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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】農作業機用制御装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20220628BHJP
   A01B 63/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A01C15/00 H
A01C15/00 G
A01B63/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2015103343
(22)【出願日】2015-05-21
(65)【公開番号】P2016214162
(43)【公開日】2016-12-22
【審査請求日】2018-02-21
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 素広
(72)【発明者】
【氏名】木村 啓明
【合議体】
【審判長】森次 顕
【審判官】土屋 真理子
【審判官】奈良田 新一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-43763(JP,A)
【文献】特開2011-142884(JP,A)
【文献】特開2014-138570(JP,A)
【文献】特開2014-31161(JP,A)
【文献】特開平10-276509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B59/00-63/32,A01C7/04-7/20,A01C15/00-23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の農作業機のいずれかを走行車に接続し、該走行車に接続した前記農作業機を制御する農作業機用制御装置であって、
前記複数の農作業機をおのおの制御する複数の制御手段に共通する要素からなる共通制御手段、前記農作業機に関する表示情報を表示する表示部、および、第1の通信部を有して前記走行車に配置された共通部と、
前記走行車に接続した前記農作業機が有する固有の制御対象を制御するための農作業機固有制御手段、および、第2の通信部を有する前記走行車に配置された個別部と、
前記個別部に設けられ、前記農作業機を操作するための固有な操作要素を有する操作部とを備え、
前記共通部の第1の通信部と前記個別部の第2の通信部は、有線式または無線式の通信路を介して信号を通信可能に構成され、
前記個別部は、該個別部に設けられた農作業機コネクタ部に接続される信号線を介して前記農作業機に設けられた当該農作業機を制御する作業機側コントローラとの間で信号を通信すると共に、前記農作業機固有制御手段と通信を行う作業機用通信部を有することを特徴とする
農作業機用制御装置。
【請求項2】
前記個別部は、外部より電源を取り入れるための電源入力コネクタ部と、
前記電源入力コネクタ部より取り入れた電源の電圧を装置内部で使用する電圧に変換する電源電圧変換手段と、を有し、
前記農作業機コネクタ部は、前記電源入力コネクタ部により取り入れた電源を前記農作業機へ供給する電力線を接続することを特徴とする請求項1に記載の農作業機用制御装置。
【請求項3】
前記個別部は、制御プログラムを記憶する記憶部と、前記制御プログラムを実行する制御部と、を有し、
前記共通部は、外部から取得した前記制御プログラムに関するアップデート用データに基づいて、前記個別部の記憶部に記憶されている該制御プログラムを更新する処理を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の農作業機用制御装置。
【請求項4】
前記共通部は、前記個別部で得られた前記農作業機による作業データを前記第1の通信部により受信し、該作業データを外部のコンピュータに出力する処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の農作業機用制御装置。
【請求項5】
前記共通部は、少なくとも、前記共通制御手段、前記表示部、前記第1の通信部を備える通信機能付き携帯型汎用端末装置であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の農作業機用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車に接続した農作業機を制御する農作業機用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車(トラクタなど)に接続した農作業機(ブロードキャスタなど)を制御する農作業機用制御装置に関し、農作業の種類や規模に合わせた各種農作業機の機能を十分に発揮できるように、専用の農作業機用制御装置が制作され、その農作業機用制御装置を走行車側に設置し、運転者が走行車の運転に合わせて農作業機を制御させるなどの操作を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、農作業の種類や規模に合わせた多くの農作業機が製造され、農作業機を制御する農作業機用制御装置も、おのおのの農作業機に合わせた多くの種類が提供されている。
例えば、特許文献2に記載されている農作業機用制御装置は、複数の農作業機をおのおの制御する複数の制御手段に共通する要素からなる共通制御手段のみを有する共通部と、農作業機が有する固有の制御対象を制御するための農作業機固有制御手段のみを有する個別部と、個別部と共通部とを接続する接続部とを備え、農作業機とその農作業機に対応した農作業機用制御装置とを合わせた装置コストを低減している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-130983号公報
【文献】特開2015-43763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、共通部などを含めた農作業機用制御装置の装置コストをさらに低減することが望まれている。
【0006】
また、従来では、農作業機用制御装置の個別部の制御プログラムを更新する場合、例えば、パーソナルコンピュータなどを個別部に接続して、記憶部に記憶されている制御プログラムを書き換えるという煩雑な操作を行っていた。
このため、簡単に、個別部の制御プログラムを更新可能な農作業機用制御装置が望まれている。
【0007】
また、簡単な構成により、走行車に接続した農作業機により行われた農作業に関する作業データを、自宅や会社などの外部のコンピュータに出力し、そのコンピュータで作業データを管理することが望まれている。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、農作業機とその農作業機に対応した農作業機用制御装置とを合わせた装置コストを低減できる農作業機用制御装置を提供すること、個別部の制御プログラムを簡単に更新することができる農作業機用制御装置を提供すること、農作業機による作業データを簡単に外部のコンピュータで管理することができる農作業機用制御装置を提供すること、などを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明による農作業機用制御装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
複数の農作業機のいずれかを走行車に接続し、該走行車に接続した前記農作業機を制御する農作業機用制御装置であって、
前記複数の農作業機をおのおの制御する複数の制御手段に共通する要素からなる共通制御手段、前記農作業機に関する表示情報を表示する表示部、および、第1の通信部を有して前記走行車に配置された共通部と、
前記走行車に接続した前記農作業機が有する固有の制御対象を制御するための農作業機固有制御手段、および、第2の通信部を有する前記走行車に配置された個別部と、
前記個別部に設けられ、前記農作業機を操作するための固有な操作要素を有する操作部とを備え、
前記共通部の第1の通信部と前記個別部の第2の通信部は、有線式または無線式の通信路を介して信号を通信可能に構成され、
前記個別部は、該個別部に設けられた農作業機コネクタ部に接続される信号線を介して前記農作業機に設けられた当該農作業機を制御する作業機側コントローラとの間で信号を通信すると共に、前記農作業機固有制御手段と通信を行う作業機用通信部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の農作業機用制御装置は、農作業機とその農作業機に対応した農作業機用制御装置とを合わせた装置コストを低減できる。
また、本発明によれば、個別部の制御プログラムを簡単に更新することができる農作業機用制御装置を提供することができる。
また、本発明によれば、簡単な構成で、農作業機による作業データを簡単に外部のコンピュータで管理することができる農作業機用制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る農作業機用制御装置(走行車側コントローラ)を採用した農業機械システムの一例を示すブロック図。
図2】農作業機用制御装置(走行車側コントローラ)と農作業機の作業機側コントローラの接続形態の一例を示す図、(a)はセンサやモータを備える農作業機の場合、(b)はセンサや電磁バルブを備える農作業機の場合、(c)はセンサ、モータ、電磁バルブ、複数の作業機側コントローラを備える農作業機の場合を示す図。
図3】農作業機用制御装置(走行車側コントローラ)の共通部と個別部の一例を示す概略図。
図4】農作業機用制御装置(走行車側コントローラ)の共通部と個別部の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る農作業機用制御装置は、複数の農作業機のいずれかを走行車に接続し、その走行車に接続した農作業機を制御する。農作業機用制御装置は、後述するように、互いに通信可能な共通部と個別部などを有し、個別部に農作業機コネクタ部や作業機用通信部などを設けることにより、共通部を汎用性の高いハードウェア(汎用表示部など)で構成し、装置コストを低減することができる。また、共通部として、スマートフォンやタブレット端末を採用した場合、それらの有する機能を農作業機用制御装置の機能として容易に使用することができる。
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態は図示の内容を含むが、これのみに限定されるものではない。なお、以後の各図の説明で、既に説明した部位と共通する部分は同一符号を付して重複説明を一部分省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る農作業機用制御装置(走行車側コントローラ100)を採用した農業機械システムの一例を示すブロック図である。
【0015】
走行車1に、複数の作業機(農作業機)、本実施形態では、3つの作業機(農作業機)3a,3b,3cのいずれかを連結器2を介して接続して、農業機械システムが構成されている。農作業機3a,3b,3cには、それぞれの農作業機3a,3b,3cの機能(施肥、播種など)を実現するための機構(ブロードキャスタなど(不図示))が設けられており、おのおのの農作業機3a,3b,3cに対応する作業機側コントローラ4a,4b,4cにより、農作業機3a,3b,3cに設けられた機構の動作が制御されることによって、それぞれの農作業機3a,3b,3cの機能の制御(車速連動制御等)が実現される。
【0016】
走行車1には、走行車1の運転者が農作業機3a,3b,3cの機能を操作するための農作業機用制御装置としての走行車側コントローラ100が設けられている。この走行車側コントローラ100は、信号ハーネスを介して、農作業機3a,3b,3cの作業機側コントローラ4a,4b,4cのいずれかと接続し、運転者の操作に対応して作業機側コントローラ4a,4b,4cを制御するために必要な情報をやりとりするとともに、作業機側コントローラ4a,4b,4cに対して動作に必要な電源を供給する。
【0017】
このようにして、運転者の操作に対応して走行車側コントローラ100が作業機側コントローラ4a,4b,4cを制御し、作業機側コントローラ4a,4b,4cは、走行車側コントローラ100から受信した制御信号に基づいて、農作業機3a,3b,3cに設けられた機構の動作を制御するので、農作業機3a,3b,3cは、運転者の操作内容に従って動作する。
【0018】
走行車側コントローラ100と作業機側コントローラ4a,4b,4cとの間の信号の送受信には、CAN(Controller Area Network)通信などの規定の通信規格による通信方式が用いられる。CAN通信の場合、信号ハーネスは、CAN通信のためのCANバスの2本の信号線を含む。また、信号ハーネスは、走行車側コントローラ100から作業機側コントローラ4a,4b,4cへ電源を供給するための電力線(2本)と、車載バッテリ(図示略)から取り入れた電源を直接作業機側コントローラ4a,4b,4cへ供給するための電力線(2本)も含む。この信号ハーネスは少なくとも6本の信号線を束ねて構成される。
【0019】
走行車側コントローラ100は、連結器2を介して農作業機3aが接続された場合に、農作業機3aの作業機側コントローラ4aを制御するために必要な情報を作業機側コントローラ4aとの間で送受信するとともに作業機側コントローラ4aを制御する機能を有し、連結器2を介して農作業機3bが接続された場合に、農作業機3bの作業機側コントローラ4bを制御するために必要な情報を作業機側コントローラ4bとの間で送受信するとともに作業機側コントローラ4bを制御する機能を有し、連結器2を介して農作業機3cが接続された場合に、農作業機3cの作業機側コントローラ4cを制御するために必要な情報を作業機側コントローラ4cとの間で送受信するとともに作業機側コントローラ4cを制御する機能を有する。つまり、走行車側コントローラ100は、連結器2を介して接続される作業機(3a,3b,3c)の種類に応じて、その制御機能にかかる構成内容が変更される。
【0020】
次に、走行車側コントローラ100等の構成について詳細に説明する。
図2は農作業機用制御装置(走行車側コントローラ(CTR))と農作業機の作業機側コントローラの接続形態の一例を示す図である。詳細には、図2(a)はセンサやモータを備える農作業機の場合、図2(b)はセンサや電磁バルブを備える農作業機の場合、図2(c)はセンサ、モータ、電磁バルブ、複数の作業機側コントローラを備える農作業機の場合を示す図である。
図3は農作業機用制御装置(走行車側コントローラ100)の共通部110と個別部111の一例を示す概略図である。図4は農作業機用制御装置(走行車側コントローラ100)の共通部110と個別部111の一例を示すブロック図である。
【0021】
図2(a)に示した例において、作業機側コントローラ4aは、2つのセンサから出力されるセンサ信号を受信するとともに、2つのモータの動作を制御することで、第1の機構(図示略)の動作を制御する。
図2(b)に示した例において、作業機側コントローラ4bは、1つのセンサから出力されるセンサ信号を受信するとともに、4つの弁を有する電磁バルブの動作を制御することで、第2の機構(図示略)の動作を制御する。
図2(c)に示した例において、作業機側コントローラ4cは、2つの作業機側コントローラ4ca,4cbからなり、一方の作業機側コントローラ4caは、作業機側コントローラ4aと同様に、2つのセンサから出力されるセンサ信号を受信するとともに、2つのモータの動作を制御することで、第1の機構の動作を制御し、他方の作業機側コントローラ4cbは、作業機側コントローラ4bと同様に、1つのセンサから出力されるセンサ信号を受信するとともに、4つの弁を有する電磁バルブの動作を制御することで第2の機構の動作を制御する。
【0022】
このように、農作業機3a,3b,3cに備えられる作業機側コントローラ4a,4b,4cは、特定の機構の動作を制御する単体のユニットからなる場合(作業機が単一の機能を有する場合)と、2以上の機構の動作をそれぞれ制御する複数のユニットを組み合わせてなる場合(作業機が複数の機能を有する場合、あるいは、作業機の制御システムが複数のブロックに分割されておのおののブロックに制御ユニットを設けた場合)とがある。そして、いずれの場合でも、走行車側コントローラ100と作業機側コントローラとの間の制御情報等の通信は、マルチホストに対応しているCAN通信などの規定の通信方式を用いて実現する。
ここで、CANバス上の信号のレベルは差動レベルで認識され、おのおのの作業機側コントローラ4a,4b,4cからCANバスに信号線を接続することで、CANバスを介したCAN通信を行うことができる。このCANバスへの接続形態については、走行車側コントローラ100も同じである。
なお、作業機側コントローラが複数のユニットからなる場合には、走行車側コントローラ100から電源を供給するための電力線を、作業機側で分岐しておのおののユニットに接続することで、それぞれのユニットに電源を供給するとよい。
【0023】
農作業機用制御装置としての走行車側コントローラ100は、接続される各作業機側コントローラ4a,4b,4cに共通して対応する共通部110と、接続される各作業機側コントローラ4a,4b,4cのおのおのに個別に対応する個別部111,112,113とから構成されている。
【0024】
信号ハーネスHHの一方の端部には、走行車側コントローラ100の個別部111,112,113のいずれかに接続可能なコネクタCAが設けられており、信号ハーネスHHの他方の端部には、作業機側コントローラ4a,4b,4cのいずれか1つに接続可能なコネクタCBが設けられている。
【0025】
農作業機用制御装置としての走行車側コントローラ100の共通部110と個別部111は、別筐体で構成されている(図3参照)。共通部110と個別部111は、無線式または有線式の通信路により通信可能に構成されている。尚、個別部111に、共通部110を着脱自在に支持する支持部を設けてもよい。
【0026】
共通部110は、例えば、表示部74、入力部としてのタッチパネル753、電源スイッチ751、操作スイッチ752、などを有し、作業機側コントローラ4a,4b,4cを操作制御する際に共通して使用される装置要素であり、共通部110には、主として、これらの共通的な装置要素が設けられている。
【0027】
本発明の実施形態では、共通部110は、汎用性の高いハードウェア(汎用装置)により構成されている。共通部110の一実施例として、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの通信機能付き携帯型汎用端末装置(可搬型通信端末装置)を採用することができる。
【0028】
本実施形態では、共通部110は、制御部としてのCPU71,通信部72、記憶部73、表示部74、入力部75、音声入力部761、音声出力部762、位置情報取得部としてのGPS装置77、方位センサ78、加速度センサ79、などを有する。CPU71には共通部の各構成要素が電気的に接続されている。
【0029】
通信部72は、CPU71の制御により、無線式または有線式の通信路を介して個別部111の通信部と通信可能に構成されている。また、通信部72は、CPU71の制御により、通信ネットワーク(不図示)を介して外部のコンピュータと通信可能に構成されている。通信部72は、無線式の通信として、例えば、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信や無線LAN(IEEE802.11規格など)、携帯電話網、データ通信網などの各種無線通信方式で通信を行うように構成されている。
【0030】
記憶部73は、メモリ731、ストレージ732などを有する。記憶部73は制御アプリ(制御プログラム)などが記憶されている。また、記憶部73は、個別部111の制御プログラムに関するアップデート用データを記憶可能に構成されている。CPU71は、アップデート用データを、通信部72により、通信ネットワークを介して外部のコンピュータからダウンロードし、記憶部73に記憶してもよい。また、ストレージ732として、可搬型記憶媒体を着脱自在に設けた場合、アップデート用データを記憶する可搬型記憶媒体を記憶部73に装着することで、アップデート用データを記憶部73に記憶してもよい。
【0031】
表示部74は、CPU71の制御により、農作業機に関する表示情報を表示する。詳細には、表示部74は、個別部111から通信部72を介して受信した農作業機に関する表示情報を表示する。
【0032】
入力部75は、操作者の操作に応じた信号をCPU71に出力する。詳細には、入力部75は、共通部110に関する電源スイッチ751、操作スイッチ752、タッチパネル753などを有する。
【0033】
音声入力部761は、マイク、増幅回路、AD変換回路などにより構成され、音声信号をCPU71に出力する。
音声出力部762は、スピーカ、増幅回路などにより構成され、CPU71の制御により、ビープ音、警告音、通知音、音声などを出力する。
【0034】
位置情報取得部としてのGPS装置77(GPS)は、複数のGPS衛星からの信号に基づいて、共通部110の位置情報を取得し、CPU71に出力する。尚、位置情報取得部としては、GPS信号以外の信号(無線基地局の位置情報など)に基づいて、位置情報を取得してもよい。
【0035】
方位センサ78は、例えば、2軸や3軸の地磁気センサを有し、センサの向いている方位を取得し、CPU71に出力する。
加速度センサ79は、1軸、2軸、3軸などの加速度センサであり、共通部の加速度や重力加速度などを取得し、CPU71に出力する。
また、共通部は、共通部の回転角度、角速度、角加速度を取得する2軸や3軸のジャイロスコープを備えていてもよい。
上述した位置情報取得部、方位センサ78、加速度センサ79などは、必要に応じて、農作業機用制御装置の共通部110の動きを取得する場合に用いられる。
【0036】
制御部としてのCPU71は、制御アプリ(制御プログラム)を実行することにより共通部110の各機能を実現する。詳細には、共通部110のCPU71は、外部から取得した制御プログラムに関するアップデート用データに基づいて、個別部の記憶部に記憶されている該制御プログラムを更新する処理を行う。
【0037】
また、共通部110のCPU71は、個別部111で得られた農作業機による作業データを通信部72により受信し、その作業データを外部のコンピュータに出力する処理を行う。
【0038】
個別部111には、農作業機を操作するための固有な操作要素が設けられている。
個別部111は、制御部としてのCPU81、通信部82、記憶部83、CANトランシーバなどの作業機用通信部84、電圧変換器85、スイッチ群SWa、ランプ群LPa、コネクタCH(ハーネス用コネクタ)、コネクタCP(電力用コネクタ)、などを有する。CPU81には、通信部82、記憶部83、作業機用通信部84などが電気的に接続されている。
【0039】
制御部としてのCPU81は、制御プログラムを実行することにより個別部111の各機能を実現する。
【0040】
記憶部83は、RAMやROMなどの記憶装置により構成され、制御プログラムなどを記憶する。
通信部82は、CPU81の制御により、共通部110と通信可能に構成されている。
【0041】
また、個別部111には、信号ハーネスHHの一方のコネクタCAが接続されるハーネス用コネクタCH、走行車の車載バッテリから電源を引き込むための電力線PP(電源入力部)が接続される電力用コネクタCP、電源をオンオフするための電源スイッチSWp、電源のオンオフ状態を点灯表示するための電源ランプ、種々の音を発音するためのブザー、などが設けられている。
【0042】
また、個別部111には、例えば、棒状の操作部を有するトグルスイッチ111a、アナログ量を操作するためのボリューム111b、動作モード等のオンオフを切り換えるための押しボタン型スイッチ111c,111d,111e、それぞれ押しボタン型スイッチ111c,111d,111eの操作状況を表示するためのランプ111f,111g,111h、などが設けられている。
【0043】
なお、図3では、作業機側コントローラ4a(図2(a)参照)に対応した個別部111について説明したが、図2(b)に示した作業機側コントローラ4bに対応した個別部112、図2(c)に示した作業機側コントローラ4cに対応した個別部113も、略同様の構成を有する。例えば、個別部112,113は、共通部110とは別筐体に構成されている。
【0044】
図4に示すように、電力線PPが接続されるコネクタCPの+側は、電源スイッチSWpを介して、コネクタCHの対応する端子、及び、電圧変換器85(DC-DC変換器)の+側端子に接続されている。また、コネクタCPの-側(グランド側)は、コネクタCHの対応する端子、及び、電圧変換器85(DC-DC変換器)の-側端子に接続されている。コネクタCPの2つの入力端は、直接コネクタCHの2つの出力端に接続されており、車載バッテリから供給される直流電源が信号ハーネスHHに直接加えられるように構成されている。
【0045】
このようにして、車載バッテリから供給される直流電源は、走行車側コントローラ100の個別部111に供給されると共に、信号ハーネスHHを介して、作業機側コントローラ4aへ供給される。
【0046】
なお、図4に示した、スイッチSWpとコネクタCPの間に設けた逆接続保護用ダイオードD1は、例えば、車載バッテリ側の電極が電力線PPに逆接続され、コネクタCPを介して供給される電圧の極性が逆転した場合に、走行車側コントローラ100及び作業機側コントローラ4a,4b,4cの装置内部を保護するためのものである。
【0047】
ここで、車載バッテリから作業機側コントローラ4a,4b,4cへ直接供給された電源は、例えば、モータやアクチュエータのように、起動時に大電流が流れたり、大きな電力を必要とする駆動対象に供給される。このような駆動対象に、電源スイッチSWpを介して供給される電源を印加した場合、起動時等に流れる大電流により電源スイッチSWpの接点が溶断・溶着する等の不具合を生じるおそれがある。そこで、上述した実施例では、このような大電流を必要とする駆動対象に対しては、電源スイッチSWpを介さずに、車載バッテリから直接電力を供給するように構成している。
【0048】
本実施例では、車載バッテリの電圧が+12Vであり、この走行車側コントローラ100の個別部111の内部に必要な電源電圧が+5Vであるので、電圧変換器85(DC-DC変換器)は、車載バッテリから供給される+12Vを、電源電圧の+5Vに変換する。電圧変換器85の出力は、個別部111の内部電源として各構成要素に供給される。また、電圧変換器85の出力を共通部110の電源として、共通部110に供給するように構成してもよい。
【0049】
ここで、走行車側コントローラ100の内部に必要な電源電圧が+5Vではなく+3Vの場合があり、また、車載バッテリから供給される直流電源の電圧が+12Vではなく+24Vや+48Vの場合がある。いずれの場合でも、電圧変換器85は、車載バッテリから供給される直流電源の電圧を、走行車側コントローラ100の個別部111に必要な電源電圧に変換する機能を備えていればよい。
【0050】
個別部111の作業機用通信部84(CANトランシーバ装置)は、個別部111のCPU81が作業機側コントローラに対して送出する送信信号をCANバス上の信号に変換すると共に、作業機側コントローラが個別部111のCPU81に対して送出したCANバス上の信号を認識して、受信信号に変換し、その受信信号をCPU81へ送出する。CANトランシーバ装置とCPU81との間の信号の送受信は、コネクタCHを介して行われる。そして、CANバスの信号線は、コネクタCHの対応する端子を介して、信号ハーネスHHと接続されている。
【0051】
CPU81は、作業機用通信部84を介して作業機側コントローラとの間の通信、作業機側コントローラに対して出力する制御信号の生成、農作業機を操作する際に用いるスイッチ群(作業機に固有のスイッチ群)SWa(トグルスイッチ111a、及び、押しボタン型スイッチ111c,111d,111e)の操作状況の入力、農作業機に対応したランプ群(作業機に固有のランプ群)LPa(ランプ111f,111g,111h)の点灯制御、ブザーの鳴動の制御、などの各種制御処理を行う。
【0052】
また、CPU81は、農作業機に関する表示内容を示す信号を、通信部82を介して共通部110の表示部74へ出力する。
【0053】
本実施例にかかる走行車側コントローラ100は、農作業機3a,3b,3cに共通して用いる共通部110と、農作業機3a,3b,3cにそれぞれ対応した個別部111,112,113とから構成され、走行車1に農作業機3aを接続する場合に、共通部110に個別部111を接続して作業機側コントローラ4aに対応する走行車側コントローラ100を構成し、走行車1に農作業機3bを接続する場合に、共通部110に個別部112を接続して作業機側コントローラ4bに対応する走行車側コントローラ100を構成し、走行車1に農作業機3cを接続する場合に、共通部110に個別部113を接続して作業機側コントローラ4cに対応する走行車側コントローラ100を構成する。
【0054】
これにより、例えば、農作業機3aの購入者は、農作業機3aを購入した時点で共通部110を持っているので、農作業機3b,3cを後から購入する場合、走行車側コントローラ100については、個別部112,113のみを追加で購入すればよく、したがって、農作業機3b,3cを購入する際の費用(装置コスト)の総額を低減することができる。
【0055】
また、CPU71が音声出力部762によるブザー音などの鳴動制御と表示部74の表示内容の制御とを行うことで、CPU81が実行する制御演算の一部をCPU71に分担させているので(負荷分散)、CPU81の処理負担を軽減することができる。
【0056】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る農作業機用制御装置としての走行車側コントローラ100は、複数の農作業機、例えば、農作業機(3a,3b,3c)のいずれかを走行車1に接続し、その走行車1に接続した農作業機を制御する。この農作業機用制御装置としての走行車側コントローラ100は、複数の農作業機をおのおの制御する複数の制御手段に共通する要素からなる共通制御手段(CPU71)、農作業機に関する表示情報を表示する表示部74、および通信部72を有する共通部110と、走行車1に接続した農作業機が有する固有の制御対象を制御するための農作業機固有制御手段および通信部2を有する個別部111と、を備える。例えば、個別部111は、農作業機としての農作業機3aが有する固有の制御対象を制御するための農作業機固有制御手段(CPU81)を有する。
また、個別部111の通信部82と共通部110の通信部72は、有線式または無線式の通信路を介して信号を通信可能に構成されている。
個別部111は、その個別部111に設けられた農作業機コネクタ部(コネクタCH)に接続される信号線を介して農作業機との間で信号を通信するCANトランシーバなどの作業機用通信部84を有する。
このように、共通部110ではなく、個別部111に作業機用通信部84や農作業機コネクタ部(コネクタCH)を設けたので、共通部110を汎用性の高いハードウェアで構成することができる。また、農作業機と農作業機用制御装置を合わせた装置コストを低減することができる。
また、共通部は、少なくとも、共通制御手段、表示部、前記第1の通信部を備える通信機能付き携帯型汎用端末装置である。詳細には、農作業機用制御装置の共通部110は、スマートフォンやタブレット端末などの通信機能や表示部などを有する通信機能付き携帯型汎用端末装置(携帯型通信端末装置、汎用表示部)であってもよい。この場合、スマートフォンなどの通信機能付き携帯型汎用端末装置のCPU(制御部)が、共通部側制御アプリ(共通部側制御プログラム)を実行することにより、農作業機に関する表示情報を表示する等の農作業機用制御装置の共通部の各機能(共通制御手段など)を実現する。
【0057】
また、共通部として、通信機能付きスマートフォン、通信機能付きタブレット端末、通信機能付きゲーム機などの通信機能付き携帯型汎用端末装置(携帯型通信端末装置、汎用表示部)を採用した場合、その携帯型汎用端末装置が有する機能、例えば、GPS機能、方位取得機能、加速度取得機能、WEBブラウザ機能などの機能を、農作業機用制御装置の機能として使用することができる。
また、共通部と個別部とが無線通信を行う形態の場合、共通部から農作業機を容易に遠隔操作することができる。
【0058】
また、本発明の実施形態に係る農作業機用制御装置において、個別部111は、電源入力コネクタ部(コネクタCP)より取り入れた電源の電圧を装置内部で使用する電圧に変換する電源電圧変換手段としての電圧変換器85を有する。農作業機コネクタ部(コネクタCH)は、電源入力コネクタ部(コネクタCP)により取り入れた電源を農作業機へ供給する電力線を接続する。
このように、共通部110ではなく、個別部111に電圧変換器85や農作業機コネクタ部(コネクタCH)を設けたので、共通部110を汎用性の高いハードウェアで構成することができる。
【0059】
また、本発明の実施形態に係る農作業機用制御装置において、個別部111は、制御プログラムを記憶する記憶部83と、制御プログラムを実行する制御部としてのCPU81と、を有する。共通部110の制御部としてのCPU71は、外部から取得した制御プログラムに関するアップデート用データに基づいて、個別部111の記憶部83に記憶されている制御プログラムを更新する処理を行う。
例えば、共通部110は、アップデート用データを、外部のコンピュータから通信部72により通信ネットワークを介して受信してもよいし、可搬型記憶媒体(USBメモリなど)により取得してもよい。
また、個別部111の制御部としてのCPU81は、共通部110によるアップデート用データに基づいて制御プログラムを更新する処理を行ってもよい。
このように、個別部111の記憶部83に記憶されている制御プログラムを容易に更新することができる。
【0060】
また、本発明の実施形態に係る農作業機用制御装置において、共通部110の制御部としてのCPU71は、個別部111で得られた農作業機による作業データを第1の通信部(通信部72)により受信し、その作業データを外部のコンピュータに出力する処理を行う。
作業データを外部のコンピュータに出力する処理としては、通信部72により通信ネットワークを介して外部のコンピュータに送信してもよいし、作業データを可搬型記憶媒体に記憶させてもよい。外部のコンピュータは、作業データを、通信ネットワークを介して容易に取得する、または、可搬型記憶媒体から作業データを容易に取得することができ、その作業データに基づいて、農作業機による作業に関して管理処理を行うことができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、上述の各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。
また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【0062】
上記実施形態では、共通部は、GPS装置、方位センサ、加速度センサを有していたが、この形態に限られるものではなく、いずれか又はそれらを備えていなくともよい。
【符号の説明】
【0063】
1…走行車
2…連結器
3a,3b,3c…農作業機(作業機)
4…作業機側コントローラ
71…CPU(制御部)
72…通信部(第1の通信部)
73…記憶部
74…表示部
75…入力部
81…CPU(制御部)
82…通信部(第2の通信部)
83…記憶部
84…作業機用通信部(CANトランシーバ)
100…走行車側コントローラ(農作業機用制御装置)
図1
図2
図3
図4