(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
B66C 13/52 20060101AFI20220628BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20220628BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B66C13/52 C
E02F9/16 F
B60J5/00 C
(21)【出願番号】P 2017211068
(22)【出願日】2017-10-31
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000169879
【氏名又は名称】高田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 光也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 怜志
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-184413(JP,A)
【文献】実開昭53-108029(JP,U)
【文献】特許第4583360(JP,B2)
【文献】実開平04-134567(JP,U)
【文献】特開2016-175523(JP,A)
【文献】特許第4564950(JP,B2)
【文献】特開平11-286963(JP,A)
【文献】特開2001-294043(JP,A)
【文献】特開2001-173294(JP,A)
【文献】特開平11-157339(JP,A)
【文献】特開2016-210233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
B60J 5/00-5/14
E02F 9/00-9/18;
9/24-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室を備えた建設機械であって、前記運転室は、
乗降口を有する運転室本体と、
前記運転室本体に対してスライド移動することにより前記乗降口を開閉するスライドドアと、
前記スライドドアの全開位置において前記スライドドアをロックするロック機構を備え、
前記ロック機構は、前記全開位置において前記スライドドアを手動操作によりロックする手動ロック機構と、前記全開位置において前記スライドドアを仮ロックする仮ロック機構とで構成され、
前記手動ロック機構は、手動によって回動可能なレバーを有し、前記レバーは、前記スライドドアのロックを維持するロック位置にあるか、前記スライドドアのロックを解除する非ロック位置にあるかが、前記運転室の内部から目視により確認可能であり、
前記手動ロック機構は、前記スライドドアが前記全開位置に到達する場合に、前記レバーが前記ロック位置から前記非ロック位置に移動されるように構成されている
、建設機械。
【請求項2】
前記運転室本体は、前記スライドドアをガイドするガイドレールを備えており、前記ガイドレールは、前記スライドドアに面するように設けられている、請求項
1に記載の建設機械。
【請求項3】
運転室を備えた建設機械であって、前記運転室は、
乗降口を有する運転室本体と、
前記運転室本体に対してスライド移動することにより前記乗降口を開閉するスライドドアと、
前記スライドドアの全開位置において前記スライドドアをロックするロック機構を備え、
前記ロック機構は、前記全開位置において前記スライドドアを手動操作によりロックする手動ロック機構と、前記全開位置において前記スライドドアを仮ロックする仮ロック機構とで構成され、
前記手動ロック機構は、手動によって回動可能なレバーを有し、前記レバーは、前記スライドドアのロックを維持するロック位置にあるか、前記スライドドアのロックを解除する非ロック位置にあるかが、前記運転室の内部から目視により確認可能であり、
前記運転室本体は、前記スライドドアをガイドするガイドレールを備えており、前記ガイドレールは、前記スライドドアに面するように設けられており、
前記手動ロック機構は、前記スライドドアに設けられた前記レバーと、前記ガイドレールに設けられたロック受け部とで構成され、
前記仮ロック機構は、前記ガイドレールに固定された仮ロック用板バネと、前記スライドドアに設けられたガイドローラとで構成され、
前記ロック機構は、前記ガイドレールの高さ内に収まっている
、建設機械。
【請求項4】
前記運転室が搭載された旋回体を備えている、請求項1ないし
3のいずれかひとつに記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン車など、運転室を備えた建設機械が知られている。このような運転室を備えた建設機械は例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
運転室を備えた建設機械においては、運転室のドアを閉めた状態での作業が基本となるが、場合によっては、ドアを開けたままにして、通常はドアを全開にしたままにして作業することがある。これは乗降の激しい作業が行われる場合、ドアを閉めた状態では見えづらい部分を見たい場合、周りの声や音を聞きたい場合などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、ドアを開けたままにして作業することを想定した場合、建設機械の運転室のドアは、閉じた状態においてロックされるだけでなく、開いた状態においてもロックされる必要がある。
【0006】
本発明は、このような実状を考慮して成されたものであり、その目的は、全開位置においてロック可能なスライドドアを備えた運転室を備えた建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、運転室を備えた建設機械であり、前記運転室は、乗降口を有する運転室本体と、前記運転室本体に対してスライド移動することにより前記乗降口を開閉するスライドドアと、前記スライドドアの全開位置において前記スライドドアをロックするロック機構を備えている。前記ロック機構は、前記全開位置において前記スライドドアを手動操作によりロックする手動ロック機構と、前記全開位置において前記スライドドアを仮ロックする仮ロック機構とで構成される。前記手動ロック機構は、手動によって回動可能なレバーを有する。前記レバーは、前記スライドドアのロックを維持するロック位置にあるか、前記スライドドアのロックを解除する非ロック位置にあるかが、前記運転室の内部から目視により確認可能である。
一態様では、上記構成に加えて、前記手動ロック機構は、前記スライドドアが前記全開位置に到達する場合に、前記レバーが前記ロック位置から前記非ロック位置に移動されるように構成されている。
別の態様では、上記構成に加えて、前記運転室本体は、前記スライドドアをガイドするガイドレールを備えており、前記ガイドレールは、前記スライドドアに面するように設けられている。前記手動ロック機構は、前記スライドドアに設けられた前記レバーと、前記ガイドレールに設けられたロック受け部とで構成され、前記仮ロック機構は、前記ガイドレールに固定された仮ロック用板バネと、前記スライドドアに設けられたガイドローラとで構成され、前記ロック機構は、前記ガイドレールの高さ内に収まっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、全開位置においてロック可能なドアを備えた運転室を備えた建設機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るクレーン車を示している。
【
図3】
図3は、運転室の外側から見た下部スライダとその周辺部の斜視図である。
【
図4】
図4は、運転室の内側から見た下部スライダとその周辺部の斜視図である。
【
図5】
図5は、上方から見た手動ロック機構の平面図である。
【
図6】
図6は、前方から見た手動ロック機構の平面図である。
【
図7】
図7は、左方から見た手動ロック機構の平面図である。
【
図8】
図8は、下方から見た手動ロック機構の平面図である。
【
図9】
図9は、レバーの位置に対するツメとストライカの位置関係を示している。
【
図10】
図10は、レバーが非ロック位置にあるときの下部スライダとその周辺部の上面図である。
【
図11】
図11は、レバーがロック位置にあるときの下部スライダとその周辺部の上面図である。
【
図12】
図12は、レバーがロック位置にあるときにロックが維持される様子を示している。
【
図13】
図13は、スライドドアが全開位置に移動される際にロック位置にあるレバーが非ロック位置に移動される様子を示している。
【
図14】
図14は、手動操作によりロック位置にあるレバーが非ロック位置に移動された後にスライドドアが前方に移動される様子を示している。
【
図15】
図15は、スライドドアが全開位置に移動された後に手動操作により非ロック位置にあるレバーがロック位置に移動される様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る建設機械のひとつであるクレーン車10を示している。
図1に示されるように、クレーン車10は、走行可能な走行体20と、走行体20の上に設置されるクレーン40とを備えている。
【0011】
走行体20は、クレーン40が搭載される搭載台24と、走行体20の走行を制御するための運転室26とを備えている。搭載台24は、複数の車輪22によって支持されている。車輪22は、図示しない駆動機構によって駆動可能に構成されており、一部の車輪22は、図示しない操舵機構によって操舵可能に構成されている。運転室26には、アクセル、ブレーキ、ステアリング等の複数の操作装置が設けられており、これらの操作装置での操作によって、車輪22の駆動および操舵を操作できるように構成されている。また、搭載台24には、クレーン40の作業時に搭載台24を地面に対して安定に支持するためのアウトリガ28が備えられている。
【0012】
クレーン40は、搭載台24の上に旋回可能に搭載される旋回体42と、荷を吊り上げるためのブーム46と、ブーム46を起伏させるための起伏シリンダ48を備えている。ブーム46と起伏シリンダ48は旋回体42に搭載されている。旋回体42には運転室44が搭載されている。運転室44には、複数の操作レバー等が設けられており、これらの操作レバー等によって、旋回体42の旋回、ブーム46の起伏、その他の操作たとえば荷の吊り上げ作業等を制御できるように構成されている。
【0013】
ブーム46は伸縮可能であり、荷役作業中の重量のアンバランスを抑えるために、旋回体42の後部にカウンタウエイト50が装着される。
【0014】
図2は、
図1に示された運転室44の斜視図である。
図2に示されるように、運転室44は、乗降口60aを有する運転室本体60と、運転室本体60に対してスライド移動することにより乗降口60aを開閉するスライドドア70とを備えている。
【0015】
運転室本体60は、作業者が乗り降りするための乗降口60aを左側に有している。本明細書においては、前後と左右と上下は次のように定められる。前後に関しては、作業者が運転室本体60内の運転席(図示せず)に着座したときに作業者に対して操作レバー等が位置する方を前とし、その反対の方を後ろとしている。左右は、作業者が前を向いて運転席に普通に着座した姿勢を基準にしている。また、上下は、作業者が運転席に普通に着座した姿勢を基準にしている。
【0016】
運転室本体60は、乗降口60aの上下にそれぞれ設けられた上部ガイドレール62と下部ガイドレール64を有している。上部ガイドレール62と下部ガイドレール64はいずれも、スライドドア70に面するように設けられている。
【0017】
スライドドア70は、上部ガイドレール62によってガイドされた前後に移動可能な上部スライダ80と、下部ガイドレール64によってガイドされた前後に移動可能な下部スライダ90を有している。
【0018】
運転室本体60に設けられた上部ガイドレール62と下部ガイドレール64は、上部スライダ80と下部スライダ90を、延いてはスライドドア70をガイドする。これにより、スライドドア70は、運転室本体60に対して前後にスライド移動できるように、運転室本体60に保持されている。
【0019】
本明細書等においては、スライドドア70が最も前方に位置して乗降口60aを完全に閉じる位置を閉位置と称し、スライドドア70が最も後方に位置して乗降口60aを最も大きく開く位置を全開位置と称する。
【0020】
運転室44はまた、スライドドア70の全開位置においてスライドドア70をロックするロック機構110を備えている。ロック機構110は、下部ガイドレール64と下部スライダ90に分散されて設けられている。すなわち、ロック機構110の一部の構成要素が下部ガイドレール64に設けられ、ロック機構110の他の構成要素が下部スライダ90に設けられている。また、ロック機構110は、下部ガイドレール64の高さ内に納まっている。すなわち、ロック機構110は、鉛直方向について下部ガイドレール64が形成される範囲内に、配置されている。
【0021】
図3と
図4は、スライドドア70の全開位置にある状態における下部スライダ90と、その周辺部を示している。
図3は、運転室44の外側から見た斜視図であり、
図4は、運転室44の内側から見た斜視図である。
図3では、それらの構造を視覚化するため、運転室本体60の床と、下部ガイドレール64の一部との図示が省略されている。
【0022】
下部スライダ90は、スライドドア70のドアステー72に取り付けられるドア取り付け部92と、左右に延びる軸周りに回転可能な上下ガイドローラ94と、上下に延びる軸周りに回転可能な左右ガイドローラ96を有している。上下ガイドローラ94は、下部スライダ90の移動に伴って、下部ガイドレール64のレール底壁64bの上を転がる。左右ガイドローラ96は、下部ガイドレール64の一部(
図3では図示が省略されている)に当接することにより、下部スライダ90の左右位置を規定する。
【0023】
下部ガイドレール64の後端部には、スライドドア70の全開位置を規定するストッパ用ブラケット100が設けられている。ストッパ用ブラケット100には、下部スライダ90と当接するストッパ102が設けられている。ストッパ102は、下部スライダ90との当接時の衝撃を和らげるため、弾性部材で構成されている。スライドドア70の下部スライダ90がストッパ102に当接することにより、スライドドア70の後方への移動が制止され、スライドドア70が全開位置に配置される。
【0024】
全開位置に配置されたスライドドア70を自動的に仮ロックするため、下部ガイドレール64のレール側壁64aに仮ロック用板バネ122が固定されている。仮ロック用板バネ122は、スライドドア70の全開位置の前方において、下部ガイドレール64のレール側壁64aに片持ちで固定されており、スライドドア70の全開位置のわずかに前方において左方に突出した突出部122aと、スライドドア70の全開位置において右方に凹んだ凹部122bを有している。
【0025】
左右ガイドローラ96は下部ガイドレール64によって左右位置が規制されている。このため、スライドドア70が全開位置に向かって後方に移動されるとき、全開位置の直前において、左右ガイドローラ96が仮ロック用板バネ122の突出部122aに当たり、左右ガイドローラ96の移動がいくらか妨げられる。仮ロック用板バネ122は、弱い力による左右ガイドローラ96の移動は妨げるが、強い力による左右ガイドローラ96の移動は妨げない。
【0026】
スライドドア70が強い力で後方に移動された場合には、左右ガイドローラ96は、仮ロック用板バネ122の復元力に逆らって、仮ロック用板バネ122を変形させ、仮ロック用板バネ122の突出部122aを乗り越えて、仮ロック用板バネ122の凹部122bに到達し、スライドドア70は全開位置に到達する。左右ガイドローラ96が仮ロック用板バネ122の突出部122aを乗り越えて行くに伴って、仮ロック用板バネ122は復元力により元の形状に戻る。
【0027】
前述したように、仮ロック用板バネ122は、弱い力による左右ガイドローラ96の移動は妨げるが、強い力による左右ガイドローラ96の移動は妨げない。このため、弱い力によるスライドドア70の前方への移動は、仮ロック用板バネ122によって妨げられる。しかし、強い力によるスライドドア70の前方への移動は、仮ロック用板バネ122によって妨げられない。その結果、スライドドア70が適度にロックされる。本明細書においては、このようなロックを仮ロックと称する。
【0028】
すなわち、下部ガイドレール64に固定された仮ロック用板バネ122と、下部スライダ90に設けられた左右ガイドローラ96は、協働して、全開位置においてスライドドア70を自動的に仮ロックする自動仮ロック機構120を構成している。自動仮ロック機構120は、ロック機構110の一部と見なしてもよい。言い換えれば、ロック機構110は、自動仮ロック機構120を含んでいる。
【0029】
ロック機構110はまた、全開位置においてスライドドア70を手動操作によりロックする手動ロック機構130を含んでいる。手動ロック機構130は、自動仮ロック機構120とは異なり、手動操作によりロックを解除する操作が行われない限り、スライドドア70のロックを維持する機能を有している。
【0030】
図5~
図8は、手動ロック機構130を示している。
図5は、上方から見た手動ロック機構130の平面図である。
図6は、前方から見た手動ロック機構130の平面図である。
図7は、左方から見た手動ロック機構130の平面図である。
図8は、下方から見た手動ロック機構130の平面図である。
【0031】
手動ロック機構130は、下部スライダ90に設けられたレバー132と、下部ガイドレール64に設けられたロック受け部170とを備えている。ロック受け部170は、下部ガイドレール64の後端部に設けられたストッパ用ブラケット100に取り付けられている。
【0032】
手動ロック機構130は、レバー132とロック受け部170の係合によりロックし、レバー132とロック受け部170の係合の解除によりロックを解除するように構成されている。
【0033】
レバー132は、保持ピン152を介して下部スライダ90に取り付けられており、保持ピン152を軸として回動可能に下部スライダ90に保持されている。レバー132は、作業者によるレバー132の回動操作を容易にするために、作業者により把持される把持部134を有している。把持部134は、上方に向かって延びている。レバー132は、把持部134を除いて、下部スライダ90に対して、下方に位置している。
【0034】
レバー132の回動角度を規制するため、レバー132は、保持ピン152を中心とする円弧に沿って延びた円弧スリット136を有し、下部スライダ90は、円弧スリット136を通って延びた角度規制ピン154を有している。円弧スリット136の端が角度規制ピン154に当接することにより、レバー132の回動角度が規制される。言い換えれば、レバー132の円弧スリット136と下部スライダ90の角度規制ピン154は、協働して、レバー132の回動角度を規制する回動角度規制機構を構成している。
【0035】
レバー132と下部スライダ90の間にはバネ156が設けられている。バネ156の一方の端部は下部スライダ90に支持され、バネ156の他方の端部はレバー132に支持されている。より詳しくは、バネ156の一方の端部は、下部スライダ90に形成された穴の中に挿入されており、バネ156の他方の端部は、レバー132に形成された穴の中に挿入されている。
【0036】
バネ156の弾性力によって、レバー132は、円弧スリット136の一方の端が角度規制ピン154に当接した位置または円弧スリット136の他方の端が角度規制ピン154に当接した位置に安定に保持される。
【0037】
本明細書においては、バネ156に近い方の円弧スリット136の端が角度規制ピン154に当接した位置をロック位置と称し、バネ156に遠い方の円弧スリット136の端が角度規制ピン154に当接した位置を非ロック位置と称する。
【0038】
レバー132とロック受け部170が互いに係合してロック機能を果たすために、レバー132はツメ138を有しており、ロック受け部170はストライカ172を有している。
【0039】
ロック受け部170は、ストライカ172を除いて、レバー132に対して、下方に位置している。ストライカ172は、少なくともレバー132の同じ位置まで、上方に向かって延びている。ストライカ172は、レバー132を超えて延び、レバー132よりも上方に突出していてもよいが、その上端は、下部スライダ90よりも下方に位置している。ストライカ172は、右端が前方に位置し、左端が後方に位置するように、前後方向に対して傾斜している。
【0040】
ツメ138は、レバー132がロック位置にあるとき、右前方へ突出する形状を有している。ツメ138の背面は、右側が前方に位置し、左側が後方に位置するように、前後方向に対して傾斜している。ツメ138の背面の傾斜は、ストライカ172の傾斜よりも大きい。ここにおいて、傾斜の大きさは、部材の表面に立てた法線と、前後に延びる直線との角度で論じている。
【0041】
図9は、レバー132の位置に対するツメ138とストライカ172の位置関係を示している。
図9には、バネ反転位置にあるレバー132が実線で描かれており、併せて、非ロック位置にあるレバー132Aと、ロック位置にあるレバー132Bとが想像線で描かれている。
【0042】
ここにおいて、バネ反転位置は、バネ156がレバー132を付勢する方向が、非ロック位置へ向かう方向とロック位置へ向かう方向との間で反転する位置を意味している。レバー132がバネ反転位置にあるとき、バネ156は最も弾性変形されており、レバー132は、エネルギー的に高い不安定な状態にある。レバー132は、バネ反転位置に安定して留まることはなく、バネ156の復元力によって、ロック位置または非ロック位置のいずれかの方向に付勢される。
【0043】
ロック位置と非ロック位置のいずれにおいても、レバー132の円弧スリット136の端が角度規制ピン154に当接しており、その当接が維持されるようにバネ156によってレバー132が付勢されている。このため、レバー132は、ロック位置または非ロック位置に安定して留まる。
【0044】
レバー132がロック位置にあるとき、ツメ138とストライカ172は、左右方向に関して、ほぼ同じ位置にある。すなわち、ツメ138とストライカ172は、前または後ろから見て、互いに重なっている位置関係にある。このため、全開位置にある下部スライダ90の前方への移動に対して、レバー132のツメ138がロック受け部170のストライカ172に当接するため、下部スライダ90の前方への移動が妨げられる。
【0045】
一方、レバー132が非ロック位置にあるとき、ツメ138とストライカ172は、左右方向に離間している。すなわち、ツメ138とストライカ172は、前または後ろから見て、互いに重なっていない位置関係にある。このため、全開位置にある下部スライダ90の前方への移動に対して、レバー132のツメ138は、ロック受け部170のストライカ172に当接しないため、下部スライダ90の前方への移動が妨げられることはない。
【0046】
図10は、レバー132が非ロック位置にあるときの下部スライダ90とその周辺部の上面図である。また、
図11は、レバー132がロック位置にあるときの下部スライダ90とその周辺部の上面図である。さらに、
図4は、運転室44の内側から見たレバー132が非ロック位置にあるときの下部スライダ90とその周辺部の斜視図である。
【0047】
これらの図から分かるように、レバー132の姿勢、特に把持部134の位置を目視することにより、レバー132がロック位置または非ロック位置のいずれにあるか、すなわち手動ロック機構130がロック状態にあるか非ロック状態にあるかを、運転室44の内部から容易に確認することができる。
【0048】
また、特に
図4から分かるように、運転室44の内部からレバー132に容易に接近可能であり、運転室44の中にいる作業者が、レバー132の把持部134を手で持ってレバー132を回動させることにより、手動ロック機構130のロック状態と非ロック状態の切り替えを容易に行うことが可能である。
【0049】
全開位置にあるスライドドア70は、自動仮ロック機構120によって全開位置に仮ロックされているため、手動ロック機構130の手動操作の際に、スライドドア70が不意に前方に移動して、作業者が危険に遭遇するようなことも有効に防止される。
【0050】
図12は、レバー132がロック位置にあるときに、手動ロック機構130によりスライドドア70のロックが維持される様子を示している。
図12において、スライドドア70は全開位置にある。
【0051】
図12の上段に示されるように、レバー132がロック位置にあるとき、レバー132のツメ138とロック受け部170のストライカ172は、前または後ろから見て、互いに重なっている位置関係にある。
【0052】
このため、
図12の下段に示されるように、スライドドア70の前方への移動に伴って下部スライダ90が前方へ移動したとき、レバー132のツメ138は、ロック受け部170のストライカ172に当接する。このため、下部スライダ90のそれ以上の前方への移動が妨げられる。
【0053】
図13は、スライドドア70が全開位置に移動される際にロック位置にあるレバー132が非ロック位置に移動される様子を示している。スライドドア70の移動の当初、レバー132はロック位置にある。
【0054】
図13の上段に示されるように、スライドドア70が全開位置に到達する直前において、レバー132のツメ138は、ロック受け部170のストライカ172に当接する。
【0055】
ストライカ172が前後方向に対して傾斜しており、また、ツメ138の背面がストライカ172よりも大きく前後方向に対して傾斜しているため、スライドドア70がさらに後方に移動するにつれて、
図13の中段に示されるように、ツメ138がストライカ172を乗り越えて行く。これにより、レバー132は、上方から見て時計回りに回動される。ツメ138がストライカ172を完全に乗り越えた時点では、レバー132はバネ反転位置を超えている。その結果、
図13の下段に示されるように、レバー132は非ロック位置に移動する。
【0056】
その後、
図13の下段に示されるように、下部スライダ90がストッパ用ブラケット100のストッパ102に当接し、スライドドア70の後方への移動が制止され、スライドドア70が全開位置に配置される。
【0057】
このように、ロック位置にあるレバー132がストライカ172に当接した際に、レバー132が回動されることにより、レバー132とストライカ172の当接時の衝撃が和らげられる。これにより、レバー132やストライカ172や下部スライダ90や下部ガイドレール64等が損傷したり破損したりすることが好適に避けられる。
【0058】
図14は、手動操作によりロック位置にあるレバー132が非ロック位置に移動された後にスライドドア70が前方に移動される様子を示している。当初、スライドドア70は全開位置にあり、レバー132はロック位置にある。
【0059】
図14の上段に示されるように、レバー132がロック位置にある状態では、レバー132のツメ138とロック受け部170のストライカ172は、前または後ろから見て、互いに重なっている位置関係にある。このため、スライドドア70の前方への移動は、下部スライダ90が前方へ移動したとき、レバー132のツメ138がロック受け部170のストライカ172に当接するため、規制されている。
【0060】
図14の中段に示されるように、レバー132がロック位置から非ロック位置に移動された状態では、レバー132のツメ138とロック受け部170のストライカ172は、前または後ろから見て、互いに重なっていない位置関係にある。
【0061】
このため、
図14の下段に示されるように、スライドドア70の前方への移動に伴って下部スライダ90が前方へ移動したとき、レバー132のツメ138は、ロック受け部170のストライカ172に当接せず、スライドドア70は前方へ移動される。
【0062】
図15は、スライドドア70が全開位置に移動された後に手動操作により非ロック位置にあるレバーがロック位置に移動される様子を示している。
【0063】
図15の上段に示されるように、レバー132が非ロック位置にある状態では、レバー132のツメ138とロック受け部170のストライカ172は、前または後ろから見て、互いに重なっていない位置関係にある。
【0064】
このため、
図15の中段に示されるように、スライドドア70の後方への移動に伴って下部スライダ90が後方へ移動したとき、レバー132のツメ138は、ロック受け部170のストライカ172に当接することなく、ストライカ172を通過する。
【0065】
その後、
図15の下段に示されるように、下部スライダ90がストッパ用ブラケット100のストッパ102に当接し、スライドドア70の後方への移動が制止され、スライドドア70が全開位置に配置される。
【0066】
その後、レバー132が非ロック位置からロック位置に移動された状態では、レバー132のツメ138とロック受け部170のストライカ172は、前または後ろから見て、互いに重なっている位置関係にある。このため、スライドドア70の前方への移動は、下部スライダ90が前方へ移動したとき、レバー132のツメ138がロック受け部170のストライカ172に当接するため、規制されている。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態によれば、全開位置においてロック可能なスライドドア70を備えた運転室44を有する建設機械たとえばクレーン車10が提供される。
【0068】
上述した実施形態では、運転室本体60が乗降口60aを左側に有する例をあげて説明したが、本実施形態のスライドドア70に関する機構は、右側に乗降口60aを有する運転室本体60に対しても、同様に適用可能である。また、上述した実施形態では、クレーン40の運転室44を例にあげて説明したが、本実施形態のスライドドア70に関する機構は、クレーン以外の建設機械の運転室にも適用可能である。
【0069】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。
【符号の説明】
【0070】
10…クレーン車、20…走行体、22…車輪、24…搭載台、26…運転室、28…アウトリガ、40…クレーン、42…旋回体、44…運転室、46…ブーム、48…起伏シリンダ、50…カウンタウエイト、60…運転室本体、60a…乗降口、62…上部ガイドレール、64…下部ガイドレール、64a…レール側壁、64b…レール底壁、70…スライドドア、72…ドアステー、80…上部スライダ、90…下部スライダ、92…ドア取り付け部、94…上下ガイドローラ、96…左右ガイドローラ、100…ストッパ用ブラケット、102…ストッパ、110…ロック機構、120…自動仮ロック機構、122…仮ロック用板バネ、122a…突出部、122b…凹部、130…手動ロック機構、132…レバー、134…把持部、136…円弧スリット、138…ツメ、152…保持ピン、154…角度規制ピン、156…バネ、170…ロック受け部、172…ストライカ。