(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】RFID補助アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/02 20060101AFI20220628BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20220628BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20220628BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H01Q19/02
H01Q7/00
H04B5/02
G06K7/10 232
(21)【出願番号】P 2022514710
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2021002171
(87)【国際公開番号】W WO2021220565
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2020078510
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 博美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 登
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】植木 紀行
(72)【発明者】
【氏名】安武 誠
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-188282(JP,A)
【文献】特開2003-179526(JP,A)
【文献】特開2004-221623(JP,A)
【文献】登録実用新案第3047027(JP,U)
【文献】特開2000-049512(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161608(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/005278(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056363(WO,A1)
【文献】特開2009-152862(JP,A)
【文献】特開2013-175141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
G06K 7/00- 7/14
G06K 17/00
G06K 19/00-19/18
H04B 5/00- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信対象のRFIDタグに近接する、またはRFIDタグを収容する、物品に設けられる補助アンテナ装置であり、
前記物品を周回する導電性パターンで構成され、
前記物品を周回する前記導電性パターン間に
生じる容量成分と前記導電性パターンのインダクタンス成分とで共振回路が構成され、当該共振回路の共振周波数が、前記RFIDタグの通信周波数と一致又はほぼ等しいことを特徴とするRFID補助アンテナ装置。
【請求項2】
前記容量成分は、第1容量成分及び第2容量成分で構成され、
前記第1容量成分は、前記導電性パターンの前記周回の方向における端部付近同士の間に生じる容量成分であり、
前記導電性パターンは前記周回の方向に長く、当該周回の方向で不連続部を有し、前記第2容量成分は、前記不連続部の前記導電性パターン間に生じる容量成分である、
請求項1に記載のRFID補助アンテナ装置。
【請求項3】
前記導電性パターンはシート状の基材に形成され、
前記第1容量成分は、前記基材を挟んで前記導電性パターン間に形成される、
請求項2に記載のRFID補助アンテナ装置。
【請求項4】
前記導電性パターンは前記基材に対して複数層に形成され、
前記第2容量成分は、前記基材の厚み方向に形成される、前記導電性パターンの間隙に生じる、
請求項3に記載のRFID補助アンテナ装置。
【請求項5】
前記第2容量成分は、前記基材の面方向に形成される、前記導電性パターンの間隙に生じる、
請求項3に記載のRFID補助アンテナ装置。
【請求項6】
前記導電性パターンは前記物品の表面に形成され、
前記容量成分は、前記物品の表面に沿って対向する前記導電性パターンの間隙に生じる、
請求項1に記載のRFID補助アンテナ装置。
【請求項7】
前記導電性パターンは前記物品の表面に形成され、
前記第1容量成分及び前記第2容量成分は、前記物品の表面に沿って対向する前記導電性パターンの間隙に生じる、
請求項2に記載のRFID補助アンテナ装置。
【請求項8】
前記導電性パターンは前記RFIDタグと磁界結合する、
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のRFID補助アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグとの通信の補助に用いられるRFID補助アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁界アンテナを備える小型のRFIDタグが示されている。
【0003】
RFIDシステムに用いられるアンテナには電界アンテナと磁界アンテナとがある。電界アンテナでは、通信距離を長くすることができるが、例えば、ダイポール型アンテナなどの電界アンテナの場合、通信周波数の1/2波長の長さのアンテナパターンを平面的に形成することになる。これに対し、磁界アンテナでは、基本的にコイル状のアンテナを形成するだけで構成できるので、電界アンテナよりも容易に小型化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、磁界アンテナを備えるRFIDタグでは、電界アンテナを備えるRFIDタグに比べ通信可能な距離が短く、通信エリアが狭い、という解決すべき課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、RFIDタグとそのリーダ・ライタとの間での、実質的な通信エリアを拡張するRFID補助アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例としてのRFID補助アンテナ装置は、通信対象のRFIDタグに近接する、またはRFIDタグを収容する、物品に設けられる補助アンテナ装置であり、前記物品を周回する導電性パターンで構成され、前記導電性パターン間に形成される容量成分と前記導電性パターンのインダクタンス成分とで共振回路が構成され、当該共振回路の共振周波数が、前記RFIDタグの通信周波数と一致又はほぼ等しいことを特徴とする。
【0008】
上記構成により、導電性パターン間に形成される容量成分と導電性パターンのインダクタンス成分とによる共振回路が、RFIDのアンテナ及びリーダ・ライタのアンテナにそれぞれ結合する補助アンテナ装置として作用し、RFIDタグとリーダ・ライタとの通信性能が高まる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、RFIDタグとそのリーダ・ライタとの間での、実質的な通信エリアが拡張されたRFIDシステムが構成できる。また、同等の通信エリアで比較すれば、RFIDタグをより小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(A)は第1の実施形態に係るRFID補助アンテナ装置101、そのRFID補助アンテナ装置101を備える物品10、RFIDタグ付き物品20及びアンテナ基板30等の構成を示す斜視図である。
図1(B)はRFIDタグ付き物品20の裏面側を示す斜視図である。
【
図2】
図2(A)はRFID補助アンテナ装置101の部分平面図、
図2(B)はRFID補助アンテナ装置101の部分断面図である。
【
図3】
図3(A)は、物品10及び物品10に取り付けられたRFID補助アンテナ装置101の横断面図である。
図3(B)は
図3(A)における円Bで囲んだ部分の拡大断面図である。
【
図4】
図4はRFID補助アンテナ装置101の等価回路図である。
【
図5】
図5はRFIDタグ21A,21B、RFID補助アンテナ装置101及びリーダ・ライタ301の結合関係を示す図である。
【
図6】
図6は第1の実施形態に係る別の補助アンテナ装置の斜視図である。
【
図7】
図7(A)は第2の実施形態に係るRFID補助アンテナ装置102の部分平面図であり、
図7(B)は
図7(A)における一点鎖線部分でのRFID補助アンテナ装置102の部分断面図である。
【
図8】
図8(A)は、物品10及び物品10に取り付けられたRFID補助アンテナ装置102の横断面図である。
図8(B)は
図8(A)における円Bで囲んだ部分の拡大断面図である。
【
図9】
図9はRFID補助アンテナ装置102の等価回路図である。
【
図10】
図10は第2の実施形態に係る別の補助アンテナ装置の部分平面図である。
【
図11】
図11(A)は第3の実施形態に係るRFID補助アンテナ装置103の部分平面図であり、
図11(B)は
図11(A)における一点鎖線部分の断面図である。
【
図12】
図12は第4の実施形態に係るRFID補助アンテナ装置104を備える物品10の斜視図である。
【
図13】
図13はRFID補助アンテナ装置104の部分展開図である。
【
図14】
図14はRFID補助アンテナ装置104の等価回路図である。
【
図15】
図15は第5の実施形態に係るRFID補助アンテナ装置105の部分展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1(A)は第1の実施形態に係るRFID補助アンテナ装置101、そのRFID補助アンテナ装置101を備える物品10、RFIDタグ付き物品20及びアンテナ基板30等の構成を示す斜視図である。
図1(B)はRFIDタグ付き物品20の裏面側を示す斜視図である。
【0012】
図1(B)に示すように、RFIDタグ付き物品20にRFIDタグ21が貼付されている。
図1(A)に示すように、物品10は有底円筒状の容器であり、絶縁性樹脂の成型体である。この物品10に複数のRFIDタグ付き物品20が収容される。RFID補助アンテナ装置101は物品10の外側面を周回するように物品10に設けられている。このRFID補助アンテナ装置101は外部の何らかの回路に接続されるのではなく、それだけで独立している。
【0013】
図1(A)に表れているように、アンテナ基板30にループアンテナによるリーダ・ライタアンテナ31が設けられている。リーダ・ライタアンテナ31には図外のリーダ・ライタが接続される。RFIDタグ付き物品20を収容した物品10をアンテナ基板30に載置した状態で、リーダ・ライタは各RFIDタグ21の読み書きを行う。
【0014】
RFID補助アンテナ装置101はRFIDタグ21のアンテナ及びリーダ・ライタアンテナ31に結合する。このことにより、RFIDタグ21とリーダ・ライタとの通信を補助する。
【0015】
図2(A)はRFID補助アンテナ装置101の部分平面図、
図2(B)はRFID補助アンテナ装置101の部分断面図である。このRFID補助アンテナ装置101は、絶縁性の基材13に貼付された金属箔による導電性パターン11を備える。本実施形態では、この導電性パターン11は、基材13の幅より小さな幅の単純なストリップライン状のパターンである。基材13の、導電性パターン11の形成面には接着層(粘着剤の層)14が設けられている。基材13は例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)やPI(ポリイミド)等の樹脂シートであり、導電性パターン11はAl箔、Cu箔等の金属箔をパターンニングしたものである。
【0016】
図3(A)は、物品10及び物品10に取り付けられたRFID補助アンテナ装置101の横断面図である。物品10の内部は空の状態である。
図3(B)は
図3(A)における円Bで囲んだ部分の拡大断面図である。RFID補助アンテナ装置101は物品10の外側面に周回するように、接着層14を介して貼付されている。上記ストリップライン状の導電性パターン11の一方端と他方端とは重なる。この、基材13を介して積層方向に対向する導電性パターン11間に第1容量成分が生じる。この重なる部分の周回方向の長さは、上記第1容量成分が共振回路のキャパシタンスとして作用する長さである。例えば、導電性パターン11の全周の1/2以下である。
【0017】
図4はRFID補助アンテナ装置101の等価回路図である。
図4において、キャパシタC1は、導電性パターン11の一方端と他方端との間に生じる上記第1容量成分に相当する。インダクタLは導電性パターン11のインダクタンス成分に相当する。キャパシタC1とインダクタLとでLC共振回路が構成されている。キャパシタC1のキャパシタンスは例えば2pF、インダクタLの合計インダクタンスは例えば15nHである。
【0018】
上記共振回路の共振周波数は、RFIDタグ21の通信周波数と一致する、または通信周波数にほぼ等しい。例えば900MHz帯のRFIDタグである場合、上記共振回路は900MHz帯で共振する。RFID補助アンテナ装置101の共振周波数は、RFIDタグ21のアンテナ及びリーダ・ライタアンテナ31と磁界結合する周波数である、ということもできる。導電性パターン11は、単にそのインダクタンスを利用しているだけでなく、物品10の外周に沿って周回することで円形のループ状を成している。
【0019】
図5はRFIDタグ21A,21B、RFID補助アンテナ装置101及びリーダ・ライタ301の結合関係を示す図である。RFIDタグ21A,21Bは複数のRFIDタグ21のうちの2つである。この例では、RFIDタグ21Aの磁界アンテナと導電性パターン11によるループとが磁界結合する。また、RFID補助アンテナ装置101とリーダ・ライタ301のリーダ・ライタアンテナ31とが磁界結合する。さらに、RFIDタグ21Bの磁界アンテナとリーダ・ライタアンテナ31とが磁界結合する。
【0020】
上記構成により、導電性パターン11間に形成される第1容量成分と導電性パターン11のインダクタンス成分とによる共振回路が、RFIDタグ21のアンテナに結合する共振回路として、及びリーダ・ライタ301のリーダ・ライタアンテナ31に結合する共振回路として作用する。これにより、RFID補助アンテナ装置101はRFIDタグ21とリーダ・ライタ301との中継を行う補助アンテナ装置として作用する。また、RFID補助アンテナ装置101はRFIDタグ21又はリーダ・ライタ301のブースタ用アンテナとして作用する、ということもできる。
【0021】
なお、
図5において、RFIDタグ21Bとリーダ・ライタアンテナ31との結合に示したように、RFID補助アンテナ装置101はRFIDタグ21とリーダ・ライタアンテナ31との直接的結合を阻害しない。
【0022】
本実施形態によれば、RFIDタグ21とそのリーダ・ライタ301との間での、実質的な通信エリアが拡張されたRFIDシステムが構成できる。また、RFIDタグのアンテナを小型化してもRFID補助アンテナ装置101の作用により所定の通信エリアが確保できるので、同等の通信エリアで比較すれば、RFIDタグをより小型化できる。
【0023】
なお、
図1(A)、
図3(A)等では、RFIDタグを収容する容器としての物品10が有底円筒状の物品である例を示したが、物品10の形状はこれに限らない。例えば
図6は本実施形態に係る別のRFID補助アンテナ装置101を備える物品10の斜視図である。この例では、直方体状の物品10の側面にRFID補助アンテナ装置101を貼付している。
【0024】
このように、物品10の形状は円筒や角筒に限らず、RFID補助アンテナ装置がループアンテナを構成する形状であればよい。
【0025】
また、RFID補助アンテナ装置101は、通信対象のRFIDタグを収容する容器に限らず、RFIDタグに近接する物品に設けてもよい。例えば、底の無い円筒状や角筒状の物品の側面にRFID補助アンテナ装置101を設け、このRFID補助アンテナ装置101付きの物品をRFIDタグの近傍に配置してもよい。
【0026】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、導電性パターンが複数の層に形成されたRFID補助アンテナ装置102について例示する。
【0027】
図7(A)は第2の実施形態に係るRFID補助アンテナ装置102の部分平面図であり、
図7(B)は
図7(A)における一点鎖線部分でのRFID補助アンテナ装置102の部分断面図である。このRFID補助アンテナ装置102は、絶縁性の基材13の下面に貼付された金属箔による導電性パターン11、及び基材13の上面に貼付された金属箔による導電性パターン12を備える。導電性パターン11は、基材13の幅より小さな幅のストリップライン状のパターンであり、途中に不連続部11Dを有する。導電性パターン12は、導電性パターン11の平面視で、導電性パターン11の不連続部11Dを絶縁状態でブリッジするように、基材13に形成されている。そのため、導電性パターン11の不連続部11Dの端部付近と導電性パターン12との間に第2容量成分に相当するキャパシタC21,C22が生じる。基材13の、導電性パターン11の形成面には接着層14が設けられている。
【0028】
図8(A)は、物品10及び物品10に取り付けられたRFID補助アンテナ装置102の横断面図である。
図8(B)は
図8(A)における円Bで囲んだ部分の拡大断面図である。RFID補助アンテナ装置102は物品10の外側面を周回するように、接着層14を介して物品10の外側面に貼付されている。上記ストリップライン状の導電性パターン11の一方端と他方端とは重なる。この、基材13を介して積層方向に対向する導電性パターン11間に第1容量成分に相当するキャパシタC1が生じる。
【0029】
また、導電性パターン11は複数の不連続部11Dを有し、これら不連続部11Dをそれぞれ絶縁状態でブリッジする導電性パターン12が設けられている。基材13を介して積層方向に対向する導電性パターン11と導電性パターン12との間に第2容量成分に相当するキャパシタC21,C22がそれぞれ生じる。
【0030】
図8(A)では、複数の導電性パターン12を備えるRFID補助アンテナ装置102について例示したが、単一の導電性パターン12を備えるRFID補助アンテナ装置を構成することもできる。
【0031】
図9はRFID補助アンテナ装置102の等価回路図である。第1の実施形態で示した例と同様に、
図9においてキャパシタC1は、導電性パターン11の一方端と他方端との間に生じる第1容量成分に相当する。インダクタL2は、不連続部11Dで分離された各導電性パターン11のインダクタンス成分に相当する。キャパシタC2は第2容量成分に相当し、上記導電性パターン11の不連続部11Dの端部付近と導電性パターン12との間に生じる第2容量成分に相当するキャパシタC21,C22の合成容量である。キャパシタC1のキャパシタンスは例えば2pF、キャパシタC2のキャパシタンスは例えば20pF、インダクタL2のインダクタンスは例えば16nHである。
【0032】
キャパシタC2のキャパシタンスはキャパシタC1のキャパシタンスより充分に小さい。RFID補助アンテナ装置102の巻き終わりの部分に形成されるキャパシタC1は物品10に対する巻きずれや接着層14の厚みなどの影響を受けるため、そのキャパシタンスがばらつきやすく、共振周波数のばらつきに影響を与える。一方、シート状態で形成されているキャパシタC2のばらつき要因はシート形成時の電極幅や基材厚みなどであり、一般的にキャパシタC1のばらつきよりも小さく抑えることができる。共振回路の容量成分はキャパシタC1とキャパシタC2との直列回路の合成容量成分である。上記のとおり、C1>>C2とすれば、共振回路の容量成分に対するC1のばらつきによる影響を小さくすることができる。
【0033】
図9に示した、インダクタL2、第2容量成分のキャパシタC2及び第1容量部のキャパシタC1によってLC共振回路が構成されている。この共振回路の共振周波数は、RFIDタグ21の通信周波数と一致する、または通信周波数にほぼ等しい。例えば900MHz帯のRFIDタグである場合、上記共振回路は900MHz帯で共振する。第1の実施形態で示したRFID補助アンテナ装置101と同様に、導電性パターン11は、単にそのインダクタンスを利用しているだけでなく、物品10の外周に沿って周回することで円形のループ状を成している。
【0034】
また、
図9に示した、1つのインダクタL2と、それに接続された1つのキャパシタC2との組で単位共振回路が構成される。つまり、複数の単位共振回路の直列接続によって1つのループが構成されている。このことにより、インダクタンスの蓄積(複数のインダクタ(
図4に示したインダクタL)のインダクタンスの単純な加算)が回避され、共振時の単位共振回路の両端電圧は実数であるため、ループの周りに位相が蓄積されず、ループの周りの電流はほぼ同相である。つまり、電流はループに沿って一定のままであり、ループの軸に沿って揃った磁界が生成される。
【0035】
上記構成と作用により、ループのサイズが小さくても、
図4に示した例のようなループとキャパシタとによる単純なLC共振回路と同等の磁界を生じさせることができる。
【0036】
図10は第2の実施形態に係る別のRFID補助アンテナ装置の部分平面図である。このRFID補助アンテナ装置は、絶縁性の基材13の下面に貼付された金属箔による導電性パターン11、及び基材13の上面に貼付された金属箔による導電性パターン12を備える。導電性パターン11の、導電性パターン12に対向する部分は、導電性パターン12の幅より細い。そのため、導電性パターン11及び導電性パターン12の、幅方向の形成位置にずれがあっても、導電性パターン11の不連続部11Dの端部付近と導電性パターン12との総対向面積は一定に保たれる。また、導電性パターン11及び導電性パターン12の、長手方向の形成位置にずれがあっても、導電性パターン11の不連続部11Dの端部付近と導電性パターン12との総対向面積は一定に保たれる。そのため、第2容量成分は、導電性パターン11と導電性パターン12との形成位置のずれの影響を受けにくい。
【0037】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、第2導電性パターンの構成が第2の実施形態で示した例とは異なるRFID補助アンテナ装置について示す。
【0038】
図11(A)は第3の実施形態に係るRFID補助アンテナ装置103の部分平面図であり、
図11(B)は
図11(A)における一点鎖線部分の断面図である。このRFID補助アンテナ装置103は、絶縁性の基材13の下面に貼付された金属箔による導電性パターン11及び導電性パターン12を備える。導電性パターン11は途中に不連続部11Dを有する。導電性パターン12は、不連続部11Dで分離された導電性パターン11の端部に、基材13の面方向に対向する。そのため、導電性パターン11の不連続部11Dの端部付近と導電性パターン12との間に第2容量成分に相当するキャパシタC21,C22が生じる。基材13の、導電性パターン11の形成面には接着層14が設けられている。
【0039】
このように、導電性パターン11と導電性パターン12とを同一層に形成してもよい。本実施形態によれば、導電性パターン11と導電性パターン12とを同時にパターン形成するので、印刷ずれによる特性変動が抑えられる。
【0040】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、導電性パターンを形成する基材を備えないRFID補助アンテナ装置について例示する。
【0041】
図12は第4の実施形態に係るRFID補助アンテナ装置104を備える物品10の斜視図である。
図13はRFID補助アンテナ装置104の部分展開図である。
【0042】
物品10はRFIDタグを収容する容器であり、例えば絶縁性樹脂の成型体である。物品10の外側面に複数の導電性パターン11,12が形成されている。導電性パターン11はストリップライン状のパターンであり、途中に不連続部11Dを有する。導電性パターン12は、導電性パターン11の不連続部11Dに沿って形成されている。そのため、導電性パターン11の不連続部11Dの端部付近と導電性パターン12との間に容量成分が生じる。
【0043】
図14はRFID補助アンテナ装置104の等価回路図である。
図14においてキャパシタCは、導電性パターン11と導電性パターン12との間に生じる容量成分に相当する。インダクタLは、不連続部11Dで分離された各導電性パターン11のインダクタンス成分に相当する。
【0044】
図14に示した、複数のインダクタL及び複数のキャパシタCによってLC共振回路が構成されている。この共振回路の共振周波数は、RFIDタグ21の通信周波数と一致する、または通信周波数にほぼ等しい。導電性パターン11は、単にそのインダクタンスを利用しているだけでなく、物品10の外周に沿って周回することで円形のループ状を成している。
【0045】
本実施形態で示すように、導電性パターンは物品の表面に直接形成されていてもよい。
【0046】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、導電性パターンが物品の表面に直接形成され、かつ第1容量成分及び第2容量成分を備えるRFID補助アンテナ装置について例示する。
【0047】
図15は第5の実施形態に係るRFID補助アンテナ装置105の部分展開図である。このRFID補助アンテナ装置105は、
図12に示した例のように、物品10の表面に直接形成されている。物品10の外側面に複数の導電性パターン11,12が形成されている。導電性パターン11はストリップライン状のパターンであり、途中に不連続部11Dを有する。導電性パターン12は、導電性パターン11の不連続部11Dに沿って形成されている。つまり、導電性パターン12は、物品の表面に沿って導電性パターン11の不連続部11Dに対向する。そのため、導電性パターン11の不連続部11Dの端部付近と導電性パターン12との間に第2容量成分に相当するキャパシタC21,C22が生じる。また、複数の導電性パターン11の周回方向の一方端付近と他方端付近とは周回方向に並走する。この部分に第1容量成分に相当するキャパシタC1が生じる。
【0048】
第5の実施形態に係るRFID補助アンテナ装置105の等価回路図は、第2の実施形態において
図9に示したとおりである。
【0049】
本実施形態で示すように、導電性パターンを物品の表面に直接形成して、第1容量成分及び第2容量成分を形成してもよい。
【0050】
最後に、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。当業者によって適宜変形及び変更が可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変形及び変更が含まれる。
【0051】
例えば、
図7(A)、
図7(B)では、導電性パターン11,12が基材13の2層に形成された例を示したが、導電性パターン11又は12が基材13の3層以上の複数層に形成されて、第2容量成分が、基材13の厚み方向の、導電性パターンの間隙に形成されるようにしてもよい。
【0052】
また、導電性パターン11の端部と導電性パターン11の端部とを所定の間隙を隔てて突き合わせることによって、その間隙に第1容量成分を形成してもよい。同様に、不連続部で分断された導電性パターン11の端部と導電性パターン11の端部とを所定の間隙を隔てて突き合わせることによって、その間隙に第2容量成分を形成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
C…キャパシタ(容量成分)
C1…キャパシタ(第1容量成分)
C2,C21,C22…キャパシタ(第2容量成分)
L,L2…インダクタ(インダクタンス成分)
10…物品
11,12…導電性パターン
11D…不連続部
13…基材
14…接着層
20…RFIDタグ付き物品
21,21A,21B…RFIDタグ
30…アンテナ基板
31…リーダ・ライタアンテナ
101,102,103,104,105…RFID補助アンテナ装置
301…リーダ・ライタ