤層が積層した多層の粘着シートが挙げられる。両面粘着シートが支持体を有する場合、支持体として透明な支持体を用いたものが好ましい。支持体としては、透明基材と同様に光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることができる。このような両面粘着シートは、粘着シート全体としての透明性にも優れることから、光学部材同士の接着に好適に用いることができる。
本発明の粘着シートは、(両面粘着シートであって)剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを粘着剤層の両面に有する構成、または(片面粘着シートであって)透明基材/粘着剤層/剥離シートの構成であることがより好ましい。本発明の粘着シートは、(片面粘着シートであって)透明基材/粘着剤層/剥離シートの構成であることが特に好ましい。
【0017】
<剥離シート>
粘着剤層11の表面は剥離シートによって覆われていることが好ましい。すなわち、粘着シートは、剥離シート付きの粘着シートであることが好ましい。
図1に示された粘着剤層11は剥離シート12b(両面粘着シートの場合は12aも剥離シートとなる)を有しており、図1は、剥離シート付きの粘着シート1の構成の一例を表すものである。
【0018】
剥離シートとしては、剥離シート用基材とこの剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO2単位と(CH33SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-843、SD-7292、SHR-1404等や、信越化学工業(株)製のKS-3800、X92-183等が挙げられる。
剥離性積層シートとして、市販品を用いてもよい。例えば、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムや、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムを挙げることができる。
【0019】
本発明の粘着シートが両面粘着シートの場合は、剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを有することが好ましい。すなわち、剥離シートは、剥離しやすくするために、剥離シート12aと剥離シート12bとの剥離性を異なるものとすることが好ましい。一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。その場合、貼合方法や貼合順序に応じて剥離シート12aと剥離シート12bの剥離性を調整すればよい。
【0020】
<粘着剤層>
本発明の粘着シートは、粘着剤組成物を半硬化状態とした粘着剤層を有し、粘着剤層は後硬化性を有し、粘着剤層が後硬化される場合に上述の物性群(1)を満たす。
【0021】
(粘着剤層の物性および特性)
本発明の粘着シートの粘着剤層は、粘着剤組成物を半硬化状態としたものであり、後硬化性を有する。
粘着剤層が半硬化状態であることは、ゲル分率が0質量%以上70質量%未満であることから確認できる。粘着剤層の半硬化状態でのゲル分率は2質量%以上70質量%未満であることが好ましく、5~65質量%であることが特に好ましい。
粘着剤層が後硬化後であることは、ゲル分率が70~100質量%であることから確認できる。粘着剤層の後硬化される場合に後硬化後のゲル分率が75~100質量%であることが特に好ましい。
粘着剤層が後硬化性を有することは、粘着剤層が後硬化される場合に後硬化後のゲル分率が、半硬化状態でのゲル分率より5質量%以上高くなることから確認できる。粘着剤層が後硬化される場合に後硬化後のゲル分率が、半硬化状態でのゲル分率より10質量%以上高くなることが好ましく、15質量%以上高くなることがより好ましい。
【0022】
「半硬化」は、粘着剤層を初めに熱のみにより硬化させることが好ましい。「半硬化状態」とは熱硬化後であって、活性エネルギー線照射前の柔らかい粘着剤層であることが好ましい。また、「後硬化」は、熱によって半硬化状態とした後に活性エネルギー線によって粘着剤層を硬化することが好ましい。
すなわち、本発明の粘着シートの粘着剤層は、粘着剤組成物を熱硬化させて半硬化状態となっていることが好ましく、かつ、活性エネルギー線硬化性を有することが好ましい。
【0023】
-物性群(1)-
本発明では、粘着剤層が後硬化される場合に物性群(1)を満たす。
物性群(1):23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が1×106[Pa]以上であり、75℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が1×105[Pa]以上であり、23℃かつ上述の測定条件で測定されるプローブタック値が1.5N/5mmφ以下である。
粘着剤層が後硬化される場合に23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’は1.2×106[Pa]以上であることが好ましく、1.5×106[Pa]以上であることがより好ましい。粘着剤層が後硬化される場合に23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’の上限値は特に制限はなく、例えば1.0×108[Pa]以下にすることができる。
粘着剤層が後硬化される場合に75℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’は1.5×105[Pa]以上であることが好ましく、2.0×105[Pa]以上であることがより好ましい。粘着剤層が後硬化される場合に23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’の上限値は特に制限はなく、例えば1.0×108[Pa]以下にすることができる。
粘着剤層が後硬化される場合に23℃かつ上述の測定条件で測定されるプローブタック値が1.0N/5mmφ以下であることが好ましく、0.5N/5mmφ以下であることがより好ましい。粘着剤層が後硬化される場合に23℃かつ上述の測定条件で測定されるプローブタック値の下限値は特に制限はないが、例えば0.1N/5mmφ以上にすることができる。
【0024】
-物性群(2)-
本発明では、粘着剤層が半硬化状態で下記物性群(2)を満たすことが好ましい。
物性群(2):23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が8×105[Pa]以下であり、75℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が1×105[Pa]以下であり、23℃かつ上述の測定条件で測定されるプローブタック値が2.0N/5mmφ以上。
粘着剤層が半硬化状態である場合に23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が5×105[Pa]以下であることがより好ましく、2×105[Pa]以下であることが特に好ましい。粘着剤層が半硬化状態である場合に23℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’の下限値は特に制限はなく、例えば1.0×104[Pa]以上にすることができる。
粘着剤層が半硬化状態である場合に75℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’が5×104[Pa]以下であることがより好ましく、3×104[Pa]以下であることが特に好ましい。粘着剤層が半硬化状態である場合に75℃かつ周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’の下限値は特に制限はなく、例えば1.0×103[Pa]以上にすることができる。
粘着剤層が半硬化状態である場合に23℃かつ上述の測定条件で測定されるプローブタック値が2.5N/5mmφ以上であることがより好ましく、3.0N/5mmφ以上であることが特に好ましい。粘着剤層が半硬化状態である場合に23℃かつ上述の測定条件で測定されるプローブタック値の上限値は特に制限はないが、例えば20.0N/5mmφ以下にすることができ、15.0N/5mmφ以下にすることが好ましい。
【0025】
-加工性-
本発明の粘着シートは、後硬化後において、加工性にも優れる。特に、カット端部をこすった場合の剥がれ距離が少ないことが好ましい。後硬化後の加工性は、粘着剤層が後硬化される場合の剪断貯蔵弾性率G’を特定の範囲以上とし、粘着剤層が後硬化される場合のプローブタック値を特定の範囲以下とすることにより、改善することができる。
【0026】
-端面のベタツキ-
本発明の粘着シートは、後硬化後において、粘着剤層の端面のベタツキ(タック性)が少ない。後硬化後の粘着剤層の端面のベタツキは、粘着剤層が後硬化される場合の剪断貯蔵弾性率G’を特定の範囲以上とし、粘着剤層が後硬化される場合のプローブタック値を特定の範囲以下とすることにより、少なくすることができる。
【0027】
-耐アウトガス性-
本発明の粘着シートは、後硬化後において、耐アウトガス性にも優れることが好ましい。特に、高温高湿環境下に置いて長時間が経過した後の気泡、剥がれが少ないことが好ましい。後硬化後の耐アウトガス性は、半硬化状態での剪断貯蔵弾性率G‘を特定の範囲以下とし、後硬化後の剪断貯蔵弾性率G‘を特定の範囲以上とすることで、改善することができる。
【0028】
(厚み)
粘着剤層の厚みは、用途に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、5~500μmの範囲内であることが好ましく、10~300μmがより好ましく、12~100μmが特に好ましい。粘着剤層の厚みを上記範囲内とすることにより、基材等の被着体から気泡が発生することを十分に抑制することができる。また、粘着剤のはみ出しやべたつきを抑制することができるため加工性に優れる。さらに、粘着剤層の厚さを上記範囲内とすることにより、両面粘着シートの製造が容易となる。
【0029】
<粘着剤組成物>
上述の粘着剤層は、粘着剤組成物を半硬化状態としたものである。
本発明では、粘着剤組成物が架橋性アクリル重合体、架橋剤、分子内に反応性二重結合を少なくとも1つ有する単量体および重合開始剤を含有する。ここで、分子内に反応性二重結合を少なくとも1つ有する単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は30℃以上である。
本発明で用いられる粘着剤組成物は、デュアル硬化型粘着剤組成物であることが好ましい。
【0030】
(架橋性アクリル重合体)
本発明では、粘着剤組成物が架橋性アクリル重合体を含有する。
架橋性アクリル重合体は、特に制限はないが、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)と、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を含有することが好ましい。架橋性アクリル重合体は、表示装置の視認性を低下させない程度の透明性を有するものが好ましい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(単量体単位)である。
【0031】
非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性が高くなることから、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルから選ばれる少なくとも1種類が好ましい。
【0032】
本発明では、架橋性アクリル重合体が有する架橋性官能基が、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、グリシジル基およびイソシアネート基から選択される1種類または2種類以上であることが好ましく、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基およびグリシジル基から選択される1種類または2種類以上であることがより好ましい。
架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)は、カルボキシ基含有単量体単位、ヒドロキシ基含有単量体単位、アミノ基含有単量体単位、グリシジル基含有単量体単位が好ましい。
カルボキシ基含有単量体単位としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
ヒドロキシ基含有単量体単位は、ヒドロキシ基含有単量体に由来する繰り返し単位である。ヒドロキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミノ基含有単量体単位としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミン等のアミノ基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
グリシジル基含有単量体単位としては、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0033】
架橋性アクリル重合体における架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)の含有量は0.01~40質量%であることが好ましく、0.5~35質量%であることがより好ましい。架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、半硬化状態を維持するために必要な架橋性を十分に有しており、上記範囲の上限値以下であれば必要な粘着性を維持しやすい。
【0034】
架橋性アクリル重合体は、必要に応じて、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)および架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)以外の他の単量体単位を有してもよい。他の単量体は、非架橋性(メタ)アクリル酸エステルおよび架橋性官能基を有するアクリル単量体と共重合可能なものであればよく、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられる。架橋性アクリル重合体における他の単量体単位の含有量は0~20質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましい。
【0035】
架橋性アクリル重合体の重量平均分子量は、10~200万が好ましく、30~150万がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、粘着シートの半硬化状態を維持しやすく、かつ後硬化後の硬度を出しやすく、加工性に優れる。なお、架橋性アクリル重合体の重量平均分子量は架橋剤で架橋される前の値である。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。架橋性アクリル重合体としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0036】
(架橋剤)
本発明では、粘着剤組成物が架橋剤を含有する。
架橋剤は、架橋性アクリル重合体が有する架橋性官能基との反応性を考慮して適宜選択できる。例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤の中から選択できる。これらの中でも、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を容易に架橋できることから、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が好ましい。本発明では、架橋剤が二官能以上のエポキシ化合物および二官能以上のイソシアネート化合物から選択される1種類または2種類以上であることが好ましい。
例えば、架橋性官能基としてヒドロキシ基を含む場合は、ヒドロキシ基の反応性から、イソシアネート化合物を用いることがより好ましい。
【0037】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
架橋剤として、市販品を使用できる。市販品の例としては、トリレンジイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートL)、キシリレンジイソシアネート化合物(三井化学(株)製、タケネートD-110N)等が挙げられる。
【0038】
粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、所望とする粘着性等に応じて適宜選択されるが、架橋性アクリル重合体100質量部に対し、0.01~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。架橋剤の含有量が上記下限値以上であると半硬化状態での剪断貯蔵弾性率G‘が所望の範囲に調整できるため加工性に優れ、上記上限値以下であると初期の基材密着性が優れるため、後硬化後に手でこすっても剥がれず、加工性に優れる。
架橋剤としては1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0039】
(単量体)
本発明では、粘着剤組成物が分子内に反応性二重結合を少なくとも1つ有する単量体を含有する。ここで、該単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は30℃以上である。該単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は40℃以上であることが好ましく、45℃以上であることがより好ましい。
【0040】
単量体は、分子内に反応性二重結合を1つ有する単官能単量体であってもよく、分子内に反応性二重結合を2つ以上有する多官能単量体であってもよい。また、単量体として、単官能単量体と多官能単量体を併用してもよい。
【0041】
単官能単量体としては、例えば、イソボロニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどを挙げることができる。
単官能単量体として、市販品を使用できる。市販品の例としては、大阪有機化学工業社製、IBXA等が挙げられる。
【0042】
多官能単量体は反応性二重結合を2つ以上有するものであり、中でも、反応性二重結合を3~6個有するものであることが好ましい。
多官能単量体としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,9-ノナンジオール、ジアクリル酸1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、メタクリル酸ビニル等が挙げられる。
多官能単量体として、市販品を使用できる。市販品の例としては、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート(東亞合成(株)製、アロニックスM-321)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(東亞合成(株)製、アロニックスM-405)等が挙げられる。
【0043】
本発明では、粘着剤組成物が上記単量体を架橋性アクリル重合体100質量部に対して5~40質量部含有することが好ましく、15~40質量部含有することがより好ましく、25~35質量部含有することが特に好ましい。上記単量体は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0044】
(重合開始剤)
本発明では、粘着剤組成物が重合開始剤を含有する。
重合開始剤は、活性エネルギー線照射により重合開始させる能力を有することが好ましく、上記単量体の重合を開始させる能力を有することがより好ましい。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤など公知のものを用いることができる。
ここで、「活性エネルギー線」とは電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0045】
重合開始剤としては、例えばアセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミン系開始剤、アシルフォスフィンオキシド系開始剤等が挙げられる。
アセトフェノン系開始剤として具体的には、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
ベンゾインエーテル系開始剤として具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系開始剤として具体的には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤として具体的には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASFジャパン(株)製、IRGACURE184として市販)等が挙げられる。
チオキサントン系開始剤として具体的には、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
アミン系開始剤として具体的には、トリエタノールアミン、4-ジメチル安息香酸エチル等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキシド系開始剤として具体的には、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BASFジャパン(株)製、IRGACURE819として市販)等が挙げられる。
【0046】
粘着剤組成物中の重合開始剤の含有量は、単量体の含有量や後硬化させるときの活性エネルギー線の照射量等に応じて適宜選択される。具体的には、単量体の全質量に対し、0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5.0質量%であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、後硬化により所望の硬さに調整することができるため加工性が優れる。上記上限値以下であれば、後硬化後の分子量が小さくならず、加工性や耐アウトガス性に優れる。
重合開始剤としては1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0047】
(溶剤)
粘着剤組成物は、溶剤を含んでいてもよい。この場合、溶剤は、粘着剤組成物の塗工適性の向上のために用いられる。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0048】
粘着剤組成物中の溶剤の含有量は、特に限定されないが、架橋性アクリル重合体100質量部に対し、25~500質量部が好ましく、30~400質量部がより好ましい。
また、溶剤の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対し、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。溶剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0049】
(可塑剤)
粘着剤組成物は本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤をさらに含んでもよい。粘着剤組成物が可塑剤を含むことにより、粘着シートは、被着体に形成される段差を埋めることができ、凹凸追従性が高められる。可塑剤は、無官能基アクリル重合体であることが好ましい。無官能基アクリル重合体は、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位のみからなる重合体、又はアクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位と官能基を有しない非アクリル単量体単位とからなる重合体である。無官能基アクリル重合体は架橋しないため、粘着性に影響を与えずに凹凸追従性を高めることができる。
アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位としては、例えば非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)と同様のものが挙げられる。
官能基を有しない非アクリル単量体単位としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルエステル類やスチレン等が挙げられる。
【0050】
(他の成分)
粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分を挙げることができる。例えば酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、粘着剤の相溶性や効果の高さから、ベンゾリアゾール系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。ただし、後硬化時の活性エネルギー線に紫外線を用いる場合は、重合反応を阻害しない範囲で添加することが好ましい。
【0051】
<粘着シートの製造方法>
粘着シートの製造方法は、特に限定されない。
粘着シートの製造方法は、剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程と、この塗膜を加熱により半硬化状態の硬化物とする工程を含むことが好ましい。
塗膜の加熱により、架橋性アクリル重合体および架橋剤の反応が進行して半硬化状態の硬化物(粘着剤層)が形成される。つまり、加熱の際、塗膜中では重合開始剤による単量体の重合反応が進行しないか、進行してもわずかであるため、粘着剤層中には、粘着剤組成物に含まれる単量体および重合開始剤の少なくとも一部が未反応の状態で含まれている。本発明の粘着シートは、後硬化性を有し、活性エネルギー線硬化性を有していることが好ましい。
粘着剤組成物を半硬化状態とするためには、塗工後溶剤を除去した後に、一定温度で一定期間粘着シートを静置するエージング処理を施すことが好ましい。エージング処理は例えば、23℃で7日間静置して行うことができる。
【0052】
本発明の粘着シートの粘着剤層は、基材等の被着体に貼合した後に活性エネルギー線を照射することで後硬化できることが好ましい。本発明の粘着シートは、2段階硬化の粘着シートであり、貼合前は熱のみによって半硬化された粘着剤層を有し、貼合後に活性エネルギー線により粘着剤層は後硬化できることが好ましい。
【0053】
粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0054】
粘着剤組成物を塗工して形成される塗膜の加熱には、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いることができる。
【0055】
(粘着シートの使用方法)
本発明の粘着シートの使用方法においては、粘着シートの粘着剤層を被着体表面に接触させることが好ましい。
本発明の粘着シートの使用方法は、粘着シートの粘着剤層が半硬化状態のときに被着体と貼合し、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を後硬化させることが好ましい。
【0056】
<粘着シートの用途>
本発明の粘着シートは、耐久性を必要とする光学部材、特に形状が複雑で積層体になってからの打抜き加工が必要な用途に好ましく用いられる。
本発明の粘着シートは、基材等の被着体に貼合し、後硬化させた後、高湿熱環境下に曝した場合であっても、気泡の発生を抑制できることが好ましい。本発明の粘着シートは、基材に貼合する用途に用いられる粘着シートであることが好ましく、ポリカーボネート基材に貼合する用途に用いられる粘着シートであることがより好ましい。ポリカーボネート基材としては、例えば、帝人化成(株)製のPC-1151等を挙げることができる。
【0057】
本発明の粘着シートは、基材に直接貼合する用途に用いられる粘着シートであることが好ましいが、基材に間接的に貼合する用途で用いられてもよい。例えば、ポリカーボネート基材を含む多層基材に貼合されてもよい。このような多層基材は、ポリカーボネート層とハードコート層を有する基材であることが好ましい。ハードコート層の組成はアクリル系、ウレタン系、シリコーン系、メラミン系、エポキシ系から選択されることが好ましく、アクリル系、シリコーン系がより好ましい。ハードコート層の組成は加工性と硬度の点からアクリル系がより好ましい。なお、本明細書においては、ポリカーボネート基材を含む多層基材についてもポリカーボネート基材と呼ぶ。
ポリカーボネート基材を含む多層基材としては、例えば、三菱ガス化学(株)製のMR-58やIMR05等を用いることができる。ここで、MR-58の構成は、HC(ハードコート)/PMMA(ポリメチルメタクリレート)/PC(ポリカーボネート)/HC(ハードコート)である。MR-58の全体の厚みは0.3mm~1.2mmであり、ハードコート層の1層の厚みは、0.0005mm~0.02mmであることが好ましい。また、IMR05の構成は、HC(ハードコート)/PC(ポリカーボネート)である。
【0058】
また、本発明の粘着シートは、偏光板などの光学部材に貼合し、後硬化させた後、高湿熱環境下に曝した場合であっても、気泡、剥がれの発生を抑制することができる。ここで、偏光板とは、偏光子と偏光子保護フィルムを含むものであり、本発明の粘着シートは偏光子保護フィルムに貼合されることが好ましい。偏光子保護フィルムとしては、シクロオレフィン系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースなどの酢酸セルロース系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなどが挙げられる。特に、偏光子保護フィルムが酢酸セルロース系樹脂フィルムである場合、本発明の粘着シートを用いることによって、気泡発生抑制効果が発揮される。
本発明では、粘着シートの被着体の気泡の発生を抑制することができるため、粘着シートを表示装置等に組み込んだ場合、視認性の悪化を防ぐことができる。
【0059】
半硬化状態の粘着シートを被着体に貼合することで、凹凸に追従させられることが好ましい。また、活性エネルギー線の照射により粘着剤層を後硬化させることで粘着力及び保持力を高めることができる。
【0060】
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の粘着シートの粘着剤層に活性エネルギー線を照射して後硬化させた後硬化後の粘着剤層と、被着体とを有する。
積層体に含まれる粘着シートは、2つの被着体(例えば、基材と光学部材)を半硬化状態の粘着シートで貼合した状態で活性エネルギー線を照射することで、後硬化したものであることが好ましい。
【0061】
図2は、本発明の積層体の一例の断面を表す概略図である。図2は、本発明の粘着シート21を基材22と光学部材24に貼合した積層体20の構成の一例を表す断面図である。図2に示されているように、本発明の粘着シート21は、基材22に貼合するために用いられることが好ましく、基材22と他の光学部材24の貼合に用いられることが好ましい。なお、本発明の粘着シート21は、偏光板との貼合に用いられてもよい。
【0062】
積層体に含まれる光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材を挙げることができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。
これらの部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー,トリアセチルセルロース,ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。
【0063】
本発明の粘着シートが両面粘着シートである場合は、2つの被着体の貼合に用いることができる。この場合、本発明の粘着シートは、タッチパネルの内部における透明光学用フィルム同士の貼合、透明光学用フィルムとガラスとの貼合、タッチパネルの透明光学用フィルムと液晶パネルとの貼合、カバーガラスと透明光学用フィルムとの貼合、カバーガラスと透明光学用フィルムとの貼合などに用いられ、いずれかの部材がポリカーボネート基材であることが好ましい。透明光学用フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムやアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることが出来る。また、透明光学用フィルムやポリカーボネート基材にはハードコート層が設けられていてもよい。
【0064】
図3は、本発明の積層体の他の一例の断面を表す概略図である。図3に示されているように、被着体は段差部(27a、27b、27c、27d)を有していてもよい。図3では、基材は段差部(27a、27b)を有しており、光学部材が段差部(27c、27d)を有している。なお、段差部(27a、27b、27c、27d)の厚みは、通常5~60μmである。このように本発明の粘着シート21は、段差部を有する部材にも貼合することができ、段差部から生じる凹凸に追従することができる。
【0065】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、本発明の粘着シートの粘着剤層を被着体に対して半硬化状態で貼合した後、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を後硬化させる工程を含む。
本発明では、半硬化状態の粘着シートを被着体表面に接触させ、その状態で活性エネルギー線を照射して粘着剤層を後硬化させる工程を含むことが好ましい。
被着体は、基材および光学部材であることがより好ましく、ポリカーボネート基材、偏光板、透明フィルム、透明樹脂またはガラスであることが特に好ましい。本発明では、被着体が、透明フィルム、透明樹脂またはガラスであることがより特に好ましい。
【0066】
粘着シートを基材と光学部材に貼合する場合、活性エネルギー線は基材側からでも光学部材側からでも照射できるが、基材側から照射することが好ましい。
活性エネルギー線を照射する前は、粘着シートの粘着剤層は半硬化状態であることから、被着体が段差部を有していても、粘着剤層はその凹凸に追従することができる。このように、粘着シートを貼合し、凹凸に追従させた後、粘着剤層を活性エネルギー線で後硬化させることで、粘着剤層の凝集力が高まり、被着体への粘着性が向上する。また、後硬化した粘着剤層は基材が変形したり、歪んだりすることを防止できる。
【0067】
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられ、粘着剤層に含まれる重合開始剤に応じて適宜選択できる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。
電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種類の電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
紫外線の照射出力は、積算光量が100~10000mJ/cm2となるようにすることが好ましく、500~5000mJ/cm2となるようにすることがより好ましい。
【実施例
【0068】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0069】
[製造例1]
架橋性アクリル重合体を、酢酸エチル中での溶液重合により作製した。2-ヒドロキシエチルアクリレートモノマー、n-ブチルアクリレートモノマー、及びジメチルアクリルアミドを質量比で0.5:10:2.5となるように配合し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を溶液へ溶解した。溶液を60℃に加熱してランダム共重合させ、架橋性アクリル重合体Aを得た。この架橋性アクリル重合体の35質量%溶液の23℃における溶液粘度は5500mPa・sであった。
【0070】
[製造例2]
2-ヒドロキシエチルアクリレートモノマーをアクリル酸に変更した以外は上記製造例1と同様にして架橋性アクリル重合体Bを得た。
【0071】
[実施例1]
架橋性アクリル重合体A100質量部に対して、架橋剤としてキシリレンジイソシアネート化合物(三井化学(株)製、タケネートD-110N)を0.2質量部、ホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)が30℃以上の単量体としてイソボロニルアクリレート(大阪有機化学工業社製、IBXA、Tg=94℃)を20質量部とトリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート(東亞合成(株)製、アロニックスM-321、Tg50℃)を10質量部、重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASFジャパン(株)製、IRGACURE184)を1.12質量部添加し、固形分濃度が30質量%となるように溶剤として酢酸エチルを添加して粘着剤組成物を得た。
【0072】
上記粘着剤組成物を、第1の剥離シート(重セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム(株)製、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)上へ塗工した。塗工は、ヨシミツ精機株式会社製、ドクターブレードYD型を用いて、乾燥後の厚みが50μmとなるように行った。その後、熱風乾燥機にて100℃で3分間乾燥させて溶剤を除去し、半硬化状態の粘着剤層を有する粘着シートを形成した。
この粘着シートの片面に第1の剥離シートより剥離性の高い離型処理が施された第2の剥離シート(軽セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム(株)製)を貼り合わせ、剥離シート付きの粘着シートである実施例1の粘着シートを得た。
【0073】
[実施例2]
ホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)が30℃以上の単量体をトリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート(東亞合成(株)製、アロニックスM-321、Tg50℃)15質量部とビスフェノールA EO変性ジアクリレート(東亞合成株式会社社製、M-211B、Tg=75℃)15質量部に変更し、重合開始剤をフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BASFジャパン(株)製、IRGACURE819に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の粘着シートを得た。
【0074】
[比較例1]
ホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)が30℃以上の単量体をトリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート(東亞合成(株)製、アロニックスM-321、Tg50℃)3質量部に変更し、ホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)が30℃未満の単量体としてイソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、ISTA、Tg=-18℃)を6質量部添加した以外は実施例1と同様にして、比較例1の粘着シートを得た。
【0075】
[比較例2]
架橋性アクリル重合体Aを架橋性アクリル重合体Bに変更し、架橋剤をエポキシ化合物N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(三菱ガス化学(株)、商品名テトラッドX)に変更し、単量体および重合開始剤を用いなかった他は実施例1と同様にして、比較例2の粘着シートを得た。
【0076】
[評価]
<剪断貯蔵弾性率G’>
粘着剤層を200μmとなるように4枚の粘着シート(1枚50μm)を重ねあわせ、半硬化状態の測定用サンプルを作製した。
粘着剤層を200μmとなるように4枚の粘着シート(1枚50μm)を重ねあわせ、重セパレータフィルムである第1の剥離シートから紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、後硬化後の測定用サンプルを作製した。
各測定用サンプルの粘着シートの粘着剤層について、動的粘弾性装置Rheogel―E4000(株式会社ユービーエム製)を用いて、個体剪断モード、周波数1Hz、歪み0.1%の条件で、0℃~150℃までの温度領域における粘着剤層の剪断貯蔵弾性率G’を測定した。
23℃および75℃における粘着剤層の剪断貯蔵弾性率G’を、下記表1に記載した。
【0077】
<ゲル分率>
剪断貯蔵弾性率G’の測定と同様にして、半硬化状態の測定用サンプルおよび後硬化後の測定用サンプルを作製した。
各測定用サンプルの粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうした。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥重量W(g)を測定した。得られた乾燥重量から下記式1によりゲル分率を求めた。
ゲル分率(質量%)=(乾燥重量/粘着シートの採取重量)×100・・・式1
【0078】
<プローブタック値>
粘着シートの軽セパレータフィルムである第2の剥離シートを剥がし、PETフィルムに貼着し、半硬化状態の測定用サンプルを作製した。
同様に粘着シートの軽セパレータフィルムである第2の剥離シートを剥がし、PETフィルムに貼着した。次に重セパレータフィルムである第1の剥離シート側から紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、後硬化後の測定用サンプルを作製した。
各測定用サンプルを3cm×3cmにカットし、プローブタック試験機にて、下記条件で測定した。
測定機器:NSプローブタックテスター(ニチバン株式会社製)
プローブ直径:5mmφ
プローブ基材:ステンレススチール表面仕上げAA#400研磨による鏡面
ウェイト:19.6g(真鍮製)
プローブ移動速度:1.0cm/秒
デュエルタイム:1秒間
【0079】
<端面ベタツキ>
重セパレータフィルムである第1の剥離シート側から紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射したA4サイズの粘着シートを50枚重ねあわせ、後硬化後の裁断用サンプルを作製した。
後硬化後の裁断用サンプルとした粘着シートをギロチン断裁機にて断裁した際のギロチン刃、粘着シートの断裁面である端面を目視判定した。
粘着シートの断裁面である端面から粘着剤のはみ出しがなく、ギロチン刃および断裁面である端面にベタツキがなく良好・・・○
粘着シートの断裁面である端面から粘着剤のはみ出しが酷く、ギロチン刃および断裁面である端面ベタツキが実用上問題となるレベルである・・・×
【0080】
<加工性>
まず、粘着剤層の軽セパレータフィルムである第2の剥離シートを剥がし、厚み25μmのPETフィルムに貼合した。
次に重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥がし、PC板に貼着した。PET/粘着剤層/PCの構成のサンプルをオートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30min)し、次いで、PETフィルム側より紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、試験サンプルを得た。次いで、試験サンプルの端部をギロチン断裁機を用いてカットし、カット端部をPC板側から手でPETフィルムを剥がすようにこすった。その際の剥がれを測定した。
剥がれ距離が0.05mm未満・・・◎
剥がれ距離が0.05mm以上0.1mm未満・・・〇
剥がれ距離が0.1mm以上・・・×
【0081】
<耐アウトガス性>
まず、粘着剤層の軽セパレータフィルムである第2の剥離シートを剥がし、厚み50μmのPETフィルムに貼合した。
次に重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥がし、PC板に貼着した。PET/粘着剤層/PCの構成のサンプルをオートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30min)し、次いで、PETフィルム側より紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、試験サンプルを得た。試験サンプルを105℃dryおよび85℃85%の環境下に置き、500時間後の気泡、剥がれを観察した。
どちらの環境下においても気泡、剥がれが観察されない・・・○
少なくとも一方の環境下において気泡、剥がれが観察される・・・×
【0082】
【表1】
【0083】
上記表1より、本発明の粘着シートは、粘着剤層が後硬化性を有し、粘着剤層が後硬化される場合に加工性に優れることがわかった。なお、本発明の粘着シートは、端面ベタツキおよび耐アウトガス性も良好であった。
比較例1より、後硬化後の粘着剤層が本発明で規定する剪断貯蔵弾性率の下限値を下回る場合は、粘着剤層が後硬化される場合に加工性が劣ることがわかった。
比較例2より、後硬化後の粘着剤層が本発明で規定する剪断貯蔵弾性率の下限値を下回り、プローブタック値の上限値を上回る場合は、粘着剤層が後硬化される場合に加工性が劣ることがわかった。
【符号の説明】
【0084】
1 粘着シート
11 粘着剤層
12a 透明基材または剥離シート
12b 剥離シート
20 積層体
21 粘着シート
22 基材
24 光学部材
27a、27b、27c、27d 段差部
図1
図2
図3