(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】振動装置及び光学検出装置
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20220628BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20220628BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20220628BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220628BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
G03B17/02
G03B17/56 Z
G03B15/00 V
H01L41/09
(21)【出願番号】P 2020527177
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2019002546
(87)【国際公開番号】W WO2020003572
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018123351
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 克己
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/022382(WO,A1)
【文献】特開2017-170303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/06
G03B 17/02
G03B 17/56
G03B 15/00
H01L 41/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向及び軸方向を有し、第1の端部と、前記軸方向において前記第1の端部とは反対側に位置している第2の端部と、外周面から前記径方向外側に延ばされた第1及び第2のフランジ部とを有する円筒体と、
前記円筒体の前記第1の端部に連結された透光体と、
前記円筒体の前記第1又は第2のフランジ部を振動させるように設けられた振動素子とを備え、
前記第1のフランジ部が前記軸方向において前記第2のフランジ部よりも前記第1の端部側に位置して
おり、
前記円筒体の外周面において、前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部との間に第3のフランジ部が設けられている、振動装置。
【請求項2】
前記第3のフランジ部が複数設けられている、請求項
1に記載の振動装置。
【請求項3】
径方向及び軸方向を有し、第1の端部と、前記軸方向において前記第1の端部とは反対側に位置している第2の端部と、外周面から前記径方向外側に延ばされた第1及び第2のフランジ部とを有する円筒体と、
前記円筒体の前記第1の端部に連結された透光体と、
前記円筒体の前記第1又は第2のフランジ部を振動させるように設けられた振動素子とを備え、
前記第1のフランジ部が前記軸方向において前記第2のフランジ部よりも前記第1の端部側に位置しており、
前記第1のフランジ部と、前記第2のフランジ部とが逆相で変位する、振動装置。
【請求項4】
前記第1のフランジ部の共振周波数と、前記第2のフランジ部の共振周波数とが等しい、請求項
3に記載の振動装置。
【請求項5】
前記透光体と前記円筒体とを連結している連結部材をさらに備える、請求項1
~4のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項6】
前記円筒体の内周面から径方向内側に延ばされた支持部が設けられており、前記支持部に前記連結部材が固定されている、請求項
5に記載の振動装置。
【請求項7】
前記第2のフランジ部に、前記振動素子が固定されており、前記振動素子を駆動することにより、前記第1のフランジ部の外周縁が前記軸方向に変位するように前記第1のフランジ部が振動する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項8】
前記振動素子が圧電素子である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項9】
前記圧電素子が、前記円筒体に固定されている、請求項
8に記載の振動装置。
【請求項10】
前記第1のフランジ部が前記第1の端部に、前記第2のフランジ部が前記第2の端部に位置している、請求項1~
9のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項11】
前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部との間の位置において、前記円筒体の内周面に前記透光体が連結されている、請求項1~
10のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項12】
前記第3のフランジ部に連結されており、前記円筒体を外部から支持する支持部材をさらに備える、請求項1~
11のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項13】
前記第1のフランジ部の外周縁から、前記径方向内側に折り返された折り返し部が設けられている、請求項1~
12のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項14】
前記折り返し部の外周縁に、切欠きが設けられている、請求項
13に記載の振動装置。
【請求項15】
前記第1のフランジ部の外周縁から、前記第2のフランジ部に対して遠ざかる方向に延ばされた壁部が設けられている、請求項1~
14のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項16】
前記壁部が、前記軸方向に平行に延ばされている、請求項
15に記載の振動装置。
【請求項17】
前記壁部が、前記第1のフランジ部の外周縁に沿って複数設けられており、前記複数の壁部間が切欠きとされている、請求項
15又は
16に記載の振動装置。
【請求項18】
前記壁部が、前記第1のフランジ部の外周縁に連なった筒状部である、請求項
15又は
16に記載の振動装置。
【請求項19】
前記第1のフランジ部及び前記第2のフランジ部の外周が、円形である、請求項1~
18のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項20】
請求項1~
19のいずれか1項に記載の振動装置と、
前記透光体に検出領域が含まれるように配置されている光学検出素子と、
を備える、光学検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージングデバイス等において、液滴等を除去するのに用いられる振動装置及び光学検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラやLIDAR装置等のイメージングデバイスにおいては、その視野を常に明瞭にすることが求められている。例えば、車載用途などの屋外で使用されるカメラでは、雨滴などの水滴を除去するための手法が種々提案されている。下記の特許文献1に記載の構造では、カメラ本体の前方に、カバーとしての透光性部分が配置されている。この透光性部分を含む振動装置が構成されている。透光性部分に局在化された振動を発生させることにより、雨滴を移動させ、かつ霧化する。この振動装置では、透光性部分や周辺部に意図的に局在部を作り、中央部以外の部分に振動の腹を位置させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の振動装置では、透光体やその周辺部にある局在振動部を振動させることにより、水滴の移動及び霧化が図られている。しかしながら、このような構造では、透光体を通して外側を撮影した映像に影響し、周辺部に局在振動部がある場合には特に振幅を大きくする必要がある。振幅が小さくなると、霧化が充分に行えない。そのため、駆動電圧を高くする必要があり、効率が低いという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、液滴等を効率的に除去することができる、振動装置及び光学検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る振動装置は、径方向及び軸方向を有し、第1の端部と、前記軸方向において前記第1の端部とは反対側に位置している第2の端部と、外周面から前記径方向外側に延ばされた第1及び第2のフランジ部とを有する円筒体と、前記円筒体の前記第1の端部に連結された透光体と、前記円筒体の前記第1又は第2のフランジ部を振動させるように設けられた振動素子とを備え、前記第1のフランジ部が前記軸方向において前記第2のフランジ部よりも前記第1の端部側に位置している。
【0007】
本発明に係る光学検出装置は、本発明に従って構成された振動装置と、前記透光体に検出領域が含まれるように配置されている光学検出素子と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液滴等を効率的に除去することができる、振動装置及び光学検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置の部分切欠き斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置を有するイメージングデバイスの模式的正面断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置の半断面正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置の要部を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、第1の実施形態で用いられる圧電素子を示す斜視図及び正面断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置のインピーダンス特性を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置における第1~第3のフランジ部の振動姿態を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、第1の比較例の振動装置における第1~第3のフランジ部の振動姿態を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る振動装置のインピーダンス特性を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る振動装置における第1~第3のフランジ部の振動姿態を説明するための模式図である。
【
図11】
図11は、第2の比較例の振動装置における第1~第3のフランジ部の振動姿態を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、本発明の第3の実施形態に係る振動装置のインピーダンス特性を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の第3の実施形態に係る振動装置における第1~第3のフランジ部の振動姿態を説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、第3の比較例の振動装置における第1~第3のフランジ部の振動姿態を説明するための模式図である。
【
図15】
図15は、本発明における第4の実施形態に係る振動装置を説明するための部分切欠き斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明における第5の実施形態に係る振動装置を説明するための部分切欠き斜視図である。
【
図17】
図17は、本発明における第5の実施形態に係る振動装置の振動姿態を説明するための模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0011】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0012】
図1は本発明の第1の実施形態に係る振動装置の部分切欠き斜視図である。
図2は本発明の第1の実施形態に係る振動装置を有するイメージングデバイスの模式的正面断面図である。
図3は
図1に示した振動装置の半断面正面図である。
【0013】
図2に示すイメージングデバイス10は、振動装置1とカメラ11とを有する。カメラ11は撮像素子を有している。撮像素子の前方に、すなわち
図2において上方に、レンズ12が配置されている。上記撮像素子としては、特に限定されず、可視光から遠赤外領域のいずれかの波長の光を受光する受光素子を用いることができる。このような撮像素子の例としては、CMOS、CCD、ボロメーターまたはサーモパイル等が挙げられる。また、イメージングデバイス10はカメラ11に限定されず、RadarやLIDARデバイスなどであっても良い。
【0014】
振動装置1は、円筒体2を有する。この円筒体2の内部空間に、上記カメラ11やレンズ12が配置されている。
【0015】
上記レンズ12の前方に、透光体21が配置されている。透光体21は、光や電磁波を通過させる適宜の材料から成る。イメージングデバイス10は、上記透光体21の外側に位置している部材や環境を、カメラ11により撮影するように構成されている。
【0016】
透光体21は、ドーム状の形状を有している。もっとも、透光体21は、平板状などの他の形状を有していても良い。
【0017】
透光体21の外周縁部が、連結部材22に固定されている。連結部材22は筒状部22aと、筒状部22aの一端から径方向外側に延ばされたフランジ部22bとを有する。フランジ部22bの上面に、透光体21が固定されている。筒状部22aの下端が、円筒体2に固定されている。
【0018】
円筒体2は、軸方向を有する。この軸方向一端が第1の端部2aであり、他端が第2の端部2bである。第1の端部2aが、透光体21側に位置している。円筒体2の内周面から径方向内側に延ばされた環状の支持部2cが設けられている。支持部2cに、連結部材22の筒状部22aが固定されている。それによって、透光体21が円筒体2に連結部材22により連結されている。なお、支持部2cは環状でなくともよい。
【0019】
円筒体2は、第1のフランジ部2dと第2のフランジ部2eと第3のフランジ部2fとを有する。第1のフランジ部2d、第2のフランジ部2e及び第3のフランジ部2fは、円筒体2の外周面から径方向外側に延ばされた、ドーナツ状の形状を有する。第1のフランジ部2dと、第2のフランジ部2eと、第3のフランジ部2fの外周縁は、円形の形状を有している。本実施形態では、第1~第3のフランジ部2d~2fの外周縁を規定している円の大きさは等しくされている。もっとも、第1~第3のフランジ部2d~2fの外周縁は、必ずしも同じ寸法の円ではなくとも良い。
【0020】
また、第1のフランジ部2dは、第1の端部2aに沿うように設けられており、第2のフランジ部2eは、第2の端部2bに沿うように設けられている。もっとも、第1のフランジ部2dは第1の端部2aよりも軸方向において第2の端部2b側に位置していても良い。第2のフランジ部2eについても、第2の端部2bよりも第1の端部2a側に位置していても良い。
【0021】
第3のフランジ部2fは、軸方向において、第1のフランジ部2dと第2のフランジ部2eとの間に位置している。本実施形態では、第1のフランジ部2dと、第2のフランジ部2eとの間の部分が振動のノードとなっている。そのため、第3のフランジ部2fは、第1のフランジ部2dと第2のフランジ部2eとの間の中央に位置していることが好ましい。もっとも、第1のフランジ部2dと第2のフランジ部2eとが、円筒体2の軸方向中央に対して対称に設けられていない場合には、振動のノード域は円筒体2の軸方向中央から第1の端部2a側または第2の端部2b側にずれることがある。その場合には、振動のノードとなる位置に第3のフランジ部2fを配置することが好ましい。もっとも、第3のフランジ部2fは、必ずしも振動のノードに正確に配置されなくともよい。
【0022】
前述した支持部2cは、軸方向において、第1のフランジ部2dと第2のフランジ部2eとの間に位置している。従って、支持部2cも振動のノード付近に位置している。
【0023】
上記第1のフランジ部2dと、第2のフランジ部2eは、その内側端部が円筒体2に連なっている。従って、
図4に拡大して示すように、円筒体2、第1のフランジ部2d及び第2のフランジ部2eは、円筒体2の径方向及び軸方向に沿う断面において、音叉状の形状を有している。また、第3のフランジ部2fを含めると、第1のフランジ部2d、第2のフランジ部2e及び第3のフランジ部2fは、円筒体2と共に、三脚音叉の形状を有している。
【0024】
円筒体2の第2の端部2bに、圧電素子23が固定されている。
図5(a),
図5(b)に示すように、圧電素子23は、円環状の圧電体23aを有する。圧電体23aの一方面に第1の励振電極23bが、他方面に第2の励振電極23cが設けられている。圧電体23aは、厚み方向に分極処理されている。第1の励振電極23bと第2の励振電極23cとの間に交流電圧を印加すると、圧電素子23が厚み方向に変位し、振動する。
【0025】
圧電素子23は、第2のフランジ部2eの第2の端部2b側の面に固定されている。したがって、圧電素子23が振動すると、それに伴って、円筒体2において、第2のフランジ部2eと、第1のフランジ部2dとが振動する。この振動は、第1のフランジ部2d及び第2のフランジ部2eの外周縁が円筒体2の軸方向に沿う変位を繰り返すように生じる。
【0026】
第1のフランジ部2dにおける振動は、フランジ形状独特の振動である。好ましくは、第1のフランジ部2dの振動の共振周波数と、第2のフランジ部2eの振動の共振周波数とがほぼ等しくされる。本実施形態では、両者の共振周波数が等しくされている。したがって、振動のノードが、円筒体2の軸方向中央に位置している。よって、第3のフランジ部2fは振動のノードに位置している。したがって、支持部材3が第3のフランジ部2fに固定されているが、この支持によって振動が阻害され難い。
【0027】
図6は本実施形態の振動装置1のフリーの状態におけるインピーダンス特性を示す。圧電素子23を駆動すると、
図6にA,B,Cで示す共振が表れる。ここで、本実施形態の振動装置1における共振は、共振Aであり、この場合の振動姿態を
図7に示す。
図7は、円筒体2の径方向及び軸方向に沿う断面の振動姿態を示す。一点鎖線は、変位していない初期状態の姿態を示し、実線が第1のフランジ部2d及び第2のフランジ部2eが第3のフランジ部2f側に最大変位している状態の振動姿態を示す。なお、
図7及び後述の
図8、
図10、
図11、
図13、
図14において、矢印は変位の方向を示し、矢印の長さが変位の大きさに対応している。共振Aでは、第1のフランジ部2dの先端と、第2のフランジ部2eの先端とが軸方向において逆相で変位する。この場合、第3のフランジ部2fはほとんど変位しないことがわかる。したがって、振動を阻害することなく、円筒体2を支持し、第1のフランジ部2dの変位を効率よく利用し得ることがわかる。また、支持部2cもほとんど変位していない。
【0028】
他方、
図8は
図6の共振Bに相当する振動姿態を示す図である。この振動姿態は、振動装置1を支持部材3により支持していない場合の振動姿態を示す。
図8においても、一点鎖線は振動していない状態の姿態を示し、実線は第1のフランジ部2d及び第2のフランジ部2eが最大変位している状態の振動姿態を示す。
図8に示すように、共振Bでは、第1のフランジ部2dの先端と、第2のフランジ部2eの先端とが軸方向において同相で振動する。共振Bは共振Aより大きな応答を有するが、
図8に示すように、第3のフランジ部2fが大きく変位していることがわかる。したがって、第3のフランジ部2fを支持部材3に連結した場合、円筒体2の振動を阻害する。より具体的には、支持部材3により支持された場合、圧電効果によって共振が生じても第3のフランジ部2fが固定されることにより、振動に制動がかけられる。そのため第1のフランジ部2dの振幅も小さくなる。従って、
図6に示す明瞭な共振Bは固定によって大きく変動してしまい、ほとんど見えなくなるか、不安定なものとなる。よって、
図6に示す大きな共振Bは、実際には得られない。
【0029】
図1~
図8に示したように、振動装置1では、その外周縁が円筒体2の軸方向に沿って変位するように、第1のフランジ部2dが振動する。
【0030】
透光体21は連結部材22を介して円筒体2に固定されている。この場合、支持部2cが振動のノード付近に位置している。
【0031】
振動装置1では、透光体21から連結部材22のフランジ部22bを介して、第1のフランジ部2dに至った液滴が、上記第1のフランジ部2dの振動により第1のフランジ部2dの外に飛散されたり、霧化されたりする。
【0032】
好ましくは、透光体21の表面が親水性とされる。すなわち、親水性の膜が透光体21の表面に設けられていてもよく、透光体21が親水性材料から成るものであっても良い。その場合には、透光体21の外表面に付着した液滴が、より速やかに第1のフランジ部2d側に移動する。
【0033】
本実施形態の振動装置1では、透光体21を必ずしも振動させなくとも良い。したがって、透光体21はプラスチックなどの非共振性材料により構成されても良い。よって、振動装置1では光学系の設計の自由度も高めることができる。もっとも、透光体21は、共振性の材料から成るものであっても良い。
【0034】
上記のように、本実施形態の振動装置1では、第1のフランジ部2dにおいて、移動してきた液滴を効果的に、第1のフランジ部2d外へ飛散させたり、効果的に霧化したりすることができる。そのため、振動装置1では、駆動効率を高めることができ、より低い電圧で液滴の除去を行うことができる。
【0035】
また、振動装置1では、円筒体2の内部にカメラ11などが配置されるが、この円筒体2の第1の端部2a側では、連結部材22及び透光体21を用いて内部を封止することができる。また、外部からの支持は円筒体2の外周面側において、例えば支持部材3により達成することができる。筒状の支持部材3は、その中心軸が円筒体2の中心軸と同軸に配置されている。支持部材3は、円筒体2の他端側の一部の外周面側を覆うとともに、円筒体2の軸方向外側まで延ばされている。筒状の支持部材3は、その一端側に、径方向内側に向かって延びる、中心に開口を有する平板部分を有する。平板部分の開口側の上面が、第3のフランジ部2fの下面の周方向に沿って延びており、第3のフランジ部2fを支持している。筒状の支持部材3の他端は、ベースプレート4によって封止されている。そのため、円筒体2の内部を容易に密閉することができる。したがって、筒状の支持部材3及びベースプレート4を用いて、イメージングデバイス10の内部を密閉することができる。よって、カメラ11やカメラ11を有する撮像素子、これらを駆動する回路及び圧電素子23などを外部から遮蔽することができる。従って、イメージングデバイス10の信頼性及び耐環境特性も高めることができる。
【0036】
第1の実施形態の振動装置では、第1のフランジ部2dと第2のフランジ部2eとの間に1つの第3のフランジ部2fが設けられていたが、本発明においては、第3のフランジ部2fは複数設けられていても良い。
【0037】
第2の実施形態の振動装置では、2枚の第3のフランジ部2fが設けられている。この第2の実施形態の振動装置のインピーダンス特性を
図9に示す。
図9は支持部材により外部で支持していない状態でのインピーダンス特性を示す。
図9では共振Dと共振Eとがインピーダンス特性上に表れている。共振Dが第2の実施形態で使用する共振である。
図10は、第2の実施形態の振動装置における円筒体の径方向及び軸方向に沿う断面での振動姿態を説明するための模式図である。一点鎖線が振動していない状態の姿態を示し、実線が最大変位状態の振動姿態である。第1のフランジ部2dの先端と第2のフランジ部2eの先端は、円筒体2の軸方向において、逆相で振動する。
図10から明らかなように、この場合、第3のフランジ部2f,2fは振動していない。したがって、第3のフランジ部2f,2fのいずれかを利用して外部から支持すれば良い。あるいは、第3のフランジ部2f,2fの双方を外部と接続しても良い。
【0038】
また、支持部2cも変位していないことがわかる。したがって、透光体21を振動させずに、第1のフランジ部2dを振動させ得ることがわかる。
【0039】
他方、
図11は
図9の共振Eで円筒体2が振動した場合の振動姿態を示す図である。ここでは、第1のフランジ部2dの先端が大きく変位し、第2のフランジ部2eの先端も大きく変位しているが、第3のフランジ部2f,2f及び支持部2cが図示のように変位してしまうことがわかる。したがって、実際に第3のフランジ部2f,2fにより外部から支持した場合、円筒体2における振動が制動され、大きな振幅を得ることはできない。
【0040】
第3の実施形態の振動装置では、3枚の第3のフランジ部2fが設けられている。この第3の実施形態の振動装置のインピーダンス特性を
図12に示す。
図12は支持部材により外部で支持していない状態でのインピーダンス特性を示す。
図12では共振Fと共振Gとがインピーダンス特性上に表れている。共振Fが第3の実施形態で使用する共振である。
図13は、第3の実施形態の振動装置における円筒体の径方向及び軸方向に沿う断面での振動姿態を説明するための模式図である。一点鎖線が振動していない状態の姿態を示し、実線が最大変位状態の振動姿態である。第1のフランジ部2dの先端と第2のフランジ部2eの先端は、円筒体2の軸方向において、逆相で振動する。
図13から明らかなように、この場合、第3のフランジ部2f,2f,2fは振動していない。したがって、第3のフランジ部2f,2f,2fのいずれかを利用して外部から支持すれば良い。あるいは、第3のフランジ部2f,2f,2fの全てを外部と接続しても良い。
【0041】
また、支持部2cも変位していないことがわかる。したがって、透光体21を振動させずに、第1のフランジ部2dを振動させ得ることがわかる。
【0042】
他方、
図14は
図12の共振Gで円筒体2が振動した場合の振動姿態を示す図である。ここでは、第1のフランジ部2dの先端が大きく変位し、第2のフランジ部2eの先端も大きく変位しているが、第3のフランジ部2f,2f,2f及び支持部2cが図示のように変位してしまうことがわかる。したがって、実際に第3のフランジ部2f,2f,2fにより外部から支持した場合、振動が制動され、大きな振幅を得ることはできない。
【0043】
上記第2の実施形態では、円筒体2の径方向及び軸方向に沿う断面において、四脚音叉の形状を有していた。また、第3の実施形態では五脚音叉の形状を有していた。このように、本発明における円筒体2と第1~第3のフランジ部2d~2fで構成される音叉状の断面形状は特に限定されない。すなわち、二脚であってもよく、三脚であってもよく、四脚であってもよく、五脚以上であってもよい。本発明においては、少なくとも第1のフランジ部2dと第2のフランジ部2eとが円筒体2の外周面に設けられていればよい。円筒体2は、断面において二脚以上の音叉形状を有し、その二脚以上の断面音叉形状を円筒体2の中心軸に対して回転させた外面形状を有していればよい。
【0044】
もっとも、好ましくは、少なくとも1つの第3のフランジ部2fが設けられていることが望ましい。それによって、外部からの支持を容易に行うことができる。また、上記のとおり、第3のフランジ部2fが複数設けられていても良い。
【0045】
また、第1のフランジ部2dが第1の端部2aに、第2のフランジ部2eが第2の端部2bに位置していることが好ましい。それによって、第1のフランジ部2dをより大きな振幅で容易に変位させることができる。
【0046】
透光体21は連結部材22を介して円筒体2に連結されている。この場合、円筒体2の内周面に、連結部材22が固定され、透光体21が円筒体2に連結されている。上記連結部分は特に限定されないが、円筒体2の内周面において、第2の端部2bよりも第1の端部2a側であることが望ましい。
【0047】
また、第1のフランジ部2dの共振周波数と第2のフランジ部2eの共振周波数は等しいことが望ましい。その場合に、第3のフランジ部2fの変位をより効果的に抑制することができる。この場合、共振周波数を一致させるには、第1のフランジ部2dと第2のフランジ部2eの材料及び寸法が等しいことが好ましいが、共振周波数を一致させる限り、材料や寸法は異なっていても良い。
【0048】
図15は本発明の第4の実施形態に係る振動装置を説明するための部分切欠き斜視図である。振動装置41は円筒体2Aを有する。円筒体2Aは、第1の実施形態と同様に、第1~第3のフランジ部2d~2fを有する。第2のフランジ部2eの第2の端部2b側の面に圧電素子23が固定されている。第1の実施形態と異なるのは、円筒体2Aにおいて、第1のフランジ部2dの外周縁から径方向内側に折り返された折り返し部42が設けられていることにある。折り返し部42は、平面視においてドーナツ状の形状を有している。折り返し部42は、第1のフランジ部2dの第2のフランジ部2e側とは反対側の面に対して隙間を隔てて対向している。この折り返し部42が設けられていることにより、第1のフランジ部2dの円筒体2Aの軸方向における変位をより一層大きくすることができる。したがって、液滴をより効果的に除去することができる。
【0049】
なお、折り返し部42の第1のフランジ部2dと対向している部分は、第1のフランジ部2dと平行に延ばされていることが望ましい。
【0050】
また、折り返し部42には、周方向に沿った複数の切欠き42aが設けられている。この切欠き42aが設けられていると、第1のフランジ部2dと折り返し部42との間に至った液滴を外部に速やかに排出させることができる。もっとも、切欠き42aは設けられずとも良い。
【0051】
図16は本発明の第5の実施形態に係る振動装置を説明するための部分切欠き斜視図である。振動装置51では、円筒体2Bにおいて、第1のフランジ部2dの外周縁から円筒体2Bの軸方向において、第2のフランジ部2eに対して遠ざかる方向に延ばされた壁部52,52,52が設けられている。ここでは、複数の壁部52,52,52が設けられているが、第1のフランジ部2dの外周縁全体から円筒体2Bの軸方向に延ばされた筒状の壁部が設けられても良い。本実施形態では複数の壁部52,52,52は、円筒体2Bの軸方向と平行に延ばされている。隣り合う壁部52間は切欠き52aとされている。切欠き52aが設けられていると、第1のフランジ部2d上に付着した液滴が、切欠き52aから外部に速やかに排出される。
【0052】
図17は、振動装置51における振動姿態を示す模式的断面図である。
図17においても、矢印は変位の方向及び変位の大きさを示す。壁部52が設けられていることにより、円筒体2Bを振動させた場合、第1のフランジ部2dの外周縁が軸方向に変位するに際し、壁部52の円筒体2Bの軸方向端部、
図16での上端が径方向に大きく変位する。したがって、振幅を大きくすることができるため、液滴の除去をより効果的に行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1,41,51…振動装置
2,2A,2B…円筒体
2a,2b…第1,第2の端部
2c…支持部
2d,2e,2f…第1~第3のフランジ部
3…支持部材
4…ベースプレート
10…イメージングデバイス
11…カメラ
12…レンズ
21…透光体
22…連結部材
22a…筒状部
22b…フランジ部
23…圧電素子
23a…圧電体
23b,23c…第1,第2の励振電極
42…折り返し部
42a…切欠き
52…壁部
52a…切欠き