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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】欠陥検査装置および欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/06 20060101AFI20220628BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20220628BHJP
   G01N 29/44 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G01N29/06
G01N29/24
G01N29/44
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020557434
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2018043562
(87)【国際公開番号】W WO2020110197
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康紀
(72)【発明者】
【氏名】畠堀 貴秀
(72)【発明者】
【氏名】田窪 健二
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-101189(JP,A)
【文献】米国特許第5505090(US,A)
【文献】特開2014-119441(JP,A)
【文献】特開2010-32434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0149021(US,A1)
【文献】特開2017-219318(JP,A)
【文献】米国特許第5146289(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01B 9/00 - G01B 9/10
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01J 9/00 - G01J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象に音波振動を励起する励振部と、
前記検査対象にレーザ光を照射するレーザ照明と、
前記励振部により励振された前記検査対象の互いに異なる位置から到来するレーザ光の反射光を干渉させる干渉部と、
干渉された反射光を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像した干渉された反射光に基づいて、前記検査対象の振動の伝播により生じる、周期的に変化する物理量の空間分布を測定するとともに、物理量の空間分布に基づいて、振動の不連続部分を抽出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記撮像部により撮像した前記検査対象の静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示する制御を行うように構成され
前記制御部は、抽出した振動の不連続部分において周期的に変化する物理量を動画像として静止画像に重ねて表示する制御を行うように構成されている、欠陥検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、抽出した振動の不連続部分の物理量の変化に応じて、静止画像に重ねて表示する色を変化させて強調表示する制御を行うように構成されている、請求項に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、抽出した振動の不連続部分の物理量の変化に応じて、静止画像に重ねて表示する色を変化させる際に色味をなくすタイミングが存在するように制御を行うように構成されている、請求項に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記撮像部により撮像した複数の静止画像に基づいて取得した1枚の静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示する制御を行うように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記検査対象にインコヒーレントな光を照射するインコヒーレント照明をさらに備え、
前記制御部は、前記インコヒーレント照明から光を照射した状態で前記撮像部により撮像した静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示する制御を行うように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
検査対象に音波振動を励起し、
前記検査対象にレーザ光を照射し、
励振された前記検査対象の互いに異なる位置から到来するレーザ光の反射光を干渉させ、
干渉された反射光を撮像し、
撮像した干渉された反射光に基づいて、前記検査対象の振動の伝播により生じる、周期的に変化する物理量の空間分布を測定し、
物理量の空間分布に基づいて、振動の不連続部分を抽出し、
撮像した前記検査対象の静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示し、
抽出した振動の不連続部分において周期的に変化する物理量を動画像として静止画像に重ねて表示する、欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、欠陥検査装置および欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、欠陥検査装置が知られている。欠陥検査装置は、たとえば、国際公開第2017/221324号に開示されている。
【0003】
上記国際公開第2017/221324号には、測定対象の表面に音波(気体、液体、固体を伝播するあらゆる弾性波を含む)を与える音波付与部と、測定対象にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ光源と、音波付与部により音波振動(以下単に振動という)が与えられた測定対象の互いに異なる位置から到来するパルスレーザ光の反射光を干渉させるスペックル・シェアリング干渉計と、干渉された反射光を撮像するイメージセンサと、イメージセンサにより撮像した干渉された反射光に基づいて、測定対象の振動の伝播に関する動画像を生成する制御・処理部とを備える、音波伝搬映像化装置(欠陥検査装置)が開示されている。この音波伝搬映像化装置により生成された振動の伝播に関する動画像に基づいて測定対象の欠陥が取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/221324号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記国際公開第2017/221324号の音波伝搬映像化装置(欠陥検査装置)では、振動の伝播が不連続な箇所を欠陥として検知することが記載されている。しかし、振動の伝播の不連続は欠陥の無い対象物において不連続な形状や構造を有している部分にも生じるので、振動の伝播の不連続が実際に欠陥であるか判別するためには、振動の伝播の情報と対象の形状や構造の情報を対比させる必要がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、検査対象に対する振動の伝播が不連続な位置を容易に把握することができるとともに、検査対象の形状および構造と、欠陥とを容易に区別することが可能な欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における欠陥検査装置は、検査対象に音波振動を励起する励振部と、検査対象にレーザ光を照射するレーザ照明と、励振部により励振された検査対象の互いに異なる位置から到来するレーザ光の反射光を干渉させる干渉部と、干渉された反射光を撮像する撮像部と、撮像部により撮像した干渉された反射光に基づいて、検査対象の振動の伝播により生じる、周期的に変化する物理量の空間分布を測定するとともに、物理量の空間分布に基づいて、振動の不連続部分を抽出する制御部と、を備え、制御部は、撮像部により撮像した検査対象の静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示する制御を行うように構成され、制御部は、抽出した振動の不連続部分において周期的に変化する物理量を動画像として静止画像に重ねて表示する制御を行うように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面による欠陥検査装置では、上記のように、撮像部により撮像した検査対象の静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示する制御を行う制御部を設ける。これにより、検査対象の形状や構造を静止画像により確認しながら、物理量の空間分布から抽出される振動の不連続部分を確認することができる。これにより、検査対象の静止画像と振動の不連続部分の強調表示とを容易に見比べることができるので、検査対象に対する振動の伝播が不連続な位置を容易に把握することができる。また、検査対象の静止画像により検査対象の形状を確認することができる。その結果、検査対象に対する振動の伝播が不連続な位置を容易に把握することができるとともに、検査対象の形状および構造と、欠陥とを容易に区別することができる。
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面における欠陥検査方法は、検査対象に音波振動を励起し、検査対象にレーザ光を照射し、励振された検査対象の互いに異なる位置から到来するレーザ光の反射光を干渉させ、干渉された反射光を撮像し、撮像した干渉された反射光に基づいて、検査対象の振動の伝播により生じる、周期的に変化する物理量の空間分布を測定し、物理量の空間分布に基づいて、振動の不連続部分を抽出し、撮像した検査対象の静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示し、抽出した振動の不連続部分において周期的に変化する物理量を動画像として静止画像に重ねて表示する。
【0010】
この発明の第2の局面による欠陥検査方法では、上記のように、撮像した検査対象の静止画像に、抽出した不連続部分を強調して重ねて表示する。これにより、検査対象の形状や構造を静止画像により確認しながら、物理量の空間分布から抽出される振動の不連続部分を確認することができる。これにより、検査対象の静止画像と振動の不連続部分の強調表示とを容易に見比べることができるので、検査対象に対する振動の伝播が不連続な位置を容易に把握することができる。また、検査対象の静止画像により検査対象の形状を確認することができる。その結果、検査対象に対する振動の伝播が不連続な位置を容易に把握することができるとともに、検査対象の形状および構造と、欠陥とを容易に区別することが可能な欠陥検査方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明によれば、検査対象に対する振動の伝播が不連続な位置を容易に把握することができるとともに、検査対象の形状および構造と、欠陥とを容易に区別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による欠陥検査装置の構成を示したブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による欠陥検査装置の欠陥の表示を説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態による欠陥検査装置の表示の一例を示した図である。
図4】本発明の一実施形態による欠陥検査装置の制御部による欠陥表示処理を説明するためのフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態の変形例による欠陥検査装置の構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(欠陥検査装置の構成)
図1および図2を参照して、本発明の一実施形態による欠陥検査装置100の構成について説明する。欠陥検査装置100は、検査対象7の欠陥を検査する装置である。
【0015】
本実施形態による欠陥検査装置100は、振動子1と、レーザ照明2と、スペックル・シェアリング干渉計3と、制御部4と、信号発生器5と、表示部6と、を備えている。なお、振動子1は、請求の範囲の「励振部」の一例であり、スペックル・シェアリング干渉計3は、請求の範囲の「干渉部」の一例である。
【0016】
振動子1およびレーザ照明2は、信号発生器5にケーブルを介して接続されている。
【0017】
振動子1は、検査対象7に振動(音波振動)を励起する。具体的には、振動子1は、検査対象7に接触するように配置され、信号発生器5からの交流電気信号を機械的振動に変換し、検査対象7に振動(音波振動)を励起する。
【0018】
レーザ照明2は、検査対象7にレーザ光を照射する。レーザ照明2は、図示しないレーザ光源と照明光レンズを含んでいる。照明光レンズは、レーザ光源から照射されたレーザ光を検査対象7の表面の測定領域全体に拡げて照射する。また、レーザ照明2は、信号発生器5からの電気信号に基づいて、所定のタイミングにおいてレーザ光を照射する。つまり、レーザ照明2は、振動子1による振動に対応して、レーザ光を検査対象7に照射する。
【0019】
スペックル・シェアリング干渉計3は、振動子1により励振された検査対象7の互いに異なる位置から到来するレーザ光の反射光を干渉させるように構成されている。また、スペックル・シェアリング干渉計3はビームスプリッタ31、位相シフタ32、第1反射鏡331、第2反射鏡332、集光レンズ34およびイメージセンサ35を含む。なお、イメージセンサ35は、請求の範囲の「撮像部」の一例である。
【0020】
ビームスプリッタ31はハーフミラーを含む。また、ビームスプリッタ31は、検査対象7の表面で反射されたレーザ光が入射される位置に配置されている。また、ビームスプリッタ31は、入射するレーザ光を位相シフタ32側に反射させるとともに、第2反射鏡332側に透過させる。また、ビームスプリッタ31は、第2反射鏡332により反射されて入射するレーザ光を集光レンズ34側に反射させるとともに、第1反射鏡331により反射されて入射するレーザ光を集光レンズ34側に透過させる。
【0021】
第1反射鏡331は、ビームスプリッタ31で反射されるレーザ光の光路上において、ビームスプリッタ31の反射面に対して、45度の角度となるように配置されている。第1反射鏡331は、ビームスプリッタ31により反射されて入射するレーザ光をビームスプリッタ31側に反射させる。
【0022】
第2反射鏡332は、ビームスプリッタ31を透過するレーザ光の光路上において、ビームスプリッタ31の反射面に対して、45度の角度からわずかに傾斜した角度になるように配置されている。第2反射鏡332は、ビームスプリッタ31により反射されて入射するレーザ光をビームスプリッタ31側に反射させる。
【0023】
位相シフタ32は、ビームスプリッタ31と第1反射鏡331との間に配置され、制御部4の制御により、透過するレーザ光の位相を変化(シフト)させる。具体的には、位相シフタ32は、透過するレーザ光の光路長を変化させるように構成されている。
【0024】
イメージセンサ35は検出素子を多数有し、ビームスプリッタ31で反射された後に第1反射鏡331で反射されてビームスプリッタ31を透過するレーザ光(図1中の直線)、およびビームスプリッタ31を透過した後に第2反射鏡332で反射されてビームスプリッタ31で反射されるレーザ光(図1中の破線)の光路上に配置される。イメージセンサ35は、たとえば、CMOSイメージセンサ、または、CCDイメージセンサなどを含む。イメージセンサ35は、入射するレーザ光を撮像するように構成されている。また、イメージセンサ35は、スペックル・シェアリング干渉計3により干渉された反射光を撮像するように構成されている。
【0025】
集光レンズ34は、ビームスプリッタ31とイメージセンサ35の間に配置され、ビームスプリッタ31を透過したレーザ光(図1中の直線)とビームスプリッタ31で反射されたレーザ光(図1中の破線)とを集光させる。
【0026】
検査対象7の表面上の位置741および第1反射鏡331で反射されるレーザ光(図1中の直線)と、検査対象7の表面上の位置742および第2反射鏡332で反射されるレーザ光は(図1中の破線)は、互いに干渉し、イメージセンサ35の同一箇所に入射する。位置741および位置742は、微小距離分だけ互いに離間した位置である。また、同様にして、検査対象7の各領域の位置における、互いに異なる位置から到来するレーザ光の反射光は、スペックル・シェアリング干渉計3により導光されて、それぞれ、イメージセンサ35に入射する。
【0027】
制御部4は、スペックル・シェアリング干渉計3内に配置された位相シフタ32を図示しないアクチュエータで稼働させ、透過するレーザ光の位相を変化させる。これにより、位置741で反射されたレーザ光と位置742で反射されたレーザ光の位相差が変化する。これら2つのレーザ光が干渉した干渉光の強度をイメージセンサ35の各検出素子は検出する。
【0028】
制御部4は、信号発生器5を介して、振動子1の振動とレーザ照明2のレーザ光の照射のタイミングとを制御し、位相シフト量を変化させながら、画像を撮影する。位相シフト量はλ/4ずつ変化させ、各位相シフト量(0、λ/4、λ/2、3λ/4)において、レーザ照射のタイミング j(j=0~7)分の32枚の画像と各位相シフト量(0、λ/4、λ/2、3λ/4)前後の5枚の消灯時の画像との合計37枚の画像を撮影する。なお、λは、レーザ光の波長である。
【0029】
制御部4は、各検出素子からの検出信号を下記の手順で処理し、振動の状態を表す動画像を取得する。制御部4は、イメージセンサ35により撮像した干渉された反射光に基づいて、検査対象7の振動の伝播により生じる、周期的に変化する物理量の空間分布を測定する。たとえば、制御部4は、イメージセンサ35により撮像した干渉された反射光に基づいて、検査対象7の振動の伝播に関する動画像を生成する。
【0030】
制御部4は、レーザ照射のタイミング j(j=0~7)が同じで位相シフト量がλ/4ずつ異なる画像(4枚ずつ)の輝度値Ij0~Ij3から、式(1)により、光位相(位相シフト量ゼロの時の、2光路間の位相差)Φjを求める。
Φj=-arctan{(Ij3-Ij1)/(Ij2-Ij0)}・・・(1)
また、制御部4は、光位相Φjに対して、最小二乗法により正弦波近似を行い、式(2)における近似係数A、θ、Cを求める。
Φj=Acos(θ+jπ/4)+C=Bexp(jπ/4)+C・・・(2)
ただし、Bは、複素振幅であり、式(3)のように、表される。
B=Aexp(iθ):複素振幅・・・(3)
また、制御部4は、式(3)から定数項Cを除いた近似式より、振動の各位相時刻 ξ(0≦ξ<2π)における光位相変化を表示する動画像(30~60フレーム)を構成し出力する。なお、上記過程において、ノイズ除去のため複素振幅Bについて適宜空間フィルタが適用される。また、位相シフト量やレーザ照射タイミングのステップ(上記例ではそれぞれλ/4およびT/8、ただしTは振動の周期)はこれに限らない。この場合、計算式は上記式(1)~式(3)とは異なる式になる。
【0031】
制御部4は、空間フィルタを適用し、上記の動画像から、振動状態の不連続領域を検査対象7の欠陥部分73として、検出する。つまり、制御部4は、物理量の空間分布に基づいて、振動の不連続部分を抽出する。検査対象7自体の形状が凹凸などを含む場合、平面部と凹凸部の境界でも、振動状態の不連続が発生する場合があり、制御部4は、それらを欠陥として検出しないように検査対象7の形状情報を考えあわせて、欠陥部分73を検出するようにしてもよい。
【0032】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、制御部4は、イメージセンサ35により撮像した検査対象7の静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示する制御を行うように構成されている。制御部4は、撮像部により撮像した複数の静止画像に基づいて1枚の静止画像を取得するように構成されている。具体的には、制御部4は、検査対象7の振動の伝播に関する動画像を生成するために撮像した複数の静止画像を加算平均して1枚の静止画像を取得するように構成されている。この静止画像では、検査対象7の構造における変化部分75を確認することが可能である。なお、検査対象7の振動の伝播に関する動画像は、振動について確認することが可能であるものの、検査対象7の構造を目視により確認することは困難である。制御部4は、加算平均して取得した1枚の静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示する制御を行うように構成されている。
【0033】
また、制御部4は、抽出した振動の不連続部分の物理量の変化に応じて、静止画像に重ねて表示する色を変化させて強調表示する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部4は、抽出した振動の不連続部分の各位相時刻における変化に応じて、静止画像に重ねて表示する色を変化させて強調表示する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部4は、振動の不連続部分の各位相時刻における変化に応じて、図3に示す表示例のように、強調表示する色を変化させて、静止画像に重ねて表示するように構成されている。なお、重ねて表示する実際の動画のコマ間隔は、図3に示されるπ/4とは異なる。また、制御部4は、抽出した振動の不連続部分の物理量の変化に応じて、静止画像に重ねて表示する色を変化させる際に色味をなくすタイミングが存在するように制御を行うように構成されている。つまり、図3の例におけるπ/2および3π/2のタイミングにおいて、強調表示する部分の色味が消える。この場合、静止画像により、検査対象7の振動の不連続部分における構造を目視により容易に確認することが可能になる。また、抽出された振動の不連続部分は、周期的に変化する。その結果、振動の不連続部分の強調表示は、静止画像に対して色を変えながら、点滅するように表示される。たとえば、図3の例における0、π/4、7π/4と、π、5π/4、3π/4とは、それぞれ、強調表示の色味が反転して表示される。なお、図3の例では、複数の振動の不連続部分の表示の位相が同じ例を示しているが、部分に応じて、変化する位相は異なってもよい。
【0034】
表示部6は、制御部4で作成された検査対象7の振動状態を表す動画像、静止画像に抽出した振動の不連続部分が強調して重ねられた画像を表示する。表示部6は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどを含む。
【0035】
検査対象7は、鋼板71に表面に塗膜72が塗装された塗装鋼板である。欠陥部分73は、亀裂や剥離などを含む。
【0036】
(欠陥表示処理)
次に、図4を参照して、本実施形態の欠陥検査装置100による欠陥表示処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、欠陥表示処理は、制御部4により、行われる。
【0037】
図4のステップ101において、振動子1から検査対象7への振動付与が開始される。これにより、検査対象7に振動が励起される。ステップ102において、レーザ照明2からレーザ光が検査対象7の測定領域に照射される。
【0038】
ステップ103において、位相シフタ32のシフト量を変化させつつ、干渉データが取得される。つまり、位相を異ならせて干渉させた複数の画像が撮像される。これにより、レーザ光の位相がλ/4ずつ変化するように、スペックル・シェアリング干渉計3の位相シフタ32が稼働させられ、各位相でのレーザ光の干渉光の強度がイメージセンサ35で検出(撮像)される。
【0039】
ステップ104において、振動子1から検査対象7への振動付与が終了する。ステップ105において、検査対象7の振動の伝播に関する動画像が作成される。
【0040】
ステップ106において、検査対象7の振動の伝播に関する動画像に基づいて、振動の不連続部分が抽出される。ステップ107において、複数の静止画像に基づいて1つの静止画像が取得される。
【0041】
ステップ108において、静止画像に抽出した振動の不連続部分が強調して重ねて表示される。その後、ユーザー(操作者)からの終了指示入力などにより欠陥表示処理が終了される。
【0042】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0043】
本実施形態では、上記のように、イメージセンサ35により撮像した検査対象7の静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示する制御を行う制御部4を設ける。これにより、検査対象7の形状や構造を静止画像により確認しながら、物理量の空間分布から抽出される振動の不連続部分を確認することができる。これにより、検査対象7の静止画像と振動の不連続部分の強調表示とを容易に見比べることができるので、検査対象7に対する振動の伝播が不連続な位置を容易に把握することができる。また、検査対象7の静止画像により検査対象7の形状を確認することができる。その結果、検査対象7に対する振動の伝播が不連続な位置を容易に把握することができるとともに、検査対象7の形状および構造と、欠陥とを容易に区別することができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4を、抽出した振動の不連続部分において周期的に変化する物理量を動画像として静止画像に重ねて表示する制御を行うように構成する。これにより、周期的に変化する物理量の変化の様子を静止画像に重ねられた動画像により容易に確認することができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4を、抽出した振動の不連続部分の物理量の変化に応じて、静止画像に重ねて表示する色を変化させて強調表示する制御を行うように構成する。これにより、振動の不連続部分の物理量の変化に応じて、振動の不連続部分の色が変化するので、振動の不連続部分を容易に確認することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4を、抽出した振動の不連続部分の物理量の変化に応じて、静止画像に重ねて表示する色を変化させる際に色味をなくすタイミングが存在するように制御を行うように構成する。これにより、振動の不連続部分の色味がなくなることにより、静止画像における振動の不連続部分に強調表示が重ね合わされていない状態で確認することができるので、静止画像の振動の不連続部分を目視により容易に確認することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4を、イメージセンサ35により撮像した複数の静止画像に基づいて取得した1枚の静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示する制御を行うように構成する。これにより、検査対象7の振動の伝播に関する動画像を生成するための画像の撮像と、静止画像の撮像とを共通に行うことができるので、別個に撮像する場合と異なり、撮像時間が長くなるのを抑制することができる。
【0048】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0049】
たとえば、上記実施形態では、検査対象の振動の伝播に関する動画像を生成するために撮像した複数の静止画像を加算平均して1枚の静止画像を取得して、取得した静止画像に抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図5に示す変形例のように、検査対象7にインコヒーレントな光を照射するインコヒーレント照明21を設けてもよい。そして、制御部4は、インコヒーレント照明21から光を照射した状態でイメージセンサ35(撮像部)により撮像した静止画像に、抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示する制御を行うように構成してもよい。これにより、コヒーレントな照明により静止画像を撮像する場合と異なり、検査対象7の形状や構造、チリやほこりなどに起因して、光が干渉して、部分的に暗くなったり、干渉縞が静止画像に写り込むのを抑制することができる。なお、インコヒーレントな光は、振幅や位相がそろっていない光のことであり、干渉を観測することができない光のことである。
【0050】
また、検査対象の振動の伝播に関する動画像を生成するために撮像した複数の静止画像のうちの1枚の静止画像に抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示してもよい。また、検査対象の振動の伝播に関する動画像を生成するために撮像した複数の静止画像とは、別個に静止画像を撮像して、別個に撮像した静止画像に抽出した振動の不連続部分を強調して重ねて表示してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、信号発生器と、振動子(励振部)およびレーザ照明とをそれぞれケーブル(有線)を介して接続している構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、信号発生器と、励振部およびレーザ照明とをそれぞれ無線により接続してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、干渉部としてスペックル・シェアリング干渉計を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、干渉部として、他の光干渉計を用いてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、検査対象の表面に振動子(励振部)を接触させて用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検査対象の表面から離間させて励振部を用いてもよい。たとえば、励振部として強力なスピーカ等を用いてもよい。
【0054】
また、本発明では、検査対象からの反射光が撮像部へ入射するまでの光路上に、光学部品の保護や装置のSN比の向上等を目的として、ウィンドウや、種々の光学フィルタを配置してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、本発明の制御部の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部による処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 振動子(励振部)
2 レーザ照明
3 スペックル・シェアリング干渉計(干渉部)
4 制御部
7 検査対象
21 インコヒーレント照明
35 イメージセンサ(撮像部)
73 欠陥部分
100 欠陥検査装置
図1
図2
図3
図4
図5