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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】構造体、モノコック構造及び車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 27/02 20060101AFI20220628BHJP
   B62D 65/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B62D27/02
B62D65/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021136605
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2021-09-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512327145
【氏名又は名称】株式会社ベルリング
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【弁理士】
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】飯野 塁
(72)【発明者】
【氏名】牛島 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】ズオーン ディーン チュオーン
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】白濱 光晴
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-255451(JP,A)
【文献】実公平03-052229(JP,Y2)
【文献】特開2000-343998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 27/02
B62D 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノコック構造の一部が欠けた状態の未完成ボディと、
前記未完成ボディのうち欠けた部分に配される補充ユニットと、を備えた構造体であって、
前記補充ユニットは、
前記未完成ボディに対して接合されたインナーパネルと、
前記インナーパネルに対して接合されたアウターパネルと、
第1方向に延びる第1補強構造と、
前記第1方向に対し交差する第2方向に延びる第2補強構造と、
前記インナーパネルよりも内側に位置し、前記インナーパネルに接合された内装部品と、を備え、
前記第1補強構造は、前記インナーパネルに形成されたインナーパネルリブと前記インナーパネルに接合された別体の補強部材との少なくとも一方であり、
前記内装部品が前記第2補強構造を兼ね、
前記内装部品と前記インナーパネルとの接合位置は、前記第2方向に並ぶことを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記インナーパネルは、
前記未完成ボディに対して接合されるインナー接合部と、
前記インナー接合部よりも外側に張り出すインナー張出部と、を備え、
前記インナー張出部と前記内装部品との間に配された内装トリムを備え、
前記内装トリムは、前記インナー張出部に接合され、
前記内装部品は、少なくとも前記内装トリムに対し接合することを特徴とする請求項記載の構造体。
【請求項3】
モノコック構造の一部が欠けた状態の未完成ボディと、
前記未完成ボディのうち欠けた部分に配される補充ユニットと、を備えた構造体であって、
前記補充ユニットは、
前記未完成ボディに対して接合されたインナーパネルと、
前記インナーパネルに対して接合されたアウターパネルと、
第1方向に延びる第1補強構造と、
前記第1方向に対し交差する第2方向に延びる第2補強構造と、
前記インナーパネルよりも内側に位置し、前記インナーパネルに接合された内装部品と、を備え、
前記第1補強構造は、前記インナーパネルに形成されたインナーパネルリブと前記インナーパネルに接合された別体の補強部材との少なくとも一方であり、
前記内装部品と前記インナーパネルとの接合位置は、前記第2方向に並び、
前記インナーパネルは、
前記未完成ボディに対して接合されるインナー接合部と、
前記インナー接合部よりも外側に張り出すインナー張出部と、を備え、
前記インナー張出部と前記内装部品との間に配された内装トリムを備え、
前記内装トリムは、前記インナー張出部に接合され、
前記内装部品は、少なくとも前記内装トリムに対し接合し、
前記第2補強構造は、前記内装トリムに形成されたことを特徴とする構造体。
【請求項4】
前記内装部品は、前記第2方向へ延びる長手部材を備え、
前記内装部品と前記インナーパネルとの接合位置は、前記長手部材において、前記第2方向に並ぶことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の構造体。
【請求項5】
前記長手部材は、レール又は手すりであることを特徴とする請求項記載の構造体。
【請求項6】
モノコック構造の一部が欠けた状態の未完成ボディと、
前記未完成ボディのうち欠けた部分に配される補充ユニットと、を備えた構造体であって、
前記補充ユニットは、
前記未完成ボディに対して接合されたインナーパネルと、
前記インナーパネルに対して接合されたアウターパネルと、
第1方向に延びる第1補強構造と、
前記第1方向に対し交差する第2方向に延びる第2補強構造と、を備え、
前記第1補強構造は前記インナーパネルに複数設けられ、
前記第2補強構造は前記アウターパネルに複数設けられ、
一方の前記第1補強構造と他方の前記第1補強構造とは前記第2方向において離れて並び、
前記インナーパネルに対して前記アウターパネルが接合された際、前記第2補強構造は、2つの前記第1補強構造に対して当接し、
前記第2補強構造のうち、一方の前記第1補強構造と当接する部分を一方第1当接部分、他方の前記第1補強構造と当接する部分を他方第1当接部分、及び、前記一方第1当接部分と前記他方第1当接部分の間を第1中間部分と定義した際、
前記第1中間部分は、前記一方第1当接部分と前記他方第1当接部分よりも突出し、前記第2補強構造は、2つの前記第1補強構造及び前記第1中間部分により、前記第2方向への移動が規制されることを特徴とする構造体。
【請求項7】
一方の前記第2補強構造と他方の前記第2補強構造とは前記第1方向において離れて並び、
前記インナーパネルに対して前記アウターパネルが接合された際、前記第1補強構造は、2つの前記第2補強構造に対して当接し、
前記第1補強構造のうち、一方の前記第2補強構造と当接する部分を一方第2当接部分、他方の前記第2補強構造と当接する部分を他方第2当接部分、及び、前記一方第2当接部分と前記他方第2当接部分の間を第2中間部分と定義した際、
前記第2中間部分は、前記一方第2当接部分と前記他方第2当接部分よりも突出し、前記第1補強構造は、2つの前記第2補強構造及び前記第2中間部分により、前記第1方向への移動が規制されることを特徴とする請求項記載の構造体。
【請求項8】
モノコック構造の一部が欠けた状態の未完成ボディと、
前記未完成ボディのうち欠けた部分に配される補充ユニットと、を備えた構造体であって、
前記補充ユニットは、
前記未完成ボディに対して接合されたインナーパネルと、
前記インナーパネルに対して接合されたアウターパネルと、
第1方向に延びる第1補強構造と、
前記第1方向に対し交差する第2方向に延びる第2補強構造と、を備え、
前記インナーパネルは、
前記未完成ボディに対して接合されるインナー接合部と、
前記インナー接合部よりも外側に張り出すインナー張出部と、を備え、
前記第1補強構造は前記インナー張出部に形成されることを特徴とする構造体。
【請求項9】
前記補充ユニットは、
前記未完成ボディの側部に形成された側部開口を塞ぐように配されたサイドパネルユニットを備えることを特徴とする請求項1ないしのうちいずれか1項記載の構造体。
【請求項10】
前記未完成ボディの上部に形成された上部開口を塞ぐように配されたルーフパネルユニットを備え、
前記側部開口と前記上部開口とは前記未完成ボディにおいて1つの開口として形成されていることを特徴とする請求項記載の構造体。
【請求項11】
前記第1方向と前記第2方向は直交することを特徴とする請求項1ないし10のうちいずれか1項記載の構造体。
【請求項12】
モノコック構造の一部が欠けた状態の未完成ボディと、
前記未完成ボディのうち欠けた部分に配される補充ユニットと、を備えた構造体であって、
前記補充ユニットは、
前記未完成ボディに対して接合されたインナーパネルと、
前記インナーパネルに対して接合されたアウターパネルと、
第1方向に延びる第1補強構造と、
前記第1方向に対し交差する第2方向に延びる第2補強構造と、を備え、
前記補充ユニットは、前記未完成ボディよりも横方向へ突出する突出部を備え、
前記突出部には、照明装置が設けられることを特徴とする構造体。
【請求項13】
請求項1ないし12のうちいずれか1項記載の構造体を備えたことを特徴とするモノコック構造。
【請求項14】
請求項13記載のモノコック構造を備えたことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体、モノコック構造及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
消防車や救急車等の緊急車両や、キャンピングカー等の特殊車両は、市販されている車両(例えばワゴン車等)のモノコック構造をベースにして改造されることが多い。例えば、消防車や救急車には様々な専用器具や専用装置が配置されるため、市販用のワゴン車では、作業スペースや収納スペースが足りない場合も多い。このような事情を考慮し、ハイルーフ型の車両構造が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-63118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のハイルーフ型の車両構造において、作業スペースや収容スペースを拡張できるものの、拡張させた分だけ車高自体が高ってしまう。これでは、走行時における車両の安定性が損なわれる。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、従来よりも収容スペース等の拡張が容易な構造体、モノコック構造及び車両を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、モノコック構造の一部が欠けた状態の未完成ボディと、前記未完成ボディのうち欠けた部分に配される補充ユニットと、を備えた構造体であって、前記補充ユニットは、前記未完成ボディに対して接合されたインナーパネルと、前記インナーパネルに対して接合されたアウターパネルと、第1方向に延びる第1補強構造と、前記第1方向に対し交差する第2方向に延びる第2補強構造と、備えることに加え、以下のいずれか1つを備える。
(1) 前記第1方向に対し交差する第2方向に延びる第2補強構造と、前記インナーパネルよりも内側に位置し、前記インナーパネルに接合された内装部品と、を備え、前記内装部品と前記インナーパネルとの接合位置は、前記第2方向に並ぶ。
) 前記インナーパネルよりも内側に位置し、前記インナーパネルに接合された内装部品と、を備え、前記第1補強構造は、前記インナーパネルに形成されたインナーパネルリブと前記インナーパネルに接合された別体の補強部材との少なくとも一方であり、前記内装部品が前記第2補強構造を兼ね、前記内装部品と前記インナーパネルとの接合位置は、前記第2方向に並ぶ。
) 前記インナーパネルよりも内側に位置し、前記インナーパネルに接合された内装部品と、を備え、前記第1補強構造は、前記インナーパネルに形成されたインナーパネルリブと前記インナーパネルに接合された別体の補強部材との少なくとも一方であり、前記内装部品と前記インナーパネルとの接合位置は、前記第2方向に並び、前記インナーパネルは、前記未完成ボディに対して接合されるインナー接合部と、前記インナー接合部よりも外側に張り出すインナー張出部と、を備え、前記インナー張出部と前記内装部品との間に配された内装トリムを備え、前記内装トリムは、前記インナー張出部に接合され、前記内装部品は、少なくとも前記内装トリムに対し接合し、前記第2補強構造は、前記内装トリムに形成されたことを特徴とする。
) 前記第1補強構造は前記インナーパネルに複数設けられ、前記第2補強構造は前記アウターパネルに複数設けられ、一方の前記第1補強構造と他方の前記第1補強構造とは前記第2方向において離れて並び、前記インナーパネルに対して前記アウターパネルが接合された際、前記第2補強構造は、2つの前記第1補強構造に対して当接し、前記第2補強構造のうち、一方の前記第1補強構造と当接する部分を一方第1当接部分、他方の前記第1補強構造と当接する部分を他方第1当接部分、及び、前記一方第1当接部分と前記他方第1当接部分の間を第1中間部分と定義した際、前記第1中間部分は、前記一方第1当接部分と前記他方第1当接部分よりも突出し、前記第2補強構造は、2つの前記第1補強構造及び前記第1中間部分により、前記第2方向への移動が規制される。
) 前記インナーパネルは、前記未完成ボディに対して接合されるインナー接合部と、前記インナー接合部よりも外側に張り出すインナー張出部と、を備え、前記第1補強構造は前記インナー張出部に形成される。
)前記補充ユニットは、前記未完成ボディよりも横方向へ突出する突出部を備え、前記突出部には、照明装置が設けられる。
【0007】
本発明のモノコック構造は、上記構造体を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の車両は、上記モノコック構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来よりも収容スペース等の拡張が容易な構造体を提供するとともに、収容スペース等が従来よりも広いモノコック構造及び車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】モノコック構造の概要を示す斜視図である。
図2】モノコック構造の概要を示す斜視図である。
図3】モノコック構造の概要を示す分解斜視図である。
図4】モノコック構造の概要を示す分解斜視図である。
図5】インナーパネルユニットの概要を示す分解斜視図である。
図6】インナーパネルユニットの概要を示す分解斜視図である。
図7】サイド縦リブ及びサイド横リブが嵌合する状態を示すインナーパネルユニットの断面図である。
図8】(A)は、内装サイド横リブに収容されたレール本体の概要を示す正面図である。(B)は、サイド内装レール及びその周辺部品の概要を示すVIII-VIII’断面図である。(C)は、スライド駒の概要を示す側面図である。
図9】ホルダを介してサイド内装レールに収容物Sが取り付けられた様子を示す説明図である。
図10】ルーフパネルユニットの概要を示す分解斜視図である。
図11】モノコック構造に形成された内部の概要を示す説明図である。
図12】モノコック構造に形成された内部の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(救急車両)
図1~2に示すように、救急車両2は、エンジンルーム、前部10F及び後部10B等を形成するためのモノコック構造10(構造体)と、エンジンルームに収容されたエンジンと、モノコック構造10において回動自在に支持されたシャフトと、シャフトの両端に軸着されたタイヤTYと、エンジンからの駆動力をタイヤTYへ伝動するための伝動部と、モノコック構造10に設けられた照明装置LY(前照灯、車幅灯、前部霧灯、尾灯、制動灯等)と、を備える。
【0012】
以下、説明の便宜上、救急車両2の前後方向をX方向と、左右方向をY方向と、高さ方向をZ方向と称する。X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する。
【0013】
前部10Fには、ハンドルやアクセル、ブレーキ、シフトレバーや運転席が設けられる運転室が設けられる。後部10Bは、ストレッチャー、担架等の医療機器や医療従事者が座る椅子等の設備が収容されるスペースであるとともに、医療従事者が患者に対して行う処置のスペースとして活用される。
【0014】
後部10Bの左側面には側面開口が設けられ、側面開口を開閉するためのサイドドアユニット20が形成される。サイドドアユニット20は、側面開口を開閉するサイドドア本体21と、サイドドア本体21をスライド自在にするサイドレール22とを備える。後部10Bの背面には背面開口が設けられ、背面開口を開閉するためのバックドアユニット30が形成される。バックドアユニット30は、背面開口を開閉するバックドア本体31と、バックドア本体31を揺動する自在にするヒンジ(図示省略)とを備える。この側面開口や背面開口を介して、後部10Bにおける人の出入りや荷物の出し入れが行われる。
【0015】
(モノコック構造)
モノコック構造10は、図3~4に示すように、未完成ボディ100と、サイドパネルユニット200と、ルーフパネルユニット300と、を備える。
【0016】
(未完成ボディ)
未完成ボディ100は、モノコック構造10(図1~2)のうち、後部10Bの上部と後部10Bの右側部とが欠けた状態の構造体である。このため、未完成ボディ100において、後部10Bの上部には上部開口100TXが形成され、後部10Bの右部には右部開口100RXが形成される。そして、上部開口100TXと右部開口100RXとは一つの開口として、モノコック構造10に形成される。サイドパネルユニット200は、右部開口100RXを塞ぐように設けられるものであり、ルーフパネルユニット300は、上部開口100TXを塞ぐように設けられるものである。そして、未完成ボディ100と、サイドパネルユニット200と、ルーフパネルユニット300とによって、1つのモノコック構造10をなす。
【0017】
未完成ボディ100の形成材料は、鋼板やアルミニウム合金などの金属材料
を利用することができる。
【0018】
(サイドパネルユニット)
図5~6に示すように、サイドパネルユニット200は、未完成ボディ100(図4)に対して接合されるサイドインナーパネル210と、サイドインナーパネル210の外側面210Aに接合されるサイドアウターパネル220と、サイドインナーパネル210の内側面210Bに接合されるサイド内装トリム230と、サイド内装トリム230に接合されるサイド内装レール250と、サイドインナーパネル210及びサイドアウターパネル220の間に配されるサイドレインフォースメント270と、を備える。
【0019】
(サイドインナーパネル)
サイドインナーパネル210は、接着剤により、未完成ボディ100に対して直接接合されるサイドインナー接合板部212(サイドインナー接合部)と、右部開口100RX(図4)に正対するサイドインナー張出板部213と、サイドインナー接合板部212及びサイドインナー張出板部213を連結するサイド立上板部214と、サイドインナー張出板部213に設けられたサイド縦リブ215と、を備える。
【0020】
図5~6に示すように、サイドインナー接合板部212は、右部開口100RXの周りを囲むように配されるものであり、右部開口100RXの前方縁部110RF(図4)に接合するサイドインナー前方接合板212Fと、右部開口100RXの後方縁部110RB(図4)に接合するサイドインナー後方接合板212Bと、右部開口100RXの下方縁部110RU(図4)に接合するサイドインナー下方接合板212Uと、サイドインナー上方接合板212Tと、を備える。サイドインナー下方接合板212Uは、サイドインナー前方接合板212Fの下端とサイドインナー後方接合板212Bの下端と連結する。そして、サイドインナー上方接合板212Tは、サイドインナー前方接合板212Fの上端とサイドインナー後方接合板212Bの上端と連結する。3つの接合板、すなわち、サイドインナー前方接合板212F、サイドインナー後方接合板212B及びサイドインナー下方接合板212Uは、未完成ボディ100から離れた(図4)の右側面に沿うように形成される一方、サイドインナー上方接合板212Tは、未完成ボディ100から離れる。
【0021】
サイドインナー張出板部213は、XZ平面上に配置され、矩形状となっている。サイド縦リブ215は、サイドインナー張出板部213の外側面210Aに対し、Y方向外側(進行方向からみて右側)に向かって突出する。サイド縦リブ215は、サイドインナー張出板部213において、Z方向に伸びるものであり、X方向において所定の間隔で並ぶ。
【0022】
サイド立上板部214は、サイドインナー前方接合板212Fとサイドインナー張出板部213とを連結するサイド前立上板部214Fと、サイドインナー後方接合板212Bとサイドインナー張出板部213とを連結するサイド後立上板部214Bと、サイドインナー下方接合板212Uとサイドインナー張出板部213とを連結するサイド下立上板部214Uと、サイドインナー上方接合板212Tとサイドインナー張出板部213とを連結するサイド上立上板部214Tと、を備える。4つの立上板部214F~214Tは、サイドインナー接合板部212からY方向外側に向かって起立するように形成される。こうして、サイドインナー張出板部213とサイド立上板部214によって囲まれた空間が拡張された空間(以降、サイド拡張空間210KX(図7)と称する)となる。ここで、さらに、サイドインナー上方接合板212Tは、サイドインナー前方接合板212Fの上端やサイドインナー後方接合板212Bの上部よりも、Y方向外側へ突出することが好ましい。
【0023】
なお、未完成ボディ100の幅が下から上にいくにしたがって狭くなる場合には、サイド上立上板部214TのY方向における長さL1は、サイド下立上板部214TのY方向における長さL2よりも、長い方が好ましい。
【0024】
(サイドアウターパネル)
サイドアウターパネル220は、全体として、XZ平面上に配されるものであり、X方向に長い矩形状に形成される。サイドアウターパネル220は、サイドインナー張出板部213に正対するサイドパネル中央部220Cと、サイドパネル中央部220CのX方向前側に配されたサイドパネル前方縁部220Fと、サイドパネル中央部220CのX方向後側に配されたサイドパネル後方縁部220Bと、サイドパネル中央部220CのZ方向上側に配されたサイドパネル上方縁部220Tと、サイドパネル中央部220CのZ方向下側に配されたサイドパネル下方縁部220Uと、サイドパネル中央部220Cに形成されたサイド横リブ223と、を備える。
【0025】
サイドパネル前方縁部220Fは、サイドインナー前方接合板212Fに接合する。同様に、サイドパネル後方縁部220Bはサイドインナー後方接合板212Bに、サイドパネル下方縁部220Uはサイドインナー下方接合板212Uに、接着剤により、それぞれ接合する。サイドパネル上方縁部220Tは、ボルトBにより、サイドインナー上方接合板212Tに連結される。これにより、サイドインナーパネル210とサイドアウターパネル220とが一体となる。
【0026】
サイドパネル上方縁部220Tは、XY平面に伸びる板状に形成される。サイドパネル上方縁部220Tのうち、Y方向内側には、切り欠き部220TXが形成される。切り欠き部220TXの縁には、切り欠き部220TXに沿って凸条200TAが形成される。凸条200Aの形成により、ルーフパネルユニット300との係合が可能となる。凸条200TAは、XY平面視においてコの字状となっていることが好ましい。
【0027】
サイド横リブ223は、サイドパネル中央部220Cに対しY方向外側に向かって突出するものであり、X方向に延びる。また、サイド横リブ223は、Z方向において所定の間隔で配される。このため、YZ平面におけるサイドパネル中央部220Cの内面は、図7に示すように、サイド横リブ223が形成される凹み部分(内面から見た際に凹となる部分。以降、横リブ凹部分220CXと称する)と、サイド横リブ223が形成さないサイドパネル中央部220C(内面から見た際に凸となる部分。以降、横リブ凸部分220CTと称する)と、がZ方向に沿って交互に並ぶ。なお、サイド横リブ223の形成数は、2本に限らず、1本または3本以上であってもよい。
【0028】
さらに、サイドインナーパネル210のサイド横リブ223と、サイドアウターパネル220のサイド縦リブ215とが、接着剤により接合することが好ましい。
【0029】
図5,7に示すように、サイド縦リブ215の外面は、外側からみて凸の部分(縦リブ凸部分215Tと称する)と、外側からみて凹の部分(縦リブ凹部分215Xと称する)とが、Z方向において、交互に並ぶ。そして、サイドインナーパネル210とサイドアウターパネル220とを接合した際、縦リブ凹部分215Xは、横リブ凸部分220CTに対し当接することが好ましく、縦リブ凸部分215Tは、横リブ凹部分220CXに対し当接することが好ましい。また、2つの縦リブ凸部分215Tの間に横リブ凸部分220CTが挿入され、サイド縦リブ215のZ方向への移動が規制されることが好ましい。同様に、2つの横リブ凸部分220CTの間に縦リブ凸部分215Tが挿入され、サイド横リブ223のX方向への移動が規制されることが好ましい。これにより、サイドインナーパネル210とサイドアウターパネル220とを接合した際、サイド縦リブ215における凹凸構造とサイド横リブ223における凹凸構造とが噛み合った状態で接合される。さらに、縦リブ凹部分215Xは、接着剤により、横リブ凸部分220CTに対し接合されることが好ましく、縦リブ凸部分215Tは、接着剤により、横リブ凹部分220CXに対し接合されることが好ましい。これにより、サイドインナーパネル210とサイドアウターパネル220とがより強固に一体となるとともに、サイドパネルユニット200の剛性が飛躍的に向上する。
【0030】
サイドインナーパネル210及びサイドアウターパネル220の形成材料としては、繊維をプラスチック中で分散させて強化した繊維強化プラスチックを用いることが好ましい。プラスチックとしては、例えば、ナイロン、ポリエステル、エポキシなどが公的に用いられる。繊維としては、例えば、ガラス、ホウ素、炭化ケイ素、アルミナ、炭素、アラミド、鋼等の繊維が用いられる。繊維強化プラスチックとしては、例えば、炭素繊維強化複合材、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)や、アラミド繊維強化樹脂(ArFRP)や、炭化ケイ素繊維強化樹脂(SiCFRP)や、非鉄金属などの金属繊維を用いた繊維強化樹脂などの繊維強化複合材を採用することも可能である。
【0031】
(サイド内装トリム)
図6、7に示すように、サイド内装トリム230は、サイド拡張空間210KXに配されるものであり、未完成ボディ100及びサイドアウターパネル220から離れている。サイド内装トリム230は、板状に形成され、XZ平面上に配される。サイド内装トリム230には、内装サイド横リブ233が設けられる。内装サイド横リブ233は、内側から見て、サイド内装トリム230に対し凹となるように形成され、X方向に伸びる。さらに、内装サイド横リブ233は、Z方向において所定間隔で並ぶ。
【0032】
(サイド内装レール)
図6,8~9に示すように、サイド内装レール250は、筒状に形成されX方向に伸びるレール本体252(図8)と、レール本体252に沿ってスライド自在となるスライド駒254(図8)と、スライド駒254と連結するホルダ256(図9)と、を備える。レール本体252は、サイド内装トリム230の内装サイド横リブ233に収容される。
【0033】
図8(A)に示すように、レール本体252のY方向内側面には、X方向に伸びるスリット252SLが形成されるため、YZ平面におけるサイド内装レール250の断面形状は、コ字状となっている(図8(B))。このスリット252SLには、スリット幅よりも径が大きな挿入孔252BXが、X方向において所定間隔で並ぶように形成される。
【0034】
また、レール本体252のY方向外側面には、自身の長手方向に沿って、所定の間隔でレール孔252TXが形成される。内装サイド横リブ233にレール本体252を収容した際、サイド内装トリム230のレール孔252TXと正対する位置には、トリム孔230TXが形成される。さらに、サイド内装トリム230をサイドインナーパネル210に対し所定の条件で重ねた際、トリム孔230TXと正対するサイドインナーパネル210の位置には、パネル孔210TXが形成される。レール本体252は、レール孔252TX、トリム孔230TX及びパネル孔210TXを挿通するボルトBと、ボルトBに対し螺合するナット(図示省略)によって、サイド内装トリム230とともに、サイドインナーパネル210に対し接合する。こうして、レール本体252とサイドインナーパネル210との接合位置は、X方向において所定間隔で並ぶ。
【0035】
図8(C)に示すように、スライド駒254は、柱状体に形成される。スライド駒254の一端側に形成された挿入片254Aは、挿入孔252BXの径よりも小さく、スリット252SLの幅よりも大きい。スライド駒254の中間部254Bは、スリット252SLの幅よりも小さい。スライド駒254の他端側に形成されたつまみ片254Cは、スリット252SLの幅よりも大きい。なお、スライド駒254のつまみ片254Cは、挿入孔252BXの径よりも大きい方が好ましい。
【0036】
スライド駒254の挿入片254Aを挿入孔252BXに挿入した状態で、スリット252SLに沿ってスライド駒254を移動させる。スライド駒254の中間部254Bはスリット252SLの幅よりも小さい一方、スライド駒254の挿入片254Aは、スリット252SLの幅よりも大きいため、スライド駒254はレール本体252において脱落しない。よって、スライド駒254はレール本体252においてスライド自在になる。
【0037】
図9に示すように、ホルダ256は、医療機器、モニター等の電子機器等の収容物Sを保持するものである。ホルダ256は、スライド駒254の他端部に連結される。このため、ホルダ256によって保持された電気機器等は、レール本体252に沿って移動自在となる。このため、従来、床部に設置せざるを得なかった電気機器等が壁面に設置可能となるだけでなく、電気機器等のレイアウトが容易となる。
【0038】
(サイドレインフォースメント)
図6~7に示すように、サイドレインフォースメント270は、金属(鋼板やアルミニウム合金等)からなり、サイドインナー張出板部213の外面に配される。サイドレインフォースメント270は、Z方向において長く伸びる板状体であり、より詳しく言えば、XY平面における断面形状はコの字状となっている。サイドレインフォースメント270は、X方向において所定間隔で並ぶサイド縦リブ215の間に配される。サイドレインフォースメント270には、ボルト孔270TXが形成される。ボルト孔270TXは、Z方向において所定間隔で並ぶ。パネル孔210TX(図5)は、サイドインナー張出板部213のサイド縦リブ215の間にて形成される。パネル孔210TXは、Z方向において所定の間隔で並ぶ。パネル孔210TX及びボルト孔270TXに通されたボルトBとナット(図示省略)によって、サイドレインフォースメント270とサイドインナーパネル210とを接合することができる(図8(B))。
【0039】
(ルーフパネルユニット)
図10に示すように、ルーフパネルユニット300は、未完成ボディ100の上部開口100TX(図3)を塞ぐように設けられるものであり、未完成ボディ100に対して接合されるルーフインナーパネル310と、ルーフインナーパネル310の外側面(上面)に接合されるルーフアウターパネル320と、ルーフインナーパネル310の内側面(下面)に接合されるルーフ内装トリム330と、ルーフインナーパネル310及びルーフアウターパネル320の間に配されるルーフレインフォースメント370と、を備える。
【0040】
(ルーフインナーパネル)
ルーフインナーパネル310は、接着剤により、未完成ボディ100に対して直接接合されるルーフインナー接合板部312と、上部開口100TXに正対するルーフインナー張出板部313と、ルーフインナー接合板部312及びルーフインナー張出板部313を連結するルーフ立上板部314と、サイドインナー張出板部213に設けられたルーフ縦リブ315及びルーフ横リブ316と、を備える。
【0041】
ルーフインナー接合板部312は、上部開口100TXを囲むように形成されるものであり、上部開口100TX(図3)の前方縁部110TFに接合するルーフインナー前方接合板312Fと、上部開口100TX(図3)の後方縁部110TBに接合するルーフインナー後方接合板312Bと、上部開口100TX(図3)の左方縁部110TLに接合するルーフインナー左方接合板312Lと、サイドアウターパネル220のサイドパネル上方縁部200T(図3、7)に接合するルーフインナー右方接合板312Rと、を備える。
【0042】
なお、ルーフインナー右方接合板312Rには、凸条200TA(図5)と係合可能なルーフパネル係合構造312RK(図10)を備えることが好ましい。ルーフパネル係合構造312RKは、XY平面視においてコの字状となっていることが好ましい。凸条200TAのY方向外側の輪郭に対し、ルーフパネル係合構造312RKのY方向内側の輪郭が係合しやすくなる。
【0043】
ルーフインナー張出板部313は、XY平面上に配置され、矩形状となっている。内装ルーフ縦リブ315は、上側から見て、ルーフインナー張出板部313に対し凸となるように形成され、X方向に伸びる。さらに、内装ルーフ縦リブ315は、Y方向において所定間隔で並ぶ。ルーフ横リブ316は、上側から見て、ルーフインナー張出板部313に対し凸となるように形成され、Y方向に伸びる。さらに、ルーフ横リブ316は、X方向において所定間隔で並ぶ。ルーフ縦リブ315及びルーフ横リブ316が十字またはT字状に交わるため、ルーフインナーパネル310の剛性が向上する。
【0044】
ルーフ立上板部314は、ルーフインナー前方接合板312Fとルーフインナー張出板部313とを連結するルーフ前立上板部314Fと、ルーフインナー後方接合板312Bとルーフインナー張出板部313とを連結するルーフ後立上板部314Bと、ルーフインナー左方接合板312Lとルーフインナー張出板部313とを連結するルーフ左立上板部314Lと、ルーフインナー右方接合板312Rとルーフインナー張出板部313とを連結するルーフ右立上板部314Rと、を備える。4つの立上板部314F~314Tは、ルーフインナー接合板部312からZ方向上側に向かって起立するように形成される。こうして、ルーフインナー張出板部313とルーフ立上板部314によって囲まれた空間が拡張された空間(以降、ルーフ拡張空間310KXと称する。図11)となる。
【0045】
(ルーフアウターパネル)
ルーフアウターパネル320は、板状に形成され、XY平面上に配される。ルーフアウターパネル320は、自身の中央部に位置するルーフパネル中央部320Cと、ルーフパネル中央部320CのX方向前側に配されたルーフパネル前方縁部320Fと、ルーフパネル中央部320CのX方向後側に配されたルーフパネル後方縁部320Bと、ルーフパネル中央部320CのZ方向左側に配されたルーフパネル左縁部320Lと、ルーフパネル中央部320CのZ方向右側に配されたルーフパネル右縁部320Rと、ルーフパネル中央部320Cに形成されたルーフ縦リブ323と、を備える。
【0046】
ルーフ縦リブ323は、サイドパネル中央部320Cに対しZ方向上側に向かって突出するものであり、X方向に延びる。また、ルーフ縦リブ323は、Y方向において所定の間隔で配される。このため、XY平面におけるサイドパネル中央部320Cの下面は、ルーフ縦リブ323が形成される凹み部分(下面から見た際に凹む部分。以降、縦リブ凹部分と称する)と、ルーフ縦リブ323が形成さないサイドパネル中央部320C(下面から見た際に凸となる部分。以降、縦リブ凸部分と称する)と、がZ方向に沿って交互に並ぶ。
【0047】
ルーフパネル前方縁部320Fは、接着剤により、ルーフインナー前方接合板312Fに接合する。同様に、ルーフパネル後方縁部320Bはルーフインナー後方接合板312Bに、ルーフパネル左縁部320Lはルーフインナー左方接合板312Lに、ルーフパネル右縁部320Rはルーフインナー右方接合板312Rに、接着剤によりそれぞれ接合する。これにより、ルーフインナーパネル310とルーフアウターパネル320とが一体化する(図4)。
【0048】
なお、ルーフ横リブ316の上面は、上側からみて凸の部分(リブ凸部分と称する)と、上側からみて凹の部分(リブ凹部分と称する)とが、Y方向において、交互に並ぶことが好ましい。これにより、ルーフインナーパネル310とルーフアウターパネル320とを接合した際、ルーフ横リブ316における凹凸構造とルーフ縦リブ323における凹凸構造とが噛み合った状態で接合される。さらに、ルーフ横リブ316の凹凸構造は、接着剤により、ルーフ縦リブ323の凹凸構造に対し接合されることが好ましい。
【0049】
ルーフインナーパネル310及びルーフアウターパネル320の形成材料としては、サイドインナーパネル210及びサイドアウターパネル220と同様のものを使用することができる。
【0050】
(ルーフ内装トリム)
図10に示すように、ルーフ内装トリム330は、ルーフ拡張空間310KXに配されるものであり、板状に形成され、XY平面上に配される。ルーフ内装トリム330の寸法は、ルーフインナー張出板部313よりもやや小さい方が好ましい。
【0051】
(ルーフレインフォースメント)
ルーフレインフォースメント370は、金属(鋼板やアルミニウム合金等)からなり、ルーフインナー張出板部313の上面に配される。ルーフレインフォースメント370は、Y方向において長く伸びる板状体であり、より詳しく言えば、XZ平面における断面形状はコの字状となっている。ルーフレインフォースメント370は、ルーフ横リブ316の間に配される。パネル孔313TXは、ルーフインナー張出板部313において、ルーフ横リブ316の間に形成される。パネル孔313TXは、Y方向において所定の間隔で並ぶ。そして、ボルトとナットによって、ルーフレインフォースメント370と、ルーフインナーパネル310とを接合することができる。
【0052】
未完成ボディ100の上部開口110TXの周縁部(前方縁部110TF、後方縁部110TB、左方縁部110TL及びサイドアウターパネル220のサイドパネル上方縁部220T(図3、7))には接着剤を塗布する。ルーフパネルユニット300を未完成ボディ100の上部開口100TX(図3)を塞ぐように設けると、上部開口110TXの周縁部とルーフパネルユニット300と接合する。これにより、未完成ボディ100に対して、サイドパネルユニット200及びルーフパネルユニット300が一体となって、モノコック構造10となる。
【0053】
次に、モノコック構造10の組立方法について説明する。
【0054】
図4に示すように、サイドインナーパネル210に対し、外側にはサイドレインフォースメント270を配置し、内側には、サイド内装トリム230及びサイド内装レール250を配置する。ボルトとナットを用いて、これらを一体化する(図8(B))。次に、サイドインナーパネル210の外側に、サイドアウターパネル220を配置する。各接合板212F、212B、212Uに対し接着剤を塗布した後、当該塗布部分に各縁部(前方縁部220F、後方縁部220B、下方縁部220U)を接合させる。さらに、サイドパネル上方縁部220Tは、ボルトBにより、サイドインナー上方接合板212Tに連結される。これにより、サイドインナーパネル210とサイドアウターパネル220とが一体となり、サイドパネルユニット200が得られる。
【0055】
未完成ボディ100の右部開口100RXの周縁部(前方縁部110RF、後方縁部110RB及び下方縁部110RU)に対し接着剤を塗布する。
次に、サイドパネルユニット200の各接合板212F、212B、212Uを、当該周縁部に重ねることにより、未完成ボディ100とサイドパネルユニット200とが接合する(図3)。
【0056】
図10に示すように、ルーフインナーパネル310に対し、上側にはルーフレインフォースメント370を配置し、下側には、ルーフ内装トリム330を配置する。ボルトとナットを用いて、これらを一体化する。次に、ルーフインナーパネル310の上側に、ルーフアウターパネル320を配置する。各接合板312F、312B、312L、312Rに対し接着剤を塗布した後、当該塗布部分に各縁部(前方縁部320F、後方縁部320B、左方縁部320L、右方縁部320R)を接合させる。これにより、ルーフインナーパネル310とルーフアウターパネル320とが一体となり、ルーフパネルユニット300(図4)が得られる。
【0057】
ルーフパネル前方縁部320Fは、接着剤により、ルーフインナー前方接合板312Fに接合する。同様に、ルーフパネル後方縁部320Bはルーフインナー後方接合板312Bに、ルーフパネル左縁部320Lはルーフインナー左方接合板312Lに、ルーフパネル右縁部320Rはルーフインナー右方接合板312Rに、接着剤によりそれぞれ接合する。これにより、ルーフインナーパネル310とルーフアウターパネル320とが一体化する(図4)。
【0058】
未完成ボディ100の上部開口100TXの周縁部(前方縁部110TF、後方縁部110TB、左方縁部110TL及び)及びサイドアウターパネル220のサイドパネル上方縁部220Tに対し接着剤を塗布する。次に、ルーフパネルユニット300の各接合板312F、312B、312L、312Rを、当該接着剤の塗布部分に重ねることにより、未完成ボディ100とルーフパネルユニット300とが接合する(図1)。こうして、モノコック構造10が得られる。
【0059】
本発明のモノコック構造10は、未完成ボディ100と、サイドパネルユニット200と、ルーフパネルユニット300と、を備え、サイドパネルユニット200やルーフパネルユニット300のインナーパネル210,310には、未完成ボディ100に形成された各開口100RX、100TXの周りに接合される周縁部と、各開口100RX、100TXに対し正対する張出部213,313と、各周縁部及び各張出部を連接する各立上板部とを備えるため、サイド拡張空間210KXやルーフ拡張空間310KXを形成することができる。このため、従来よりも広い作業スペースや収納スペースが得られる。
【0060】
また、サイドパネルユニット200においては、サイドインナーパネル210に形成されたサイド縦リブ215とサイドアウターパネル220に形成されたサイド横リブ223とによって、十字構造により、サイドパネルユニット200における剛性が向上する。さらに、サイド縦リブ215に形成された凹凸構造とサイド横リブ223に形成された凹凸構造との係合によって、サイド縦リブ215とサイド横リブ223が嵌合する。そして、サイド縦リブ215とサイド横リブ223との凹凸構造同士が接着剤で接合される。これにより、当該十字構造が安定するため、サイドインナーパネル210とサイドアウターパネル220とがより強固に一体となるとともに、サイドパネルユニット200の剛性が飛躍的に向上する。
【0061】
特に、2つ凹凸構造の係合によって、サイド縦リブ215とサイド横リブ223が嵌合する十字構造は、一体型の十字構造に比べて、設計や製造コストが安価になる。
【0062】
また、X方向に伸びるサイド内装レール250に対し、Z方向に伸びるサイド縦リブ215やサイドレインフォースメント270が一体となるため、サイドパネルユニット200において、当該部品による十字構造が形成される。これにより、サイドパネルユニット200の剛性が飛躍的に向上する。特に、サイド内装レール250は、単なる内装部材ではなく、補強部材としても兼用できる。このため、部品点数も少なくなり、組立作業も少なくなるため、製造コストも安価となる。
【0063】
また、サイドパネルユニット200とルーフパネルユニット300とにおける各インナーパネルやアウターパネルが繊維強化プラスチックで形成されるため、軽量かつ高い剛性の構造体を得ることができる。
【0064】
上記実施形態では、X方向に伸びる内装部材として、サイド内装レール250を用いたが本発明はこれに限られず、X方向に伸びるものであれば、手すりなどでもよい。この内装部材としては、X方向に伸びるものに限られずY方向に伸びるものでもよい。かかる場合において、サイドレインフォースメント270はZ方向に伸びるものであることが好ましい。同様に、ルーフインナーパネル310の内側に内装部材を設けてもよい。この場合には、ルーフインナーパネル310やルーフアウターパネル320に形成されたリブに対して交差、または直交するように内装部材を配置することが好ましい。
【0065】
上記実施形態では、サイドインナーパネル210においてX方向に伸びるサイド横リブ223と、サイドアウターパネル220においてZ方向に伸びるサイド縦リブ215と、を用いて十字構造を形成した。しかし、本発明はこれに限られず、サイドインナーパネル210においてZ方向に伸びるサイド縦リブと、サイドアウターパネル220においてX方向に伸びるサイド横リブと、を用いて十字構造を構成してもよい。同様に、サイドインナーパネル210に設けられたリブとサイドアウターパネル220に設けられたリブとは、本発明の趣旨の範囲であれば、直交しなくてもよく、交差していてもよい。
【0066】
なお、ルーフインナーパネル310及びルーフアウターパネル320のそれぞれにおいて、互いに交差するリブを形成し、この両者のリブによって十字構造を形成してもよい。
【0067】
上記実施形態において、サイドインナーパネル210やルーフインナーパネル310を、接着剤により、未完成ボディ100に対して直接接合させたが、本発明の趣旨の範囲内であれば、本発明はこれに限られない。例えば、サイドインナーパネル210やルーフインナーパネル310を、別部材を介して、未完成ボディ100に対して接合させてもよい。また、サイドインナーパネル210やルーフインナーパネル310同士、あるいは、サイドインナーパネル210やルーフインナーパネル310と、他の部材の接合方法として、接着剤を用いたが、本発明の趣旨の範囲内であれば本発明はこれに限られず、ボルト及びナット等、公知の方法を用いてもよい。
【0068】
上記実施形態において、サイドレインフォースメント270やルーフレインフォースメント370の形成材料は、金属(鋼板やアルミニウム合金等)からなるとしたが、本発明はこれに限られず、本発明の趣旨の範囲内であれば特に限定されないが、レインフォースの形成材料としては、サイドインナーパネル、サイドアウターパネル、ルーフインナーパネル、及びルーフアウターパネルの形成材料よりも強度の高いものであることが好ましい。
【0069】
上記実施形態において、未完成ボディ100は、完成品としてのモノコック構造に対し、上部開口100TXの部分及び右部開口100RXの部分を除去することによって製造してもよいし、モノコック構造のうち上部開口100TXの部分及び右部開口100RXの部分を省略されたものを中間製品として新規に製造してもよい。
【0070】
上記実施形態においては、救急車両2はエンジンを搭載しているが、本発明はこれに限られず、エンジンの代わりにモータを搭載する車両にも適用可能である。また、上記実施形態においては、救急車両2について説明したが、本発明はこれに限られず、一般の車両であってもよい。
【0071】
上記実施形態では、上部開口100TXと右部開口100RXとが一体となって1つの開口を形成するとしたが、本発明はこれに限られず、上部開口100TXと右部開口100RXとが別々の開口となっていてもよい。この場合には、未完成ボディ100に対しサイドパネルユニット200とルーフパネルユニット300とを個別に接合すればよい。
【0072】
なお、ルーフパネルユニット300の左側先端部300TLは、未完成ボディ100に対して突出しており、左側先端部300TLには、照明装置LYである足元灯390が設けられていてもよい(例えば、図12)。足元灯390は、ルーフパネルユニット300の左側先端部300TLのうち下面側に設けられるため、側面開口周りの足元やモノコック構造10の左側周辺部を照らすことができる。
【0073】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
2 救急車両
10 モノコック構造
100 未完成ボディ
200 サイドパネルユニット
200TA 凸条
210 サイドインナーパネル
210KX サイド拡張空間
212 サイドインナー接合板部
213 サイドインナー張出板部
214 サイド立上板部
215 サイド縦リブ
220 サイドアウターパネル
223 サイド横リブ
230 サイド内装トリム
250 サイド内装レール
270 サイドレインフォースメント
300 ルーフパネルユニット
310 ルーフインナーパネル
312 ルーフインナー接合板部
313 ルーフインナー張出板部
315 ルーフ縦リブ
316 ルーフ横リブ
320 ルーフアウターパネル
323 ルーフ縦リブ
330 ルーフ内装トリム
370 ルーフレインフォースメント
【要約】
【課題】従来よりも収容スペース等の拡張が容易な構造体、モノコック構造及び車両を提供する。
【解決手段】
サイドパネルユニット200は、未完成ボディ100に対して接合されるサイドインナーパネル210と、サイドインナーパネル210の外側面210Aに接合されるサイドアウターパネル220と、サイドインナーパネル210の内側面210Bに接合されるサイド内装トリム230と、サイド内装トリム230に接合されるサイド内装レール250と、サイドインナーパネル210及びサイドアウターパネル220の間に配されるサイドレインフォースメント270と、を備える。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12