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特許7095832ドリルヘッド、先端交換式ドリル及びドリル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】ドリルヘッド、先端交換式ドリル及びドリル
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
B23B51/00 T
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021576418
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2021011958
【審査請求日】2021-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘児
(72)【発明者】
【氏名】神代 政章
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176452(WO,A1)
【文献】特開2013-215857(JP,A)
【文献】特開2019-171493(JP,A)
【文献】特開2006-231468(JP,A)
【文献】特開2014-083645(JP,A)
【文献】特開2012-030306(JP,A)
【文献】国際公開第2021/038841(WO,A1)
【文献】特開平07-308814(JP,A)
【文献】実開平02-063912(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00 - B23B 51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の回りに回転されるドリルヘッドであって、
前記中心軸の方向における端面である取り付け面と、
前記中心軸の方向における前記取り付け面の反対面である先端面と、
前記取り付け面及び前記先端面に連なる外周面と、
前記先端面において前記外周面から前記中心軸に向かって延びている切れ刃と、
前記外周面に形成され、かつ前記先端面から前記取り付け面に達するように前記中心軸回りの螺旋状に延びているフルートと、
前記先端面及び前記フルートに連なるシンニング面とを備え、
前記先端面は、前記切れ刃に連なる第1逃げ面と、前記フルートを挟んで前記第1逃げ面とは反対側にある第2逃げ面とを有し、
前記切れ刃は、前記外周面に連なる主切れ刃と、前記主切れ刃に連なり、かつ前記主切れ刃よりも前記中心軸側にあるシンニング切れ刃とを有し、
前記主切れ刃は、前記外周面側の端である第1端と、前記シンニング切れ刃側の端である第2端とを含み、
前記シンニング面は、前記第1逃げ面とは反対側から前記シンニング切れ刃に連なるシンニングすくい面と、前記第2逃げ面に連なるシンニングヒール面とを有し、
前記中心軸の方向に沿って前記先端面側から見た端面視において、前記第1端及び前記第2端を結んだ仮想直線に対する前記主切れ刃の凹み量は、前記ドリルヘッドの外接円の直径の-0.01倍以上0.02倍以下の範囲内にある正の値又は負の値であり、
前記端面視において、前記シンニングヒール面と前記第2逃げ面との稜線は、半径が前記直径の0.10倍以上0.30倍以下の円弧状であ
前記主切れ刃の半径方向すくい角は、最大値と最小値との差が20°以下である、ドリルヘッド。
【請求項2】
前記端面視において、前記凹み量は前記直径の0.01倍以下の正の値である、請求項1に記載のドリルヘッド。
【請求項3】
前記半径は、前記直径の0.13倍以上0.24倍以下である、請求項1又は請求項2に記載のドリルヘッド。
【請求項4】
前記中心軸の方向と前記シンニングヒール面との間の角度は、28°以上32°以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のドリルヘッド。
【請求項5】
前記端面視において、前記シンニング切れ刃は、直線状に延びている、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のドリルヘッド。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の前記ドリルヘッドと、
前記取り付け面に取り付けられているホルダとを備える、先端交換式ドリル。
【請求項7】
中心軸の回りに回転されるドリルであって、
前記中心軸の方向における端である先端及び後端と、
前記先端にある先端面と、
前記先端面に連なる外周面と、
前記先端面において前記外周面から前記中心軸に向かって延びている切れ刃と、
前記外周面に形成され、かつ前記先端面から前記後端側に向かって前記中心軸回りの螺旋状に延びているフルートと、
前記先端面及び前記フルートに連なるシンニング面とを備え、
前記先端面は、前記切れ刃に連なる第1逃げ面と、前記フルートを挟んで前記第1逃げ面とは反対側にある第2逃げ面とを有し、
前記切れ刃は、前記外周面に連なる主切れ刃と、前記主切れ刃に連なり、かつ前記主切れ刃よりも前記中心軸側にあるシンニング切れ刃とを有し、
前記主切れ刃は、前記外周面側の端である第1端と、前記シンニング切れ刃側の端である第2端とを含み、
前記シンニング面は、前記第1逃げ面とは反対側から前記シンニング切れ刃に連なるシンニングすくい面と、前記第2逃げ面に連なるシンニングヒール面とを有し、
前記中心軸の方向に沿って前記先端面側から見た端面視において、前記第1端及び前記第2端を結んだ仮想直線に対する前記主切れ刃の凹み量は、前記ドリルの外接円の直径の-0.01倍以上0.02倍以下の範囲内にある正の値又は負の値であり、
前記端面視において、前記シンニングヒール面と前記第2逃げ面との稜線は、半径が前記直径の0.10倍以上0.30倍以下の円弧状であ
前記主切れ刃の半径方向すくい角は、最大値と最小値との差が20°以下である、ドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドリルヘッド、先端交換式ドリル及びドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2019/049257号(特許文献1)には、ドリルが記載されている。特許文献1に記載のドリルは、軸心回りに回転される。特許文献1に記載のドリルは、外周面と、排出溝と、第1逃げ面と、第2逃げ面と、切れ刃と、シンニング刃と、ギャッシュ部とを有している。
【0003】
排出溝は、外周面に形成されている。排出溝は、ドリルの先端側からドリルの後端側に向かって軸心回りの螺旋状に延びている。排出溝は、ドリルの回転方向側を向いている内面を有している。切れ刃は、排出溝の内面と第1逃げ面との稜線に設けられている。第2逃げ面は、排出溝を挟んで第1逃げ面の反対側にある。シンニング刃は、切れ刃の内端からチゼルに向かって延びている。ギャッシュ部は、排出溝に接続されている。
【0004】
ギャッシュ部は、第1逃げ面と反対側からシンニング刃に連なるシンニング面と、第2逃げ面に連なるギャッシュ面とを有している。ギャッシュ面と第2逃げ面との稜線は、ドリルの先端側から軸心の方向に沿って見た端面視において、円弧状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/049257号
【発明の概要】
【0006】
本開示のドリルヘッドは、中心軸の回りに回転される。ドリルヘッドは、中心軸の方向における端面である取り付け面と、中心軸の方向における取り付け面の反対面である先端面と、取り付け面及び先端面に連なる外周面と、先端面において外周面から中心軸に向かって延びている切れ刃と、外周面に形成され、かつ、先端面から取り付け面に達するように中心軸回りの螺旋状に延びているフルートと、先端面及びフルートに連なるシンニング面とを備える。先端面は、切れ刃に連なる第1逃げ面と、フルートを挟んで第1逃げ面とは反対側にある第2逃げ面とを有している。切れ刃は、外周面に連なる主切れ刃と、主切れ刃に連なり、かつ、主切れ刃よりも中心軸側にあるシンニング切れ刃とを有している。主切れ刃は、外周面側の端である第1端と、シンニング切れ刃側の端である第2端とを含んでいる。シンニング面は、第1逃げ面とは反対側からシンニング切れ刃に連なるシンニングすくい面と、第2逃げ面に連なるシンニングヒール面とを有している。中心軸の方向に沿って先端面側から見た端面視において、第1端及び第2端を結んだ仮想直線に対する主切れ刃の凹み量は、ドリルヘッドの外接円の直径の-0.01倍以上0.02倍以下である。端面視において、シンニングヒール面と第2逃げ面との稜線は、半径が直径の0.10倍以上0.30倍以下の円弧状である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、ドリル100の斜視図である。
図2図2は、ドリルヘッド10の斜視図である。
図3図3は、ドリルヘッド10の正面図である。
図4図4は、ドリルヘッド10の背面図である。
図5図5は、主切れ刃15aの凹み量を説明するための模式図である。
図6図6は、主切れ刃15aの半径方向すくい角θ1を説明するための模式図である。
図7図7は、図3中のVII-VIIにおける断面図である。
図8図8は、ホルダ20の斜視図である。
図9図9は、ホルダ20の正面図である。
図10図10は、第1切削試験の結果を示すグラフである。
図11図11は、第2切削試験の結果を示すグラフである。
図12図12は、第3切削試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載のドリルでは、ドリルの先端側から軸心の方向に沿って見た端面視において、切れ刃が円弧状に延びている。そのため、特許文献1に記載のドリルでは、切れ刃から切り出された切り屑が湾曲し、分断されがたい。
【0009】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、切り屑が分断されやすいドリルヘッドを提供するものである。
【0010】
[本開示の効果]
本開示のドリルヘッドによると、切り屑が分断されやすくなる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施形態を列挙して説明する。
【0012】
(1)実施形態に係るドリルヘッドは、中心軸の回りに回転される。ドリルヘッドは、中心軸の方向における端面である取り付け面と、中心軸の方向における取り付け面の反対面である先端面と、取り付け面及び先端面に連なる外周面と、先端面において外周面から中心軸に向かって延びている切れ刃と、外周面に形成され、かつ、先端面から取り付け面に達するように中心軸回りの螺旋状に延びているフルートと、先端面及びフルートに連なるシンニング面とを備える。先端面は、切れ刃に連なる第1逃げ面と、フルートを挟んで第1逃げ面とは反対側にある第2逃げ面とを有している。切れ刃は、外周面に連なる主切れ刃と、主切れ刃に連なり、かつ、主切れ刃よりも中心軸側にあるシンニング切れ刃とを有している。主切れ刃は、外周面側の端である第1端と、シンニング切れ刃側の端である第2端とを含んでいる。シンニング面は、第1逃げ面とは反対側からシンニング切れ刃に連なるシンニングすくい面と、第2逃げ面に連なるシンニングヒール面とを有している。中心軸の方向に沿って先端面側から見た端面視において、第1端及び第2端を結んだ仮想直線に対する主切れ刃の凹み量は、ドリルヘッドの外接円の直径の-0.01倍以上0.02倍以下である。端面視において、シンニングヒール面と第2逃げ面との稜線は、半径が直径の0.10倍以上0.30倍以下の円弧状である。
【0013】
上記(1)のドリルヘッドによると、切り屑が分断されやすくなる。
(2)上記(1)のドリルヘッドでは、中心軸の方向に沿って先端面側から見た端面視において、第1端及び第2端を結んだ仮想直線に対する主切れ刃の凹み量が、ドリルヘッドの直径の0.00倍以上0.01倍以下であってもよい。
【0014】
上記(2)のドリルヘッドによると、切り屑がさらに分断されやすくなるとともに、切削加工の安定性が高まる。
【0015】
(3)上記(1)又は(2)のドリルヘッドでは、円弧状のシンニングヒール面と第2逃げ面との稜線の半径が、ドリルヘッドの直径の0.13倍以上0.24倍以下であってもよい。
【0016】
上記(3)のドリルヘッドによると、切り屑がさらに分断されやすくなる。
(4)上記(1)から(3)のドリルヘッドでは、主切れ刃の半径方向すくい角の最大値と最小値との差が、20°以下であってもよい。
【0017】
(5)上記(1)から(4)のドリルヘッドでは、中心軸の方向とシンニングヒール面との間の角度が、28°以上32°以下であってもよい。
【0018】
上記(5)のドリルヘッドによると、切り屑がさらに分断されやすくなる。
(6)上記(1)から(5)のドリルヘッドでは、中心軸の方向に沿って先端面側から見た端面視において、シンニング切れ刃が、直線状に延びていてもよい。
【0019】
上記(6)のドリルヘッドによると、切り屑がさらに分断されやすくなる。
(7)実施形態に係る先端交換式ドリルは、上記(1)から(6)のドリルヘッドと、取り付け面に取り付けられているホルダとを備える。
【0020】
(8)実施形態に係るドリルは、中心軸の回りに回転される。ドリルは、中心軸の方向における端である先端及び後端と、先端にある先端面と、先端面に連なる外周面と、先端面において外周面から中心軸に向かって延びている切れ刃と、外周面に形成され、かつ、先端面から後端側に向かって中心軸回りの螺旋状に延びているフルートと、先端面及びフルートに連なるシンニング面とを備える。先端面は、切れ刃に連なる第1逃げ面と、フルートを挟んで第1逃げ面とは反対側にある第2逃げ面とを有している。切れ刃は、外周面に連なる主切れ刃と、主切れ刃に連なり、かつ主切れ刃よりも中心軸側にあるシンニング切れ刃とを有している。主切れ刃は、外周面側の端である第1端と、シンニング切れ刃側の端である第2端とを含んでいる。シンニング面は、第1逃げ面とは反対側からシンニング切れ刃に連なるシンニングすくい面と、第2逃げ面に連なるシンニングヒール面とを有している。中心軸の方向に沿って先端面側から見た端面視において、第1端及び第2端を結んだ仮想直線に対する主切れ刃の凹み量は、ドリルの外接円の直径の-0.01倍以上0.02倍以下である。端面視において、シンニングヒール面と第2逃げ面との稜線は、半径が直径の0.10倍以上0.30倍以下の円弧状である。
【0021】
上記(8)のドリルによると、切り屑が分断されやすくなる。
[本開示の実施態様の詳細]
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0022】
実施形態に係るドリル(以下「ドリル100」とする)を説明する。ドリル100は、先端交換式のドリルである。
【0023】
(ドリル100の構成)
以下に、ドリル100の構成を説明する。
【0024】
図1は、ドリル100の斜視図である。図1に示されるように、ドリル100は、中心軸Aの回りに回転される。ドリル100は、先端100aと、後端100bとを有している。後端100bは、中心軸Aの方向における先端100aの反対側の端である。先端100a及び後端100bは、中心軸Aの方向におけるドリル100の端である。
【0025】
ドリル100は、ドリルヘッド10と、ホルダ20と、固定部材30とを有している。ドリルヘッド10は、ドリル100の先端100a側にある。ホルダ20は、ドリル100の後端100b側にある。
【0026】
<ドリルヘッド10の詳細構成>
ドリルヘッド10は、例えば、超硬合金により形成されている。図2は、ドリルヘッド10の斜視図である。図3は、ドリルヘッド10の正面図である。図4は、ドリルヘッド10の背面図である。図2図3及び図4に示されるように、ドリルヘッド10は、中心軸A1の回りに回転される。中心軸A1は、中心軸Aと同一直線上にある。
【0027】
ドリルヘッド10は、取り付け面11と、先端面12と、外周面13とを有している。取り付け面11及び先端面12は、中心軸A1の方向におけるドリルヘッド10の端面である。取り付け面11は、ホルダ20側を向いている。先端面12は、中心軸A1の方向における取り付け面11の反対面である。先端面12は、先端100aにある。外周面13は、取り付け面11及び先端面12に連なっている。
【0028】
取り付け面11には、複数の溝11aが形成されている。取り付け面11は、溝11aにおいて先端面12側に窪んでいる。溝11aは、中心軸A1に直交する方向に沿って、取り付け面11の中央部から外周面13に向かって延びている。
【0029】
中心軸A1の方向に沿って先端面12側から見た端面視において、ドリルヘッド10の外接円の直径を、外径D1とする。図3中において、この外接円は、点線により示されている。外径D1は、例えば、12mm以上である。外径D1は、10mm以上であってもよい。
【0030】
外周面13には、2つのフルート14が形成されている。フルート14は、先端面12から取り付け面11に達するように中心軸A1回りの螺旋状に形成されている。このことを別の観点から言えば、フルート14は、先端面12から後端100b側に向かって中心軸A1回りの螺旋状に延びている。一方のフルート14は、中心軸A1の方向に沿って先端面12側から見た端面視において、他方のフルート14と中心軸A1に関して対称な位置にある。
【0031】
ドリルヘッド10は、2つの切れ刃15を有している。切れ刃15は、先端面12において、外周面13から中心軸A1に向かって延びている。切れ刃15は、主切れ刃15aとシンニング切れ刃15bとを有している。シンニング切れ刃15bは、主切れ刃15aよりも中心軸A1側にある。一方の切れ刃15は、中心軸A1の方向に沿って先端面12側から見た端面視において、他方の切れ刃15と中心軸A1に関して対称な位置にある。
【0032】
主切れ刃15aは、第1端15aaと第2端15abとを有している。第1端15aaは、外周面13側の端である。第2端15abは、第1端15aaの反対側の端である。主切れ刃15aは、第2端15abにおいて、シンニング切れ刃15bに連なっている。主切れ刃15aは、中心軸A1の方向に沿って先端面12側から見た端面視において、実質的に直線状に延びている。中心軸A1の方向に沿って先端面12側から見た端面視において、シンニング切れ刃15bは、好ましくは、直線状に延びている。
【0033】
図5は、主切れ刃15aの凹み量を説明するための模式図である。図5には、先端100aから後端100bに向かう方向に先端面12を見た際の主切れ刃15aの形状が示されている。図5では、主切れ刃15aに略垂直な方向が、主切れ刃15aに略平行な方向よりも拡大して示されている。図5に示されるように、第1端15aa及び第2端15abを結んだ仮想直線を、仮想直線L1とする。仮想直線L1と主切れ刃15aとの間の距離を、距離DISとする。距離DISの最大値が、主切れ刃15aの仮想直線L1に対する凹み量となる。
【0034】
主切れ刃15aの仮想直線L1に対する凹み量は、外径D1の-0.01倍以上0.02倍以下である。好ましくは、主切れ刃15aの仮想直線L1に対する凹み量は、外径D1の0.00倍以上0.01倍以下である。なお、主切れ刃15aが直線Lに対して突出している場合に、主切れ刃15aの凹み量が負の値になる。また、主切れ刃15aが直線Lから窪んでいる場合に、主切れ刃15aの凹み量が正の値になる。図5に示されている主切れ刃15aの仮想直線L1に対する凹み量は、正の値になっている。
【0035】
図6は、主切れ刃15aの半径方向すくい角θ1を説明するための模式図である。図6には、先端100aから後端100bに向かう方向に先端面12を見た際の主切れ刃15aの形状が示されている。図6では、主切れ刃15aに略垂直な方向が、主切れ刃15aに略平行な方向よりも拡大して示されている。図6に示されるように、主切れ刃15a上の特定の位置を、位置P1とする。中心軸A1及び位置P1を結んだ仮想直線を、仮想直線L2とする。位置P1における主切れ刃15aの接線と仮想直線L2とのなす角度が、主切れ刃15aの半径方向すくい角θ1となる。主切れ刃15aの半径方向すくい角θ1の最大値と最小値との差は、20°以下であることが好ましい。
【0036】
図3に示されるように、先端面12は、2つの第1逃げ面12aと、2つの第2逃げ面12bとを有している。第1逃げ面12aは、切れ刃15(主切れ刃15a及びシンニング切れ刃15b)に連なっている。一方の第1逃げ面12aは、中心軸A1に関して他方の第1逃げ面12aと対称な位置にある。フルート14は、第1逃げ面12aと反対側から主切れ刃15aに連なっている。すなわち、主切れ刃15aは、第1逃げ面12aとフルート14との稜線にある。第2逃げ面12bは、フルート14を挟んで第1逃げ面12aの反対側にある。一方の第2逃げ面12bは、中心軸A1に関して他方の第2逃げ面12bと対称な位置にある。
【0037】
図2に示されるように、ドリルヘッド10は、シンニング面16を有している。シンニング面16は、先端面12及びフルート14に連なっている。シンニング面16は、シンニングすくい面16aと、シンニングヒール面16bとを有している。
【0038】
シンニングすくい面16aは、第1逃げ面12aとは反対側からシンニング切れ刃15bに連なっている。すなわち、シンニング切れ刃15bは、第1逃げ面12aとシンニングすくい面16aとの稜線にある。シンニングヒール面16bは、第2逃げ面12bに連なっている。図3に示されるように、中心軸A1の方向に沿って先端面12側から見た端面視において、シンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線は、円弧状になっている。この円弧形状は、円弧状のある点を決めた場合に、対応する曲率半径を有している。この円弧形状は、円弧状の全ての点に対して実質的に同一の曲率半径を有していてもよい。この円弧形状は、円弧状の点に対応して異なる曲率半径を有していてもよい。本明細書において、円弧形状の「半径」とは、円弧状の全ての点に対応する曲率半径の値の範囲を意味している。この円弧形状の半径は、外径D1の0.10倍以上0.30倍以下である。この円弧形状の半径は、外径D1の0.13倍以上0.24倍以下であることが好ましい。シンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線は、貫通穴17により分断されていてもよい。貫通穴17によりシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線が分断されている場合、シンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線のうちの中心軸A1に近い側の部分の形状が円弧形状になっていてもよい。この円弧形状の半径は、外径D1の0.10倍以上0.30倍以下である。この円弧形状の半径は、外径D1の0.13倍以上0.24倍以下であることが好ましい。
【0039】
図7は、図3中のVII-VIIにおける断面図である。図7には、シンニングすくい面16aに平行なドリルヘッド10の断面が示されている。図7に示されるように、シンニングヒール面16bと中心軸A1とのなす角度を、角度θ2とする。角度θ2は、好ましくは、28°以上32°以下である。
【0040】
図3及び図4に示されるように、ドリルヘッド10には、2つの貫通穴17が形成されている。貫通穴17は、中心軸A1の方向に沿ってドリルヘッド10を貫通している。一方の貫通穴17は、中心軸A1に関して他方の貫通穴17と対称な位置にある。貫通穴17の先端面12側の端は、第2逃げ面12bにおいて開口している。
【0041】
<ホルダ20の詳細構成>
ホルダ20は、例えば鋼により形成されている。図8は、ホルダ20の斜視図である。図9は、ホルダ20の正面図である。図8及び図9に示されるように、ホルダ20は、中心軸A2の回りに回転される。中心軸A2は、中心軸A1と同一直線上にある。ホルダ20は、取り付け面21と外周面22とを有している。取り付け面21は、中心軸A2の方向におけるホルダ20の端面であり、ドリルヘッド10側を向いている。外周面22は、取り付け面21に連なっている。
【0042】
取り付け面21には、複数の凸条21aが形成されている。取り付け面21は、凸条21aにおいてドリルヘッド10側に向かって突出している。凸条21aは、中心軸A2に直交する方向に沿って、取り付け面21の中央部から外周面22に向かって延びている。取り付け面21には、2つのねじ穴21bが形成されている。ねじ穴21bは、取り付け面21から後端100b側に向かって延びている。一方のねじ穴21bは、他方のねじ穴21bと中心軸A2に関して対称な位置にある。
【0043】
凸条21aは、溝11aに嵌め合わされる。凸条21aが溝11aに嵌め合わされた状態で、ねじ穴21bは、貫通穴17に重なる位置にある。固定部材30は、例えば、ねじである。固定部材30は、貫通穴17に通された上でねじ穴21bにねじ止めされることにより、ドリルヘッド10をホルダ20に締結する。このようにして、ホルダ20は、ドリルヘッド10(取り付け面11)に取り付けられることになる。
【0044】
(ドリル100の効果)
以下に、ドリル100の効果を説明する。
【0045】
ドリル100で切削を行っている際には、切れ刃15により被削材から切り屑が生成される。シンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分は、フルート14に向かって移動される際にシンニングヒール面16bと接触し、湾曲される。この湾曲が限界に達した際に、シンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分には、クラックが発生する。切り屑に発生したクラックは、切り屑の遠心力により主切れ刃15aにより生成された切り屑の部分に進展し、切り屑を破断する。
【0046】
ドリル100では、主切れ刃15aが実質的に直線状に延びている。すなわち、ドリル100では、主切れ刃15aの仮想直線L1に対する凹み量が、外径D1の-0.01倍以上0.02倍以下になっている。そのため、ドリル100では、主切れ刃15aにより生成される切り屑の部分の歪みが小さく、シンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分に発生したクラックが主切れ刃15aにより生成される切り屑の部分に進展しやすい。
【0047】
中心軸A1の方向に沿って先端面12側から見た端面視においてシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線が直線状である場合には、シンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分がシンニングヒール面16bにより湾曲されがたいため、シンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分にクラックが発生しがたい。
【0048】
しかしながら、ドリル100では、シンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線は、半径が外径D1の0.10倍以上0.30倍以下の円弧状になっている。そのため、ドリル100では、シンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分がシンニングヒール面16bにより湾曲されやすいため、シンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分にクラックが発生しやすい。
【0049】
以上のように、ドリル100では、シンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分にクラックが発生しやすく、発生したクラックが主切れ刃15aにより生成された切り屑の部分に進展しやすいため、切り屑が分断されやすくなる。
【0050】
主切れ刃15aの仮想直線L1に対する凹み量が外径D1の0.00倍以上0.01倍以下である場合、切り屑がさらに分断されやすくなる。また、この場合、切削加工の安定性を高めることができる。円弧状のシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線の半径が外径D1の0.13倍以上0.24倍以下である場合、切り屑がさらに分断されやすくなる。
【0051】
角度θ2が大きい場合、シンニング内に切り屑が停滞してしまうことにより、シンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分にクラックが発生しにくくなるおそれがある。他方で、角度θ2が小さい場合、シンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分が、シンニングヒール面16bとの接触により湾曲しがたくなる(クラックが発生しにくくなる)。そのため、角度θ2の範囲を最適化する(より具体的には、角度θ2が28°以上32°以下にする)ことにより、切り屑がさらに分断されやすくなる。
【0052】
中心軸A1の方向に沿って先端面12側から見た端面視においてシンニング切れ刃15bが直線状に延びている場合、シンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分の歪みが小さくなり、発生したクラックがシンニング切れ刃15bにより生成された切り屑の部分を進展しやすくなる。そのため、この場合には、切り屑がさらに分断されやすくなる。
【0053】
<切削試験>
ドリル100の効果を確認するために、第1切削試験、第2切削試験及び第3切削試験を行った。
【0054】
第1切削試験では、試料番号1-1から試料番号1-7のドリル100が用いられた。第1切削試験では、円弧状のシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線の半径が外径D1の0.20倍とされ、角度θ2が30°とされた。第1切削試験では、仮想直線L1に対する主切れ刃15aの凹み量が、外径D1の-0.01倍以上0.06倍以下の範囲内で変化された。
【0055】
【表1】
【0056】
第2切削試験では、試料番号2-1から試料番号2-8のドリル100が用いられた。第2切削試験では、仮想直線L1に対する主切れ刃15aの凹み量が外径D1の0.00倍とされ、角度θ2が30°とされた。第2切削試験では、円弧状のシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線の半径が、外径D1の0.10倍以上0.40倍以下の範囲内で変化された。
【0057】
【表2】
【0058】
図10は、第1切削試験の結果を示すグラフである。図10中の横軸は仮想直線L1に対する主切れ刃15aの凹み量を外径D1で除した値であり、図10中の縦軸は切り屑分断割合(単位:パーセント)である。切り屑分断割合は、1カールで分断された切り屑の重量を生成された切り屑の全重量で除した値である。
【0059】
図11は、第2切削試験の結果を示すグラフである。図11中の横軸は円弧状のシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線の半径を外径D1で除した値であり、図11中の縦軸は切り屑分断割合である。
【0060】
図10に示されるように、仮想直線L1に対する主切れ刃15aの凹み量が外径D1の-0.01倍以上0.02倍以下の範囲内にある場合、切り屑分断割合は、50パーセント以上であった。他方で、仮想直線L1に対する主切れ刃15aの凹み量が0.03倍以上の範囲内にある場合、切り屑分断割合が50パーセント未満であった。
【0061】
図11に示されるように、円弧状のシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線の半径が外径D1の0.10倍以上0.30倍以下の範囲内にある場合、切り屑分断割合は、50パーセント以上であった。他方で、円弧状のシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線の半径が外径D1の0.35倍以上の範囲内にある場合、切り屑分断割合は、50パーセント未満であった。
【0062】
上記の比較から、仮想直線L1に対する主切れ刃15aの凹み量が外径D1の-0.01倍以上0.02倍以下の範囲内にあり、かつ円弧状のシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線の半径が外径D1の0.10倍以上0.30倍以下の範囲内にあることにより切り屑が分断されやすくなることが、実験的にも明らかになった。
【0063】
仮想直線L1に対する主切れ刃15aの凹み量が外径D1の0.00倍以上0.01倍以下の範囲内にある場合、切り屑分断割合が77パーセント以上になっていた。このことから、仮想直線L1に対する主切れ刃15aの凹み量が外径D1の0.00倍以上0.01倍以下の範囲内にあることにより切り屑がさらに分断されやすくなることが、実験的にも明らかになった。
【0064】
また、円弧状のシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線の半径が外径D1の0.13倍以上0.24倍以下の範囲内にある場合、切り屑分断割合が80パーセント以上になっていた。このことから、円弧状のシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線の半径が外径D1の0.13倍以上0.24倍以下の範囲内にあることにより切り屑がさらに分断されやすくなることが、実験的にも明らかになった。
【0065】
第3切削試験では、試料番号3-1から試料番号3-7のドリル100が用いられた。第3切削試験では、仮想直線L1に対する主切れ刃15aの凹み量が外径D1の0.00倍とされ、円弧状のシンニングヒール面16bと第2逃げ面12bとの稜線の半径が外径D1の0.20倍とされた。また、第3切削試験では、角度θ2が25°以上45°以下の範囲内で変化された。
【0066】
【表3】
【0067】
図12は、第3切削試験の結果を示すグラフである。図12中の横軸は、角度θ2(単位:°)である。図12中の縦軸は、切り屑分断割合(単位:パーセント)である。図12に示されるように、角度θ2が28°以上32°以下の範囲内にある場合、切り屑分断割合が82パーセント以上になっていた。このことから、角度θ2が28°以上32°以下の範囲内にあることにより切り屑がさらに分断されやすくなることが、実験的にも明らかになった。
【0068】
(変形例)
上記においては、ドリル100が刃先交換式のドリルである例を説明したが、ドリル100は、ソリッドドリルであってもよい。すなわち、ドリル100は、ドリルヘッド10及びホルダ20に分割されていなくてもよい。
【0069】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
10 ドリルヘッド、11 取り付け面、11a 溝、12 先端面、12a 第1逃げ面、12b 第2逃げ面、13 外周面、14 フルート、15 切れ刃、15a 主切れ刃、15aa 第1端、15ab 第2端、15b シンニング切れ刃、16 シンニング面、16a シンニングすくい面、16b シンニングヒール面、17 貫通穴、20 ホルダ、21 取り付け面、21a 凸条、21b ねじ穴、22 外周面、30 固定部材、100 ドリル、100a 先端、100b 後端、A,A1,A2 中心軸、D1,D2 外径、DIS 距離、L 直線、L1,L2 仮想直線、P1 位置、θ1 半径方向すくい角、θ2 角度。
【要約】
ドリルヘッドは、中心軸の回りに回転される。ドリルヘッドは、中心軸の方向における端面である取り付け面と、中心軸の方向における取り付け面の反対面である先端面と、取り付け面及び先端面に連なる外周面と、先端面において外周面から中心軸に向かって延びている切れ刃と、外周面に形成され、かつ、先端面から取り付け面に達するように中心軸回りの螺旋状に延びているフルートと、先端面及びフルートに連なるシンニング面とを備える。先端面は、切れ刃に連なる第1逃げ面と、フルートを挟んで第1逃げ面とは反対側にある第2逃げ面とを有している。切れ刃は、外周面に連なる主切れ刃と、主切れ刃に連なり、かつ、主切れ刃よりも中心軸側にあるシンニング切れ刃とを有している。
図1
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