(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】蛍光体シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220628BHJP
B29C 39/12 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G02B5/20
B29C39/12
(21)【出願番号】P 2018042870
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 位
(72)【発明者】
【氏名】北爪 誠
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-301843(JP,A)
【文献】特開2013-033808(JP,A)
【文献】国際公開第2015/041204(WO,A1)
【文献】特開2017-120358(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043616(WO,A1)
【文献】特開2004-317136(JP,A)
【文献】特表2016-508290(JP,A)
【文献】特開2012-114286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
B29C 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体シートを、蛍光体層と発光素子の発光面が接触するように前記発光素子に重ね合わせ、前記蛍光体シートが重ね合わされた前記発光素子を、配線層を有する基板上に実装するようにした発光装置に使用される前記蛍光体シートの製造方法であって、
液状の第1の光透過性樹脂に粒子状の蛍光体と粒子状の透明体とを混練する工程と、
前記蛍光体及び前記透明体が混練された前記第1の光透過性樹脂を金型の下型に流入させ、前記金型を閉じて、前記蛍光体及び前記透明体が混練された前記第1の光透過性樹脂に熱と圧力を加えて前記蛍光体及び前記透明体が混練された前記第1の光透過性樹脂を所定の厚さに固体化する工程と、を有する蛍光体シートの製造方法。
【請求項2】
前記金型を開いて、前記金型から固体化された前記蛍光体及び前記蛍光体が混練された前記第1の光透過性樹脂を取り出す工程と、
前記固体化された前記蛍光体及び前記透明体が混練された前記第1の光透過性樹脂を乾燥させて硬化させる工程と、を更に有する請求項1に記載の蛍光体シートの製造方法。
【請求項3】
液状の第1の光透過性樹脂に粒子状の蛍光体と粒子状の透明体とを混練する工程と、
前記蛍光体及び前記透明体が混練された前記第1の光透過性樹脂を金型の下型に流入させ、前記金型を閉じて、前記蛍光体及び前記透明体が混練された前記第1の光透過性樹脂に熱と圧力を加えて前記蛍光体及び前記透明体が混練された前記第1の光透過性樹脂を所定の厚さに固体化する工程と、
前記金型を開いて、前記下型に液状の第2の光透過性樹脂を
供給し、前記金型を閉じて、前記固体化された前記第1の光透過性樹脂と、前記第2の光透過性樹脂とに熱と圧力を加えて前記第2の光透過性樹脂を所定の厚さに固体化させるとともに前記第1の光透過性樹脂と前記第2の光透過性樹脂を一体化する工程と、
前記金型を開いて、前記金型から一体化した前記第1の光透過性樹脂及び前記第2の光透過性樹脂を取り出す工程と、
前記一体化した前記第1の光透過性樹脂及び前記第2の光透過性樹脂を乾燥させて硬化させる工程と、を有する蛍光体シートの製造方法。
【請求項4】
前記透明体は、有機微粒子からなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蛍光体シートの製造方法。
【請求項5】
前記蛍光体の平均粒径は1~10μmの範囲内にあり、
前記透明体の平均粒径は0.1~30μmの範囲内にある請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蛍光体シートの製造方法。
【請求項6】
前記第1の光透過性樹脂と前記第2の光透過性樹脂は、同系の樹脂である請求項3に記載の蛍光体シートの製造方法。
【請求項7】
前記第1の光透過性樹脂及び前記第2の光透過性樹脂は、シリコーン樹脂又はアクリル樹脂である請求項6に記載の蛍光体シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、蛍光体を含有した透明樹脂を遠心回転させ、透明樹脂中の蛍光体を沈降させることにより、透明樹脂を透明層と蛍光体層の2層構造とし、この状態で加熱硬化させることにより蛍光体シートを形成し、蛍光体シートを、蛍光体層と発光素子の発光面が接触するように発光素子に重ね合わせ、蛍光体シートが重ね合わされた発光素子を、配線層を有する基板上に実装するようにした発光装置の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる製造方法では、遠心力により各色蛍光体を均一に分布させて沈降させ、蛍光体濃度のばらつきを抑えながら、角度による発光色度のばらつきを抑えることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の蛍光体シートの製造方法では、各色の蛍光体は必ずしも均一に分布して沈降するとは限らず、各色の蛍光体が密集する場合があり、その場合には、発光ムラが生じてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、発光スペクトルのバラツキを無くし、均一な発光スペクトルを得ることができる蛍光体シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る蛍光体シートの製造方法は、蛍光体シートを、蛍光体層と発光素子の発光面が接触するように前記発光素子に重ね合わせ、前記蛍光体シートが重ね合わされた前記発光素子を、配線層を有する基板上に実装するようにした発光装置に使用される前記蛍光体シートの製造方法であって、
液状の第1の光透過性樹脂に粒子状の蛍光体と粒子状の透明体とを混練する工程と、
前記蛍光体及び前記透明体が混練された前記第1の光透過性樹脂を金型の下型に流入させ、前記金型を閉じて、前記蛍光体及び前記透明体が混練された前記第1の光透過性樹脂に熱と圧力を加えて前記蛍光体及び前記透明体が混練された前記第1の光透過性樹脂を所定の厚さに固体化する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発光スペクトルのバラツキを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る蛍光体シートの製造方法の混練工程の一例を示した図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る蛍光体シートの製造方法の一例の一連の工程を示した図である。
【
図3】本実施形態に係る蛍光体シートの製造方法により製造可能な種々の態様のバリア層付蛍光体シートの例を示した図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る蛍光体シートの製造方法を実施した実施例の実施結果を、比較例の実施結果とともに示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る蛍光体シートの製造方法の混練工程の一例を示した図である。混練工程は、光透過性樹脂に蛍光体及び透明体を混練させる。
【0012】
図1(a)は、光透過性樹脂準備工程の一例を示した図である。光透過性樹脂準備工程では、ベース剤となる液状の光透過性樹脂20が準備される。
図1(a)に示されるように、液状の光透過性樹脂20は、例えば、容器10内に準備される。
【0013】
光透過性樹脂20は、光を透過させる種々の樹脂を用いることができるが、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等が用いられる。光透過性樹脂20は、作製しようとする蛍光体シートの用途に応じて、適切な光透過性樹脂20を選択することができる。
【0014】
図1(b)は、混練工程の一例を示した図である。混練工程では、ベース剤となる光透過性樹脂20内に蛍光体30及び透明体40が供給し、これらを混練する。そして、光透過性樹脂20に蛍光体30及び透明体40が混練された混練光透過性樹脂50を得る。光透過性樹脂20自体は粘度の低いサラサラした液体状態であるが、混練により、粘度が上昇し、混練光透過性樹脂50は流動体となる。
【0015】
蛍光体30は、入射した原光の波長を変換し、原光と異なる所定の波長の光を得る波長変換物質である。例えば蛍光体30は、赤色蛍光体30R、緑色蛍光体30Gを含む。文字通り、赤色蛍光体30Rは入射した光を赤色波長に変換して発光する蛍光体である。同様に、緑色蛍光体30Gは入射した光を緑色波長に変換して発光する蛍光体である。
【0016】
蛍光体30は、微粒子として構成される。蛍光体30は、例えば、数μm~10μm程度、好ましくは1μm~10μm、更に好ましくは2μm~10μmの平均粒径を有する微粒子として構成される。
【0017】
透明体40は、原光、例えば青色LEDの青色光を選択透過させると共に蛍光体30の凝集、集結を防ぐための物質である。透明体40も、微粒子として構成される。透明体40は、例えば、0.1μm~30μm程度の平均粒径を有する有機ビーズ(有機微粒子)が用いられる。透明体40は、透明な微粒子であれば、種々の材料を用いることができる。
【0018】
本実施形態の混練光透過性樹脂50では、透明体40が原光、例えば青色LEDの青色光を選択透過するので、波長変換された赤色光、波長変換された緑色光、原光の青色光の3色が適切なバランスで混色し、白色光を得ることができる。
【0019】
また、透明体40を加えることにより、原光を選択透過させることができるので、後述する金型を使用した圧縮成形により、蛍光体30の微粒子と透明体40の微粒子との粒子間隙を無くし、密接触させることができ、蛍光体30の吸光励起効率を向上させることができる。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る蛍光体シートの製造方法の一例の一連の工程を示した図である。より詳細には、
図1で準備した混練光透過性樹脂50を用いて、蛍光体シートを作製するための一連の工程を示した図である。
【0021】
図2(a)は、ハンドリング基板設置工程の一例を示した図である。ハンドリング基板取り付け工程においては、金型60の上型61に、ハンドリング基板70が設置される。
【0022】
本実施形態に係る蛍光体シートの製造方法では、金型60を用いて圧縮成形法により蛍光体シートを製造する。金型60は、上型61と下型62とを有する。また、ハンドリング基板70は、フィルム状の基板であり、最終的には除去される基板である。
【0023】
ハンドリング基板設置工程では、金型60を開き、上型61の方にハンドリング基板70を設置する。下型には、この段階では特に何も設置されない。
【0024】
図2(b)は、混練光透過性樹脂供給工程の一例を示した図である。混練光透過性樹脂供給工程では、開いた金型60の下型62に混練光透過性樹脂50を供給する。ここで、混練光透過性樹脂50は、
図1で説明した混練工程で準備された混練光透過性樹脂50である。
【0025】
図2(c)は、蛍光体シート成形工程の一例を示した図である。蛍光体シート成形工程では、金型60を閉じて、所定時間、所定の圧力と所定の熱を混練光透過性樹脂50に印加し、混練光透過性樹脂50を硬化(キュア)する。これにより、蛍光体シート51が成形される。なお、蛍光体シート成形工程における圧力、熱量、硬化時間(キュアタイム)は、用途に応じて、適切な設定とすることができる。
【0026】
図2(d)は、バリアシート用光透過性樹脂準備工程の一例を示した図である。バリアシート用光透過性樹脂準備工程では、金型60が開かれるとともに、下型62にバリアシート用の光透過性樹脂80が供給される。この段階で、成形された蛍光体シート51を取り出す場合には、上型61から蛍光体シート51を取り外してもよい。蛍光体シート51は、弾力性があまり無い、言わばパリパリの状態であり、過度の外力を加えると折れて破損するおそれがあるので、取扱いに注意する必要がある。
【0027】
一方、蛍光体シート51の表面にバリアシートを形成する場合には、蛍光体シート51を上型61にそのまま保持した状態とし、下型にバリアシート用の光透過性樹脂80を供給する。ここで、区別の容易のため、混練光透過性樹脂50に用いた光透過性樹脂20を第1の光透過性樹脂20、バリアシート用の光透過性樹脂80を第2の光透過性樹脂80と呼んでもよいこととする。
【0028】
第2の光透過性樹脂80は、第1の光透過性樹脂20と同一の樹脂であってもよいし、互いに異なる樹脂であってもよい。但し、互いに異なる樹脂を用いる場合であっても、光学的特性を安定させるため、樹脂系は同一である方が好ましく、例えば、第1の光透過性樹脂20をシリコーン樹脂とした場合には、第2の光透過性樹脂50もシリコーン樹脂とすることが好ましい。また、第1の光透過性樹脂20をアクリル樹脂とした場合には、第2の光透過性樹脂50もアクリル樹脂とすることが好ましい。なお、シリコーン樹脂、アクリル樹脂の中にも様々な化合物があるので、同系の中で、用途に応じて異なる化合物、製品の樹脂を用いるのは何ら問題無い。但し、第1の光透過性樹脂20と第2の光透過性樹脂80が同系であることは必須ではなく、異なる系の光透過性樹脂20、80を用いることも可能である。
【0029】
また、第2の光透過性樹脂80は、バリアシートに適した樹脂であれば、用途に応じて種々の光透過性樹脂を用いることができる。例えば、第2の光透過性樹脂80として、シリコーン樹脂やアクリル樹脂を用いるようにしてもよい。
【0030】
ここで、バリアシートは、蛍光体シート51に表面に設けられ、蛍光体シート51に水分、埃が入るのを防止するための保護膜であり、酸素透過率をコントロールした樹脂が用いられる。よって、第2の光透過性樹脂80は、そのような、酸素透過率が調整された樹脂を選択することが好ましい。
【0031】
図2(e)は、バリアシート成形工程の一例を示した図である。バリアシート成形工程では、金型60を閉じ、所定時間、所定の圧力と所定の熱を蛍光体シート51及び第2の光透過性樹脂80に印加し、第2の光透過性樹脂80を硬化(キュア)する。これにより、バリアシート81が、蛍光体シート51と一体化した状態で成形される。なお、バリアシート成形工程における圧力、熱量、硬化時間(キュアタイム)は、用途に応じて、適切な設定とすることができる。
【0032】
図2(f)は、バリア層付蛍光体シート取り出し工程の一例を示した図である。バリア層付蛍光体シート取り出し工程では、バリアシート81と蛍光体シート51が一体化して成形されたバリア層付蛍光体シート90がハンドリング基板70とともに上型61から取り外される。一体化されているため、バリアシート81と蛍光体シート51との間に境界は無く、バリアシート81と蛍光体シート51とが連続した状態でバリア層付蛍光体シート90が形成される。この点、単独のバリアシートを蛍光体シートに接合した構成とは異なる。接合による場合、接合層がバリアシートと蛍光体シートとの間に形成されるからである。
【0033】
そして、バリア層付蛍光体シート90を所定時間乾燥させて硬化させ、ハンドリング基板70を取り外す。このようにして、バリア層付蛍光体シート90を取得することができる。なお、バリア層付蛍光体シート90の乾燥時間も、バリア層付蛍光体シート90を乾燥及び硬化できる限り、用途に応じて種々の時間に設定することができる。
【0034】
得られたバリア層付蛍光体シート90は、弾力性があるフレキシブルな性質、又は伸展性があるストレッチャブルな性質を有し、耐性が非常に強く、破損し難いシートとなる。
【0035】
以上、蛍光体シート51及びバリア層付蛍光体シート90の製造方法について説明したが、本実施形態に係る蛍光体シート51及びバリア層付蛍光体シート90の製造方法は、従来の蛍光体シートの製造方法と大きく異なっている点がある。
【0036】
まず、従来の蛍光体シートの製造方法では、液状の光透過性樹脂に蛍光体のみを混入させ、この液をベース板に塗布し、乾燥及び硬化させてシート形状を得て蛍光体シートを製造するということを行っていた。ここで、蛍光体が混練された液状の光透過性樹脂をベース板に塗布する塗布法としては、コーター類、スピナー類等の成膜機を用いた方法、スクリーン印刷、平板印刷等の印刷法等が用いられ、更に、蛍光体を分散した液状樹脂をディスペンスし、塗布膜をもってシートとする方法も用いられる。
【0037】
しかしながら、蛍光体の微粒子を液状の光透過性樹脂に加えた状態は、
図1の説明で述べたように、液状の光透過性樹脂に蛍光体という異物を混入させていることと同等の状態であるため、各色の蛍光体の比重・体積差等により、流動状態に差異を生じてしまう。そのため、コーター類、スピナー類等で膜厚を制御することは困難である。また、印刷法では、機械的掻取から埋め込みにより膜厚を制御するため、均一性に限界があり、脆性材である蛍光材料の局部的負荷による破壊変質が懸念される。また、ディスペンスは、樹脂の粘度、流動性に依存し、加えて表面張力に起因する塗布形状の不安定さの解消は困難である。
【0038】
更に、塗布法及び印刷法では、最適条件は有するが、狭鋭範囲であるとともに、蛍光体の含有率等の条件設定が必要となる。例えば、塗布法での面内膜厚バラツキが30%、印刷法での膜厚バラツキが±5~±3%とし、膜厚モデルを200μmtとした場合、塗布法では140~260μmt、印刷法では190~210μmtとなってしまい、発光スペクトル(色度、輝度、色温度)にバラツキが生じる原因となる。
【0039】
一方、本実施形態に係る蛍光体シートの製造方法によれば、圧縮成形を用いるため、膜厚の制御を金型60により容易に行うことができ、例えば、所望の板厚に対して、±2μm以下の面内バラツキ(膜厚ズレ)に抑制することが可能であり、膜厚バラツキに起因する発光スペクトルのバラツキを大幅に抑制することができ、所望の光学特性を得ることができる。
【0040】
更に、蛍光体シートの表面には、保護フィルムが設けられることが多いが、従来の保護フィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PI(ポリイミド樹脂)、公知の離型剤が塗布されて設けられ、LEDと接合する際、取り外し、除去される。
【0041】
また、蛍光体シートは、蛍光体の劣化を防止するため、透光性樹脂等による封止材を直上に設置するが、多くは別部品として、別工程にて処理される。
【0042】
このように、従来の蛍光体シートの製造方法では、保護フィルム、封止材を別部品として用意し、蛍光体シートに接合等するという形成方法が採用されていた。
【0043】
しかしながら、本実施形態に係る蛍光体シートの製造方法では、
図2(d)~(f)で説明したように、蛍光体シート51とバリアシート81とを連続成形することができる。これにより、蛍光体シート51とバリアシート81との境界が無く、完全に一体化した連続状態でバリア層付蛍光体シート90を製造することができ、安定性及び光学特性に優れた高品質のバリア層付蛍光体シート90を製造することができる。即ち、均一な界面とすることで、光の取り出しを妨げる光透過性減衰(不要反射・不要屈折等)の発生を抑制することができるため、光学的特性が安定する。そして、製造したバリア層付蛍光体シート90又は蛍光体シート51をLED発光装置、光源装置等に用いることにより、輝度むらや色むらの無い安定したLED発光装置、光源装置を得ることができる。
【0044】
図3は、本実施形態に係る蛍光体シートの製造方法により製造可能な種々の態様のバリア層付蛍光体シートの例を示した図である。
【0045】
図3(a)は、
図2で説明した第1の実施形態に係るバリア層付蛍光体シート90の断面構成を示した図である。
図3(a)においては、蛍光体シート51の上面を、バリアシート81が覆う構成が示されている。例えば、このように、バリア層付蛍光体シート90を、蛍光体シート51の上面に、バリアシート81を設ける構成としてもよい。
【0046】
図3(b)は、第2の実施形態に係るバリア層付蛍光体シート91の一例を示した断面図である。
図3(b)に示された第2の実施形態に係るバリア層付蛍光体シート91は、蛍光体シート51の下面にバリアシート82が設けられた構成を有する。バリア層付蛍光体シート91は、このような、下面がバリアシート82で覆われた構成を有してもよい。
【0047】
図3(c)は、第3の実施形態に係るバリア層付蛍光体シート92の一例を示した断面図である。
図3(c)に示された第3の実施形態に係るバリア層付蛍光体シート92は、蛍光体シート51の上面にバリアシート81、下面にバリアシート82が設けられた構成を有する。このように、蛍光体シート51の両面がバリアシート81、82で覆われている構成であってもよい。水分、埃等の侵入を、上面及び下面の両面から防ぐことができ、蛍光体シート51の劣化を確実に防ぐことができる。
【0048】
図3(d)は、第4の実施形態に係るバリア層付蛍光体シート93の断面構成を示した図である。
図3(d)においては、異なる蛍光体30の種類、配合比等を有する2層の蛍光体シート52、53を積層して構成した蛍光体シート54を有し、その蛍光体シート54(より詳細には蛍光体シート52)の上面を、バリアシート81で覆う構成が示されている。例えば、このように、2種類の蛍光体シートを積層させて蛍光体シート54を構成し、その蛍光体シート54の上面に、バリアシート81を設ける構成としてもよい。
【0049】
図3(e)は、第5の実施形態に係るバリア層付蛍光体シート94の一例を示した断面図である。
図3(e)に示された第5の実施形態に係るバリア層付蛍光体シート92は、第3の実施形態に係るバリア層付蛍光体シート92と同様に、蛍光体シート51の上面にバリアシート81、下面にバリアシート82が設けられた構成を有し、更に上面のバリアシート81上に保護フィルム100が設けられた構成を有する。なお、保護フィルム100は、圧縮成形により、バリアシート81と同時に形成されてよい。このように、蛍光体シート51の両面をバリアシート81、82で覆うとともに、更にバリアシート81の上面に保護フィルム100を設けることにより、水分、埃等の侵入を、より一層確実に防ぐことができ、蛍光体シート51の劣化を確実に防ぐことができる。
【0050】
[実施例]
図4は、本発明の実施形態に係る蛍光体シートの製造方法を実施した実施例の実施結果を、比較例の実施結果とともに示した図である。
【0051】
図4(a)は、本実施形態に係る蛍光体シートの製造方法を実施した実施例の実施結果を示した拡大写真である。
【0052】
より詳細には、蛍光体シートの上面にバリアシートも形成したバリア層付蛍光体シートの拡大写真である。
図4(a)において、白くなっている箇所が、光が漏れている、つまり蛍光体が存在しない箇所であるが、大きな白い塊は見られず、全体として蛍光体が均一に分布していることが分かる。
【0053】
図4(b)は、比較例に係る蛍光体シートの製造方法により製造されたバリア層付蛍光体シートの拡大写真である。比較例に係る蛍光体シートの製造方法では、印刷法により蛍光体シートを作製し、その後、別部品であるバリアシートを接合してバリア層付蛍光体シートを作製した。
【0054】
図4(b)に示されるように、白い塊が複数箇所に見られ、光の漏れが多くなっている箇所が存在することが分かる。このように、印刷法では、蛍光体の分布にムラが生じ、発光スペクトルにバラツキが出てしまう。
【0055】
一方、
図4(a)に示されるように、本実施例に係るバリア層付蛍光体シートでは、蛍光体の分布が均一であり、均一な発光スペクトルを有するバリア層付蛍光体シートの製造が可能であることが示された。
【0056】
なお、バリア層は単なる透明なシートなので、バリア層の設けられていない蛍光体シートも当然に均一は発光スペクトルを実現できる。
【0057】
このように、本実施形態に係る蛍光体シートの製造方法によれば、蛍光体のみならず、透明体を液状の光透過性樹脂に混練させて混練光透過性樹脂を用意し、これを用いて圧縮成形を行うことにより、均一な発光スペクトルを有する高性能の蛍光体シートを製造することができる。更に、その後、バリアシートをやはり圧縮成形により一体形成することにより、弾力性、伸展性及び柔軟性を有し、大きな耐性を有するバリア層付蛍光体シートを製造することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0059】
20、80 光透過性樹脂
30、30R、30G 蛍光体
40 透明体
50 混練光透過性樹脂
51 蛍光体シート
60 金型
81 バリアシート
90~94 バリア層付蛍光体シート