(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】電気素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
H05K3/00 J
H05K3/00 X
(21)【出願番号】P 2020525496
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2019022483
(87)【国際公開番号】W WO2019240000
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2018110776
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 篤志
(72)【発明者】
【氏名】成岡 友彦
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 和紘
(72)【発明者】
【氏名】森 星弥
(72)【発明者】
【氏名】今田 智
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/078349(WO,A1)
【文献】特開2014-220478(JP,A)
【文献】特開2013-077739(JP,A)
【文献】特開2010-258189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1主面および第2主面を有し、樹脂を主成分とする絶縁基材と、前記第1主面に形成される第1接続電極と、前記第2主面に形成される第2接続電極と、を備える電気素子を含んだマザー基板を形成する、マザー基板形成工程と、
前記マザー基板形成工程の後に、前記マザー基板から前記電気素子を切り出したときに前記絶縁基材の第1側面となる第1部分を前記第1主面側から切断し、前記マザー基板から前記電気素子を切り出したときに前記絶縁基材の第2側面となる第2部分を前記第2主面側から切断して、前記マザー基板から前記電気素子を切り出す、切断工程と、
を備え、
前記第1部分は、前記第1主面および前記第2主面に対向する平面方向において、前記第2接続電極よりも前記第1接続電極に近く、
前記第2部分は、前記平面方向において、前記第1接続電極よりも前記第2接続電極に近い、電気素子の製造方法。
【請求項2】
前記マザー基板形成工程は、
前記第1主面となる第1基材層の面に前記第1接続電極を形成し、前記第2主面となる第2基材層の面に前記第2接続電極を形成する、電極形成工程と、
前記第1基材層および前記第2基材層を含む複数の基材層を積層して加熱プレスする、積層体形成工程とを含む、請求項1に記載の電気素子の製造方法。
【請求項3】
前記積層体形成工程は、熱可塑性樹脂を主材料とする前記複数の基材層を積層して加熱プレスする工程を含む、請求項2に記載の電気素子の製造方法。
【請求項4】
前記切断工程は、レーザーで前記マザー基板から前記電気素子を切り出す工程を含む、請求項1から3のいずれかに記載の電気素子の製造方法。
【請求項5】
前記切断工程は、前記マザー基板から複数の前記電気素子を切り出す工程を含む、請求項1から4のいずれかに記載の電気素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マザー基板から電気素子を切り出す工程を含む電気素子の製造方法、その製造方法によって得られた電気素子、およびその電気素子の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の子基板(電気素子)を集合してなるマザー基板(集合基板)を製造し、このマザー基板から多数の子基板を切り出すことが一般的に行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気素子には、両主面にそれぞれ接続電極が設けられる場合がある。しかし、この場合、マザー基板を製造する際に、一方の主面に形成される接続電極と、他方の主面に形成される接続電極とで位置ずれが生じると、マザー基板から電気素子を切り出したときに電気素子の外形(外周)と接続電極との位置関係が規定の位置からずれることがある。特に、一方の主面に形成された接続電極を基準にしてマザー基板から電気素子を切り出す場合、他方の主面に形成された接続電極と電気素子の外形との位置関係が規定より大きくずれる虞がある。
【0005】
そして、このような電気素子を他の部材(例えば、回路基板等)に実装しようとすると、他の部材に実装された部品や構造物に接触して電気素子が実装できない場合や、接続電極と他の部材の電極との位置が合わずに接合不良等の問題が生じる虞がある。
【0006】
本発明の目的は、絶縁基材の両主面に接続電極がそれぞれ形成される構成において、絶縁基材の外形と接続電極との位置関係の精度を高め、且つ、他の部材等への実装性を高めた電気素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気素子の製造方法は、
互いに対向する第1主面および第2主面を有する絶縁基材と、前記第1主面に形成される第1接続電極と、前記第2主面に形成される第2接続電極と、を備える電気素子を含んだマザー基板を形成する、マザー基板形成工程と、
前記マザー基板形成工程の後に、前記マザー基板から前記電気素子を切り出したときに前記絶縁基材の第1側面となる第1部分を前記第1主面側から切断し、前記マザー基板から前記電気素子を切り出したときに前記絶縁基材の第2側面となる第2部分を前記第2主面側から切断して、前記マザー基板から前記電気素子を切り出す、切断工程と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記製造方法によれば、第1接続電極が形成された第1主面側から第1部分を切断し、第2接続電極が形成された第2主面側から第2部分を切断するため、接続電極と絶縁基材の外形との位置関係のずれを抑制した電気素子を容易に得ることができる。
【0009】
本発明の電気素子は、
第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、第1側面および第2側面を有する絶縁基材と、
前記第1主面に形成される第1接続電極と、
前記第2主面に形成される第2接続電極と、
を備え、
前記第1側面は、前記絶縁基材の幅が前記第1主面から前記第2主面に向かって広がる勾配を有し、
前記第2側面は、前記絶縁基材の幅が前記第2主面から前記第1主面に向かって広がる勾配を有することを特徴とする。
【0010】
第1主面側からのレーザーを照射することによって第1側面を形成し、第2主面側からのレーザーの照射を照射することによって第2側面を形成した場合には、このような構成となる。この場合には、絶縁基材の外形と、絶縁基材の両主面に形成される接続電極との位置関係の精度を高め、且つ、他の部材等への実装性を高めた電気素子を実現できる。
【0011】
本発明の電気素子の実装構造は、
電気素子と、前記電気素子が接続される他の部材と、を備え、
前記電気素子は、
第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、第1側面および第2側面を有する絶縁基材と、
前記第1主面に形成される第1接続電極と、
前記第2主面に形成される第2接続電極と、
を有し、
前記第1側面は、前記絶縁基材の幅が前記第1主面から前記第2主面に向かって広がる勾配を有し、
前記第2側面は、前記絶縁基材の幅が前記第2主面から前記第1主面に向かって広がる勾配を有し、
前記電気素子の前記第1接続電極または前記第2接続電極は、前記他の部材に接続されることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、絶縁基材の外形と接続電極との位置関係のずれに起因する接合不良や、他の部材への実装不良を抑制した、電気素子の実装構造を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、絶縁基材の両主面に接続電極がそれぞれ形成される構成において、絶縁基材の外形と接続電極との位置関係の精度を高め、且つ、他の部材への実装性を高めた電気素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(A)は第1の実施形態に係る電気素子101の外観斜視図であり、
図1(B)は電気素子101の断面図である。
【
図2】
図2(A)は
図1(A)におけるA-A断面図であり、
図2(B)は
図1(A)におけるB-B断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る電子機器401の主要部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、電気素子101の製造工程を順に示す断面図である。
【
図5】
図5は、電気素子101の製造工程を順に示す断面図である。
【
図6】
図6(A)は第2の実施形態に係る電気素子102の外観斜視図であり、
図6(B)は
図6(A)におけるD-D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0016】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係る電気素子101の外観斜視図であり、
図1(B)は電気素子101の断面図である。
図2(A)は
図1(A)におけるA-A断面図であり、
図2(B)は
図1(A)におけるB-B断面図である。
【0017】
電気素子101は、後に詳述するように、例えば回路基板上に面実装される電子部品である。電気素子101は、第1接続部CN1と、第2接続部CN2と、線路部TLとを有する。第1接続部CN1には、
図1(A)に示す上面に電極(第1接続電極P11,P12)が露出しており、第2接続部CN2には、
図1(B)に示す下面に電極(第2接続電極P21,P22)が露出している。
【0018】
電気素子101は、絶縁基材10、第1接続電極P11,P12、第2接続電極P21,P22、導体パターン21,22、層間接続導体V11,V12,V13,V21,V22,V23等を備える。
【0019】
絶縁基材10は、熱可塑性樹脂を主材料とし、長手方向がX軸方向に一致する略矩形の平板である。絶縁基材10は、第1主面S1、第1主面S1に対向する第2主面S2、第1側面SS1および第2側面SS2を有する。第1接続電極P11,P12は絶縁基材10の第1主面S1に形成され、第2接続電極P21,P22は絶縁基材10の第2主面S2に形成されている。導体パターン21,22および層間接続導体V11,V12,V13,V21,V22,V23は、絶縁基材10の内部に形成されている。絶縁基材10は、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を主材料とする平板である。
【0020】
絶縁基材10は、熱可塑性樹脂を主材料とする複数の基材層13,12,11をこの順に積層して形成される積層体である。複数の基材層11,12,13は、それぞれ可撓性を有し、長手方向がX軸方向に一致する矩形の平板である。複数の基材層11,12,13は、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を主材料とするシートである。
【0021】
基材層11の表面には、第1接続電極P11,P12が形成されている。第1接続電極P11,P12は、基材層11の第1端(
図1(B)における基材層11の左側端)付近に配置される矩形の導体パターンである。第1接続電極P11,P12は、例えばCu箔等の導体パターンである。
【0022】
また、基材層11には、層間接続導体V11,V21が形成されている。
【0023】
基材層12の表面には、導体パターン21,22が形成されている。導体パターン21,22は、図示省略するが、Y軸方向およびX軸方向に延伸するL字形の線状導体パターンである。導体パターン21,22は、例えばCu箔等の導体パターンである。
【0024】
また、基材層12には、層間接続導体V12,V22が形成されている。
【0025】
基材層13の裏面には、第2接続電極P21,P22が形成されている。第2接続電極P21,P22は、基材層13の第2端(
図1(B)における基材層13の右側端)付近に配置される矩形の導体パターンである。第2接続電極P21,P22は、例えばCu箔等の導体パターンである。
【0026】
また、基材層13には、層間接続導体V13,V23が形成されている。
【0027】
図示省略するが、第1接続電極P11は、層間接続導体V11を介して導体パターン21の第1端に接続される。導体パターン21の第2端は、層間接続導体V12,V13を介して第2接続電極P21に接続される。また、第1接続電極P12は、層間接続導体V21を介して導体パターン22の第1端に接続される。導体パターン22の第2端は、層間接続導体V22,V23を介して第2接続電極P22に接続される。
【0028】
図1(B)、
図2(A)および
図2(B)に示すように、第1側面SS1は、絶縁基材10の側面のうち、絶縁基材10の幅が第1主面S1から第2主面S2に向かって広がる勾配を有し、その少なくとも一部が第1接続電極P11,P12に近接する側面である。後に詳述するように、第1側面SS1は、マザー基板から電気素子を切り出したときに、絶縁基材を第1主面S1側から第2主面S2に向かって切断した切断面である。なお、ここでいう幅とは、平面方向(例えば、X軸方向またはY軸方向)の長さを言う。
【0029】
図2(A)に示す第1側面SS1および層間接続導体V11,V21は、いずれも上面側の幅が下面側の幅よりも短く、下面側から上面側に向かって先細ったテーパー状である。この構成によれば、層間接続導体V11,V21が上面側から下面側に向かって先細ったテーパー状の場合と比べて、第1側面SS1と(層間接続導体V11,V21がそれぞれ接続される)第1接続電極P11,P12とをより近接させることができる。後に詳述するように、第1側面SS1は第1主面S1側から絶縁基材を切断して形成される面である。したがって、上記構成により、第1接続電極P11,P12により近接した位置での切断が可能となるため、より小さな絶縁基材10を加工形成することが可能となり、形状加工の自由度が高まる(形状加工の幅が広がる)。
【0030】
また、第2側面SS2は、絶縁基材10の側面(端面)のうち、絶縁基材10の幅が第2主面S2から第1主面S1に向かって勾配を有し、その少なくとも一部が第2接続電極P21,P22に近接する側面である。後に詳述するように、第2側面SS2は、マザー基板から電気素子を切り出したときに、絶縁基材を第2主面S2側から第1主面S1に向かって切断した切断面である。図示省略するが、第1側面SS1と第2側面SS2との境界は、絶縁基材10の長手方向(X軸方向)における中央付近である。
【0031】
図2(B)に示す第2側面SS2および層間接続導体V13,V23は、いずれも下面側の幅が上面側の幅よりも短く、上面側から下面側に向かって先細ったテーパー状である。この構成によれば、層間接続導体V13,V23が下面側から上面側に向かって先細ったテーパー状の場合と比べて、第2側面SS2と(層間接続導体V13,V23がそれぞれ接続される)第2接続電極P21,P22とをより近接させることができる。後に詳述するように、第2側面SS2は第2主面S2側から絶縁基材を切断して形成される面である。したがって、上記構成により、第2接続電極P21,P22により近接した位置での切断が可能となるため、より小さな絶縁基材10を加工形成することが可能となり、形状加工の自由度が高まる(形状加工の幅が広がる)。
【0032】
また、
図1(B)に示すように、第1側面SS1は、第1主面S1および第2主面S2に対向する平面方向(例えば、X軸方向)において、第2接続電極P21,P22よりも第1接続電極P11,P12に近接している。第2側面SS2は、平面方向において、第1接続電極P11,P12よりも第2接続電極P21,P22に近接している。
【0033】
ここで、本明細書における「接続電極に近接する側面」とは、積層方向(Z軸方向)から視て、絶縁基材10の側面のうち、接続電極に最短距離に位置する部分を言う。
【0034】
電気素子101は例えば次のように用いられる。
図3は、第1の実施形態に係る電子機器401の主要部を示す斜視図である。
【0035】
電子機器401は、電気素子101、回路基板301、部品51,52,53,54、金属筐体1および金属部材31等を備える。回路基板301は例えばガラス/エポキシ基板である。部品51,52,53,54は、例えばチップ型インダクタやチップ型キャパシタ等のチップ部品、RFIC素子またはインピーダンス整合回路等である。なお、電子機器401は、上記以外の構成も備えるが、
図3では、図示省略している。
【0036】
電気素子101および部品51,52,53,54は、回路基板301の上面PSに実装される。電気素子101の第2接続部CN2(第2接続電極)は、回路基板301の上面PSに形成されたランド(不図示)に直接はんだ付けされる。また、部品51,52,53,54は、回路基板301の上面PSに形成されたランド(不図示)に直接はんだ付けされる。また、電気素子101の第1接続部CN1(第1接続電極)は、金属部材31等を介して金属筐体1に接続されている。具体的には、電気素子101の第1接続部CN1は、コネクタ(不図示)を介して金属部材31の一端に接続され、金属部材31の他端はネジ(不図示)を介して金属筐体1に接続されている。
【0037】
本実施形態では、金属部材31および回路基板301が、本発明の「他の部材」に相当する。
【0038】
なお、本実施形態に係る電気素子101は、例えば次に示すような工程で製造される。
図4および
図5は、電気素子101の製造工程を順に示す断面図である。
【0039】
まず、
図4中の(1)および
図5中の(1)に示すように、複数の基材層11,12,13を準備する。基材層11,12,13は、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を主材料とするシートである。
【0040】
その後、複数の基材層11,12,13に、第1接続電極P11,P12、第2接続電極P21,P22および導体パターン21,22を形成する。具体的には、基材層11,12,13の片側の面に金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その金属箔をフォトリソグラフィでパターニングする。これにより、基材層11の表面(後に絶縁基材の第1主面となる面)に第1接続電極P11,P12を形成し、基材層12の表面に導体パターン21,22を形成し、基材層13の裏面(後に絶縁基材の第2主面となる面)に第2接続電極P21,P22を形成する。
【0041】
なお、本実施形態では、基材層11が本発明における「第1基材層」に相当し、基材層13が本発明における「第2基材層」に相当する。基材層11の表面(後に1主面となる第1基材層の面)に第1接続電極P11,P12を形成し、後に第2主面となる基材層13の裏面(後に第2主面となる第2基材層の面)に第2接続電極P21,P22を形成するこの工程が、本発明の「電極形成工程」の一例である。
【0042】
また、基材層11には層間接続導体V11,V21が形成され、基材層12には層間接続導体V12,V22が形成され、基材層13には層間接続導体V13,V23が形成される。層間接続導体V11,V12,V13,V21,V22,V23は、基材層に貫通孔を設けた後、その貫通孔にCu,Snもしくはそれらの合金等の金属粉と樹脂材料とを含む導電性ペーストを配設(充填)し、後の加熱プレスによって導電性ペーストを固化させることによって設けられる。
【0043】
次に、複数の基材層13,12,11をこの順に積層し、積層した複数の基材層11,12,13を加熱プレスすることにより、
図4中の(2)および
図5中の(2)に示す集合基板状態の絶縁基材10Aが形成されるとともに、マザー基板201が形成される。マザー基板201は、電気素子を含んだ集合基板である。
【0044】
このように、電気素子を含んだマザー基板201を形成するこの工程が、本発明の「マザー基板形成工程」の一例である。また、第1基材層(基材層11)および第2基材層(基材層13)を含む複数の基材層11,12,13を積層して加熱プレスするこの工程が、本発明の「積層体形成工程」の一例である。
【0045】
次に、
図4中の(3)に示すように、マザー基板201から第1部分を第1主面S1側から切断し、
図5中の(3)に示すように、マザー基板201から第2部分を第2主面S2側から切断する。具体的には、集合基板状態の絶縁基材10Aの第1主面S1側から
図4中の(2)に示す分割線DL1に沿ってレーザーLRを照射し、第1部分を切断する。また、絶縁基材10Aの第2主面S2側から
図5中の(2)に示す分割線DL2に沿ってレーザーLRを照射し、第2部分を切断する。
【0046】
なお、本発明の「第1部分」とは、マザー基板201から電気素子を切り出したときに、電気素子が備える絶縁基材10の第1側面SS1となる部分であり、集合基板状態の絶縁基材10Aのうち分割線DL1で示される部分である。第1側面SS1は、絶縁基材10Aを第1主面S1側から第2主面S2に向かって切り出した切断面である。
【0047】
また、本発明の「第2部分」とは、マザー基板201から電気素子を切り出したときに、電気素子が備える絶縁基材10の第2側面SS2となる部分であり、集合基板状態の絶縁基材10Aのうち分割線DL2で示される部分である。第2側面SS2は、絶縁基材10Aを第2主面S2側から第1主面S1に向かって切り出した切断面である。
【0048】
このようにして、マザー基板201から電気素子(101)が切り出される。
【0049】
「マザー基板形成工程」の後に、第1部分を第1主面S1側から切断し、第2部分を第2主面S2側から切断して、マザー基板201から電気素子101を切り出すこの工程が、本発明の「切断工程」の一例である。
【0050】
なお、
図4および
図5では、マザー基板201から一つの電気素子が切り出される例を示したが、この製造方法に限定されるものではない。例えば、複数の電気素子を含んだマザー基板を形成し、そのマザー基板から複数の電気素子を切り出してもよい。さらに、電気素子にはチップ部品等の部品が実装または収納されていてもよい。その場合には、マザー基板に部品を実装してから電気素子を切り出してもよい。
【0051】
上記製造方法によって電気素子101を製造することにより、次のような作用効果を奏する。
【0052】
(a)マザー基板201を形成する際、第1主面S1に形成される第1接続電極P11,P12と、第2主面S2に形成される第2接続電極P21,P22とで位置ずれが生じると、マザー基板201から電気素子101を切り出したときに、電気素子が備える絶縁基材の外形と接続電極との位置関係が規定の位置からずれることがある。特に、一方主面に形成された接続電極を基準にして、マザー基板を一方主面側から電気素子を切り出した場合には、他方主面に形成された接続電極と電気素子が備える絶縁基材の外形との位置関係が大きくずれる虞がある。
【0053】
一方、上記製造方法によれば、第1接続電極P11,P12が形成された第1主面S1側から第1部分(マザー基板201から電気素子を切り出したときに、第1側面SS1となる部分)を切断し、第2接続電極P21,P22が形成された第2主面S2側から第2部分(マザー基板201から電気素子を切り出したときに、第2側面SS2となる部分)を切断する。これにより、絶縁基材10の外形と接続電極との位置関係(第1側面SS1と第1接続電極P11,P12との位置関係、および第2側面SS2と第2接続電極P21,P22との位置関係)のずれが抑制され、絶縁基材10の外形と接続電極との位置関係の精度を高めることができる。
【0054】
なお、外部の回路に接続される接続電極が設けられている場合には、電気素子(絶縁基材)の外形と接続電極との間には高い位置精度が要求される。しかし、長尺状の電気素子や複雑な形状の電気素子を、一方主面側から切り出す場合には、絶縁基材の外形と接続電極との位置関係にずれが生じやすい。そのため、電気素子(絶縁基材)の外形と接続電極との位置関係のずれを抑制する点で、本発明の製造方法および構成が特に有効である。
【0055】
(b)電気素子(絶縁基材)の外形と接続電極との位置関係が規定の位置からずれていると、部品が高密度に実装された回路基板(他の部材)等にその電気素子を実装する場合に、部品やその他の構造物に接触して電気素子が実装できないことがある。なお、電気素子を無理に回路基板に実装した場合には、電気素子の絶縁基材に応力が掛かってしまい、電気素子が破損する虞がある。また、電気素子を回路基板に実装できたとしても、接続電極と回路基板の電極との位置が合わずに接合不良等の問題が生じる虞がある。
【0056】
一方、本実施形態によれば、絶縁基材10の外形と接続電極との位置関係(第1側面SS1と第1接続電極P11,P12との位置関係、および第2側面SS2と第2接続電極P21,P22との位置関係)の精度が高い電気素子101を容易に製造できる。そのため、このような電気素子101を回路基板301に実装することで、絶縁基材の外形と接続電極との位置関係のずれに起因する接合不良や、回路基板への実装不良を抑制できる。
【0057】
(c)本実施形態では、絶縁基材10が、熱可塑性樹脂を主材料とする複数の基材層11,12,13を積層して形成される。この構成によれば、後に詳述するように、積層した複数の基材層11,12,13を加熱プレス(一括プレス)することにより、絶縁基材10を容易に形成できるため、電気素子101の製造工程が削減され、コストを低く抑えることができる。また、この構成により、容易に組成変形が可能で、且つ、所望の形状を維持(保持)できる電気素子101を実現できる。
【0058】
但し、絶縁基材10が複数の基材層11,12,13の積層体である場合には、複数の基材層11,12,13を積層する際の積みずれ等により、第1接続電極P11,P12と第2接続電極P21,P22との位置関係にずれが生じやすい。特に、絶縁基材10を構成する複数の基材層11,12,13が熱可塑性樹脂を主材料とする場合には、積層した複数の基材層11,12,13を加熱プレスする際に、基材層が流動しやすく、基材層に形成された導体パターン(第1接続電極および第2接続電極等)の位置ずれや変形が生じやすい。そのため、電気素子(絶縁基材)の外形と接続電極との位置関係のずれを抑制する点で、本発明の製造方法および構成が特に有効である。
【0059】
(d)さらに、本実施形態では、絶縁基材10に形成される層間接続導体V11,V12,V13,V21,V22,V23が、樹脂材料を含む導電性ペーストを固化してなるビア導体である。これらビア導体は、複数の基材層11,12,13の加熱プレス処理(後に詳述する)で同時に形成されるため、形成が容易である。また、導電性ペーストに樹脂材料が含まれるため、樹脂を主材料とする基材層と層間接続導体との高い接合性が得られる。なお、上記導電性ペーストに含まれる樹脂材料は、基材層の樹脂材料と同種であることが好ましい。
【0060】
なお、上述したように、複数の電気素子を含んだマザー基板を形成した後、そのマザー基板から複数の電気素子を切り出してもよい。但し、複数の電気素子を含むような大型のマザー基板では、製造時に導体パターン(第1接続電極P11,P12および第2接続電極P21,P22)の位置ずれや変形が生じやすい。このような場合でも、電気素子(絶縁基材)の外形と接続電極との位置関係のずれを抑制する点で、本発明の製造方法および構成が特に有効である。
【0061】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第3側面SS3を有する絶縁基材を備えた電気素子の例を示す。
【0062】
図6(A)は第2の実施形態に係る電気素子102の外観斜視図であり、
図6(B)は
図6(A)におけるD-D断面図である。
【0063】
電気素子102は、絶縁基材10Bを備える点で、第1の実施形態に係る電気素子101と異なる。絶縁基材10Bは、第1側面SS1および第2側面SS2以外に第3側面SS3を有する点で、第1の実施形態で説明した絶縁基材10と異なる。絶縁基材10Bの他の構成については、絶縁基材10と実質的に同じである。
【0064】
図6(B)に示すように、第3側面SS3は、絶縁基材10Bの側面(端面)のうち、絶縁基材10Bの幅が主面(第1主面S1および第2主面S2)から積層方向(Z軸方向)の中央付近に向かって広がる勾配を有する側面である。図示省略するが、第3側面SS3は、絶縁基材10Bの側面(端面)のうち、電気素子102の線路部TL部分の側面である。
【0065】
第3側面SS3は、レーザーを照射して、絶縁基材10Bを第1主面S1側および第2主面S2側の両方から切り出した切断面である。
【0066】
本実施形態で示すように、電気素子の絶縁基材は、第1側面SS1および第2側面SS2以外にその他の側面を有していてもよい。
【0067】
なお、絶縁基材を第1主面S1側および第2主面S2側の両方から切断することにより、絶縁基材の外形を精度良く切り出すことができる場合がある。例えば、一方主面側からレーザーを照射して切り出した側面の勾配が緩やかな場合には、レーザーの照射位置と絶縁基材の他方主面側の外形との間にずれが生じてしまい、規定の位置で絶縁基材を正確に切り出すことは難しくなるためである。
【0068】
《その他の実施形態》
以上に示した各実施形態では、電気素子が、他の部材(回路基板)に面実装される電子部品である例を示したが、本発明の電気素子はこれに限定されるものではない。本発明の電気素子は、例えば、二つの部材間を接続するケーブル、または他の部材と部品との間を接続するケーブルでもよい。また、電気素子の絶縁基材は、屈曲部を有していてもよい。
【0069】
また、以上に示した各実施形態では、絶縁基材が、長手方向がX軸方向に一致する略矩形の平板である例を示したが、絶縁基材の形状は本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。絶縁基材は、例えば平面形状が多角形、円形、楕円形、円弧状、L字形、U字形、Y字形、T字形、クランク形等であってもよい。
【0070】
以上に示した各実施形態では、絶縁基材が、熱可塑性樹脂を主材料とする平板の例を示したが、この構成に限定されるものではない。絶縁基材は熱硬化性樹脂を主材料とする平板でもよい。また、絶縁基材は、例えば、低温同時焼成セラミックス(LTCC)の誘電体セラミックであってもよい。絶縁基材は、複数の樹脂の複合積層体であってもよく、例えばガラス/エポキシ基板等の熱硬化性樹脂シートと、熱可塑性樹脂シートとが積層されて形成される構成でもよい。また、絶縁基材は、複数の基材層を加熱プレス(一括プレス)してその表面同士を融着するものに限らず、各基材層間に接着材層を有する構成でもよい。
【0071】
また、以上の示した各実施形態では、絶縁基材が複数の基材層の積層体である例を示したが、この構成に限定されるものではない。絶縁基材は単層の平板でもよい。
【0072】
また、以上に示した各実施形態では、絶縁基材が、3つの基材層11,12,13を積層してなる例を示したが、この構成に限定されるものではない。絶縁基材を形成する基材層の層数は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。絶縁基材は、例えば単層であってもよい。さらに、絶縁基材の第1主面S1または第2主面S2に、例えば、エポキシ樹脂膜、ソルダーレジスト膜やカバーレイフィルム等の保護層が形成されていてもよい。
【0073】
以上に示した各実施形態では、第1接続部CN1、第2接続部CN2および線路部TLを有する電気素子の例を示したが、電気素子が有する接続部および線路部の数は、電気素子に構成される回路によって適宜変更可能である。
【0074】
電気素子に構成される回路は、以上に示した各実施形態で説明した回路に限定されるものではない。電気素子には、例えば、各種伝送線路(例えば、ストリップライン、マイクロストリップライン、コプレーナライン等)が構成されていてもよい。また、電気素子には、例えば、インダクタ、キャパシタや各種フィルタ(ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタ)等の周波数フィルタが導体パターンで形成されていてもよい。また、電気素子には、チップ部品等の各種部品が主面に実装または埋設されていてもよい。
【0075】
なお、以上に示した各実施形態では、矩形の導体パターンである2つの第1接続電極P11,P12と、矩形の導体パターンである2つの第2接続電極P21,P22と、を備える電気素子の例を示したが、この構成に限定されるものではない。第1接続電極および第2接続電極の形状は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。第1接続電極および第2接続電極の平面形状は、例えば、多角形、円形、楕円形、円弧状、リング状、L字形、U字形、T字形、Y字形、クランク形等であってもよい。また、第1接続電極および第2接続電極の個数、配置は、電気素子に構成される回路に応じて適宜変更可能である。
【0076】
さらに、以上に示した各実施形態では、第1接続電極P11,P12および第2接続電極P21,P22が、信号用の電極である例を示したが、本発明の「接続電極」の用途はこれに限定されるものではない。接続電極は、例えばグランドに接続するためのグランド電極でもよく、他の部材に対する位置決め用の補助電極でもよい。なお、第1接続電極P11,P12および第2接続電極P21,P22には、例えばNiを下地としたAuめっき処理が施されていてもよい。また、第1接続電極P11,P12および第2接続電極P21,P22の表面に、はんだがプリコートされていてもよい。
【0077】
以上に示した各実施形態では、層間接続導体V11,V12,V13,V21,V22,V23が、樹脂材料を含んだビア導体である例を示したが、この構成に限定されるものではない。これら層間接続導体は、例えば絶縁基材を貫通して複数の導体パターン同士を互いに接続するスルーホールめっきやフィルドビアめっきでもよい。
【0078】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0079】
CN1…第1接続部
CN2…第2接続部
TL…線路部
DL1,DL2…分割線
LR…レーザー
P11,P12…第1接続電極
P21,P22…第2接続電極
PS…回路基板の上面
S1…絶縁基材の第1主面
S2…絶縁基材の第2主面
SS1…絶縁基材の第1側面
SS2…絶縁基材の第2側面
SS3…絶縁基材の第3側面
V11,V12,V13,V21,V22,V23…層間接続導体
1…金属筐体
10,10A,10B…絶縁基材
11,12,13…基材層
21,22…導体パターン
31…金属部材
51,52,53,54…部品
101,102…電気素子
201…マザー基板
301…回路基板
401…電子機器