IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社都ローラー工業の特許一覧

<>
  • 特許-塗布ロール及び塗布装置 図1
  • 特許-塗布ロール及び塗布装置 図2
  • 特許-塗布ロール及び塗布装置 図3
  • 特許-塗布ロール及び塗布装置 図4
  • 特許-塗布ロール及び塗布装置 図5
  • 特許-塗布ロール及び塗布装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】塗布ロール及び塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20220628BHJP
   B05C 1/08 20060101ALI20220628BHJP
   B05C 21/00 20060101ALI20220628BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20220628BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B05C1/02 102
B05C1/08
B05C21/00
B05D1/28
H05K3/28 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020042070
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021142470
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391052622
【氏名又は名称】株式会社都ローラー工業
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】町田 成司
(72)【発明者】
【氏名】町田 成康
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00- 3/20
B05C7/00-21/00
B05D1/00- 7/26
H05K3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を挟んだ対向位置に配置して使用される塗布ロールであって、
前記基材の幅方向に長い芯材と、
前記芯材の外周に設けられたロール状の塗布部と
前記芯材の外周であって、前記塗布部の長手方向両外側に当該塗布部と間隔をあけて設けられた、当該塗布部とは別体のロール状の当接部を備え、
前記当接部は、前記基材への塗料の塗布時に、当該基材を挟んだ対向位置に配置された他の塗布ロールの当接部に当接する、
ことを特徴とする塗布ロール。
【請求項2】
請求項1記載の塗布ロールにおいて、
塗布部と当接部のそれぞれの間に一つ又は二つのこぼれ止めが設けられた、
ことを特徴とする塗布ロール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の塗布ロールにおいて、
塗布部がゴムロールである、
ことを特徴とする塗布ロール。
【請求項4】
基材に接触する少なくとも二つの塗布ロールと、当該塗布ロールに供給される塗料の余剰分をかき落とすドクターバーを備えた塗布装置において、
前記塗布ロールとして請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の塗布ロールが設けられた、
ことを特徴とする塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材への塗料の塗布に用いる塗布ロールと、当該塗布ロールを備えた塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板やフィルム、シート、板、パネル等の基材の表面に、レジスト塗料や導電塗料、絶縁塗料、保護塗料、強化塗料、UV光遮光塗料、帯電防止塗料、着色塗料、機能性コーティング剤等の塗料が塗布されることがある。一例としては、プリント配線基板やその表面の銅箔にレジストを塗布する場合があげられる。
【0003】
従来、基材に塗料を塗布する装置として、基材に接触する二つの塗布ロールと、当該塗布ロールに供給される塗料の余剰分をかき落とすドクターバーを備えたものが知られている(特許文献1)。
【0004】
前記塗布装置では、保持具で保持された基材が対向する二つの塗布ロール間を移動する際に基材の両面に塗布ロールが接触し、その塗布ロール表面の塗料が基材に転写することで基材に塗料が塗布される。
【0005】
前記塗布装置に用いられる塗布ロールは、図6(a)に示すように、芯材Aと芯材Aの外周に塗布部B1と当該塗布部B1よりも大径の当接部B2を備えたロールBを備えている。
【0006】
前記当接部は塗布部よりも大径であり、両者の間に0.1~0.3mm程度の段差Xができるように構成されている。このような段差Xを設けることによって塗布部と基材の間に液だまりが形成され、この液だまりに貯まる塗料の量を調整することで塗りむらの少ない平滑な塗膜を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-20287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前記塗布装置では、対向する二つの塗布ロールが基材に接触する際に当接部に圧力がかかり、それぞれの塗布ロールが図6(b)に二点鎖線で示す方向に湾曲する。湾曲の程度はコンマ数ミリ程度であるが、湾曲によってロール中心部にたまる塗料の量が外側よりも多くなり、その結果、基材に形成された塗膜の厚さが幅方向外側から中心部分に向けて次第に厚くなることがあった。
【0009】
これまでは、この程度の平滑性でも十分と考えられていたが、5G時代を控えた昨今では、フレキシブル基板の高密度化が進んでおり、塗膜の平滑性の要求がこれまで以上に高まっている。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、従来の塗布ロールを用いる場合に比べて、平滑性に優れた塗膜を形成することのできる塗布ロールと、当該塗布ロールを備えた塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[塗布ロール]
本発明の塗布ロールは、基材を挟んだ対向位置に配置して使用される塗布ロールであって、基材の幅方向に長い芯材と、芯材の外周に設けられたロール状の塗布部と、芯材の外周であって、前記塗布部の長手方向両外側に当該塗布部と間隔をあけて設けられた、当該塗布部とは別体のロール状の当接部を備え、当接部は、前記基材への塗料の塗布時に、当該基材を挟んだ対向位置に配置された他の塗布ロールの当接部に当接するようにしたものである。
【0012】
[塗布装置]
本発明の塗布装置は、基材に接触する少なくとも二つの塗布ロールと、当該塗布ロールに供給される塗料の余剰分をかき落とすドクターバーを備えた塗布装置であって、当該塗布ロールとして本発明の塗布ロールが設けられたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塗布ロールは、塗布部と当接部が離れており、両当接部間の距離が従来の塗布ロールに比べて長くなるため、塗布部の湾曲が緩やかになる。この結果、塗布部の中心部と外側部の塗料の量の差が少なくなり、従来の塗布ロールを用いる場合に比べて、平滑性に優れた塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の塗布ロールの一例を示す正面図。
図2】本発明の塗布装置の一例を示す斜視図。
図3】(a)は図2に示す塗布装置の平面図、(b)は(a)のIIIb-IIIb断面図。
図4】本発明の塗布ロールの他例を示す正面図。
図5】(a)は本発明の塗布装置の他例を示す斜視図、(b)は(a)の平面図。
図6】(a)は従来の塗布ロールの正面図、(b)は二つの塗布ロールで基材を押圧した場合の塗布ロールの撓み方の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(塗布ロールの実施形態)
本発明の塗布ロール10の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。一例として図1に示す塗布ロール10は、芯材1の外周に塗布部2と当該塗布部2よりも大径の当接部3を備えている。塗布部2と両当接部3は別体であり、両当接部3が塗布部2の長手方向両外側に間隔(隙間S)をあけて設けられている。
【0016】
前記芯材1は、塗布部2及び当接部3を支持する部材である。芯材1には鉄芯など、既存のものを用いることができる。芯材1は無垢材でも中空材(パイプ材)でもよい。
【0017】
前記塗布部2は、芯材1の外周に設けられたロール状の管部材である。この実施形態では塗布部2としてゴムロールを用いている。ゴムロールには天然ゴム及び合成ゴムが含まれる。図示は省略しているが、塗布部2の外周面には格子状やピラミッド状、螺旋状といった各種形状の凹凸(セル)設けられている。セルの形状は一例でありこれ以外であってもよい。
【0018】
前記当接部3は、塗布部2とは別体のロール状部材である。この実施形態では塗布部2と同様のゴムロールを用いている。この実施形態では、当接部3が塗布部2の長手方向両外側に一つずつ(合計二つ)設けられている。当接部3は、塗布部2よりも直径で0.2~0.6mm程度大径にしてある。この寸法は一例であり、これ以外の大きさであってもよい。
【0019】
この実施形態では、塗布部2とその長手方向両側のそれぞれに隙間Sをあけて当接部3を配置してある。この隙間Sは、後述するこぼれ止め4を配置するためのスペースである。この実施形態では、隙間Sを幅28mmのこぼれ止め4が一つ収まる広さとしてある。この隙間Sは幅28mmのこぼれ止め4が二つ収まる広さとすることもできる(図4参照)。
【0020】
なお、図示は省略しているが、従来の塗布ロール10と同様、本発明の塗布ロール10も、一端側に駆動モータに接続されたギヤが設けられるとともに、他端側がベアリングで回転可能に軸支されて使用される。
【0021】
(塗布装置の実施形態)
本発明の塗布装置20の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。一例として図2及び図3(a)(b)に示す塗布装置20は、二本の塗布ロール10と、各塗布ロール10の周方向外側に配置されたドクターバー5と、各塗布ロール10の塗布部2の長手方向外側に配置されたこぼれ止め4(塗布部用こぼれ止め4a)を備えている。
【0022】
この実施形態では、二本の塗布ロール10として図1に示す塗布ロール10を用いている。図1の塗布ロール10についてはすでに説明済みであるため、ここでは説明を省略する。なお、本発明の塗布装置20には、二本以上の塗布ロール10が用いられる場合もある。
【0023】
前記ドクターバー5は、各塗布ロール10の外周に当接して当該塗布ロール10との間に塗料貯留部を形成するとともに、塗布ロール10に供給された塗料の余剰分をかき落とす役割を果たす平板状の部材である。この実施形態のドクターバー5は、塗布部2の長手方向両端に塗料を供給できる長さ、且つ両当接部3に到達しない長さとしてある。
【0024】
前記塗布部用こぼれ止め4aは、塗料貯留部に貯留した塗料が外側にこぼれるのを防止するための部材である。各塗布部用こぼれ止め4aは塗布部2の長手方向の端面に近接又は当接するようにしてある。
【0025】
なお、従来の塗布装置と同様、本発明の塗布装置20も、各塗布ロール10、ドクターバー5及びこぼれ止め4が図示しない駆動手段によって互いに近接又は当接するようにしてある。
【0026】
具体的には、基材Pを通過させるときには両塗布ロール10間を当該基材Pが通過可能な程度の間隔にすることができ、基材Pに塗料を塗布するときには両塗布ロール10の塗布部2が基材Pに接触あるいは近接する程度の間隔にすることができるようにしてある。
【0027】
(塗布装置のその他の実施形態)
前記塗布装置の実施形態では、塗布部2にのみ塗料が供給されるようにしてあるが、当接部3の摩耗を抑制するため、当接部3にも塗料が供給されるようにしてもよい。この場合、図4に示す塗布ロール10を用いることができる。
【0028】
図4に示す塗布ロール10は、塗布部2と当接部3の隙間Sを幅28mmのこぼれ止め4が二つ収まる広さとしたものである。図4に示す塗布ロール10を用いる場合、ドクターバー5として、図5(a)(b)に示すような、両当接部3の外側の端面よりも外側に突出する長さのドクターバー5を用いる。
【0029】
当接部3にも塗料が供給されるようにする場合、図5(a)(b)に示すように、各当接部3の内側と外側のそれぞれに塗布部用こぼれ止め4aと同様のこぼれ止め(当接部用こぼれ止め4b)を設ける。各当接部3とドクターバー5の間に貯留される塗料は、両当接部用こぼれ止め4bによって外側にこぼれるのが防止される。
【0030】
本発明の塗布ロール10及び塗布装置20を用いることで塗布部2の湾曲が抑えられ、従来の塗布ロール及び塗布装置を用いる場合よりも塗膜の平滑性が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の塗布ロール10及び塗布装置20は、各種基材Pへの塗料の塗布に用いることができ、特に、フレキシブル基板Pにレジストを塗布するような場合に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 芯材
2 塗布部
3 当接部
4 こぼれ止め
4a 塗布部用こぼれ止め
4b 当接部用こぼれ止め
5 ドクターバー
10 塗布ロール
20 塗布装置
A 芯材
B ロール
B1 塗布部
B2 当接部
P フレキシブル基板(基材)
S 隙間
X 段差
図1
図2
図3
図4
図5
図6