(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220628BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220628BHJP
C08J 7/046 20200101ALI20220628BHJP
C08G 61/08 20060101ALI20220628BHJP
C08F 10/14 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B32B27/00 A
B32B27/30 A
C08J7/046 Z CEZ
C08G61/08
C08F10/14
(21)【出願番号】P 2020523506
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2019005105
(87)【国際公開番号】W WO2019234976
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2018110365
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊香賀 太平
(72)【発明者】
【氏名】河村 朋紀
(72)【発明者】
【氏名】金子 由紀
(72)【発明者】
【氏名】南條 崇
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-189566(JP,A)
【文献】特開2018-43236(JP,A)
【文献】特開2008-12675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 7/04-7/06
C08G 61/00-61/12
C08F 10/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが5~24μmである基材と、
前記基材の上に積層される硬化樹脂層とを備え、
前記基材は、シクロオレフィン系樹脂と、周期表第6族の金属と、脂環式モノマーとを含み、
前記硬化樹脂層は、アクリル系樹脂と、脂環式モノマーとを含む、積層体。
【請求項2】
前記基材の厚みをd(μm)として、
前記基材における前記硬化樹脂層との接触側とは反対側の面からd/5(μm)の深さまでを基材下層とし、
前記基材における前記硬化樹脂層との接触側の面からd/5(μm)の深さまでを基材上層としたとき、
前記基材上層と前記基材下層とで、前記脂環式モノマーの濃度に差がある、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材下層よりも前記基材上層のほうが、前記脂環式モノマーの濃度が大きい、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材下層よりも前記基材上層のほうが、前記脂環式モノマーの濃度が小さい、請求項2に記載の積層体。
【請求項5】
前記硬化樹脂層において、前記基材との接触側の面から厚み方向の中心までを樹脂下層とし、前記基材との接触側とは反対側の面から厚み方向の中心までを樹脂上層としたとき、前記樹脂下層にのみ前記脂環式モノマーが存在する、請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記基材が含む前記脂環式モノマーは、ジシクロペンタジエンまたはテトラシクロドデセンである、請求項1から5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記硬化樹脂層が含む前記脂環式モノマーは、前記基材が含む前記脂環式モノマーと同じである、請求項1から6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記基材が含む前記金属は、タングステン、モリブデンまたはクロムである、請求項1から7のいずれかに記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に硬化樹脂層(ハードコート層)を積層した積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な電子機器のディスプレイ上に、入力デバイスとして、透明なタッチパネルが用いられている。タッチパネルの形式としては、抵抗膜式や静電容量式などが挙げられる。抵抗膜式タッチパネルは、家電などの入力機器に用いられており、専用のペンを用いた入力も可能である。静電容量式タッチパネルは、マルチタッチによる入力が可能であることから、モバイル機器などに多く用いられている。
【0003】
いずれの形式であっても、タッチパネルは、電極となる透明導電層を基材上に有している。近年では、加工性、軽量性、経済性等から、上記基材として、ガラス基板の代わりに透明プラスチックフィルムを用いることが多くなっている。また、押圧入力時の耐久性向上の目的で、透明プラスチックフィルム上には硬化樹脂層を設けることが一般的となっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
さらに、近年、デバイスのフレキシブル化が求められており、それに伴って、基材および硬化樹脂層の両方に対して、耐折り曲げ性を確保しつつ薄膜化することが求められている。特に、厚みの大部分を占める基材を薄膜化することが求められている。しかし、基材を薄膜化すると、基材のコシ(剛性)が弱くなるため、基材上に硬化樹脂層を積層した積層体上に透明導電層を形成すべく、積層体を搬送すると、搬送中に微小なツレ(搬送ロールとの接触前に断面が波状となる状態で、英語では“wrinkle"に相当)が発生し、基材と硬化樹脂層との間で層間剥離が生じることが懸念される。
【0005】
そこで、例えば特許文献2では、硬化性組成物に、リン酸基を有する(メタ)アクリレートを含有させ、上記硬化性組成物を基材としてのシクロオレフィン系樹脂フィルム上に塗工して硬化させることにより、基材と硬化樹脂層との間の密着性を向上させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-34207号公報(請求項1、段落〔0005〕、〔0006〕等参照)
【文献】特開2014-189566号公報(請求項1、4、段落〔0008〕~〔0011〕、〔0034〕、〔0040〕等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献2では、基材として用いるシクロオレフィン系樹脂フィルムの厚みが、カールを抑える観点から50~200μmに設定されている。基材をさらに薄膜化した場合、基材のコシがさらに弱くなるため、搬送中にツレが発生しやすくなる。したがって、基材をさらに薄膜化した状態では、特許文献2の手法によっても、層間剥離を抑えることが困難になる。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、薄膜化した基材上に硬化樹脂層を形成して搬送する場合でも、搬送中のツレの発生を低減でき、これによって、耐折り曲げ性を確保しつつ、基材と硬化樹脂層との層間剥離を抑えることができる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の製造方法または構成によって達成される。
【0010】
本発明の一側面に係る積層体は、厚みが5~24μmである基材と、前記基材の上に積層される硬化樹脂層とを備え、前記基材は、シクロオレフィン系樹脂と、周期表第6族の金属と、脂環式モノマーとを含み、前記硬化樹脂層は、アクリル系樹脂と、脂環式モノマーとを含む。
【発明の効果】
【0011】
厚みが5~24μmの薄膜化した基材上に硬化樹脂層を形成した積層体を搬送する場合でも、搬送中のツレの発生を低減することができる。これにより、積層体の耐折り曲げ性を確保しつつ、基材と硬化樹脂層との層間剥離を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る積層体の概略の構成を示す断面図である。
【
図2】上記積層体の基材を構成する光学フィルムの製造装置の概略の構成を示す説明図である。
【
図3】上記光学フィルムの製造工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をA~Bと表記した場合、その数値範囲に下限Aおよび上限Bの値は含まれるものとする。
【0014】
〔積層体の構成〕
図1は、本実施形態の積層体1の概略の構成を示す断面図である。積層体1は、基材2と、基材2上に積層される硬化樹脂層3とを備えている。基材2の厚みは、5~24μmである。基材2は、シクロオレフィン系樹脂と、周期表第6族の金属2Mと、脂環式モノマー2Pとを含んでいる。硬化樹脂層3は、アクリル系樹脂と、脂環式モノマー3Pとを含んでいる。
【0015】
上記構成によれば、積層体1の耐折り曲げ性を確保しつつ、基材2と硬化樹脂層3との層間剥離を抑えることができる。その理由について、本願発明者は以下のように推定している。
【0016】
(1)まず、基材2に含まれる脂環式モノマー2Pが、硬化樹脂層3の形成時に硬化樹脂層3(硬化樹脂層形成組成物)内に拡散し、基材2中の脂環式モノマー2Pと硬化樹脂層3中の脂環式モノマー3Pとが相互作用することで、基材2と硬化性樹脂層3との密着性が向上する。
【0017】
(2)基材2中に金属2Mを含有させることにより、基材2の硬度が上昇する。さらに特定の金属(周期表第6族の金属)を選択することにより、金属2Mによって周囲の樹脂を凝集させることができ、これによって基材2の樹脂密度が向上する。基材2の硬度上昇と樹脂密度の向上との相乗効果により、基材2の厚みが5~24μmと薄くても、基材2自体にコシ(剛性)を持たせることができ、基材2と硬化樹脂層3との層間剥離を引き起こす原因と推定する搬送中のツレを抑制することができる。また、基材2の薄膜化により、積層体1がフレキシブルとなり、積層体1の耐折り曲げ性も確保できる。
【0018】
(3)基材2に、脂環式モノマー2Pと特定の金属2Mとを同時に添加することにより、脂環式モノマー2Pの硬化樹脂層3側への拡散促進効果があると推定され、これによって、上記(1)の密着性の向上が促進される。
【0019】
以上の(1)~(3)の理由により、基材2が厚み5~24μmと薄くなっても、基材2と硬化樹脂層3との密着性を向上させ、かつ、基材2にコシを与えることができる。これにより、基材2の薄膜化によって積層体1の耐折り曲げ性を確保しつつ、積層体1の搬送中のツレを抑制して基材2と硬化樹脂層3との層間剥離を抑制することができる。
【0020】
ここで、基材2の厚みをd(μm)として、基材2における硬化樹脂層3との接触側とは反対側の面からd/5(μm)の深さまでを基材下層2aとし、基材2における硬化樹脂層3との接触側の面からd/5(μm)の深さまでを基材上層2bとし、基材2における基材下層2aおよび基材上層2bを除いた部分(基材下層2aと基材上層2bとの間の部分)を基材中間層2cとしたとき、基材上層2bと基材下層2cとで、脂環式モノマー2Pの濃度に差があることが望ましい。この場合、基材2と硬化樹脂層3との密着性を向上させる効果を高めることができ、これによって、層間剥離を抑える効果を高めることができる。より詳しくは、以下の通りである。
【0021】
例えば、基材下層2aよりも基材上層2bのほうが、脂環式モノマー2Pの濃度が大きい場合、硬化樹脂層3の脂環式モノマー3Pと相互作用する脂環式モノマー2Pの量が増大する。これにより、上記相互作用によって基材2と硬化樹脂層3との密着性をより向上させることができ、層間剥離を抑える効果を高めることができる。
【0022】
また、例えば、基材下層2aよりも基材上層2bのほうが、脂環式モノマー2Pの濃度が小さい場合、基材上層2bの脂環式モノマー2Pが硬化樹脂層3に拡散しやすくなり、硬化樹脂層3の脂環式モノマー3Pと相互作用しやすくなる。したがって、上記相互作用によって基材2と硬化性樹脂層3との密着性をより向上させることができ、層間剥離を抑える効果を高めることができる。
【0023】
また、硬化樹脂層3において、基材2との接触側の面から厚み方向の中心までを樹脂下層3aとし、基材2との接触側とは反対側の面から厚み方向の中心までを樹脂上層3bとしたとき、樹脂下層3aにのみ脂環式モノマー3Pが存在していてもよい。樹脂下層3aにのみ脂環式モノマー3Pが存在することで、硬化樹脂層3中の脂環式モノマー3Pの含有量を少なく抑えて、基材2との密着性を高めることができる。硬化樹脂層3中の脂環式モノマー3Pの含有量を少なく抑えることで、硬化樹脂層3の脆性劣化を抑制し、透明導電膜にした際の折り曲げ耐性の劣化を抑えることができる。
【0024】
また、基材2が含む脂環式モノマー2Pは、ジシクロペンタジエン(DCP)またはテトラシクロドデセン(TCD)であってもよい。DCPまたはTCDを脂環式モノマー2Pとして用いた構成において、上記した本実施形態の効果を得ることができる。
【0025】
また、硬化樹脂層3が含む脂環式モノマー3Pは、基材2が含む脂環式モノマー2Pと同じであってもよい。この場合、同種のモノマーによって相互作用を高めることができるため、上記相互作用によって基材2と硬化性樹脂層3との密着性を向上させ、層間剥離を抑える効果を高めることができる。
【0026】
また、基材2が含む金属2Pは、タングステン(W)、モリブデン(Mo)またはクロム(Cr)であってもよい。これらのいずれかの金属を用いることにより、基材2の硬度を上げる効果および樹脂密度を上げる効果を確実に得ることができる。したがって、これらの相乗効果によって基材2自体にコシを持たせて、積層体1の耐折り曲げ性を確保しつつ、搬送中のツレを抑制して層間剥離を抑制する効果を確実に得ることができる。
【0027】
〔基材〕
積層体1の基材2は、シクロオレフィン系樹脂を含む。シクロオレフィン系樹脂としては、次のような(共)重合体が挙げられる。
【0028】
【0029】
式中、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基または極性基(すなわち、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、またはシリル基)で置換された炭化水素基である。
【0030】
ただし、R1~R4は、二つ以上が互いに結合して、不飽和結合、単環または多環を形成していてもよく、この単環または多環は、二重結合を有していても、芳香環を形成してもよい。R1とR2とで、またはR3とR4とで、アルキリデン基を形成していてもよい。mは0~3の整数、pは0~3の整数であり、より好ましくはm+p=0~4、さらに好ましくは0~2、特に好ましくはm=0、p=1~2である。
【0031】
m=0、p=1~2である特定単量体は、得られるシクロオレフィン系樹脂の機械的強度および耐溶剤性が優れる点で好ましい。
【0032】
上記一般式(1)中、R1およびR3が表す炭化水素基は、炭素数1~10が好ましく、さらに好ましくは1~4、特に好ましくは1~2の炭化水素基である。
【0033】
R2およびR4が水素原子または1価の有機基であって、R2およびR4の少なくとも一つは水素原子および炭化水素基以外の極性を有する極性基であっても良い。
【0034】
上記特定単量体の極性基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基などが挙げられ、これら極性基はメチレン基などの連結基を介して結合していてもよい。
【0035】
また、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基など極性を有する2価の有機基が連結基となって結合している炭化水素基なども極性基として挙げられる。
【0036】
これらの中では、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基またはアリロキシカルボニル基が好ましく、特にアルコキシカルボニル基またはアリロキシカルボニル基が好ましい。
【0037】
さらに、R2およびR4の少なくとも一つが式-(CH2)nCOORで表される極性基である単量体は、得られるシクロオレフィン系樹脂が高いガラス転移温度と低い吸湿性、各種材料との優れた密着性を有するものとなる点で好ましい。なお、ここでいうガラス転移温度とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012に準拠した方法により求められる値である。
【0038】
上記の特定の極性基にかかる式において、Rは炭素原子数1~12、さらに好ましくは1~4、特に好ましくは1~2の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。
【0039】
共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィン系樹脂を挙げることができる。
【0040】
シクロオレフィンの炭素数としては、4~20が好ましく、さらに好ましいのは5~12である。
【0041】
シクロオレフィン系樹脂は、結晶性を有していてもよい。結晶性を有するシクロオレフィン系樹脂は、耐熱性、機械的特性、耐溶剤性に優れる点で好ましい。
【0042】
シクロオレフィン系樹脂は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0043】
シクロオレフィン系樹脂の好ましい分子量は、固有粘度〔η〕inhで0.2~5dl/g、さらに好ましくは0.3~3dl/g、特に好ましくは0.4~1.5dl/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、8000~100000、さらに好ましくは10000~80000、特に好ましくは12000~50000であり、重量平均分子量(Mw)は20000~300000、さらに好ましくは30000~250000、特に好ましくは40000~200000の範囲のものが好適である。
【0044】
固有粘度〔η〕inh、数平均分子量および重量平均分子量が上記範囲にあることによって、シクロオレフィン系樹脂の耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性と、本実施形態の光学フィルムとしての成形加工性が良好となる。
【0045】
シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、通常、110℃以上、好ましくは110~350℃、さらに好ましくは120~250℃、特に好ましくは120~220℃である。Tgが110℃以上の場合が、高温条件下での使用、またはコーティング、印刷などの二次加工により変形が起こりにくいため好ましい。
【0046】
一方、Tgが350℃以下とすることで、成形加工が困難になる場合を回避し、成形加工時の熱によって樹脂が劣化する可能性を抑制することができる。
【0047】
シクロオレフィン系樹脂には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、例えば特開平9-221577号公報、特開平10-287732号公報に記載されている、特定の炭化水素系樹脂、または公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム質重合体、有機微粒子、無機微粒子などを配合してもよく、特定の波長分散剤、糖エステル化合物、酸化防止剤、剥離促進剤、ゴム粒子、可塑剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
【0048】
また、シクロオレフィン系樹脂は、市販品を好ましく用いることができ、市販品の例としては、JSR(株)からアートン(Arton:登録商標)G、アートンF、アートンR、およびアートンRXという商品名で発売されており、また、日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor:登録商標)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex:登録商標)250またはゼオネックス280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
【0049】
〔硬化樹脂層〕
積層体1の硬化樹脂層3は、アクリル系樹脂を含む。アクリル系樹脂としては、アクリレート系の活性線硬化性化合物の硬化物(例えば紫外線硬化樹脂)を用いることができる。例えば、多官能(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系の活性線硬化性化合物の硬化物を用いることができる。また、ポリマータイプのアクリレートの硬化物を用いてもよい。
【0050】
硬化樹脂層3は、例えば上記の紫外線硬化樹脂と光重合開始剤とを含有する硬化樹脂層形成用組成物を用い、塗膜形成後、紫外線の照射により紫外線硬化樹脂を硬化して形成される。光重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0051】
光重合開始剤としては、紫外線硬化樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独または混合して用いることが好ましい。また、紫外線硬化樹脂がカチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独または混合物として用いることが好ましい。
【0052】
光重合開始剤としては、ラジカル重合性不飽和基を有する紫外線硬化樹脂の場合は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名:IRGACURE 184、BASFジャパン社製)が、紫外線硬化樹脂との相溶性、および、黄変も少ないという理由から好ましい。
【0053】
硬化樹脂層形成用組成物は、溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、使用する紫外線硬化樹脂成分の種類および溶解性に応じて、適宜選択して使用することができる。例えば、溶媒として、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等を例示でき、これらの混合溶媒を用いることもできる。特に、ケトン類の溶媒でメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのいずれか、または、これらの混合物を少なくとも含むことが、紫外線硬化樹脂との相溶性、塗布性に優れるという理由から好ましい。
【0054】
また、硬化樹脂層形成用組成物には、硬化樹脂層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、ブロッキングを防止する、屈折率を制御する、防眩性を付与する、粒子や硬化樹脂層表面の性質を制御する等の目的に応じて、従来公知の有機微粒子、無機微粒子、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤等を添加していてもよい。また、上記硬化樹脂層形成用組成物は、光増感剤を含んでもよく、その具体例としては、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホソフィン等が挙げられる。
【0055】
上記硬化樹脂層形成用組成物の調製方法としては、各構成成分を均一に混合できれば、特に限定されず、例えば、各構成成分を、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を用いて混合あるいは溶解して、調製することができる。
【0056】
また、上記硬化樹脂層形成用組成物を基材2上に塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の公知の湿式塗布方法を挙げることができる。
【0057】
〔脂環式モノマー〕
基材2および硬化樹脂層3に含まれる脂環式モノマーとしては、上記した一般式(1)で表されるモノマーを用いることができる。ここで、一般式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基または極性基(すなわち、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、またはシリル基)で置換された炭化水素基である。
【0058】
ただし、R1~R4は、二つ以上が互いに結合して、不飽和結合、単環または多環を形成していてもよく、この単環または多環は、二重結合を有していても、芳香環を形成してもよい。R1とR2とで、またはR3とR4とで、アルキリデン基を形成していてもよい。mは0~3の整数、pは0~3の整数であり、より好ましくはm+p=0~4、さらに好ましくは0~2、特に好ましくはm=0、p=1~2である。
【0059】
m=0、p=1~2である脂環式モノマーは、シクロオレフィン系樹脂およびアクリル系樹脂中での拡散性に優れるという観点で好ましい。
【0060】
〔基材の製法〕
(溶液流延製膜法)
図2は、本実施形態の基材2を構成する光学フィルムの製造装置10の概略の構成を示す説明図である。また、
図3は、光学フィルムの製造工程の流れを示すフローチャートである。本実施形態の光学フィルムの製造方法は、
図3に示すように、攪拌調製工程(S1)、流延工程(S2)、剥離工程(S3)、延伸工程(S4)、乾燥工程(S5)、切断工程(S6)、エンボス加工工程(S7)、巻取工程(S8)を含む。以下、
図2および
図3を参照しながら、各工程について説明する。
【0061】
(S1;攪拌調製工程)
攪拌調製工程では、攪拌装置11の攪拌槽11aにて、少なくとも樹脂および溶媒を攪拌し、支持体13(エンドレスベルト)上に流延するドープを調製する。上記樹脂としては、上記したシクロオレフィン系樹脂を用いることができる。上記溶媒としては、良溶媒および貧溶媒の混合溶媒を用いることができる。なお、良溶媒とは、樹脂を溶解させる性質(溶解性)を有する有機溶媒を言い、1,3-ジオキソラン、THF(テトラヒドロフラン)、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチル、塩化メチレン(ジクロロメタン、メチレンクロライド)、トルエンなどがこれに相当する。一方、貧溶媒とは、単独では樹脂を溶解させる性質を有していない溶媒を言い、メタノールやエタノールなどがこれに相当する。
【0062】
(S2;流延工程)
流延工程では、攪拌調製工程で調製されたドープを、加圧型定量ギヤポンプ等を通して、導管によって流延ダイ12に送液し、無限に移送する回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体13上の流延位置に、流延ダイ12からドープを流延する。そして、支持体13は、流延されたドープ(流延ドープ)を支持しながら搬送する。これにより、支持体13上に流延膜としてのウェブ15が形成される。
【0063】
支持体13は、一対のロール13a・13bおよびこれらの間に位置する複数のロール(不図示)によって保持されている。ロール13a・13bの一方または両方には、支持体13に張力を付与する駆動装置(不図示)が設けられており、これによって支持体13は張力が掛けられて張った状態で使用される。
【0064】
流延工程では、ウェブ15を支持体13上で加熱し、支持体13から剥離ロール14によってウェブ15が剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法や、支持体13の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があり、適宜、単独であるいは組み合わせて用いればよい。
【0065】
(S3;剥離工程)
上記の流延工程にて、支持体13上でウェブ15が剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化あるいは冷却凝固させた後、剥離工程では、ウェブ15を、自己支持性を持たせたまま剥離ロール14によって剥離する。剥離されたウェブ15は、フィルム基材を構成する。
【0066】
なお、剥離時点での支持体13上でのウェブ15の残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、支持体13の長さ等により、25~120質量%の範囲であることが望ましい。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブ15が柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるシワや縦スジが発生しやすいため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。なお、残留溶媒量は、下記式で定義される。
【0067】
残留溶媒量(質量%)=(ウェブの加熱処理前質量-ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
ここで、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0068】
(S4;延伸工程)
延伸工程では、支持体13から剥離されたウェブ15(フィルム基材)を、テンター16によって、搬送方向および/または幅手方向に延伸する。延伸工程では、ウェブ15の両側縁部をクリップ等で固定して延伸するテンター方式が、フィルムの平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。なお、テンター16内では、延伸に加えて乾燥を行ってもよい。
【0069】
(S5;乾燥工程)
テンター16にて延伸されたウェブ15は、乾燥装置17にて乾燥される。乾燥装置17内では、側面から見て千鳥状に配置された複数の搬送ロールによってウェブ15が搬送され、その間にウェブ15が乾燥される。乾燥装置17での乾燥方法は、特に制限はなく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等を用いてウェブ15を乾燥させる。簡便さの点から、熱風でウェブ15を乾燥させる方法が好ましい。
【0070】
ウェブ15は、乾燥装置17にて乾燥後、光学フィルムとして巻取装置20に向かって搬送される。
【0071】
(S6;切断工程、S7;エンボス加工工程)
乾燥装置17と巻取装置20との間には、切断部18およびエンボス加工部19がこの順で配置されている。切断部18では、製膜された光学フィルムを搬送しながら、その幅手方向の両端部を、スリッターによって切断する切断工程が行われる。光学フィルムにおいて、両端部の切断後に残った部分は、フィルム製品となる製品部を構成する。一方、光学フィルムから切断された部分は、シュータにて回収され、再び原材料の一部としてフィルムの製膜に再利用される。
【0072】
切断工程の後、光学フィルムの幅手方向の両端部には、エンボス加工部19により、エンボス加工(ナーリング加工)が施される。エンボス加工は、加熱されたエンボスローラーを光学フィルムの両端部に押し当てることにより行われる。エンボスローラーの表面には細かな凹凸が形成されており、エンボスローラーを光学フィルムの両端部に押し当てることで、上記両端部に凹凸が形成される。このようなエンボス加工により、次の巻取工程での巻きズレやブロッキング(フィルム同士の貼り付き)を極力抑えることができる。
【0073】
(S8;巻取工程)
最後に、エンボス加工が終了した光学フィルムを、巻取装置20によって巻き取り、光学フィルムの元巻(フィルムロール)を得る。すなわち、巻取工程では、光学フィルムを搬送しながら巻芯に巻き取ることにより、フィルムロールが製造される。光学フィルムの巻き取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。光学フィルムの巻長は、1000~7200mであることが好ましい。また、その際の幅は500~3200mm幅であることが望ましく、膜厚は30~150μmであることが望ましい。
【0074】
(溶融流延製膜法)
本実施形態の基材2(光学フィルム)は、溶融流延製膜法によって製造することもできる。溶融流延製膜法は、樹脂および可塑剤などの添加剤を含む樹脂組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性を有する溶融物を流延してフィルムを製膜する方法である。溶融流延によって形成される方法は、溶融押出(成形)法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度および表面精度などに優れるフィルムが得られる溶融押出法が好ましい。また、溶融押出法で用いる複数の原材料は、通常、予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
【0075】
ペレット化は、公知の方法で行えばよい。例えば、乾燥樹脂や可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し、1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでペレット化できる。
【0076】
添加剤は、押出し機に供給する前に樹脂に混合しておいてもよいし、添加剤および樹脂をそれぞれ個別のフィーダーで押出し機に供給してもよい。また、粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に樹脂に混合しておくことが好ましい。
【0077】
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0078】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。勿論、ペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0079】
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200~300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過して異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロールと弾性タッチロールとでフィルムをニップし、冷却ロール上で固化させる。
【0080】
供給ホッパーから押出し機へ上記ペレットを導入する際は、真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0081】
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
【0082】
可塑剤や粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
【0083】
冷却ロールと弾性タッチロールとでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度は、フィルムのTg(ガラス転移温度)以上Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールを使用できる。
【0084】
弾性タッチロールは挟圧回転体ともいう。弾性タッチロールとしては、市販されているものを用いることもできる。
【0085】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0086】
なお、上記した各製膜法で製膜される光学フィルムは、単層若しくは2層以上の積層フィルムであってもよい。積層フィルムは共押出成形法、共流延成形法、フィルムラミネイション法、塗布法などの公知の方法で得ることができる。これらのうち共押出成形法、共流延成形法が好ましい。また、共押出成形法(共押出Tダイ法)を採用する場合、共押出Tダイ法にはフィードブロック方式およびマルチマニホールド方式があるが、厚さのばらつきを少なくできる点で、マルチマニホールド方式が特に好ましい。
【0087】
〔実施例〕
以下、本発明の具体的な実施例について、比較例と併せて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるわけではない。なお、以下での説明において、「部」は「質量部」または「重量部」を指す。
【0088】
<実施例1>
(基材)
〈シクロオレフィン系樹脂1の製造〉
乾燥後窒素置換したガラス製耐圧反応容器に、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の75%シクロヘキサン溶液40部(ジシクロペンタジエンの量として30部)とアリルトリメトキシシラン3.50部とを仕込み、さらに、シクロヘキサン75部を加え、続いて、ジエチルアルミニウムエトキシドの19%n-ヘキサン溶液0.50部を加えて攪拌した。
【0089】
次いで、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.15部を2部のトルエンに溶解した溶液を加えて、50℃に加温して開環重合反応を開始した。3時間後、少量のイソプロパノールを加えて、重合反応を停止した後、重合反応溶液を多量のイソプロパノール中に注ぎ込み、開環重合体を凝固させた。凝固した開環重合体はろ過により溶液より分離して回収した後、真空下40℃で20時間乾燥した。得られた開環重合体の収量は29部(収率97%)であった。また、得られた開環重合体については、分子量と1H-NMRの測定を行った。
【0090】
次いで、得られた開環重合体10部とシクロヘキサン44部とを耐圧反応容器に加えて攪拌し、開環重合体をシクロヘキサンに溶解させた後、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0065部をトルエン6部に溶解させてなる水素化触媒液を添加し、水素圧4MPa、160℃で5時間水素化反応を行った。得られた水素化反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いで重合体を完全に析出させ、濾別洗浄後、60℃で24時間減圧乾燥して、シクロオレフィン系樹脂1を得た。
【0091】
〈基材フィルム1の製造〉
・シクロオレフィン系樹脂1 100部
・酸化防止剤「irganox1010(BASFジャパン社)」 1.0部
・脂環式モノマー(ジシクロペンタジエン) 0.05部
・タングステンナノ粒子(粒径20nm) 0.01部
上記を混合した後、混合物を内径3mmのダイ穴を4つ備えた二軸押し出し機(東芝機械社製:TEM-37B)に投入し、熱溶融押し出し形成により、ストランド状の成形体を得た後、これをストランドカッターにて細断し、ペレットを得た。二軸押出し機の運転条件は、以下の通りである。
・バレル設定温度:270~280℃
・ダイ設定温度:250℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダー回転数:50rpm
【0092】
得られたペレットを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機(Optical Control Systems社製:Measuring Extruder Type Me-20/2800V3)を用いて、厚み50μm、幅120mmのフィルム状に成形し、2m/分の速度でロール状に巻き取った。フィルム成形機の運転条件は、以下の通りである。
・バレル温度設定:280~290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:30rpm
【0093】
その後、上記フィルムを100mm×100mmのサイズに裁断し、小型二軸延伸機(東洋精機製作所社製)を用いて、フィルムの4辺の端部をクリップで把持して、延伸温度110℃、延伸倍率3.3倍で連続的に固定端一軸延伸を実施し、膜厚15μmの基材フィルム1を得た。
【0094】
(硬化樹脂層)
〈塗布液1の調製〉
下記組成の塗布液1を調製した。
・アクリル1(ウレタンアクリレートオリゴマー「UV-7640B(日本合成化学工業社)」 50.0部
・アセトン 45.0部
・酢酸プロピル 20.0部
・アクリル粒子「テクポリマーSSX-101(積水化成社)」 0.1部
・レベリング剤「GRANDIC PC11-6204L(DIC社)」 0.2部
【0095】
〈硬化樹脂層の形成〉
基材フィルム1の一方の面に塗布液1を塗布し、80℃で1分間乾燥したのち、直ちにオゾンタイプ高圧水銀灯(16W/cm、15cm集光型、積算光量200mJ/cm2)で紫外線照射を行い、厚み1.0μmの硬化樹脂層(ハードコート層)を形成し、積層体1とした。
【0096】
<実施例2>
塗布液1に追加でジシクロペンタジエンを0.01部添加した以外は、実施例1と同様にして、積層体2を作製した。
【0097】
<実施例3>
基材フィルム1中のタングステンナノ粒子の量を0.1部に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体3を作製した。
【0098】
<実施例4>
基材フィルム1中の脂環式モノマーをテトラシクロドデセンに変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体4を作製した。
【0099】
<実施例5>
基材フィルム1中のタングステンナノ粒子をモリブデンナノ粒子(粒径20nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体5を作製した。
【0100】
<実施例6>
基材フィルム1中のタングステンナノ粒子をクロムナノ粒子(粒径20nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体6を作製した。
【0101】
<実施例7>
基材フィルム1の作製時の延伸倍率を2.1倍に変更して、基材フィルム1の厚みを24μmにした以外は、実施例1と同様にして、積層体7を作製した。
【0102】
<実施例8>
基材フィルム1の作製時の延伸倍率を10倍に変更して、基材フィルム1の厚みを5μmにした以外は、実施例1と同様にして、積層体8を作製した。
【0103】
<実施例9>
下記組成の塗布液2を調製した。
〈塗布液2の調製〉
・アクリル2(ポリマー型アクリレート「ユニディックV6840(DIC社)」) 20.0部
・1-メトキシー2-プロパノール 80.0部
・アクリル粒子「テクポリマーSSX-101(積水化成社)」 0.1部
・レベリング剤「GRANDIC PC11-6204L(DIC社)」 0.2部
【0104】
〈硬化樹脂層の形成〉
そして、塗布液1の代わりに塗布液2を用いて硬化樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、積層体9を作製した。
【0105】
<実施例10>
タングステンナノ粒子の量を0.0001部に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体10を作製した。
【0106】
<実施例11>
基材フィルム1を下記方法(溶液流延製膜法)で得られた基材フィルム11に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体11を作製した。
【0107】
(基材)
〈タングステン粒子分散液の調製〉
・タングステン粒子(粒径20nm) 4.0部
・メチレンクロライド 48.0部
・エタノール 48.0部
上記の各構成材料をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、タングステン粒子含有量が4.0質量%のタングステン粒子分散液を調製した。
【0108】
〈基材フィルム11の製造〉
下記組成の主ドープ1を調製した。すなわち、まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライド、エタノールを添加した。次いで、加圧溶解タンクに、シクロオレフィン系樹脂としてARTON-G7810を撹拌しながら投入した。次いで、脂環式モノマーのジシクロペンタジエン、タングステンナノ粒子分散液を投入して、これを60℃に加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。加熱温度は、室温から5℃/minで昇温し、30分間で溶解した後、3℃/minで降温した。得られた溶液の粘度は、7000cpであり、含水率は0.50%であった。これを、(株)ロキテクノ製のSHP150を使用して、濾過流量300L/m2・h、濾圧1.0×106Paにて濾過し、主ドープ1を得た。
・シクロオレフィン系樹脂2(ARTON-G7810(JSR社))
100部
・メチレンクロライド 270部
・エタノール 20部
・脂環式モノマー(ジシクロペンタジエン) 0.05部
・タングステンナノ粒子分散液 0.25部
【0109】
次いで、無端ベルト流延装置を用い、主ドープ1を温度31℃、1800mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は28℃に制御した。ステンレスベルトの搬送速度は20m/minとした。
【0110】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が30質量%になるまで溶媒を蒸発させた。次いで、剥離張力128N/mで、ステンレスベルト支持体上から流延膜を剥離した。
【0111】
次いで、剥離した流延膜を35℃で溶媒を蒸発させ、テンター延伸で幅手方向(TD方向)に1.25倍延伸しながら、160℃の乾燥温度で乾燥させた。ゾーン延伸による延伸を開始したときの残留溶媒量は10.0質量%、テンターによる延伸を開始したときの残留溶媒量は5.0質量%であった。
【0112】
テンターで延伸した後、160℃で5分間の緩和処理を施した後、120℃の乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させた。得られたフィルムを1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施した後、コアに巻取り、基材フィルム11を得た。基材フィルム11の膜厚は40μm、巻長は4000m、幅は1500mmであった。
【0113】
その後、上記フィルムを100mm×100mmのサイズに裁断し、小型二軸延伸機(東洋精機製作所社製)を用いて、フィルムの4辺の端部をクリップで把持して、延伸温度210℃、延伸倍率2.7倍で連続的に固定端一軸延伸を実施し、厚さ15μmの基材フィルム11を得た。
【0114】
<比較例1>
基材フィルム1に脂環式モノマー(ジシクロペンタジエン)を添加しなかった。それ以外は実施例1と同様にして、積層体21を作製した。
【0115】
<比較例2>
基材フィルム1にタングステンナノ粒子を添加しなかった。それ以外は実施例1と同様にして、積層体22を作製した。
【0116】
<比較例3>
基材フィルム1の作製時の延伸倍率を1.7倍に変更して、基材フィルム1の厚みを29μmにした以外は、実施例1と同様にして、積層体23を作製した。
【0117】
<比較例4>
基材フィルム1の樹脂をポリエチレンテレフタレート樹脂「TRN-8580FH(帝人社)」に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体24を作製した。
【0118】
<モノマー濃度比および金属の定量>
(脂環式モノマー濃度比の定量)
基材フィルムの厚みをd(μm)とし、基材フィルムにおける硬化樹脂層との接触側とは反対側の面からd/5(μm)の深さまでを基材下層とし、基材フィルムにおける硬化樹脂層との接触側の面からd/5(μm)の深さまでを基材上層としたとき、基材下層と基材上層とでの脂環式モノマーの濃度比の定量を、以下の手法で行った。すなわち、積層体1~11、21~24のフィルム断面に対するTOF-SIMS(Time of Flight - Secondary Ion Mass Spectrometry)測定により、上記定量を行った。TOF-SIMSの測定は、例えばPhi Evans社製TRIFTII型TOF-SIMSを用い、フィルム断面に存在する脂環式モノマーに起因するフラグメントを検出することで観察することができる。TOF-SIMS法については、日本表面科学会編「表面分析技術選書 二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に詳しく記載されている。
【0119】
また、硬化樹脂層において、基材フィルムとの接触側の面から厚み方向の中心までを樹脂下層とし、基材との接触側とは反対側の面から厚み方向の中心までを樹脂上層としたとき、樹脂下層と樹脂上層とでの脂環式モノマーの濃度比の定量についても、上記と同様の手法で行った。
【0120】
(基材中の金属の定量)
基材フィルム500mgを密閉式マイクロ波分解装置にて硝酸分解した後、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)にて金属の定量を行った。
【0121】
<評価>
(密着性)
積層体1~11、21~24を23℃55%RHの雰囲気下で12時間調湿後、JIS K 5400に準拠する方法で、各積層体の硬化樹脂層の表面に1mmの間隔で縦横に11本の切れ目を入れ、1mm角、100個の碁盤目を作製し、セロハンテープを貼り付けて90度の角度ですばやく剥がした。セロハンテープを1回剥がすごとに交換しながら、該テープの剥離作業を6回実施した後、剥れずに残っている碁盤目の面積から、以下の基準で密着性(層間剥離のしにくさ)を評価した。なお、JISは、日本工業規格を示すJapanese Industrial Standardsの略である。
《評価基準》
5:碁盤目(硬化樹脂層)が全く剥離されなかった。
4:剥離された碁盤目の面積割合が2%未満であった。
3:剥離された碁盤目の面積割合が2%以上5%未満であった。
2:剥離された碁盤目の面積割合が5%以上10%未満であった(密着性不良)。
1:剥離された碁盤目の面積割合が10%以上であった(密着性不良)。
【0122】
(透明導電膜作製時の折り曲げ耐性)
積層体1~11、21~24の硬化樹脂層上にITO(Indium Tin Oxide)電極を成膜し、ITO積層体1~11、21~24を作製した。ITO積層体1~11、21~24を、25℃60%RH下、MIT耐折疲労試験機(東洋精機製)にセットし、折り曲げ速度170rpm、折り曲げ角度135°、チャック先端半径(折り曲げクランプの先端半径)0.35mm、および荷重4.9Nの条件で折り曲げたときのITOの抵抗値の上昇率が10%以上になる際の折り曲げ回数から、積層体の耐折り曲げ性を以下の基準で評価した。
《評価基準》
3:折り曲げ回数が300回以上であった(耐折り曲げ性が非常に良好である)。
2:折り曲げ回数が200~299回であった(耐折り曲げ性が良好である)。
1:折り曲げ回数が200回未満であった(耐折り曲げ性が不良である)。
【0123】
積層体1~11、21~24についての評価の結果を表1に示す。なお、表1において、「COP」はシクロオレフィン系樹脂を指し、「PET」はポリエチレンテレフタレートを指し、「DCP」はジシクロペンタジエンを指し、「TCP」はテトラシクロドデセンを指し、「W」はタングステンを指し、「Mo」はモリブデンを指し、「Cr」はクロムを指す。
【0124】
【0125】
表1より、比較例1~4では、密着性または耐折り曲げ性が不良となっている。比較例1では、基材フィルムおよび硬化樹脂層の両方に脂環式モノマーが含まれておらず、各層の脂環式モノマーが相互作用することがないため、基材フィルムと硬化樹脂層との密着性が低下していると考えられる。比較例2では、基材フィルムおよび硬化樹脂層の両方に脂環式モノマーが含まれているが、基材フィルムに特定の金属(タングステン)が含まれていないため、基材フィルム中の脂環式モノマーの硬化樹脂層側への拡散を促進させる効果が得られず、その結果、密着性向上の効果が十分に得られていないと考えられる。比較例3では、基材フィルムの厚みが29μmと厚く、基材フィルムに折り曲げ方向の力が加わったときに折れて破損しやすくなるため、耐折り曲げ性が低下していると考えられる。比較例4では、基材フィルムにポリエチレンテレフタレート樹脂が含まれているが、この樹脂を用いた場合、基材フィルムの脂環式モノマーを硬化樹脂層に拡散させる効果が得られず、基材フィルムの脂環式モノマーと硬化樹脂層の脂環式モノマーとの相互作用による密着性向上の効果が得られていないと考えられる。
【0126】
これに対して、実施例1~11では、密着性および耐折り曲げ性の両方について良好な結果が得られている。実施例1~11では、基材フィルムの厚みが5~24μmであり、基材フィルムが、シクロオレフィン系樹脂と、周期表第6族の金属と、脂環式モノマーとを含んでおり、硬化樹脂層が、アクリル系樹脂と、脂環式モノマーとを含んでいることから、基材フィルムの脂環式モノマーと硬化樹脂層の脂環式モノマーとの相互作用によって密着性が向上しており、これによって、基材フィルムと硬化樹脂層との層間剥離が抑えられると考えられる。特に、基材フィルムに上記金属が含まれていることにより、基材フィルムの脂環式モノマーの硬化樹脂層側への拡散を促進させることができ、これによって、密着性向上がさらに促進されていると考えられる。また、基材フィルムの薄膜化により、積層体がフレキシブルとなって耐折り曲げ性が向上していると考えられる。
【0127】
また、実施例4と、実施例1~3、5~11の比較により、基材フィルムにおける基材上層の脂環式モノマーの濃度は、基材下層の脂環式モノマーの濃度と異なることが、密着性向上の観点(層間剥離を抑える観点)から望ましいと言える。実施例1~2、5~11のように、基材下層よりも基材上層のほうが、脂環式モノマーの濃度が大きい場合、硬化樹脂層の脂環式モノマーと相互作用する基材フィルムの脂環式モノマーの量が増大するため、実施例4に比べて、上記相互作用による密着性向上の効果が高まると考えられる。また、実施例3のように、基材下層よりも基材上層のほうが、脂環式モノマーの濃度が小さい場合、基材上層の脂環式モノマーが硬化樹脂層に拡散しやすくなり、硬化樹脂層の脂環式モノマーと相互作用しやすくなるため、実施例4に比べて、上記相互作用による密着性向上の効果が高まると考えられる。
【0128】
また、実施例1では、実施例2に比べて、耐折り曲げ性を向上させる効果が高い。実施例1において、硬化樹脂層を形成する塗布液1には、脂環式モノマーが存在していないが、基材フィルム上に塗布液1を塗布した後、基材フィルム中の脂環式モノマーが塗布液1に拡散した結果、硬化樹脂層の樹脂下層にのみ、脂環式モノマーが存在することになったと考えられる。樹脂下層にのみ脂環式モノマーが存在することで、硬化樹脂層中の脂環式モノマーの含有量を少なくしつつ、密着性を向上させることができ、硬化樹脂層中の脂環式モノマーの含有量を少なくすることで、硬化樹脂層の脆性劣化が抑えられ、これによって耐折り曲げ性が向上したと推測される。
【0129】
〔その他〕
以上で説明した本実施形態の積層体は、以下のように表現することができる。
【0130】
1.厚みが5~24μmである基材と、
前記基材の上に積層される硬化樹脂層とを備え、
前記基材は、シクロオレフィン系樹脂と、周期表第6族の金属と、脂環式モノマーとを含み、
前記硬化樹脂層は、アクリル系樹脂と、脂環式モノマーとを含むことを特徴とする積層体。
【0131】
2.前記基材の厚みをd(μm)として、
前記基材における前記硬化樹脂層との接触側とは反対側の面からd/5(μm)の深さまでを基材下層とし、
前記基材における前記硬化樹脂層との接触側の面からd/5(μm)の深さまでを基材上層としたとき、
前記基材上層と前記基材下層とで、前記脂環式モノマーの濃度に差があることを特徴とする前記1に記載の積層体。
【0132】
3.前記基材下層よりも前記基材上層のほうが、前記脂環式モノマーの濃度が大きいことを特徴とする前記2に記載の積層体。
【0133】
4.前記基材下層よりも前記基材上層のほうが、前記脂環式モノマーの濃度が小さいことを特徴とする前記2に記載の積層体。
【0134】
5.前記硬化樹脂層において、前記基材との接触側の面から厚み方向の中心までを樹脂下層とし、前記基材との接触側とは反対側の面から厚み方向の中心までを樹脂上層としたとき、前記樹脂下層にのみ前記脂環式モノマーが存在することを特徴とする前記1から4のいずれかに記載の積層体。
【0135】
6.前記基材が含む前記脂環式モノマーは、ジシクロペンタジエンまたはテトラシクロドデセンであることを特徴とする前記1から5のいずれかに記載の積層体。
【0136】
7.前記硬化樹脂層が含む前記脂環式モノマーは、前記基材が含む前記脂環式モノマーと同じであることを特徴とする前記1から6のいずれかに記載の積層体。
【0137】
8.前記基材が含む前記金属は、タングステン、モリブデンまたはクロムであることを特徴とする前記1から7のいずれかに記載の積層体。
【0138】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の積層体は、例えばタッチパネルの電極が形成される下地のフィルムに利用可能である。
【符号の説明】
【0140】
1 積層体
2 基材
2a 基材下層
2b 基材上層
2M 金属
2P 脂環式モノマー
3 硬化樹脂層
3a 樹脂下層
3b 樹脂上層
3P 脂環式モノマー