(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】防火シャッターの通過口用開閉蓋の開閉装置
(51)【国際特許分類】
A62C 2/06 20060101AFI20220628BHJP
E06B 9/17 20060101ALN20220628BHJP
E06B 9/56 20060101ALN20220628BHJP
【FI】
A62C2/06 503
E06B9/17 M
E06B9/56 Z
(21)【出願番号】P 2021001855
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】398019464
【氏名又は名称】サンケイ鋼器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】一丸 和夫
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特許第2829835(JP,B2)
【文献】特開2007-254085(JP,A)
【文献】特開2000-337046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
E06B 9/17
E06B 9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中二階の床面を貫挿して天井等から防火シャッターが床面に至るまで下降して倉庫内で所定の防火区画を構成するに際し、中二階の床面に開口形成されている通過口を開閉する開閉蓋を跳ね上げ開放する防火シャッターの通過口用開閉蓋の開閉装置であって、通過口の側方部位に立脚状に配置される装置支柱に、防火シャッターが下降したときに俯くよう揺動される作動レバー、この作動レバーに着脱自在に連繋されていて、作動レバーの揺動に伴う離反時には下方に落下移動する牽引スライダー、この牽引スライダーに連結されて、前記開閉蓋に連繋されている牽引ワイヤーが設けられており、前記作動レバーは、連結部によって相互に連結されて平行配置された対状の所定径の棒材によって上向き傾斜状に形成されていることを特徴とする防火シャッターの通過口用開閉蓋の開閉装置。
【請求項2】
前記作動レバーは、装置支柱の上部における左右側壁相互間に揺動自在に支承させる軸部、この軸部に一体状にして、防火シャッターの下端縁が当接される作動部、及びこの作動部に一体状にして軸部の下方に設けた側面ほぼL字状の支持部を備え、側面から見てほぼコ字状に折曲されていて、作動部、支持部それぞれは上向き傾斜状に形成されている請求項1に記載の防火シャッターの通過口用開閉蓋の開閉装置。
【請求項3】
牽引スライダーは、対状の支持部が着脱自在に繋止される左右対状の連繋孔を備えている請求項1または2に記載の防火シャッターの通過口用開閉蓋の開閉装置。
【請求項4】
牽引スライダーは、装置支柱内で上下動するようにしてある請求項1乃至3のいずれかに記載の防火シャッターの通過口用開閉蓋の開閉装置。
【請求項5】
牽引ワイヤーは、装置支柱の上部に設けられた滑車によって折り返し状にして牽引スライダーの上部の左右中央位置に連結されている請求項1乃至4のいずれかに記載の防火シャッターの通過口用開閉蓋の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば中二階が設けられている倉庫等において、火災発生時等で防火シャッターが天井から中二階床に形成されている通過口を貫挿して一階床面にまで下降されるとき、緊急時には開放される通過口用の開閉蓋を通常時では確実に閉塞しておいて、中二階床面上での作業の安全性を図れるようにした防火シャッターの通過口用開閉蓋の開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば倉庫等において火災発生その他の緊急時には火炎を遮断するよう防火区画毎に天井から防火シャッターを下降させて閉塞している。また、中二階が設けられている場合には、中二階床面に形成してある開閉自在な通過口用の開閉蓋を開放し、天井等から下降させる防火シャッターを中二階床に貫挿させて床面にまで下降させている。
【0003】
このような防火シャッター装置として、本出願人は特許文献1に示される防火シャッター装置を提案したところ、好評を博し、各所に設置されているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように各所において設置されているところであるも、設置使用後における各所の異なる使用状況によって生じ得る改善・改良点を様々に検討し、従前に提案した防火シャッター装置が種々の環境の下で使用される点に鑑み、試作を重ね改良するに至ったものである。
【0006】
そのため、本発明においては、異なる環境の下で使用されることを前提に、使用・設置状況に影響されることなく、火災その他の災害時では確実に作動するも、日常的に使用されるときには誤作動なく、例えば中二階に設けられている通過口が作業者の移動、振動その他によって不意に開放されることがないように通常時では通過口を開閉蓋によって常時閉塞しておくようにし、中二階での移動、各種作業を安全に実施できるようにした防火シャッターの通過口用開閉蓋の開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、中二階Mの床面を貫挿して天井等から防火シャッターSが床面に至るまで下降して倉庫W内で所定の防火区画を構成するに際し、中二階Mの床面に開口形成されている通過口Hを開閉する開閉蓋Cを跳ね上げ開放する防火シャッターの通過口用開閉蓋の開閉装置であって、通過口Hの側方部位に立脚状に配置される装置支柱1に、防火シャッターSが下降したときに俯くよう揺動される作動レバー2、この作動レバー2に着脱自在に連繋されていて、作動レバー2の揺動に伴う離反時には下方に落下移動する牽引スライダー3、この牽引スライダー3に連結されて、前記開閉蓋Cに連繋されている牽引ワイヤー4が設けられており、前記作動レバー2は、連結部2Dによって相互に連結されて平行配置された対状の所定径の棒材によって上向き傾斜状に形成されていることを特徴とする。
前記作動レバー2は、装置支柱1の上部における左右側壁相互間に揺動自在に支承させる軸部2A、この軸部2Aに一体状にして、防火シャッターSの下端縁が当接される作動部2B、及びこの作動部2Bに一体状にして軸部2Aの下方に設けた側面ほぼL字状の支持部2Cを備え、側面から見てほぼコ字状に折曲されていて、作動部2B、支持部2Cそれぞれは上向き傾斜状に形成されることで構成することができる。
牽引スライダー3は、対状の支持部2Cが着脱自在に繋止される左右対状の連繋孔3Aを備えることで、また装置支柱1内で上下動するようにして構成することができる。
牽引ワイヤー4は、装置支柱1の上部に設けられた滑車5によって折り返し状にして牽引スライダー3の上部の左右中央位置に連結されて構成することができる。
【0008】
以上のように構成された本発明に係る防火シャッターの通過口用開閉蓋の開閉装置にあって、火災時等に下降する防火シャッターSの下端縁が作動レバー2の作動部2Bに当接し、俯き状に揺動させることで支持部2Cが牽引スライダー3の支持を解除し、この解除によって牽引スライダー3が離反して落下するように下方に移動して牽引ワイヤー4を牽引することで、開閉蓋Cを跳ね上げ状に揺動させて通過口Hを開放させる。
連結部2Dによって相互に連結されて平行配置された対状の作動レバー2は、上向き傾斜状であることと相俟って、不意の接触、振動等によっては作動せず、防火シャッターSが下降し作動部2Bに当接するまでは作動させられず、また、同様に上向き傾斜状の支持部2Cも作動部2Bの揺動がない限り、牽引スライダー3を離反させない。
左右の連繋孔3Aによって対状の支持部2Cと着脱自在に繋止されている牽引スライダー3は、上部の左右中央位置に牽引ワイヤー4が連結されていることで、牽引スライダー3が下方に移動するときには、装置支柱1内で左右にぶれることなくスムーズに落下し、牽引ワイヤー4を確実に牽引し、開閉蓋Cを跳ね上げ状に揺動開閉させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上説明したように構成されているため、使用設置場所においては、作業環境が様々で、例えば中二階Mにおける各種の作業に伴う床面の振動、あるいは誤った作動レバー2への接触その他の誤作動によっては作動せず、常時、通過口Hを開閉蓋Cによって閉塞しておくことができる。その一方、火災発生時等で防火区画を構成すべく防火シャッターSが下降するときには、その下端縁が作動部2Bに当接することで確実に作動し、通過口Hで跳ね上げる開閉蓋Cによって開放でき、防火シャッターSを床面にまで円滑に下降させる。
【0010】
従って、火災時以外では通過口Hを開閉蓋Cによって常時閉塞状態で維持でき、不意に開放されることはないから、中二階Mにおける各種作業を安全に遂行でき、中二階M上の保管品を落下させたり、作業員が誤って踏み外したりすることもない。
【0011】
すなわち、これは本発明において、防火シャッターSが下降されるときに当接して、牽引スライダー3の落下、これに伴い牽引ワイヤー4を牽引させるようにした作動レバー2が、連結部2Dによって相互に連結されて平行配置された対状の所定径の棒材によって上向き傾斜状に形成されているからである。これによって、作動レバー2の不意の作動防止、火災時の作動の確実性を図ることができ、ひいては中二階M上での作業の安全性に寄与できる。
【0012】
また、作動レバー2と牽引スライダー3とは、作動レバー2における対状の支持部2Cと、牽引スライダー3における対状の連繋孔3Aとの繋止であることで、しかも支持部2Cが上向き傾斜であることと相俟ち、作動レバー2自体が大きく揺動しない限り、牽引スライダー3は作動レバー2から離反しない。そのため、作動レバー2に対する誤った接触や、振動その他によっては、牽引スライダー3は作動レバー2から離反せず、不意に開閉蓋Cを開放させることもない。
【0013】
牽引ワイヤー4は、牽引スライダー3の上部の左右中央位置で牽引スライダー3に≡止めされているので、作動レバー2から離反した落下時では、装置支柱1内で左右にぶれることなくスムーズに下方に移動し、開閉蓋Cを円滑に跳ね上げ状に直ちに開放させることができる。
【0014】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項それぞれにおいて付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付した。本発明は、これらの記載、図面中の符号等によって示された構造・形状等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を実施するための一形態を示す設置使用時の斜視図である。
【
図6】同じく本発明装置が設置使用された中二階が設けられている倉庫の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための一形態を説明すると、図において示される符号1は装置支柱であり、この装置支柱1は、例えば倉庫Wに設けられている中二階Mにおいて、火災時に天井から下降される防火シャッターSが倉庫Wの床面に至るように、中二階Mの床面に開口形成されていて、開閉自在な開閉蓋Cによって閉塞されている通過口Hの側方に立脚状に配置されている(
図5、
図6参照)。
【0017】
そして、この装置支柱1には、
図1に示すように、防火シャッターSが下降したときに俯くよう揺動される作動レバー2、この作動レバー2に着脱自在に連繋されていて、離反時には下方に落下移動する牽引スライダー3、この牽引スライダー3に連結されて、前記開閉蓋Cに連繋されている牽引ワイヤー4が設けられている。
【0018】
装置支柱1は、図示にあっては前面が開放された断面で溝型状になっている柱状に形成されており、防火シャッターSが下降されたときに防火シャッターSの下端縁が当接されることで下方に揺動する作動レバー2が装置支柱1に俯仰可能に軸支されている。
【0019】
作動レバー2は、装置支柱1の上部における左右側壁相互間に揺動自在に支承させる軸部2A、この軸部2Aに、例えば軸部2A上に一体状にして、防火シャッターSの下端縁が当接される作動部2B、及びこの作動部2Bに一体状にして軸部2Aの下方に設けた側面ほぼL字状の支持部2Cを所定径の棒材を、側面から見てほぼコ字状に折曲することで形成して成る。
【0020】
この作動レバー2自体は、左右で対状に平行にして配置された所定径の棒材から成り、作動部2B部位の相互間を所定径の棒材から成る連結部2Dによって連結してあって、対状の左右部分が一体的に作動するようにしてある。
【0021】
また、この作動レバー2では、作動部2Bはやや上方を向くように上向き傾斜状になっており、支持部2Cも同様に上向き傾斜状になっている(
図3参照)。
【0022】
作動レバー2の支持部2Cには、装置支柱1内で上下動する牽引スライダー3が着脱自在に連繋されている。この牽引スライダー3は、後述する通過口Hを開閉させる開閉蓋C自体の重量に比し十分に重い重量を有する直方塊体状に形成されている。そして、作動レバー2における対状の支持部2Cそれぞれに繋止される対状に設けられた連繋孔3Aが上部に開口形成されていて、作動レバー2が下方に俯くよう揺動したとき、支持部2Cが連繋孔3Aから離反し、この離反に伴い牽引スライダー3は装置支柱1内でその自重によって下方に落下状に移動するようになっている。
【0023】
この牽引スライダー3の上部には、通過口Hを開閉自在に閉塞している開閉蓋Cに連繋してある牽引ワイヤー4が、装置支柱1の上部に回転自在に配した滑車5を介して連結してある。この牽引ワイヤー4自体は、滑車5によって折り返し状になって、開閉蓋Cの開放端側縁に連繋してあり、牽引ワイヤー4が上方に牽引されるときには開閉蓋Cを上方に牽引して跳ね上げて開放するようになっている。
【0024】
また、この牽引ワイヤー4は、牽引スライダー3の上部における左右方向の中央位置で、前記作動レバー2における左右間の中央を経由して牽引スライダー3に連結してあって、作動レバー2と離反して下降されるとき装置支柱1内で左右にぶれることなくスムーズに落下するようにしている(
図4参照)。
【0025】
尚、装置支柱1の背部には、前記作動レバー2が揺動するときに支持部2Cが後方に突出するようになるときに挿通させる長孔状の挿通スリット6が開口形成されている。
【0026】
また、以上のように構成される本発明装置は、通過口Hのいずれか一方の側方部位に設置されて、開閉蓋Cのいずれか一方の縁部に連繋される場合に限らず、開閉蓋C自体が重量的に嵩張る等であると、開閉蓋C自体の左右縁部に連繋されるように通過口Hの左右側方部位で計一対にして配置される場合もある。
【0027】
次にこれの使用の一例を説明すると、中二階Mが設けられている倉庫Wにおいて、防火区画毎に例えば天井等に防火シャッターSが設置されて、この防火シャッターSが中二階Mの床に開口形成された通過口Hを経て床面に至るまでに下降されるようになっているとき、その通過口Hの側方部位に本発明装置が配置される(
図5、
図6参照)。配置されるとき、牽引ワイヤー4の先端は、通過口Hを開閉する開閉蓋Cにおける開放側端縁に連繋されるのであり、開閉蓋Cは通過口Hを通常時では閉塞していて、中二階Mの床面と平坦状にされている。
【0028】
火災等の緊急時には、
図2に示すように、これを感知した防火シャッターSが下降し始め、これの下端縁が作動レバー2の作動部2Bに当接すると、作動部2Bを俯き状に揺動させ、この揺動によって支持部2Cも下方に揺動して、牽引スライダー3の支持を解除することで牽引スライダー3をその自重で落下させる。この牽引スライダー3の落下によって牽引ワイヤー4を牽引し、この牽引は滑車5を介して牽引ワイヤー4の先端を上方に牽引し、開閉蓋Cを上方に跳ね上げ状に通過口Hを開放する。
【0029】
開放された通過口Hは、天井等から下降される防火シャッターSをそのまま通過させて床面上にまで下ろさせ、所定の防火区画を構成する。
【0030】
作動レバー2においては、連結部2Dによって連結された所定径の棒材による左右で対状に形成されていて、やや上向き傾斜状であることで、下降した防火シャッターSが当接しなければ作動しない。また、同様に支持部2Cもやや上向き傾斜状であることで、作動部2Bが揺動しない限り、牽引スライダー3を支持しており、例えば中二階Mの床面の振動その他によって牽引スライダー3の支持を解除し、離反しない。
【符号の説明】
【0031】
H…通過口
M…中二階
S…防火シャッター
W…倉庫
1…装置支柱
2…作動レバー
2A…軸部
2B…作動部
2C…支持部
2D…連結部
3…牽引スライダー
3A…連繋孔
4…牽引ワイヤー
5…滑車
6…挿通スリット
【要約】
【課題】緊急時には開放されて防火シャッターを貫挿させる通過口用の開閉蓋を通常時では確実に閉塞しておいて、中二階床面上での各種作業の安全性を図れるようにする。
【解決手段】中二階Mの床面を貫挿して天井等から防火シャッターSを床面に至るまで下降して倉庫内で防火区画を構成するに際し、中二階Mの床面に開口形成した通過口Hを開閉する開閉蓋Cを跳ね上げ開放する。通過口Hの側方部位に立脚状に配置した装置支柱1に、防火シャッターSが下降したときに俯くよう揺動する作動レバー2、この作動レバー2に着脱自在に連繋して、作動レバー2の揺動に伴う離反時には下方に落下移動する牽引スライダー3、この牽引スライダー3に連結して、開閉蓋Cに連繋してある牽引ワイヤー4を設ける。前記作動レバー2は、連結部2Dによって相互に連結して平行配置した対状の所定径の棒材によって上向き傾斜状に形成する。
【選択図】
図1