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特許7095897接続用マイクロ繊維を含むマイクロ電極アレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】接続用マイクロ繊維を含むマイクロ電極アレイ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/293 20210101AFI20220628BHJP
   A61B 5/263 20210101ALI20220628BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A61B5/293
A61B5/263
A61N1/05
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2019529999
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 SE2017000048
(87)【国際公開番号】W WO2018106165
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】1600334-5
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】508194652
【氏名又は名称】ニューロナノ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショウエンボリ、イエンス
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0270729(US,A1)
【文献】特表2012-529338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24 - 5/398
A61N 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心アレイ軸を有する横長形状の微小電極アレイであって、
前記中心アレイ軸と実質的に平行に配置された、3本以上可撓性横長形状の電気的に協働する微小電極であって金属および/または導電性カーボンおよび/または導電性ポリマーの材料からなる前記微小電極を含み、
前記微小電極は、遠位端子部と中央部と近位端子部とを含み、前記微小電極は、前記遠位端子部の一部分を除いて電気絶縁され
前記微小電極アレイは、前記微小電極の中央部分をアレイ軸に対して斜め方向に接続する非導電性マイクロ繊維をさらに含み、
前記微小電極アレイの少なくとも1つの微小電極が、他の2つ以上の微小電極によって画定される平面内に配置されていないことを特徴とする、微小電極アレイ。
【請求項2】
前記マイクロ繊維が不織布である、請求項1に記載のアレイ。
【請求項3】
前記マイクロ繊維が、2つ以上の微小電極および/または1つ以上の繊維に接着剤で取り付けられている、請求項1または2に記載のアレイ。
【請求項4】
前記マイクロ繊維が、微小電極の軸方向に延びる領域の50%以上に沿って配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項5】
前記マイクロ繊維が生分解性である、請求項1から4のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項6】
前記マイクロ繊維が弾性である、請求項1から4のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項7】
前記マイクロ繊維が電界紡糸繊維である、請求項1に記載のアレイ。
【請求項8】
マイクロ繊維が、ポリエステル、リラクチド、ポリグリコリドまたはそれらの混合物もしくはコポリマー、電界紡糸アルブミン、糖タンパク質に富む粘液材料からなる群から選択される材料を含むかまたはそれからなる、請求項1に記載のアレイ。
【請求項9】
2つ以上の微小電極が、水性体液中に溶解性および/または生分解性である生体適合性接着剤によって接続されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項10】
前記生体適合性接着剤が、溶解または分解される前に水性体液と接触すると膨張することができる、請求項9に記載のアレイ。
【請求項11】
前記接着剤が、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択されるか、または前記群の材料を含む、請求項9または10に記載のアレイ。
【請求項12】
前記接着剤が層状である、請求項9から11のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項13】
前記接着剤の内層の水性体液中での膨潤および/または溶解および/または分解の速度が、外層のものよりも小さい、請求項12に記載のアレイ。
【請求項14】
外層が天然ゼラチンを含むまたは構成され、内層が架橋ゼラチンを含むまたは構成される、請求項12または13に記載のアレイ。
【請求項15】
内層が100を超えるルーム強度を有する、請求項12から14のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項16】
マイクロ繊維が、接着剤中に部分的にまたは完全に埋め込まれている、請求項9から15のいずれかに記載のアレイ。
【請求項17】
関係する任意の対の微小電極間の距離が、100μm以下ある、請求項1から16のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項18】
微小電極の遠位部分および/または中央部分が穴または輪であることを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項19】
前記マイクロ繊維が、穴または輪ではない微小電極部分上にのみ配置される、請求項18に記載のアレイ。
【請求項20】
実質的に平行とは、中心軸からの微小電極の角度のずれが15°を超えいことを意味する、請求項1から19のいずれかに記載のアレイ。
【請求項21】
前記アレイ軸が、前記微小電極の重心軸として画定される、請求項1から20のいずれかに記載のアレイ。
【請求項22】
微小電極は、制御ユニットによって電気的に協働して制御される、請求項1から21のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項23】
前記制御ユニットが、電気的に協働するそれぞれの微小電極から受信した電気信号を識別することができるソフトウェアを含む、請求項22に記載のアレイ。
【請求項24】
信号源位置を決定することが前記識別に基づく、請求項23に記載のアレイ。
【請求項25】
請求項1から24のいずれかに記載の2つ以上の微小電極アレイを含むシステム。
【請求項26】
2つ以上のアレイが、前記アレイ軸に対して斜め方向に非導電性マイクロ繊維によって接続される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
水性体液に可溶性の材料に完全にまたは部分的に埋め込まれている、請求項25または26に記載のシステム。
【請求項28】
前記材料が炭水化物から構成されるか含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
2つのアレイの軸間の距離が100μm以上ある、請求項25から28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
微小電極は、制御ユニットによって電気的に協働して制御される、請求項25から29のいずれかに記載のシステム。
【請求項31】
前記制御ユニットが、電気的に協働する異なる微小電極が受信した電気信号を識別することができるソフトウェアを含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
信号源位置を決定することが前記識別に基づく、請求項31に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それが移植された軟組織と一体化し、長期間にわたって隣接ニューロンについての情報を提供することができる微小電極アレイ、およびそのようなアレイの組み合わせに関する。本発明は、軟組織に移植可能でもあり、本発明の微小電極アレイに変換される微小電極プロトアレイに関する。さらに、本発明は、アレイの製造方法、アレイとプロトアレイとの組み合わせ、それらの埋め込み方法、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
植え込み型微小電極は、神経組織および内分泌組織などの興奮性組織から発せられる電気信号の記録に使用することができる。埋め込み型微小電極に関する問題は、それらが組織内で移動する傾向があることである。したがって、それは、いったん埋め込まれると、元の位置に留まることができる、すなわち移動しない微小電極を提供することが望ましい。軟組織に埋め込まれた微小電極の位置安定性は、神経機能の長期的な研究のための前提条件です。そのような長期安定性は、学習過程または退行過程を研究または相互作用するために必要である。
【0003】
このようなアレイに関連する電極が、膜を損傷する恐れがある神経細胞の原形質膜に妨害力を及ぼすことを回避しながら、高忠実度記録ならびに特定のニューロンの刺激を可能にする長期並列膜連絡を確立することも重要である。グリア反応および隣接する神経細胞の生存は微小電極の機械的性質に依存することが知られている。
【0004】
さらに、微小電極の位置安定性は、信号が記録されているニューロンを識別するのに重要である。単一電極の使用による記録は信号源の識別の不確実性を被る。例えば、大脳皮質大脳の錐体細胞のような同様の構成のニューロンに由来する活動電位は、遠位端またはその近くの絶縁部分の電極の記録部分からほぼ同じ距離に位置するニューロンの形状および振幅においてかなり類似する傾向がある。したがって、単一の微小電極を使用しても、シグナルが特定のニューロンから発せられているかどうかを確認することはできない。微小電極の対を使用すると、隣接する神経細胞から発せられる信号を識別することができるようになるが、それは、正確な決定を可能にするような、少なくとも3つ、特に少なくとも4つの微小電極の組み合わせの使用にすぎない。
【0005】
本出願では、少なくとも3つの微小電極、特に少なくとも4つの微小電極の組み合わせは微小電極アレイと称する。三角測量法におけるそのようなアレイの使用およびニューロンからの距離に伴う信号減衰の事象は、アレイに含まれる微小電極の非絶縁部分が配置されていないという条件で、ニューロンの空間配置の明確な決定を可能にする。同一平面上に微小電極とそれが埋め込まれている組織との間に電気的接触が確立されるのは、これらの非絶縁部分を介してである。
【0006】
当技術分野で知られている微小電極アレイ(polyode)は、ほとんどの場合、固体支持体に付着しているかまたはしっかり束ねられている4つの微小電極(四極管)を含む。この組み合わせは神経プローブを構成する。最適な機能のために、微小電極は、電極と問題のニューロンとの間の距離によって決定される、互いからの特定の距離に配置される必要がある。既知の微小電極アレイの欠点はそれらの剛性と大きさである。この理由のため、それらはそれらが移植される組織と共に自由に動くことができない。既知のアレイと周囲の組織との間に生じる剪断力がグリア反応を誘発し、最終的にそれらを封入するグリア瘢痕を引き起こす。そのようなカプセル化は、損なわれた信号対雑音比を考慮すると、それらの記録能力にとって有害である。
【0007】
したがって、当技術分野では、いったん埋め込まれると改善された位置安定性の微小電極アレイに対する必要性がある。改善された位置安定性は、周囲の組織に対する改善された機械的適合性、したがって組織刺激の危険性の減少を提供するはずである。神経細胞から発せられる信号の位置決定のための改善された微小電極アレイの必要性は、長期使用のために植え込まれたアレイに関して特に急がれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】D H Reneker and I C Chun, Nanometre diameter fibres of polymer, produced by electrospinning. Nanotechnology 7 (1996) 216-223
【文献】Naya R et al., Recent advances in nanofiber fabrication techniques . Textile Research Journal 82,-2 (2012) 129-147
【文献】Matthews J A et al., Electrospinning of Collagen Nanofibers Biomacromolecules 3,-2 (2002) 232-238
【文献】Leach M K et al., Electrospinning Fundamentals: Optimizing Solution and Apparatus Parameters. J Vis Exp 47 (2011) e2494, doi : 10.3791/2494 (2011)
【文献】Davidenko N et al., R.E, Optimization of UV irradiation as a binding site conserving method for crosslinking collagen based scaffolds. J Mat Sci. Materials in Science 27 (2016)14
【文献】Masutani E M et al., Increasing thermal stability of gelatin by UV induced cross-linking with glucose. Int J Biomater 2014:979636.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、改善された機械的組織適合性の微小電極のアレイを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、そのようなアレイを便利に移植可能な形態で提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、軟組織における改善された位置安定性を有するそのようなアレイを提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、微小電極のアレイの組み合わせを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、以下の本発明の簡単な説明、図面に示されるその多数の好ましい実施形態、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、それが移植される組織と共に動くことができ、したがってその機能に有害な組織への損傷がより少ない傾向がある微小電極アレイが提供される。3つ(3極)または5つ(5極)以上の微小電極を含む微小電極アレイを同じ目的に使用することができるが、本発明は4つの微小電極を含むアレイによって例示される。しかしながら、本発明のアレイは、いくつかの微小電極を含むことに限定されない。それは20以上、さらには50または100以上の微小電極を含むことができる。本発明の微小電極アレイは、その半径方向の広がりよりも実質的に大きい、例えば5倍または10倍以上大きい軸方向の広がりである楕円形を有する。その結果、それらの半径方向の距離が実質的に制限されるので、多数の長方形の微小電極を含むアレイも長方形の形状を有する。微小電極アレイは、微小電極によって秤量された方法で画定された中心軸または重力軸を有する。本発明のアレイに属する任意の対の微小電極間の距離は、好ましくは100μm以下、特に50μm以下または25μm以下である。100μmを超える距離は、低い信号対雑音レベルで許容され得る。アレイの微小電極は、1000μmを超え、さらには5000μmを超える長さを有することができる。本発明のアレイに関する微小電極は実質的に平行に配置され、すなわち中心軸からの微小電極の角度偏差は15°を超えず、特に10°または5°を超えない。
【0015】
特に、本発明によれば、3本以上、特に4から7本以上の可撓性長円形電気協働微小電極をワイヤおよび/またはワイヤから構成する、中央アレイ軸を有する長円形の微小電極アレイが開示される。アレイ軸と実質的に平行に配置されたリボン形態の金属および/または導電性炭素および/または導電性ポリマー、遠位端子部、中央部および近位端子部を含む微小電極。末端部の一部分であって、好ましくは、この末端部分は近位方向に遠位端から延びる。アレイは、微小電極の中央部分をアレイ軸に対して斜め方向に接続する非導電性微小繊維をさらに含む。
【0016】
アレイの微小電極は、好ましくはワイヤまたはリボンの形態である。しかしながら、本発明では、例えば、蛇行形状の軸方向に伸長可能な微小電極、中空微小電極、それらの遠位端またはその遠位部分にフックまたは他の固定手段を備えた微小電極のような他の長方形の微小電極を使用することができる。
【0017】
好ましい金属は、金または白金などの貴金属およびそれらの合金である。好ましい電極絶縁材料はパリレンである。他の好ましい電極本体被覆材料はポリウレタンおよびシリコーンであるが、他の生体適合性ポリマー材料も同様に使用することができる。酸化ハフニウムなどの電気絶縁用の適切な無機材料も使用することができる。絶縁材料による電極被覆の好ましい方法は気相堆積である。
【0018】
本発明のアレイの2つの微小電極間の距離は、これがそれらの電気的協調にとって有害であるので、大きすぎてはならない。本発明のアレイの2つの協働する微小電極間の好ましい距離は、3μmから100μm、特に5μmから20μmまたは50μmである。協働することによって、微小電極は、所与のニューロンからソフトウェアおよびデータ記憶手段を含む制御ユニットに信号を受信および転送することができ、ニューロンから受信した信号は分析および比較され、かつ/またはニューロン刺激を発生する。微小電極による放出のためのシグナル。信号の分析および比較に基づいて、単一のニューロンの位置を決定することができ、同様に異なる隣接ニューロンによって放出された信号を識別することができる。
【0019】
本発明の微小電極は、本質的に直線状であり得るが、代わりに、軸方向(近位?遠位)方向へのその伸長を可能にする部分を含み得る。蛇行状に形成された部分を含む電極のような、本発明において使用するための軸方向に伸張可能な電極は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/075625号パンフレットに開示されている。本発明のアレイの微小電極は、同じ長さ、またはほぼ同じ長さ、または異なる長さであり得る。さらに、本発明の微小電極アレイは、異なる設計の微小電極も含み得る。
【0020】
アレイの少なくとも1つの微小電極が、2つ以上の他の微小電極によって画定される平面内に配置されないことが好ましい。本発明の4つの微小電極(4極管)のアレイにおいて、2つ以下の微小電極が同一平面内に配置されることが好ましい。
【0021】
本発明の第1の好ましい態様によれば、本発明のアレイは電極偏差制限手段を含む。電極偏差制限手段は、アレイ電極の半径方向および軸方向の変位を互いに対して制限しながら、アレイ電極が制限内で軸方向および半径方向に移動することを可能にする。好ましい制限手段は、1μmから100μm、または2nmから200nmの直径を有するような、マイクロメートルまたはナノメートルの直径範囲のマイクロ繊維である非導電性繊維を含むかまたはそれからなる。電界紡糸微小繊維が特に好ましい。
【0022】
好ましい繊維状材料としては、ポリ(ラクチド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(グリコリド)および電界紡糸アルブミン、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン尿素、絹をベースとするものが挙げられる。本発明で使用される他のマイクロ繊維は、フィブリンマイクロ繊維、コラーゲンまたはコラーゲンベースのマイクロ繊維、ラミニンマイクロ繊維、フィブロネクチンマイクロ繊維、架橋ゼラチンマイクロ繊維、Viney Cによって開示されるような水性タンパク質溶液から製造されるシルクマイクロ繊維などの天然および合成タンパク質マイクロ繊維である。Bell FI(Curr Opin Solid State Mater Sci.8(2005)164?169)だけでなく、無機マイクロ繊維、例えばリン酸ガラスマイクロ繊維、例えば米国特許第8182496号明細書に開示されているP420Ca16Mg24リン酸ガラスマイクロ繊維もまた参照のこと。好ましくは、微小繊維は生分解性および/または生体溶解性である。微小繊維は、弾力性または非弾力性材料であり得る。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、アレイに含まれるマイクロ繊維は不織構造を形成する。繊維は、2つ以上の微小電極および/または1つ以上の他の繊維に接着することが好ましい。好ましくは、微小繊維は微小電極の軸方向の広がりの50%以上に沿って配置される。繊維が生分解性および/または弾力性であることが好ましい。
【0024】
本発明の別の好ましい態様によれば、好ましい種類のマイクロ繊維は電界紡糸繊維である。マイクロ繊維は、ポリエステル、特にポリラクチド、ポリグリコリドまたはそれらの混合物もしくはコポリマー、電気紡糸アルブミン、電気紡糸ゼラチン、電気紡糸フィブリン、糖タンパク質に富む電気紡糸粘液材料からなる群から選択される材料を含むかまたはそれからなることが好ましい。UVB照射を用いて架橋されたゼラチンおよびグルコースのネットを有する装置を提供することは本発明の範囲内である(Davidenko et al.2016、Masutani et al.、2014) S.R.Perumcherry et al. Tissue Eng Part C Methods 17; (2011)1121?30またはPerumcherry et al.によって開示されたもののようなポリ(ラクチド-コ-グリコリド)/フィブリンミクロ繊維のネットを有する。Tissue Eng Part A 19にある。7?8(2012)849?859に記載されている。自己組織化フィブリンネットは、カルシウムが豊富なフィブリノーゲンおよびトロンビンの水溶液を直接微小電極アレイに塗布し、次いで新たに血漿トランスグルタミナーゼおよび/または第XIII因子の水溶液を塗布することによって微小繊維を架橋することによっても製造できる。架橋用ネットを形成した。微小電極またはアレイを接続している、または2つ以上のアレイを接続しているマイクロ繊維は、組織の内方成長を可能にするような方法でまばらに配置される。
【0025】
本発明の第2の好ましい態様によれば、2つ以上の微小電極またはアレイは、水性体液中に溶解または生分解性である生体適合性接着剤によって接続されている。アレイに含まれる繊維は、部分的にまたは全体的に接着剤に埋め込むことができる。
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、生体適合性接着剤は、溶解または分解される前に水性体液と接触すると膨張することができるものである。移植時には、水性体液が接着剤に吸収されます。膨張可能である場合、2つ以上の微小電極の間に配置された接着剤の部分は、膨張段階中にそれらを引き離し、その後に分解/溶解段階が続く。膨張する接着剤は、微小電極偏差制限手段によって許容される限り、微小電極を半径方向外側に最大限に変位させる。接着剤は、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択されるか、またはその群のメンバーを含むことが好ましい。
【0027】
本発明の他の好ましい態様によれば、接着剤は2層以上の接着剤からなるように層状にされ、内層の水性体液中の膨潤および/または溶解および/または分解の速度は好ましくはそれよりも小さい。外層 好ましくは、天然または架橋形態のゼラチンを層材料として使用する。異なる供給源からの天然ゼラチンは、水性環境で評価される膨潤速度および劣化、ブルーム強度、膨潤および溶解の温度依存性などの物理的および化学的特性に関して変動することが知られている。従って、性質の異なるゼラチン層は、異なる天然資源からのゼラチンを用いて提供することができる。
【0028】
周囲の軟組織の抵抗および/または繊維の抵抗に対する半径方向の変位の間、微小電極がゲルによって十分に支持されて押し込まれないことを確実にするために、内層が外層よりも高いブルーム強度を有することが好ましい。ゼラチンまたは他のゲル形成生体適合性接着剤を接着剤で膨潤させることによって微小電極を半径方向に変位させるためには、好ましくは100以上、特に150以上のブルーム強度を有するべきである。外層と内層との組み合わせにおいて、外層は、例えば天然ゼラチンを含むかまたはそれからなり、内層は架橋ゼラチン(cross-linked gelatin)を含むかまたはそれからなる。本発明での使用に好ましい接着剤は、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体およびポリエチレングリコールを含む。
【0029】
内層は架橋されていることが好ましい。架橋ゲルの溶解または分解速度は、対応する非架橋ゲルのそれよりも遅い。分解および/または溶解の速度は架橋度によって制御される。外側ゲル層が完全に分解または溶解しても、架橋された内側層(例えば、グルタルアルデヒドで架橋されたゼラチン層)は微小電極を離して保持することができる。より高いブルーム強度の乾燥接着剤を含む微小電極の一部をより低いブルーム強度の接着剤の水溶液で処理し、次いで乾燥することによって、外層を構築することができる。塗布/乾燥サイクルは所望に応じて繰り返すことができる。この種の層状接着剤は、それらの組織統合に必要な期間中に接着剤によって半径方向に離れて保持された微小電極の組織内への移植から最終固定までの時間を実質的に延長することができる。
【0030】
接着剤は、生分解性繊維の分解に必要とされる時間よりも短いまたは実質的に短い時間内、例えば0.5または0.2、さらには0.1以下の係数で、溶解および/または分解することが好ましい。微小電極の位置安定化を代用することができる組織の内方成長を可能にするために、繊維は最大2または3週間または1か月以内の期間内で生分解性であることが好ましい。
【0031】
本発明の第3の好ましい態様によれば、アレイ微小電極の遠位部分および/または中央部分は目またはループを含む。アレイに属する繊維は、ループまたは目のない微小電極部分上に排他的に配置されることが好ましい。穴およびループの機能は、組織の内部成長を可能にし、それによって組織内の微小電極の位置をさらに安定させることである。穴の代わりにループを配置することは、組織から電極を引き抜くという観点から有利であり、ループの場合、引き抜き時に電極を真っ直ぐにすることが容易になり、それによって組織損傷を回避または少なくとも最小にする。
【0032】
本発明によれば、挿入によって軟組織への移植用に設計されたプロトアレイがさらに提供され、そこから本発明のアレイが移植時に組織内に形成される。プロトアレイはさらに、生体適合性であり、移植の際に体液に溶解する、特に1分、5分または10分以内などの短時間で溶解する剛性材料の外層を含む。
【0033】
特に、外層の硬質材料は、微小電極を接着する接着剤よりも実質的に速く、好ましくは10%の取り込みに必要な時間よりも早く、接着剤による水性体液の実質的な取り込みよりも早く溶解および/または分解する。接着剤による水性体液の20重量%。組み合わせにおける2つのアレイの軸間の距離は、100μm以上、特に200μm以上、好ましくは500μm以上であることが好ましい。
【0034】
アレイに含まれる微小電極の電気的協調は、制御ユニットによるそれらの制御を含む。制御ユニットは、異なる電気的に協働する微小電極を受け取った電気信号を識別することができるソフトウェアを装備している。識別は、信号源、特にニューロンの位置を決定するために使用されることが好ましい。
【0035】
アレイ、プロトアレイ、または2つ以上のアレイの組み合わせの直接移植は、軟組織の外科的切開部にアレイまたはアレイの組み合わせを配置することによって実施することができる。
【0036】
直接移植の代替は、国際公開第2016/032384号パンフレットに開示されているように、カニューレにアレイまたはアレイの組み合わせを配置し、カニューレを軟組織に挿入し、続いてそれを水性ゲルで満たした組織のチャネルに注入または挿入することによる間接移植である。
【0037】
間接移植はまた、本発明のプロトアレイを軟組織に挿入し、そこで水性体液との接触により本発明のアレイに変換されることによっても達成され得る。カニューレ以外の方法によるアレイの植え込みは、糊付けによって、またはその中に組み込むことによってアレイに取り付けられた長方形のガイドを設けることによって容易にすることができる。ガイドは、アレイ軸と実質的に平行にかつそれから近位に延びるように取り付けられる。適切なガイド材料はポリスチレンのような硬質ポリマーを含む。ステンレス鋼などの金属材料も使用することができる。移植中の組織に対する摩擦を減らすために、研磨面を有するガイドを使用することが好ましい。
【0038】
図は、本発明の電極アレイの好ましい実施形態およびそれらの製造における段階を示す。わかりやすくするために、縮尺は合っていない。単一電極および電極アレイの幅は非常に誇張されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1a】フレーム内に固定された溶解可能な支持体上に金属シートを含む本発明のアレイを製造するための材料の組み合わせの上面図である。
図1b】フレーム内に固定された溶解可能な支持体上に金属シートを含む本発明のアレイを製造するための材料の組み合わせの縦断面A‐Aを示す。
図1c】フレーム内に固定された溶解可能な支持体上に金属シートを含む本発明のアレイを製造するための材料の組み合わせの横断面B‐Bを示す。
図1d】フレーム内に固定された、図1aから図1cで示した組み合わせから切り出されたアレイのワークピースを示す。
図2a図1dと同じ方向から見た図において、図1dの部分図を示す。
図2b図2aと同じ方向から見た図において、絶縁材料の層で覆われた図2aのワークピースを示す。
図2c】遠位端子電極部分が絶縁材料を含まない、図2bと同じ方向から見た、図2bのワークピースを示す。
図3a】側面図(図3bの矢印)で電極の遠位部分と中央部分が垂直方向に変位したときの図2cのワークピースを示す。なお、遠位保持ストラップは示されていない、
図3b】遠位近位図(図3aの矢印)における図3aのワークピースを示す。なお、遠位保持ストラップとフレームは示されていない。
図4a図2cと同じ方向から見た図において、電界紡糸繊維のネットワークを含む、図2cのワークピースを示す。
図4b図4aと同じ方向から見た図において、絶縁がない近位端電極部分を有する、図4aのワークピースを示す。
図4c図4bと同じ方向から見た図において、図の基部と遠位端部から、ワークピースの微小電極部分と保持ストラップとを切り離した、本発明の微小電極のアレイの第1の実施形態を示す。
図4d】同じ方向から見た図において、可撓性絶縁リード線を各電極の遠位端部の遠位端に固定して、アレイ制御部と通信を提供するときの図4cの実施形態を示す。
図4e】同じ方向から見た図において、遠位端端子端を絶縁したときの図4cの実施形態を示す。
図5a図4bと同じ方向から見た図において、体液溶解性材料のマトリックスに埋め込まれているアレイの遠位部分および中央部分を有する図4bのワークピースを示す。
図5b図5aと同じ方向から見た図において、軟組織への挿入による移植に適した本発明の微小電極のプロトアレイの第1の実施形態を示す。
図6a】フレームから保持ストラップおよび遠位端子電極部分を切断する際に電界紡糸繊維および電極をゼラチンと接合することによって、物理的に安定化された図4bのワークピースを示す。
図6b図6aと同じ方向から見た図において、図6aのワークピースの微小電極部分を基部から切り離すことによって作られた本発明の微小電極のアレイの第2の実施形態である。
図7a図6aと同じ方向から見た図において、体液溶解性材料に埋め込まれた遠位部分および中央部分を有する、図6aの物理的に安定化されたワークピースを示す。
図7b図7aと同じ方向から見た図において、軟組織への挿入による移植に適した本発明の微小電極のプロトアレイの第2の実施形態を示す。
図7c】同じ方向から見た図であって、図7bの様々なプロトアレイを示す。
図8】組織統合のための3つの穴を含む本発明の微小電極の側面図である。
図9】組織統合のための3つのループを含む本発明の微小電極の側面図である。
図9a】同じ方向から見た図であって、図9aの微小電極のループの拡大図である。
図10】透過的な側面図において、電界紡糸マイクロ繊維の網状構造によって接続された、図8の2つの微小電極アレイの組み合わせを示す。
図11】同じ方向から見た図において、軟組織への直接挿入のためにゼラチンに埋め込まれた図8の2つの微小電極アレイの組み合わせを示す。
図12】同じ方向から見た図において、体液溶解性材料に埋め込まれた図11の組み合わせを示す。
図13】同じ方向から見た図において、本体溶解性材料に埋め込まれた図10の組み合わせを示す。
【実施例1】
【0040】
本発明の微小電極アレイの第一の実施態様の製造を図1aから4cに示す。1枚(シート)の低分子ポリエチレングリコール(PEG:Polyethylene glycol)4の上面に取り付けられた1枚の薄い金箔1は、長方形のフレーム2によって保持されている。上面図で図2aに示されている電極アレイワークピース30は、トレース線3に沿って箔1から切り出される。明確にするために、フォイル1の厚さは図において非常に誇張されている。次いで、PEG4支持体をエタノールに溶解することにより除去する。電極アレイワークピース30(図1および図2)は、円形の遠位端子部分または電極ヘッド9、10、11、12をそれぞれ有する4つの電極本体5、6、7、8を備える。それらの近位端において、電極本体5、6、7、8は、フレーム2によって保持されている長方形の基部16と一体である。アレイワークピース30の遠位端で、アレイワークピース30は、他方の端部でフレーム2に固定された電極ヘッド9、10、11、12の遠位部分から延びる狭い保持ストラップ25によって保持される。
【0041】
次の工程において、ヘッド9、10、11、12および基部16を有する電極本体5、6、7、8は、低圧で化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)プロセスによって適用される絶縁パリレンC層で覆われることにより、完全に絶縁されたワークピース31(図2b)を提供する。パリレンNまたはDのような他の種類のパリレンも使用することができる。膜厚はミクロンの範囲で制御することができる。図2bに示すワークピース31は、4つの絶縁電極本体5’、6’、7’、8’、絶縁遠位ヘッド9’、10’、11’、12、絶縁基部16’、および絶縁保持ストラップ25’を含む。基部16’および保持ストラップ25’によって、完全に絶縁されたワークピース31がフレーム2によって保持される。
【0042】
次の工程において、ヘッド9’、10’、11’、12’および保持ストラップ25からの絶縁はレーザーミリング(Laser Milling)によって除去され、それによって図2cの部分的に絶縁されていないワークピース32が得られる。
【0043】
次いで、電極本体5’、6’、7、8’とヘッドが図3a、3bに示す配置にするように、非絶縁ヘッド9、10、11、12をそれらの平面配置から押し出す。ここで、保持ストラップ25(図3a、図3b)およびフレーム2(図3b)が省略されている。
【0044】
部分的に絶縁されていないワークピース32の絶縁された電極本体5’、6’、7’、8の中央部分を電界紡糸することによって、電極本体5’、6’、7’、8’に及びお互いに接着するポリラクチド・マイクロ繊維17のネットワークが提供される。このようにして得られた不織布付着性繊維網状構造17を含む部分的に断熱されていないワークピース32を図4aに示す。
【0045】
図4bに示す次の工程では、図4aの電極本体5’、6’、7’、8’および基部16’の近位端子部分の絶縁をレーザーミリングによって除去する。このようにして製造されたワークピース34は、絶縁電極本体5”、6”、7”、8”、絶縁フリー電極ヘッド9、10、11、12、および近位の絶縁フリー端子部分18、19、20、21を含む。
【0046】
次の工程において、ワークピース34は、はんだ付けまたは共融解(co-melting)によって、近位の非絶縁の端子部分18、19、20、21に可撓性の絶縁リードを取り付けることによって本発明の微小電極アレイに変形されて、パリレンCの層を適用することによって、端子非絶縁部分を絶縁する。あるいは、絶縁のためにリードの所望の部分にラッカー、シリコーンまたは医療用エポキシを塗布することができる。リード線の他端は、電子制御装置に接続されており、当該電子制御装置は、各電極によって受信された信号を分析し、電極からニューロン刺激信号を放出するためのソフトウェアを含む。制御ユニットは、単一のニューロンの位置を識別し、異なるニューロンによって放出された信号を識別するようにプログラムされている。
【0047】
本発明の第1の微小電極アレイ39は、トレース23に沿ってレーザ切断することによってワークピース34の主要部分を基部16から切断し、同様にヘッド9、10、11、12から保持ストラップ25を切断することによって形成される。図4cのアレイ39は、4つの電極9、5”、18と10、6”、19と11、7”と20と12、8”、21を備え、これら電極は、接着性繊維の不織網状構造によって接続されている。
【0048】
本発明の第1のマイクロアレイ39(ならびに本発明の他の任意のマイクロアレイの電極)の各電極9、6”と10、7”と11、8”と12、9”には、制御ユニット29に接続するための絶縁された可撓性リード27を(体内または体外でもよい)設けることができる。その遠位端において、リード線27は電極9、6”と10、7”と11、8”と12、9”の非絶縁端子部分18、19、20、21に、はんだ付けすることにより、はんだ付け点26(図4d)で取り付けられている。
【0049】
最後のステップで、非絶縁端子部分18、19、20、21と、はんだ付け点26は、パリレンCの真空相堆積によって、またはラッカーまたはシリコーンまたは医療用エポキシの層を塗布することによって絶縁されることにより、対応する絶縁された近位端子部分28を形成する(図4e)。同様に、本発明のアレイまたはプロトアレイに関連する他の任意の微小電極の非絶縁端子部分18、19、20、21およびそのはんだ付け点26を絶縁することができる。
【実施例2】
【0050】
本発明の微小電極アレイの別の実施形態36(図6b)は、図4cのアレイから、そのヘッド9、10、11、12を端子部18、19、20、21のすぐ下の深さまでゼラチンの水溶液に浸漬し、それを溶液から取り出し、乾燥させ、次いで所望の厚さのゼラチン体22が形成されるまで手順を繰り返すことによって製造することができる。あるいは、スプレーコーティングを用いてゼラチン層を塗布することができる。
【0051】
このようにして形成された硬質ゼラチン状層22はワークピース36を物理的に安定化させ、植え込み時の水性体液の取り込み中に膨張する時に、接着剤の膨張力と反力との間の平衡に達するまでアレイの微小電極を半径方向に変位させる。反力は、組織によって、そして最終的には網状繊維構造によって発揮される。
【0052】
別の実施例においては、同じ実施形態36は、保持ストラップ25を切断し、次いで1サイクル以上のゼラチン溶液浸漬、取り出し、および接着剤22、図6aのマトリックス、を含めてそのようにして得られたワークピース35の乾燥を行うことによって、図4bの微小電極アレイワークピース34から製造できる。最後の工程で、ワークピース35の主要部分は、本発明の微小電極アレイの第2の実施形態36(図6b;図6aと同じ構成要素を参照するが、参照番号は特に示されない)を形成するように、トレース23に沿ってレーザービーム切断によって基部2から切断される。
【0053】
別の実施例においては、図7cのアレイ49の接着剤本体は、異なる組成の2つのゼラチン層22、22’を含み、外側層22は天然ゼラチンであり、内側層22’は架橋ゼラチンである。これは、図4cのアレイ39を最初に天然ゼラチンの溶液に浸しそして乾燥し、次にそれを架橋ゼラチンの溶液に浸しそして乾燥することにより製造することができる。あるいは、ゼラチンとグルコースの溶液を塗布して、それをUVB照射によって架橋することによって、製造する。
【実施例3】
【0054】
あるいは、本発明の微小電極アレイは、電極ヘッド9、10、11、12を最初にその端子部分18、19、20、21のすぐ下の深さまでグルコースの濃縮水溶液に浸漬し、溶液からそれを取り出し、それを乾燥し、そしてグルコース溶液からの浸漬、取り出し、乾燥を、近位端子部分18、19、20、21の絶縁を除いて、ワークピース37を埋め込んだグルコースマトリックス24が得られるまで繰り返すことによって、図4bのワークピース34から製造することができる。(図5a;特に参照番号を示していないものは、図4aと同じ要素を示す。)
【0055】
最後の工程において、ワークピース37の主要部分は、本発明の微小電極アレイの第2の実施形態36を形成するように、トレース23に沿ってレーザービーム切断によって基部2から切断される。(図5b;特に参照番号を示していないものは、図4a、5aと同じ構成要素を示す。)
【実施例4】
【0056】
本発明の微小電極アレイのさらに別の実施形態は、最初に電極ヘッド9、10、11、12をその端子部分18、19、20、21のすぐ下の深さまでグルコースの濃縮水溶液に浸漬し、それを溶液から取り出し、それを乾燥し、そして浸漬し、グルコース溶液から取り出し、乾燥させることを、近位端子部分18、19、20、21の絶縁を除いて、ワークピース47が埋め込まれた完全なグルコースマトリックス24が得られるまで繰り返すことによって、ワークピース35(図6a)から製造することができる。(図7a;特に参照番号を示していないものは、図6aと同じ要素を示す。)あるいは、スプレーコーティングを使用してグルコース包埋物を提供することができる。
【0057】
最後の工程において、ワークピース47の主要部分は、本発明の微小電極アレイの第4の実施形態48を形成するように、トレース23に沿ってレーザービーム切断によって基部2から切断される。(図7b;特に参照符号を示していないものは、図6a、7aと同じ構成要素を示す。)
【実施例5】
【0058】
図8に示す本発明の微小電極アレイに使用するための電極40の第1の実施形態は、制御ユニットに電気的に接続するための手段を含む近位端が示されていない絶縁された細長い電極本体41を含む。電極本体14は、組織がその中に成長することを可能にする3つの穴43、44、45を含むことにより、組織内で電極40を位置的に安定させる。遠位端では、電極本体41は絶縁されていない楕円形のヘッド42’(図示せず)になっている。
【実施例6】
【0059】
図9に示す本発明の微小電極アレイに使用するための電極40’の第2の実施形態は、制御ユニットを電気的に接続するための手段を含む近位端が示されていない絶縁細長電極本体41’を含む。電極本体41’は、3つのループ43’、44’、45’を含み、これらは組織がその中に成長することを可能にし、それによって電極40’を組織内で位置的に安定させる。電極本体41’を曲げることによって形成されたループ43’、44’、45’は、電極40’を損傷することなく組織40から引き出すことを可能にする。遠位端では、絶縁電極本体40’は、絶縁されていない楕円形のヘッド42’になっている。
【実施例7】
【0060】
本発明の2つの微小電極アレイ51、56の組み合わせ50を図10に示す。アレイ51、56の各々は、非絶縁電極ヘッド52、53、54、55、アレイ51および57、58、59、60、アレイ56によって識別される図8および/または図9に示す種類の4つの電極を含む。電極は3つの穴61、62、63または2つの目64、65のいずれかを含む。穴61、62、63、64、65の代わりに、図9および9aの1つまたはいくつかのループ44’を電極上に配置することができる。近位端の組み合わせは図示されていないが、各電極は制御ユニット(図示せず)に電気的に接続されており、制御ユニットは他のアレイの信号の分析とは無関係に1つのアレイに関する電極の信号を分析し、分析の結果を視覚的および/またはグラフィカルに提示することができるソフトウェアを含む。アレイ51、56の電極は、エレクトロスピニングによって電極上に配置されたマイクロ繊維66の不織構造によって接続されている。
【実施例8】
【0061】
組織挿入安定性を改善するために、実施例7の微小電極アレイ51、56の組合せ50の中央部分を水性ゼラチン水溶液に浸し、乾燥させてゼラチン71中に完全にまたは部分的に埋め込まれた改変された組合せ70を得る。図11の他のすべての参照番号は、図10で示されたものに対応する要素を指す。物理的安定性を付与することに加えて、ゼラチン71接着剤は、ゼラチン71を溶解する前にそれを膨張させる水性体液との接触時にアレイ51、56の電極を半径方向に変位させるための手段を提供する。拡張によって、アレイ51、56の電極は、半径方向に変位されて、互いにそれらの距離を増加させるようになる。
【実施例9】
【0062】
実施例8の微小電極アレイ51、56の改変された組み合わせ70は、近位端子部分(図示せず)を除いて、炭水化物および/またはタンパク質マトリックス81中に埋め込んで図12の微小電極の80の組み合わせを形成することによってさらに改変することができる。マトリックス層81は、このようにして得られた微小電極アレイ80の組み合わせにさらなる挿入安定性を付加している。それは組織への挿入時に短時間内に溶解する。
【実施例10】
【0063】
実施例7の微小電極アレイ51、56の組み合わせ50は、実施例9の炭水化物/マトリックス60によって、電極と不織繊維を結合するゼラチン接着剤を代用することによって代替的に改変することにより、図13の電極アレイ51、56の組み合わせ90を埋め込んだタンパク質マトリックス81および/または炭水化物を得ることができる。
【0064】
材料および方法について
金属フォイル:フレームに保持された厚さ約2μmの金箔から電極片を切り出した。ストリップに気相堆積によりパリレンC絶縁体を与えた。次に、所望の領域からのレーザービームで加熱することによって絶縁材を除去した。非絶縁遠位ゾーンは、約10μmから約30μmの長さを有していた。その支持を改善するために、フォイルの一面に水またはエタノールのような有機溶媒に溶解可能な材料の層を設けることができる。好ましい支持体材料はエタノールに可溶な低分子量ポリグリコールである。
【0065】
生体適合性接着剤:天然または架橋形態のゼラチンを使用することができる。ゼラチンまたは他のゲル形成生体適合性接着剤を接着剤で膨潤させることによって微小電極を半径方向に変位させるには、100を超える、特に150を超えるブルーム強度を有するべきである。生体適合性接着剤は層状に塗布することができる。内側の層は外側の層よりも高いブルーム強度を持つ必要がある。周囲の軟組織の抵抗および/または繊維の抵抗により、微小電極は、ゲルに押し込まれないように十分にゲルによって支持されている。あるいは、内層は架橋されている。架橋ゲルの溶解または分解速度は、対応する非架橋ゲルのそれよりも遅い。それらの分解速度および/または溶解速度は、それらの架橋度によって制御される。外側のゲル層が完全に分解または溶解しても、内側の層は架橋されている。グルタルアルデヒドは微小電極を離しておくことができる。より高いブルーム強度の乾燥接着剤を含む微小電極の一部をより低いブルーム強度の接着剤の水溶液で処理し、次いで乾燥することによって、外層を構築することができる。塗布/乾燥サイクルは所望に応じて繰り返すことができる。この種の層状接着剤は、それらの組織統合に必要な期間中に接着剤によって半径方向に離れて保持された微小電極の組織内への移植から最終固定までの時間を実質的に延長することができる。
【0066】
エレクトロスピニング:本発明に使用するのに好ましい溶液電界紡糸材料は、架橋ゼラチン、ポリグリコリド、ポリラクチド、およびポリラクチド-コ-グリコリド(ポリグラクチン)、エチレン酢酸ビニルである。
【0067】
参考文献
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- Masutani E M et al., Increasing thermal stability of gelatin by UV induced cross-linking with glucose. Int J Biomater 2014 : 979636.
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
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図2c
図3a
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図4a
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図4e
図5a
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図6a
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図7a
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図10
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図13