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特許7095864コーヒーマシン用タブレット洗浄剤及びコーヒーマシン用タブレット洗浄剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】コーヒーマシン用タブレット洗浄剤及びコーヒーマシン用タブレット洗浄剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/00 20060101AFI20220628BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20220628BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20220628BHJP
   C11D 3/10 20060101ALI20220628BHJP
   C11D 3/08 20060101ALI20220628BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20220628BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20220628BHJP
   C11D 3/36 20060101ALI20220628BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20220628BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C11D17/00
C11D1/04
C11D1/14
C11D3/10
C11D3/08
C11D3/04
C11D3/33
C11D3/36
C11D3/20
C11D3/395
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018087281
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019189817
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000190736
【氏名又は名称】株式会社ニイタカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平石 依里
(72)【発明者】
【氏名】野口 博章
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特許第4994608(JP,B2)
【文献】特開昭62-225600(JP,A)
【文献】特開2017-222768(JP,A)
【文献】特表平06-509369(JP,A)
【文献】特開2009-209281(JP,A)
【文献】特開2000-290172(JP,A)
【文献】特開2015-199204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ剤、(B)キレート剤及び(C)滑沢剤を含み、
前記(C)滑沢剤が、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸カリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸カリウム、第二級アルカンスルホン酸ナトリウム及び第二級アルカンスルホン酸カリウムからなる群から選択される少なくとも一種のアニオン界面活性剤であることを特徴とするコーヒーマシン用タブレット洗浄剤。
【請求項2】
前記(C)滑沢剤の水に対する50℃での溶解度が1g/100g以上である請求項1に記載のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤。
【請求項3】
前記(C)滑沢剤の含有量は、0.5~20重量%である請求項1又は2に記載のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤。
【請求項4】
前記(A)アルカリ剤は、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩又はケイ酸塩である請求項1~のいずれかに記載のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤。
【請求項5】
前記(A)アルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びこれらの水和物からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1~のいずれかに記載のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤。
【請求項6】
前記(B)キレート剤は、アミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤及び多価カルボン酸系キレート剤からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1~のいずれかに記載のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤。
【請求項7】
さらに(D)酸素系漂白剤を含む請求項1~のいずれかに記載のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤。
【請求項8】
前記(D)酸素系漂白剤は、アルカリ金属過炭酸塩、アルカリ金属過硫酸塩及びアルカリ金属過ホウ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である請求項に記載のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤。
【請求項9】
(A)アルカリ剤、(B)キレート剤及び(C)滑沢剤を含み、前記(C)滑沢剤が、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸カリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸カリウム、第二級アルカンスルホン酸ナトリウム及び第二級アルカンスルホン酸カリウムからなる群から選択される少なくとも一種のアニオン界面活性剤である粉末状の洗浄剤組成物を打錠機で打錠することを特徴とするコーヒーマシン用タブレット洗浄剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーマシン用タブレット洗浄剤及びコーヒーマシン用タブレット洗浄剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店やコンビニエンスストア等の店舗において、顧客の要求に応じて1杯ずつコーヒーを抽出、提供するコーヒーマシンが使用されている。コーヒーマシンは風味を向上させるために、コーヒー豆を粉砕した後、目の細かい金属製のコーヒーフィルター上に落下させ、上から熱湯や高い蒸気圧をかけて1杯ずつ抽出する仕組みが一般的である。このようなコーヒーマシンは定期的に洗浄する必要があるが、コーヒー液が流れる部分(以下、コーヒーラインともいう)をマシン本体から容易に取り外せないことが多い。そのため、コーヒーラインを洗浄する際は、洗浄剤をコーヒーマシン内部に投入し、コーヒーマシン本体に搭載された洗浄モードを使用することで洗浄されることが多い。
【0003】
コーヒー由来の汚れ(以下、コーヒー汚れともいう)は、色素汚れだけでなく脂質や多糖類、タンパク質等の有機汚れが複合したものであるため、緑茶や紅茶の着色汚れと比較して洗浄しにくいなどの問題があった。特許文献1には、このようなコーヒー汚れに特化した洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-222768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
店舗に設置されたコーヒーマシンでは定期的に洗浄される必要があることから、所定量の洗浄剤組成物を計量してマシンに投入するという手間を省くため、毎回決まった分量を使用することができる錠剤(タブレット)の洗浄剤が求められている。
しかしながら、特許文献1に記載された洗浄剤組成物では、コーヒー汚れに対して充分な洗浄性を示すものの、打錠する際には、モールド(臼や杵ともいう)に対する組成物の付着(スティッキングともいう)や、モールドから取り出した錠剤の側面に傷が入る(バインディングともいう)等の打錠障害が発生するため、大量生産に向いていないといった問題があった。
打錠性を向上させるための方法としては、一般的に滑沢剤を添加する方法が知られているが、これらの滑沢剤はステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、シリコーン(例えばジメチルポリシロキサン等)、パラフィン等の易水溶性ではない成分である。そのため、滑沢剤を使用して打錠されたタブレット洗浄剤をコーヒーマシンの洗浄に使用すると、易水溶性ではない成分が溶け残ったり、再析出を起こすために、コーヒーフィルターや配管の目詰まりを発生させたり、コーヒーマシンを損傷させてしまうという問題があった。
また特許文献1では、成形性を高めるためにノニオン性界面活性剤を使用することが開示されている。しかしながら、ノニオン性界面活性剤は一般的に液体の状態で流通しており、固体原料を混合、成形、打錠するという方法が採用されるタブレット洗浄剤を製造する方法において、液体原料を使用する場合、あらかじめ粉末原料に対して液体原料を噴霧して混合するという工程が必要となり作業性が低下してしまうという問題もあった。
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するためにされたものであり、打錠性が良好で、かつ、コーヒーフィルター及び配管の目詰まりを起こしにくく、コーヒーマシンを傷つけにくいコーヒーマシン用タブレット洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、(A)アルカリ剤、(B)キレート剤及び(C)滑沢剤を含み、上記(C)滑沢剤が、アニオン界面活性剤であることを特徴とする。
【0008】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、(A)アルカリ剤及び(B)キレート剤を含んでいるため、コーヒー汚れを洗浄することができる。
(C)滑沢剤として用いられるアニオン界面活性剤は、打錠前の洗浄剤粉末の流動性を向上させることによって、該洗浄剤粉末のモールドへの充填性を向上させることができる。また、洗浄剤粉末とモールドとの摩擦を低下させることによって、圧縮性及び離型性を高めることができる。
さらに、アニオン界面活性剤は易水溶性であるため、コーヒーマシン内部で使用される場合に、コーヒーフィルターや配管が目詰まりすることを抑制することができる。また、固形物が残らないため、洗浄対象物であるコーヒーマシンを傷つけにくい。
【0009】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤では、上記(C)滑沢剤の水に対する50℃での溶解度が1g/100g以上であることが好ましい。
(C)滑沢剤の水に対する50℃での溶解度が1g/100g以上であると、水に対する溶解性が高く、コーヒーフィルターや配管の目詰まりをさらに抑制することができる。
【0010】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤では、上記(C)滑沢剤は、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸カリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸カリウム、第二級アルカンスルホン酸ナトリウム及び第二級アルカンスルホン酸カリウムからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
(C)滑沢剤がラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸カリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸カリウム、第二級アルカンスルホン酸ナトリウム及び第二級アルカンスルホン酸カリウムからなる群から選択される少なくとも一種であると、打錠性が特に良好となる。
【0011】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤では、上記(C)滑沢剤の含有量は、0.5~20重量%であることが好ましい。
(C)滑沢剤の含有量が0.5~20重量%であると、打錠性を向上させつつ、コーヒーフィルターや配管の目詰まりを起こしにくい。
(C)滑沢剤の含有量が0.5重量%未満であると、打錠性を向上させる効果が充分でないことがある。一方、(C)滑沢剤の含有量が20重量%を超えると、錠剤が中間部から層状に剥離(ラミネーションともいう)したり、錠剤の上下に分離する(キャッピングともいう)等の打錠障害が起こりやすくなる。
【0012】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤では、上記(A)アルカリ剤は、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩又はケイ酸塩であることが好ましい。
(A)アルカリ剤がアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩又はケイ酸塩であると、コーヒー汚れに対する洗浄性が高い。
【0013】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤では、(A)アルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びこれらの水和物からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
(A)アルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びこれらの水和物からなる群から選択される少なくとも一種であると、コーヒー汚れに対する洗浄性が特に高い。
【0014】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤では、上記(B)キレート剤は、アミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤及び多価カルボン酸系キレート剤からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
(B)キレート剤が、アミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤及び多価カルボン酸系キレート剤からなる群から選択される少なくとも一種であると、コーヒー汚れに対する洗浄性が特に高い。
【0015】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、さらに(D)酸素系漂白剤を含むことが好ましい。
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤がさらに(D)酸素系漂白剤を含むと、コーヒー汚れに対する洗浄性を向上させることができる。
【0016】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤では、上記(D)酸素系漂白剤は、アルカリ金属過炭酸塩、アルカリ金属過硫酸塩及びアルカリ金属過ホウ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
(D)酸素系漂白剤が、アルカリ金属過炭酸塩、アルカリ金属過硫酸塩及びアルカリ金属過ホウ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種であると、コーヒー汚れに対する洗浄性をさらに向上させることができる。
【0017】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤の製造方法は、(A)アルカリ剤、(B)キレート剤及び(C)滑沢剤を含み、上記(C)滑沢剤がアニオン界面活性剤である粉末状の洗浄剤組成物を打錠機で打錠することを特徴とする。
【0018】
(A)アルカリ剤、(B)キレート剤及び(C)滑沢剤を含み、(C)滑沢剤がアニオン界面活性剤である粉末状の洗浄剤組成物は打錠性に優れる。従って、このような洗浄剤組成物を用いると、打錠障害を起こしにくく、打錠機で効率的に打錠することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、打錠性が良好で、コーヒーフィルター及び配管の目詰まりを起こしにくい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、(A)アルカリ剤、(B)キレート剤及び(C)滑沢剤を含み、上記(C)滑沢剤が、アニオン界面活性剤であることを特徴とする。
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、(C)滑沢剤としてアニオン界面活性剤を用いているため、滑沢剤が水に溶け残りにくく、コーヒーフィルター及び配管の目詰まりの発生を抑制することができる。
【0021】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤を構成する、(A)アルカリ剤、(B)キレート剤及び(C)滑沢剤について、それぞれ説明する。
【0022】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤において、(A)アルカリ剤の種類は特に限定されないが、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩又はケイ酸塩であることが好ましい。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属の炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウム等が挙げられる。
上述したアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、ケイ酸塩は、水和物であってもよい。
【0023】
(A)アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及びこれらの水和物からなる群から選択される少なくとも一種であるであることが好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及びこれらの水和物からなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
【0024】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤における(A)アルカリ剤の含有量は、特に限定されないが、5~50重量%であることが好ましく、7.5~45重量%であることがより好ましく、10~40重量%であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤において、(B)キレート剤の種類は特に限定されないが、アミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤及び多価カルボン酸系キレート剤からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0026】
アミノカルボン酸系キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)又はこれらの塩等が挙げられる。
【0027】
ホスホン酸系キレート剤としては、ヒドロキシエチリデンホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)等が挙げられる。
上記キレート剤はホスホン酸部分の少なくとも一部が塩になっていてもよい。
【0028】
ヒドロキシカルボン酸系キレート剤としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸又はこれらの塩が挙げられる。
【0029】
多価カルボン酸系キレート剤としては、例えば、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マロン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの塩等が挙げられる。なおカルボキシル基を複数有するものであっても、ヒドロキシル基を有する化合物は、ヒドロキシカルボン酸系のキレート剤とする。
なお、(B)キレート剤には、後述する酸剤として機能するものもある。
【0030】
上記キレート剤(B)における塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属の塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩を挙げることができる。中でも、アルカリ金属の塩が好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩がより好ましい。
【0031】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤における(B)キレート剤の含有量は、特に限定されないが、1~50重量%であることが好ましく、5~45重量%であることがより好ましい。
【0032】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤において、(C)滑沢剤は、アニオン界面活性剤である。
また(C)滑沢剤は標準状態(25℃、1気圧)において固体粉末である。
(C)滑沢剤が標準状態において液体であると、滑沢剤としての効果を果たすことができず、打錠性を低下させてしまう。
【0033】
標準状態において固体粉末状のアニオン界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸カリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸カリウム、第二級アルカンスルホン酸ナトリウム及び第二級アルカンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0034】
(C)滑沢剤の水に対する溶解度は特に限定されないが、50℃において1g/100g以上であることが好ましい。
【0035】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤において、上記(C)滑沢剤の含有量は、0.5~20重量%であることが好ましい。
(C)滑沢剤の含有量が0.5~20重量%であると、打錠性を向上させつつ、コーヒーフィルターや配管の目詰まりを起こしにくい。
(C)滑沢剤の含有量が0.5重量%未満であると、打錠性を向上させる効果が充分でないことがある。一方、(C)滑沢剤の含有量が20重量%を超えると、ラミネーションやキャッピング等の打錠障害が起こりやすくなる。
【0036】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、従来滑沢剤として使用されている、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム等のステアリン酸金属塩、ショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、タルク、シリカ、パラフィン、酸化マグネシウム等の易水溶性ではない成分(以下、(C’)成分と記載する)を含まないことが好ましい。
上記(C’)成分を含むと、溶け残りや再析出した成分がコーヒーフィルターや配管の目詰まりを発生させたり、コーヒーマシンを損傷させてしまう。
(C’)成分は、具体的には、水に対する50℃での溶解度が1g/100g未満のものを指す。
【0037】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、ノニオン界面活性剤を含まないことが好ましい。
ノニオン界面活性剤は一般的に液体原料であるため、タブレット洗浄剤の製造工程において作業性が低下する。
【0038】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、さらに(D)酸素系漂白剤を含むことが好ましい。
(D)酸素系漂白剤を(A)アルカリ剤及び(B)キレート剤と併用することにより、コーヒー汚れに対する洗浄性を向上させることができる。
(D)酸素系漂白剤としては、アルカリ金属炭酸塩の過酸化水素付加物(アルカリ金属過炭酸塩ともいう)、アルカリ金属過硫酸塩及びアルカリ金属過ホウ酸塩が挙げられ、これらの中ではアルカリ金属過炭酸塩が好ましい。
アルカリ金属過炭酸塩としては、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウムなどが挙げられ、アルカリ金属過硫酸塩としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどが挙げられ、アルカリ金属過ホウ酸塩としては、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウムなどが挙げられる。
【0039】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤における(D)酸素系漂白剤の含有量は、特に限定されないが、1~45重量%であることが好ましく、5~40重量%であることがより好ましく、3~30重量%であることが更に好ましく、10~28重量%であることが最も好ましい。
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤における(D)の含有量が1~45重量%であると、コーヒー汚れに対して充分な洗浄力を発揮することができる。
洗浄剤組成物の全量に対する(D)酸素系漂白剤の含有量が45重量%を超えた場合、アルカリ剤(A)及びキレート剤(B)の含有量が相対的に少なくなってしまい、コーヒー汚れに対して充分な洗浄力を発揮できないことがある。一方、(D)酸素系漂白剤の含有量が1重量%未満の場合、(D)酸素系漂白剤の絶対量が少なすぎて、コーヒー汚れに対する洗浄性を充分に向上させることができない場合がある。
【0040】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、(A)アルカリ剤、(B)キレート剤、(C)滑沢剤、(D)酸素系漂白剤、以外の(E)添加剤を含んでいてもよい。
(E)添加剤としては、例えば、芒硝、酸剤、結合剤、防腐剤、殺菌剤、酵素、色素、香料、着色料、消泡剤、腐食防止剤等が挙げられる。(E)添加剤としては、従来から洗浄剤用の添加剤として用いられているものを好適に用いることができる。
【0041】
芒硝(硫酸ナトリウム)を添加することで、打錠前の洗浄剤組成物の取扱い性を向上させることができる。さらに、錠剤の大きさを調整することができる。
【0042】
酸剤を添加することで、タブレット洗浄剤の水に対する溶解性を向上させることができる。
酸剤としては、コハク酸等が挙げられる。
結合剤を添加することで、タブレット洗浄剤の打錠性、及び、打錠されたタブレット洗浄剤の硬度を調整することができる。
結合剤としては、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
ポリエチレングリコールの平均分子量は特に限定されないが、1000以上であることが好ましい。
【0043】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、製造時の作業性を考慮すると、固体原料のみで構成されていることが好ましい。タブレット洗浄剤が固体原料のみで構成されていると、製造時の作業性が良好である。
【0044】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤のpHは特に限定されないが、1重量%水溶液の25℃におけるpHが9.5~12であることが好ましい。
【0045】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は重量が0.5~5.0gであることが好ましい。
重量が上記範囲であると、コーヒーマシンの1回の洗浄に適当であり、打錠性にも優れている。
【0046】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤の形状は特に限定されないが、円盤状であることが好ましい。
該円盤の直径は10~30mmであることが好ましい。
該円盤の厚さは2~10mmであることが好ましい。
【0047】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、コーヒーマシンを洗浄するために特に有効である。コーヒーマシンの種類は特に限定されず、例えばドリップ式、エスプレッソ式等のように、コーヒー豆又はコーヒー粉をマシンに投入するものであってもよく、予め一定量のコーヒー粉が充填された容器をコーヒー液の抽出毎に交換するカプセル式やカフェポッド式であってもよい。また上記コーヒーマシンは半自動式であっても全自動式であってもよく、コーヒー液を含む飲料(カプチーノ、カフェラテ、カフェオレ等)を供するためのコーヒーマシンであってもよい。
【0048】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤を製造する方法について説明する。
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、例えば本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤の製造方法により製造することができる。
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤の製造方法は、(A)アルカリ剤、(B)キレート剤及び(C)滑沢剤を含み、上記(C)滑沢剤がアニオン界面活性剤である粉末状の洗浄剤組成物を打錠機で打錠することを特徴とする。
(A)アルカリ剤、(B)キレート剤及び(C)滑沢剤を含み、(C)滑沢剤がアニオン界面活性剤である粉末状の洗浄剤組成物は打錠性に優れる。従って、このような洗浄剤組成物を用いると、打錠障害を起こしにくく、打錠機で効率的に打錠することができる。
【0049】
本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤の製造方法において、粉末状の洗浄剤組成物には、(A)アルカリ剤、(B)キレート剤及び(C)滑沢剤の他に、必要に応じて(D)酸素系漂白剤及び(E)添加剤等が含まれていてもよい。
粉末状の洗浄剤組成物を構成する(A)アルカリ剤、(B)キレート剤、(C)滑沢剤、(D)酸素系漂白剤及び(E)添加剤としては、本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤を構成する成分と同じものを用いることができる。各種成分の含有量や好ましい化合物の種類についても同様である。
また(C’)やノニオン界面活性剤などの、含有量が少ない、又は、含まないことが好ましい化合物についても同様である。
【0050】
粉末状の洗浄剤組成物は、(A)アルカリ剤、(B)キレート剤及び(C)滑沢剤及び必要に応じて添加される(D)酸素系漂白剤及び(E)添加剤等をリボンミキサー、ナウターミキサー、ドラムミキサー等で混合することにより調製することができる。
得られた粉末状の洗浄剤組成物は、そのまま打錠機で打錠してもよいし、顆粒に成形した後に、打錠機で打錠してもよい。
打錠機は単打式の打錠機であってもよく、連続式の打錠機であってもよい。
【0051】
続いて、得られた粉末状の洗浄剤組成物を打錠機で打錠する。
打錠方法は特に限定されないが、直接打錠法、顆粒圧縮法のいずれでもよい。
ただし、(C)滑沢剤としてアニオン界面活性剤を含む粉末状の洗浄剤組成物は打錠性に優れるため、直接打錠法での打錠が適している。
【実施例
【0052】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例において、特に断らない限り「部」は「重量部」を「%」は「重量%」をそれぞれ意味する。
【0053】
(実施例1~11及び比較例1~5)
(タブレット洗浄剤の作製)
表1に示す処方に従い、(A)アルカリ剤、(B)キレート剤、(C)滑沢剤、(D)酸素系漂白剤及び(E)添加剤を混合して、実施例1~11及び比較例1~5に係る洗浄剤組成物(粉末)を得た。なお、ポリエチレングリコールは結合剤であり、平均分子量が8600の粉末状であった。また、(C’)として使用したジメチルポリシロキサン及びノニオン界面活性剤であるプルロニックL-31は、液体状であった。液体原料を含むものは、まず液体原料を芒硝に噴霧して均一に混合した後、さらに他の原料を混合するという2段階の混合手順で洗浄剤組成物(粉末)を調製した。一方、液体原料を含まないものは、全原料を一度に混合するという1段階の混合手順で洗浄剤組成物(粉末)を調製した。
続いて、得られた洗浄剤組成物(粉末)約2gを、連続打錠機[(株)畑鐵工所製、HT-G20]を用いて打錠し、実施例1~11及び比較例1~5に係るタブレット洗浄剤を得た。錠剤の寸法は、厚さ3.6mm、直径20mmであった。
【0054】
(作業性評価)
以下の方法で作業性を評価した。結果を表1に示す。
○:洗浄剤組成物(粉末)の調製が1段階の混合手順である。
×:洗浄剤組成物(粉末)の調製が2段階の混合手順である。
【0055】
(打錠性評価1、2:バインディング防止効果、キャッピング防止効果)
洗浄剤組成物(粉末)を、連続打錠機[(株)畑鐵工所製、HT-G20]を用いて1000錠連続で打錠した。得られたタブレット洗浄剤1000錠についてバインディングの有無、キャッピングの有無を確認し、バインディング発生率及びキャッピング発生率を求めた。結果を表1に示す。
なお、連続打錠では、事前に約1分間の試運転を行い、その間に打錠したものは除外した。
(バインディン防止効果)
○:バインディング発生率が0.5%未満
×:バインディング発生率が0.5%以上
(キャッピング防止効果)
○:キャッピング発生率が0.5%未満
×:キャッピング発生率が0.5%以上
【0056】
(打錠性評価3:連続打錠性評価)
洗浄剤組成物(粉末)を、連続打錠機[(株)畑鐵工所製、HT-G20]を用いて10000錠連続で打錠した。10000錠打錠した後、打錠後の杵の表面に洗浄剤組成物が付着しているかどうかを判断した。
○:10000錠連続打錠後も、杵の表面に洗浄剤組成物が付着していない。
×:10000錠連続打錠後に杵の表面に洗浄剤組成物が付着している、又は、連続打錠回数が10000回に達する前に、杵の表面に洗浄剤組成物が付着することによる打錠障害が発生したため、連続打錠を中止した。
【0057】
(打錠性評価:総合)
バインディング防止効果、キャッピング防止効果及び連続打錠性の評価のうち、全ての評価が○のものを総合評価○とし、1つ以上の評価項目が×であったものを総合評価×とした。結果を表1に示す。
【0058】
(洗浄性評価)
煮沸したコーヒー液にプラスチック板を浸漬させ、一晩自然冷却させた。
その後、プラスチック板を取り出し、乾燥させることでコーヒー汚れの付着した試験板を作製した。
続いて、タブレット洗浄剤の重量が1重量%となるように水道水に溶解させた水溶液(洗浄液)を準備し、この洗浄液中に、上記試験板を70℃で3分間浸漬し、その後流水ですすいだ。すすぎ後の試験板の表面を目視で観察し、残存する汚れの程度を以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
◎:汚れ落ちが非常によく、汚れが確認できない。
○:汚れ落ちがよく、わずかな汚れしか確認できない。
△:汚れ落ちが悪く、明らかに汚れが確認できる。
【0059】
(溶解性評価)
実施例1~11及び比較例1~5に係るタブレット洗浄剤2gを50℃の水100gに溶解し、15分間撹拌溶解させた後、その外見を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○:不溶物がみられない。
×:不溶物がみられる。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果より、本発明のコーヒーマシン用タブレット洗浄剤は、打錠性に優れ、コーヒーフィルター及び配管の目詰まりを起こしにくいことがわかった。一方、(C’)成分を用いた比較例1~4に係るタブレット洗浄剤は目詰まりを起こしやすいことがわかった。さらに、液体原料を用いた比較例4~5に係るタブレット洗浄剤では、作業性が低下することがわかった。