(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】テーラードブランクの取り出し方法
(51)【国際特許分類】
B21D 43/24 20060101AFI20220628BHJP
B65H 1/14 20060101ALI20220628BHJP
B65H 3/48 20060101ALI20220628BHJP
B65H 3/60 20060101ALI20220628BHJP
B65H 3/08 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B21D43/24 E
B65H1/14 322A
B65H1/14 322B
B65H3/48 310A
B65H3/60 310
B65H3/08 310A
B21D43/24 B
(21)【出願番号】P 2019211783
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000238946
【氏名又は名称】株式会社エイチアンドエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】義元 崇晃
(72)【発明者】
【氏名】廣部 伸弘
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-212475(JP,A)
【文献】中国実用新案第202762884(CN,U)
【文献】特開2010-207858(JP,A)
【文献】特開2010-194567(JP,A)
【文献】特開平10-296359(JP,A)
【文献】特開平01-122834(JP,A)
【文献】特開昭57-131641(JP,A)
【文献】特開2009-142948(JP,A)
【文献】特開2015-213954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/24
B65H 1/14
B65H 3/48
B65H 3/60
B65H 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが異なるブランク片の端面同士を
下面が面一となるように当接させて一体に溶接した複数のテーラードブランクが、それぞれ
前記下面が下となるように
同じ向きに積層されたスタックを載置するための
板状の載置台と、該載置台
に縦横に複数配列され上下方向に貫通した貫通孔に対応する位置の下方に配置され、前記スタックを上昇移動させるための複数のリフターと、前記テーラードブランクを吸着するための複数の吸着部を有する吸着手段と、
予め設定された取り出し位置に向けて配置された複数の第1検出センサー及び複数の第2検出センサーと、を備え
るディスタック装置を用い、
少なくとも、前記テーラードブランクの薄肉のブランク片同士が積層された薄肉領域と、前記テーラードブランクの厚肉のブランク片同士が積層された厚肉領域とを有
する前記スタックから、該スタックの最上位に位置する最上位テーラードブランクのみを取り出すためのテーラードブランクの取り出し方法であって、
前記載置台に載置された前記スタックの前記薄肉領域と前記厚肉領域との上面が略面一となり、且つ、前記薄肉領域と前記厚肉領域との上端が
前記取り出し位置に到達するまで、前記複数のリフターをそれぞれ独立に駆動させ
、前記貫通孔を通過させて前記スタックの下面に当接させ、前記スタックを上昇させるスタック上昇ステップと、
前記吸着手段が、前記吸着部を、前記取り出し位置まで下降させ、前記最上位テーラードブランクに吸着させる吸着ステップと、
前記吸着手段が、前記吸着部を上昇させ、前記最上位テーラードブランクのみを上昇させるブランク上昇ステップと、
前記吸着手段が、前記最上位テーラードブランクを別の位置に搬送するとともに、前記吸着部を、前記最上位テーラードブランクから離脱させる搬送ステップと、
複数の前記リフターがそれぞれ独立に、取り出されたテーラードブランクの厚さの分だけ前記スタックを上昇させるピッチ上昇ステップと、
を有し、
前記第1検出センサーは、前記薄肉領域の両側に設けられ、前記第2検出センサーは、前記厚肉領域の両側に設けられ、
前記スタック上昇ステップ及び前記ピッチ上昇ステップにおいては、前記第1検出センサーが前記取り出し位置に到達した前記薄肉領域の上端を検出し、前記第2検出センサーが前記取り出し位置に到達した前記厚肉領域の上端を検出するまで、前記複数のリフターがそれぞれ独立に駆動して前記スタックを上昇させるものであり、
前記スタック上昇ステップが行われた後、前記吸着ステップ、前記ブランク上昇ステップ、前記搬送ステップ及び前記ピッチ上昇ステップが繰り返し行われるテーラードブランクの取り出し方法。
【請求項2】
前記複数のリフターがいずれも
サーボモータの回転をボールねじの直線機構に変換し、これによりシリンダを昇降させるサーボシリンダであ
り、
該サーボシリンダが、それぞれ独立に、サーボモータの回転数を制御することで、前記シリンダの位置が制御される請求項1記載のテーラードブランクの取り出し方法。
【請求項3】
前記取り出し位置が水平面であり、前記第1検出センサー及び前記第2検出センサーが同一水平面に配置されている請求項1又は2に記載のテーラードブランクの取り出し方法。
【請求項4】
記第1検出センサー及び前記第2検出センサーが光線を発射する光電センサーであり、
前記吸着ステップにおいて、前記光線の平面位置に対応するように配列された前記複数の吸着部を、前記最上位テーラードブランクに吸着させる請求項
1~3のいずれか1項に記載のテーラードブランクの取り出し方法。
【請求項5】
前記吸着手段が、少なくとも、複数のアーム部と、該アーム部の先端にそれぞれ設けられた前記吸着部とを有し、
前記複数のアーム部がフレームに固定されて一体化されており、
前記吸着部が、弾性変形が可能な吸着カップからなる請求項1~4のいずれか1項に記載のテーラードブランクの取り出し方法。
【請求項6】
前記ディスタック装置が、前記スタックの両側にそれぞれ設けられたマグネットフロータ及びエアーブローを更に備え、
前記スタック上昇ステップにおいて、前記マグネットフロータにより前記スタックに磁力が付与され、前記エアーブローにより前記最上位テーラードブランクとその直下のテーラードブランクとの間に向けてエアーが吹き付けられる請求項1~5のいずれか1項に記載のテーラードブランクの取り出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーラードブランクの取り出し方法に関し、更に詳しくは、スタックの最上位に位置する最上位テーラードブランクを取り出すための取り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属加工の分野においては、長尺状のシート体を所望のサイズのブランクに切断し、それらを積み重ねて、いわゆるスタックとする工程が行われる。
そして、スタックの状態で所定の加工装置の位置まで移動され、当該スタックから1枚ずつブランクが取り出されて、プレス加工等の金属加工が施される。
【0003】
例えば、このようなスタックから1枚ずつブランクを取り出す方法として、エアーシリンダを用いたワーク吸着保持方法が知られている(例えば、特許文献1又は2参照)。かかるワーク吸着保持方法においては、エアーシリンダのピストンの下端に接続された吸着手段が、リフターにより支持されたスタックの最上位のワーク(ブランク)を吸着保持し、その後、ピストンを上昇させて、最上位のブランクを持ち上げることにより、スタックから最上位のブランクを分離し取り出している。
【0004】
ところで、近年、厚さが異なるブランク片の端面同士を当接させて一体に溶接した、いわゆるテーラードブランクがプレス加工の対象として注目されている。
テーラードブランクが積層されたスタックにおいては、厚肉のブランク片同士が積層された部分(厚肉領域)と、薄肉のブランク片同士が積層された部分(薄肉領域)とでは段差が生じてしまい、しかもテーラードブランクを取り出す度に段差のサイズが変化するため、例えば、吸着手段のアームにバネ等を取り付けて当該段差を吸収できるように対応させ、スタックから最上位のテーラードブランクを取り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-142948号公報
【文献】特開2010-194567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した吸着手段にバネ等を取り付けた特殊仕様の場合は、バネの分の重量が増加するため、吸着手段に、その分の重量負荷が加わるという問題がある。この場合、慣性の観点から、吸着手段の駆動速度が低下し、吸着の精度も低下することになる。
また、テーラードブランクの薄肉のブランク片同士が積層された部分は、その上端が端面視で湾曲することになるため、吸着手段の吸着部がその上面を吸着できない場合がある(
図1の(b)参照)。
また、テーラードブランクの段取り替え等により、吸着手段のバネをロッドに対応できるように交換する必要があるため、手間がかかるという欠点もある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、既存の仕様の吸着手段を用いることができ、且つ、最上位のテーラードブランクを確実に吸着して取り出すことが可能なテーラードブランクの取り出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、薄肉領域と厚肉領域との上面が略面一となり、且つ、それらの上端が予め設定された取り出し位置に到達するまで、複数のリフターをそれぞれ独立に駆動させてスタックを上昇させるスタック上昇ステップを採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、(1)厚さが異なるブランク片の端面同士を下面が面一となるように当接させて一体に溶接した複数のテーラードブランクが、それぞれ下面が下となるように同じ向きに積層されたスタックを載置するための板状の載置台と、該載置台に縦横に複数配列され上下方向に貫通した貫通孔に対応する位置の下方に配置され、スタックを上昇移動させるための複数のリフターと、テーラードブランクを吸着するための複数の吸着部を有する吸着手段と、予め設定された取り出し位置に向けて配置された複数の第1検出センサー及び複数の第2検出センサーと、を備えるディスタック装置を用い、少なくとも、テーラードブランクの薄肉のブランク片同士が積層された薄肉領域と、テーラードブランクの厚肉のブランク片同士が積層された厚肉領域とを有するスタックから、該スタックの最上位に位置する最上位テーラードブランクのみを取り出すためのテーラードブランクの取り出し方法であって、載置台に載置されたスタックの薄肉領域と厚肉領域との上面が略面一となり、且つ、薄肉領域と厚肉領域との上端が取り出し位置に到達するまで、複数のリフターをそれぞれ独立に駆動させ、貫通孔を通過させてスタックの下面に当接させ、スタックを上昇させるスタック上昇ステップと、吸着手段が、吸着部を、取り出し位置まで下降させ、最上位テーラードブランクに吸着させる吸着ステップと、吸着手段が、吸着部を上昇させ、最上位テーラードブランクのみを上昇させるブランク上昇ステップと、吸着手段が、最上位テーラードブランクを別の位置に搬送するとともに、吸着部を、最上位テーラードブランクから離脱させる搬送ステップと、複数のリフターがそれぞれ独立に、取り出されたテーラードブランクの厚さの分だけスタックを上昇させるピッチ上昇ステップと、を有し、第1検出センサーは、薄肉領域の両側に設けられ、第2検出センサーは、厚肉領域の両側に設けられ、スタック上昇ステップ及びピッチ上昇ステップにおいては、第1検出センサーが取り出し位置に到達した薄肉領域の上端を検出し、第2検出センサーが取り出し位置に到達した厚肉領域の上端を検出するまで、複数のリフターがそれぞれ独立に駆動してスタックを上昇させるものであり、スタック上昇ステップが行われた後、吸着ステップ、ブランク上昇ステップ、搬送ステップ及びピッチ上昇ステップが繰り返し行われるテーラードブランクの取り出し方法に存する。
【0010】
本発明は、(2)複数のリフターがいずれもサーボモータの回転をボールねじの直線機構に変換し、これによりシリンダを昇降させるサーボシリンダであり、該サーボシリンダが、それぞれ独立に、サーボモータの回転数を制御することで、シリンダの位置が制御される上記(1)記載のテーラードブランクの取り出し方法に存する。
【0011】
本発明は、(3)取り出し位置が水平面であり、第1検出センサー及び第2検出センサーが同一水平面に配置されている上記(1)又は(2)に記載のテーラードブランクの取り出し方法に存する。
【0012】
本発明は、(4)第1検出センサー及び第2検出センサーが光線を発射する光電センサーであり、吸着ステップにおいて、光線の平面位置に対応するように配列された複数の吸着部を、最上位テーラードブランクに吸着させる上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のテーラードブランクの取り出し方法に存する。
【0013】
本発明は、(5)吸着手段が、少なくとも、複数のアーム部と、該アーム部の先端にそれぞれ設けられた吸着部とを有し、複数のアーム部がフレームに固定されて一体化されており、吸着部が、弾性変形が可能な吸着カップからなる上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のテーラードブランクの取り出し方法に存する。
【0014】
本発明は、(6)ディスタック装置が、スタックの両側にそれぞれ設けられたマグネットフロータ及びエアーブローを更に備え、スタック上昇ステップにおいて、マグネットフロータによりスタックに磁力が付与され、エアーブローにより最上位テーラードブランクとその直下のテーラードブランクとの間に向けてエアーが吹き付けられる上記(1)~(5)のいずれか1つに記載のテーラードブランクの取り出し方法に存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のテーラードブランクの取り出し方法においては、ディスタック装置の複数のリフターを、それぞれ独立に駆動させることが可能となっている。すなわち、昇降させる際の移動量をリフター毎に変えることができる。このことから、テーラードブランクの取り出し方法においては、スタック上昇ステップにおいて、複数のリフターがそれぞれ独立に薄肉領域(及び厚肉領域)を上昇させることにより、薄肉領域と厚肉領域との上面が略面一となるようにすることができる。
【0016】
これにより、薄肉領域の上端が湾曲せず、薄肉領域の上面が厚肉領域の上面と面一の平面となるため、吸着手段の吸着部が確実に最上位テーラードブランクを吸着することが可能となる。すなわち、吸着が不十分となり、吸着したテーラードブランクが取り出し中に落下する等のエラーが生じることを抑制できる。
また、テーラードブランクの取り出し方法においては、複数のリフターが、厚肉領域及び薄肉領域の上端が予め設定された取り出し位置に到達するまで、当該スタックを上昇させることにより、次の吸着ステップにおいて、吸着部を最上位テーラードブランクに容易且つ確実に吸着させることが可能となる。
【0017】
したがって、テーラードブランクの取り出し方法によれば、スタック上昇ステップ、吸着ステップ、ブランク上昇ステップ、搬送ステップ及びピッチ上昇ステップを行うことにより、最上位テーラードブランクを確実に吸着して取り出すことができる。
また、スタック上昇ステップが行われた後、吸着ステップ、ブランク上昇ステップ、搬送ステップ及びピッチ上昇ステップを繰り返し行うことにより、テーラードブランクを連続して順次取り出すことができる。
なお、テーラードブランクの取り出し方法においては、既存の吸着手段を用いることができ、バネ等の余分な装置を取り付ける必要もないため、手間がかからないという利点もある。
【0018】
このとき、本発明のテーラードブランクの取り出し方法においては、複数のリフターがいずれもサーボシリンダであることが好ましい。この場合、比較的狭いスペースであっても設置することができ、且つ、サーボモータの回転数を制御するだけで、正確な位置制御を行うことができる。
【0019】
本発明のテーラードブランクの取り出し方法においては、ディスタック装置が、取り出し位置に向けて配置された複数の第1検出センサー及び複数の第2検出センサーを更に備える場合、厚肉領域の上端及び薄肉領域の上端が取り出し位置に到達したか否かを検出することができる。
これにより、最上位テーラードブランクが取り出し位置に到達したことを確認してから次の吸着ステップを行うことができる。また、第1検出センサー及び第2検出センサーからの信号に基づいて、各リフターの駆動を制御することも可能となる。
【0020】
本発明のテーラードブランクの取り出し方法においては、第1検出センサー及び第2検出センサーが光線を発射する光電センサーである場合、複数の吸着部を、光線の平面位置に対応するように配列することにより、最上位テーラードブランクに確実に吸着させることが可能となる。すなわち、第1検出センサー及び第2検出センサーが検出しない光線同士の間に、突起部等があったとしても、吸着部をそこに吸着させないようにすることで、吸着不良等のエラーが生じることを抑制できる。
【0021】
本発明のテーラードブランクの取り出し方法においては、吸着部として、弾性変形が可能な吸着カップを採用することにより、伸縮する分だけ自由度があるため、最上位テーラードブランクの上端が取り出し位置Pよりも下方に位置した場合であっても対応することができる。その結果、最上位テーラードブランクを1枚ずつ複数回取り出した後に、ピッチ上昇ステップを行うことが可能となる。すなわち、ピッチ上昇ステップを行う頻度を減らせるので、テーラードブランクを取り出す効率を向上させることができる。
【0022】
本発明のテーラードブランクの取り出し方法においては、ディスタック装置が、マグネットフロータ及びエアーブローを備える場合、最上位テーラードブランクを取り出す際に、当該最上位テーラードブランクに、直下のテーラードブランクが密着した状態となって取り出されてしまう、いわゆるダブルブランクが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1の(a)は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法により取り出されるテーラードブランクを示す概略側面図であり、
図1の(b)は、複数のテーラードブランクが積層されたスタックを示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法に用いられるディスタック装置の全体を示す概略側面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法のスタック上昇ステップを説明するための概略側面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法の吸着ステップを説明するための概略側面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法のブランク上昇ステップを説明するための概略側面図である。
【
図7】
図7の(a)及び(b)は、他の実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法により取り出されるテーラードブランクを示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法は、複数のテーラードブランクが積層されたスタックから該スタックの最上位に位置するテーラードブランク(以下「最上位テーラードブランク」ともいう。)を取り出す方法である。
図1の(a)は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法により取り出されるテーラードブランクを示す概略側面図であり、
図1の(b)は、複数のテーラードブランクが積層されたスタックを示す概略側面図である。
図1の(a)に示すように、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法において、テーラードブランクXは、厚さが異なるブランク片の端面同士を連結させたものである。具体的には、薄肉のブランク片X1と、厚肉のブランク片X2との端面同士を、下面が面一となるように当接させて、一体に溶接したものである。ちなみに、テーラードブランクは、一般に一方側の面が露出する外側面となるため、その一方側の面全体が面一となるように溶接される。
なお、薄肉のブランク片X1及び厚肉のブランク片X2の材質としては、特に限定されず、冷間圧延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板等が挙げられる。薄肉のブランク片X1及び厚肉のブランク片X2の材質は、同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
図1の(b)に示すように、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法において、複数のテーラードブランクXは、それぞれ同じ向きとなるように積層されてスタックSとなっている。すなわち、スタックSは、テーラードブランクXの薄肉のブランク片X1同士が互いに重なり合うように積層された薄肉領域S1と、テーラードブランクXの厚肉のブランク片X2同士が互いに重なり合うように積層された厚肉領域S2とを有している。
このように、薄肉のブランク片X1と厚肉のブランク片X2とが連結されており、且つ、両者の厚みが異なるため、スタックSにおいては、厚肉領域S2の上端は略水平となるものの、薄肉領域S1の上端は連結した部分から外側に向けて湾曲した形態となる。なお、この湾曲した部分には、図示しない間隙が生じる。
【0027】
図2は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法に用いられるディスタック装置の全体を示す概略側面図である。
図2に示すように、ディスタック装置Dは、複数のテーラードブランクXが積層されたスタックSを載置するための載置台1と、該載置台1の下方に配置され、スタックSを上昇移動させるための複数のリフター2と、複数の吸着部31を有する吸着手段3と、取り出し位置Pに向けて配置された第1検出センサー41及び第2検出センサー42と、スタックSの両側にそれぞれ設けられたマグネットフロータ5及びエアーブロー6と、を備える。
【0028】
ディスタック装置Dにおいて、載置台1は、板状であり、上下方向に貫通した貫通孔11が、
図2でいう紙面垂直方向の面において、縦横に複数配列されている。
そして、各貫通孔11の下方には、それに対応する位置にリフター2が配置される。
したがって、載置台1は、その上面にスタックSを載置可能であり、貫通孔11により下方に配置されたリフター2の昇降移動を妨げない。
【0029】
リフター2は、上述したように、各貫通孔の位置に対応するように、縦横に複数配置され、その上端が、貫通孔を通過してスタックSの下面に当接可能となっている。
ここで、各リフター2としては、例えば、サーボシリンダを採用することが好ましい。なお、サーボシリンダは、サーボモータの回転をボールねじの直線機構に変換し、これによりシリンダを昇降させるものである。
【0030】
したがって、この場合、各リフター2は、それぞれ独立に、サーボモータの回転数を制御することで、シリンダの位置制御を正確に行うことが可能となっている。すなわち、昇降させる際の移動量をリフター2毎に変えることができる。
例えば、薄肉領域S1の下方に配置されたリフター2は、薄肉領域S1を所定の取り出し位置Pまで大きく上昇させ、その一方で、厚肉領域S2の下方に配置されたリフター2は、厚肉領域S2を所定の取り出し位置まで少なく上昇させることができる。
また、サーボシリンダは、シンプルな構造であるため、比較的狭いスペースであっても設置することができるという利点がある。
なお、リフター2には、荷重を検知可能なロードセル等が設けられていてもよい。
【0031】
一方、吸着手段3は、少なくとも、複数のアーム部32と、該アーム部32の先端にそれぞれ設けられた吸着部31とを有する。
吸着手段3においては、吸着部31が最上位テーラードブランクXを吸着可能となっており、アーム部32はその吸着部31と共に昇降移動する。
このとき、各吸着部31は、同じ高さに位置しており、全てのアーム部32が同期して昇降移動するようになっている。
また、各アーム部32は、フレームFに固定されて一体化されていることが好ましい。この場合、フレーム自体を昇降移動させることにより、全てのアーム部32を同時に昇降移動させることができる。その結果、アーム部の昇降移動に要する時間を最大限短縮することができるので、取り出しの効率が向上する。
ここで、吸着部31は、弾性変形が可能な吸着カップからなり、その内部を吸引することにより負圧にすることが可能となっている。すなわち、吸着部31を最上位テーラードブランクXに当接させ、その内部を負圧にすることにより、最上位テーラードブランクXが吸着部31に吸着される。
吸着部31として、弾性変形が可能な吸着カップを採用することにより、伸縮する分だけ自由度があるため、最上位テーラードブランクの上端が取り出し位置Pよりも幾らか下方に位置した場合であっても対応することができる。
【0032】
取り出し位置Pは、任意で設定することができ、最上位テーラードブランクXの上端を到達させる位置であり、且つ、吸着部31がこれを吸着把持する位置である。かかる取り出し位置Pは、制御部(図示しない)により設定できる。
また、取り出し位置Pは、水平面であることが好ましい。この場合、アーム部30によって下降する複数の吸着部が、同時に最上位テーラードブランクXに当接され、同時にこれを吸着把持し、同時にこれを取り出すことになるため、吸着部31の昇降移動に必要な時間を極力少なくすることができる。
なお、上述したように、吸着部31には伸縮する分の自由度があるため、最上位テーラードブランクXが取り出された場合であっても、取り出し位置Pで次に取り出すべき最上位テーラードブランクXを吸着保持することができる。
【0033】
複数の第1検出センサー41及び複数の第2検出センサー42は、予め設定された取り出し位置Pに向けて設置される。
第1検出センサー41は、取り出し位置Pに到達した薄肉領域S1の上端を検出するものであり、第2検出センサー42は、取り出し位置Pに到達した厚肉領域S2の上端を検出するものである。
これにより、ディスタック装置Dにおいては、厚肉領域S2の上端及び薄肉領域S1の上端が取り出し位置Pに到達したか否かを認識することが可能となる。
また、最上位テーラードブランクXが取り出し位置に到達したことを確認してから後述する吸着ステップを行うことができる。
また、第1検出センサー41及び第2検出センサー42からの信号に基づいて、制御部(図示しない)が各リフター2の駆動を制御することも可能となる。
【0034】
複数の第1検出センサー41及び複数の第2検出センサー42は、何れも、光線を発射する光電センサーである。
そして、第1検出センサー41は、薄肉領域S1の両側(
図2でいう紙面に垂直方向の薄肉領域S1の両側)に設けられており、第2検出センサー42は、同様に厚肉領域S2の両側に設けられている。
このとき、全ての第1検出センサー41及び第2検出センサー42は、同一面に配置されていることが好ましい。また、取り出し位置Pが所定の水平面である場合は、第1検出センサー41及び第2検出センサー42も同一水平面に配置されることが好ましい。この場合、最上位テーラードブランクXの上面が水平面であることを確認することができる。すなわち、最上位テーラードブランクXの一部が傾いている等のエラーを事前に発見することが可能となる。
【0035】
ここで、上述した複数の吸着部31は、複数の第1検出センサー41及び複数の第2検出センサー42に対応するように配列(横方向)され、更に、第1検出センサー41及び第2検出センサー42から発射される光線の平面位置に対応するように配列(縦方向)される。すなわち、光線の軌跡と平行となるように、その上方に複数の吸着部31が配列される。そして、配列された吸着部31を下降させると、これらの吸着部31は、平面における光線があった位置で最上位テーラードブランクXを吸着することになる。
これにより、ディスタック装置Dは、最上位テーラードブランクXに確実に吸着させることが可能となる。すなわち、第1検出センサー41及び第2検出センサー42が検出しない光線同士の間に、突起部等があったとしても、吸着部31をそこに吸着させないようにすることで、吸着不良等のエラーが生じることを抑制できる。
【0036】
マグネットフロータ5は、スタックSの両側に配置される。
マグネットフロータ5は、スタックS側に電磁石を備えており、スタックSに近付けることによって、スタックSに磁力を付与する機能を有する。なお、かかる電磁石の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
テーラードブランクXが磁性体である場合、マグネットフロータ5により、スタックSのテーラードブランクX毎に同極の磁力が付与される。そうすると、積層されているテーラードブランクX同士が反発するので、最上位テーラードブランクXを取り出す際に、その直下のテーラードブランクXから剥がれ易くすることができる。すなわち、いわゆるダブルブランクが生じることを防止できる。
なお、テーラードブランクXが磁性体でない場合は、マグネットフロータ5は要さない。
【0037】
エアーブロー6は、スタックSの両側に配置される。
エアーブロー6は、エアーを吹き付ける機能を有する。
例えば、吸着部31が最上位テーラードブランクXを吸着して取り出す際に、最上位テーラードブランクXと、その直下のテーラードブランクXとの間に向けてエアーを吹き付けることで、最上位テーラードブランクXを、その直下のテーラードブランクXから剥がれ易くすることができる。すなわち、いわゆるダブルブランクが生じることを防止できる。
【0038】
本実施形態に係るテーラードブランクXの取り出し方法は、上述したディスタック装置Dを用いて行われる。
図3は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法を示すフローチャートである。
図3に示すように、本実施形態に係るテーラードブランクXの取り出し方法は、載置台1に載置されたスタックSを上昇させるスタック上昇ステップ51と、吸着手段3が、吸着部31を最上位テーラードブランクXに吸着させる吸着ステップ52と、吸着手段3が、吸着部31を上昇させ、最上位テーラードブランクXのみを上昇させるブランク上昇ステップ53と、吸着手段3が、最上位テーラードブランクXを別の位置に搬送する搬送ステップ54と、取り出されたテーラードブランクの厚さの分だけスタックを上昇させるピッチ上昇ステップ55と、を有する。
【0039】
テーラードブランクXの取り出し方法においては、スタック上昇ステップ51、吸着ステップ52、ブランク上昇ステップ53、搬送ステップ54及びピッチ上昇ステップ55を行うことにより、最上位テーラードブランクXを確実に吸着して取り出すことができる。
また、スタック上昇ステップ51が行われた後、吸着ステップ52、ブランク上昇ステップ53、搬送ステップ54及びピッチ上昇ステップ55を繰り返し行うことにより、テーラードブランクXを連続して順次取り出すことができる。
【0040】
スタック上昇ステップ51は、載置台1に載置されたスタックSの薄肉領域S1と厚肉領域S2との上面が略面一となり、且つ、それらの上端が予め設定された取り出し位置Pに到達するまで、複数のリフター2をそれぞれ独立に駆動させてスタックSを上昇させるステップである。
まず、スタック上昇ステップ51においては、既にスタックSが載置台1に載置された状態にある。
かかる載置方法は特に限定されず、例えば、薄肉のブランク片X1と厚肉のブランク片X2との端面同士を一体に溶接して製造したテーラードブランクXを、順次載置台1の上に配置し、積層していくことで、スタックSが載置台1に載置された状態とすればよい。
【0041】
図4は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法のスタック上昇ステップを説明するための概略端面図である。なお、
図4において、吸着手段3、マグネットフロータ5及びエアーブロー6の記載は省略している。
図4に示すように、スタック上昇ステップ51においては、スタックSが載置台1に載置された状態から、複数のリフター2が、スタックSを上昇させる。
このとき、上述したように、ディスタック装置Dの複数のリフター2は、それぞれ独立に駆動させることが可能となっているので、薄肉領域S1下方のリフター2は、薄肉領域S1の上端が第1検出センサー41に検出されるまで、当該薄肉領域S1を上昇させ、厚肉領域S2下方のリフター2は、厚肉領域S2の上端が第2検出センサー42に検出されるまで、当該厚肉領域S2を上昇させる。すなわち、第1検出センサー41又は第2検出センサー42の検出信号に基づいて、制御部(図示しない)が、各リフター2の駆動をそれぞれ独立に停止させる。
そうすると、薄肉領域S1と厚肉領域S2との上面が略面一となり、且つ、それらの上端が取り出し位置Pに位置することになる。
【0042】
図5は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法の吸着ステップを説明するための概略端面図である。なお、
図5において、検出センサー41,42、マグネットフロータ5及びエアーブロー6の記載は省略している。
図5に示すように、吸着ステップ52は、吸着手段3が、吸着部31を、取り出し位置Pまで下降させ、最上位テーラードブランクXに吸着させるステップである。
スタック上昇ステップ51により、薄肉領域S1の上面が、湾曲せず、厚肉領域S2の上面と面一の平面となっているため、吸着ステップ52においては、吸着手段3の吸着部31が確実に最上位テーラードブランクXを吸着することが可能となる。すなわち、吸着が不十分となり、吸着したテーラードブランクXが取り出し中に落下する等のエラーが生じることを抑制できる。
また、薄肉領域S1と厚肉領域S2との上面が略面一となっているので、吸着部31は、上述したように、同じ高さに配置し、全てのアーム部32を同期して一定距離下降移動させることができる。これにより、テーラードブランクの取り出し方法は、吸着部31の下降に要する時間を極力短くすることができるため、テーラードブランクXの取り出し速度が向上する。ちなみに、各吸着部31の下降移動の距離が異なると、一番時間のかかる吸着部31の下降移動に吸着のタイミングを合わせる必要がある。
【0043】
また、複数の吸着部31は、上述したように、第1検出センサー41及び第2検出センサー42により発射される光線の平面位置に対応するように配列されているので、最上位テーラードブランクXに確実に吸着させることが可能となる。すなわち、第1検出センサー41及び第2検出センサー42が検出しない光線同士の間に、突起部等があったとしても、吸着部31をそこに吸着させないようにすることで、吸着不良等のエラーが生じることを抑制できる。
【0044】
図6は、本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法のブランク上昇ステップを説明するための概略端面図である。なお、
図6において、検出センサー41,42の記載は省略している。
図6に示すように、ブランク上昇ステップ53は、吸着手段3が、吸着部31を上昇させ、最上位テーラードブランクXのみを上昇させるステップである。
ブランク上昇ステップ53において、吸着部31は、上述したことと同様に、全てのアーム部32を同期して上昇移動させることができる。
これにより、テーラードブランクの取り出し方法は、吸着部31の上昇に要する時間を極力短くすることができるため、テーラードブランクXの取り出し速度が向上する。
【0045】
ブランク上昇ステップ53において、吸着部31が最上位テーラードブランクXを上昇させる際には、マグネットフロータ5及びエアーブロー6が駆動する。これにより、最上位テーラードブランクXを、その直下のテーラードブランクXから剥がれ易くすることができ、いわゆるダブルブランクが生じることを防止することができる。
このとき、マグネットフロータ5は、スタックSの両側に配置されるので、ブランクを上昇させる際に、横方向にブレないように、上方に案内する役割も果たす。
【0046】
搬送ステップ54は、吸着手段3が、最上位テーラードブランクXを別の位置に搬送するとともに、吸着部31を、最上位テーラードブランクXから離脱させるステップである。
搬送ステップ54において、取り出された最上位テーラードブランクXは、吸着手段3により上方又は横方向に搬送されて、別の搬送装置に渡される。
例えば、吸着手段3が最上位テーラードブランクXを上方に搬送した場合は、吸着手段3が、スタックSの上方に配置された磁性コンベア(図示しない)の下面に、最上位テーラードブランクXを磁着することにより渡され、当該磁性コンベアにより最上位テーラードブランクが搬送される。
また、吸着手段3自体をコンベアやロボット等で横方向に搬送し、所望の位置で、吸着部31から最上位テーラードブランクXを離脱させてもよい。
【0047】
ピッチ上昇ステップ55は、複数のリフター2がそれぞれ独立に、取り出されたテーラードブランクXの厚さの分だけスタックSを上昇させるステップである。
ブランク上昇ステップ53において、最上位テーラードブランクXが取り出されたことを、第1検出センサー41及び第2検出センサー42が検出すると、その検出信号に基づいて、制御部(図示しない)が、最上位テーラードブランクXの厚さの分だけ、各リフター2をそれぞれ独立に駆動させる。
そうすると、薄肉領域S1及び厚肉領域S2の上端が再び、取り出し位置Pに到達することになる。
【0048】
このとき、ピッチ上昇ステップ55におけるスタックSの上昇は、テーラードブランクXが1枚取り出される毎に行ってもよく、吸着部31には伸縮の自由度があるため、1枚ずつ複数回取り出される毎に行ってもよい。
例えば、最上位テーラードブランクXを1枚ずつ複数回取り出した後に、スタックSを上昇させる場合は、ピッチ上昇ステップ55を行う頻度を減らせるので、テーラードブランクXを取り出す効率を向上させることができる。
【0049】
本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法において、上述した制御部は、少なくとも、中央処理部(CPU)、演算処理部、記憶部、画像処理部、入出力部(キーボード、ディスプレイ)等を備える通常のコンピュータである。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0051】
本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法において、テーラードブランクXは、薄肉のブランク片X1と、厚肉のブランク片X2との端面同士を、下面が面一となるように当接させて、一体に溶接したものであるが、厚さが異なるブランク片の端面同士を連結させたものであればこれに限定されない。
例えば、
図7の(a)に示すように、テーラードブランクXAは、厚肉のブランク片X2の両側に薄肉のブランク片X1が一体に溶接されたものであってよい。
また、
図7の(b)に示すように、テーラードブランクXBは、薄肉のブランク片X1の両側に厚肉のブランク片X2が一体に溶接されたものであってもよい。
【0052】
本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法において、ディスタック装置Dの載置台1は、板状であり、上下方向に貫通した貫通孔が縦横に複数配列されているが、リフター2が通過可能な隙間を有していれば、これに限定されない。
例えば、載置台は、複数の帯状のものの集合体であってもよく、格子状であってもよい。
【0053】
本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法において、吸着手段3の吸着部31は、弾性変形が可能な吸着カップからなり、その内部を吸引することにより負圧にすることが可能となっているが、テーラードブランクXを吸着可能であれば、これに限定されない。
例えば、テーラードブランクXが磁性を有するものである場合、吸着部31は磁石であってもよい。
【0054】
本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法において、各アーム部32は、フレームFに固定されて一体化されているが、フレームFの有無にかかわらず、それぞれが独立に昇降移動可能となっていてもよい。
【0055】
本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法において、複数の第1検出センサー41及び複数の第2検出センサー42は、何れも、光電センサーであるが、これに限定されない。
例えば、近接センサー、超音波センサー、画像処理カメラ等であってもよい。
【0056】
本実施形態に係るテーラードブランクの取り出し方法において、ディスタック装置Dは、マグネットフロータ5及びエアーブロー6を備えているが、必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るテーラードブランクの取り出し方法は、テーラードブランクが積層されたスタックから、1枚ずつテーラードブランクを取り出す方法として、プレス加工等の金属加工の分野で利用できる。本発明に係るテーラードブランクの取り出し方法によれば、既存の吸着手段を用いることができ、且つ、最上位のテーラードブランクを確実に吸着して取り出すことが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・載置台
11・・・貫通孔
2・・・リフター
3・・・吸着手段
31・・・吸着部
32・・・アーム部
41・・・第1検出センサー
42・・・第2検出センサー
5・・・マグネットフロータ
51・・・スタック上昇ステップ
52・・・吸着ステップ
53・・・ブランク上昇ステップ
54・・・搬送ステップ
55・・・ピッチ上昇ステップ
6・・・エアーブロー
D・・・ディスタック装置
F・・・フレーム
P・・・取り出し位置
S・・・スタック
S1・・・薄肉領域
S2・・・厚肉領域
X・・・テーラードブランク(最上位テーラードブランク)
X1・・・薄肉のブランク片
X2・・・厚肉のブランク片