(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】音響システム、音響処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
H04R3/00 310
(21)【出願番号】P 2017193792
(22)【出願日】2017-10-03
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】517182918
【氏名又は名称】ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230116816
【氏名又は名称】成川 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100146123
【氏名又は名称】木本 大介
(72)【発明者】
【氏名】落合 陽一
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-080227(JP,A)
【文献】特開2012-204979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンターテイメント設備に設置された超音波スピーカであって、指向性を有する音を発生させる超音波スピーカ
を備え、
エンターテイメントコンテンツに関する位置情報に基づいて、前記超音波スピーカから放射される超音波が集束する焦点位置を決定する手段を備え、
前記エンターテイメントコンテンツに関するオーディオ信号に基づく音が、前記エンターテイメント設備の前記超音波スピーカに対して特定の位置にいる人物に聞こえるように、前記オーディオ信号に応じて前記超音波スピーカを制御する
ことにより、前記焦点位置で集束する集束超音波を放射させる制御手段
を備える、
ことを特徴とする音響システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記
集束超音波が反射部材に反射して前記特定の位置の近傍に到達するように、前記超音波スピーカを制御することを特徴とする請求項
1に記載の音響システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記
集束超音波の方向を前記反射部材に向ける制御を行うことを特徴とする
請求項2に記載の音響システム。
【請求項4】
前記エンターテイメント設備は、テーマパーク内の設備又はイベント会場のステージ設備であることを特徴とする請求項1乃至
請求項3の何れか1項に記載の音響システム。
【請求項5】
前記オーディオ信号は、音楽、動画の音声、及び演者のセリフの少なくとも何れかの音を再生するための信号であることを特徴とする請求項1乃至
請求項4の何れか1項に記載の音響システム。
【請求項6】
前記エンターテイメントコンテンツに関する前記オーディオ信号は、案内メッセージ、案内音、警告メッセージ、警告音、及び指示メッセージの少なくとも何れかの音を再生するための信号であることを特徴とする請求項1乃至
請求項5の何れか1項に記載の音響システム。
【請求項7】
エンターテイメントコンテンツに関するオーディオ信号を取得する取得工程
を備え、
前記エンターテイメントコンテンツに関する位置情報に基づいて、エンターテイメント設備に設置された超音波スピーカから放射される超音波が集束する焦点位置を決定する決定工程を備え、
前記オーディオ信号に基づく音が
、前記超音波スピーカに対して特定の位置にいる人物に聞こえるように、前記オーディオ信号に応じて前記超音波スピーカを制御する
ことにより、前記焦点位置で集束する集束超音波を放射させる制御工程
を備える、
ことを特徴とする音響処理方法。
【請求項8】
前記制御工程において、前記超音波スピーカから発生させる音の指向方向が、前記エンターテイメントコンテンツに関する位置情報に基づいて変更され、
前記特定の位置は、前記超音波スピーカに対して前記指向方向の近傍に存在する位置であることを特徴とする
請求項7に記載の音響処理方法。
【請求項9】
前記超音波スピーカは、超音波を発射する複数の超音波トランスデューサを駆動させることで、特定の方向に指向性を有する音を発生させることを特徴とする
請求項7又は請求項8に記載の音響処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1乃至
請求項6の何れか1項に記載の音響システムの各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオコントローラ及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
パラメトリックスピーカとは、狭い指向性を有する超音波により可聴音を発生させるスピーカである。パラメトリックスピーカを用いることにより、特定のリスナにのみ可聴音を聴かせることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、超音波を放射するパラメトリックスピーカと、超音波より広い指向性を有する音波を放射するスピーカ(以下「広指向性スピーカ」という)と、を制御する制御部が開示されている。この制御部は、音源であるディスプレイの前に居る人物の数に応じて、パラメトリックスピーカによる音の再生、及び、広指向性スピーカによる音の再生を選択的に切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示されるように、パラメトリックスピーカ等の超音波スピーカでは、一般に、可聴音の音圧レベルがパラメトリックスピーカの位置から音軸方向に所定の距離でピークを有する特性を有する。従って、特許文献1のパラメトリックスピーカから放射される超音波が集束する焦点は、固定される。そのため、超音波スピーカの用途に制約がある。
【0006】
本発明の目的は、超音波スピーカの用途の制約を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
少なくとも1つの超音波スピーカ、及び、音源と接続可能なオーディオコントローラであって、
前記音源からオーディオ信号を入力する手段を備え、
前記超音波スピーカによって再生される可聴音を聞き取るリスナの位置に関する位置情報を取得する手段を備え、
前記位置情報に基づいて、前記超音波スピーカから放射される超音波が集束する焦点位置を決定する手段を備え、
前記焦点位置で集束する超音波を収束するように、前記超音波スピーカを駆動させる手段を備える、
オーディオコントローラである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、超音波スピーカの用途の制約を解消することできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】
図1の超音波スピーカの駆動タイミングの決定方法の説明図である。
【
図5】本実施形態の超音波スピーカの動作例1の説明図である。
【
図6】
図5の動作例1において形成される音源を示す図である。
【
図7】本実施形態の超音波スピーカの動作例2の説明図である。
【
図8】
図7の動作例2において形成される音源を示す図である。
【
図9】本実施形態の超音波スピーカの動作例3の説明図である。
【
図10】
図9の動作例3において形成される音源を示す図である。
【
図11】本実施形態の超音波スピーカの動作例4の説明図である。
【
図12】
図11の動作例4において形成される音源を示す図である。
【
図13】本実施形態のオーディオシステムの制御の処理のフローチャートである。
【
図14】
図13のオーディオ信号の音圧レベルの周波数特性の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
(1)オーディオシステムの構成
オーディオシステムの構成について説明する。
図1は、本実施形態の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、オーディオシステム1は、オーディオコントローラ10と、超音波スピーカ21と、音源23と、を備える。
【0013】
オーディオコントローラ10は、超音波スピーカ21を制御する情報処理装置の一例である。
オーディオコントローラ10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14と、を備える。
【0014】
記憶装置11は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0015】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、オーディオシステム1を制御する制御用アプリケーション)のプログラム
【0016】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0017】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、オーディオコントローラ10の機能を実現するように構成される。プロセッサ12は、コンピュータの一例である。
【0018】
入出力インタフェース13は、オーディオコントローラ10に接続される入力デバイス(例えば、音源23)から入力信号を受け付け、且つ、オーディオコントローラ10に接続される出力デバイス(例えば、超音波スピーカ21)に出力信号を出力するように構成される。
【0019】
通信インタフェース14は、オーディオコントローラ10とサーバ(不図示)との間の通信を制御するように構成される。
【0020】
超音波スピーカ21は、オーディオコントローラ10の制御に従って、超音波を放射するように構成される。
【0021】
音源23は、オーディオコントローラ10にオーディオ信号を与えるように構成される。音源23は、以下のものを含む。
・テレビ
・オーディオメディアプレーヤ(カセットプレーヤ、CD(Compact Disc)プレーヤ、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤ、ブルーレイディスクプレーヤ)
・デジタルオーディオプレーヤ
【0022】
位置情報取得部24は、位置情報を取得するように構成される。超音波スピーカ21によって再生される音を聴かせるべきリスナLの3次元空間上の位置を示す。位置情報取得部24は、例えば、以下の少なくとも1つを含む。
プロセッサ12は、位置情報取得部24が取得した位置情報に基づいて、超音波スピーカ21に対するリスナLの相対位置を示す三次元座標を生成することにより、当該相対位置を特定する。
【0023】
(1-1)超音波スピーカの構成
本実施形態の超音波スピーカの構成について説明する。
図2は、
図1の超音波スピーカの概略構成図である。
【0024】
図2に示すように、超音波スピーカ21の放射面には、カバー21a(
図2A)が配置されている。カバー21aを取り外すと、筐体21b上の放射面(
図2B)が露出する。
【0025】
放射面には、複数の超音波トランスデューサ21cから構成されるフェーズドアレイFAが配置される。複数の超音波トランスデューサ21cは、XZ平面(以下「アレイ面」という)に配置される。
【0026】
超音波スピーカ21は、各超音波トランスデューサ21cを駆動させる駆動部(不図示)を備える。駆動部は、複数の超音波トランスデューサ21cを個別に駆動する。各超音波トランスデューサ21cは、駆動部の駆動により振動する。各超音波トランスデューサ21cの振動により、超音波が発生する。複数の超音波トランスデューサ21cから放射された超音波は、空間上を伝播し、空間上の焦点で集束する。焦点で集束した超音波は、可聴音の音源を形成する。
【0027】
(2)本実施形態の概要
本実施形態の概要について説明する。
図3は、本実施形態の概要の説明図である。
【0028】
図3に示すように、音源23は、超音波スピーカ21に再生させる可聴音の元になるオーディオ信号をオーディオコントローラ10に与える。
【0029】
オーディオコントローラ10は、オーディオ信号と、位置情報と、を入力する。オーディオコントローラ10は、位置情報に基づいて、超音波スピーカ21から放射される超音波を集束させる焦点位置を決定する。オーディオコントローラ10は、決定した焦点位置に基づく駆動信号を生成し、超音波スピーカ21に出力する。
【0030】
超音波スピーカ21は、オーディオコントローラ10によって生成された駆動信号に基づいて超音波を放射する。
【0031】
超音波スピーカ21から放射された超音波は、オーディオコントローラ10によって決定された焦点位置で集束する。集束した超音波は、焦点位置に可聴音の音源を形成する。
【0032】
このように、オーディオコントローラ10は、超音波スピーカ21から放射される超音波の焦点を任意の焦点位置に形成することができる。つまり、オーディオコントローラ10は、任意の位置に可聴音の音源を形成することができる。
【0033】
一般的な超音波スピーカ(例えば、パラメトリックスピーカ)では、焦点位置が予め固定される。そのため、超音波スピーカの用途に制約がある。
【0034】
これに対して、本実施形態の超音波スピーカ21は、焦点位置を任意に決定することができる。これにより、超音波スピーカ21をより広範な用途に利用することができる。
一例として、オーディオコントローラ10は、超音波スピーカ21の駆動中に焦点位置を変えることにより、可聴音を再生しながら、音源を動かすことができる。
【0035】
(3)超音波スピーカの動作例
本実施形態の超音波スピーカの動作例について説明する。
【0036】
超音波スピーカ21は、所定の変調方式で変調した超音波を放射する。
変調方式は、例えば、以下の何れかである。
・AM(Amplitude Modulation)変調
・FM(Frequency Modulation)変調
・PM(Phase Modulation)変調
【0037】
超音波スピーカ21は、複数の超音波トランスデューサ21cの駆動タイミングを個別に制御することにより、各超音波トランスデューサ21cから放射される超音波に位相差を与える。焦点の位置及び数は、この位相差に依存する。つまり、超音波スピーカ21は、位相差を制御することにより、焦点の位置及び数を変化させることができる。
【0038】
本実施形態の超音波スピーカの位相差の形成方法について説明する。
図4は、
図1の超音波スピーカの駆動タイミングの決定方法の説明図である。
【0039】
記憶装置11には、フェーズドアレイFAの基準点(例えば、中心)に対する超音波トランスデューサ21c(n)のフェーズドアレイFA上の相対位置を示す超音波トランスデューサ21c(n)の座標(x(n),y(n),z(n))が記憶されている。nは、超音波トランスデューサ21cのを示す識別子(正の整数)である。
【0040】
例えば、位置情報取得部24が位置情報を取得すると、プロセッサ12は、
図4に示すように、基準点に対する焦点FPの相対位置を示す焦点座標(xfp,yfp,zfp)を決定する。
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶された超音波トランスデューサ21c(n)の座標(x(n),y(n),z(n))と、焦点座標(xfp,yfp,zfp)と、に基づいて、超音波トランスデューサ21c(n)と焦点FPとの距離r(n)を計算する。
【0041】
プロセッサ12は、n+1番目に駆動する超音波トランスデューサ21c(n+1)の駆動タイミングと、n番目に駆動する超音波トランスデューサ21c(n)との駆動タイミングとの時間差(以下「駆動時間差」という)ΔT(n+1)を、式1を用いて、計算する。
ΔT(n+1)=-r(n+1)/c …(式1)
・c:音速
【0042】
上記のとおり、プロセッサ12は、焦点座標(xfp,yfp,zfp)と、記憶装置11に記憶された座標(x(n+1),y(n+1),z(n+1))と、を用いて、各超音波トランスデューサ21c(n+1)の駆動時間差ΔT(n+1)を計算する。プロセッサ12は、この駆動時間差ΔT(n+1)に従い、各超音波トランスデューサ21c(n+1)に駆動信号を供給する。
各超音波トランスデューサ21cは、この駆動信号に応じて駆動する。各超音波トランスデューサ21cから放射された超音波は、駆動時間差ΔT(n+1)に応じた位相差を有するので、焦点FPで集束する。
【0043】
焦点FPで集束した超音波は、音源を形成する。この音源から、可聴音が発生する。つまり、超音波スピーカ21は、任意の位置に可聴音を発生させることができる。
【0044】
焦点距離が短くなるほど、焦点深度は小さくなる。焦点深度が小さくなるほど、超音波の指向性は低下する。つまり、焦点距離が短くなるほど、超音波の進行方向からずれた方向にも音波が伝わる傾向にある。換言すると、超音波スピーカ21は、焦点位置を変えることにより、可聴音の音波が進行する進行範囲を変化させることができる。
【0045】
リスナLが可聴音を聴き取れる可聴範囲の分布は、焦点FPを軸とする略回転対称の形状を形成する。可聴範囲は、超音波ビームに対して可聴音が進む方向又は角度、及び、焦点FPとリスナLとの距離の組合せによって規定される。可聴範囲は、超音波スピーカ21の使用環境の環境音と可聴音の音量との大小関係によって決まる。可聴音の音量は、超音波トランスデューサ21cから放射される超音波の振幅又は変調度によって決まる。従って、プロセッサ12は、超音波の振幅又は変調度を調整することにより、可聴範囲を変化させることができる。
【0046】
(3-1)動作例1(単焦点)
本実施形態の超音波スピーカの動作例1について説明する。
図5は、本実施形態の超音波スピーカの動作例1の説明図である。
図6は、
図5の動作例1において形成される音源を示す図である。動作例1では、1つの焦点に超音波を集束させる。
【0047】
図5に示すように、動作例1では、超音波トランスデューサ21ca~21ciが、両端部から中央に向かう順に、時間差で振動する。
超音波スピーカ21からは、振動の時間差に応じた位相差を有する超音波USW1が放射される。超音波USW1は、フェーズドアレイFAの中心から焦点距離d1だけ離れた焦点FP1で集束する。
【0048】
図6に示すように、超音波スピーカ21は、焦点FP1に点音源SS1を形成する。
例えば、焦点FP1がリスナLの耳元に位置する場合、点音源SS1はリスナLの耳元に形成される。この場合、リスナLには、耳元で点音源SS1からの可聴音が聴こえる。
【0049】
(3-2)動作例2(複焦点)
本実施形態の超音波スピーカの動作例2について説明する。
図7は、本実施形態の超音波スピーカの動作例2の説明図である。
図8は、
図7の動作例2において形成される音源を示す図である。動作例2では、複数の焦点に超音波を集束させる。
【0050】
図7に示すように、動作例2では、超音波トランスデューサ21ca~21ciが、2つのグループG1及びG2に分かれる。グループG1は、超音波トランスデューサ21ca~21ceから構成される。グループG2は、超音波トランスデューサ21cf~21ciから構成される。
【0051】
グループG1(超音波トランスデューサ21ca~21ce)は、両端部から中央に向かう順に、時間差で振動する。
超音波スピーカ21からは、振動の時間差に応じた位相差を有する超音波USW2aが放射される。超音波USW2aは、フェーズドアレイFAの中心から焦点距離d2aだけ離れた焦点FP2aで集束する。
【0052】
グループG2(超音波トランスデューサ21cf~21ci)は、両端部から中央に向かう順に、時間差で振動する。
超音波スピーカ21からは、振動の時間差に応じた位相差を有する超音波USW2bが放射される。超音波USW2bは、フェーズドアレイFAの中心から焦点距離d2bだけ離れた焦点FP2bで集束する。
【0053】
図8に示すように、超音波スピーカ21は、焦点FP2a及びFP2bに、それぞれ、点音源SS2a及びSS2bを形成する。
例えば、焦点FP2aがリスナL1の耳元に位置する場合、点音源SS2aはリスナL1の耳元に形成される。この場合、リスナL1には、耳元で点音源SS2aからの可聴音が聴こえる。
焦点FP2bがリスナL2の耳元に位置する場合、点音源SS2bはリスナL2の耳元に形成される。この場合、リスナL2には、耳元で点音源SS2bからの可聴音が聴こえる。
【0054】
なお、超音波スピーカ21は、3個以上の焦点に点音源を形成することも可能である。
【0055】
(3-3)動作例3(ビーム)
本実施形態の超音波スピーカの動作例3について説明する。
図9は、本実施形態の超音波スピーカの動作例3の説明図である。
図10は、
図9の動作例3において形成される音源を示す図である。
【0056】
図9に示すように、動作例3では、動作例1の焦点距離d1、並びに、動作例2の焦点距離d2a及びd2bより十分に長い距離d3aが設定される。この場合、超音波トランスデューサ21ca~21ciが、略同時に振動することにより、超音波スピーカ21からは、実質的に位相差がない超音波USW3が放射される。超音波USW3は、焦点FP3方向への指向性が高い超音波ビームUSB3を形成する。
【0057】
一般的に、超音波ビームは、ビーム状の音源を形成する。つまり、可聴音のビームは、超音波ビームに覆いかぶさるように存在する。
この場合、
図10に示すように、超音波ビームUSB3が、ビーム状の音源SS3を形成する。従って、リスナLには、超音波スピーカ21の方向からビーム状の音源SS3(つまり、超音波ビームUSB3に沿って形成された音源)からの可聴音が近づいてくるように聴こえる。
【0058】
(3-4)動作例4(ビーム)
本実施形態の超音波スピーカの動作例4について説明する。
図11は、本実施形態の超音波スピーカの動作例4の説明図である。
図12は、
図11の動作例4において形成される音源を示す図である。
【0059】
図11に示すように、動作例4では、動作例1の焦点距離d1、並びに、動作例2の焦点距離d2a及びd2bより十分に長い距離が設定される。この場合、超音波トランスデューサ21ca~21ciが、一端部側から他端部側に向かう順に、時間差で振動することにより、超音波スピーカ21からは、実質的に位相差がない超音波USW4が、アレイ面に直交する方向(Y+方向)に対して斜めに放射される。超音波USW4は、超音波スピーカ21から、アレイ面に直交する方向(Y+方向)に対して斜めの位置にある焦点FP4方向への指向性が高い超音波ビームUSB4を形成する。
【0060】
図12に示すように、超音波スピーカ21が放射した超音波ビームUSB4aは、ビーム状の音源SS4aを形成し、且つ、反射部材RMで反射する。反射部材RMで反射した反射ビームUSW4bは、ビーム状の音源SS4bを形成する。
【0061】
一例として、反射部材RMの側方に位置するリスナLには、超音波スピーカ21とは異なる方向から音源SS4bが近づいてくる。従って、リスナLには、側方からの可聴音が壁から鳴っているように聴こえる。
【0062】
別の例として、反射部材RMが超音波USW4aを鏡面反射させる面を有する壁である場合、反射部材RMに対して、超音波ビームUSB4aの反射方向に位置するリスナLには、自身の背後に位置する壁から音源SS4bが近づいてくる。従って、リスナLには、音源SS4bからの可聴音が壁から鳴っているように聴こえる。
【0063】
別の例として、反射部材RMが超音波ビームUSB4aを乱反射させる面を有する場合、反射部材RMから広角に反射ビームUSW4bが拡散する。従って、リスナLの位置によらず、リスナLには、音源SS4bからの可聴音が広範囲で鳴っているように聴こえる。
【0064】
(4)オーディオシステムの制御
本実施形態のオーディオシステムの制御について説明する。
図13は、本実施形態のオーディオシステムの制御の処理のフローチャートである。
図14は、
図13のオーディオ信号の音圧レベルの周波数特性の概略図である。
【0065】
音源23は、オーディオ信号の出力(S200)を実行する。
具体的には、音源23は、オーディオ信号をエンコードし、オーディオコントローラ10に出力する。
【0066】
S200の後、オーディオコントローラ10は、オーディオ信号の入力(S101)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、ステップS200で音源23から出力されたオーディオ信号を入力する。
【0067】
ステップS101の後、オーディオコントローラ10は、オーディオ信号のデコード(S102)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、オーディオ信号をデコードすることにより、オーディオ信号から、第1周波数特性(
図14)を取り出す。
プロセッサ12は、第1周波数特性を記憶装置11に記憶する。
【0068】
ステップS102の後、オーディオコントローラ10は、焦点位置の決定(S103)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、位置情報取得部24によって取得された位置情報に基づいて、超音波スピーカ21に対するリスナLの相対位置を示す座標を計算する。この座標が、
図4の焦点座標(xfp,yfp,zfp)である。
【0069】
ステップS103の後、オーディオコントローラ10は、変調パラメータの決定(S104)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、記憶装置11に記憶された第1周波数特性FS1の音圧レベルに基づいて、変調パラメータを決定する。
【0070】
ステップS104の後、オーディオコントローラ10は、駆動信号の生成(S105)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、
図4に示すように、記憶装置11に記憶された超音波トランスデューサ21c(n)の座標(x(n),y(n),z(n))と、焦点座標(xfp,yfp,zfp)と、に基づいて、超音波トランスデューサ21c(n)と焦点FPとの距離r(n)を計算する。
プロセッサ12は、n+1番目に駆動する超音波トランスデューサ21c(n+1)の駆動タイミングと、n番目に駆動する超音波トランスデューサ21c(n)との駆動時間差ΔT(n+1)を、式1を用いて、計算する。
【0071】
プロセッサ12は、駆動時間差ΔT(n+1)に従い、各超音波トランスデューサ21c(n+1)に駆動信号を出力する。
各超音波トランスデューサ21cは、この駆動信号に応じて駆動する。各超音波トランスデューサ21cから放射された超音波は、駆動時間差ΔT(n+1)に応じた位相差を有するので、焦点FPで集束する。集束した超音波は、焦点FPに可聴音の音源を形成する。焦点FPに形成された音源は、可聴音を発生させる。
【0072】
音源23は、再生が終了するまで(S201-NO)、ステップS200の処理を繰り返し実行する。
オーディオコントローラ10は、再生が終了するまで(S106-NO)、ステップS101~S105の処理を繰り返し実行する。
【0073】
本実施形態では、ステップS103において、位置情報取得部24によって取得された位置情報(つまり、可聴音を聴かせるべきリスナLの位置)に基づいて、焦点位置が決定される。そして、ステップS105において、焦点位置で超音波が集束するように、駆動時間差ΔTで各超音波トランスデューサ21cが駆動するように、駆動信号が生成される。
これにより、任意の位置に可聴音の音源を形成することができる。
例えば、ステップS101~S105は、再生が終了するまで繰り返されるので(S106)、焦点位置を変更しながら(つまり、可聴音の音源を動かしながら)、可聴音を再生することができる。
【0074】
(5)アプリケーション例
本実施形態のオーディオシステム1のアプリケーション例について説明する。
【0075】
(5-1)アプリケーションの第1例
本実施形態のアプリケーションの第1例について説明する。第1例は、乗り物(例えば、自動車、鉄道、航空機)の内部にオーディオシステム1が配置される例である。
【0076】
例えば、オーディオシステム1は、自動車の車内(一例として、ダッシュボード、ドア、車載ラウドスピーカの近傍、及び、天井の少なくとも一箇所)に配置される。
【0077】
位置情報取得部24は、車内の乗員(例えば、ドライバ及び同乗者の少なくとも1人)であるリスナLの位置を示す位置情報を取得する。位置情報取得部24は、例えば、以下の何れかである。
・カメラ(この場合、プロセッサ12は、カメラが生成した画像データに対する画像解析(例えば、特徴量解析)を実行することにより、リスナLの位置を特定する)
・車外に配置された距離センサ(この場合、プロセッサ12は、距離センサが生成した信号に基づいて、リスナLの位置を特定する)
・空間認識センサ(この場合、プロセッサ12は、空間認識センサが生成した信号に基づいて、リスナLの位置を特定する)
・レーザ光センサ(この場合、プロセッサ12は、レーザ光センサが生成した信号に基づいて、リスナLの位置を特定する)
・インフォテイメントシステム(この場合、プロセッサ12は、インフォテイメントシステムによって生成されたデータに基づいて、リスナLの位置を特定する)
・車載AV(Audio Visual)デバイス(この場合、プロセッサ12は、車載AVデバイスによって生成されたデータに基づいて、リスナLの位置を特定する)
・通信装置(例えば、スマートフォン、又は、タブレット型デバイス)から位置情報を取得する通信インタフェース14(この場合、プロセッサ12は、通信装置から取得した位置情報に基づいて、リスナLの位置を特定する)
・予め定められた範囲を示す位置情報が記憶された記憶装置11
【0078】
音源23は、以下の何れかの走行に関する音を再生するためのオーディオ信号を生成する。
・警告メッセージ(例えば、自動車の走行速度が制限速度を超過していることを通知する音声メッセージ)
・案内メッセージ(例えば、目的地への経路を案内する音声メッセージ)
・走行に関するメッセージ(例えば、走行速度、又は、燃料若しくはバッテリの残量を通知する音声メッセージ)
・リスナLの操作に応じた操作音
【0079】
更に、音源23は、以下の何れかの走行に関する音を再生するためのオーディオ信号を生成してもよい。
・動画の音声
・音楽
【0080】
プロセッサ12は、ステップS103において、車内のリスナLの位置を焦点位置として決定する。
これにより、音源23によって生成されたオーディオ信号に対応する可聴音を、車内のリスナLに聴かせることができる。
【0081】
(5-2)アプリケーションの第2例
本実施形態のアプリケーションの第2例について説明する。第2例は、飛翔体(例えば、ドローン)にオーディオシステム1が配置される例である。
【0082】
例えば、オーディオシステム1は、ドローンの下部に配置される。
【0083】
位置情報取得部24は、飛行中のドローンの下方(つまり、ドローンの飛行区域の地上)のリスナL(例えば、被災地にいる被災者、救助者、不審者)の位置、又は、ドローンの飛行区域の地上の特定範囲を示す位置情報を取得する。位置情報取得部24は、例えば、以下の何れかである。
・カメラ
・距離センサ
・空間認識センサ
・レーザ光センサ
・温度センサ
・予め定められた範囲を示す位置情報が記憶された記憶装置11
・通信インタフェース14
【0084】
音源23は、以下の何れかの音を再生するためのオーディオ信号を生成する。
・避難活動を補助するメッセージ(例えば、被災者に対して避難場所又は危険地帯を通知する音声メッセージ)
・救助活動を補助するメッセージ(例えば、救助者に対して救助活動に関する指示を通知する音声メッセージ)
・警告音
・リスナLの操作に応じた操作音
【0085】
プロセッサ12は、ステップS103において、ドローンの飛行区域の地上に居るリスナLの位置を焦点位置として決定する。
これにより、音源23によって生成されたオーディオ信号に対応する可聴音を、地上に居るリスナLに聴かせることができる。
【0086】
(5-3)アプリケーションの第3例
本実施形態のアプリケーションの第3例について説明する。第3例は、屋内にオーディオシステム1が配置される例である。
【0087】
例えば、オーディオシステム1は、住宅の室内に配置される。
【0088】
位置情報取得部24は、室内のリスナLの位置、又は、オーディオシステム1を基準とする特定範囲を示す位置情報を取得する。位置情報取得部24は、例えば、以下の何れかである。
・カメラ
・マイク(一例として、指向性マイク)
・予め定められた範囲を示す位置情報が記憶された記憶装置11
・通信インタフェース14
【0089】
音源23は、以下の何れかの音を再生するためのオーディオ信号を生成する。
・リスナLの操作に応じた操作音
・リスナLの音声指示に対する応答メッセージ(一例として、人工知能によって生成されたメッセージ)
・音楽
・動画の音声
【0090】
プロセッサ12は、ステップS103において、住宅の室内又はオーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLの位置を焦点位置として決定する。
これにより、音源23によって生成されたオーディオ信号に対応する可聴音を、住宅の室内又はオーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLに聴かせることができる。
【0091】
(5-4)アプリケーションの第4例
本実施形態のアプリケーションの第4例について説明する。第4例は、モニタにオーディオシステム1が配置される例である。
【0092】
位置情報取得部24は、モニタの周辺に居るリスナLの位置、又は、オーディオシステム1を基準とする特定範囲を示す位置情報を取得する。位置情報取得部24は、例えば、以下の何れかである。
・カメラ
・マイク(一例として、指向性マイク)
・通信インタフェース14
【0093】
音源23は、以下の何れかの音を再生するためのオーディオ信号を生成する。
・リスナLの操作に応じた操作音
・リスナLの音声指示に対する応答メッセージ(一例として、人工知能によって生成されたメッセージ)
・音楽
・動画の音声
【0094】
プロセッサ12は、ステップS103において、モニタの周辺、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLの位置を焦点位置として決定する。
これにより、音源23によって生成されたオーディオ信号に対応する可聴音を、モニタの周辺、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLに聴かせることができる。
【0095】
(5-5)アプリケーションの第5例
本実施形態のアプリケーションの第5例について説明する。第5例は、インフラストラクチャ(例えば、信号機、公衆トイレ、鉄道の駅のプラットホーム、又は、公道)にオーディオシステム1が配置される例である。
【0096】
位置情報取得部24は、インフラストラクチャの周辺に居るリスナLの位置、又は、オーディオシステム1を基準とする特定範囲を示す位置情報を取得する。位置情報取得部24は、例えば、以下の何れかである。
・カメラ
・温度センサ
・予め定められた範囲を示す位置情報が記憶された記憶装置11
【0097】
リスナLは、人間、又は、動物(例えば、盲導犬)である。
【0098】
音源23は、以下の何れかの音を再生するためのオーディオ信号を生成する。
・人間に対する警告メッセージ
・人間の行動(例えば、目的地への経路、又は、広告)を案内するメッセージ
・動物に対する警告音
・動物に対する案内音
【0099】
プロセッサ12は、ステップS103において、インフラストラクチャの周辺、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLの位置を焦点位置として決定する。
これにより、音源23によって生成されたオーディオ信号に対応する可聴音を、インフラストラクチャの周辺、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLに聴かせることができる。
【0100】
(5-6)アプリケーションの第6例
本実施形態のアプリケーションの第6例について説明する。第6例は、エンターテインメント設備(例えば、テーマパーク内の設備、イベント会場のステージ設備、イベントで使用されるスピーカ)にオーディオシステム1が配置される例である。
【0101】
位置情報取得部24は、エンターテイメント設備の周辺に居るリスナL(エンターテインメントコンテンツの演者若しくは聴衆、又は、不審者)の位置、又は、オーディオシステム1を基準とする特定範囲を示す位置情報を取得する。位置情報取得部24は、例えば、以下の何れかである。
・カメラ
・温度センサ
・エンターテインメントコンテンツの演者が装着した無線タグから発信された信号のレシーバ
・予め定められた範囲を示す位置情報が記憶された記憶装置11
・通信インタフェース14
【0102】
音源23は、以下の何れかの音を再生するためのオーディオ信号を生成する。
・音楽
・動画の音声
・案内メッセージ(例えば、目的地への経路を案内する音声メッセージ)
・案内音
・警告メッセージ
・警告音
・演者に対する指示メッセージ(例えば、セリフを指示するメッセージ)
・ディスクジョッキーによって再生される音源
【0103】
プロセッサ12は、ステップS103において、エンターテイメント設備の周辺、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLの位置を焦点位置として決定する。
これにより、音源23によって生成されたオーディオ信号に対応する可聴音を、エンターテイメント設備の周辺、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLに聴かせることができる。
【0104】
(5-7)アプリケーションの第7例
本実施形態のアプリケーションの第7例について説明する。第7例は、金融機関にオーディオシステム1が配置される例である。
【0105】
例えば、オーディオシステム1は、金融機関の店舗(一例として、柱)、又は、店舗内に設置された装置(現金自動預入払出機、キャッシュディスペンサ、若しくは、自動ローン審査装置)に配置される。
【0106】
位置情報取得部24は、店舗内に居るリスナL(例えば、顧客又は不審者)の位置、又は、オーディオシステム1を基準とする特定範囲を示す位置情報を取得する。位置情報取得部24は、例えば、以下の何れかである。
・カメラ
・距離センサ
・予め定められた範囲を示す位置情報が記憶された記憶装置11
【0107】
音源23は、以下の何れかの音を再生するためのオーディオ信号を生成する。
・店舗内に設置された装置の案内メッセージ(例えば、キャッシュカードの取り忘れを防止するための音声メッセージ)
・警告音
・警告メッセージ
・リスナLの操作に応じた操作音
【0108】
プロセッサ12は、ステップS103において、金融機関の店舗内、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLの位置を焦点位置として決定する。
これにより、音源23によって生成されたオーディオ信号に対応する可聴音を、金融機関の店舗内、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLに聴かせることができる。
【0109】
(5-8)アプリケーションの第8例
本実施形態のアプリケーションの第8例について説明する。第8例は、介護施設(例えば、老人ホーム)にオーディオシステム1が配置される例である。
【0110】
例えば、オーディオシステム1は、介護施設内(一例として、柱又はインテリア)に配置される。
【0111】
位置情報取得部24は、オーディオシステム1の周辺のリスナLの位置、又は、オーディオシステム1を基準とする特定範囲を示す位置情報を取得する。位置情報取得部24は、例えば、以下の何れかである。
・カメラ
・通信インタフェース14
・予め定められた範囲を示す位置情報が記憶された記憶装置11
【0112】
音源23は、以下の何れかの音を再生するためのオーディオ信号を生成する。
・介護施設内の被介護者に対するメッセージ
・警告音
【0113】
プロセッサ12は、ステップS103において、オーディオシステム1の周辺、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLの位置を焦点位置として決定する。
これにより、音源23によって生成されたオーディオ信号に対応する可聴音を、介護施設内、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLに聴かせることができる。
【0114】
(5-9)アプリケーションの第9例
本実施形態のアプリケーションの第9例について説明する。第9例は、飲食店(例えば、喫茶店)にオーディオシステム1が配置される例である。
【0115】
位置情報取得部24は、飲食店の店内に居るリスナLの位置、又は、オーディオシステム1を基準とする特定範囲を示す位置情報を取得する。位置情報取得部24は、例えば、以下の何れかである。
・カメラ
・顧客が所持するタグ
・予め定められた範囲を示す位置情報が記憶された記憶装置11
・通信インタフェース14
【0116】
音源23は、以下の何れかの音を再生するためのオーディオ信号を生成する。
・顧客に対する案内メッセージ(例えば、注文した商品の調理が完了したことを示すメッセージ)
・音楽
・動画の音声
【0117】
プロセッサ12は、ステップS103において、飲食店の店舗内、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLの位置を焦点位置として決定する。
これにより、音源23によって生成されたオーディオ信号に対応する可聴音を、飲食店の店内、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLに聴かせることができる。
【0118】
(5-10)アプリケーションの第10例
本実施形態のアプリケーションの第10例について説明する。第10例は、VR(Virtual Reality)コンテンツを提供する施設又はデバイス(一例として、ヘッドマウントディスプレイ、又コンテンツ再生装置、又は、ビデオゲーム機)にオーディオシステム1が配置される例である。
【0119】
位置情報取得部24は、VRコンテンツを提供する施設内に居るリスナLの位置、又は、オーディオシステム1を基準とする特定範囲を示す位置情報を取得する。この場合、位置情報取得部24は、例えば、以下の何れかである。
・モーションセンサ
・カメラ
・予め定められた範囲を示す位置情報が記憶された記憶装置11
・VR施設の3次元レイアウトを示す位置情報が記憶された記憶装置11
・予め定められた範囲を示す位置情報が記憶された記憶装置11
・通信インタフェース14
【0120】
音源23は、以下の何れかの音を再生するためのオーディオ信号を生成する。
・VRコンテンツの音声
・案内メッセージ(例えば、VRコンテンツの終了時間が近いことを示す音声メッセージ)
・リスナLの操作に応じた操作音
【0121】
プロセッサ12は、ステップS103において、VRコンテンツを提供する施設内、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLの位置を焦点位置として決定する。
これにより、音源23によって生成されたオーディオ信号に対応する可聴音を、VRコンテンツを提供する施設内、又は、オーディオシステム1から所定範囲内に居るリスナLに聴かせることができる。
【0122】
(6)変形例
本実施形態の変形例について説明する。
【0123】
(6-1)変形例1
変形例1について説明する。変形例1は、フェーズドアレイFAが曲面形状を有する例である。
【0124】
変形例1のフェーズドアレイFAは、可変曲率を有する曲面形状のアレイ面上に形成される。
超音波スピーカ21には、アクチュエータ(例えば、可変アーム)が接続される。アクチュエータは、アレイ面の曲率(つまり、曲面形状)を変えるように構成される。アレイ面の曲率が変わると、フェーズドアレイFAから放射される超音波の位相差も変化する。
【0125】
具体的には、ステップS105で生成される駆動信号は、アクチュエータを駆動させるための駆動信号を含む。
アクチュエータは、駆動信号に基づいて、アレイ面の曲率を変える。
【0126】
変形例1によれば、アレイ面の曲率を変えることにより超音波に位相差を与える超音波スピーカ21を用いる場合にも、上記本実施形態と同様の効果が得られる。
特に、単一の焦点(例えば、
図5の焦点FP1)に超音波を集束させる場合、複数の超音波トランスデューサ21cの放射方向が当該焦点を向くので、当該焦点で集束する超音波の音圧レベルを上げることができる。
【0127】
(6-2)変形例2
変形例2について説明する。変形例2は、可聴範囲を動的に変化させる例である。
【0128】
変形例2の第1例では、プロセッサ12は、オーディオシステム1のオペレータ(例えば、リスナL)の指示(例えば、音量を変化させるための操作)を受け付けると、当該指示に応じて、超音波トランスデューサ21cから放射される超音波の振幅又は変調度を変更する。
この場合、オペレータは、超音波スピーカ21による音の可聴範囲を任意に変更することができる。
【0129】
変形例2の第2例では、プロセッサ12は、位置情報取得部24によって取得された位置情報が示すリスナLの位置に応じて、超音波トランスデューサ21cから放射される超音波の振幅又は変調度を変更する。例えば、プロセッサ12は、複数のリスナLのうち一部のリスナLの位置が可聴範囲から除外されるように、振幅又は変調度を決定する。
この場合、特定のリスナLにのみ、超音波スピーカ21による音を聴かせることができる。
【0130】
変形例2の第3例では、オーディオコントローラ10は、環境音の音量を検出するセンサ(不図示)を備える。プロセッサ12は、当該センサによって検出された音量に応じて、可聴範囲が一律に保たれるように、振幅又は変調度を決定する。
この場合、環境音が変化しても、可聴範囲を維持することができる。
【0131】
変形例2によれば、超音波スピーカ21の外部要因に応じて、可聴範囲を動的に変化させることができる。
【0132】
(7)本実施形態の小括
本実施形態について小括する。
【0133】
本実施形態の第1態様は、
少なくとも1つの超音波スピーカ21、及び、音源23と接続可能なオーディオコントローラ10であって、
音源23からオーディオ信号を入力する手段(例えば、ステップS101の処理を実行するプロセッサ12)を備え、
超音波スピーカによって再生される可聴音を聞き取るリスナの位置に関する位置情報を取得する手段(例えば、ステップS103の処理を実行するプロセッサ12)を備え、
位置情報に基づいて、超音波スピーカから放射される超音波が集束する焦点位置を決定する手段(例えば、ステップS103の処理を実行するプロセッサ12)を備え、
焦点位置で集束する超音波を収束するように、超音波スピーカを駆動させる手段(例えば、ステップS105の処理を実行するプロセッサ12)を備える、
オーディオコントローラ10である。
【0134】
第1態様によれば、任意の位置に決定された焦点位置に超音波が集束することにより、この焦点位置に音源が形成される。これにより、超音波スピーカ21の用途の制約を解消することができる。
【0135】
本実施形態の第2態様では、
決定する手段は、超音波スピーカ21の駆動中に焦点位置を決定する。
【0136】
第2態様によれば、超音波スピーカ21から超音波が放射されている間に焦点位置が変わる。これにより、可聴音を再生しながら、音源の位置を動かすことができる。
【0137】
本実施形態の第3態様では、
決定する手段は、超音波スピーカ21が放射する超音波の位相差を用いて、焦点位置を決定する。
【0138】
本実施形態の第4態様では、
駆動する手段は、超音波スピーカ21の複数の超音波トランスデューサ21cを異なる駆動タイミングで駆動することにより、位相差を生成する。
【0139】
本実施形態の第5態様では、
駆動する手段は、複数の超音波トランスデューサ21cから構成されるフェーズドアレイのアレイ面の曲率を変えることにより、超音波スピーカ21が放射する超音波の位相差を生成する。
【0140】
第3態様~第5態様の何れかによれば、超音波スピーカ21の放射面の方向を変えることなく、プロセッサ12の制御によって任意の位置に焦点を形成することができる。
【0141】
(8)その他の変形例
【0142】
記憶装置11は、ネットワークNWを介して、オーディオコントローラ10と接続されてもよい。
【0143】
位置情報取得部24は、超音波を用いて、位置情報を取得しても良い。
例えば、位置情報取得部24は、超音波トランスデューサ21cが放射する超音波の反射波を検出する超音波センサである。
ステップS100において、プロセッサ12は、超音波トランスデューサ21cを駆動させることにより、超音波を放射する。超音波は、リスナLに反射する。
超音波センサは、リスナLからの反射波を検出する。
プロセッサ12は、超音波を放射してから、超音波センサによって反射波が検出されるまでの時間に基づいて、リスナLの相対位置を推定する。
【0144】
上記の実施形態では、オーディオコントローラ10と音源23とが接続される例を示したが、本実施形態はこれに限られるものではない。オーディオコントローラ10は、音源23に組み込まれてもよい。
【0145】
上記の実施形態では、リスナLが人間である例を主に示したが、本実施形態はこれに限られるものではない。本実施形態は、聴覚を有する動物がリスナLである場合にも適用可能である。
例えば、動物から離れた場所にオーディオシステム1の操作者がいる場合、操作者の指示に応じて、動物に超音波によって発生する可聴音を聴かせることができる。可聴音に応じて動物が反応を示す場合、この可聴音は、動物に対する指示音として機能する。つまり、オーディオシステム1は、動物に対する指示を与えるシステムとして利用可能である。
【0146】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
【符号の説明】
【0147】
1 :オーディオシステム
10 :オーディオコントローラ
11 :記憶装置
12 :プロセッサ
13 :入出力インタフェース
14 :通信インタフェース
21 :超音波スピーカ
21a :カバー
21b :筐体
21c :超音波トランスデューサ
23 :音源
24 :位置情報取得部