(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20220628BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G01N30/86 T
G01N30/86 P
G01N30/86 Q
G01N30/86 V
G01N30/02 Z
(21)【出願番号】P 2021501377
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2019006952
(87)【国際公開番号】W WO2020174514
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】横井 祐介
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004526(JP,A)
【文献】特開2015-052533(JP,A)
【文献】米国特許第05804142(US,A)
【文献】特開昭62-058168(JP,A)
【文献】特開2007-225420(JP,A)
【文献】特開2016-212043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相を送液する送液ポンプと、
前記送液ポンプの下流に流体的に接続され、前記送液ポンプによって送液される移動相中に試料を注入するためのオートサンプラと、
前記オートサンプラの下流に流体的に接続されて試料を成分ごとに分離するための分離カラムを内部に収容し、前記分離カラムの温度調節を行なうためのカラムオーブンと、
前記分離カラムからの溶出液を流すための試料セル、及び、前記試料セルに対して光を照射する光源を備え、前記分離カラムからの溶出液中の試料成分を検出するための検出器と、を備えた液体クロマトグラフィー用の分析システムであって、
前記分析システムにおけるエラーを検知するように構成されたエラー検知部と、
ユーザによる選択に従って、前記エラー検知部がエラーを検知したときの前記分析システムのエラー時動作を設定するように構成されたエラー時動作設定部であって、前記エラー時動作として、前記送液ポンプによる送液を停止させ、前記カラムオーブンによる前記分離カラムの温度調節を停止させ、かつ前記検出器の前記光源を消灯させるシャットダウンを設定し得るように構成されたエラー時動作設定部と、
前記シャットダウンの手順を記憶するシャットダウン手順記憶部と、
前記送液ポンプ、前記カラムオーブン及び前記検出器の動作を制御し、前記エラー検知部がエラーを検知したときに、前記エラー時動作設定部により設定された前記エラー時動作を実行するように構成されたエラー時動作実行部であって、前記エラー検知部がエラーを検知したときに、前記エラー時動作として前記シャットダウンが設定されている場合に、前記
シャットダウン手順記憶部に
記憶された手順で前記シャットダウンを実行するように構成されたエラー時動作実行部と、を備え、
前記シャットダウン手順記憶部は、前記エラー検知部により検知されるエラーの種類に応じた複数の前記シャットダウンの手順を保持しており、
前記エラー時動作実行部は、前記エラー時動作設定部により前記エラー時動作として前記シャットダウンが設定されているときに、前記エラー検知部がエラーを検知した場合、検知されたエラーの種類に応じた前記手順で前記シャットダウンを実行するように構成され、
前記シャットダウン手順記憶部は、送液圧力に関連するエラーが発生したときの前記シャットダウンの手順として、前記送液ポンプによる送液を停止させ、かつ前記光源を消灯させた後で、前記カラムオーブンによる前記分離カラムの温度調節を停止させる第1の手順を記憶し、送液圧力以外に関連するエラーが発生したときの前記シャットダウンの手順として、前記カラムオーブンによる前記分離カラムの温度調節を停止させるとともに前記光源を消灯させ、前記エラー検知部がエラーを検知してから予め設定されたクールダウン時間が経過したときに前記送液ポンプの動作を停止する第2の手順を記憶しており、
前記エラー時動作実行部は、前記エラー時動作設定部により前記エラー時動作として前記シャットダウンが設定されているときに、前記エラー検知部が送液圧力に関連するエラーを検知した場合には前記第1の手順で前記シャットダウンを実行し、前記エラー検知部が送液圧力以外に関連するエラーを検知した場合には前記第2の手順で前記シャットダウンを実行するように構成されている、分析システム。
【請求項2】
ユーザにより入力された情報に基づいて前記クールダウン時間を設定するように構成されたクールダウン時間設定部を備えている、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記オートサンプラは、三次元的に移動可能に設けられ、試料容器から試料を採取するためのニードルを少なくとも備えており、
前記シャットダウン手順記憶部は、前記シャットダウンの手順の中に、前記ニードルの先端がいずれのポートにも接触しない所定の待機位置へ前記ニードルを移動させるステップを含んでいる、請求項1に記載の分析システム。
【請求項4】
移動相を送液する送液ポンプと、
前記送液ポンプの下流に流体的に接続され、前記送液ポンプによって送液される移動相中に試料を注入するためのオートサンプラと、
前記オートサンプラの下流に流体的に接続されて試料を成分ごとに分離するための分離カラムを内部に収容し、前記分離カラムの温度調節を行なうためのカラムオーブンと、
前記分離カラムからの溶出液を流すための試料セル、及び、前記試料セルに対して光を照射する光源を備え、前記分離カラムからの溶出液中の試料成分を検出するための検出器と、を備えた液体クロマトグラフィー用の分析システムであって、
前記分析システムにおけるエラーを検知するように構成されたエラー検知部と、
ユーザによる選択に従って、前記エラー検知部がエラーを検知したときの前記分析システムのエラー時動作を設定するように構成されたエラー時動作設定部であって、前記エラー時動作として、前記送液ポンプによる送液を停止させ、前記カラムオーブンによる前記分離カラムの温度調節を停止させ、かつ前記検出器の前記光源を消灯させるシャットダウンを設定し得るように構成されたエラー時動作設定部と、
前記シャットダウンの手順を記憶するシャットダウン手順記憶部と、
前記送液ポンプ、前記カラムオーブン及び前記検出器の動作を制御し、前記エラー検知部がエラーを検知したときに、前記エラー時動作設定部により設定された前記エラー時動作を実行するように構成されたエラー時動作実行部であって、前記エラー検知部がエラーを検知したときに、前記エラー時動作として前記シャットダウンが設定されている場合に、前記
シャットダウン手順記憶部に
記憶された手順で前記シャットダウンを実行するように構成されたエラー時動作実行部と、を備え、
前記オートサンプラは
試料容器の温度を調節するための温度調節機構を備えており、
前記シャットダウン手順記憶部に記憶されている手順は、前記シャットダウンが終了した後も前記温度調節機構が動作し続けるように構成されている、分析システム。
【請求項5】
前記エラー時動作設定部は、前記エラー時動作として、前記検出器の前記光源を点灯させ続けるスタンバイ動作を設定し得るように構成されており、
前記エラー時動作実行部は、前記エラー時動作設定部により前記エラー時動作として前記スタンバイ動作が設定されているときに、前記エラー検知部がエラーを検知した場合、前記スタンバイ動作を実行するように構成されている、請求項1又は4に記載の分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィー用の分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーの分析システムには、例えば配管の詰まりや送液ポンプの送液不良といったエラーが発生したときに送液ポンプの動作を自動的に停止させる機能が搭載される場合がある(特許文献1参照。)。一方で、検出器の光源は、一度消灯させてしまうと、再点灯後に光量を安定させるまでに時間を要するため、エラーが発生しても自動的には消灯しないようになっていることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分析システムを夜間連続試験などで使用する場合、ユーザが不在の状態でエラーが発生することがある。そのような場合に、検出器の光源を点灯させたままにすると光源の消耗が進む上、その状態で送液ポンプの動作を停止させると、検出器の試料セルが空の状態で試料セルに対して光が長時間照射されてしまい、試料セルが汚れて光の透過性が変化し、以降の分析結果に悪影響を与える虞がある。また、カラムオーブン内が高温の状態で送液ポンプによる移動相の送液を止めてしまうと、分離カラムが過熱されて高温になった状態で放置され、充填剤の劣化が進行するといった問題も生じる。
【0005】
一方で、エラーが発生した後も送液ポンプを稼働し続けると、移動相を無駄に消費してしまう。さらに、移動相を使い果たした状態で送液ポンプを稼働し続けると、送液ポンプを空回りさせることによって送液ポンプが傷んでしまう虞がある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、分析システムにおいてエラーが発生したときに分析システムを構成する要素が受けるダメージを軽減できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る分析システムは、移動相を送液する送液ポンプと、前記送液ポンプの下流に流体的に接続され、前記送液ポンプによって送液される移動相中に試料を注入するためのオートサンプラと、前記オートサンプラの下流に流体的に接続されて試料を成分ごとに分離するための分離カラムを内部に収容し、前記分離カラムの温度調節を行なうためのカラムオーブンと、前記分離カラムからの溶出液を流すための試料セル、及び、前記試料セルに対して光を照射する光源を備え、前記分離カラムからの溶出液中の試料成分を検出するための検出器と、を備えた液体クロマトグラフィー用の分析システムであって、前記分析システムにおけるエラーを検知するように構成されたエラー検知部と、ユーザによる選択に従って、前記エラー検知部がエラーを検知したときの前記分析システムのエラー時動作を設定するように構成されたエラー時動作設定部であって、前記エラー時動作として、前記送液ポンプによる送液を停止させ、前記カラムオーブンによる前記分離カラムの温度調節を停止させ、かつ、前記検出器の前記光源を消灯させるシャットダウンを設定し得るように構成されたエラー時動作設定部と、前記シャットダウンの手順を記憶するシャットダウン手順記憶部と、前記送液ポンプ、前記カラムオーブン及び前記検出器の動作を制御し、前記エラー検知部がエラーを検知したときに、前記エラー時動作設定部により設定された前記エラー時動作を実行するように構成されたエラー時動作実行部であって、前記エラー検知部がエラーを検知したときに、前記エラー時動作として前記シャットダウンが設定されている場合に、前記シャットダウン手順保持部に保持された手順で前記シャットダウンを実行するように構成されたエラー時動作実行部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る分析システムでは、当該分析システムにおいて何らかのエラーが発生したときの動作(エラー時動作)として、少なくとも送液ポンプによる送液の停止、カラムオーブンにおける分離カラムの温度調節の停止、及び検出器の光源の消灯を含むシャットダウンを設定できるように構成されているので、送液ポンプが停止し、カラムオーブン内で分離カラムが高温になり、かつ検出器の光源が点灯した状態が長時間続くことが防止され、エラーの発生によって送液ポンプ、分離カラム及び光源が受けるダメージが軽減される。さらに、シャットダウンは予め設定された手順に従って実行されるように構成されているので、手順を工夫することによって、送液ポンプや分離カラムなどの各要素が受けるダメージをより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】分析システムの一実施例を示す概略構成図である。
【
図2】同実施例におけるエラー時のシャットダウンの第1の手順を示すフローチャートである。
【
図3】同実施例におけるエラー時のシャットダウンの第2の手順を示すフローチャートである。
【
図4】同実施例の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る液体クロマトグラフィー用の分析システムの一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示されているように、この実施例の分析システムは、送液ポンプ2、オートサンプラ4、カラムオーブン6、検出器8及び制御装置10を備えている。
【0012】
送液ポンプ2は移動相を送液するためのものである。
図1では、送液ポンプ2は、1種類の溶液を移動相として送液するように描かれているが、2種類以上の溶液を移動相として送液できるように構成されているものも含む。
【0013】
オートサンプラ4は送液ポンプ2の下流に流体的に接続されており、送液ポンプ2により送液される移動相中に試料を注入するものである。オートサンプラ4は、試料容器12から試料を採取するためのニードル14のほか、試料容器12の温度を所定温度に調節するための温度調節機構16を備えている。ニードル14は、水平面内方向と鉛直方向へ三次元的に移動するように構成されている。温度調節機構16は、例えば、試料容器12を保持するラックを冷却するペルチェ素子とラックの温度を検出する温度センサによって実現される。
【0014】
カラムオーブン6は、オートサンプラ4の下流に流体的に接続された分離カラム18を内部に収容し、分離カラム18の温度を設定された温度に調節する機能を有するものである。図示は省略されているが、カラムオーブン6には、内部温度を上昇させるためのヒータや内部空間を撹拌するためのファンなどが設けられている。
【0015】
検出器8は、分離カラム18からの溶出液中の試料成分を検出するためのものである。検出器8は、分離カラム18の下流に流体的に接続されて分離カラム18からの溶出液を内部において流通させる試料セル20、試料セル20に対して光を照射する光源22、及び、試料セル20を透過した光を検出するための光センサ24を備えている。
【0016】
制御装置10は、送液装置2、オートサンプラ4、カラムオーブン6及び検出器8との間で情報通信を行なうことによって、送液装置2、オートサンプラ4、カラムオーブン6及び検出器8の動作制御を行なうものである。制御装置10は、中央演算装置(CPU)及び記憶装置を備えた専用の又は汎用のコンピュータによって実現される。
【0017】
制御装置10は、エラー検知部26、エラー時動作設定部28、シャットダウン手順記憶部30、クールダウン時間設定部32及びエラー時動作実行部34を備えている。エラー検知部26、エラー時動作設定部28、クールダウン時間設定部32及びエラー時動作実行部34は、制御装置10のCPUがプログラムを実行することにより実現される機能であり、シャットダウン手順記憶部30は制御装置10の記憶装置の一部の記憶領域により実現される機能である。
【0018】
エラー検知部26は、送液ポンプ2、オートサンプラ4、カラムオーブン6及び検出器8からの種々の信号に基づいて、分析システムにおけるエラーの発生を検知するように構成されている。例えば、図示は省略されているが、送液ポンプ2には送液圧力を検出する圧力センサが搭載されており、エラー検知部26は、圧力センサからの信号によって流路内の詰まりや送液ポンプ2の送液不良をエラーとして検知する。このほか、エラー検知部26は、オートサンプラ4、カラムオーブン6及び検出器8における液漏れ、オートサンプラ4の温度調節機構16の温度異常、カラムオーブン6の内部の温度異常などをエラーとして検知する。
【0019】
エラー時動作設定部28は、上記のようなエラーがエラー検知部26によって検知されたときの分析システムの動作(以下、エラー時動作)を、ユーザによる選択に従って設定するように構成されている。設定され得るエラー時動作としては、送液ポンプ2の動作を停止させ、オートサンプラ4のニードル14の先端がいずれのポートに接触しないように設定された所定の待機位置へニードル14を移動させ、カラムオーブン6の温度調節動作を停止(すなわち、ヒータをオフ)させ、かつ、検出器8の光源22を消灯させるシャットダウンが少なくとも含まれる。このほか、設定され得るエラー時動作として、検出器8の光源22を点灯させたままで送液ポンプ2を低速(例えば、分析時の半分の速度)で動作させるスタンバイ動作を含んでいてもよい。すなわち、ユーザは、分析システムで何らかのエラーが発生したときの分析システムの動作として、上記のようなシャットダウンを少なくとも選択することができる。
【0020】
ここで、エラー時のシャットダウンにオートサンプラ4のニードル14を所定の待機位置へ移動させる動作を含めることにより、注入ポートなどのポートにニードル14が接触した状態が維持されることによってポートが損傷したりニードル14が曲がったりすることを防止できる。
【0021】
シャットダウン手順記憶部30は、エラー時動作としてシャットダウンが実行される際の手順を記憶している。シャットダウンの手順とは、どのような手順で、送液ポンプ2の動作を停止させ、オートサンプラ4のニードル14を所定の待機位置へ移動させ、カラムオーブン6の温度調節動作を停止させ、検出器8の光源22を消灯させるかを規定したものである。シャットダウン手順記憶部30は、エラー検知部26によって検知されるエラーの種類に応じたシャットダウンの手順を記憶している。
【0022】
この実施例では、シャットダウンの手順として、送液圧力に関するエラーが検知されたときの第1の手順、及び、送液圧力以外に関連するエラーが検知されたときの第2の手順がシャットダウン手順記憶部30に記憶されている。送液圧力に関するエラーとは、送液ポンプ2に設けられている圧力センサによって検出される圧力に異常が生じるエラーであり、主に、分析システム内の配管内の詰まりと送液ポンプ2の送液不良が挙げられる。
【0023】
送液圧力に関するエラーが検知されたときに実行され得るシャットダウンの第1の手順では、
図2に示されているように、エラー検知部26によってエラーが検知された直後に、送液ポンプ2の動作を停止し(ステップ101、102)、その後、カラムオーブン6の温度制御を停止し、オートサンプラ4のニードル14を所定の待機位置へ移動させ、検出器8の光源22を消灯させる(ステップ103)。なお、オートサンプラ4の温度調節機構16の温調機能をオフにして長時間放置されると、試料容器12内の試料が変質することも考えられるため、シャットダウン後も温度調節機構16の温調機能は維持されるように構成されていてよい。また、ユーザが、シャットダウン時に温度調節機構16の温調機能をオフにするか否かを設定できるようになっていてもよい。
【0024】
送液圧力以外に関連するエラーが検知されたときに実行され得るシャットダウンの第2の手順では、
図3に示されているように、エラー検知部26によってエラーが検知された後(ステップ201)、まずは、カラムオーブン6の温度制御を停止し、オートサンプラ4のニードル14を所定の待機位置へ移動させ、かつ、検出器8の光源22を消灯させ(ステップ202)、エラーが検知されてから所定のクールダウン時間が経過した後で送液ポンプ2を停止させる(ステップ203、204)。所定のクールダウン時間だけ移動相の送液を続けることで、分析システムの流路内に残存する試料を分析システム外へ排出することができる。
【0025】
図1に戻って説明を続ける。制御装置10のクールダウン時間設定部32は、上記第2の手順におけるクールダウン時間をユーザにより入力される情報に基づいて設定するように構成されている。すなわち、ユーザは上記のクールダウン時間を任意に設定することができる。
【0026】
エラー時動作実行部34は、送液ポンプ2、オートサンプラ4、カラムオーブン6及び検出器8の動作を制御し、エラー検知部26によってエラーが検知されたときに、エラー時動作設定部28により設定されたエラー時動作を実行するように構成されている。特に、エラー時動作としてシャットダウンが設定されている場合、エラー時動作実行部34は、エラー検知部26によってエラーが検知されたときに、シャットダウン手順記憶部30に記憶されている手順に従ってシャットダウンを実行するように構成されている。
【0027】
図1とともに
図4のフローチャートを用いて分析システムの動作について説明する。
【0028】
分析システムにおいて分析が開始されると、分析が終了するまでエラー検知部26により何らかのエラーが発生しているか否かの監視がなされる(ステップ301、302)。エラー検知部26により何らかのエラーが検知されたときに(ステップ301)、エラー時動作実行部34はエラー時動作として設定されている動作を確認する(ステップ303
。
【0029】
エラー時動作としてシャットダウンが設定されている場合、そのエラーの種類が送液圧力に関連するものであるか否かを確認する(ステップ304)。エラーの種類が送液圧力に関連するものである場合、エラー時動作実行部34は、シャットダウン手順記憶部30に記憶されている第1の手順に従ってシャットダウンを実行する(ステップ305)。一方で、エラーの種類が送液圧力以外に関連するものである場合、エラー時動作実行部34は、シャットダウン手順記憶部30に記憶されている第2の手順に従ってシャットダウンを実行する(ステップ306)。
【0030】
この実施例では、エラー時動作としてシャットダウンとスタンバイ動作が設定できるように構成されている。エラー時動作としてシャットダウンが設定されていない場合(ステップ303)、すなわち、エラー時動作としてスタンバイ動作が設定されている場合には、エラー時動作実行部34は所定のスタンバイ動作を実行する(ステップ307)。スタンバイ動作は、エラーの原因が解消した後ですぐに分析を再開することができるような状態を維持する動作である。例えば、エラーが送液圧力に関連するものである場合には、送液ポンプ2の動作は停止するものの、検出器8の光源22を点灯させたままで維持する。光源22を消灯させると、分析を再開する際に、光源22の光量が安定するまでに時間を要するためである。また、エラーが送液圧力以外に関連するものである場合には、送液ポンプ2の動作を稼働させ、検出器8の光源22を点灯させたままで維持する。ただし、分析が中断している間も送液ポンプ2を分析時と同じ速度で稼働させていると移動相を無駄に消費するので、送液ポンプ2を分析時よりも遅い所定の速度で稼働させてもよい。
【0031】
以上において説明したように、この実施例の分析システムでは、何らかのエラーが検知されたときのエラー時動作として、シャットダウンを設定できるように構成されているので、ユーザが監視していない夜間連続分析を行なう際にエラー時動作としてシャットダウンを設定しておけば、送液ポンプ2が稼働し、カラムオーブン6の温調機能が維持され、かつ、検出器8の光源22が点灯した状態で長時間維持されることを防止できる。なお、上記実施例は本発明に係る分析システムの実施形態の一例を示したに過ぎない。本発明に係る分析システムの実施形態は以下のとおりである。
【0032】
本発明に係る分析システムの実施形態は、移動相を送液する送液ポンプ(2)と、前記送液ポンプ(2)の下流に流体的に接続され、前記送液ポンプ(2)によって送液される移動相中に試料を注入するためのオートサンプラ(4)と、前記オートサンプラ(4)の下流に流体的に接続されて試料を成分ごとに分離するための分離カラム(18)を内部に収容し、前記分離カラム(18)の温度調節を行なうためのカラムオーブン(6)と、前記分離カラム(18)からの溶出液を流すための試料セル(20)、及び、前記試料セル(20)に対して光を照射する光源(22)を備え、前記分離カラム(20)からの溶出液中の試料成分を検出するための検出器(8)と、を備えた液体クロマトグラフィー用の分析システムであって、前記分析システムにおけるエラーを検知するように構成されたエラー検知部(26)と、ユーザによる選択に従って、前記エラー検知部(26)がエラーを検知したときの前記分析システムのエラー時動作を設定するように構成されたエラー時動作設定部(28)であって、前記エラー時動作として、前記送液ポンプ(2)による送液を停止させ、前記カラムオーブン(6)による前記分離カラム(18)の温度調節を停止させ、かつ前記検出器(8)の前記光源(22)を消灯させるシャットダウンを設定し得るように構成されたエラー時動作設定部(28)と、前記シャットダウンの手順を記憶するシャットダウン手順記憶部(30)と、前記送液ポンプ(2)、前記カラムオーブン(6)及び前記検出器(8)の動作を制御し、前記エラー検知部(26)がエラーを検知したときに、前記エラー時動作設定部(28)により設定された前記エラー時動作を実行するように構成されたエラー時動作実行部(34)であって、前記エラー検知部(26)がエラーを検知したときに、前記エラー時動作として前記シャットダウンが設定されている場合に、前記シャットダウン手順保持部(30)に保持された手順で前記シャットダウンを実行するように構成されたエラー時動作実行部(34)と、を備えている。
【0033】
上記実施形態の第1の態様では、前記シャットダウン手順記憶部(30)は、前記エラー検知部により検知されるエラーの種類に応じた複数の前記シャットダウンの手順を保持しており、前記エラー時動作実行部(34)は、前記エラー時動作設定部(28)により前記エラー時動作として前記シャットダウンが設定されているときに、前記エラー検知部(26)がエラーを検知した場合、検知されたエラーの種類に応じた前記手順で前記シャットダウンを実行するように構成されている。このような態様により、エラーの発生によりシャットダウンが実行される際に、そのエラーの種類に応じた手順でシャットダウンがなされるので、
【0034】
上記実施形態の第2の態様では、前記シャットダウン手順記憶部(30)は、送液圧力に関連するエラーが発生したときの前記シャットダウンの手順として、前記送液ポンプ(2)による送液を停止させ、かつ前記光源(22)を消灯させた後で、前記カラムオーブン(6)による前記分離カラム(18)の温度調節を停止させる第1の手順を記憶し、送液圧力以外に関連するエラーが発生したときの前記シャットダウンの手順として、前記カラムオーブン(6)による前記分離カラム(18)の温度調節を停止させるとともに前記光源(22)を消灯させ、前記エラー検知部(26)がエラーを検知してから予め設定されたクールダウン時間が経過したときに前記送液ポンプ(2)の動作を停止する第2の手順を記憶しており、前記エラー時動作実行部(34)は、前記エラー時動作設定部(32)により前記エラー時動作として前記シャットダウンが設定されているときに、前記エラー検知部(26)が送液圧力に関連するエラーを検知した場合には前記第1の手順で前記シャットダウンを実行し、前記エラー検知部が送液圧力以外に関連するエラーを検知した場合には前記第2の手順で前記シャットダウンを実行するように構成されている。
【0035】
上記態様において、ユーザにより入力された情報に基づいて前記クールダウン時間を設定するように構成されたクールダウン時間設定部(32)を備えていてもよい。そうすれば、ユーザがクールダウン時間を任意に設定することができる。
【0036】
上記実施形態の第3の態様では、前記オートサンプラ(4)は、三次元的に移動可能に設けられ、試料容器(12)から試料を採取するためのニードル(14)を少なくとも備えており、前記シャットダウン手順記憶部(30)は、前記シャットダウンの手順の中に、前記ニードル(14)の先端がいずれのポートにも接触しない所定の待機位置へ前記ニードル(14)を移動させるステップを含んでいる。これにより、前記ニードル14がいずれかのポートに接触した状態が長時間維持されることが防止される。
【0037】
上記態様において、前記オートサンプラ(4)は前記試料容器(12)の温度を調節するための温度調節機構(16)を備えており、前記シャットダウン手順記憶部(30)に記憶されている手順は、前記シャットダウンが終了した後も前記温度調節機構(16)が動作し続けるように構成されていてもよい。そうすれば、エラーの発生により分析が長時間にわたって中断しているときに、前記温度調節機構(16)による温調機能がオフになって前記試料容器(12)の温度が変化し、それによって試料が変質するといった事態の発生を防止することができる。
【0038】
上記実施形態の第4の態様では、前記エラー時動作設定部(28)は、前記エラー時動作として、前記検出器(8)の前記光源(22)を点灯させ続けるスタンバイ動作を設定し得るように構成されており、前記エラー時動作実行部(34)は、前記エラー時動作設定部(28)により前記エラー時動作として前記スタンバイ動作が設定されているときに、前記エラー検知部(26)がエラーを検知した場合、前記スタンバイ動作を実行するように構成されている。このような態様により、ユーザがすぐに対応できるような状態でエラーが発生した場合には、エラー時動作としてスタンバイ動作が設定されていれば、エラーの原因となる不具合が解消した後ですぐに分析を再開することができる。
【0039】
上記第1の態様から第4の態様は任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0040】
2 送液ポンプ
4 オートサンプラ
6 カラムオーブン
8 検出器
10 制御装置
12 試料容器
14 ニードル
16 温度調節機構
18 分離カラム
20 試料セル
22 光源
24 光センサ
26 エラー検知部
28 エラー時動作設定部
30 シャットダウン手順記憶部
32 クールダウン時間設定部
34 エラー時動作実行部