(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】弾性波装置、帯域通過型フィルタ、デュプレクサ及びマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20220628BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H03H9/145 D
H03H9/25 C
(21)【出願番号】P 2020553286
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2019040884
(87)【国際公開番号】W WO2020080463
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2018196266
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道上 彰
(72)【発明者】
【氏名】大門 克也
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/191122(WO,A1)
【文献】特開2003-289234(JP,A)
【文献】特開2017-076903(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117231(WO,A1)
【文献】特開2018-129683(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181111(WO,A1)
【文献】特開2000-165184(JP,A)
【文献】特開2001-332954(JP,A)
【文献】特開2013-183224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンタル酸リチウムからなる圧電体層を含む圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられているIDT電極と、
前記圧電性基板上における、前記IDT電極の弾性波伝搬方向両側に設けられている一対の反射器と、
を備え、
SH波を主モードとして利用しており、
前記IDT電極及び前記反射器がそれぞれ複数の電極指を有し、
前記電極指が延びる方向に直交する方向に沿う長さを幅としたときに、前記反射器が、幅が異なる第1の電極指と第2の電極指と、を有し、
前記反射器の任意の部分において連続した4本の前記電極指が、前記第1の電極指及び前記第2の電極指の両方を含み、かつ前記連続した4本の電極指の電極指中心間距離が同じであ
り、
前記反射器における前記第1の電極指及び前記第2の電極指を含む連続した前記4本の電極指の配列を1組の電極指の配列としたときに、前記反射器において前記1組の電極指の配列が周期的に配置されている、弾性波装置。
【請求項2】
タンタル酸リチウムからなる圧電体層を含む圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられているIDT電極と、
前記圧電性基板上における、前記IDT電極の弾性波伝搬方向両側に設けられている一対の反射器と、
を備え、
SH波を主モードとして利用しており、
前記IDT電極及び前記反射器がそれぞれ複数の電極指を有し、
前記電極指が延びる方向に直交する方向に沿う長さを幅としたときに、前記反射器が、幅が異なる第1の電極指と第2の電極指と、を有し、
前記反射器の任意の部分において連続した4本の前記電極指が、前記第1の電極指及び前記第2の電極指の両方を含み、かつ前記連続した4本の電極指の電極指中心間距離が同じであり、
前記反射器における前記第1の電極指及び前記第2の電極指を含む連続した3本の前記電極指の配列を1組の電極指の配列としたときに、前記反射器において前記1組の電極指の配列が周期的に配置されている
、弾性波装置。
【請求項3】
前記IDT電極の電極指中心間距離が全て同じであり、前記反射器の電極指中心間距離が全て同じである、請求項1
または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記IDT電極の電極指中心間距離と、前記反射器の電極指中心間距離とが同じである、請求項
3に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記IDT電極の前記複数の電極指の幅が全て同じである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記圧電性基板が高音速基板を有し、
前記高音速基板上に、直接的または間接的に前記圧電体層が設けられており、
前記高音速基板を伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体層を伝搬する弾性波の音速よりも高い、請求項1~
5のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記圧電性基板が、前記高音速基板と前記圧電体層との間に設けられている低音速膜を有し、
前記低音速膜を伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体層を伝搬するバルク波の音速よりも低い、請求項
6に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記圧電性基板が、支持基板と、前記支持基板上に設けられている高音速膜と、前記高音速膜上に設けられている低音速膜と、を有し、
前記低音速膜上に前記圧電体層が設けられており、
前記低音速膜を伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体層を伝搬するバルク波の音速よりも低く、
前記高音速膜を伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体層を伝搬する弾性波の音速よりも高い、請求項1~
5のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項9】
直列腕共振子及び並列腕共振子を含む複数の弾性波共振子を備え、
前記複数の弾性波共振子のうち少なくとも1つが請求項1~
8のいずれか1項に記載の弾性波装置である、帯域通過型フィルタ。
【請求項10】
アンテナに接続される帯域通過型フィルタであって、
前記複数の弾性波共振子のうち最もアンテナ端側に配置されている前記弾性波共振子が、前記弾性波装置である、請求項
9に記載の帯域通過型フィルタ。
【請求項11】
アンテナに接続されるアンテナ端子と、
前記アンテナ端子に共通接続されており、かつ通過帯域が異なる第1の帯域通過型フィルタ及び第2の帯域通過型フィルタと、
を備え、
前記第1の帯域通過型フィルタ及び前記第2の帯域通過型フィルタのうち少なくとも一方が請求項
9または
10に記載した帯域通過型フィルタである、デュプレクサ。
【請求項12】
アンテナに接続されるアンテナ端子と、
前記アンテナ端子に共通接続されており、かつ通過帯域が異なる複数の帯域通過型フィルタと、
を備え、
前記複数の帯域通過型フィルタのうち少なくとも1つが請求項
9または
10に記載した帯域通過型フィルタである、マルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置、帯域通過型フィルタ、デュプレクサ及びマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波装置は携帯電話機のフィルタなどに広く用いられている。下記の特許文献1には、弾性波装置の一例が開示されている。この弾性波装置においては、カット角30°以上、60°以下のLiTaO3膜上に、IDT電極が設けられている。IDT電極の弾性波伝搬方向両側には反射器が設けられている。この弾性波装置は、主モードとしてSH波を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本願発明者は、主モードとしてSH波を利用する弾性波装置においては、主モードの共振周波数の0.75倍付近の周波数帯において、不要波であるレイリー波によるレスポンスが生じるという課題に着目した。レイリー波によるレスポンスが生じた場合、そのレスポンスによって、弾性波装置の減衰特性や反射特性が劣化するおそれがある。しかしながら、特許文献1の記載では、このような課題の認識がなく、従って、レイリー波によるスプリアスを十分に抑制することはできない。
【0005】
本発明の目的は、レイリー波によるスプリアスを抑制することができる、弾性波装置、帯域通過型フィルタ、デュプレクサ及びマルチプレクサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性波装置は、タンタル酸リチウムからなる圧電体層を含む圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられているIDT電極と、前記圧電性基板上における、前記IDT電極の弾性波伝搬方向両側に設けられている一対の反射器とを備え、SH波を主モードとして利用しており、前記IDT電極及び前記反射器がそれぞれ複数の電極指を有し、前記電極指が延びる方向に直交する方向に沿う長さを幅としたときに、前記反射器が、幅が異なる第1の電極指と第2の電極指とを有し、前記反射器の任意の部分において連続した4本の前記電極指が、前記第1の電極指及び前記第2の電極指の両方を含み、かつ前記連続した4本の電極指の電極指中心間距離が同じである。
【0007】
本発明に係る帯域通過型フィルタは、直列腕共振子及び並列腕共振子を含む複数の弾性波共振子を備え、前記複数の弾性波共振子のうち少なくとも1つが本発明に従い構成された弾性波装置である。
【0008】
本発明に係るデュプレクサは、アンテナに接続されるアンテナ端子と、前記アンテナ端子に共通接続されており、かつ通過帯域が異なる第1の帯域通過型フィルタ及び第2の帯域通過型フィルタとを備え、前記第1の帯域通過型フィルタ及び前記第2の帯域通過型フィルタのうち少なくとも一方が本発明に従い構成された帯域通過型フィルタである。
【0009】
本発明に係るマルチプレクサは、アンテナに接続されるアンテナ端子と、前記アンテナ端子に共通接続されており、かつ通過帯域が異なる複数の帯域通過型フィルタとを備え、前記複数の帯域通過型フィルタのうち少なくとも1つが本発明に従い構成された帯域通過型フィルタである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レイリー波によるスプリアスを抑制することができる、弾性波装置、帯域通過型フィルタ、デュプレクサ及びマルチプレクサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態におけるIDT電極の電極指付近を示す拡大模式的正面断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態におけるIDT電極及び反射器の一部を示す模式的平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態におけるIDT電極及び反射器の一部を示す模式的正面断面図である。
【
図5】
図5は、比較例における主モードの位相及びスプリアスの位相を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態及び比較例におけるスプリアスの位相を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明における反射器の1組の電極指の配列の例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第2の実施形態におけるIDT電極及び反射器の一部を示す模式的正面断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第2の実施形態及び比較例におけるスプリアスの位相を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の第3の実施形態におけるIDT電極及び反射器の一部を示す模式的正面断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第3の実施形態及び比較例におけるスプリアスの位相を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の第4の実施形態におけるIDT電極及び反射器の一部を示す模式的正面断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第4の実施形態及び比較例におけるスプリアスの位相を示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の第5の実施形態に係る帯域通過型フィルタの回路図である。
【
図18】
図18は、本発明の第6の実施形態に係るデュプレクサの模式的回路図である。
【
図19】
図19は、本発明の第7の実施形態に係るマルチプレクサの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0013】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【0015】
弾性波装置1は圧電性基板2を有する。圧電性基板2は、支持基板3と、支持基板3上に設けられている高音速膜4と、高音速膜4上に設けられている低音速膜5と、低音速膜5上に設けられている圧電体層6とを有する。圧電体層6は、カット角がYカット55°のタンタル酸リチウム膜である。なお、圧電性基板2の構成は上記に限定されず、例えば、圧電性基板2は圧電体層6のみからなっていてもよい。この場合には、圧電性基板2はタンタル酸リチウム基板である。
【0016】
圧電性基板2における圧電体層6上には、IDT電極7が設けられている。IDT電極7は複数の電極指7aを有する。IDT電極7に交流電圧を印加することにより、弾性波が励振される。弾性波装置1はSH波を主モードとして利用する。SH波を主モードとして利用する場合には、主モードの共振周波数の0.75倍付近の周波数帯において、レイリー波によるスプリアスが生じる。なお、例えば、SH波を主モードとして利用する場合には、圧電体層6のオイラー角を(φ,θ,ψ)で表記すると、-10°<φ<10°、60°<θ<175°、-10°<ψ<10°の範囲内であることが望ましい。
【0017】
圧電体層6におけるIDT電極7の弾性波伝搬方向両側には、一対の反射器8及び反射器9が設けられている。反射器8及び反射器9はそれぞれ複数の電極指を有する。このように、本実施形態の弾性波装置1は弾性波共振子である。
【0018】
圧電性基板2における低音速膜5は、相対的に低音速な膜である。より具体的には、低音速膜5を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層6を伝搬するバルク波の音速よりも低い。低音速膜5は、SiOxにより表される酸化ケイ素を主成分とする。xは任意の正の整数値である。本実施形態では、低音速膜5はSiO2膜である。なお、低音速膜5の材料は上記に限定されず、酸化ケイ素、ガラス、酸窒化ケイ素、酸化タンタル、また、酸化ケイ素にフッ素や炭素やホウ素を加えた化合物など、上記材料を主成分とした媒質を用いることもできる。
【0019】
高音速膜4は相対的に高音速な膜である。より具体的には、高音速膜4を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層6を伝搬する弾性波の音速よりも高い。本実施形態では、高音速膜4は窒化ケイ素膜である。なお、高音速膜4の材料は上記に限定されず、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、シリコン、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶、アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、マグネシア、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜またはダイヤモンドなど、上記材料を主成分とする媒質を用いることもできる。
【0020】
支持基板3は、本実施形態ではシリコン基板である。なお、支持基板3の材料は上記に限定されず、酸化アルミニウム、ダイヤモンド、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶等の圧電体、アルミナ、マグネシア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライトなどの各種セラミック、サファイア、ガラスなどの誘電体、窒化ガリウム等の半導体または樹脂などを用いることもできる。
【0021】
本実施形態においては、弾性波装置1は支持基板3、高音速膜4、低音速膜5及び圧電体層6がこの順序で積層された積層体である圧電性基板2を有する。それによって、弾性波のエネルギーを圧電体層6側に効果的に閉じ込めることができる。
【0022】
図2は、第1の実施形態におけるIDT電極の電極指付近を示す拡大模式的正面断面図である。
【0023】
IDT電極7は、圧電性基板2側から、第1の金属層7c、第2の金属層7d及び第3の金属層7eがこの順序で積層された積層金属膜からなる。第1の金属層7cはTi層であり、第2の金属層7dはAl層であり、第3の金属層7eはTi層である。本実施形態では、反射器8及び反射器9もIDT電極7と同様の積層金属膜からなる。なお、IDT電極7、反射器8及び反射器9の材料及び層数は上記に限定されない。あるいは、IDT電極7、反射器8及び反射器9は単層の金属膜からなっていてもよい。
【0024】
図3は、第1の実施形態におけるIDT電極及び反射器の一部を示す模式的平面図である。
図4は、第1の実施形態におけるIDT電極及び反射器の一部を示す模式的正面断面図である。
【0025】
図3に示すように、電極指が延びる方向に直交する方向に沿う長さを電極指の幅としたときに、IDT電極7の電極指7aの幅は全て同じである。IDT電極7において、電極指中心間距離は全て同じである。電極指中心間距離とは、IDT電極7に含まれる隣り合う電極指について、電極指の幅における中心点同士を結んだ直線距離のことである。IDT電極7に複数の電極指が含まれる場合には、隣り合う電極指それぞれの電極指中心間距離の平均値を指す。なお、IDT電極7の電極指7aの幅は必ずしも全て同じではなくともよく、必ずしも全ての電極指中心間距離が同じではなくともよい。本明細書において、幅や電極指中心間距離が同じであるとは、製造ばらつきによる誤差を含むものとする。
【0026】
図3及び
図4に示すように、反射器8の複数の電極指は、幅が異なる第1の電極指8a及び第2の電極指8bを含む。第1の電極指8a及び第2の電極指8bは交互に配置されている。ここで、反射器8における第1の電極指8a及び第2の電極指8bを含む連続した4本の1組の電極指の配列を1組の電極指の配列A1としたときに、反射器8において1組の電極指の配列A1が周期的に配置されている。
【0027】
ここで、1組の電極指の配列A1が周期的に配置されているとは、1組の電極指の配列A1が連続的に配置されている場合及び1組の電極指の配列A1が1本以上の電極指を介して周期的に配置されている場合を含む。本実施形態では、1組の電極指の配列A1は連続的に配置されている。
【0028】
なお、反射器8の電極指の配置は上記に限定されず、反射器8の任意の部分において連続した4本の電極指が、第1の電極指8a及び第2の電極指8bの両方を含んでいればよい。例えば、反射器8が第1の電極指8a及び第2の電極指8b以外の幅の電極指を含んでいてもよい。
【0029】
反射器8において、電極指中心間距離は全て同じである。なお、反射器8において、必ずしも全ての電極指中心間距離が同じではなくともよい。第1の電極指8a及び第2の電極指8bの両方を含む連続した4本の電極指の電極指中心間距離が同じであればよい。
【0030】
反射器9は反射器8と同様に構成されている。より具体的には、反射器9の複数の電極指は、幅が異なる第1の電極指9a及び第2の電極指9bを含む。第1の電極指9a及び第2の電極指9bは交互に配置されている。これにより、反射器9において1組の電極指の配列A1が周期的に配置されている。なお、反射器9における1組の電極指の配列A1は、第1の電極指9a及び第2の電極指9bを含む配列である。
【0031】
本実施形態の特徴は以下の構成を有する点にある。1)タンタル酸リチウム膜からなる圧電体層6を含む圧電性基板2上にIDT電極7、反射器8及び反射器9が設けられており、SH波を主モードとして利用している。2)反射器8の任意の部分において連続した4本の電極指が、第1の電極指8a及び第2の電極指8bの両方を含んでおり、かつ上記連続した4本の電極指の電極指中心間距離が同じである。3)反射器9の任意の部分において連続した4本の電極指が、第1の電極指9a及び第2の電極指9bの両方を含んでおり、かつ上記連続した4本の電極指の電極指中心間距離が同じである。上記構成を有することにより、レイリー波によるスプリアスを抑制することができる。これを、本実施形態と比較例とを比較することにより、以下において説明する。
【0032】
第1の実施形態の構成を有する複数の弾性波装置を、反射器の第2の電極指の幅を異ならせて作製した。一方で、反射器の電極指の幅が全て同じである点以外においては第1の実施形態の弾性波装置と同様の構成を有する比較例の弾性波装置を作製した。
【0033】
ここで、第1の実施形態の構成を有する弾性波装置及び比較例の弾性波装置の条件は以下の通りである。なお、後述するIDT電極及び反射器の波長は、それぞれの電極指中心間距離により規定される波長である。IDT電極を弾性波伝搬方向に見たときに、隣り合う電極指が重なり合う領域をIDT電極の交差領域とし、電極指が延びる方向に沿う交差領域の長さを交差幅とする。
【0034】
圧電体層:材料タンタル酸リチウム(LiTaO3)、カット角Yカット55°、膜厚400nm
低音速膜:材料酸化ケイ素(SiO2)、膜厚400nm
高音速膜:材料窒化ケイ素(SiN)、膜厚500nm
支持基板:材料シリコン(Si)
IDT電極の各金属層の膜厚:Ti層の膜厚4nm、Al層の膜厚100nm、Ti層の膜厚4nm
IDT電極の波長:2μm
IDT電極の交差幅:20μm
IDT電極の電極指の対数、本数:50対、101本
IDT電極の電極指の幅:0.5μm
反射器の各金属層の膜厚:Ti層の膜厚4nm、Al層の膜厚100nm、Ti層の膜厚4nm
反射器の波長:2μm
反射器の電極指の本数:21本
第1の電極指の幅:0.5μm
【0035】
ここで、第1の実施形態の構成を有する弾性波装置として、反射器の第2の電極指の幅を0.4μm及び0.3μmとした弾性波装置をそれぞれ作製した。比較例として、反射器の第2の電極指の幅を、第1の電極指の幅と同じである0.5μmとした弾性波装置を作製した。次に、各弾性波装置の主モードの位相及びレイリー波によるスプリアスの位相を測定した。下記の
図5には、比較例における上記位相を示す。なお、第2の電極指の幅以外において同様の構成を有する第1の実施形態及び比較例においては、主モードの共振周波数及びレイリー波によるスプリアスの周波数はほぼ同じである。
【0036】
図5は、比較例における主モードの位相及びスプリアスの位相を示す図である。
【0037】
図5における矢印Bは主モードであるSH波を示し、矢印Cはレイリー波によるスプリアスを示す。レイリー波によるスプリアスが、主モードの共振周波数の0.75倍付近の周波数帯に生じていることがわかる。
【0038】
図6は、第1の実施形態及び比較例におけるスプリアスの位相を示す図である。
図6中の実線は、反射器の第2の電極指の幅を0.4μmとした場合の第1の実施形態の結果を示す。一点鎖線は、反射器の第2の電極指の幅を0.3μmとした場合の第1の実施形態の結果を示す。破線は比較例の結果を示す。
【0039】
図6に示すように、破線で示す比較例よりも、実線及び一点鎖線で示す第1の実施形態の方がレイリー波によるスプリアスが小さいことがわかる。よって、第1の実施形態において、レイリー波によるスプリアスを抑制できることがわかる。
【0040】
さらに、第1の実施形態において、第2の電極指の幅が0.4μmの場合よりも0.3μmの場合の方が、スプリアスが小さいことがわかる。このように、第1の電極指の幅と第2の電極指の幅との差が大きいほどレイリー波によるスプリアスを抑制することができる。
【0041】
レイリー波は電極指1本毎に変位するモードである。レイリー波は、圧電体層に対して深さ方向の成分及び弾性波伝搬方向の成分を有する。
図1に示す第1の実施形態においては、反射器8において弾性波伝搬方向に連続した4本の電極指が、幅が異なる第1の電極指8a及び第2の電極指8bを含む。反射器9においても同様である。それによって、弾性波伝搬方向において、レイリー波のモードを非対称にすることができる。従って、レイリー波によるスプリアスを抑制することができる。
【0042】
第1の実施形態では、反射器8における1組の電極指の配列A1は、
図3における左側から、第1の電極指8a、第2の電極指8b、第1の電極指8a、第2の電極指8bの順序の配列である。もっとも、1組の電極指の配列A1は、第1の電極指8a及び第2の電極指8bの両方を含んでいればよく、
図7における(a)~(n)のうちいずれかであればよい。以下において、
図7における1組の電極指の配列A1の例を示す。なお、下記の配列は、
図7における左側からの順序の配列である。
【0043】
(a)第1の電極指8a、第2の電極指8b、第2の電極指8b、第1の電極指8a
(b)第2の電極指8b、第1の電極指8a、第1の電極指8a、第2の電極指8b
(c)第1の電極指8a、第2の電極指8b、第1の電極指8a、第2の電極指8b
(d)第2の電極指8b、第1の電極指8a、第2の電極指8b、第1の電極指8a
(e)第1の電極指8a、第1の電極指8a、第2の電極指8b、第2の電極指8b
(f)第2の電極指8b、第2の電極指8b、第1の電極指8a、第1の電極指8a
(g)第1の電極指8a、第1の電極指8a、第2の電極指8b、第1の電極指8a
(h)第2の電極指8b、第1の電極指8a、第1の電極指8a、第1の電極指8a
(i)第1の電極指8a、第2の電極指8b、第1の電極指8a、第1の電極指8a
(j)第1の電極指8a、第1の電極指8a、第1の電極指8a、第2の電極指8b
(k)第2の電極指8b、第2の電極指8b、第1の電極指8a、第2の電極指8b
(l)第1の電極指8a、第2の電極指8b、第2の電極指8b、第2の電極指8b
(m)第2の電極指8b、第1の電極指8a、第2の電極指8b、第2の電極指8b
(n)第2の電極指8b、第2の電極指8b、第2の電極指8b、第1の電極指8a
【0044】
反射器8及び反射器9のそれぞれにおいて、1組の電極指の配列A1が周期的に配置されていることが好ましい。第1の実施形態のように、1組の電極指の配列A1が連続的に配置されていることがより好ましい。この場合には、弾性波伝搬方向において、レイリー波のモードをより一層確実に非対称にすることができる。従って、レイリー波によるスプリアスをより一層抑制することができる。
【0045】
IDT電極7、反射器8及び反射器9のそれぞれにおいて、電極指中心間距離が全て同じであることが好ましい。それによって、主モードの特性のばらつきを抑制しつつ、上記のようにレイリー波によるスプリアスを抑制することができる。
【0046】
IDT電極7の電極指中心間距離と、反射器8及び反射器9の電極指中心間距離とが全て同じであることがより好ましい。それによって、レイリー波によるレスポンスの波長と、反射器8及び反射器9の電極指中心間距離とを揃えることができる。従って、上記のようにレイリー波のモードを非対称にすることにより、レイリー波をより一層抑制することができる。
【0047】
IDT電極7の複数の電極指7aの幅は全て同じであることが好ましい。この場合においても、主モードの特性のばらつきを抑制しつつ、レイリー波によるスプリアスを抑制することができる。
【0048】
ところで、IDT電極7は、特定の静電容量を有することを要求されることが多い。IDT電極7の複数の電極指7aの幅を全て同じとすることにより、IDT電極7の全体において、隣り合う電極指7a間のギャップが狭くなることを抑制しつつ、特定の静電容量を得ることができる。従って、耐サージ性の劣化を抑制しつつ、特定の静電容量を得ることができる。
【0049】
第1の実施形態の圧電性基板2は、支持基板3、高音速膜4、低音速膜5及び圧電体層6がこの順序で積層された積層体であるが、これに限定されない。以下において、圧電性基板以外は第1の実施形態と同様の構成を有する、第1の実施形態の第1~第3の変形例を示す。第1~第3の変形例においても、第1の実施形態と同様に、レイリー波によるスプリアスを抑制することができる。
【0050】
図8に示す第1の変形例における圧電性基板14は、高音速基板13と、高音速基板13上に設けられている低音速膜5と、低音速膜5上に設けられている圧電体層6とを有する。圧電体層6は、高音速基板13上に、低音速膜5を介して間接的に設けられている。
【0051】
高音速基板13は相対的に高音速な基板である。より具体的には、高音速基板13を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層6を伝搬する弾性波の音速よりも高い。本変形例では、高音速基板13はケイ素基板である。なお、高音速基板13の材料は上記に限定されず、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、シリコン、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶、アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、マグネシア、DLCまたはダイヤモンドなど、上記材料を主成分とする媒質を用いることもできる。
【0052】
本変形例の弾性波装置は、高音速基板13、低音速膜5及び圧電体層6がこの順序で積層された積層体である圧電性基板14を有するため、第1の実施形態と同様に、弾性波のエネルギーを圧電体層6側に閉じ込めることができる。
【0053】
図9に示す第2の変形例における圧電性基板15は、高音速基板13と、高音速基板13上に直接的に設けられている圧電体層6とを有する。本変形例においても、第1の実施形態と同様に、弾性波のエネルギーを圧電体層6側に閉じ込めることができる。
【0054】
図10に示す第3の変形例における圧電性基板16は、圧電体層のみからなる、タンタル酸リチウム基板である。
【0055】
図11は、第2の実施形態におけるIDT電極及び反射器の一部を示す模式的正面断面図である。
【0056】
本実施形態は、1組の電極指の配列A2が第1の実施形態と異なる。より具体的には、1組の電極指の配列A2は、
図7における(a)と同様の配列である。反射器28においては、1組の電極指の配列A2が周期的に配置されている。反射器29においても同様である。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0057】
ここで、本実施形態の構成を有する複数の弾性波装置を、反射器の第2の電極指の幅を異ならせて作製した。各弾性波装置の条件は、
図6に結果を示して比較した第1の実施形態の上記条件と同様の条件とした。一方で、反射器の電極指の幅が全て同じである点以外においては本実施形態の弾性波装置と同様の構成を有する比較例の弾性波装置を作製した。なお、本実施形態と比較する比較例は、第1の実施形態と比較した上記比較例と同様である。
【0058】
図12は、第2の実施形態及び比較例におけるスプリアスの位相を示す図である。
図12中の実線は、反射器の第2の電極指の幅を0.4μmとした場合の第2の実施形態の結果を示す。一点鎖線は、反射器の第2の電極指の幅を0.3μmとした場合の第2の実施形態の結果を示す。破線は比較例の結果を示す。
【0059】
図12に示すように、破線で示す比較例よりも、実線及び一点鎖線で示す第2の実施形態の方がレイリー波によるスプリアスが小さいことがわかる。よって、第2の実施形態において、レイリー波によるスプリアスを抑制できることがわかる。さらに、第2の実施形態において、第2の電極指の幅が0.4μmの場合よりも0.3μmの場合の方が、スプリアスが小さいことがわかる。このように、1組の電極指の配列A2が、
図7に示す例のいずれかであれば、レイリー波によるスプリアスを効果的に抑制することができる。
【0060】
図13は、第3の実施形態におけるIDT電極及び反射器の一部を示す模式的正面断面図である。
【0061】
本実施形態は、反射器38において、1組の電極指の配列A3が、第1の電極指8a及び第2の電極指8bを含む連続した3本の電極指の配列である点で、第1の実施形態と異なる。反射器39においても同様である。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0062】
1組の電極指の配列A3は、
図13における左側から、第1の電極指8a、第2の電極指8b、第1の電極指8aの順序の配列である。反射器38においては、1組の電極指の配列A3が周期的に配置されている。より具体的には、反射器38において、1組の電極指の配列A3が連続的に配置されている。なお、1組の電極指の配列A3は上記に限定されず、第1の電極指8a及び第2の電極指8bの両方を含んでいればよい。1組の電極指の配列A3が連続する3本の電極指の配列である場合においても、反射器38の任意の部分において連続した
3本の電極指が、第1の電極指8a及び第2の電極指8bの両方を含んでいればよい。
【0063】
ここで、本実施形態の構成を有する複数の弾性波装置を、反射器の第2の電極指の幅を異ならせて作製した。各弾性波装置の条件は、
図6に結果を示して比較した第1の実施形態の上記条件と同様の条件とした。一方で、反射器の電極指の幅が全て同じである点以外においては本実施形態の弾性波装置と同様の構成を有する比較例の弾性波装置を作製した。なお、本実施形態と比較する比較例は、第1の実施形態と比較した上記比較例と同様である。
【0064】
図14は、第3の実施形態及び比較例におけるスプリアスの位相を示す図である。
図14中の実線は、反射器の第2の電極指の幅を0.4μmとした場合の第3の実施形態の結果を示す。一点鎖線は、反射器の第2の電極指の幅を0.3μmとした場合の第3の実施形態の結果を示す。破線は比較例の結果を示す。
【0065】
図14に示すように、破線で示す比較例よりも、実線及び一点鎖線で示す第3の実施形態の方がレイリー波によるスプリアスが小さいことがわかる。よって、第3の実施形態において、レイリー波によるスプリアスを抑制できることがわかる。さらに、第3の実施形態において、第2の電極指の幅が0.4μmの場合よりも0.3μmの場合の方が、スプリアスが小さいことがわかる。
【0066】
1組の電極指の配列A3は、本実施形態のような連続した3本の電極指の配列や、第1の実施形態のような連続した4本の電極指の配列には限られない。反射器38の任意の部分において連続した4本の電極指が、第1の電極指8a及び第2の電極指8bの両方を含んでいれば、1組の電極指の配列A3は連続した5本以上の電極指の配列であってもよい。
【0067】
図15は、第4の実施形態におけるIDT電極及び反射器の一部を示す模式的正面断面図である。
【0068】
本実施形態は、反射器48において、2組の電極指の配列が周期的に配置されている点において、第1の実施形態と異なる。より具体的には、反射器48において、1組の電極指の配列A4及び1組の電極指の配列A5が交互に配置されている。反射器49においても同様である。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0069】
1組の電極指の配列A4は、
図7における(d)と同様の配列である。1組の電極指の配列A5は、
図7における(c)と同様の配列である。本実施形態では、反射器48において、1組の電極指の配列A4及び1組の電極指の配列A5が交互に配置されていることにより、連続する8本の電極指の配列が周期的に配置されている。なお、2組に限られず、3組以上の電極指の配列が、反射器48において周期的に配置されていてもよい。
【0070】
ここで、本実施形態の構成を有する複数の弾性波装置を、反射器の第2の電極指の幅を異ならせて作製した。各弾性波装置の条件は、
図6に結果を示して比較した第1の実施形態の上記条件と同様の条件とした。一方で、反射器の電極指の幅が全て同じである点以外においては本実施形態の弾性波装置と同様の構成を有する比較例の弾性波装置を作製した。なお、本実施形態と比較する比較例は、第1の実施形態と比較した上記比較例と同様である。
【0071】
図16は、第4の実施形態及び比較例におけるスプリアスの位相を示す図である。
図16中の実線は、反射器の第2の電極指の幅を0.4μmとした場合の第4の実施形態の結果を示す。一点鎖線は、反射器の第2の電極指の幅を0.3μmとした場合の第4の実施形態の結果を示す。破線は比較例の結果を示す。
【0072】
図16に示すように、破線で示す比較例よりも、実線及び一点鎖線で示す第4の実施形態の方がレイリー波によるスプリアスが小さいことがわかる。よって、第4の実施形態において、レイリー波によるスプリアスを抑制できることがわかる。さらに、第4の実施形態において、第2の電極指の幅が0.4μmの場合よりも0.3μmの場合の方が、スプリアスが小さいことがわかる。
【0073】
第1~第4の実施形態においては、本発明に係る弾性波装置の弾性波共振子としての例を示した。以下において、本発明に係る帯域通過型フィルタ、デュプレクサ及びマルチプレクサについて説明する。
【0074】
図17は、第5の実施形態に係る帯域通過型フィルタの回路図である。
【0075】
帯域通過型フィルタ50は、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子を有するラダー型フィルタである。複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子は、いずれも弾性波共振子である。本実施形態では、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子は、いずれも第1の実施形態の弾性波装置1の構成を有する。なお、帯域通過型フィルタ50の複数の弾性波共振子のうち少なくとも1つが、本発明に係る弾性波装置の構成を有していればよい。
【0076】
帯域通過型フィルタ50は、信号端子55と、アンテナに接続されるアンテナ端子56とに接続される。アンテナ端子56と信号端子55との間には、直列腕共振子S1、直列腕共振子S2、直列腕共振子S3及び直列腕共振子S4が互いに直列に接続されている。直列腕共振子S1と直列腕共振子S2との間の接続点とグラウンド電位との間には、並列腕共振子P1が接続されている。直列腕共振子S2と直列腕共振子S3との間の接続点とグラウンド電位との間には、並列腕共振子P2が接続されている。直列腕共振子S3と直列腕共振子S4との間の接続点とグラウンド電位との間には、並列腕共振子P3が接続されている。本実施形態では、アンテナ端子56が位置するアンテナ端側に最も近い弾性波共振子は、直列腕共振子S1である。
【0077】
なお、帯域通過型フィルタ50の回路構成は上記に限定されず、本発明に係る弾性波装置の構成を有する直列腕共振子または並列腕共振子を含んでいればよい。最もアンテナ端側に配置されている弾性波共振子は並列腕共振子であってもよい。
【0078】
帯域通過型フィルタ50の各直列腕共振子及び各並列腕共振子は、第1の実施形態の構成を有する。それによって、レイリー波によるスプリアスを抑制することができる。
【0079】
帯域通過型フィルタがアンテナ端子に他のフィルタ装置と共通接続される場合には、帯域通過型フィルタの弾性波共振子において生じるレイリー波によるスプリアスが、他のフィルタ装置に対して影響を与えるおそれがある。これに対して、本実施形態においては、帯域通過型フィルタ50の弾性波共振子が第1の実施形態の構成を有する。よって、共通接続される他のフィルタに対するレイリー波によるスプリアスの影響を抑制することができる。
【0080】
帯域通過型フィルタ50に共通接続される他のフィルタ装置に対する、帯域通過型フィルタ50のスプリアスの影響のうち、最もアンテナ端側に配置されている弾性波共振子のスプリアスの影響が最も大きい。本実施形態のように、最もアンテナ端側に配置されている弾性波共振子が本発明に係る弾性波装置の構成を有することが好ましい。それによって、帯域通過型フィルタ50に共通接続される他のフィルタ装置に対するレイリー波によるスプリアスの影響をより一層抑制することができる。
【0081】
図18は、第6の実施形態に係るデュプレクサの模式的回路図である。
図18においては、後述する第2の帯域通過型フィルタをブロック図により模式的に示す。
【0082】
デュプレクサ60は、アンテナ端子56と、アンテナ端子56に共通接続されている第1の帯域通過型フィルタ61A及び第2の帯域通過型フィルタ61Bとを有する。第1の帯域通過型フィルタ61A及び第2の帯域通過型フィルタ61Bの通過帯域は異なる。本実施形態においては、第1の帯域通過型フィルタ61Aは、第4の実施形態の帯域通過型フィルタ50と同様の構成を有する。
【0083】
他方、第2の帯域通過型フィルタ61Bの回路構成は特に限定されない。第2の帯域通過型フィルタ61Bは、例えば、適宜のラダー型フィルタであってもよく、縦結合共振子型弾性波フィルタであってもよい。なお、第1の帯域通過型フィルタ61A及び第2の帯域通過型フィルタ61Bの両方が本発明に係る帯域通過型フィルタの構成を有していてもよい。
【0084】
デュプレクサ60の第1の帯域通過型フィルタ61Aは、第4の実施形態と同様の構成を有する。よって、レイリー波によるスプリアスを抑制することができる。さらに、アンテナ端子56に第1の帯域通過型フィルタ61Aと共通接続されている、第2の帯域通過型フィルタ61Bに対するレイリー波によるスプリアスの影響を抑制することができる。
【0085】
図19は、第7の実施形態に係るマルチプレクサの模式図である。
【0086】
マルチプレクサ70は、アンテナ端子56と、アンテナ端子56に共通接続されている第1の帯域通過型フィルタ61A、第2の帯域通過型フィルタ71B及び第3の帯域通過型フィルタ71Cを有する。第1の帯域通過型フィルタ61Aは、第4の実施形態と同様の構成を有する。他方、第2の帯域通過型フィルタ71B及び第3の帯域通過型フィルタ71Cの回路構成は特に限定されない。第2の帯域通過型フィルタ71B及び第3の帯域通過型フィルタ71Cも、本発明に係る帯域通過型フィルタの構成を有していてもよい。なお、マルチプレクサ70は、アンテナ端子56に接続された、第1の帯域通過型フィルタ61A、第2の帯域通過型フィルタ71B及び第3の帯域通過型フィルタ71C以外のフィルタ装置を含んでいてもよい。
【0087】
マルチプレクサ70の第1の帯域通過型フィルタ61Aは、第4の実施形態と同様の構成を有する。よって、レイリー波によるスプリアスを抑制することができる。さらに、アンテナ端子56に第1の帯域通過型フィルタ61Aと共通接続されている、他のフィルタ装置に対するレイリー波によるスプリアスの影響を抑制することができる。
【符号の説明】
【0088】
1…弾性波装置
2…圧電性基板
3…支持基板
4…高音速膜
5…低音速膜
6…圧電体層
7…IDT電極
7a…電極指
7c~7e…第1~第3の金属層
8,9…反射器
8a,9a…第1の電極指
8b,9b…第2の電極指
13…高音速基板
14~16…圧電性基板
28,29,38,39,48,49…反射器
50…帯域通過型フィルタ
55…信号端子
56…アンテナ端子
60…デュプレクサ
61A,61B…第1,第2の帯域通過型フィルタ
70…マルチプレクサ
71B,71C…第2,第3の帯域通過型フィルタ
P1~P3…並列腕共振子
S1~S4…直列腕共振子