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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】測定部構造及びこれを用いた測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
G01B5/00 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020088785
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183916
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】596070168
【氏名又は名称】株式会社ダイヤ精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 徳志
(72)【発明者】
【氏名】小口 裕司
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-206902(JP,A)
【文献】特開2014-006232(JP,A)
【文献】特開2003-090718(JP,A)
【文献】特開2003-279304(JP,A)
【文献】特開2011-242300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定子と、
前記測定子の後方に配置され、幅方向両側の一対の当接部においてそれぞれ前記測定子に当接することにより前記測定子を軸線方向に変位可能な態様で支持する支持体と、
前記測定子の後部に接続されて、前記測定子が前記一対の当接部に当接しながら前記軸線方向に変位可能となる態様で、前記測定子を後方から保持する保持部材と、
を具備する、測定部構造。
【請求項2】
前記支持体には、前記一対の当接部の間に後方へ開いた間隙が設けられ、
前記保持部材は、前記間隙を通って後方へ延在し、前記当接部よりも後方の位置で前記支持体に対して直接若しくは間接的に取り付けられる、
請求項1に記載の測定部構造。
【請求項3】
前記保持部材は、前記測定子の前後方向の並進及び軸線方向の傾動が少なくとも既定の範囲内において可能となる態様で、前記測定子を保持する、
請求項1又は2に記載の測定部構造。
【請求項4】
前記保持部材は、前記測定子に固定されるとともに、前記測定子の後方にある係止部に対して前記測定子の前後方向の並進及び前記軸線方向の傾動を可能にする遊びを持って係止される、
請求項2又は3に記載の測定部構造。
【請求項5】
前記保持部材は、前記係止部に対して係脱可能に構成される、
請求項4に記載の測定部構造。
【請求項6】
前記支持体は、本体部と、前記幅方向に相互に間隔を有して前記本体部に取り付けられ、それぞれ軸線方向に延在する前記当接部を備える一対の当接部材と、を含む、
請求項1-5のいずれか一項に記載の測定部構造。
【請求項7】
前記当接部材は、前記本体部に対して着脱可能に取り付けられる、
請求項6に記載の測定部構造。
【請求項8】
前記本体部には、前記一対の当接部材をそれぞれ挿脱可能に取り付ける軸穴が形成される、
請求項7に記載の測定部構造。
【請求項9】
前記支持体は、前記当接部よりも前方に突出する部分がカットされた平坦な形状部分を備える、
請求項1-8のいずれか一項に記載の測定部構造。
【請求項10】
請求項1-9のいずれか一項に記載の前記測定部構造を有する測定ヘッドと、前記測定ヘッドを前記測定子の前後方向に移動可能に構成する駆動機構と、前記測定ヘッドの前記前後方向の位置に応じた値を示す表示部と、
を具備する測定装置。
【請求項11】
前記測定ヘッドとして、前記測定部構造を有する第1の測定ヘッドと、及び、前記第1の測定ヘッドの前記測定子に対して相互に対面若しくは背反する姿勢で配置された前記測定子を備えた前記測定部構造を有する第2の測定ヘッドとを有し、
前記駆動機構は、前記第1の測定ヘッドと前記第2の測定ヘッドを相互に前記前後方向に接近若しくは離反可能に構成し、
前記表示部は、前記値として、前記第1の測定ヘッドと前記第2の測定ヘッドとの間隔に対応した値を示す、
請求項10に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定部構造及びこれを用いた測定装置に係り、特に、ねじの内径や外径の測定に好適な測定部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定子を測定対象に接触させて寸法を計測する各種の測定装置が用いられている。例えば、以下の特許文献1には、ピン1,2の先端にボール35を取り付けた測定子を一対のアンビル9と10に設け、これらの一対の測定子によって測定対象である雌ねじの内径を測定する測定器が開示されている(図3等参照)。
【0003】
また、特許文献2には、係止溝40の両側に跨ぐ態様のホルダー38を遊びを持って貫通孔39に挿通させることにより、V字状の係止溝40内に配置される球状の測定子37を保持した、ボールねじの有効径測定装置が開示されている(図10図12等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-275001号公報
【文献】特開2002-206902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示された測定装置では、測定子35がピン1,2を介してアンビル9,10に固定されているため、測定子35が雌ねじに合わせて変位し難いため、雌ねじにリード誤差等が存在した場合には、ねじの有効径を正確に測定できないという問題がある。
【0006】
一方、上記特許文献2に開示された測定装置では、測定時において、係止溝40の幅方向には左右の溝内面に対する当接により固定されるものの、測定子37がホルダー38に対して遊びを持って保持されているので、係止溝40の軸線方向(ボール転動溝のリード方向)には僅かではあるが変位可能に構成される。このため、ボールねじに合わせて測定子37がリード方向に変位できることから、リード誤差があっても正確に測定できる。
【0007】
しかしながら、この測定装置では、ホルダー38が係止溝40の外側前方に配置されているため、ボールねじとホルダー38との干渉が生じやすくなり、好適な測定動作が実現できない場合がある。特に、測定子37の変位量を確保するためにホルダー38と貫通孔39との間の遊びを大きく採ると、上記干渉がさらに生じやすくなる。
【0008】
そこで、本発明は上記問題に対処するものであり、その課題は、測定子の変位量の確保と好適な測定動作とを実現することのできる測定部構造及びこれを用いた測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る測定部構造は、測定子と、前記測定子の後方に配置され、幅方向両側の一対の当接部においてそれぞれ前記測定子に当接することにより前記測定子を軸線方向に変位可能な態様で支持する支持体と、前記測定子の後部に接続されて、前記測定子が前記一対の当接部に当接しながら前記軸線方向に変位可能となる態様で、前記測定子を後方から保持する保持部材と、を具備する。本発明によれば、測定子は、その後方にある支持体の幅方向両側の一対の当接部による当接によって軸線方向に変位可能な態様で支持される一方で、測定子が保持部材により後方から保持されるとともに、この保持部材は、前記測定子が前記一対の当接部に当接しながら前記軸線方向に変位可能となる態様で前記測定子を保持する。これにより、測定子は、保持部材により後方から保持されるため、従来構造のように、係止溝の前方にある保持部材(ホルダー38)と測定対象(ボールねじ)との干渉が発生しなくなるので、好適な測定動作が可能になる。また、測定子を後方から保持部材により保持するので、測定子の軸線方向の移動可能な範囲を比較的大きく設定しても上記干渉を生ずるおそれがないことから、測定子の軸線方向の変位量を確保できるため、測定対象に形状誤差があってもこれに合わせて測定子を移動させることができるので、正確な測定が可能となる。
【0010】
本発明において、前記支持体には、前記一対の当接部の間に後方へ開いた間隙が設けられ、前記保持部材は、前記間隙を通って後方へ延在し、前記当接部よりも後方の位置で前記支持体に対して直接若しくは間接的に取り付けられることが好ましい。これによれば、保持部材の支持体に対する取付位置を一対の当接部よりも後方に設定することにより、保持部材の長さを確保できるので、保持部材を介して保持された測定子の軸線方向の可動範囲を大きく設定しやすくなるため、測定子の変位量を十分に確保できるとともに、測定子をスムーズに移動させやすくなるため、さらに良好な測定動作を実現できる。
【0011】
本発明において、前記保持部材は、前記測定子の前後方向の並進及び軸線方向の傾動が少なくとも既定の範囲内において可能となる態様で、前記測定子を保持することが好ましい。このとき、前記保持部材は、前記測定子に固定されるとともに、前記測定子の後方にある係止部に対して前記前後方向の並進及び前記軸線方向の傾動を可能にする遊びを持って係止されることが望ましい。ここで、前記保持部材は、前記係止部に対して係脱可能に構成されることがさらに望ましい。
【0012】
本発明において、前記支持体は、本体部と、前記幅方向に相互に間隔を有して前記本体部に取り付けられ、それぞれ軸線方向に延在する前記当接部を備える一対の当接部材と、を含むことが好ましい。ここで、前記当接部材は、柱状であることが好ましく、特に、円柱状であることが望ましい。また、上記当接部材は、前記本体部に対して着脱可能に取り付けられることが好ましい。前記本体部には、前記一対の当接部材をそれぞれ挿脱可能に取り付ける軸穴が形成されることが望ましい。
【0013】
本発明において、前記支持体は、前記当接部よりも前方に突出する部分がカットされた平坦な形状部分を備えることが好ましい。例えば、前記当接部を備える上記当接部材を設ける場合には、前記当接部材は、前記当接部よりも前方に突出する部分がカットされた平坦な形状部分を備えることがさらに望ましい。また、この場合において、前記本体部も、前記当接部よりも前方に突出する部分がカットされた平坦な形状部分を備えることがさらに望ましい。これらにおいて、上記平坦な形状部分は、上記当接部の前後方向の位置に一致する部分であってもよいが、上記当接部よりも前方の位置に一致する部分であっても構わない。
【0014】
次に、本発明に係る前記測定部構造を用いた測定装置は、前記測定部構造を有する測定ヘッドと、前記測定ヘッドを前記前後方向に移動可能に構成する駆動機構と、前記測定ヘッドの前記前後方向の位置に応じた値を示す表示部と、を具備する。ここで、前記測定ヘッドとして、前記測定部構造を有する第1の測定ヘッドと、及び、前記第1の測定ヘッドの前記測定子に対して相互に対面若しくは背反する姿勢で配置された前記測定子を備えた前記測定部構造を有する第2の測定ヘッドとを有し、前記駆動機構は、前記第1の測定ヘッドと前記第2の測定ヘッドを相互に前記前後方向に接近若しくは離反可能に構成し、前記表示部は、前記値として、前記第1の測定ヘッドと前記第2の測定ヘッドとの間隔に対応した値を示すことが好ましい。
【0015】
本発明において、前記第1の測定ヘッドの前記測定子と、前記第2の測定ヘッドの前記測定子とが相互に前記軸線方向にずれた位置に配置され、前記表示部は、前記値として、ねじの有効径の値を示すように構成されることが望ましい。
【0016】
本発明において、前記第1の測定ヘッドの前記測定子と、前記第2の測定ヘッドの前記測定子とが相互に背反する姿勢で相互に前記軸線方向にずれた位置に配置され、前記表示部は、前記値として、ねじの内径の値を示すように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定子の変位量の確保と好適な測定動作とを実現することのできる測定部構造及びこれを用いた測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る測定部構造を用いた測定装置の第1実施形態の全体構成の例を模式的に示す側面図である。
図2】第1実施形態の測定部構造における測定部の拡大側面図(a)、及び、第2測定ヘッド12bの拡大平面図及び拡大正面図(b)である。
図3】第1実施形態の測定子の平面図(a)、側面図(b)、一部断面側面図(c)、及び、測定子を取り付けるための取付部材の構造を示す平面図(d)である。
図4】第1実施形態の第1測定ヘッド12aの拡大部分平面図(a)、拡大部分正面図(b)、及び、拡大部分背面図(c)、並びに、測定子の取付部分をさらに拡大して示す一部拡大図(d)、及び、測定子の取付部分をさらに拡大して示す横断面図(e)である。
図5】第1実施形態の第1測定ヘッド12aにおける非測定時(a)と測定時(b)の測定子の様子を示す拡大部分縦断面図である。ただし、(b)には拡大横断面図を含む。
図6】第1実施形態の第2測定ヘッド12bの拡大部分平面図(a)、拡大部分正面図(b)、及び、拡大部分背面図(c)、並びに、測定子の取付部分をさらに拡大して示す一部拡大図(d)、及び、測定子の取付部分をさらに拡大して示す横断面図(e)である。
図7】第1実施形態の第2測定ヘッド12bにおける非測定時(a)と測定時(b)の測定子の様子を示す拡大部分縦断面図である。ただし、(b)には拡大横断面図を含む。
図8】第2実施形態の測定ヘッド12a′の測定子を支持する構造を示す拡大部分正面図及び対応する横断面図(a)、拡大部分側面図及び対応する横断面図(b)、当接部材の正面図及び側面図(c)、並びに、上記支持する構造をさらに拡大して示す拡大部分横断面図(d)である。
図9】第2実施形態の測定ヘッド12b′の測定子を支持する構造を示す拡大部分正面図及び対応する横断面図(a)、拡大部分側面図及び対応する横断面図(b)、当接部材の正面図及び側面図(c)、並びに、上記支持する構造をさらに拡大して示す拡大部分横断面図(d)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1乃至図7を参照して、本発明に係る測定部構造を備えた測定装置の第1実施形態について説明する。
【0020】
図1には、本実施形態の測定装置10の外観を模式的に示す。本実施形態の測定装置10は、本体機構11の片側に装着され、第1測定ヘッド12aと第2測定ヘッド12bを備えた測定部12と、本体機構11の反対側に取り付けられた固定ハンドル13及び可動ハンドル14と、測定結果を表示する表示部15とを有する。固定ハンドル13を把持した状態で可動ハンドル14を引き寄せると、本体機構11により、測定部12の第1測定ヘッド12aと第2測定ヘッド12bが相互に離間するように構成される。そして、第1測定ヘッド12aと第2測定ヘッド12bの距離(測定結果)が表示部15に表示される。
【0021】
図2は、上記測定装置10の測定部12の模式的な拡大図であり、第1測定ヘッド12a及び第2測定ヘッド12bの側面図(a)と、第2測定ヘッド12bの正面図及び平面図(b)とを示す。第1測定ヘッド12aは、本体部121と、この本体部121に取り付けられた一つの測定子123とを備える。また、第2測定ヘッド12bは、本体部122と、この本体部122に取り付けられた測定子124とを備える。ここで、本体部122には、二つの測定子124が上下に所定の間隔をもって取り付けられている。なお、本体部121,122の延在方向(図示上下方向)を本明細書では軸線方向Faとし、この軸線方向Faと直交する方向(図示水平方向)を幅方向Fbとし、軸線方向Faと幅方向Fbの両者に直交する方向(図示の測定対象Sに向かう水平方向)を前後方向Fcとする。各測定子123,124は、それぞれが測定対象S(図示例ではボールねじ、図示二点鎖線)の内径を測定するためにねじ溝Saに嵌合した位置に設定される。なお、上記軸線方向Fa,幅方向Fb,前後方向Fcは一例であり、これらの各方向の関係が維持されている限り、装置における上記各方向の設定態様は図示例に限定されるものではない。
【0022】
測定子123,124は、図3に示すように、全体として球状に構成される。これらの測定子123,124の後部には、軸状の保持部材125が接続される。図示例では、測定子123,124と、保持部材125の前端とは接合され、相互に固定される。保持部材125の後端には鉤状(円環状)の被係止部125aが形成される。測定子123,124は、図4及び図6に示すように、正面から見たときには、本体部121,122に設けられた拡大開口部121a,122a内に配置される。ただし、測定子123,124は、後方部分が拡大開口部121a,122aの内部に配置されるが、前方部分は拡大開口部121a、122aの前方外側へ突出している。
【0023】
上記の拡大開口部121a,122aには、本体部121,122の内部を後方へ伸びる延在穴121b,122bが設けられる。これらの延在穴121b,122bの内部に上記保持部材125が挿通される。ここで、上記延在穴121b,122bは、当該延在穴121b,122bの後方部分と交差し、側方へ伸びる側部穴121c,122cに連通している。この側部穴121c,122cには取付部材126が装着される。図示例では取付部材126は取付ねじであり、ねじ孔である側部穴121c,122cにねじ込まれている。取付部材126の先端には軸状の係止部126aが設けられ、この係止部126aが上記延在穴121b,122bの内部に突出し、上記保持部材125の上記被係止部125aを係止する。なお、上記被係止部125aと上記係止部126aは、取付部材126を側部穴121c,122cの内部で移動させることにより着脱可能に構成される。これにより、測定子123,124及び保持部材125は取り外し、取り付けが可能であり、交換作業も容易である。
【0024】
図4に示すように、本体部121の上面から下方へ向けて一対の軸穴121dが形成され、これらの軸穴121dは、上記拡大開口部121aに連通するように設けられる。これらの軸穴121dには、本体部121の上面からそれぞれ当接部材127が挿入されている。本実施形態では、当接部材127は柱状であり、図示例では円柱状に構成される。当接部材127の周面の一部は上記拡大開口部121a内に露出し、この露出した表面が上記測定子123の後側側部に当接する当接部127aとなっている。一対の当接部材127は相互に間隔を有して配置され、上記拡大開口部121aの内部において一対の当接部127aの間に間隙が形成される。この間隙は、後方の延在穴121bに開口している。測定子123に接続された保持部材125は、上記間隙を通して後方の延在穴121b内に挿通される。当接部材127は本体部121に対して挿脱可能に構成されるので、当接部材127を容易に交換することができる。
【0025】
図6に示すように、本体部122の上面から下方へ向けて一対の軸穴122dが形成され、これらの軸穴122dは、上記拡大開口部122aに連通するように設けられる。これらの軸穴122dには、本体部122の上面からそれぞれ当接部材127が挿入されている。本実施形態では、当接部材127は柱状であり、図示例では円柱状に構成される。当接部材127の周面の一部は上記拡大開口部122a内に露出し、この露出した表面が上記測定子124の後側側部に当接する当接部127aとなっている。ここでも、一対の当接部材127は相互に間隔を有して配置され、上記拡大開口部122aの内部において一対の当接部127aの間に間隙が形成される。この間隙は、後方の延在穴122bに開口している。測定子124に接続された保持部材125は、上記間隙を通して後方の延在穴122b内に挿通される。当接部材127は本体部122に対しても挿脱可能に構成されるので、当接部材127を容易に交換することができる。
【0026】
図5には、第1測定ヘッド12aの非測定時(a)と測定時(b)の測定子123の様子を示す。これと同様に、図7には、第2測定ヘッド12bの非測定時(a)と測定時(b)の測定子124の様子を示す。前述のように、測定子123,124は保持部材125によって後方から保持された状態にあり、保持部材125はその被係止部125aが本体部121に取り付けられた取付部材126の係止部126aに係止されている。このため、測定子123,124は、ボールねじなどの測定対象Sに接触していないときでも、保持部材125により保持された状態となっている。ここで、測定子123,124の後部が当接する当接部材127の当接部127aは、軸線方向Faに沿って垂直に構成され、それによって測定子123,124の当接位置が軸線方向Faに沿って移動しても、測定子123,124の前後方向Fcの位置が変化しないように構成される。
【0027】
測定子123,124の保持部材125による保持態様は、図示例の場合、測定子123,124と保持部材125との接続態様が固定であり、保持部材125自体も剛体とみなすことができることから、上記被係止部125aと上記係止部126aの係止態様によって定まる。この係止態様では、保持部材125を、少なくとも既定の範囲内において、上記前後方向Fcに並進可能で、上記軸線方向Faに傾動可能な態様とされている。このため、測定子123,124の保持部材125による保持態様も、少なくとも既定の範囲内において、上記前後方向Fcに並進移動可能で、上記軸線方向Faに移動可能な態様となっている。この結果、測定子123,124は、少なくとも所定の範囲内において、当接部材127の当接部127aに当接した状態のままで軸線方向Faに沿って移動可能となるように構成される。なお、図示例では、上記係止態様に関しては、前後方向Fcの並進は或る限定された範囲内でのみ可能であり、軸線方向Faの傾動範囲の制限はない。ただし、軸線方向Faの傾動範囲は、測定子123,124の前後方向Fcの並進の範囲が限定されていることにより、結果的に既定の限定された角度範囲内においてのみ傾動可能となっている。なお、上記保持態様に関しては、測定子123,124の軸線方向Faの位置が拡大開口部121a,122aの軸線方向Faの範囲によって限定されていてもよく、上記係止態様の軸線方向Faの傾動範囲によって限定されていてもよい。
【0028】
図5及び図7において、(a)非測定時に示すように、測定子123,124が測定対象Sに接触していない状態では、保持部材125は、重力によりやや下方へ移動し傾動した状態で、当接部127aに当接した状態の測定子123,124を保持している。ここで、第1測定ヘッド12a及び第2測定ヘッド12bが測定対象Sに接近し、測定子123,124が測定対象Sに接触し、測定対象Sのねじ溝Saに嵌合すると、(b)測定時に示すように、測定子123,124は、当接部127aに当接した状態で、当該ねじ溝Saの図示上下方向の位置(図示せず)に合わせて軸線方向Faに位置決めされる。
【0029】
以上説明した本実施形態では、第1測定ヘッド12aの測定子123と、第2測定ヘッド12bの二つの測定子124とが測定対象S(ボールねじ)のねじ溝Saに嵌合した状態で、測定対象Sの内径を測定することができる。このとき、ねじ溝Saにそれぞれ嵌合する測定子123,124は、上記一対の当接部127aに当接した状態で所定の範囲内において前記軸線方向Faに変位可能となる態様で保持部材125によって保持されているため、ねじ溝Saにリード誤差があっても、内径を正確に測定することができる。ここで、測定子123,124の軸線方向Faの変位量は、測定対象Sの誤差に対応可能であればよいので、上記所定の範囲は、ねじ溝Saのリード誤差等に対応可能な範囲であれば足りる。
【0030】
本実施形態では、測定子123,124は、幅方向Fbの両側において一対の当接部127aに当接した状態で支持されるとともに、測定子の後部に接続され、保持部材125によって後方から保持された状態とされる。これにより、測定子123,124を前方や側方から保持する必要がなくなるため、測定子123,124と測定対象Sとの干渉を回避しつつ、測定子123,124の軸線方向Faへの移動を可能にすることができるので、測定子の変位量の確保と好適な測定動作とを実現することができる。特に、保持部材は、上記一対の当接部127aの間を通過して後方へ延在する態様で取り付けられているので、保持部材を長くすることが可能になることから、測定子の変位量を十分に確保できるとともに、測定子のスムーズな動作が可能になるため、良好な測定動作を実現できる。
【0031】
本実施形態では、測定子123,124及び保持部材125を本体部121,122に対して容易に取り付け、取り外し可能に構成される。これにより、測定子123,124の交換が極めて容易になるので、測定子の摩耗や測定対象Sの寸法変更などに容易に対処することができる。
【0032】
また、本実施形態では、測定子123,124に当接して斜め後方から支持する一対の当接部127aを、一対の柱状の当接部材127を本体部121,122に取り付けることによって構成している。これにより、上記特許文献2のような係止溝40を形成する場合と比べると、測定子123,124に当接する当接部127aの加工作業や硬化処理を容易化できるため、製造コストの低減、耐久性の向上、支持面精度の向上などを図ることが容易になる。例えば、柱状の当接部材127の切削加工や転造加工は容易であり、焼き入れや研磨処理なども容易である。この意味では、上記当接部材127を円柱状に構成することがさらに望ましく、効果的である。さらに、当接部材127を本体部121,122に対して着脱可能に取り付ければ、当接部材127の交換も容易であるので、当接部127aの摩耗や損傷に対処することも容易になる。
【0033】
前段落の観点では、以下のような別の発明を考慮することも可能である。すなわち、当該発明は、測定子と、前記測定子の後方に配置され、幅方向両側の一対の当接部においてそれぞれ前記測定子に当接することにより前記測定子を軸線方向に変位可能な態様で支持する支持体と、を具備し、前記支持体は、本体部と、前記幅方向に配列されるように前記本体部に対して着脱可能に取り付けられ、それぞれ軸線方向に延在する前記当接部を備える一対の当接部材と、を含む、測定部構造である。この発明においては、本発明と同様の保持部材を具備するものとすることができる他に、上記測定子を幅方向の少なくとも一方の側方(好ましくは両側方)から保持する保持具を本体部に対して着脱可能に取り付けたものとすることも可能である。
【0034】
次に、図8及び図9を参照して、本発明に係る第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、本体部121′,122′と当接部材127′,127″のみが上記第1実施形態とは異なり、これら以外の部分は上記第1実施形態と同様に構成できるので、同様に構成できる部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0035】
図8は、第2実施形態の第1測定ヘッド12a′における測定子123の配置部分を示し、また、図9は、第2測定ヘッド12b′における測定子124の配置部分を示す。この第2実施形態では、本体部121′,122′の拡大開口部121a′,122a′の幅方向Fbの外側にある開口縁部121e、122eと、当接部材127′の正面側部分に設けられた変形部127e、当接部材127″の正面側部分に設けられた変形部127fとを、それぞれ平坦にカットされた形状に加工している。
【0036】
より具体的には、第1実施形態の拡大開口部121a,122aの幅方向Fbの外側にある開口縁(円筒面)を、本実施形態では、平坦にカットした形状に上記開口縁部121e,122eを構成し、また、これらの開口縁部121e、122eと連続する(面一になる)ように、第1実施形態の当接部材127の正面側表面部分(円筒面)を平坦にカットした形状に上記変形部127e,127fを構成している。特に、この第2実施形態における上記開口縁部121e、122e及び上記変形部127e,127fは、第1実施形態における測定子123,124が当接する当接部127aよりも、前方へ突出する部分に上記形状を設けている。ここで、上記平坦にカットした形状の部分は、上記当接部127aと一致する前後方向Fcの位置に合わせて平坦面を形成したものであってもよいが、図示例(図8(d)及び図9(d)を参照)のように、上記当接部127aよりも或る程度前方にある前後方向Fcの位置に合わせて平坦面を形成したものであっても構わない。
【0037】
上記開口縁部121e,122e及び変形部127e,127fを形成することによって、第1測定ヘッド12a′と第2測定ヘッド12b′とにおける測定子123,124の周囲の本体部121′,122′及び当接部材127′,127″(上記支持体に相当する。)の突出量を第1実施形態よりも低減することができるため、測定対象Sに対する干渉の程度をさらに低減することができる。
【0038】
なお、本発明に係る測定部構造及び測定装置は、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各実施形態では、測定子123,124を球状としているが、本発明において、測定子は、測定対象Sの形状に応じて種々の形態を採ることができるので、球状に限らず、円柱状、楕円柱状、角柱状、円錐状、角錐状などの種々の形状を用いることが可能である。また、上記各実施形態では、測定子123,124に固定された保持部材125を用いているが、本発明において、保持部材は、測定子が当接部に当接したままの状態で軸線方向Faに沿って多少でも移動可能となっていればよい。例えば、少なくとも既定の範囲において、前後方向Fcに並進可能、軸線方向Faに傾動可能に構成するものであればよく、例えば、保持部材を伸縮可能なゴムやばね等の弾性部材で構成することもでき、また、測定子と保持部材との間に或る程度の自由度を備えるジョイント構造を備えたものとすることなども可能である。
【符号の説明】
【0039】
10…測定装置、11…本体機構、12…測定部、12a…第1測定ヘッド、12b…第2測定ヘッド、121,122,121′,122′…本体部、121a,122a…拡大開口部、121b,122b…延在穴、121c,122c…側部穴、121e,122e…開口縁部、123,124…測定子、125…保持部材、125a…被係止部、126…取付部材、126a…係止部、127,127′,127″…当接部材、127a…当接部、127e,127f…変形部、13…固定ハンドル、14…可動ハンドル、15…表示部、Fa…軸線方向、Fb…幅方向、Fc…前後方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9