(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】オーブン制御型MEMS発振器及びシステム及びそれを校正する方法
(51)【国際特許分類】
H03B 5/30 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
H03B5/30 F
H03B5/30 Z
(21)【出願番号】P 2020519060
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(86)【国際出願番号】 US2018034185
(87)【国際公開番号】W WO2019070315
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-04-02
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】カーヤカリ ヴィレ
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092517(JP,A)
【文献】特開2011-205166(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051023(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/205770(WO,A1)
【文献】特開2013-038598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0218279(US,A1)
【文献】特開2012-257246(JP,A)
【文献】特表2007-524303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B5/30-H03B5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーブン制御型MEMS発振器のための校正システムであって、
前記オーブン制御型MEMS発振器は、
フレームと、
前記フレーム内に配置され、前記フレームとの間にキャビティが形成された少なくとも1つの支持梁によって前記フレームに固定されたプラットフォームと、
前記プラットフォームに結合された共振子と、
を含み、
複数の所定の目標設定値の各々を別々に選択するように、及び、各々の前記選択された所定の目標設定値に基づいて前記オーブン制御型MEMS発振器の設定値を調節するために前記オーブン制御型MEMS発振器のヒータを制御するように、構成された少なくとも1つのプロセッサを含んだ制御回路と、
各々の前記選択された所定の目標設定値に対応する各々の調節された設定値における、前記オーブン制御型MEMS発振器のそれぞれの発振周波数を計測するように構成された発振計測回路と、
前記複数の所定の目標設定値を格納するように構成された電子メモリと、
を備え、
前記複数の所定の目標設定値は、前記電子メモリに予め格納された複数の電圧値であり、
前記制御回路は、前記電子メモリに予め格納された前記複数の電圧値に対する前記計測された発振周波数の放物線型の曲線に基づいて、電圧値である最適目標設定動作値を決定し、前記決定された最適目標設定動作値に基づいて前記オーブン制御型MEMS発振器を校正するように構成される、
校正システム。
【請求項2】
前記選択された所定の目標設定値の各々と、前記オーブン制御型MEMS発振器の内部の温度センサによって出力される温度計測信号との間の差に基づいて前記ヒータを制御するように構成された熱制御回路をさらに備える、
請求項1に記載の校正システム。
【請求項3】
前記温度センサはサーミスタであり、前記温度計測信号は、前記サーミスタによって計測される温度電圧である、
請求項2に記載の校正システム。
【請求項4】
前記熱制御回路は、前記温度計測信号と前記それぞれの選択された所定の目標設定値との間の差を出力するように構成された差動増幅器である、
請求項3に記載の校正システム。
【請求項5】
前記制御回路は、前記温度計測信号と前記それぞれの選択された所定の目標設定値との間の差を最小にするように前記ヒータを制御し、前記ヒータに加えられるヒータ電流を駆動するための制御ループを備える、
請求項4に記載の校正システム。
【請求項6】
前記熱制御回路は、各々の前記選択された所定の目標設定値と前記温度計測信号との間の差に基づいてヒータを制御するように構成された比例積分微分(PID、proportional-integral-derivative)制御器である、
請求項2に記載の校正システム。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記計測された発振周波数の、対応する前記選択された所定の目標設定値に対する曲線を生成することによって前記最適目標設定動作値を決定し、
前記生成された曲線の多項式フィットを行い、前記多項式フィット内でゼロに等しい前記設定値として前記最適目標設定動作値を識別するように構成される、
請求項1に記載の校正システム。
【請求項8】
前記制御回路は、前記決定された最適目標設定動作値を前記オーブン制御型MEMS発振器の不揮発性メモリに格納し、前記決定された最適目標設定動作値に基づいて、動作中に前記オーブン制御型MEMS発振器を加熱するように前記オーブン制御型MEMS発振器の前記ヒータが制御されるようにすることによって、前記オーブン制御型MEMS発振器を校正するように構成される、
請求項7に記載の校正システム。
【請求項9】
前記オーブン制御型MEMS発振器は、
前記プラットフォーム上に配置され、前記選択された所定の目標設定値の各々により前記ヒータを制御するための温度計測信号を出力するように構成された温度セン
サを含
む、
請求項1
から8のいずれか1項に記載の校正システム。
【請求項10】
前記共振子はバルク音響モード共振子である、
請求項9に記載の校正システム。
【請求項11】
オーブン制御型MEMS発振器を校正する方法であって、
前記オーブン制御型MEMS発振器は、
フレームと、
前記フレーム内に配置され、前記フレームとの間にキャビティが形成された少なくとも1つの支持梁によって前記フレームに固定されたプラットフォームと、
前記プラットフォームに結合された共振子と、
を含み、
複数の所定の目標設定値の各々を別々に選択するステップと、
前記選択された所定の目標設定値の各々に基づいて、前記オーブン制御型MEMS発振器の設定値を調節するように、前記オーブン制御型MEMS発振器内部のヒータを制御するステップと、
前記選択された所定の目標設定値の各々に対応する各々の調節された設定値において、前記オーブン制御型MEMS発振器のそれぞれの発振周波数を、発振計測回路によって計測するステップと、
前記複数の所定の目標設定値は、電子メモリに予め格納された複数の電圧値であり、前記電子メモリに予め格納された前記複数の電圧値に対する前記計測された発振周波数の放物線型の曲線に基づいて、電圧値である最適目標設定動作値を決定するステップと、
前記決定された最適目標設定動作値に基づいて、前記オーブン制御型MEMS発振器を校正するステップと、
を含む、
校正する方法。
【請求項12】
前記オーブン制御型MEMS発振器の内部の温度センサにより温度計測信号を出力するステップと、
前記温度計測信号と現在選択されている所定の目標設定値との間の差を最小にするために前記オーブン制御型MEMS発振器を加熱するように前記ヒータを駆動するように前記ヒータを制御するステップと、
をさらに含む、
請求項11に記載の校正する方法。
【請求項13】
前記計測された発振周波数の、対応する前記現在選択されている所定の目標設定値に対する曲線を生成することにより、前記最適目標設定動作値を決定するステップと、
前記生成された曲線の多項式フィットを実行するステップであって、前記多項式フィットにおいてゼロに等しい設定値として前記最適目標設定動作値を識別するステップと、
をさらに含む、
請求項12に記載の校正する方法。
【請求項14】
前記オーブン制御型MEMS発振器の前記ヒータが、前記決定された最適目標設定動作値に基づく動作中に前記オーブン制御型MEMS発振器を加熱するために制御されるように、前記決定された最適目標設定動作値を前記オーブン制御型MEMS発振器の不揮発性メモリに格納することによって、前記オーブン制御型MEMS発振器を校正するステップをさらに含む、
請求項13に記載の校正する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS発振器に関し、より具体的には、小型の優れた温度安定性を有するオーブン制御型MEMS発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶は、発振回路内の基準周波数を与えるために広く用いられている。水晶共振子が振動する周波数はその物理的寸法に依存する。さらに、温度の変化は熱膨張により水晶を膨張又は収縮させ、水晶の弾性率の変化を引き起こす。この物理的変化が次に結晶発振周波数を変化させる。水晶は、周波数の非常に低い温度計数を有するが、それでもなお温度変化は水晶発振器における周波数変動の主要な原因である。
【0003】
水晶発振器が温度制御されたオーブン内に配置されるオーブン制御型水晶発振器(「OCXO」、Oven controlled crystal oscillators)は、周波数基準デバイスである。オーブンは、周囲温度の変動による周波数の変化を防ぐために、発振器を一定温度に維持するために供給される。この型の発振器は、水晶による可能な最も高い周波数安定性を達成する。OCXOは、典型的には、例えば、無線送信機、セルラー基地局、軍用通信機器、及び、精密周波数計測用デバイスの周波数を制御するために用いられる。
【0004】
OCXOに関して、オーブンは、結晶及び1つ又はそれ以上の電気的加熱素子を含む断熱収納装置である。発振器回路内の他の電子部品もまた温度ドリフトを受け易いので、通常、発振器回路全体がオーブン中に封入される。これらのデバイスのために、サーミスタなどの温度センサがオーブン温度を監視するために設けられ、閉ループ制御回路が、オーブンを正確な目標温度に維持するために、ヒータへの電力を制御するために設けられる。オーブンは周囲より高い温度で動作するので、発振器は、通常、電力を加えられた後、数分間のウォームアップ期間を必要とする。さらにデバイスの周波数は、このウォームアップ期間中、フルレートの安定性を有しないことになる。
【0005】
既存のOCXOは、一般に優れた安定性(例えば、典型的には、指定された温度範囲にわたって10億分の(「ppb」、parts per billion)100より良い)をもたらすが、これらのデバイスはまた幾つかの欠点を有する。第1に、典型的な水晶はかなり大きく、このことが最終的なOCXOデバイスを相当に大きくする。タイミングデバイスの製造コストはサイズに比例するので、より大きなOCXOサイズは好ましくない。第2に、加熱及び冷却のための長い熱時定数が、非常に長い起動時間をもたらす。例えば、オーブンを目標温度に安定化するために、典型的には数分間かかる。第3に、オーブン温度を維持するために必要な電力がかなり大きい。例えば、典型的なOCXOは、オーブンを加熱するために1ワット超を消費する。最後に、オーブン内の温度勾配のために、結晶温度は一定ではなく、-40~85Cの周囲温度範囲にわたり+/-1K変化する可能性がある。
【0006】
一般に、微小電気機械システム(「MEMS」、microelectromechanical system)共振子は、高周波数で振動する小さい電気機械構造体であり、水晶共振子の代わりに使用されることが多い。従って、速い起動時間を有する非常に小さいタイミングデバイスを与えることができるオーブン制御型MEMS発振器は、多くの用途に著しい利益をもたらし得る。残念なことに、MEMSプロセスは、広範囲の物理的トリミングなしには、高精度のクロックを実現するのに十分ではない。
【0007】
そのようなオーブン制御型MEMS発振器デバイスの精度の課題は、例えば
図1に示される。一般に、オーブン制御型MEMS発振器用途のために意図された典型的なMEMS共振子は、名目のターンオーバー温度T
turn=85℃を伴う放物線型温度依存性を有する。これは、デバイスが、85℃の温度に加熱されたオーブン内に配置されるとき、このターンオーバー温度の周りのオーブンの小さい温度揺らぎが、発振周波数に小さな影響のみを及ぼすであろうことを意味する。例えば、MEMS共振子の典型的な放物線型温度依存性は、-40ppb/K
2である。従って、オーブン温度が、ターンオーバー温度T
turn=85℃の周りで+/-0.5Kだけ変化する場合、対応する発振周波数の変化は丁度10ppbであり、これは殆どの用途に対して容認できる。
【0008】
しかし、MEMS共振子の製造ばらつきのため、ターンオーバー温度は、
図1に示されるように+/-5K変化する可能性があり、これは発振周波数のばらつきを増す。例えば、図示されるように、ターンオーバー温度が90℃で、オーブン温度が85℃の場合、+/-0.5Kのオーブン温度揺らぎが、+/-200ppbの周波数揺らぎを引き起こし得る。この発振のばらつきは、高精度クロック用途にはあまりにも著しすぎる
【発明の概要】
【0009】
本開示は、上述のような既存のOCXOデバイスの技術的不利点を、非常に低い電力で非常に迅速に加熱することができる非常に小さい発振器を含むオーブン制御型MEMSタイミングデバイスを提供することによって、克服する。さらに、製造中にデバイス毎に生じ得る部品のばらつきを補正するように、オーブン制御型MEMSタイミングデバイスを校正するための校正システムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、例示的な一態様により、オーブン制御型MEMS発振器のための校正システムが提供される。この例示的な態様において、校正システムは、複数の所定の目標設定値の各々を別々に選択し、選択された所定の目標設定値の各々に基づいてオーブン制御型MEMS発振器の設定値を調節するために、オーブン制御型MEMS発振器のヒータを制御するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含んだ制御回路と、選択された所定の目標設定値の各々に対応する各々の調節された設定値においてオーブン制御型MEMS発振器のそれぞれの発振周波数を計測するように構成された発振計測回路と、を含む。さらに、制御回路は、計測された発振周波数に基づいて最適目標設定動作値を決定し、決定された最適目標設定動作値に基づいてオーブン制御型MEMS発振器を校正するように構成される。
【0011】
例示的態様の一改善において、校正システムは、複数の所定の目標設定値を格納するように構成された電子メモリを含むことができる。
【0012】
例示的態様の別の改善において、校正システムは、選択された所定の目標設定値の各々と、オーブン制御型MEMS発振器の内部の温度センサによって出力された温度計測信号との差に基づいて、ヒータを制御するように構成された熱制御回路を含むことができる。
【0013】
さらに、温度センサはサーミスタとすることができ、温度計測信号はサーミスタによって計測される温度電圧である。一態様において、熱制御回路は、温度計測信号とそれぞれの選択された所定の目標設定値との間の差を出力するように構成された差動増幅器である。別の態様において、熱制御回路は、選択された所定の目標設定値の各々と温度計測信号との間の差に基づいてヒータを制御するように構成された比例積分微分(PID、proportional-integral-derivative)制御器である。
【0014】
さらに、校正システムは、温度計測信号とそれぞれの選択された所定の目標設定値との間の差を最小にしてヒータに加えられるヒータ電流を駆動するように、ヒータを制御するための制御ループを含むことができる。
【0015】
例示的な一態様において、制御回路は、計測された発振周波数の、対応する選択された所定の目標設定値に対する曲線を生成することによって最適目標設定動作値を決定し、生成された曲線の多項式フィットを実行し、多項式フィットにおいてゼロに等しくなる設定値として最適目標設定動作値を識別するために、設けられる。
【0016】
別の態様において、制御回路は、決定された最適目標設定動作値をオーブン制御型MEMS発振器の不揮発性メモリに格納することにより、決定された最適目標設定動作値に基づく動作中にオーブン制御型MEMS発振器のヒータがオーブン制御型MEMS発振器を加熱するように制御されるように、オーブン制御型MEMS発振器を校正するように構成される。
【0017】
オーブン制御型MEMS発振器は、例えば、フレームと、フレームによって配置されるプラットフォームと、プラットフォームに結合された共振子と、プラットフォーム上に配置され、選択された所定の目標設定値の各々によりヒータを制御するための温度計測信号を出力するように構成された温度センサと、を含むことができる。さらに、ヒータは、プラットフォーム上に配置することができ、オーブン制御型MEMS発振器の設定値を調節するようにプラットフォームを加熱するように構成される。この態様の改善において、共振子はバルク音響モード共振子である。
【0018】
さらに別の例示的態様において、シリコンプラットフォームと、シリコンプラットフォームに結合された共振子と、シリコンプラットフォームに結合され、オーブン制御型MEMS発振器デバイスの動作中に温度計測信号を出力するように構成された温度センサと、プラットフォームに結合され、熱制御信号に基づいてオーブン制御型MEMS発振器デバイスを加熱するように構成されたヒータと、目標設定値を格納するように構成された不揮発性電子メモリを含むオーブン制御型MEMS発振器デバイスが提供される。オーブン制御型MEMS発振器デバイスはさらに、格納された目標設定値と、温度センサから出力された温度計測信号との間の差に基づいて熱制御信号を生成するように構成された熱制御回路を含む。さらに、熱制御回路は、格納された目標設定値と温度計測信号との間の差を最小にするようにヒータを調節することによって熱制御信号を最小にするように構成される。
【0019】
さらに別の態様において、オーブン制御型MEMS発振器を校正する方法が提供される。例示的な態様において、本方法は、複数の所定の目標設定値の各々を別々に選択するステップと、選択された所定の目標設定値の各々に基づいてオーブン制御型MEMS発振器の設定値を調節するためのオーブン制御型MEMS発振器内部のヒータを制御するステップと、発振計測回路によって、選択された所定の目標設定値の各々に対応する各々調節された設定値におけるオーブン制御型MEMS発振器のそれぞれの発振周波数を計測するステップと、計測された発振周波数に基づいて最適目標設定動作値を決定するステップと、決定された最適目標設定動作値に基づいてオーブン制御型MEMS発振器を校正するステップと、を含む。
【0020】
上述の例示的実施形態の簡易要約は、本開示の基本的理解を与えるのに役立つ。この要約は、全ての考慮される態様の広範囲の概要ではなく、全ての態様のキーとなる又は重要な要素を明らかにすることを意図したものでも、本開示のいずれかの又は全ての態様の範囲を叙述することを意図したものでもない。その唯一の目的は、以下の本開示のより詳細な説明への序文として簡単化された形態における1つ又はそれ以上の態様を提示することである。上述のことの遂行のために、本開示の1つ又はそれ以上の態様は、特許請求の範囲において説明され、具体的に指摘される特徴を含む。
【0021】
本明細書に組み込まれ、その一部分を構成する添付の図面は、本開示の1つ又はそれ以上の実施形態を示し、詳細な説明と共に、それらの原理及び実施を説明するのに役立つ。提供される図面は、例証目的のみのためであり、従って、一定の尺度で描かれてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】製造ばらつきによるオーブン制御型MEMS発振器デバイスの精度課題を示すグラフを与える。
【0023】
【
図2A】例示的な一実施形態によるオーブン制御型MEMS共振装置の外側斜視図を示す。
【0024】
【
図2B】例示的な一実施形態による、
図2AのMEMS共振装置の断面図を示す。
【0025】
【
図2C】別の例示的な実施形態による、
図2AのMEMS共振装置の断面図を示す。
【0026】
【
図3】
図2B及び2Cに示されるA―B線に沿って描かれた、オーブン制御型MEMS共振装置の横断面図である。
【0027】
【
図4】
図2B及び2Cに示されるC―D線に沿って描かれた、オーブン制御型MEMS共振装置の横断面図である。
【0028】
【
図5】
図2B及び2Cに示されるA―B線に沿って描かれた、オーブン制御型MEMS共振装置の別の横断面図である。
【0029】
【
図6】例示的な一実施形態によるMEMS共振装置100を含むタイミングデバイスを示す。
【0030】
【
図7】例示的な一実施形態によるオーブン制御型MEMS発振器デバイスを示す。
【0031】
【
図8】例示的な一実施形態によるオーブン制御型MEMS発振器を校正するためのシステムのブロック図を示す。
【0032】
【
図9】例示的な一態様によるMEMSプラットフォームの校正を実行するための適用される設定値に対する、得られたHz単位の発振周波数のグラフを示す。
【0033】
【
図10A】例示的な一実施形態によるオーブン制御型MEMS発振器のブロック図を示す。
【0034】
【
図10B】別の例示的な実施形態によるオーブン制御型MEMS発振器のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書において例示的な態様は、既存の発振器デバイスの多くの技術的不利益を克服するオーブン制御型MEMS発振器の文脈において説明される。具体的には、本明細書で開示されるオーブン制御型MEMS発振器は、非常に低い電力で非常に迅速に加熱することができる小型の発振器である。
【0036】
当業者であれば、以下の説明は例証のみであって、なんら限定することを意図したものではないことを認識するであろう。他の態様はそれら自体で、本開示の利益を有することを当業者に対して容易に示唆するであろう。ここで、添付の図面に示される例示的な態様の実施について詳細に言及するであろう。同じ参照標識が、図面及び以下の説明を通して同じ又は類似の項目を参照するために、可能な限り用いられることになる。
【0037】
図2Aは、例示的な一実施形態によるオーブン制御型MEMS共振装置の外側斜視図を示す。図示されるように、MEMS共振装置100は、基板110の上に設けられるフレーム112及びキャップ114を含む。以下で論じられ
図3に示されるように、例えば、基板110はその中央領域に凹形キャビティCを、MEMS共振装置100内部の共振子がキャビティCの上方で振動することができるように、含む。
【0038】
好ましくは、例示的な実施形態のMEMS共振装置100は、例えば、Marc J. MadouによるCRC Press, 2011「Fundamentals of Microfabrication and Nanotechnology, Volume II: Manufacturing Techniques for Microfabrication and Nanotechnology」に記載されているMEMS製造技術を用いて製造される。従って、例示的な実施形態により、MEMS共振装置100は、チップスケールにパッケージされた(「CSP」、chip scale packaged)MEMS共振装置である。好ましくは、MEMS共振装置100は、シリコン製基板110、絶縁体上シリコン(「SOI」、silicon-on-insulator)製のフレーム112、及び外部に見えるキャップ114を有するキャビティSOIウェハで製造される。さらに図示されるように、複数の電気的コンタクトパッド(例えば、コンタクトパッド116A~116D)が、当業者には理解され、一例が
図6に示され以下で論じられるように、共振装置を発振回路に接続するためにキャップ114の上に設けられる。
【0039】
図2Bは、例示的な一実施形態による、
図2AのMEMS共振装置100の断面図を示す。さらに
図2Cは、別の例示的な実施形態による、
図2AのMEMS共振装置の断面図を示すが、その詳細は以下で論じられるであろう。
図2B及び2Cに示される図は、キャップ114が取り付けられていないフレーム112の断面に沿って描かれたMEMS共振子デバイス100の断面図である。
【0040】
図2Bに示されるように、MEMS共振装置100は、矩形板上に配置され、振動部120の向き合う第1の側面に結合される2つの細いアンカー梁126A及び126Bによって加熱プラットフォーム134に固定される振動部120を含む。例示的な一実施形態により、振動部120は面内モード(即ち、ほぼx/y面内の運動)で振動するバルク音響モード振動体であることが好ましく、その理由はこれらの型のモードがより高いQ(機械的品質係数)及び耐電力特性をもたらすからである。例えば、この態様により、振動モードは幅広がりモード及びラーメモード(Lame-mode)であることが好ましい。さらに、例示的な実施形態により、細いアンカー梁126A及び126Bは、振動部120から加熱プラットフォーム134への振動エネルギー損失を最小にする。
【0041】
振動部120とプラットフォーム134との間の、アンカー梁126A及び126Bを通しての振動カップリングにより、振動部120とプラットフォーム134の振動を結合する不必要な共鳴の危険性が存在する。これら不必要なスプリアスを最小にするために、プラットフォーム134は機械的に堅いことが必要である。さらに、例示的な一実施形態により、プラットフォーム134が完全に振動部120を取り囲み、振動部120を囲むプラットフォーム134の幅135(即ち、プラットフォーム134の外側縁部とキャビティ128との間)がプラットフォーム134の厚さの少なくとも2倍、好ましくは振動部120の厚さの少なくとも4倍であるとき、不必要なスプリアスを最小にすることができる。
【0042】
さらに図示されるように、加熱プラットフォーム134は、プラットフォーム134を加熱するオーブン効果をもたらすヒータ122と、加熱プラットフォーム134の温度を計測するために準備される温度センサ、即ち、サーミスタ130とを含む。さらに、プラットフォーム134は、加熱プラットフォーム134をパッケージフレーム112に接続する支持梁124A及び124Bによって支持される。支持梁124A及び124Bは、プラットフォーム134に実質的に一つの端部で接続される。この配置は、熱がこの端部から、プラットフォーム134から流出するので、プラットフォーム134にわたるほとんど均一な熱分布を確実にするので有利である。図示されるように、支持梁124A及び124Bは、キャビティ(例えば、梁124Aに沿った140A及び140B)と共に垂直に(即ち、y方向に)に延び、さらに各々の支持梁124A及び124Bの両側を延びる。その結果、加熱プラットフォーム134は、フレーム112から熱的に分離される。支持梁124A及び124Bの対の対称構造は、機械的衝撃に対する優れた支持をもたらす。さらに、梁がプラットフォーム134の長さを超えて延びる場合、支持梁124A及び124Bの長い長さはプラットフォーム134の優れた断熱を保証する。
【0043】
図2Bに示されるように、支持梁124A及び124Bの対の各々は、共振子の幅方向に(即ち、x方向に)延びる短い第1の部分と、共振子の長手方向に(即ち、y方向に)及びプラットフォームの側面に平行に延びる第2の長い部分と、再び共振子の幅方向に(即ち、x方向に)延び、プラットフォームの一端部のそれぞれの側に結合される第3の部分とを含む。代替的実施形態により、支持梁124A及び124Bに対して代替的な構造配置を設けることができる(例えば、プラットフォーム134をフレーム112に固定するために単一の支持梁を用いることができる)こと、及び/又は、付加的な支持梁を設けることができることを認識されたい。
【0044】
さらに、例示的な一実施形態により、ヒータ122は支持梁124A及び124Bの近く(例えば、支持梁124Aと124Bとの間、又はそれらがプラットフォーム134に取り付けられる場所に隣接して)に配置される。図示されるように、支持梁124A及び124Bは、加熱プラットフォーム134の第1の端部の側面に取り付けられる。ヒータ122は、支持梁124A及び124Bに、ヒータ122と振動部120との間に配置されたサーミスタが取り付けられる加熱プラットフォーム134の側面の間、を延びる。好ましい実施形態において、サーミスタ130は、振動部120の2つの側面の上(即ち、振動部120とヒータ122との間、及び振動部120とサーミスタ130の反対側のプラットフォーム134の側面との間)に配置される。これは、プラットフォーム内に何らかの温度勾配が存在する場合、サーミスタがプラットフォーム内の平均温度を読み取るであろうことを保証する。
【0045】
この配置によれば、ヒータ122がオンのとき、ヒータ122によって発生される熱出力がプラットフォーム134の温度を上昇させ、熱は梁124A及び124Bを通して流れる。定常状態において、熱出力と熱流とは均衡し、実質的に全ての熱出力が支持梁124A及び124Bを通して流れる。この熱流のために支持梁124A及び124Bを横切って大きい温度勾配が存在する。しかし、熱流がヒータ122から支持梁124A及び124Bまでであるので、プラットフォーム134の残りの部分は均一な温度にある。ヒータ122が、支持梁124A及び124Bの接続点に比べてプラットフォームの反対側に配置されたとすると、ヒータ122から支持梁124A及び124Bへのプラットフォーム134を横切る一定熱流が存在することになり、大きい温度勾配及び不十分な温度制御をもたらす。換言すれば、好ましい実施形態において、ヒータ122は一つの側面上の支持梁124A及び124Bと振動部120との接続部によって定められる領域内に配置し、温度センサ130はプラットフォーム134の他の側面上に配置する必要がある。
【0046】
代替的な一実施形態によれば、ヒータ122は、例えば、
図2Bに示されるように、支持梁124A及び124B自体の上に配置することができる一対の加熱素子を含む。
図2Cは
図2Bの代替的な一実施形態を示すが、別の点では、支持梁124A及び124B上のヒータ122の配置を除いて、同じ構成要素を有する。従って、
図2Cの同一の構成要素は、ここでは別に説明されないであろう。
【0047】
ヒータ122を支持梁124Aと124Bとの間(即ち、
図2B)又は支持梁124A及び124Bの上(即ち、
図2C)に配置することにより、これらの配置は均一な又は実質的に均一なプラットフォーム温度プロファイルをもたらす。さらに、サーミスタ130(単数又は複数)を、振動部120の温度を正確に計測できることを保証するために、振動部120の近傍に配置する必要がある。
図2B及び2Cに示されるように、サーミスタ130は、加熱プラットフォーム134の上、両方のアンカー梁126A及び126Bに隣接して配置される。さらに図示されるように、振動部120を保持する矩形板を囲み、振動部120の2つの第2の対向側面を含むキャビティ128が存在し、その対向面を除けば、振動部120はアンカー梁126A及び126Bによって加熱プラットフォーム134に固定される。アンカー梁126A及び126Bは振動部120に振動部の振動の節近傍(例えば、振動中の振動部の中心線)で接続し、振動部120からプラットフォーム134へのエネルギー漏れを最小にし、振動部120と加熱プラットフォーム134との別々の最適化を可能にする。例示的な実施形態において、振動部120は幅広がり型バルク音響モード振動体であり、2つのアンカー梁126A及び126Bは、矩形振動部120の2つの短辺における振動の節に接続する。そのような実施形態において、他の振動体が使用される場合、アンカー梁の数は変えることができる。例えば、ラーメモード共振子に対して、梁の隅に固定するために4つのアンカー梁を用いることができる。いずれの配置においても、振動部120は、MEMS共振子装置100の動作中、キャビティ128の中で振動することができる。さらに、加熱プラットフォーム134は矩形形状であり、振動部を取り囲む。
【0048】
さらに、
図2Aに関して上述したように、キャップ114は複数の電気的コンタクトパッド116A~116Dを含む。
図2Cに示されるように、MEMS共振装置100は、キャップ114内の電気的コンタクトパッド116A~116Dに電気的に結合された複数の電気的ビアコンタクト136(1つのみのビアコンタクトが参照数字136でマーク付けされている)を含む。さらに、フレーム112は、当業者には理解されるように、デバイス100の製造中にキャップ114へのフレーム112の接合を容易にする金属接合リング132を含む。
【0049】
さらに、例示的な一実施形態により、及び以下でより詳細に論じられるように、サーミスタ130、ヒータ122、及び振動部120の電極層(単数又は複数)は、製造中に、同じ金属(例えば、モリブデン)を堆積させることによって形成することができる。これらの構成要素のために同じ材料を用いることは、当業者には認識されるように、製造ステップを減らし、製造コストを最小にするのに役立つ。
【0050】
図3は、
図2B及び2Cに示されるA―B線に沿って描かれたオーブン制御型MEMS共振装置100の断面図である。例示的な実施形態によれば、振動部120及び加熱プラットフォーム134は、フレーム112のために用いられるのと同じSOIシリコンがエッチングされたものである。さらに、SOIシリコンの上に幾つかの薄膜層が堆積されている。
【0051】
具体的には、好ましくはAlNから形成される圧電層144がSOIシリコン層の上に形成され、下部励起電極及び上部励起電極が、それぞれ、圧電層144の上面及び底面に配置される。電極(上部電極のみが参照数字146で示されている)は、好ましくはモリブデンで形成され、AlN層144と共に、振動部120の圧電駆動のために用いられる。上述のように、ヒータ122及びサーミスタ130を形成するために同じ金属を用いることができる。代替的実施形態により、振動部120のために、代替の/付加的な薄膜層を用いることもできることを認識されたい。
【0052】
支持アーム124A及び124B、加熱プラットフォーム134、アンカー梁126A及び126B、並びに振動部120は、全て同じシリコン層をエッチングしたものであるので、製造は簡略化されるが、アンカー梁126A及び126Bを含めることは、それでもなお、振動部120と支持プラットフォーム134との別々の最適化を可能にする。
【0053】
付加的な実施形態によれば、MEMS共振装置100は、信号経路のため、及び抵抗による信号損失を減らすために使用することができる複数の金属層を含むことができる。さらに、一実施形態において、フレーム112のために用いられるSOIシリコンの下及び/又は上に、振動部120の熱補償をもたらすために二酸化シリコン層142を組み込むことができる。SOIシリコン(即ち、フレーム112)は、二酸化シリコン絶縁層142を用いて基板110に接合されることが好ましい。さらに、基板110は、例えば、共振装置100が機械的衝撃を受ける場合に、加熱プラットフォーム134及び振動部120が基板110に容易には接触しないように、キャビティCを有することが好ましい。さらに、例示的な一実施形態により、キャップ114は、金属接合リング132による金属共晶接合によって接合される。また、キャップ114中の電気的ビア140に接触するために金属接合が用いられる。
【0054】
図3に容易に見ることができるように、振動部120は、基板110とキャップ114とによって定められるキャビティCの中に配置される。従って、ヒータ122がプラットフォーム134を加熱するとき、加熱プラットフォーム134は、キャビティCによって定められる「オーブン」の温度を安定化し、効果的に振動部120を加熱する第1の温度まで加熱されることが好ましい。サーミスタ130は、ヒータ122と同じ面内(即ち、x、y面内)に配置され、さらに、振動部120の温度の正確な温度計測を確実にするために、振動部120の両側に配置されることが好ましい。その結果、サーミスタ130は、当業者によって理解されるように、振動部120の温度を能動的に調節するための閉ループ制御システムの部分としてヒータ122に対するフィードバック制御をもたらすように構成される。能動的温度制御のための任意の適切な既知のフィードバック制御システムを使用することができる。例えば、一実施形態によれば、温度制御ループ電子回路が、ヒータ122及びサーミスタ130に結合した回路を含むプリント回路ボードの上の共振装置100チップから離れて配置される。ここで、そのような回路の細部は、本発明の態様を不必要に不明瞭にしないように、詳細には説明されない。
【0055】
図4は、
図2B及び2Cに示されるC―D線に沿って描かれたオーブン制御型MEMS共振装置100の横断面図である。フレーム層112のためのSOIシリコンの厚さは、5μmと30μmとの間であることが好ましい。さらに、圧電層144は0.5μmと2μmとの間の厚さを有し、金属電極(例えば、金属電極146)は典型的には1μm又はそれ以下の厚さを有することが好ましい。さらに、二酸化シリコン層142などの他の薄膜層が使用される場合、それらはまた典型的には1μm又はそれ以下の厚さを有する。
【0056】
例示的な一実施形態により、振動部の寸法は300μm×600μmである。さらに、
図2B及び2Cに示されるように、加熱プラットフォーム134は矩形形状であり、振動部120及びサーミスタ130を支持するのに十分に大きい。サーミスタ130は、単位面積当たりの抵抗を最大にするために蛇行形状を備えることが好ましい。例示的な実施形態によれば、サーミスタ130の全面積は、例えば、400μm×400μmとすることができ、サーミスタ130の厚さは0.2μmとすることができる。
【0057】
ヒータ122はサーミスタ130に比べて小さくすることができ、上述並びに
図2A及び2Bに示されるように、支持梁124A及び124Bの近く又はそれらの上に配置する必要がある。例示的な実施形態において、支持梁124A及び124Bは、例えば、10μmの幅及び長さ400μmを有し、断熱されるが、それでもなお加熱プラットフォーム134の機械的支持のためには十分に堅い。アンカー梁126A及び126Bは、振動エネルギー漏れを最小にするために、及びMEMS共振子の機械的品質係数Qを最大にするために、典型的には5μm未満の幅を有することが好ましい。
【0058】
本明細書で開示されるオーブン制御型MEMS共振装置100は、上記のOCXOデバイスなどの従来のシステムと比べて多くの技術的利点を提供する。例えば、加熱プラットフォーム134は小さい熱質量を有する、即ち、所望の温度に達するのに最小限の熱エネルギーを必要とするので、加熱プラットフォーム134及び事実上振動部120を加熱及び冷却するための時定数が小さい。具体的には、例示的な実施形態によれば、振動部120は、目標温度まで100ms又はそれ以内で加熱することができる。さらに、加熱プラットフォーム134は、上で
図2A及び2Bに示されたように、加熱プラットフォーム134が、加熱プラットフォーム134の一端部に接続された支持梁124A及び124Bのみによってフレーム112に結合されるので、断熱されている。その結果、パッケージ内部の圧力は、振動部120のQを向上させ、空気による熱対流を除くために、減らすことができる。例えば、典型的なパッケージ圧は100Pa又はそれ以下とすることができる。主要な熱損失機構は支持梁を通しての熱流であり、支持梁は大きい熱抵抗をもたらすように長くすることができる。例えば、10μmの厚さ、幅10μm、長さ400μmの2つのシリコン支持梁は、15K/mWの熱抵抗を有することになる。これは、共振子を75度だけ加熱するためにほんの5mWで十分であることを意味し、これは、上記の従来のOCXOデバイスに必要とされる必要な加熱出力の量(例えば、1W)より著しく小さい。
【0059】
熱対流による損失は、低圧パッケージングを用いて除去されるが、
図5に示されるように、加熱プラットフォーム134及び振動部120はまた放射によって熱を失う。具体的には、
図5は、
図2B及び2Cに示されるA-B線に沿って描かれたオーブン制御型MEMS共振装置100の別の横断面図である。
【0060】
図5に示されるように、熱散逸は、加熱プラットフォーム134及び振動部120から延びる矢印によって示される。例示的な一実施形態により、プラットフォーム134は温度T1まで加熱されるが、パッケージの温度T2はそれより低い可能性がある。この温度差は放射損失をもたらすことになる。一般に、放射損失は、加熱プラットフォーム134、従って振動部120内に温度勾配を生じるので、放射損失は振動部120を一定温度に維持するのに有害である。その結果、サーミスタ130の温度は、振動部120の温度とは異なる可能性があり、不正確な温度読み取りをもたらす。温度が不正確に計測される場合、振動部120の温度は目標温度とは異なり、周波数変化を引き起こすことになる。
【0061】
現在の実施形態において、サーミスタ130は加熱プラットフォーム134の一部分として形成され(上で示されるように)、振動部120への熱結合は非常に良好である。従って、
図5に示されるような放射損失によっても、温度誤差は1K未満、典型的には0.1Kとなる。
【0062】
図6は、例示的な一実施形態によるMEMS共振装置100を含んだタイミングデバイス200を示す。好ましくは、
図6に示されるタイミングデバイス200は、例えば、無線基地局、GPS受信器、及び正確な時間又は周波数基準を必要とする他のシステムに対する用途に使用することができる。
【0063】
この実施形態に関して図示されるように、上記の例示的な共振装置100は放射誘起温度誤差をさらに減らすため及び発振周波数を安定化するために、別のオーブンの中に配置することができる。具体的には、タイミングデバイス200はキャリア250の上に配置された共振装置100を含む。キャリア250は、例えば、セラミック基板又はプリント回路ボード(PCB、printed circuit board)とすることができる。さらに、外側オーブン蓋240が、共振装置100、及び共振装置100にワイヤ接合220で接続される付随の発振回路210を収容するようにキャリア250の上に固定される。蓋240は、例えば、金属蓋とすることができる。第2のヒータ222が外側オーブンを加熱するためにキャリア250上に設けられ、第2のサーミスタ230がまた、ヒータ222が目標温度を維持するように調節されていることを保証するように、外側温度を計測するためにキャリア250上に設けられる。
【0064】
この実施形態において、外側オーブン温度T2は、共振装置100の内部の温度T1(即ち、上記の振動部120の温度)に等しくするか又はそれより僅かに低くすることができる。例えば、共振装置100内のMEMSプラットフォームは95℃の名目ターンオーバー温度を有することができ、このことは、振動部120用のヒータ122が名目上MEMSプラットフォームを95℃に加熱するように構成されることを意味する。さらに、外側のオーブン化パッケージは第2のヒータ222によってより低い温度、例えば85℃に加熱することができる。その結果、放射損失は小さく、周囲温度変化にわたって一定となる。有利なことに、タイミングデバイス200は、共振装置100内の回路と同じ又はそれ以下の一定温度で、発振回路210を安定化するように構成される。
【0065】
しかし、そのような構成によっても、実際のターンオーバー温度は、MEMSプロセスにおける製造ばらつきのために変化し得る、即ち最適のターンオーバー温度は必ずしも95℃にならず、デバイスを従来の技術を用いて物理的にトリミングすることが必要となる。例えば、実際のターンオーバー温度は、例えば、90℃~100℃の範囲になり得る。さらに、ヒータ122の抵抗及びMEMSプラットフォーム134上の温度センサ130の出力は、やはり製造ばらつきのためにデバイス毎に異なり得る。
【0066】
図7は、例示的な一実施形態によるオーブン制御型MEMS発振器300のブロック図を示す。図示されるように、オーブン制御型MEMS発振器300は、例示的な共振装置100(即ち、「MEMSプラットフォーム」)と共に使用されるように準備される。従って、MEMSプラットフォーム100は、上記のように、振動部120、ヒータ122、温度センサ130を含む。これらの例示的な構成要素の詳細は上述されたので、ここでは繰り返されない。さらに、やはり上述のように、振動部120はワイヤ接合によって発振回路210に結合される。例示的な一態様において、発振回路210は、例えば、当業者には認識されるはずであるように、共振子振動を維持するように構成されたピアス(Pierce)発振器回路とすることができる。
【0067】
例示的な態様によれば、オーブン制御型MEMS発振器300は、共振装置毎の製造ばらつきから生じるターンオーバー温度、ヒータ抵抗、及びサーミスタ抵抗のばらつきを補正するように構成される。有利なことに、OCMO発振器300は、全ての誤差が単一の校正手続きによって補正されるように、オーブン制御型MEMS発振器のシステム全体の電子校正(例えば、共振子のみの校正ではなく)によって、これらのばらつきを補正するように構成される。この校正システムは、例えば、
図8及び9に関して以下で説明されるであろう。
【0068】
さらに図示されるように、オーブン制御型MEMS発振器300は、例示的な態様によるMEMSプラットフォーム100の設定値を制御するための制御回路を含む。具体的には、オーブン制御型MEMS発振器300は、マイクロ制御器310、メモリ320、差動増幅器330及び制御ロジック340を含む。
【0069】
この態様において、マイクロ制御器310は、1つ又はそれ以上のコンピュータ処理ユニット(CPU、computer processing unit)並びにメモリ及びプログラム可能入力/出力周辺装置を含む従来のマイクロ制御器とすることができる。マイクロ制御器310は、本明細書で説明される校正アルゴリズムを実行するためにメモリ内に格納されたプラグラム可能命令を実行するように構成される。
【0070】
具体的には、マイクロ制御器310は、加熱プラットフォームの、複数の設定値Ptargetを設定するように構成される。以下で説明されるように、設定値は、校正中に、外部制御回路によって供給することができる。さらに、最適な目標設定値は、校正を通して決定され、メモリ320(即ち、例えば、任意の型の電子的不揮発性メモリ)に格納され、オーブン制御型MEMS発振器300の動作が開始するとき、メモリ320から引き出される。
【0071】
さらに上述されたように、温度センサ130(例えば、サーミスタ)は、加熱MEMSプラットフォーム100の温度を監視するのに用いられるフィードバック信号となる温度センサ信号Tsignalを発生し、供給する。図示されるように、目標設定値Ptargetは差動増幅器330の非反転入力部に供給され、計測された温度センサ信号Tsignal(即ち、温度計測信号)が、差動増幅器330を備えることができる熱制御回路の反転入力部に供給される。その結果、差動増幅器330は、目標設定値Ptargetと温度センサ信号Tsignalとの間の差を生成するように構成される。さらに、例示的な態様によれば、差動増幅器330から出力されるこの電圧差は、目標設定値Ptargetと温度センサ信号Tsignalとの間の差を最小にする閉制御ループ内でプラットフォームのヒータ出力を調節するための熱制御信号として用いられる。換言すれば、ヒータ電圧は、目標設定値Ptargetと温度センサ信号Tsignalとの間の差に比例し、この制御は、比例制御器として認識される。以下でより詳しく説明されるように、閉ループ制御ロジック340(即ち、熱制御回路)はまた、例えば、例示的な一態様によるPID(「proportional-integral-derivative」)制御器とすることができる。
【0072】
いずれにしても、制御ロジック340は、目標設定値Ptargetと温度センサ信号Tsignalとの間の差に基づいて、これらの信号の間の差を最小にするようにヒータ122を駆動する、熱制御信号を生成することができる。換言すれば、制御ロジック340は、差動増幅器330から出力される差をゼロ値に向けて動かすように、ヒータ122によって生成される熱を増加又は減少させる。
【0073】
上述のように、製造中のMEMSプロセスのばらつきのために、最適動作のための実際の目標設定値は未知であり、一般にデバイス毎に変化することになる。
【0074】
図8は、例示的な一実施形態によるオーブン制御型MEMS発振器を校正するためのシステムのブロック図を示す。図示されるように、例示的実施形態において、オーブン制御型MEMS発振器300は、校正制御器410及び発振周波数計測回路420を含む外部校正回路に結合することができる。校正システム400のこの外部制御回路は、オーブン制御型MEMS発振器300の校正を、動作中に、MEMSプラットフォーム100の発振周波数をテストするのに使用される設定値の所定の範囲を選択することによってもたらすように構成される。
【0075】
具体的には、校正制御器410は、コンピュータプロセッサ及び電子メモリを含み、本明細書で説明される校正アルゴリズムをソフトウェアにより実行するように構成された任意の型のコンピューティングデバイスとすることができる。さらに、校正制御器410は、MEMS校正手続き中に、マイクロ制御器310及びメモリ320に一時的に接続されるように構成される。即ち、オーブン制御型MEMS発振器300は、製造された後、特定のオーブン制御型MEMS発振器300の最適目標設定動作値を決定してこの決定された最適目標設定動作値をオーブン制御型MEMS発振器300の不揮発性メモリ320の中に格納するように構成された校正制御器410に、一時的に接続されることになる。
【0076】
さらに図示されるように、発振周波数計測回路420がMEMSプラットフォーム100の発振回路210に結合される。これに関して、各々の特定の設定値において(校正制御器410によって制御される)、発振周波数計測回路420はMEMSプラットフォームの対応する発振周波数を計測し、この情報を、以下で説明されるように、例えば、ルックアップテーブル内に格納するように校正制御器410に戻すことになる。この発振周波数計測回路420は、校正手続き中に、オーブン制御型MEMS発振器300の発振周波数を計測するように構成された任意の型の従来のデバイス(例えば、オシロスコープ)とすることができる。
【0077】
図9は、例示的な一態様によるMEMSプラットフォームの校正を実行するための、適用される設定値に対する得られる発振周波数(Hz単位)のグラフを示す。図示されるように、複数の設定値P1~P7を、校正中に、順番に校正制御器410によりマイクロ制御器310に供給することができる。次に、マイクロ制御器310が各々の設定値入力を差動増幅器330の非反転入力部に加える。設定値P1~P7は、製造者によって選択され、オーブン制御型MEMS発振器300の校正中に使用されるように校正制御器410のメモリに格納された、所定の予め選択された電圧値とすることができる。
【0078】
例えば、製造されている特定のオーブン制御型MEMS発振器に対する最適目標設定動作値が、例えば、一般に1.0ボルト付近であることが知られている場合、システム管理者は、設定値P1~P7に対して0.8~1.2ボルトの電圧範囲を選択することができる。換言すれば、一例においては、P1=0.8ボルト、P2=0.87ボルト、P3=0.94ボルト、P4=1.0ボルト、P5=1.07ボルト、P6=1.14ボルト、及びP7=1.2ボルトである。この例においては7つの値P1~P7が示されているが、当業者には理解されるはずであるように、製造者は、好結果の校正を達成するために、必要に応じてより多くの又はより少ない値を選択することができることを認識されたい。従って、設定値の電圧範囲及び数は、この特定の例には決して限定されない。
【0079】
いずれの場合にも、上述のように、ひとたび第1の設定値P1がマイクロ制御器310に供給されると、オーブン制御型MEMS発振器の設定値は、この値に調節され、Ptargetとして差動増幅器330の非反転入力部に加えられることになる。上述のように、温度センサ130からのフィードバックに基づいて、制御ロジック340を含む制御回路は、次に、上述のように、設定値P1と温度信号Tsignalとの間の差を最小化することになる。
【0080】
次に、発振周波数計測回路420は、動作中、設定値P1に対応する振動部120の発振周波数f1を計測するように構成される。この発振周波数(Hz単位)は、
図9に示されるように、対応する値として格納される。これらのステップは、図示されるような発振周波数対設定値の曲線を得るために、設定値を生成するように複数の設定値(例えば、7つの設定値P1~P7)に対して、繰り返される。
【0081】
上述の制御回路による校正手続きを行うために、異なるプラットフォーム温度における複数の発振周波数計測が必要であるが、校正は、MEMSプラットフォームを加熱するための熱時定数が非常に短いので、迅速に行うことができることを認識されたい。従って、各々の温度点は、数秒又はそれ以下の短時間内に得ることができる。対照的に、より長い熱時定数を有するデバイス(例えば、通常、オーブン温度を安定化するのに15分必要とするOCXO)は、単一のデバイスに対して同じ校正試験を行うのに著しい時間(例えば、1時間又はそれ以上)を必要とすることになる。結果として、本明細書で説明される校正方法は、オーブン制御型MEMS発振器に対して、デバイス製造者が製造プロセス中に、特に数百又は数千のこれらのデバイスを迅速に校正する必要があるとき、著しい技術的利点をもたらす。
【0082】
図9に示される設定値に対する発振周波数の設定値曲線を生成することにより、校正制御器410は、各々のデバイスに対して、設定値に対する発振周波数の一次導関数がゼロであるターンオーバー目標設定値を決定するように構成される。ターンオーバー目標設定値は、オーブン制御型MEMS発振器のための、実際の動作中の最適目標設定動作値として選択することができる。
【0083】
例示的な実施形態において、校正制御器410は、発振周波数の1次導関数がゼロとなる場所(即ち、「最適目標設定動作値」であると示される曲線のピークにおける)を識別するために、生成された曲線の多項式フィットを行うように構成することができる。その特定のMEMSプラットフォームに関するターンオーバー値に対応するこの識別された最適目標設定動作値は、校正制御器410によって、オーブン制御型MEMS発振器300の不揮発性メモリ320内に格納される。従って、MEMSプラットフォームの実際の適用中の動作において、ターンオーバー目標設定値は、不揮発性メモリから読み取られ、MEMSプラットフォーム100の動作のための最適温度までヒータ122を加熱するための動作設定値として用いられ、このことが、上述のように、高精度クロック用途のために必要な最小の発振周波数変動を有するオーブン制御型MEMS発振器をもたらす。
【0084】
従って、本明細書で説明されたMEMSプラットフォーム100に対する例示的な校正技術により、サーミスタ変動、ターンオーバー温度変動、及びヒータ抵抗変動を含む温度に関連するMEMSの不正確さは、全て、MEMSデバイスの機械的トリミングなしの単一の校正手続きにより、校正される。
【0085】
図10Aは、オーブン制御型MEMS発振器500Aの例示的な一態様のブロック図を示す。
図10Aに示されるオーブン制御型MEMS発振器500Aは、
図7に示されるオーブン制御型MEMS発振器300の詳細な例示的回路図である。従って、図示されていないが、
図10Aのオーブン制御型MEMS発振器500Aはまた、上述の外部校正制御回路に結合することができることを認識されたい。
【0086】
図示されるように、オーブン制御型MEMS発振器500Aは、電圧源VDDに結合されたMEMSプラットフォーム100であって、加熱MEMSプラットフォーム100上に振動部120及びヒータ抵抗122(即ち、抵抗Rh)と共に組み込まれたサーミスタRsである温度センサ130を有するMEMSプラットフォーム100を含む。温度センサ計測のために、一定の検知電流Isenseが、電圧源VDDからサーミスタRsを通して流され、電圧ノードA(即ち、それが差動増幅器330へ出力する温度電圧)が監視され、それにより、図示され及び上述されたように、計測された電圧がTsignalとして差動増幅器330の反転入力部に出力される。
【0087】
サーミスタの抵抗RsはMEMSプラットフォーム100の温度に依存し、それ故に、ノードAの電圧は温度センサ信号Tsignalとなることを認識されたい。さらに上述のように、目標のプラットフォーム温度はマイクロ制御器310によって与えられるPtarget値によって設定される。例示的な一態様において、例えば、校正設定値P1~P7は、校正制御器410からデジタル電圧値として供給される。従って、デジタル-アナログ変換器510がマイクロ制御器310の出力部に備えられ、変換された目標値が、例示的な一態様による差動増幅器330の非反転入力部に供給される。
【0088】
従って、この態様において、差動増幅器330はP
target値とT
signal値との間の差を検知し、この差が、ヒータ122(即ち、抵抗R
h)によって生成される熱を効果的に調節するためにヒータ電流I
heatを調節するのに用いられる。例示的な態様によれば、ヒータ電流I
heatは、電圧制御される電流源によって、差を上述のようにゼロ値に向けて動かすように、制御される。その結果、ヒータ電流は、当業者には認識されるはずであるように、差動増幅器330から出力される差信号に比例することになる。さらに、さらに図示されるように、発振回路210は、上述のように、種々の設定値P1~P7におけるMEMSプラットフォーム100の発振周波数を計測し、格納するように構成されたループ増幅器520及びメモリバッファ430を含むことができる。これらの計測値は次に、上述のように、発振周波数計測回路420によって計測され、校正制御器410により、動作中のオーブン制御型MEMS発振器のための最適目標設定動作値を決定するために、各々の対応する選択された設定値に対してプロットされる(
図9を参照)。
【0089】
図10Bは、例示的な一実施形態によるオーブン制御型MEMS発振器500Bの代替の例示的実施形態のブロック図を示す。この実施形態において、ヒータ電流は、P
target値とT
signal値との間の差を最小化するPID制御器420を用いて調節される。当業者には認識されるはずであるように、PID制御器420は、所望の設定値と計測プロセス変数(即ち、温度計測信号T
signal)との間の差を連続的に計算し、当業者には認識されるはずであるように、比例、積分、及び微分項に基づく補正を加えるように構成することができる制御ループフィードバック機構である。
図10Aの比例制御器と比べると、PID制御器の追加は、制御の正確さ及び速度を改善する。当業者であれば、
図10A及び10Bに示される比例及びPID制御器に加えて、多くの適切な閉ループ制御回路が存在することを理解する。
【0090】
従って、上記の例示的態様によれば、校正制御システム400の例示的実施形態は、例示的なオーブン制御型MEMS発振器の校正を、対応する発振周波数を計測するための所定の設定値の掃引によって、実行するように構成される。
【0091】
例示的な一態様において、上述の制御回路(即ち、校正制御器410)は、校正方法を実行するように構成される。具体的には、オーブン制御型MEMS発振器の製造後に、オーブン制御型MEMS発振器300のマイクロ制御器310が、上述のように、一時的に校正制御器410に接続されることになる。次に、制御回路のマイクロ制御器310は、校正制御器410により、電圧設定値Ptargetをメモリ320内に格納されている第1の設定値P1に調節するように構成される。次に、オーブン制御型MEMS発振器300の制御回路が、上述のように、オーブン制御型MEMS発振器の設定値を、選択された目標値に動かすように、目標値P1とサーミスタ信号Tsignalとの間の差を最小にすることになる。さらに、第1の目標値に対応する発振周波数f1が発振回路210によって計測され、メモリ、例えば、ルックアップテーブルに格納される。
【0092】
これらのステップは、校正制御器410により供給され、順次選択される設定値(例えば、値P2~P7)の各々に対して、上述され、例えば
図9に示されるような、設定値に対する得られる発振周波数の曲線を生成するように、マイクロ制御器310によって繰り返される。次に、校正制御器410は、設定値に対する発振周波数の一次導関数がゼロであるターンオーバー設定値(即ち、特定のオーブン制御型MEMS発振器のための最適目標設定動作値)を決定するのに用いることができる、生成された曲線の多項式フィットを実行するように構成される。次に、特定のMEMSプラットフォームのためのこの目標設定値は、校正制御器410により、その特定のデバイスの不揮発性メモリ320に格納することができる。従って、オーブン制御型MEMS発振器300の後の動作において、振動部120をターンオーバー点に維持するのに、格納された設定値が用いられ、このことは、さもなければ、上述のように、製造ばらつきのためにオーブン制御型MEMS発振器が経験することになる、発振周波数変動を最小にする。
【0093】
上述の例示的実施形態には多くの可能な変化物が存在することに留意されたい。例えば、温度信号Tsignalは、サーミスタをホイートストンブリッヂの一部として組み込むことによってサーミスタから得ることができる。別の例において、ヒータ122は、やはり上述したように、電流源Iheatの代わりに制御型電圧源によって駆動することができる。システム構成におけるそのような変化物は、当業者には認識されるはずであること、及び、上述の例示的実施形態は本明細書で説明される特定の実施に限定されないことを認識されたい。
【0094】
さらに、例示的な校正システムは多くの技術的利点をもたらすことを認識されたい。加熱MEMSプラットフォーム100は、小さい熱質量(例えば、OCXOと比べて)を有するので、加熱及び冷却の時定数もまた非常に小さい。その結果、振動部120は、100ms又はそれ以下で目標温度まで加熱することができる。小さい熱時定数は、短い校正時間及び速い起動時間の両方を可能にする。その結果、各々の目標温度及び対応する発振周波数は、非常に短い期間で生成し計測することができる。さらに、電子的校正手続きは、さもなければ費用の掛かる機械的トリミングを必要とし得る多くの誤差源を除去する。上述のシステム全体に関する単一校正ステップ(例えば、オーブン制御型MEMS発振器の中の個々の構成要素ではなく、振動部120のみ)が回路関連の誤差及び共振子要素の誤差の両方を除去する。
【0095】
明瞭にするために、本明細書では、実施形態の慣例的な特徴の全ては開示されていない。本開示の任意の実際の実施の進展において、設計者の特定の目標を実現するために、多くの実施特有の決定を行う必要があり、これらの特定の目標は種々の実施及び種々の設計者に対して変化するであろうことを認識されたい。そのような設計努力は、複雑で時間がかかる可能性があるが、それにも関わらず、当業者に対しては、工学技術の慣例的な企ては本開示の利益を有するであろうことを理解されたい。
【0096】
さらに、本明細書で用いられる語法及び用語は説明のためであり、限定のためではなく、本明細書の用語又は語法は、関連技術分野の当業者の知識と組み合わせて本明細書に提示される教示及びガイダンスを考慮して当業者によって解釈されるべきものである。さらに、本明細書又は特許請求の範囲におけるいずれの項目も、まれな又は特別な意味に帰されることを、特に明示的にそのように示されない限り、意図されていない。
【0097】
上述のことは、例示的な実施形態と共に記述されたが、用語「例示的な」は単に一例のつもりであることを理解されたい。従って、本出願は、本明細書に開示されるMEMS共振子の趣旨及び範囲に含まれ得る代替物、修正物及び等価物を包含することが意図されている。
【0098】
参照符号のリスト
100:MEMS共振装置
110:基板層
112:フレーム
114:キャップ
116A~116D:電気的コンタクトパッド
120:振動部
122、222:ヒータ
124A及び124B:支持梁
126A及び126B:アンカー梁
128:キャビティ
130、230:サーミスタ
132:金属接合リング
134:加熱プラットフォーム
136:ビアコンタクト
140A、140B:キャビティ
142:二酸化シリコン層
144:AlN層
146:電極
200:タイミングデバイス
210:発振回路
220:ワイヤ接合
240:外側オーブン蓋
250:キャリア
300:オーブン制御型MEMS発振器
410:校正制御器
420:発振周波数計測回路
510:デジタル-アナログ変換器
520:ループ増幅器
530:バッファ