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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】建物構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20220628BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20220628BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 508P
E04H9/02 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018088387
(22)【出願日】2018-05-01
(65)【公開番号】P2019194407
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】木原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】九嶋 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】日野 宏二
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼山 充博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】松井 秀吉
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 貴士
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-022639(JP,A)
【文献】特開2012-246629(JP,A)
【文献】特開2002-356910(JP,A)
【文献】特開2015-040381(JP,A)
【文献】特開2014-077339(JP,A)
【文献】特開2005-350860(JP,A)
【文献】特開2015-227588(JP,A)
【文献】特開2015-209705(JP,A)
【文献】特開2002-201719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0180519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/30
E04B 1/58
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外周を構成し、前記建物の地震力を負担する鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の柱梁で構成された外周架構と、
前記建物の内部に間隔をあけて平行に複数配置され、一方の端部の梁成が中間部の梁成よりも小さいと共に前記一方の端部が前記外周架構にピン接合された鉄骨梁と、
を備え
前記外周架構は、前記鉄骨梁がピン接合された第一外周架構と、前記第一外周架構と直交する方向の第二外周架構と、を有して構成され、
前記建物の内部には、両端部が前記第二外周架構に剛接合された柱梁架構を有し、
前記鉄骨梁は、前記柱梁架構の長手方向と直交する直交方向の両側に前記直交方向に沿って設けられ、他方の端部の梁成が前記中間部の梁成よりも小さいと共に前記他方の端部が前記柱梁架構にピン接合されている、
建物構造。
【請求項2】
前記建物の内部には、平面視において、最も外側に配置された前記鉄骨梁と前記第二外周架構との間に、コア部が設けられている、
請求項1に記載の建物構造。
【請求項3】
建物の内部の中央部に設けられ、前記建物の地震力を負担する鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の柱及び耐震壁で構成されたコア部と、
前記建物の内部に間隔をあけて平行に複数配置され、一方の端部の梁成が中間部の梁成よりも小さいと共に前記一方の端部が前記コア部にピン接合された鉄骨梁と、
を備えた建物構造。
【請求項4】
前記鉄骨梁における両方の端部の間の中間部には、前記鉄骨梁に直交する方向に沿った梁が接続されていない、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の建物構造。
【請求項5】
前記鉄骨梁は、長さの異なる二本のH形鋼のフランジ同士を上下に重ねてボルト接合されて構成されている、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の建物構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建築物における耐震架構構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、地震力を主に負担させる柱・梁からなる耐震架構構面を、外周構面の少なくとも一部に集中配置し、外周構面以外には耐震架構構面を設けていない。また、地震力を主に負担させる耐震架構構面を構成する柱及び梁は鉄筋コンクリート部材とし、梁に作用する鉛直荷重を主に負担させる柱及び梁は開断面鉄骨部材としている。
【0003】
特許文献2には、外壁を有する建物の耐震構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、外周構面を鉄筋コンクリート造で構成し、外周構面以外の架構を開断面鋼製部材で構成している。
【0004】
特許文献3には、建物に関する技術が開示されている。この先行技術では、外周を囲む外壁は鉄筋コンクリート製の壁梁及び壁柱で構成され、外壁の内部には鉄骨製の柱梁架構が配置されている。そして、外壁と柱梁架構との間には、一端が外壁の壁柱と接合され、他端が柱梁架構の柱と接合された鉄骨梁が設けられている。
【0005】
特許文献4には、積載荷重の大きい建物などに適用される二段梁構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、上梁と下梁とが束材により連結一体化されることで二段梁となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-350860号公報
【文献】特開2006-022639号公報
【文献】特開2015-040381号公報
【文献】特開2004-270216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いずれの先行文献にもスラブの下面に沿って配管又は配線を配設する場合、スラブを支持する鉄骨梁に配管又は配線が通る貫通孔を形成する必要が生じる。しかし、鉄骨梁に配管又は配線が通る貫通孔を形成すると、鉄骨梁の耐力性能が低下する。
【0008】
或いは、貫通孔を形成しないで鉄骨梁の下側を配管又は配線が横断する構成の場合は、天井高を確保すると、階高が高くなる。
【0009】
本発明は上記事実に鑑み、階高を抑えつつ、鉄骨梁に貫通孔をあけることなく、鉄骨梁を横断するように配管又は配線を配設することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一態様は、建物の地震力を負担する耐震要素と、前記建物の内部に配置され、少なくとも一方の端部がピン接合とされると共に前記ピン接合側の前記端部の梁成が該端部以外の梁成よりも小さい鉄骨梁と、を備えた建物構造である。
【0011】
第一態様の建物構造では、構造設計上、耐震要素が地震力を負担するので、建物の内部の鉄骨梁は、長期荷重のみを負担すればよい。よって、鉄骨梁の少なくとも一方の端部をピン接合とすることができる。鉄骨梁のピン接合側の端部には、構造設計上、曲げモーメートが発生しないので、鉄骨梁のピン接合側の端部の梁成を該端部以外の梁成よりも小さくすることができる。
【0012】
そして、鉄骨梁のピン接合側の端部の梁成の小さい部分を配管又は配線を配設するスペースとすることで、階高を抑えつつ、鉄骨梁に貫通孔をあけることなく、鉄骨梁を横断するように配管又は配線を配設することができる。
【0013】
第二態様は、前記鉄骨梁における両方の前記端部の間の中間部には、前記鉄骨梁に直交する方向に沿った梁が接続されていない、第一態様に記載の建物構造である。
【0014】
第二態様の建物構造では、鉄骨梁における両方の端部の間の中間部には、鉄骨梁に直交する方向に沿った梁が接続されていないので、鉄骨梁の長手方向に沿って配管又は配線を配設することができる。
【0015】
第三態様は、前記耐震要素は、前記建物の外周を構成する外周架構である、第一態様又は第二態様に記載の建物構造である。
【0016】
第三態様の建物構造では、建物の外周を構成する外周架構が地震力を負担するので、建物の内部に設ける地震力を負担する耐震壁やコア部を削減できる。よって、建物の内部の配管又は配線の配設の自由度が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、階高を抑えつつ、鉄骨梁に貫通孔をあけることなく、鉄骨梁を横断するように配管又は配線を配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第一実施形態の建物構造が適用された建物の内部を模式的に示す平面図である。
図2】第一実施形態の建物構造が適用された建物の内部を模式的に示す図1の2-2線に沿った縦断面図である。
図3】(A)は鉄骨梁の正面図であり、(B)は(A)の3B-3B線に沿った断面図である。
図4】鉄骨梁と外周架構の柱とがピン接合された部位の断面図である。
図5】鉄骨梁と内部架構の柱とがピン接合された部位の断面図である。
図6】鉄骨梁と内部架構の梁とがピン接合された部位の断面図である。
図7】第二実施形態の建物構造が適用された建物の内部を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態の建物構造について説明する。
【0020】
[構造]
先ず、本発明の一実施形態の建物構造が適用された建物の要部構造について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。また、X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向とし、矢印Zで示す。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の建物構造100は、建物10の外周を構成する外周架構110と、建物10の内部12に間隔をあけて平行に複数配置された鉄骨梁150と、を有している。
【0022】
本実施形態では、建物10の外周を構成する外周架構110は、鉄筋コンクリート造の柱112及び梁114等で構成されている(図2及び図4も参照)。また、構造計算上、建物10に作用する地震力を外周架構110が負担するように構成されている。
【0023】
本実施形態では、建物10の内部12の内部架構20は、鉄骨造となっている。内部架構20は、鉄骨柱22、鉄骨梁24及び前述の鉄骨梁150を含んで構成されている。鉄骨梁24は、建物10の内部12にY方向の中央部分にX方向に沿って配置されている。なお、本実施形態の鉄骨柱22は、鋼管(図5も参照)で構成され、鉄骨梁24(図6も参照)はH形鋼で構成されているが、これらに限定されるものではない。また、鉄骨梁24の端部24Aは、本実施形態では剛接合となっている。
【0024】
鉄骨梁150は、建物10の内部12にY方向に沿って配置され、X方向に間隔をあけて平行に配置されている。鉄骨梁150の一方の端部150Aは、外周架構110の柱112に接合されている(図2及び図4も参照)。鉄骨梁150の他方の端部150Aは、建物10の内部12の鉄骨柱22又は鉄骨梁24に接合されている(図2図5及び図6参照)。
【0025】
図2及び図6に示すように、これら鉄骨梁24(図6を参照)及び鉄骨梁150にスラブ30が支持されている。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の建物10は、内部12のX方向の両外側がコア部40となっている。別の観点から説明すると、内部12におけるX方向の両外側に配置された鉄骨梁150と外周架構110との間がコア部40となっている。なお「コア部」とは、階段やエレベーター等の共用施設や設備スペース等まとめて配置した建物部分のことである。
【0027】
図3(A)に示すように、鉄骨梁150の端部150Aの梁成は、端部150Aと端部150Aとの間の中間部150Bよりも梁成が小さい。鉄骨梁150は、H形鋼で構成された上側部152と、上側部152よりも長手方向の長さが短いH形鋼で構成された下側部154と、で構成されている。そして、図3(A)及び図3(B)に示すように、これら長さの異なる二本のH形鋼の上側部152のフランジ153と下側部154のフランジ155とを上下に重ねてボルト接合され一体化されている(図4図5及び図6も参照)。
【0028】
また、鉄骨梁150の端部150Aは、構造計算上、ピン接合になっている。
【0029】
具体的には、図4に示すように、外周架構110に接合する鉄骨梁150の端部150Aは、鉄筋コンクリート造の外周架構110を構成する柱112と接合部材200を介してボルト接合されている。接合部材200は、取付板部202にガセットプレート204が溶接されることで平面視T字状に構成された鋼製の部材である。
【0030】
接合部材200の取付板部202は、柱112に埋設されたアンカーボルト190によって柱112にボルト締結されている。また、接合部材200のガセットプレート204には、鉄骨梁150の上側部152のウェブ151がボルト接合されている。このような構造とすることにより、図4に示す鉄骨梁150の端部150Aは柱112にピン接合されている。
【0031】
図5に示すように、鉄骨柱22に接合する鉄骨梁150の端部150Aは、鉄骨柱22に設けられたガセットプレート210にボルト接合されている。このような構造とすることにより、図5に示す鉄骨梁150の端部150Aは、鉄骨柱22にピン接合されている。
【0032】
図6に示すように、鉄骨梁24に接合する鉄骨梁150の端部150Aは、鉄骨梁24に設けられたガセットプレート218にボルト接合されている。このような構造とすることにより、図6に示す鉄骨梁150の端部150Aは、鉄骨梁24にピン接合されている。
【0033】
ここで、鉄骨梁150の端部150Aは、ガセットプレート204、210、218にボルト接合されており、実際は半剛接や非完全剛接等であり、完全なピン接合ではない。しかし、建築物において、一般的にボルト接合は、構造設計上、ピン接合として扱っておいる。よって、鉄骨梁150の端部150Aも、ピン接合として扱う。
【0034】
図2に示すように、鉄骨梁150の端部150Aは梁成が小さく、この部分のスペースS1、S2(図4図5及び図6も参照)を、図1に示す矢印K1のように、図示していない配管又は配線がX方向に沿ってスラブ30(図2参照)の下を配設されている。
【0035】
図1に示すように、鉄骨梁150の端部150Aと端部150Aとの間の中間部150Bには、鉄骨梁150に直交する方向に沿った小梁が接合されていない。つまり、隣り合う鉄骨梁150の中間部150B間には、小梁が掛け渡されていない。よって、図1に示す矢印K2のように、図示していない配管又は配線は、鉄骨梁150に沿ったY方向に沿ってスラブ30(図2参照)の下を配設されている。
【0036】
なお、図1に示す配管又は配線の配設ライン(矢印K1、K2)は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0037】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
構造設計上、耐震要素の一例である外周架構110が地震力を負担するので、建物10の内部12の鉄骨梁150は、長期荷重のみを負担すればよい。よって、鉄骨梁150の端部150Aをピン接合とすることができる。鉄骨梁150のピン接合された端部150Aには、構造設計上、曲げモーメートが発生しないので、鉄骨梁150の端部150Aの梁成を小さくすることができる。
【0039】
そして、前述したように、鉄骨梁150の端部150Aの梁成の小さい部分のスペースS1,S2に配管又は配線を配設することで、階高を抑えつつ、鉄骨梁150に貫通孔をあけることなく、鉄骨梁150を横断するように(本実施形態ではX方向沿って)配管又は配線を配設することができる。
【0040】
更に、本実施形態では、鉄骨梁150の端部150Aと端部150Aとの間の中間部150Bには、小梁が接続されていないので、鉄骨梁150の長手方向(本実施形態ではY方向)に沿って配管又は配線を直線状に配設することができる。
【0041】
また、建物10の外周を構成する外周架構110が地震力を負担するので、内部12に設ける地震力を負担する耐震壁やコア部を削減できる。そして、本実施形態では、外側に配置された鉄骨梁150と外周架構110との間(建物10の内部12におけるX方向の外側部分)にコア部40が配置されている。
【0042】
よって、建物10の内部12における鉄骨梁150の端部150Aの梁成の小さい部分のスペースS1、S2がX方向に連続する。したがって、内部12におけるコア部40とコア部40との間を鉄骨梁150に直交するX方向に沿って配管又は配線を直線状に配設することができる。
【0043】
つまり、図1に矢印K1、K2で示すように、スラブ30(図2参照)下の天井懐を自由な配管又は配線を配設するルートとすることが可能となり、初期計画時及び将来の変更等に対するフレキシビリティーが向上する。
【0044】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は簡略又は省略する。
【0045】
[構造]
先ず、本発明の一実施形態の建物構造が適用された建物の要部構造について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。また、X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向とし、矢印Zで示す。
【0046】
図7に示すように、本実施形態の建物構造101は、建物11の内部13の中心部分に設けられた鉄筋コンクリート造の柱212及び耐震壁214で囲まれたコア部240と、内部13に設けられた鉄骨梁150と、を有している。また、建物11の外周架構220は、鉄筋コンクリート造の柱222及び梁224等で構成されている。
【0047】
本実施形態では、前述したように、建物11の内部13のコア部240は、耐震壁214で囲まれており、コア部240で建物11の地震力を負担する。
【0048】
鉄骨梁150は、建物11の内部13のコア部240の柱212と外周架構220の柱222とに接合されている。鉄骨梁150は、二本ずつ平行に配置されている。そして、鉄骨梁150及びコア部240にスラブ30(図2参照)が支持されている。
【0049】
なお、第一実施形態と同様に、鉄骨梁150の端部150Aは、構造計算上、ピン接合になっている(図4図5及び図6を参考)。また、図3に示すように、鉄骨梁150の端部150Aは、端部150Aと端部150Aとの間の中間部150Bよりも梁成が小さい。
【0050】
そして、鉄骨梁150の端部150Aは梁成が小さく、この部分のスペースS1、S2(図2図4図5及び図6を参考)を、図7の矢印K3、K4のように、図示していない配管又は配線が、環状にスラブ30(図2参照)の下を配設されている。
【0051】
また、鉄骨梁150の端部150Aと端部150Aとの間の中間部150Bには、鉄骨梁150に直交する方向に沿った小梁が接合されていない。つまり、隣り合う鉄骨梁150の中間部150B間には小梁が掛け渡されていない。よって、矢印K5のように、配管又は配線は、スラブ30(図2参照)の下を鉄骨梁150に沿った方向に配設されている。
【0052】
なお、図7に示す配管又は配線の配設ライン(矢印K3、K4、K5)は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0053】
[作用及び効果]
次に本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0054】
構造設計上、耐震要素の一例であるコア部240が地震力を負担するので、建物11の内部13の鉄骨梁150は、長期荷重のみを負担すればよい。よって、鉄骨梁150の端部150Aをピン接合とすることができる。鉄骨梁150のピン接合された端部150Aには、構造設計上、曲げモーメートが発生しないので、鉄骨梁150の端部150Aの梁成を小さくすることができる。
【0055】
そして、前述したように、鉄骨梁150の端部150Aの梁成の小さい部分のスペースS1、S2に配管又は配線を配設することで、階高を抑えつつ、鉄骨梁150に貫通孔をあけることなく、鉄骨梁150を横断するように配管又は配線を配設することができる。
【0056】
なお、建物11の内部13の中心部分にコア部240が配置されているので、コア部240の周囲を環状(矢印K3及び矢印K4)に配管又は配線を配設することができる。
【0057】
また、本実施形態では、鉄骨梁150の端部150Aと端部150Aとの間の中間部150Bには、小梁が接続されていないので、鉄骨梁150の長手方向に沿って(矢印K5)配管又は配線を直線状に配設することができる。
【0058】
つまり、図7に矢印K3、K4、K5で示すように、スラブ30(図2参照)下の天井懐を自由な配管又は配線を配設するルートとすることが可能となり、初期計画時及び将来の変更に対するフレキシビリティーが向上する。
【0059】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0060】
例えば、第一実施形態では、鉄骨梁24の端部24Aは剛接合であったが、鉄骨梁150と同様にピン接合としてもよい。その場合、鉄骨梁24の端部24Aの梁成を中間部の梁成よりも小さくし、配管又は配線が配設するスペースとしてもよい。
【0061】
また、例えば、第一実施形態の鉄骨柱22及び鉄骨梁24は、鉄骨造以外、例えば鉄筋コンクリート造の柱及び梁であってもよい。
【0062】
また、例えば、第一実施形態の外周架構110、第二実施形態のコア部240及び外周架構220は、鉄筋コンクリート造であったが、これに限定されない。例えは、鉄骨鉄筋コンクリート造であってもよい。
【0063】
また、例えば、上記実施形態では、全ての鉄骨梁150の端部150Aがピン接合され梁成が小さかったが、これに限定されない。少なくとも一本の鉄骨梁150の端部150Aがピン接合され梁成が小さければよい。また、鉄骨梁150の端部150Aのいずれか一方の端部150Aのみがピン接合であってもよい。なお、この場合、ピン接合された側の端部150Aのみの梁成が小さい。
【0064】
また、例えば、上記実施形態では、鉄骨梁150は、H形鋼で構成された上側部152と、上側部152よりも長手方向の長さが短いH形鋼で構成された下側部154と、で構成されているが、これに限定されない。ピン接合された側の端部150Aの梁成が小さくなった構造の鉄骨梁150であれば、どのような構造であってもよい。
【0065】
また、例えば、上記実施形態では、鉄骨梁150の中間部150Bには、小梁が接合されていなかったが、これに限定されない。鉄骨梁150の中間部150Bに小梁が接合されていてもよい。なお、鉄骨梁150の中間部150Bに小梁が接合されている場合は、配管又は配線は、小梁に貫通孔をあけて配設してもよいし、小梁の下を配設してもよい。また、小梁の端部をピン接合して、端部の梁成を小さくして配管又は配線を配設してもよい。
【0066】
また、例えば、上記実施形態では、建物10では地震力を負担する耐震要素は外周架構110で、建物11では地震力を負担する耐震要素はコア部240であったが、これらに限定されない。どのような耐震要素であってもよい。
【0067】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0068】
10 建物
11 建物
12 内部
13 内部
100 建物構造
101 建物構造
110 外周架構(耐震要素の一例)
150 鉄骨梁
150A 端部
240 コア部(耐震要素の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7