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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】微細加工プロセスのための液体マスク
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20220628BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20220628BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20220628BHJP
   B05D 1/40 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G03F7/20
H01L21/30 502D
B32B38/18 Z
B05D1/40 A
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2019530403
(86)(22)【出願日】2017-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 US2017065092
(87)【国際公開番号】W WO2018106904
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/431,116
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(72)【発明者】
【氏名】チャド エー.マーキン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エー.ウォーカー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エル.ヘドリック
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0305996(US,A1)
【文献】国際公開第2016/018880(WO,A1)
【文献】特開2012-011478(JP,A)
【文献】特表2011-519168(JP,A)
【文献】特表2012-518294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0128882(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0132220(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20 - 7/24,9/00-9/02
H01L 21/027
B32B 38/00 - 38/18
B05D 1/00 - 7/26
B82Y 5/00 - 99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームペンリソグラフィー先端部アレイを作成する方法であって、
1)共通基板に固定された複数の先端部を備える先端部アレイを提供すること、ここにおいて、前記共通基板支持体に固定され、前記複数の先端部および前記共通基板の各々は少なくとも半透明の材料を含み、各先端部は1μm未満の曲率半径を有し、前記先端部アレイ、ブロッキング層を含むコーティングされた表面を更に含み、前記コーティングされた表面前記複数の先端部上に配設されており、
2)マスク材料を前記先端部アレイ上にキャスティングして前記先端部アレイ上にマスクを形成し、前記先端部アレイの各先端部の露出部分を提供すること、ここにおいて、前記マスク材料および前記ブロッキング層、毛細管現象を介して相互作用して、前記先端部アレイ上に前記マスクを形成し、かつ各先端部の実質的に均一な露出部分を提供し、及び
3)各先端部の前記露出部分の前記ブロッキング層を除去することによって、各先端部の前記露出部分に開口部を形成すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記共通基板の厚さが、50μm~100μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共通基板の厚さと、前記共通基板を基準とした前記先端部の高さとの合計寸法が、200μm未満である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブロッキング層が、金属、金属酸化物、ポリマー、複合体、セラミック、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブロッキング層が、金属を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属が、金を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ブロッキング層が、金属上の自己組織化単分子層(SAM)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記マスク材料が、油またはポリマーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記マスク材料が、熱可塑性物質を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性物質が、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)またはポリプロピレン(PP)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マスク材料が、液体であり、前記キャスティングすることが、前記液体を前記先端部アレイ上にスピンコーティングすることを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記マスク材料が、固体であり、前記キャスティングすることが、前記先端部アレイへの適用前または適用中に前記固体を液体または半固体に融解させることを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記マスク材料が、フルオロ油を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記フルオロ油が、フッ素化ポリマーまたはフッ素化溶媒を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マスク材料を30℃超の温度まで加熱し、その後任意で、前記先端部アレイへの適用前に室温まで冷却することを更に含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ブロッキング層が、SAM修飾金属を含み、前記マスク材料が、油を含み、任意で前記SAM修飾金属の金属が、Au、Ag、Pt、またはCuを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ブロッキング層が、金を含み、前記マスク材料が、熱可塑性物質を含み、任意で前記熱可塑性物質が、PMMAを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ブロッキング層が、金を含み、かつ表面上に全フッ素置換アルカンチオール自己組織化単分子層を有し、前記マスク層の材料が、全フッ素置換油を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記キャスティングすることが、スピンコーティング、ドロップキャスティング、スプレーコーティング、またはフィルムコーティングすることを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも半透明の材料が、ポリマーを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも半透明の材料が、架橋ポリマーまたはポリマーゲルを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記先端部の材料が、エラストマー性である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記先端部の材料が、可逆的に変形可能である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記先端部の材料が、実質的に透明である、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記先端部の材料が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記PDMSが、トリメチルシロキシ末端ビニルメチルシロキサン-ジメチシロキサンコポリマー、メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、またはそれらの混合物を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記開口部が、30nm~20μmの直径を有する、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記複数の先端部が、1μm~1mmの先端部から先端部の離間をもって配設される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
各先端部が、0.2μm未満の曲率半径を有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記共通基板および前記先端部が各々、約10MPa~約300MPaの圧縮弾性率を有するポリマーを含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ブロッキング層の材料が除去されて、湿式エッチングによって前記開口部が形成される、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ブロッキング層の材料が、金を含み、前記湿式エッチングが、金エッチング液と接触させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
所望される開口部の直径が、エッチング液濃度、エッチング曝露時間、またはそれらの組み合わせの選択によって達成される請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
感光性基板上に印影をサブミクロンスケール印刷するための方法であって、
前記感光性基板を、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法によって調製された先端部アレイの近くまたはそれに接触して配向することであって、前記感光性基板および前記先端部アレイが、互いから1μm以内にあることと
前記先端部アレイの少なくとも1つの先端部を放射線源で照射して、放射線を前記先端部の開口部を通して透過させることと、
前記感光性基板の一部分を前記透過した放射線に露出させて、前記印影を前記感光性基板の表面上に印刷することと、
を含む、方法。
【請求項35】
前記印影が、実質的に均一である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記印影が、1μm未満のサイズを有する、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記感光性基板が、基板層上に配設された感光層を含む、請求項3436のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記感光性基板が、レジスト材料を含む、請求項3437のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援に関する声明
本発明は、エネルギー省によって授与されたDE-SC0000989および空軍科学研究局によって授与されたFA9550-16-1-0150の下、政府の支援によって行われた。政府は、本発明における特定の権利を有する。
【発明の概要】
【0002】
ビームペンリソグラフィー先端部アレイを作成する方法であって、共通基板に固定された複数の先端部を備える先端部アレイを提供することであって、共通基板が、支持体に固定され、複数の先端部および共通基板が各々、少なくとも半透明の材料を含み、各先端部が、1μm未満の曲率半径を有し、先端部アレイが、ブロッキング層を含むコーティングされた表面を更に含み、コーティングされた表面が、複数の先端部にわたって配設される、提供することと、マスク材料を先端部アレイ上にキャスティングして、先端部アレイの各先端部の露出部分を提供するマスクを先端部アレイにわたって形成することであって、マスク材料およびブロッキング層が、毛細管現象を介して相互作用して、先端部アレイにわたってマスクを形成し、各先端部の実質的に均一な露出部分を提供する、形成することと、各先端部の露出部分のブロッキング層を除去することによって、各先端部の露出部分に開口部を形成することとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0003】
感光性基板上に印影をサブミクロンスケール印刷するための方法であって、感光性基板を、本明細書に提供される方法によって調製された先端部アレイの近くまたはそれに接触して配向することであって、感光性基板および先端部アレイが、互いから1μm以内にある、配向することと、先端部アレイの少なくとも1つの先端部を放射線源で照射して、放射線を先端部の開口部を通して透過させることと、感光性基板の一部分を透過した放射線に露出させて、印影を基板表面上に印刷することとを含む、方法もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】本開示の一実施形態に従うビームペンリソグラフィー法の模式図である。
図1B】本開示の一実施形態に従うビームペンリソグラフィー法の模式図である。
図2A】大規模(約15,000のペン)ポリマーペン先端部アレイの実施形態の一部分のSEM画像である。
図2B】ビームペン先端部アレイの実施形態のSEM画像であり、挿入図は、先端部末端に形成された開口部を示す。
図2C図2Bの挿入図に示される単一ビームペン先端部の実施形態の先端部末端のSEM画像である。
図2D】金の層でコーティングされたポリマーペンのアレイ、および金の層の先端部末端に開口部を有するビームペン先端部アレイの実施形態のSEM画像である。
図2E】集束イオンビームアブレーション(FIB)によって形成された開口部を有するビームペン先端部アレイの実施形態のSEM画像であり、挿入図は、開口部の直径が50±5nmであることを示す。
図3A】本開示の一実施形態に従うビームペン先端部アレイを作製する方法の模式図である。
図3B】本開示の別の実施形態に従うビームペン先端部アレイを作製する方法の模式図である。
図4A】先端部アレイの一実施形態において、単回露出下、各ドットが異なるビームペン先端部によって作製された、ドットアレイである。個々のドットの直径は、約209nm(挿入図)である。
図4B】本明細書に記載のビームペンリソグラフィーの一実施形態によって作製されたドットアレイの1つのアレイの光学画像である。
図4C図4BのドットアレイのSEM画像であり、各アレイが10×10個のドットを含有し、各10×10個のドットアレイが単一の先端部によって作製されたことを示す。
図4D】金属蒸発およびレジストリフトオフ後に、本明細書に記載のビームペンリソグラフィーの一実施形態によって作製されたクロムドットアレイのSEM画像であり、ビームペン先端部アレイにおける開口部は、FIBによって形成されている。
図5A】ビームペンリソグラフィーによって作製されたシカゴのスカイラインの、約15,000個の小型化複製の代表的な領域の光学現像されたフォトレジストパターンである。
図5B図5Aの代表的なレプリカの拡大光学画像である。挿入図は、ドットの拡大SEM画像を示す。
図6】(a)ビームペン開口部を製作するための伝統的なプロセスを示す。まず、フォトレジストをスピンコーティングし、その後、乾式および湿式エッチングし、最後にリフトオフを行って、フォトレジストを除去する。(b)液体マスクによる、ビームペン開口部を製作するための新たな方法。まず、フルオロ油層を金ペンアレイa上にスピンコーティングして、液体マスクとして使用する。その後、湿式エッチングを行って金を除去し、濯ぎステップを行ってエッチング液および油を除去する。
図7】マスクでコーティングされた先端部アレイを示す。
図8】開示される方法およびその先端部アレイの様々な四分円を使用して調製された先端部アレイのSEM画像を示す。(a)アレイの中心で均一にエッチングされた650個以上のビームペンを継ぎ合わせたSEM画像(スケールバー100μm)。(b)四分円1、(c)四分円2、(d)四分円3、および(e)四分円4からの、アレイの拡大画像(スケールバー10μm)。(f、g)低エッチング液濃度で1分間に形成された約200nmの開口部。(h、i)より高いエッチング液濃度で1分間に形成された約800nmの開口部。
【発明を実施するための形態】
【0005】
フォトリソグラフィー、スピンコーティング、真空蒸着、および化学エッチングなどの微細加工技術は、ミクロン~ナノメートルの長さ規模の材料のパターン形成における大幅な前進を可能にしている。一般に、これらの技術が大きな領域にわたって適用される場合、(ミリメートル規模での)局所的な均一性が存在するが、ウェーハの片側から別の側まで(数センチメートルにわたって)全体的な不均質性が存在する。そのような変動は、後続する下流の微細加工ステップに対してますます望まれない影響を有し得、これにより、特定の構造を大きな領域にわたって均一な様式で製作するのがほぼ事実上不可能となり得る。系統的で全体的な変動の1つのそのような例は、ウェーハの片側から別の側までの特徴の高さの変化であり得る。この場合、これらの不均等な特徴の上に均等なマスキング層を適用しようと試みると、マスキング層を通して露出される領域に変動がもたらされ得る。いくつかの特徴は過度に露出し、したがってマスクよりも上にある一方で、いくつかの特徴はマスクよりもずっと下にあり、完全に露出されないままである。露出した領域のそのような変動は、最終的には微細加工ステップ(選択的蒸着、化学修飾、エッチングなど)において不均質な構造をもたらし得る。そのような発生を回避するために、特徴の輪郭に適応して、均等に露出した特徴をもたらす方法で不規則な表面をコーティングすることができる、セルフレベリングマスクが本明細書に開示される。
【0006】
ポリマーペンリソグラフィー(PPL)およびビームペンリソグラフィー(BPL)の両方は、多用途なナノリソグラフィー技術であることが証明されている。これらの技術の1つの欠点は、PDMSアレイの製作において使用される不完全なSi鋳型から生じる、錐体対錐体(ペン対ペン)の高さの変動が存在することである。BPLにおいて、これらの変動は複雑化し、開口部サイズの変動をもたらす。金コーティングされたPPLアレイをエッチングして、ビームペンアレイを作製するための現在の方法は、(1)フォトレジストの均一な層を基板上にスピンコーティングすること、(2)トップダウン乾式エッチングを実行して、錐体の先端部を、錐体の基部から所与の高さ露出させること、(3)露出した金の領域(または選択されたブロッキング層)を湿式エッチングすること、および(4)マスキング層をリフトオフして、それを除去することである(図6、(a))。小さな領域(約1,000個以下のペン)にわたって、かつ完全なSi鋳型によって、サブ回折開口部を達成することが可能である。このアプローチを、数平方インチにわたって分散した数100万個の錐体へとスケールアップした場合、アレイにわたる先端部の高さの変動が、大きな開口部(約10μm)を有する領域、開口部を有しない領域、およびこの範囲にまたがる勾配をもたらすために、結果としてもらされるのは、「パッチ状」のアレイである。したがって、錐体の高さの変動における局所的および全体的な変動の両方に適応することができる、エッチングのための新たな方法を開発することが必要である。
【0007】
特徴の高さの変動に注意を向ける1つのアプローチは、各特徴の輪郭に適応し、不規則な表面を均一に露出した特徴でコーティングすることを可能にするセルフレベリングマスクの使用である(図6、(b))。本開示のアプローチは、不規則な厚さを有するマスクを使用して均一な特徴を形成しようと努力する一方で、古典的なフォトリソグラフィー技術は、均等なマスキング層を適用しようと努力するという点で、これは、古典的なフォトリソグラフィーマスクからは区別される。この一般的なアプローチに役立つのは、このプロセスのある時点で、マスキング材料が「流動」し、表面を湿潤させることができる能力である。この期間中、マスクは下にある基板に同調し、毛管力がマスキング材料を錐体特徴の先端部に磁束ピン止めする。
【0008】
典型的なプロトコルには、(a)選択されたマスク材料に基づいて所望される、表面湿潤または表面脱濡れを促進するための基板表面の任意の修飾、(b)マスク材料を流体配合物として(最終マスクは、流体であっても固体であってもよいが、好ましくはキャスティング時に表面の輪郭を湿潤させ、それに同調するための流体またはゲル様材料である)表面上にキャスティング(例えば、スピンコーティング)して、およそ目的の特徴の高さである薄層を適用すること、(c)マスキング材料の粘度を低下させて、ブロッキング層の表面の輪郭へのマスキング材料のコーティングを加速させるための、基板および流体の任意の熱処理、(d)均一に露出した領域への材料蒸着、エッチング、または修飾、ならびに(e)所望される場合、マスキング材料の任意の除去が含まれる。この方法の特徴を、以前の方法(上段)と比較して、図7(中段および下段)に描写する。
【0009】
ブロッキング層は、金属、金属酸化物、ポリマー、セラミック、または複合体を含み得る。ブロッキング層の具体的な例には、Au、Ag、Al、Ti、Cu、Fe、Co、Ni、Zn、Pt、Pd、Pb、および/またはこれらの金属の酸化物もしくは合金(例えば、Al、TiO、ZnO、もしくはFeなど)が含まれる。企図される他のブロッキング層には、ポリマー、ヒドロゲル、ポリマー/微粒子複合体、カーボンナノチューブ、またはグラフェンなどが含まれる。場合によっては、ブロッキング層は、その層の表面上に自己組織化単分子層(SAM)を更に含み得る。場合によっては、ブロッキング層は、マスク材料がブロッキング層の表面を湿潤させる様式(例えば、ブロッキング層がプラズマ洗浄機内で酸化されるか、還元性環境下で研磨されるか、またはポリマーまたは炭素の薄層が適用されるなど)を変化させる処理を受ける。
【0010】
マスク材料は、意図されるエッチング液と非混和性(または難溶性)である様々な固体および液体を含み得る。例には、有機物、シリコーン、または集合的に「フッ素化油」と称される、フッ素化油、ポリマー、もしくはグリースが含まれる。フッ素化(またはより具体的には全フッ素置換)油には、Kyrtox商標の油、例えば、Krytox GPL-100、GPL-107、XHT-1000が含まれる。フッ素化(またはより具体的には全フッ素置換)グリースは、任意のフッ素化油から調製することができる。マスク材料は、ポリマー、例えば、熱可塑性物質を含み得る。具体的に企図されるポリマーには、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリプロピレン(PP)アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ナイロン、ポリ乳酸(PLA)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、異なる分子量および密度のポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、テフロン(PTFE)、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。場合によっては、マスク材料は、PMMAまたはPPなどの熱可塑性物質を含む。
【0011】
SAMおよび/またはブロッキング層は、マスク材料との好適な相互作用を提供して、これら2つの間に毛細管現象(誘引性または反発性)を提供し、先端部アレイの先端部の所望される実質的に均一な露出部分をもたらす材料を含み得る。いくつかの企図される互換性があるSAMおよび/またはブロッキング層ならびにマスク材料には、有機グリースおよびポリマーを有する脂肪族アルカンチオール、Kryotox油を有する全フッ素置換アルカンチオール、シリコン油を有するSiO2コーティングが含まれる。
【0012】
マスク材料をキャスティングすることは、スピンコーティング、ドロップキャスティング、スプレーコーティング、またはフィルム流延することを含み得る。場合によっては、マスク材料は、固体であり、キャスティングすることは、固体を先端部アレイに適用することを含む。場合によっては、マスク材料は、先端部アレイに適用された後に、後続して半固体または液体状態に加熱(例えば、30℃超)または融解される固体である(例えば、薄ポリマーシートをフィルム流延させ、その後シートを融解させて、ペンアレイにわたってコンフォーマルコーティングを提供する)。
【0013】
フルオロ油液体を金コーティングされたアレイ(金は、ブロッキング材料とマスク材料との間の湿潤のために全フッ素置換アルカンチオールで修飾されていてもよい)にわたってスピンコーティングすることによって、油は、錐体の側面を湿潤させ、各金コーティングされた先端部の頂端にまたがるメニスカスを形成する能力を有する。油の重量にも関わらず、表面張力の効果により、油は金表面を湿潤させ、この長さ規模での重力に打ち勝って平均液体レベルより上へと上がらせる。結果として、油は、おそらく三相界面を形成している各錐体の頂端で固定される。金エッチング液の適用時、エッチング液は、三相界面(すなわち、錐体の先端部)で金のみと接触し、金層の溶解を開始する。金層および金に結合する任意の後続する自己組織化単分子層が好都合な表面湿潤現象の原因となるために、金が溶解されて離れるにつれて、油層は均一な様式でこのエッチング面に沿ってアレイ内の各ペンの頂端から後退する。最終的な結果は、非常に大きなドメインにわたるビームペン開口部の生成においてより一層高い均一性を有する能力である。
【0014】
マスク材料は、先端部アレイの表面に適用、例えば、フルオロ油などの液体マスクでスピンコーティングされる。その後、先端部アレイの先端部の露出部分が、ブロッキング層の除去を可能にする条件に曝露され、例えば、より均一な様式で先端開口部を提供するための湿式エッチングステップを受ける。この技術は、実質的に(例えば、10%以内または5%以内または1%の変動をもって)類似した量の先端部がマスクの上に露出され、開口部形成(例えば、湿式エッチング)ステップ中に開口部形成することができるように、マスク材料と先端部アレイのブロッキング層との間の表面張力を利用する。ブロッキング層は、ブロッキング層の除去に好適な任意の手段によって除去することができる。ブロッキング層は、湿式エッチング、プラズマエッチング、イオンエッチング、電気化学エッチング/研磨によって除去することができる。例えば、ブロッキング層が金属を含む場合、金属(例えば、金)は、エッチング液(例えば、金エッチング液)への接触によって除去することができる。企図されるエッチング液には、ヨード系エッチング液溶液、シアン化物エッチング溶液、強塩基性/酸性エッチング液が含まれる。
【0015】
この技術を使用して、3%~9%の開口部直径変動を有する数百万個の先端部BPLアレイ(例えば、1.75インチ×1.75インチの平方ドメイン内の484万個の先端部)を調製することができる。1つの具体的な先端部アレイは、全てのペンの全体的な平均開口部サイズが約354nm×266nmであり、1.75インチ×1.75インチのペンアレイの1つの次元では3%の変動、およびペンアレイの第2の垂直の次元では9%の変動を有した。アレイの四分円に応じて、局所的な平均は、(1、図8、左上)343±63nm×249±60nm、(2、図8、右上)365±nm×270±50nm、(3、図8、中段)、354±51nm×266±45nm、(4、図8、左下)365±52nm×270±50nm、および(5、図8、右下)388±47nm×275±39nmであった。
【0016】
加えて、エッチングされた特徴のサイズは、エッチング条件の変化によって制御することができる。例えば、エッチング液の濃度またはアレイがエッチング液に曝露されたままである時間のいずれかを変化させることによって、BPLアレイ上の開口部サイズを、数百ナノメートルから最大数マイクロメートルまで制御することができる。より低い濃度および高濃度のエッチング液を固定された時間にわたって使用して、それぞれおよそ200nmおよび800nmの開口部が得られる一例を、図8に示す。
【0017】
開示される方法において使用することができるフルオロ油には、フッ素化ポリマー、油、および潤滑剤(例えば、Krytoxからのもの)が含まれる。加えて、開示される方法は、任意でスピンコーティングステップ中の補助のための1つ以上の粘土調節剤の存在下で、フッ素化溶媒を使用して実行することができる。開示される方法はまた、固体材料によっても実行することができ、固体材料は、流動し表面に同調するように、表面湿潤ステップ中にその融点を超えて加熱され、その後、再度凝固させるために任意で冷却される。開示される方法において、相がこの手順の構成要素と非混和性である限り、有機相、水相、またはシリコーン相のゲルまたは液体または油または固体マスクなどの非フッ素化材料が使用されてもよい。例えば、この例では、水性系金エッチング液とともにKrytox GPLの使用が用いられる。
【0018】
ビームペンリソグラフィー
ビームペンリソグラフィー(BPL)は、柔軟なパターン設計、簡便で選択的なペン先端部の対処性、および低い製作費用をもって、大きな領域にわたってサブミクロンの特徴のパターン形成を可能にすることができる。 既に形成されたパターン(すなわち、フォトマスク)しか複製することができない従来のフォトリソグラフィーまたは接触印刷と比較して、BPLは、基板にわたる先端部アレイ10の動作を制御することによって、および/または先端部アレイ10内のペン先端部14のうちの1つ以上を選択的に照射することによって、異なるパターンを作製する柔軟性を提供することができる。したがって、例えば、複数の「ドット」を製作して、任意の特徴を達成することができる。このアプローチは、従来のフォトリソグラフィーにおけるフォトマスク製作に対する必要性およびそれに関連する費用を回避し、スループットが妨げられた逐次プロセスを介して新たなマスターを設計するハードルなく、多くの異なる種類の構造を任意に作製することを可能にする。
【0019】
図1Aおよび1Bを参照すると、BPLの実施形態は一般に、感光性基板、例えば、その上に感光層20がコーティングされた基板を、先端部アレイ10と接触させることと、先端部アレイ10の表面を放射線源(例えば、UV光など)で照射することとを含む。 先端部アレイ10は、複数の先端部14を含む。先端部14は、パターン形成における使用に意図される放射線の波長(例えば、300nm~600nmの範囲内)に対して少なくとも半透明である材料から形成され、好ましくは先端部14は、そのような光に対して透明である。各先端部は、その上に配設されたブロッキング層16を有し得、開口部18は、ブロッキング層16内に画定され、先端部末端を露出させる。ブロッキング層16は、放射線ブロッキング層16として機能し、先端部の材料を通して露出した先端部末端から出るように放射線を誘導する。先端部14を使用して、大規模並列スキャンプローブリソグラフィープロセスにおいて放射線を表面に誘導すること、ならびに先端部と基板との間の距離および先端部の変形の程度などの1つ以上のパラメータを制御することの両方ができる。そのようなパラメータの制御は、近接場効果の利用を可能にする。一実施形態において、先端部14は、エラストマー性で可逆的に変形可能であり、これにより、基板または先端部アレイ10を損傷させることなく、先端部アレイ10を基板に接触させることが可能となる。この接触は、近接場効果の生成を確実にし得る。
【0020】
BPL先端部アレイ
図1Bおよび2A~2Dを参照すると、BPL先端部アレイ10の一実施形態は、先端部基板層12(図1Bを参照されたい)と、先端部基板層12に固定された複数の先端部14(図1Bを参照されたい)とを含む。先端部基板層12および複数の先端部14は、透明なポリマーで形成される。先端部基板層12および先端部14は、同じポリマーで形成されても、異なるポリマーで形成されてもよい。先端部アレイ10は、先端部14の側壁上および隣接する先端部14間の先端部基板層12の一部分上にコーティングされたブロッキング層16を更に含む。図2Bおよび2Cを参照すると、透明なポリマーの先端部末端が開口部18を通して露出するように、開口部18は、先端部末端(例えば、先端部14の各々の感光層20が接触する末端)でブロッキング層16内に画定される。
【0021】
先端部基板層12は、例えば、約50μm~約5mm、約50μm~約100μm、または約1mm~約5mmの範囲内の任意の好適な厚さを有し得る。例えば、先端部基板層12は、約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、または5000μmの最小の厚さを有し得る。例えば、先端部基板層12は、約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、または5000μmの最大の厚さを有し得る。先端部基板層の形成に使用されるポリマーの強剛性の増加に伴って、先端部基板層の厚さを低下させてもよい。例えば、ゲルポリマー(例えば、アガロース)の場合、先端部基板層は、約1mm~約5mmの範囲内の厚さを有し得る。他のより強剛なポリマー(例えば、PDMS)の場合、先端部基板層は、例えば、約50μm~約100μmの範囲内の厚さを有し得る。先端部基板層12と先端部14とを合わせた厚さは、約50μm~約5mmの範囲内であり得る。例えば、ゲルポリマー(例えば、アガロース)の場合、合わせた厚さは、最大約5mmであり得る。例えば、他のポリマー(例えば、PDMS)の場合、合わせた厚さは、約200μm未満、好ましくは約150μm未満、またはより好ましくは約100μm未満であり得る。
【0022】
先端部基板層12は、例えば、ガラス、シリコン、水晶、セラミック、ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせから形成された透明で強剛な支持体に結合され得る。強剛な支持体は、好ましくは高度に強剛であり、かつその上に先端部アレイ10をマウントするための高度に平坦な表面を有する。
【0023】
先端部アレイは、非カンチレバー型であり、かつ必要に応じて任意の形状またはそれらの間の離間(ピッチ)を有するように設計され得る、先端部14を含む。各先端部の形状は、そのアレイの他の先端部14と同じであっても、それとは異なってもよく、好ましくは先端部14は、共通の形状を有する。企図される先端部の形状には、球状、半球状、環状、多面体、円錐体、円柱体、および錐体(三角錐または四角錐)が含まれる。先端部14は、先端部基板層12に固定された基部部分を有する。基部部分は、好ましくは先端部末端部分よりも大きい。基部部分は、約1μm~約50μmまたは約5μm~約50μmの範囲内のエッジ長さを有し得る。例えば、最小のエッジ長さは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、または50μmであり得る。例えば、最大のエッジ長さは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、または50μmであり得る。
【0024】
図2Aを参照すると、好ましい先端部アレイ10は、好ましくは錐体形状を有する数千個の先端部14を含有する。先端部14の基板接触(先端部末端)部分は各々、約50nm~約1μmの範囲内の直径を有し得る。例えば、最小直径は、約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000nmであり得る。例えば、最大直径は、約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000nmであり得る。先端部14の基板接触部分は、各々がサブミクロン(例えば、約500nm未満)のパターンの形成に好適であるように、好ましくは鋭くある。先端部の鋭さは、その曲率半径によって測定される。先端部14は、例えば、約1μm未満の曲率半径を有し、約0.9μm未満、約0.8μm未満、約0.7μm未満、約0.6μm未満、約0.5μm未満、約0.4μm未満、約0.3μm未満、約0.2μm未満、約0.1μm未満、約90nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満であり得る。
【0025】
隣接する先端部14間の先端部から先端部の離間(先端部ピッチ)は、約1μm~約10mm超または約20μm~約1mmの範囲内であり得る。例えば、最小の先端部から先端部の離間は、約1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、または10mmであり得る。例えば、最大の先端部から先端部の離間は、約1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、または10mmであり得る。
【0026】
先端部アレイ10の先端部14は、任意の所望される厚さを有するように設計することができるが、典型的には先端部アレイ10の厚さは、約50nm~約50μm、約50nm~約1μm、約10μm~約50μm、約50nm~約500nm、約50nm~約400nm、約50nm~約300nm、約50nm~約200nm、または約50nm~約100nmである。例えば、最小の厚さは、約50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、または50μmであり得る。例えば、最大の厚さは、約50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、または50μmであり得る。先端部基板層の形成に使用されるポリマーの強剛性の増加に従って、先端部アレイ10の厚さを低下させてもよい。例えば、ゲルポリマー(例えば、アガロース)の場合、先端部アレイ10は、約10μm~約50μmの範囲内の厚さを有し得る。他のポリマー(例えば、PDMS)の場合、例えば、先端部アレイ10は、約50nm~約1μmの厚さを有し得る。本明細書で使用される場合、先端部アレイ10の厚さは、先端部末端から先端部の基部末端までの距離を指す。先端部14は、ランダムに配置されても、規則的で周期的なパターンで(例えば、行もしくは列で、または環状パターンでなど)配置されてもよい。
【0027】
ポリマー先端部の側壁上のブロッキング層16は、放射線ブロッキング層16として機能し、先端部14が固定される表面の反対側の基板層の表面に照射される放射線が、ブロッキング層16内に画定された開口部18によって露出した先端部末端を通してしか発せられないようにする。図1Aに示されるように、放射線が先端部アレイ10の先端部末端18を通して誘導されることによる、レジスト層20で事前にコーティングされた基板の露出は、各露出につき単一のドットの形成を可能にする。ブロッキング層16は、リソグラフィープロセスにおいて使用される放射の種類である、ブロッキング(例えば、反射)に好適な任意の材料で形成され得る。例えば、ブロッキング層16は、UV光とともに使用される場合、金などの金属であってもよい。他の好適なブロッキング層には、金、クロム、チタン、銀、銅、ニッケル、シリコン、アルミニウム、不透明な有機分子およびポリマー、ならびにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ブロッキング層16は、例えば、約40nm~約500nmの範囲内の任意の好適な厚さを有し得る。 例えば、最小の厚さは、約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、または500nmであり得る。例えば、最大の厚さは、約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、または500nmであり得る。
【0028】
先端部アレイ10における使用に好適なポリマー材料は、直線状または分岐状の骨格を有し得、特定のポリマーおよび先端部に所望される圧縮性の程度に応じて架橋されていても、架橋されていなくてもよい。架橋剤は、ポリマー分子間に2つ以上の共有結合を形成することができる多官能性モノマーを指す。架橋剤の非限定な例には、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、ジビニルベンゼン、ジ-エポキシ、トリ-エポキシ、テトラ-エポキシ、ジ-ビニルエーテル、トリ-ビニルエーテル、テトラ-ビニルエーテル、およびそれらの組み合わせなどが含まれる。
【0029】
熱可塑性または熱硬化性ポリマーを使用してもよく、架橋エラストマーを使用してもよい。一般に、ポリマーは、多孔性および/または無晶性であり得る。シリコーンポリマーおよびエポキシポリマーの一般的なクラスのポリマーを含む、様々なエラストマー性ポリマー材料が企図される。例えば、25℃未満またはより好ましくは-50℃未満などの低いガラス転移温度を有するポリマーを使用してもよい。芳香族アミン、トリアジン、および脂環式骨格に基づく化合物に加えて、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを使用してもよい。別の例には、ノボラックポリマーが含まれる。他の企図されるエラストマー性ポリマーには、メチルクロロシラン、エチルクロロシラン、およびフェニルクロロシラン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が含まれる。他の材料には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリアクリルゴム、フルオロシリコーンゴム、およびフルオロエラストマーが含まれる。
【0030】
先端部の形成に使用することができる好適なポリマーの更なる例は、米国特許第5,776,748号、米国特許第6,596,346号、および米国特許第6,500,549号に見出すことができ、これらの各々の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。他の好適なポリマーには、He et al.,Langmuir2003,19,6982-6986、Donzel et al.,Adv.Mater.2001,13,1164-1167、およびMartin et al.,Langmuir,1998,14-15,3791-3795によって開示されているポリマーが含まれる。ポリジメチルシロキサンなどの疎水性ポリマーは、例えば、強力な酸化剤の溶液または酸素プラズマへの曝露によって、化学的または物理的のいずれかで修飾されてもよい。
【0031】
先端部アレイ10のポリマーは、ポリマーゲルであってもよい。ゲルポリマーは、ヒドロゲルおよび有機ゲルを含む任意の好適なゲルを含み得る。例えば、ポリマーゲルは、シリコンヒドロゲル、分岐状多糖類ゲル、非分岐状多糖類ゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリエチレンオキシドゲル、架橋ポリエチレンオキシドゲル、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)(ポリAMPS)ゲル、ポリビニルピロリドンゲル、架橋ポリビニルピロリドンゲル、メチルセルロースゲル、ヒアルロナンゲル、およびそれらの組み合わせであってもよい。例えば、ポリマーゲルは、アガロースゲルであってもよい。重量によって、ゲルはほとんど液体であり、例えば、ゲルは95%超が液体であってもよいが、液体中の架橋ネットワークの存在のために固体のように挙動する。
【0032】
先端部アレイ10の形成に使用される材料は、表面との接触中の先端部の崩壊を防止するために好適な圧縮弾性率および表面硬度を有するが、高すぎる弾性率および大きすぎる表面硬度は、露出中に基板表面に適応し、同調することができない脆性材料をもたらす可能性がある。Schmid,et al.,Macromolecules,33:3042(2000)に開示されるように、ビニルおよびヒドロシランプレポリマーを目的に合わせて、異なる弾性率および表面硬度のポリマーを提供することができる。したがって、別の種類の実施形態において、ポリマーは、ビニルおよびヒドロシランプレポリマーの混合物であってもよく、ビニルプレポリマー対ヒドロシラン架橋剤の重量比は、約5:1~約20:1、約7:1~約15:1、または約8:1~約12:1である。
【0033】
先端部アレイ10の形成に使用される材料は、好ましくはガラス表面のレジスタンスと比較して、1mmの直径を有する硬質の球体の貫入に対する表面のレジスタンスによって測定して、ガラスの約0.2%~約3.5%の表面硬度を有する(Schmid,et al.,Macromolecules,33:3042(2000)at p3044に記載のとおり)。表面硬度は、任意でガラスの約0.3%~約3.3%、約0.4%~約3.2%、約0.5%~約3.0%、または約0.7%~約2.7%であり得る。先端部アレイ10のポリマーは、約10MPa~約300MPaの圧縮弾性率を有し得る。先端部アレイ10は、好ましくは約10MPa~約300MPaの圧力下でフック性である圧縮性ポリマーを含む。先端部アレイ10に発揮される圧力と特徴サイズとの間の直線的な関係は、開示される方法および先端部アレイを使用した近接場および特徴サイズの制御を可能にする(図2Bを参照されたい)。
【0034】
BPL先端部アレイ形成
先端部アレイの先端部分は、従来のフォトリソグラフィーおよび後続する湿式化学エッチングによって調製されるマスターによって作製することができる。 任意の所望される様式で配列された多くの先端部14を収容する鋳型が設計され得る。先端部アレイ10の先端部14は、任意の所望される数であり得、先端部14の企図される数には、約1000個の先端部14から約1500万個の先端部、またはそれ以上が含まれる。先端部アレイ10の先端部14の数は、約100万個超、約200万個超、約300万個超、約400万個超、500万個超の先端部14、600万個超、700万個超、800万個超、900万個超、1000万個超、1100万個超、1200万個超、1300万個超、1400万個超、または1500万個超の先端部であり得る。
【0035】
任意で、先端部14は、ブロッキング層16でコーティングされる前に、例えば、酸素プラズマを使用して洗浄されてもよい。ブロッキング層16は、先端部14をブロッキング層16でコーティングすること、例えば、スピンコーティングすることを含む、任意の好適なプロセスによって先端部14上に配設され得る。
【0036】
ブロッキング層16内の開口部18は、例えば、集束イオンビーム(FIB)法(図2E)を含む任意の好適な方法によって、またはリフトオフ法を使用して、形成され得る。リフトオフ法は、乾式リフトオフ法であり得る。図3Bを参照すると、1つの好適なアプローチは、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)などの接着剤22を、先端部アレイ10のブロッキング層16の上に適用することと、先端部アレイ10を綺麗で平坦な表面、例えば、ガラス表面に接触させることによって、先端部14の基板接触末端に配設された接着剤22材料の一部分を除去することとを含む。その後、先端部14をエッチング溶液に浸漬して、ブロッキング層16の露出部分を除去して、開口部18を形成し、先端部の材料(例えば、透明なポリマー)を露出させることができる。残りの接着剤22材料は、ブロッキング層16の被覆された表面がエッチングステップ中にエッチングされないように保護する。接着剤は、例えば、PMMA、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリアクリロニトリル、およびそれらの組み合わせであり得る。
【0037】
あるいは、図3Aを参照すると、ブロッキング層16を有する先端部アレイ10が、PMMAなどの接着剤22材料でコーティングされたガラススライドまたは他の表面と接触させられる単純な接触アプローチが使用され得る。 他の好適な接着剤22材料には、例えば、PMMA、PEG、ポリアクリロニトリル、およびそれらの組み合わせが含まれる。接着剤22材料でコーティングされた表面からペン先端部を除去する時、接着剤22材料は、ブロッキング層16の接触した部分を除去し、それによって開口部18を画定し、先端部材料、例えば、透明なポリマーを露出させる。
【0038】
上記の開口部18形成方法のいずれかにおいて、形成される開口部18のサイズは、BPL先端部アレイ10の裏側に異なる外力を印加することによって制御することができる。エラストマー性の先端部14の柔軟性の結果として、BPL先端部アレイ10の裏側への力の印加を使用して、先端部14と接着剤22材料表面との間の接触領域を制御することができる。図3Aを参照すると、BPL先端部アレイ10は、錐体状の先端部14を含み得、各錐体形の先端部は、先端部の最末端でブロッキング層16内に画定された小さな開口部18を有する金ブロッキング層16によって覆われている。開口部18のサイズは、先端部毎に著しくは変化しない。例えば、開口部18のサイズは、先端部毎に約10%未満変動し得る。開口部18のサイズは、例えば、接触力を制御することによって、200nmから1~10μmの範囲にわたって目的に合わせることができる。例えば、開口部18は、約5nm~約5μm、約30nm~約500nm、または約200nm~約5μm、さらには30nm~20μmの範囲内の直径を有し得る。例えば、最小の開口部18の直径は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000nmであり得る。例えば、最大の開口部18の直径は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000nmであり得る。接触力は、任意で1cm2のペンアレイ当たり約0.002N~約0.2Nの範囲内であり得る。
【0039】
例えば、錐体形の先端部14のPDMSアレイは、既知の方法によって製作することができる。(17、20)。例えば、各錐体先端部は、数十μmのエッジ長さを有する正方形の基部を有し得、約100nmの先端部直径を有する先端部となり得る。その後、先端部14を含むアレイ全体を、例えば、酸素プラズマによって洗浄し、例えば、熱蒸発法によってブロッキング層16(例えば、金)で覆ってもよい。コーティングは、例えば、約5nmの厚さのTi接着層を有して、約80nmの厚さである金の層を含み得る。その後、先端部アレイ10を、接着剤22材料であるPMMAでコーティングされたガラススライドと接触させ、接着剤22材料は、後続してPDMS先端部14からAu/Ti層を除去し、下にある透明なPDMSを露出させる。
【0040】
パターン形成される表面
BPLによってパターン形成する表面には、任意の好適な基板、および好ましくは放射線への露出によって有利な影響を受ける基板が含まれ得る。例えば、基板は、感光性であっても、感光層20を含んでもよい。例えば、感光性基板または感光層20は、レジスト層であってもよい。レジスト層は、任意の既知のレジスト材料、例えば、SHIPLEY1805(MicroChem Inc.)であり得る。他の好適なレジスト材料には、Shipley1813(MicroChem Inc.)、Shipley1830(MicroChem Inc.)、PHOTORESIST AZ1518(MicroChemicals,Germany)、PHOTORESIST AZ5214(MicroChemicals,Germany)、SU-8、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。感光性材料の他の例には、液晶および金属が含まれるが、これらに限定されない。例えば、基板は、放射線への露出時に還元され得る金属塩を含んでもよい。本明細書に開示される方法における使用に好適な基板には、金属、合金、複合体、結晶性材料、無晶性材料、導体、半導体、光学素子、ファイバー、無機材料、ガラス、セラミック(例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属ケイ化物、およびそれらの組み合わせ)、ゼオライト、ポリマー、プラスチック、有機材料、鉱物、生体材料、生組織、骨、および積層体、ならびにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。基板は、フィルム、薄フィルム、箔、およびそれらの組み合わせの形態であってもよい。基板は、結晶性シリコン、多結晶性シリコン、無晶性シリコン、p-ドープシリコン、n-ドープシリコン、酸化シリコン、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ヒ化リン化ガリウム、酸化インジウムスズ、グラフェン、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない、半導体を含み得る。基板は、非ドープ石英ガラス(SiO)、フッ素化石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウリンケイ酸(borophosphorosilicate)ガラス、有機ケイ酸ガラス、多孔性有機ケイ酸ガラス、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない、ガラスを含み得る。基板は、熱分解炭素、強化炭素複合材、炭素フェノール樹脂、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない、非平坦な基板であってもよい。基板は、炭化シリコン、水素化炭化シリコン、窒化シリコン、炭窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸炭化シリコン、高温用再使用型表面耐熱材、繊維質耐火性複合体耐熱タイル、強化ユニピース繊維質絶縁材耐熱材、低温用再使用型表面耐熱材、高度使用型表面耐熱材、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない、セラミックを含んでもよい。基板は、プラスチック、金属、それらの複合体、それらの積層体、それらの薄フィルム、それらの箔、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない、柔軟な材料を含んでもよい。
【0041】
感光性基板または感光層20は、例えば、約100nm~約5000nmの範囲内の任意の好適な厚さを有し得る。例えば、最小の感光性基板または感光層20の厚さは、約100、150、200、250、300、350、400、450、または500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000nmであり得る。例えば、最大の感光性基板または感光層20の厚さは、約100、150、200、250、300、350、400、450、または500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000nmであり得る。先端部アレイ10によって形成される印影の直径は、使用されるレジスト材料および/または感光性基板または感光層20の厚さを修飾することによって、調節することができる。例えば、同じ放射線条件下では、より厚い感光層は、より大きな直径を有する印影をもたらし得る。一定の感光層の厚さでは、放射線強度の増加は、より大きな直径を有する印影をもたらし得る。
【0042】
パターン形成
BPLは、任意の好適なプラットフォーム、例えば、ハロゲン光源を備えたPark AFMプラットフォーム(XEP,Park Systems Co.,Suwon,Korea)を使用して実行することができる。BPLAの別の例、約360nm~約450nmの範囲内の波長を有する光源を有するZeiss顕微鏡を使用してもよい。Zeiss顕微鏡使用時の先端部アレイ10の動作は、例えば、顕微鏡試料台によって制御することができる。
【0043】
再度図1Aおよび1Bを参照すると、本方法の一実施形態において、透明なポリマー先端部アレイ10を、感光層20、例えば、例えば、SHIPLEY1805(MicroChem Inc.)フォトレジスト材料と接触させ、その後、先端部アレイ10の上表面(基板層)を放射線源に露出させる(例えば、それで照射する)。ブロッキング層16が放射線を(例えば、反射によって)ブロックする結果として、放射線は、透明なポリマーを通して、透明なポリマーが開口部18によって露出される部分(すなわち、先端部末端)から出るように透過する。歴史的に、フォトリソグラフィーは、時にはキセノンなどの貴ガスと組み合わせて、水銀を使用するガス放電灯からの紫外線を使用してきた。これらの放電灯は、紫外線範囲内のいくつかの強度のピークをもって、広スペクトルにわたる光を生成する。このスペクトルは、単一スペクトル線、例えば、「g線」(436nm)または「i線」(365nm)を選択するためにフィルタリングされる。より近年では、リソグラフィーは、エキシマレーザーによって生成することができる「深紫外線」(例えば、300nm未満の波長)へと移動している。フッ化クリプトンは248nmのスペクトル線を生成し、フッ化アルゴンは193nmのスペクトル線を生成する。原理上、本装置および方法とともに使用される放射線の種類は、限定されない。1つの実際的な考慮事項は、ペンアレイ材料との互換性である。約300nm~約600nm、任意で380nm~420nm(例えば、約365nm、約400nm、または約436nm)の波長範囲内の放射線が好ましい。例えば、放射線は、任意で約300、350、400、450、500、550、または600nmの最小波長を有し得る。例えば、放射線は、任意で約300、350、400、450、500、550、または600nmの最大波長を有し得る。
【0044】
感光層20は、任意の好適な時間にわたって、例えば、約1秒間~約1分間にわたって、ポリマー先端部を通して透過した放射線に露出され得る。例えば、最小露出時間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、または60秒間であり得る。例えば、最大露出時間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、または60秒間であり得る。
【0045】
先端部アレイ10および/または基板は、所望される印影を形成するためにパターン形成中に移動してもよい。例えば、一実施形態において、基板が静止して保持されている間に、先端部アレイ10が移動する。別の実施形態において、基板が移動している間に、先端部アレイ10が静止して保持される。更に別の実施形態において、先端部アレイ10および基板の両方が移動する。
【0046】
本方法は、例えば、当該技術分野において既知である任意の好適なプロセスによって感光層20を現像することを更に含み得る。例えば、レジスト層が使用される場合、露出したレジスト層は、MF319(Rohm&Haas Electronic Materials LLC)に約30秒間露出されることによって、現像することができる。レジスト層は、ポジ型レジストであっても、ネガ型レジストであってもよい。ポジ型レジスト層が使用される場合、レジスト層20の現像は、レジスト層の露出部分を除去する。ネガ型レジスト層が使用される場合、レジスト層の現像は、レジスト層の非露出部分を除去する。任意で、本方法は、露出後にパターン形成層を基板表面上に蒸着させること、その後レジスト層をリフトオフすることによって、BPLによってレジスト層に印刷される印影にパターン形成層を形成することを更に含み得る。パターン形成層は、例えば、金属であってもよく、例えば、熱蒸発によって蒸着されてもよい。レジストのリフトオフは、例えば、アセトンを使用して実行してもよい。
【0047】
図4Bおよび4Cを参照すると、BPL先端部の大規模2Dアレイ(1cm当たり15,000個のペン)を使用する場合、BPLを使用して、非常に高スループットのリソグラフィーを行い、数千個の同時に並行して生成されるパターンを得ることができる。例えば、均一な先端部アレイ10を使用することによって、パターンが同じであってもよい。代替的には、例えば、非均一にマスクされた先端部アレイ10、およびパターン形成中の先端部アレイ10の先端部のピッチ寸法を超える横変位を使用することによって、パターンの少なくともいくつかが互いに異なってもよい。図4Dは、約400nmのハロゲン光源および40nmの厚さのレジスト層20を使用して、FIBによって形成された開口部を有するビームペン先端部アレイ10によって形成される、均一なドットアレイを示す。開口部18の直径は、50±5nmであった。クロム蒸発およびレジストのリフトオフ後、111±11nmの直径を有するクロムのドット特徴が生成された。この特徴サイズは、光源の回折限界未満である。
【0048】
BPLの解像度に寄与する別の要因は、先端部から光に露出されるレジストの領域を制御する先端部開口部18のサイズである。図4Aを参照すると、近UV光またはハロゲン光源および従来のフォトリソグラフィー条件によって、約200nmの光回折限界に近いか、またはそれ未満のドットサイズ(図4A挿入図)を作製することができる。図4Aのドットパターンは、約380nm~約420nmの波長を有する放射線を使用して生成した。いかなる特定の理論によっても拘束されることを意図するものではないが、この小さな特徴サイズは、先端部と表面との接触点での近接場効果に起因し得ると考えられる。 図4Aのドットの作製に使用される開口部18は500nmであるにも関わらず、接触領域はより一層小さく、光導体のように振る舞う。フォトリソグラフィー条件の更なる最適化には、例えば、深UV照射、より薄いレジスト層、および高解像度材料の使用が含まれ得、これらは、BPL解像度をサブ100nm範囲まで改善し得る。
【0049】
大型のドットアレイは、例えば、先端部基板層12を通して、先端部14の裏側から先端部アレイ10を照射しながら、表面のアレイをピエゾ台とともに移動させることによって、同時に作製することができる。図4Bおよび4Cに示されるように、6μmの特徴離間を有する10×10の金ドットアレイが生成され得る。 ドットアレイは、90%の最大力光強度、20秒間の露出時間を使用して生成された。特徴は、750±80nmの直径を有する。パターン形成プロセス全体を通して、放射線はオンのまま維持され得る。したがって、先端部アレイ10の横および垂直の移動は、パターン形成が意図されないレジスト領域の露出を最小限にするために、迅速に行われる。例えば、試料にわたる先端部アレイ10の移動は、約10μm/秒~約100μm/秒の範囲内で行われ得る。例えば、基板にわたる先端部アレイ10の最小移動速度は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100μm/秒であり得る。 例えば、基板にわたる先端部アレイ10の最大移動速度は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100μm/秒であり得る。15,000個の先端部14を有する先端部アレイ10を使用して、15,000個のパターンを約30分間で同時に生成することができる(合計150万個の特徴)。
【0050】
図5Aおよび5Bに示されるように、BPLを使用して、182個のドットで構成されるシカゴのスカイラインのパターンの15,000個のレプリカを作製した(図5A)。このパターンの作製に使用される先端部アレイ10は、500nmの直径の開口部を有した。ペンアレイを各スポットに約20秒間保持し、スポット間を60μm/秒の速度で移動することによって、これらの構造を作製した。ドットは、直径450±70nmであり、600nm間隔である(図5B)。
【0051】
BPLアレイ内の個々の先端部14は、選択的照射によって対処され得る。例えば、パターン形成は、アレイ内の先端部14の全てよりも少ない照射で、例えば、先端部アレイ10内の1つまたは選択された複数の先端部14で達成することができる。先端部14の選択的照射は、例えば、各先端部の微視的な基部を通して選択的に集光することによって実行され得る。先端部アレイ10はまた、特定の先端部14の露光をブロックすることができる1つ以上の空間光変調器も含み得る。空間光変調器は、静的および/または動的に制御可能であり得る。例えば、空間光変調器は、シャッターであってもよい。空間光変調器は、例えば、液晶を含む、様々な材料を使用して形成することができる。空間光変調器は、例えば、動的に制御可能ではないマスクであってもよい。 空間光変調器は、先端部基板層12の一部として配置または形成されてもよい。先端部14の基部はミクロン程のエッジ長さを有するため、空間光変調器は、サブミクロンサイズの印影をもたらすのに、ナノスケールで作製される必要はない。むしろ、サブミクロンのパターン形成を可能にするのは、透明なポリマーおよび開口部18を通した放射線の誘導である。先端部の対処性は、SPL法にとって主要な課題である。受動アレイでは、複製が単純に達成され、各先端部は、他の先端部14と全く同じように動作する。多くの異なる作動方法が評価されているが、特にリソグラフィーが主要な目標である場合、成功は限定的である。熱的、機械的、電気的、および磁気的作動は全て、研究されている。BPLでは、複雑かつ大型のアレイにおける各先端部の多重対処性を達成するための簡便な方法として、放射線が使用され得る。
【0052】
例えば、先端部アレイ10を採用し、フォトマスク、例えば、Crフォトマスクを使用して、BPL実験においてオフにしたい錐体基部の全てを被覆してもよい。均質な照射下では、アレイ内の能動的な各先端部を使用して、反復した任意のパターンを製作することができる。放射線源を選択されたBPL先端部14に照射した場合、先端部14の全てが同時に基板と接触するものの、照射下にある先端部14のみがエネルギーを基板に誘導し、レジスト層を露出させることができる一方で、照射されていない他の領域からはパターンは生じない(図4B)。このアプローチは、先端部減衰および先端部移動のための選択的照射を使用した、2つの直交するレベルの制御を可能にする。空間光変調器に結合された場合、各先端部が、異なるパターンを製作するように個々に対処され得る。例えば、先端部アレイ10内の先端部14の一部分が選択的に照射され得、第1のパターンが形成され得る。その後、先端部アレイ10は移動し得、第2のパターンが形成され得る。先端部アレイ10は、第2のパターンステップで様々な異なるパターンを基板上に形成するために、例えば、先端部ピッチと少なくとも等しい距離、移動され得る。例えば、先端部14の選択的照射の結果として、基板の領域は、第1のパターンのみ、第2のパターンのみ、または両方のパターンの組み合わせを含むようになる。
【0053】
パターン形成され得る特徴は、サブ100nm~1mm以上のサイズであり得、先端部アレイ10の露出時間および/または接触圧力を変化させることによって制御され得る。
【0054】
BPL先端部アレイは、先端部アレイ10の形成に使用されるポリマーの圧縮性の性質から生じる圧力依存性を呈し得る。実際、微視的な、好ましくは錐体状の先端部14は、ピエゾを垂直方向に単純に伸長させる(z-ピエゾ)ことによって制御され得る、連続的に増加する印加される圧力量に伴って変形するように作製され得る。先端部アレイ10の制御された変形を調節可能な変数として使用して、先端部と基板との接触領域および結果として得られる特徴サイズの制御を可能にすることができる。接触の圧力は、ピエゾスキャナーのz-ピエゾによって制御することができる。先端部アレイ10に対して発揮される圧力(または力)が大きい程、特徴サイズは大きくなる。したがって、接触時間と接触力/圧力との任意の組み合わせは、約30nm~約1mm以上の特徴サイズの形成のための手段を提供することができる。約5~約25μmのz-ピエゾ伸長によって許容される圧力範囲内において、1秒間の固定接触時間で、ピエゾ伸長と特徴サイズとの間の直線的な関係を観察することができる。先端部アレイの基板層は、先端部14の変形が生じる前に変形し得、これは、緩衝を提供し得、先端部の変形も、意図される特徴サイズの著しい変化もなく、先端部14の全てを表面と接触させる上で追加の耐容性を提供する。先端部アレイ10の接触圧力は、約10MPa~約300MPaであり得る。
【0055】
本明細書に記載の好ましい材料について、約0.01~約0.1g/cmの圧力などの非常に低い接触圧力では、結果として得られる印影の特徴サイズは、接触圧力に依存し、これは、印影の特徴サイズを変化させることなく、基板表面上で先端部アレイ10をレベリングすることを可能にする。そのような低い圧力は、先端部アレイ10がマウントされているピエゾスキャナーのz-ピエゾの0.5μm以下の伸長によって達成可能であり、0.5μm未満のz-ピエゾ伸長によって約0.01g/cm~約0.1g/cmの圧力が印加され得る。この「緩衝」圧力範囲は、先端部アレイ10、基板、またはそれらの両方を操作して、先端部14を圧縮することなく、先端部14と基板表面との間の初期接触を作り出し、その後、(先端部14の内部表面からの光の反射の変化によって観察される)先端部14の圧縮の程度を使用して、先端部14と基板表面との間に均一な程度の接触を達成することを可能にする。先端部アレイ10の先端部14の非均一な接触は、非均一な印影をもたらし得るため、このレベリング能力は重要である。先端部アレイ10の先端部14の大きな数(例えば、本明細書に提供される一例では、1100万個)およびそれらの小さなサイズを考慮すると、実際問題として、先端部14の全てが表面と接触しているかを決定的に知ることは困難または不可能であり得る。例えば、先端部もしくは基板表面の欠陥、または基板表面の不規則性によって、他の全ての先端部14が均一に接触しているのに、単一の先端部が接触しなくなる可能性がある。したがって、開示される方法は、先端部14の少なくとも実質的に全てが、基板表面と(例えば、検出可能な程度)接触していることを提供する。例えば、先端部14の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%が、基板表面と接触していることになる。
【0056】
先端部アレイ10および基板表面の互いについてのレベリングは、先端部アレイ10および先端部基板層12の透明または少なくとも半透明の性質によって補助され得、これは、先端部アレイ10の上部(すなわち、先端部14および共通基板の基部の背後)から基板表面を通して向けられる光の反射の変化の検出を可能にする。先端部アレイ10の先端部14から反射される光の強度は、基板表面との接触時に増加する(例えば、先端部アレイ10の内部表面は、接触時に異なる様式で光を反射する)。各先端部での光の反射の変化を観察することによって、先端部アレイ10および/または基板表面は、先端部アレイ10の先端部14の実質的に全てまたは全てが基板表面に接触することをもたらすように調節することができる。したがって、先端部アレイ10および共通基板は、好ましくは基板表面との接触時の先端部14の光反射の変化の観察を可能にするように、半透明または透明である。同様に、先端部アレイ10がマウントされる任意の強剛なバッキング材料もまた、好ましくは少なくとも透明または半透明である。
【0057】
先端部14の接触時間は、約0.001秒間~約60秒間であり得る。例えば、最小接触時間は、約0.001、0.01、0.1、1、10、20、30、40、50、または60秒間であり得る。例えば、最大接触時間は、約0.001、0.01、0.1、1、10、20、30、40、50、または60秒間であり得る。接触力は、ピエゾスキャナーのz-ピエゾを変化させることによって、または先端部アレイ10にわたる制御された力の印加を可能にする他の手段によって制御することができる。
【0058】
基板表面は、先端部アレイ10と複数回接触してもよく、先端部アレイ10、基板表面、またはそれらの両方は、基板表面の異なる部分の接触を可能にするように移動する。各接触ステップの時間および圧力は、所望されるパターンに応じて、同じであっても異なってもよい。印印影またはパターンの形状には、実際的な制限はなく、ドット、線(例えば、個々のドットから、もしくは連続的に形成される直線もしくは曲線)、事前に選択されたパターン、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0059】
開示される方法から生じる印影は、高い程度の同一性を有し、したがって、サイズ、および好ましくは形状においても均一または実質的に均一である。個々の印影の特徴サイズ(例えば、ドットまたは線の幅)は、高度に均一であり、例えば、約5%、または約1%、または約0.5%の耐容性以内である。耐容性は、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、または約0.1%であり得る。特徴サイズおよび/または形状の非均一性は印影の粗さをもたらし得、これはサブミクロン型のパターン形成にとって望ましくない可能性がある。
【0060】
特徴サイズは、約10nm~約1mm、約10nm~約500μm、約10nm~約100μm、約50nm~約100μm、約50nm~約50μm、約50nm~約10μm、約50nm~約5μm、または約50nm~約1μmであり得る。特徴サイズは、1μm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約200nm未満、約100nm未満、または約90nm未満であり得る。
【0061】
ビームペンリソグラフィーのためのシステム
BPLのためのシステムは、経路と、その経路内に配設された本明細書に開示される先端部アレイに放射線を発するための照射源とを含み得、放射線が先端部の開口部が露出した先端部末端を通して発せられるように、放射線は先端部基板層の上に入射する。システムは、先端部アレイとの選択的な接触のために配設された基板台を更に含み得る。基板台は、例えば、ピエゾ台であり得る。先端部アレイは、本明細書に記載のパターン形成法を実行するために、任意で放射線源および/または基板台に動作可能に結合されてもよい。本装置はまた、放射線源と先端部アレイとの間の放射線経路内に配設された、アレイ内の個々の先端部14の選択的な照射のための1つ以上の空間光変調器も含み得る。例えば、システムは、入射放射線を選択的に反射するように、またはそれを先端部基板層および先端部(複数可)へと通過させるように、個々にかつ動的に制御可能な空間光変調器のアレイを含み得る。空間光変調器は、BPL先端部アレイ10に結合されてもよい。 例えば、空間光変調器は、先端部アレイ10の先端部基板層12上に配設されてもよい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
図8