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特許7095838杭柱接合構造、及び杭柱接合構造の施工方法
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  • 特許-杭柱接合構造、及び杭柱接合構造の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】杭柱接合構造、及び杭柱接合構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20220628BHJP
   E02D 27/12 20060101ALI20220628BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E02D27/12 Z
E04B1/24 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018203197
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020070569
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】土井 尚
(72)【発明者】
【氏名】木原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】畝 博志
(72)【発明者】
【氏名】小松 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】赤曽部 朝輝
(72)【発明者】
【氏名】金光 桂
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255709(JP,A)
【文献】特開2002-146800(JP,A)
【文献】特開2014-169576(JP,A)
【文献】特開2012-057433(JP,A)
【文献】特開2010-255329(JP,A)
【文献】特開昭50-016311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/12
E04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に設けられる杭と、
前記杭の上方に配置されるベース部材と、
前記杭に固定され、前記ベース部材を所定高さで支持する支持部材と、
前記杭の杭頭部、前記ベース部材、及び前記支持部材が埋設されるベースコンクリートと、
前記ベース部材の上方に配置される柱と、
前記ベースコンクリートから露出する前記ベース部材の上面に設けられ、該ベース部材と前記柱との間隔を調整可能に前記柱を支持する高さ調整部材と、
を備える杭柱接合構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記杭の周方向に間隔を空けて該杭に複数固定されている、
請求項1に記載の杭柱接合構造。
【請求項3】
前記支持部材は、
前記杭の杭頭部から上方へ延出される支柱部と、
前記支柱部の上端部から前記杭の外側へ延出され、上面に前記ベース部材が載置される受け部と、
を有し、
前記受け部は、前記支柱部の前記上端部から前記ベース部材の外周部よりも外側へ延出される、
請求項2に記載の杭柱接合構造。
【請求項4】
杭に支持部材を介して支持されるベース部材の設置高さが所定高さになるように、前記杭に対する前記支持部材の上下方向の固定位置を調整した後、前記杭の杭頭部、前記支持部材、及び前記ベース部材をベースコンクリートに埋設する第一高さ調整工程と、
前記ベースコンクリートから露出する前記ベース部材の上面に高さ調整部材を介して支持される柱の設置高さが所定高さになるように、前記高さ調整部材によって前記ベース部材と前記柱との上下方向の間隔を調整する第二高さ調整工程と、
を備える杭柱接合構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭柱接合構造、及び杭柱接合構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎杭と鉄骨柱とを接合する支持金物であって、杭頭部に取り付けられる鉛直固定ボルトと、鉄骨柱に取り付けられる高さ調整ボルトとを備える支持金物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-146800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された支持金物は、鉛直固定ボルト及び高さ調整ボルトの2つの調整ボルトによって鉄骨柱の設置高さを調整するため、基礎杭と鉄骨柱との接合構造が複雑化する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、杭に対する柱の設置高さを調整可能にしつつ、杭と柱との杭柱接合構造を単純化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る杭柱接合構造は、地盤に設けられる杭と、前記杭の上方に配置されるベース部材と、前記杭に固定され、前記ベース部材を所定高さで支持する支持部材と、前記ベース部材の上方に配置される柱と、前記ベース部材に設けられ、該ベース部材と前記柱との間隔を調整可能に前記柱を支持する高さ調整部材と、を備える。
【0007】
第1態様に係る杭柱接合構造によれば、杭は、地盤に設けられる。この杭の上方には、ベース部材が配置される。ベース部材は、杭に固定された支持部材によって所定高さで支持される。また、ベース部材の上方には、柱が配置される。この柱は、ベース部材に設けられた高さ調整部材によって支持される。つまり、柱は、高さ調整部材、ベース部材、及び支持部材を介して杭に支持される。
【0008】
ここで、杭に対する支持部材の上下方向の固定位置を調整することにより、支持部材によってベース部材が所定高さで支持される。このように杭に対する支持部材の上下方向の固定位置を調整することにより、例えば、杭の杭頭高さの施工誤差等を吸収することができる。
【0009】
また、高さ調整部材は、ベース部材と柱との間隔を調整可能に柱を支持する。この高さ調整部材によって、ベース部材と柱との間隔を調整することにより、柱の設置高さが所定高さに調整される。
【0010】
このように本発明では、支持部材及び高さ調整部材の2つの部材によって柱の設置高さを段階的に調整することができる。したがって、柱の設置高さを容易に調整することができる。
【0011】
また、前述したように、杭に対する支持部材の上下方向の固定位置を調整することにより、ベース部材の設置高さが所定高さに調整される。したがって、本発明は、調整ボルトによってベース部材の設置高さを所定高さに調整する構成と比較して、杭柱接合構造を単純化することができる。
【0012】
このように本発明では、杭に対する柱の設置高さを調整可能にしつつ、杭と柱との杭柱接合構造を単純化することができる。
【0013】
第2態様に係る杭柱接合構造は、第1態様に係る杭柱接合構造において、前記支持部材は、前記杭の周方向に間隔を空けて該杭に複数固定されている。
【0014】
第2態様に係る杭柱接合構造によれば、支持部材が、杭の周方向の間隔を空けて杭に複数固定される。そして、複数の支持部材によって、ベース部材が支持される。
【0015】
このように複数の支持部材によってベース部材を支持することにより、ベース部材をより確実に支持することができるとともに、ベース部材の水平度を調整することができる。
【0016】
第3態様に係る杭柱接合構造は、第2態様に係る杭柱接合構造において、前記支持部材は、前記杭の杭頭部から上方へ延出される支柱部と、前記支柱部の上端部から前記杭の外側へ延出され、上面に前記ベース部材が載置される受け部と、を有し、前記受け部は、前記支柱部の前記上端部から前記ベース部材の外周部よりも外側へ延出される。
【0017】
第3態様に係る杭柱接合構造によれば、複数の支持部材は、支柱部と、受け部とをそれぞれ有する。各支柱部は、杭の杭頭部から上方へ延出される。また、各受け部は、各支柱部の上端部から杭の外側へ延出される。これらの受け部の上面にベース部材が載置される。
【0018】
ここで、複数の受け部の上面にベース部材を載置する際に、ベース部材を水平方向に移動させることにより、杭に対するベース部材の水平位置を容易に調整することができる。これにより、例えば、杭の水平方向(平面位置)の施工誤差を吸収することができる。したがって、施工性が向上する。
【0019】
また、各受け部は、各支柱部の上端部からベース部材の外周部よりも外側へ延出される。これにより、例えば、ベース部材の外周部を受け部の上面に溶接等によって固定することができる。したがって、ベース部材の位置ずれが抑制される。また、ベース部材の上側から、当該ベース部材の外周部を受け部の上面に溶接することができるため、施工性(溶接性)が向上する。
【0020】
第4態様に係る杭柱接合構造の施工方法は、杭に支持部材を介して支持されるベース部材の設置高さが所定高さになるように、前記杭に対する前記支持部材の上下方向の固定位置を調整する第一高さ調整工程と、前記ベース部材に高さ調整部材を介して支持される柱の設置高さが所定高さになるように、前記高さ調整部材によって前記ベース部材と前記柱との上下方向の間隔を調整する第二高さ調整工程と、を備える。
【0021】
第4態様に係る杭柱接合構造の施工方法によれば、第一高さ調整工程において、杭に支持部材を介して支持されるベース部材の設置高さが所定高さになるように、杭に対する支持部材の上下方向の固定位置を調整する。これにより、例えば、杭の杭頭高さの施工誤差等を吸収することができる。
【0022】
次に、第二高さ調整工程において、ベース部材に高さ調整部材を介して支持される柱の設置高さが所定高さになるように、高さ調整部材によってベース部材と柱との上下方向の間隔を調整する。これにより、柱の設置高さを調整することができる。
【0023】
このように本発明では、第一高さ調整工程及び第二高さ調整工程によって、柱の設置高さを段階的に調整する。したがって、柱の設置高さを容易に調整することができる。
【0024】
また、第一高さ調整工程において、杭に対する支持部材の上下方向の固定位置を調整することにより、ベース部材の設置高さが所定高さに調整される。したがって、本発明は、調整ボルトによってベース部材の設置高さを所定高さに調整する構成と比較して、杭柱接合構造を単純化することができる。
【0025】
このように本発明では、杭に対する柱の設置高さを調整可能にしつつ、杭と柱との杭柱接合構造を単純化することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、杭に対する柱の設置高さを調整可能にしつつ、杭と柱との杭柱接合構造を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態に係る杭柱接合構造が適用された杭及び柱を示す縦断面図である。
図2】一実施形態に係る杭柱接合構造の施工方法を説明する縦断面図である。
図3図2に示される杭側ベースプレートを示す平面図である。
図4】一実施形態に係る杭柱接合構造の施工方法を説明する縦断面図である。
図5】一実施形態に係る杭柱接合構造の施工方法を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る杭柱接合構造について説明する。
【0029】
図1には、本実施形態に係る杭柱接合構造10が適用された杭20及び柱60が示されている。杭20は、円筒状に形成されたコンクリート杭(既成コンクリート杭)とされており、地盤12に打設されている。
【0030】
図1及び図2に示されるように、杭20の杭頭部20Hの周囲には、掘削部14が形成されている。掘削部14は、杭頭部20Hの周囲の地盤12を掘り下げることにより形成されている。この掘削部14の掘削底14Lから杭頭部20Hが上方へ突出されている。また、杭頭部20Hの外周面は、掘削部14に露出されている。この杭頭部20Hの外周面には、固定用プレート22が取り付けられている。
【0031】
固定用プレート22は、鋼板等の金属板によって筒状に形成されている。また、固定用プレート22は、杭頭部20Hを囲んだ状態で杭頭部20Hの外周面に固定されている。この固定用プレート22には、複数のブラケット30が固定されている。なお、ブラケット30は、支持部材の一例である。
【0032】
複数のブラケット30は、L字形状に屈曲された金属板(アングル)によって形成されている。これらのブラケット30は、杭頭部20Hの周方向に間隔を空けて配置されている。各ブラケット30は、支柱部32及び受け部34を有している。
【0033】
支柱部32は、板状に形成されており、長手方向を杭20の軸方向として配置されている。この支柱部32の下端側は、溶接等によって固定用プレート22の外面に固定されている。また、支柱部32の上端側は、杭頭部20Hの上端から上方へ延出されている。この支柱部32の上端部には、受け部34が設けられている。
【0034】
受け部34は、支柱部32の上端部から杭20の外側へ延出されている。また、受け部34は、板状に形成されており、厚さ方向を上下方向として配置されている。この受け部34の上面34Uに、杭側ベースプレート40が載置されている。なお、杭側ベースプレート40は、ベース部材の一例である。
【0035】
図3に示されるように、杭側ベースプレート40は、平面視にて、矩形状の金属板によって形成されている。この杭側ベースプレート40は、各ブラケット30の受け部34の上面34Uに載置されている。これらのブラケット30によって、杭側ベースプレート40が所定高さで支持されている。より具体的には、複数のブラケット30によって、杭頭部20Hに対する杭側ベースプレート40の高さh図1参照)が所定高さに調整されている。
【0036】
受け部34は、支柱部32の上端部から杭側ベースプレート40の外周部40Aよりも外側へ延出されている。これにより、受け部34の上面34Uに、杭側ベースプレート40の外周部40Aを溶接するための溶接代が確保されている。この受け部34の上面34Uには、杭側ベースプレート40の外周部40Aが溶接されている。
【0037】
杭側ベースプレート40の中央部には、打設孔42が形成されている。打設孔42は、杭側ベースプレート40を厚み方向に貫通する円形状の貫通孔とされている。また、打設孔42は、杭20上に配置されている。これにより、打設孔42を介して、杭20の内部にコンクリート(中詰コンクリート)が打設可能とされている。なお、打設孔42の直径は、杭20の内径よりも小さくされている。
【0038】
杭頭部20Hには、ベースコンクリート50が設けられている。ベースコンクリート50は、コンクリートによって盤状に形成されている。また、ベースコンクリート50は、平面視にて、矩形状に形成されるとともに、杭側ベースプレート40よりも大きくされている。このベースコンクリート50の中央部に、杭頭部20H、複数のブラケット30、及び杭側ベースプレート40が埋設されている。
【0039】
図1に示されるように、ベースコンクリート50は、充填コンクリート部50Aと、外側コンクリート部50Bとを有している。充填コンクリート部50Aは、前述した杭側ベースプレート40の打設孔42から、杭頭部20Hの内部、杭頭部20Hと杭側ベースプレート40との隙間、及び打設孔42内にコンクリートを充填することにより形成されている。
【0040】
外側コンクリート部50Bは、杭頭部20Hの周囲に仮設された図示しない型枠内にコンクリートを打設することにより形成されている。このベースコンクリート50によって、杭頭部20H、複数のブラケット30、及び杭側ベースプレート40が一体化されている。
【0041】
ベースコンクリート50の上部には、杭側ベースプレート40が埋設されている。杭側ベースプレート40の上面40Uは、ベースコンクリート50の上面から露出されている。この杭側ベースプレート40の上面40Uにおける打設孔42の周囲には、複数のスタッドボルト44が立てられている。
【0042】
複数のスタッドボルト44は、打設孔42の周方向に間隔を空けて配置されている。各スタッドボルト44は、杭側ベースプレート40の上面40Uに立てられており、その下端部が溶接等によって杭側ベースプレート40の上面40Uに固定されている。
【0043】
杭側ベースプレート40の上には、鉄骨造の柱60が立てられている。柱60は、角形鋼管や丸形鋼管によって形成されている。また、柱60の下端部には、柱側ベースプレート62が取り付けられている。なお、柱は、H形鋼やC形鋼等で形成されても良い。
【0044】
柱側ベースプレート62は、平面視にて矩形状の金属板等によって形成されている。この柱側ベースプレート62の上面における中央部に、柱60の下端部が溶接等によって固定されている。また、柱側ベースプレート62は、杭側ベースプレート40と上下方向に対向して配置されている。
【0045】
柱側ベースプレート62の外周部には、複数の取付孔64が形成されている。複数の取付孔64は、柱側ベースプレート62の柱60の周方向に間隔を空けて配置されている。各取付孔64は、柱側ベースプレート62を厚み方向に貫通する円形状の貫通孔とされている。これらの取付孔64には、杭側ベースプレート40に立てられた複数のスタッドボルト44がそれぞれ挿入されている。
【0046】
複数のスタッドボルト44には、高さ調整ナット46がそれぞれ取り付けられている。各高さ調整ナット46の上面には、柱側ベースプレート62の取付孔64の周縁部が係合(載置)される。
【0047】
ここで、スタッドボルト44に対する高さ調整ナット46の締め込み量によって、柱側ベースプレート62と杭側ベースプレート40との間隔Dが調整される。換言すると、スタッドボルト44に対する高さ調整ナット46の締め込み量によって、杭側ベースプレート40に対する柱側ベースプレート62(柱60)の設置高さhが調整される。さらに、各スタッドボルト44に対する高さ調整ナット46の締め込み量によって、柱側ベースプレート62の水平姿勢(水平度)が調整される。
【0048】
なお、スタッドボルト44及び高さ調整ナット46は、高さ調整部材の一例である。
【0049】
各スタッドボルト44には、柱側ベースプレート62の上から固定ナット48が取り付けられている。この固定ナット48と高さ調整ナット46とで柱側ベースプレート62を厚み方向の両側から挟持することにより、柱60が杭側ベースプレート40に固定されている。また、柱側ベースプレート62と杭側ベースプレート40との間隔Dには、モルタル、グラウド等のセメント系充填材68が充填されている。これにより、柱側ベースプレート62と杭側ベースプレート40とが一体化されている。
【0050】
柱60の柱脚部には、曲げ伝達プレート66が設けられている。曲げ伝達プレート66は、平面視にて矩形状に形成されている。この曲げ伝達プレート66は、柱60の外周面から張り出しており、柱側ベースプレート62と上下方向に対向している。
【0051】
また、柱60の柱脚部は、スラブ70に埋設されている。スラブ70は、鉄筋コンクリート造とされている。このスラブ70は、ベースコンクリート50と曲げ伝達プレート66との間にコンクリートを打設することにより形成されている。
【0052】
ここで、柱側ベースプレート62と曲げ伝達プレート66との間には、スラブ70が設けられている。そして、柱側ベースプレート62と曲げ伝達プレート66とによって、上下方向の両側からスラブ70が挟持されている。これにより、地震時に、柱60に作用する曲げモーメントM(図1参照)が、柱側ベースプレート62及び曲げ伝達プレート66を介してスラブ70に伝達される。
【0053】
(杭柱接合構造の施工方法)
次に、杭柱接合構造の施工方法の一例について説明する。
【0054】
図2には、地盤12に設けられた杭20が示されている。杭20の杭頭部20Hの外周面は、掘削部14に露出されている。この状態から、先ず、第一高さ調整工程において、杭頭部20Hに対する杭側ベースプレート40の高さh図1参照)が所定高さになるように、杭20の杭頭部20Hに複数のブラケット30を介して杭側ベースプレート40を取り付ける。
【0055】
具体的には、杭頭部20Hの外周面に固定された固定用プレート22の外面に、複数のブラケット30の支柱部32を溶接によって固定する。この際、複数のブラケット30を、杭20の周方向に間隔を空けるとともに、受け部34が外側を向くように配置する。また、杭20に対する杭側ベースプレート40の設置高さhが所定高さになるように、杭頭部20Hの外周面に対する各ブラケット30の支柱部32の上下方向の固定位置(溶接位置)を調整する。なお、ここでいう所定高さは、所定範囲としても良い。
【0056】
次に、図4に示されるように、複数のブラケット30の受け部34の上面34Uに、杭側ベースプレート40を載置し、杭側ベースプレート40の外周部40Aを溶接等によって各受け部34の上面34Uに固定する。
【0057】
なお、杭側ベースプレート40の上面40Uには、複数のスタッドボルト44が予め取り付けられている。また、各スタッドボルト44には、高さ調整ナット46が予め取り付けられている。
【0058】
次に、杭頭部20Hの周囲に図示しない型枠を仮設し、外側コンクリート部50B用のコンクリートを打設する。また、杭側ベースプレート40の打設孔42から杭頭部20Hの内部に、充填コンクリート部50A用のコンクリートを打設する。これにより、ベースコンクリート50を形成する。
【0059】
次に、図5に示されるように、クレーン等によって、柱60を杭側ベースプレート40上に配置する。そして、柱60の柱側ベースプレート62の複数の取付孔64に、複数のスタッドボルト44をそれぞれ挿入し、柱側ベースプレート62を高さ調整ナット46の上に載置する。
【0060】
次に、第二高さ調整工程において、スタッドボルト44に対する高さ調整ナット46に締め込み量を調整し、杭側ベースプレート40に対する柱側ベースプレート62の設置高さh図1参照)を所定高さにする。換言すると、スタッドボルト44に対する高さ調整ナット46に締め込み量によって、杭側ベースプレート40と柱側ベースプレート62との上下方向の間隔Dを調整する。また、スタッドボルト44に対する高さ調整ナット46に締め込み量によって、柱側ベースプレート62の水平姿勢(水平度)を調整する。
【0061】
次に、柱側ベースプレート62から上方へ突出する複数のスタッドボルト44に固定ナット48をそれぞれ取り付け、杭側ベースプレート40に柱側ベースプレート62を固定する。また、図1に示されるように、杭側ベースプレート40と柱側ベースプレート62との間にセメント系充填材68を充填し、杭側ベースプレート40及び柱側ベースプレート62を一体化する。
【0062】
次に、ベースコンクリート50上に図示しないスラブ筋を配筋し、スラブ70用のコンクリートを打設する。この際、スラブ70用のコンクリートは、少なくとも柱60の曲げ伝達プレート66の下面まで打設する。これにより、スラブ70を形成する。
【0063】
このように本実施形態に係る杭柱接合構造の施工方法によれば、第一高さ調整工程及び第二高さ調整工程によって、柱60の設置高さhを段階的に調整する。したがって、柱60の設置高さhを容易に調整することができる。
【0064】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0065】
本実施形態に係る杭柱接合構造10によれば、杭20は、地盤12に設けられている。この杭20の上方には、杭側ベースプレート40が配置されている。杭側ベースプレート40は、杭20の杭頭部20Hに固定された複数のブラケット30によって所定高さで支持される。
【0066】
また、杭側ベースプレート40の上方には、柱60が配置されている。柱60は、杭側ベースプレート40に設けられた複数のスタッドボルト44及び高さ調整ナット46によって支持されている。つまり、柱60は、スタッドボルト44、高さ調整ナット46、杭側ベースプレート40、及びブラケット30を介して杭頭部20Hに支持されている。
【0067】
ここで、杭20に対する複数のブラケット30の上下方向の固定位置を調整することにより、杭側ベースプレート40が所定高さhで支持される。このように杭20に対する複数のブラケット30の上下方向の固定位置を調整することにより、例えば、杭20の杭頭高さの施工誤差等を吸収することができる。
【0068】
また、複数の複数のブラケット30によってベースプレート40を支持することにより、ベースプレート40をより確実に支持することができるとともに、ベースプレート40の水平度を調整することができる。
【0069】
また、柱60は、複数のスタッドボルト44に取り付けられた高さ調整ナット46によって、支持されている。これらの高さ調整ナット46によって、杭側ベースプレート40と柱側ベースプレート62との間隔Dを調整することにより、柱60の設置高さhが所定高さに調整される。
【0070】
このように本実施形態では、複数のブラケット30、複数のスタッドボルト44及び高さ調整ナット46によって、柱60の設置高さhを段階的に調整することができる。したがって、柱60の設置高hさを容易に調整することができる。
【0071】
また、前述したように、杭20に対する複数のブラケット30の上下方向の固定位置を調整することにより、杭側ベースプレート40の設置高さhが所定高さに調整される。したがって、本実施形態では、調整ボルトによって杭側ベースプレート40の設置高さhを所定高さに調整する構成と比較して、杭柱接合構造10を単純化することができる。
【0072】
このように本実施形態では、杭20に対する柱60の設置高さhを調整可能にしつつ、杭20と柱60との杭柱接合構造10を単純化することができる。
【0073】
また、本実施形態では、複数のブラケット30の受け部34の上面34U上に杭側ベースプレート40が載置される。そのため、受け部34の上面34U上に杭側ベースプレート40を載置する際に、杭側ベースプレート40を水平方向に移動させることにより、杭20に対する杭側ベースプレート40の水平位置を容易に調整することができる。これにより、例えば、杭20の水平方向(平面位置)の施工誤差を吸収することができる。したがって、施工性がさらに向上する。
【0074】
さらに、各受け部34は、支柱部32の上端部から杭側ベースプレート40の外周部よりも外側へ延出されている。これにより、杭側ベースプレート40の外周部40Aを、受け部34の上面34Uに溶接等によって容易に固定することができる。したがって、杭側ベースプレート40の位置ずれが抑制される。また、杭側ベースプレート40の上側から、当該杭側ベースプレート40の外周部40Aを受け部34の上面34Uに溶接することができるため、施工性(溶接性)が向上する。
【0075】
また、柱60の柱脚部には、曲げ伝達プレート66が設けられている。この曲げ伝達プレート66と柱側ベースプレート62とによって、上下方向の両側からスラブ70が挟持されている。これにより、地震時に、柱60に作用する曲げモーメントMが、柱側ベースプレート62及び曲げ伝達プレート66を介してスラブ70に伝達される。そのため、本実施形態では、地震時に柱60に作用する曲げモーメントMを杭20に伝達する必要がない。したがって、杭柱接合構造10をさらに単純化することができる。
【0076】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0077】
上記実施形態では、杭20が、円筒状のコンクリート杭とされるが、上記実施形態はこれに限らない。杭は、円柱状のコンクリート杭であっても良い。また、杭は、鋼製杭であっても良い。なお、鋼製杭の場合には、固定用プレート22を省略し、鋼製杭の杭頭部に複数のブラケット30を直接的に溶接等によって固定することができる。
【0078】
また、ブラケット30の数や配置、形状等は、適宜変更可能である。また、支持部材は、ブラケット30に限らず、例えば、杭頭部に取り付けられる架台等であっても良い。
【0079】
また、杭側ベースプレート40の形状等は適宜変更可能である。また、ベース部材は、杭側ベースプレート40に限らず、例えば、コンクリート板等であっても良い。また、ベースコンクリート50は、ベース部材の種類に応じて適宜変更又は省略可能である。
【0080】
また、スタッドボルト44の数や配置等は、適宜変更可能である。また、高さ調整部材は、スタッドボルト44及び高さ調整ナット46に限らず、例えば、ボルト部材(スタッドボルトを含む)及びナットであっても良いし、杭側ベースプレート40と柱側ベースプレート62との間に、積層された状態で配置される複数の高さ調整プレートであっても良い。
【0081】
また、上記実施形態では、柱60が鉄骨造とされるが、上記実施形態はこれに限らない。柱は、例えば、プレキャストコンクリート造等であっても良い。
【0082】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
10 杭柱接合構造
12 地盤
20 杭
20H 杭頭部
30 ブラケット(支持部材)
32 支柱部
34 受け部
34U 上面(受け部の上面)
40 杭側ベースプレート(ベース部材)
44 スタッドボルト(高さ調整部材)
46 高さ調整ナット(高さ調整部材)
60 柱
D 間隔(ベース部材と柱との間隔)
図1
図2
図3
図4
図5