IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

特許7095715タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20220628BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20220628BHJP
   C08L 61/34 20060101ALI20220628BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220628BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220628BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L9/06
C08L61/34
C08K3/04
B60C1/00 Z
B60C15/06 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020068065
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165325
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】中島 理絵
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-205968(JP,A)
【文献】特開2015-205948(JP,A)
【文献】特開2015-205969(JP,A)
【文献】特開2015-205950(JP,A)
【文献】特開2005-290321(JP,A)
【文献】特表2007-509226(JP,A)
【文献】特表2010-502816(JP,A)
【文献】特開2015-205971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0128841(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
B60C 1/00 - 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムおよび合成イソプレンゴムからなる群より選択された少なくとも1種を50~100質量部かつスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを0~50質量部含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が25~85m/gのカーボンブラックを60~90質量部、および分子中に下記の化学式(1)で表されるアルキレンアミン由来の構造単位を少なくとも1個以上有するフェノール樹脂を1~20質量部配合してなり、
前記フェノール樹脂中における前記アルキレンアミン由来の構造単位の含有比率が、3質量%以上50質量%以下である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【化1】
(上記一般式(1)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
前記フェノール樹脂が、分子中に下記の化学式(2)で表されるエチレンアミン由来の構造単位を少なくとも1個以上有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化2】
【請求項3】
前記フェノール樹脂の軟化点が、60℃以上150℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記フェノール樹脂に対し、さらに、メチレンドナーを5~15質量%配合してなることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記メチレンドナーが、ヘキサメチレンテトラミンまたは多価メチロールメラミン誘導体であることを特徴とする請求項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
タイヤビードフィラー用である、請求項1~のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をビードフィラーに用いてなるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものであり、詳しくは、高硬度、高破断強度および低発熱性を同時に達成し得るゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは左右一対のビード部およびサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるとともにキャップトレッドとアンダートレッドとからなるトレッド部から主に構成されている。タイヤの内側にはカーカス層が設けられ、カーカス層の両端部はビード部におけるビードコアをタイヤ内側から外側へ包みこむように折り返されている。
ビード部はビードコアとその外周上の断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラーとを備えてなる。
【0003】
一方、近年の空気入りタイヤには、環境負荷低減を目的として低転がり抵抗性が求められ、この点を満たすためにビードフィラーに関しては高硬度であること、また低発熱性であることが求められている。従来、高硬度化を図るために熱硬化性樹脂を配合する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。しかし、熱硬化性樹脂を配合すると、発熱性が悪化し、また破断強度が低下するという問題点がある。
したがって、高硬度、高破断強度および低発熱性を同時に達成するのは当業界において困難な事項であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-269961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、高硬度、高破断強度および低発熱性を同時に達成し得るタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の組成のジエン系ゴムに対し、特定の比表面積を有するカーボンブラックおよび特定のフェノール樹脂を特定量でもって配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0007】
1.天然ゴムおよび合成イソプレンゴムからなる群より選択された少なくとも1種を50~100質量部かつスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを0~50質量部含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が25~85m/gのカーボンブラックを60~90質量部、および分子中に下記の化学式(1)で表されるアルキレンアミン由来の構造単位を少なくとも1個以上有するフェノール樹脂を1~20質量部配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【0008】
【化1】
【0009】
(上記一般式(1)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。)
2.前記フェノール樹脂が、分子中に下記の化学式(2)で表されるエチレンアミン由来の構造単位を少なくとも1個以上有することを特徴とする前記1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【0010】
【化2】
【0011】
3.前記フェノール樹脂中における前記エチレンアミン由来の構造単位の含有比率が、3質量%以上50質量%以下であることを特徴とする前記2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
4.前記フェノール樹脂の軟化点が、60℃以上150℃以下であることを特徴とする前記1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
5.前記フェノール樹脂に対し、さらに、メチレンドナーを5~15質量%配合してなることを特徴とする前記1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
6.前記メチレンドナーが、ヘキサメチレンテトラミンまたは多価メチロールメラミン誘導体であることを特徴とする前記5に記載のタイヤ用ゴム組成物。
7.タイヤビードフィラー用である、前記1~6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
8.前記1~6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をビードフィラーに用いてなるタイヤ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の組成のジエン系ゴムに対し、特定の比表面積を有するカーボンブラックおよび特定のフェノール樹脂を特定量でもって配合したので、高硬度、高破断強度および低発熱性を同時に達成し得るタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することができる。
本発明において、特定のフェノール樹脂を配合することにより、カーボンブラックとフェノール樹脂におけるアルキレンアミン由来の構造単位とが相互作用し、高硬度、高破断強度および低発熱性を同時に達成できるものと推測される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用されるジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)および/または合成イソプレンゴム(IR)を必須成分とする。NRおよび/またはIRの配合量は、ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに50~100質量部であることが必要である。前記NRおよび/またはIRの配合量が50質量部未満では、破断強度が悪化する。
また本発明では、必要に応じてスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を配合することができる。SBRの配合量は、ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに例えば0~50質量部であり、5~35質量部が好ましい。
なお、NR、IR、SBR以外にも他のジエン系ゴムを用いることができ、例えばブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0015】
(カーボンブラック)
本発明で使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が25~85m/gであり、30~75m/gであることが好ましい。
窒素吸着比表面積(NSA)が25m/g未満の場合、破断強度や破断伸びが悪化する。逆に85m/gを超える場合、発熱性が悪化する。
なお、窒素吸着比表面積(NSA)はJIS K6217-2に準拠して求めた値である。
【0016】
(フェノール樹脂)
本発明で使用されるフェノール樹脂は、分子中に下記の化学式(1)で表されるアルキレンアミン由来の構造単位を、少なくとも1個以上有するものである。
【0017】
【化3】
【0018】
上記一般式(1)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。Rのアルキレン基の炭素数は、例えば、1~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4である。
【0019】
フェノール樹脂は、本発明の効果向上の観点から、分子中に下記の化学式(2)で表されるエチレンアミン由来の構造単位を少なくとも1個以上有するものを含んでもよい。
【0020】
【化4】
【0021】
フェノール樹脂中におけるアルキレンアミンまたはエチレンアミン由来の構造単位の含有比率の下限は、例えば、3質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。これにより、弾性率を向上できる。一方、フェノール樹脂中におけるエチレンアミン由来の構造単位の含有比率の上限は、例えば、50質量%以下、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下でもよい。これにより、軟化点を適当に調整することができる。
エチレンアミン由来構造の含有率は、以下の式に基づいて算出できる。式中の含窒素量(質量%)は、元素分析法により測定できる。
エチレンアミン由来構造の含有率=含窒素量×(43/14)
【0022】
フェノール樹脂の軟化点は、例えば、60℃~150℃、好ましくは65℃~130℃、より好ましくは70℃~120℃である。フェノール樹脂の軟化点は、ゴムに配合したときの加熱混練時における加熱温度に応じて、適切に制御され得る。これにより、ゴム物性バラツキの少ないゴムを実現できる。
【0023】
フェノール樹脂は、フェノール類、アルデヒド類、およびアルキレンアミンの重合物で構成されてもよい。フェノール樹脂は、これらの未反応モノマーを含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0024】
フェノール類の一例としては、特に限定されないが、例えば、フェノール;オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール等のクレゾール;2、3-キシレノール、2、4-キシレノール、2、5-キシレノール、2、6-キシレノール、3、5-キシレノール等のキシレノール;2,3,5-トリメチルフェノール、2-エチルフェノール、4-エチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、イソブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール、アリルフェノール、カルダノール、ウルシオール、チチオール、ラッコール等のアルキルフェノール;1-ナフトール、2-ナフトール等のナフトール;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール、p-フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体;レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン、ナフタレン等の多価フェノール;などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、フェノール類は、フェノール、クレゾール、キシレノールおよびアルキルフェノールからなる群より選ばれた1種以上を含ことができ、安価な観点から、フェノールを用いることができる。
【0025】
アルデヒド類としては、特に限定されないが、例えば、ホルマリンやパラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド;トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも、アルデヒド類は、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドを含むことができ、生産性および安価な観点から、ホルマリンまたはパラホルムアルデヒドを用いることができる。
【0026】
アルキレンアミンは、分子内に、炭素数1~10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を1個以上備える脂肪族アミンを用いることができる。脂肪族アミンは、1個以上の一級アミン及び/又は二級アミンを含む化合物であってもよい。例えば、脂肪族アミンとして、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ポリエチレンイミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラアミン、テトラプロピレンペンタアミン、ペンタプロピレンヘキサアミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンポリアミンが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
詳細なメカニズムは定かではないが、アルデヒド類が、フェノール類およびアルキレンアミンの両方に反応すると考えられる。
【0028】
フェノール樹脂を合成する際に用いる触媒は、無触媒でも構わないし、ノボラック型フェノール樹脂を製造する観点から、酸性触媒を用いることができる。酸性触媒としては、特に限定するものではないが、例えば、蓚酸、塩酸、硫酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の酸類、酢酸亜鉛等の金属塩類が挙げられ、これらを単独または2種類以上併用して使用できる。
【0029】
フェノール樹脂を合成する際に用いる反応溶媒としては、水を用いてもよいが、有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤としては、非極性溶媒を用いて非水系を用いることができる。有機溶剤の一例としては、例えば、アルコール類、ケトン類、芳香族類で、アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等で、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等で、芳香族類としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
また、フェノール類(P)とアルデヒド類(F)のモル比(F/Pモル比)は、フェノール類1モルに対し、例えば、アルデヒド類を0.2~1.0モルとしてもよく、好ましくは0.3~0.9モルとすることができる。アルデヒド類を上記範囲とすることで、未反応フェノール量を少なくすることができ、歩留まりを上げることができる。また、フェノール類(P)とアルデヒド類(F)の反応モル比(F/P)を1.0以下の条件、すなわち、モル比換算でフェノールリッチの条件を制御することで、適度な軟化点を有するアルキレンアミン由来の構造単位を含むフェノール樹脂が得られ、このようなフェノール樹脂は、加熱条件下での混合・混練によってゴム中に良好に相溶または分散させることが可能である。
【0031】
また、反応温度は、例えば、40℃~120℃としてもよく、好ましくは60℃~110℃としてもよい。なお、反応時間は、特に制限はなく、出発原料の種類、配合モル比、触媒の使用量及び種類、反応条件に応じて適宜決定すればよい。
【0032】
以上により、本発明で使用されるフェノール樹脂を得ることができる。フェノール樹脂は、分子中に、ノボラック骨格及び前記エチレンアミン由来の構造単位を有するノボラック型フェノール樹脂を含んでもよい。
【0033】
(タイヤ用ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が25~85m/gのカーボンブラックを60~90質量部、および分子中に下記の化学式(1)で表されるアルキレンアミン由来の構造単位を少なくとも1個以上有するフェノール樹脂を1~20質量部配合してなることを特徴とする。
カーボンブラックの配合量が60質量部未満であると貯蔵弾性率が低下する。逆に90質量部を超えると発熱性が悪化する。
前記フェノール樹脂の配合量が1質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量部を超えると破断強度および発熱性が悪化する。
【0034】
また、本発明のゴム組成物において、前記カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、65~80質量部であることが好ましい。
前記フェノール樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、8~18質量部であることが好ましい。
【0035】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0036】
なお本発明におけるゴム組成物は、前記フェノール樹脂の硬化のためにメチレンドナーを使用することもでき、その種類としてはとくに制限されないが、例えばヘキサメチレンテトラミン、HMMM(ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物)、PMMM(ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物)のような多価メチロールメラミン誘導体、ヘキサエトキシメチルメラミン、パラ-ホルムアルデヒドのポリマー、メラミンのN-メチロール誘導体等が挙げられ、本発明の効果向上の観点から、ヘキサメチレンテトラミンまたは多価メチロールメラミン誘導体が好ましい。
【0037】
メチレンドナーの配合量は、前記フェノール樹脂に対し、5~15質量%が好ましい。
【0038】
また本発明のゴム組成物は、高硬度、高破断強度および低発熱性を同時に達成し得ることから、タイヤのビードフィラーに用いることがとくに好ましい。
この形態において、加硫ゴムのJISA硬度(20℃)は、75超ないし90以下であることが好ましい。
また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
また本発明のゴム組成物は、従来のタイヤ、例えば空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例
【0039】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。なお、例中、部となるのは特記しない限り質量基準である。
【0040】
<フェノール樹脂の合成>
(製造例1)
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応器に、フェノール1000部、37%ホルマリン水溶液561部、トリエチレンテトラアミン55部を仕込み、還流条件下で2時間反応させた。ついで水を蒸留除去しながら200℃で3時間反応させた。さらに所定の水分、遊離モノマー量になるまで減圧下で水、未反応モノマーの蒸留除去を行った後、反応器から取り出し、フェノール樹脂1を得た。
フェノール樹脂1の、軟化点は110℃であり、含窒素量は2.2質量%であり、エチレンアミン由来構造の含有率は6.8質量%であった。
【0041】
(製造例2)
37%ホルマリン水溶液の配合量を518部、トリエチレンテトラアミンの配合量を110部としたこと以外は、製造例1と同様にしてフェノール樹脂2を得た。
フェノール樹脂2の、軟化点は108℃であり、含窒素量は4.1質量%であり、エチレンアミン由来構造の含有率は12.6質量%であった。
【0042】
(製造例3)
37%ホルマリン水溶液の配合量を500部、トリエチレンテトラアミンの配合量を165部としたこと以外は、製造例1と同様にしてフェノール樹脂3を得た。
フェノール樹脂3の、軟化点は102℃であり、含窒素量は6.4質量%であり、エチレンアミン由来構造の含有率は19.7質量%であった。
【0043】
標準例1~4、実施例1~13および比較例1~10
サンプルの調製
表1、2に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0044】
貯蔵弾性率:JIS K6394に準拠し、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメータにより20℃で測定した。結果は、各標準例の値を100として指数で示した。この値が大きいほど、高硬度であることを示す。
破断強度(TB):JIS K 6251に従い、20℃で試験した。結果は、各標準例の値を100として指数で示した。この値が大きいほど、高破断強度であることを示す。
発熱性(tanδ60℃):(株)東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用い、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。結果は、各標準例の値を100として指数で示した。この値が小さいほど、低発熱性であることを示す。
結果を表1、2に併せて示す。
【0045】
なお、実施例1~3は標準例1と対比され、実施例4~6および比較例1~5は標準例2と対比され、実施例7~9は標準例3と対比され、実施例10~12および比較例6~10は標準例4と対比される。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
*1:NR(STR20)
*2:SBR(日本ゼオン株式会社製Nipol 1502)
*3:カーボンブラックHAF(キャボットジャパン社製N330T、窒素吸着比表面積(NSA)=70m/g)
*4:カーボンブラックGPF(キャボットジャパン社製N660、窒素吸着比表面積(NSA)=36m/g)
*5:カーボンブラックISAF(キャボットジャパン社製N234、窒素吸着比表面積(NSA)=118m/g)
*6:ストレートフェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製PR50731。アルキレンアミン由来の構造単位を持たない。)
*7:フェノール樹脂1(前記製造例1で製造したフェノール樹脂1)
*8:フェノール樹脂2(前記製造例2で製造したフェノール樹脂2)
*9:フェノール樹脂3(前記製造例3で製造したフェノール樹脂3)
*10:メチレンドナー(大内新興化学工業株式会社製ヘキサメチレンテトラミン)
*11:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*12:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*13:オイル(昭和シェル石油株式会社製エキストラクト4号S)
*14:硫黄(細井化学工業株式会社製油処理イオウ)
*15:加硫促進剤(大内新興化学工業株式会社製ノクセラーCZ-G)
【0049】
表1、2の結果から、実施例1~12のゴム組成物は、特定の組成のジエン系ゴムに対し、特定の比表面積を有するカーボンブラックおよび特定のフェノール樹脂を特定量でもって配合したので、各標準例に比べて、高硬度、高破断強度および低発熱性を同時に達成し得ることが分かった。
これに対し、比較例1、6は特定のフェノール樹脂を配合していないので、硬度が低下した。
比較例2、7は、特定のフェノール樹脂の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、破断強度が改善されず、発熱性が悪化した。
比較例3、8は、カーボンブラックの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性が悪化した。
比較例4、9は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が本発明で規定する範囲外であるので、破断強度が悪化した。
比較例5、10は、NRの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、破断強度が悪化した。