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特許7095978半導体プロセスシートおよび半導体パッケージ製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】半導体プロセスシートおよび半導体パッケージ製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20220628BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20220628BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220628BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H01L21/56 R
C09J7/20
B32B27/00 M
H01L21/52 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017220856
(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2019091845
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】志賀 豪士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】高本 尚英
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092335(JP,A)
【文献】特開2005-028734(JP,A)
【文献】特開2000-223518(JP,A)
【文献】特開2013-157470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0035667(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0039496(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0198762(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0064341(US,A1)
【文献】特開2015-126124(JP,A)
【文献】特開2012-227441(JP,A)
【文献】特開2010-056409(JP,A)
【文献】特開2014-195010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
C09J 7/20
B32B 27/00
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着力低減型粘着剤層、粘着剤層、およびこれらの間に位置する基材を少なくとも含む積層構造を有し、且つ、第1粘着面およびこれとは反対の第2粘着面を有する、両面粘着シートと、
前記両面粘着シートにおける前記第2粘着面上に剥離可能に密着している部分封止剤層と、を備え
前記粘着力低減型粘着剤層は、前記積層構造において前記基材よりも前記第1粘着面側に位置し、前記粘着剤層は、前記積層構造において前記基材よりも前記第2粘着面側に位置する、半導体プロセスシート。
【請求項2】
前記部分封止剤層はチップ電極包埋用接着剤層である、請求項1に記載の半導体プロセスシート。
【請求項3】
包埋対象チップ電極の高さに対する前記チップ電極包埋用接着剤層の厚さの比の値は0.1~10である、請求項2に記載の半導体プロセスシート。
【請求項4】
前記部分封止剤層は1~300μmの厚さを有する、請求項1から3のいずれか一つに記載の半導体プロセスシート。
【請求項5】
前記粘着力低減型粘着剤層は、加熱発泡型粘着剤層または放射線硬化性粘着剤層である、請求項1から4のいずれか一つに記載の半導体プロセスシート。
【請求項6】
前記両面粘着シートの前記第2粘着面と前記部分封止剤層との間の、23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件での剥離試験における剥離粘着力に対する、前記両面粘着シートの前記第1粘着面が23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件での剥離試験においてステンレス平面に対して示す剥離粘着力の比の値は、0.003である、請求項1からのいずれか一つに記載の半導体プロセスシート。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一つに記載の半導体プロセスシートを使用して半導体パッケージを製造するための方法であって、
前記第1粘着面側が支持体に貼り合わせられている前記半導体プロセスシートにおける前記部分封止剤層に対して複数の半導体チップをマウントするチップマウント工程と、
前記半導体プロセスシート上において前記複数の半導体チップを包埋するように封止剤を供給し、当該封止剤および前記部分封止剤層を硬化させて封止材部を形成する、封止工程と、
前記封止材部と前記第2粘着面との間を離隔させることを含むデタッチ工程と、
前記半導体チップごとの配線を含む配線構造部を前記封止材部上に形成する配線形成工程と、
前記封止材部および前記配線構造部を前記半導体チップごとに分割して半導体パッケージを得る個片化工程と、を含む半導体パッケージ製造方法。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一つに記載の半導体プロセスシートを使用して半導体パッケージを製造するための方法であって、
前記第1粘着面側が支持体に貼り合わせられている前記半導体プロセスシートにおける前記部分封止剤層に対して複数の半導体チップをマウントするチップマウント工程と、
前記部分封止剤層を硬化させる硬化工程と、
前記半導体プロセスシート上において前記複数の半導体チップを包埋するように封止剤を供給し、当該封止剤を硬化済み部分封止剤層上で硬化させて封止材部を形成する、封止工程と、
前記封止材部と前記第2粘着面との間を離隔させることを含むデタッチ工程と、
前記半導体チップごとの配線を含む配線構造部を前記封止材部上に形成する配線形成工程と、
前記封止材部および前記配線構造部を前記半導体チップごとに分割して半導体パッケージを得る個片化工程と、を含む半導体パッケージ製造方法。
【請求項9】
前記半導体チップは、チップ本体と、これから延出する少なくとも一つのチップ電極とを有し、
前記チップマウント工程では、各半導体チップは、前記チップ電極が前記部分封止剤層に突入するように当該部分封止剤層に対してマウントされる、請求項またはに記載の半導体パッケージ製造方法。
【請求項10】
前記チップマウント工程では、各半導体チップは、前記チップ電極が前記部分封止剤層に突入し且つ前記第2粘着面に至るように、前記部分封止剤層に対してマウントされる、請求項に記載の半導体パッケージ製造方法。
【請求項11】
前記配線形成工程では、前記封止材部の表面に露出している前記チップ電極と電気的に接続される配線を含む配線構造部が形成される、請求項10に記載の半導体パッケージ製造方法。
【請求項12】
前記半導体チップは、チップ本体と、これから延出する少なくとも一つのチップ電極とを有し、
前記チップマウント工程では、各半導体チップは、前記チップ本体における前記チップ電極とは反対の側が前記部分封止剤層に接合されるように当該部分封止剤層に対してマウントされる、請求項またはに記載の半導体パッケージ製造方法。
【請求項13】
前記デタッチ工程の後に前記封止材部を研削して前記半導体チップの前記チップ電極を露出させる工程を更に含み、
前記配線形成工程では、前記封止材部の表面に露出している前記チップ電極と電気的に接続される配線を含む配線構造部が形成される、請求項12に記載の半導体パッケージ製造方法。
【請求項14】
前記デタッチ工程は、前記半導体プロセスシートにおける前記粘着力低減型粘着剤層に対する粘着力低減措置を含む、請求項から13のいずれか一つに記載の半導体パッケージ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージの製造に使用することのできる半導体プロセスシート、および半導体パッケージ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を内部に有する いわゆる半導体パッケージの製造においては、従来、半導体素子が素子ごとに樹脂材料で封止されたうえで、封止樹脂内の半導体素子と電気的に接続される配線や外部電極が封止樹脂表面に形成されることがある。半導体パッケージの製造技術については、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-88782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体パッケージの製造過程において、素子ごとに封止工程や配線形成工程などを行うことは、半導体パッケージの製造プロセスの煩雑化やコストの上昇を招きやすい。半導体素子の小型化・高密度化に伴う半導体パッケージにおける微細配線化・多端子化が進むほど、素子ごとに封止工程や配線形成工程などを行うことによる製造コスト等への影響は、大きくなる傾向にある。
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、その目的は、半導体パッケージを効率よく製造するのに適した半導体プロセスシートおよび半導体パッケージ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によると、半導体プロセスシートが提供される。この半導体プロセスシートは、両面粘着シートおよび部分封止剤層を備える。両面粘着シートは、第1粘着面およびこれとは反対の第2粘着面を有し、これら粘着面間において、粘着力低減型粘着剤層と、粘着剤層と、これらの間に位置する基材とを少なくとも含む積層構造を有する。粘着力低減型粘着剤層は、好ましくは、加熱発泡型粘着剤層または放射線硬化性粘着剤層である。部分封止剤層は、両面粘着シートにおける第2粘着面上に剥離可能に密着している。また、両面粘着シートの積層構造中、例えば、粘着力低減型粘着剤層は基材よりも第1粘着面側に位置し、粘着剤層は基材よりも第2粘着面側に位置する。この場合、粘着力低減型粘着剤層は第1粘着面をなす層であってもよく、粘着剤層は第2粘着面をなす層であってもよい。或いは、両面粘着シートの積層構造中、粘着力低減型粘着剤層が基材よりも第2粘着面側に位置し、粘着剤層が基材よりも第1粘着面側に位置してもよい。この場合、粘着力低減型粘着剤層は第2粘着面をなす層であってもよく、粘着剤層は第1粘着面をなす層であってもよい。このような構成の本半導体プロセスシートは、本発明の第2の側面に関して後述するように、半導体パッケージの製造過程で使用することができるものである。
【0007】
本半導体プロセスシートにおける部分封止剤層は、好ましくは、チップ電極包埋用接着剤層である。この場合、包埋対象チップ電極の高さに対するチップ電極包埋用接着剤層の厚さの比の値は、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~9である。
【0008】
本半導体プロセスシートにおける部分封止剤層の厚さは、好ましくは1~300μm、より好ましくは5~250μm、より好ましくは10~200μmである。
【0009】
本半導体プロセスシートにおいて、両面粘着シートの第2粘着面と部分封止剤層との間の、23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件での剥離試験における剥離粘着力に対する、両面粘着シートの第1粘着面が23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件での剥離試験においてステンレス平面に対して示す剥離粘着力の比の値は、好ましくは0.003~3、より好ましくは0.004~2.5である。例えば、両面粘着シートにおいて、粘着力低減型粘着剤層が第1粘着面をなし且つ粘着剤層が第2粘着面をなす場合には、当該粘着剤層と部分封止剤層との間の、23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件での剥離試験における剥離粘着力に対する、当該粘着力低減型粘着剤層が23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件での剥離試験においてステンレス平面に対して示す剥離粘着力の比の値は、好ましくは0.003~3、より好ましくは0.004~2.5である。
【0010】
本発明の第2の側面によると、半導体パッケージ製造方法が提供される。本製造方法は、本発明の第1の側面に係る上述の半導体プロセスシートを使用して半導体パッケージを製造するための方法であって、以下のチップマウント工程、封止工程、デタッチ工程、配線形成工程、および個片化工程を少なくとも含む。
【0011】
チップマウント工程では、第1粘着面側が支持体に貼り合わせられている半導体プロセスシートにおける部分封止剤層に対して複数の半導体チップがマウントされる。半導体チップは、例えば、チップ本体とこれから延出する少なくとも一つのチップ電極とを有する延出電極付き半導体チップである。本工程では、半導体チップの有するチップ電極を部分封止剤層に向けてのフェイスダウンでのマウントが行われてもよいし、半導体チップのチップ電極とは反対の側を部分封止剤層に向けてのフェイスアップでのマウントが行われてもよい。
【0012】
封止工程では、半導体プロセスシート上において複数の半導体チップを包埋するように封止剤が供給され、当該封止剤および部分封止剤層が硬化されて、封止材部が形成される。これにより、半導体チップを包埋して伴う封止材部(チップ包埋封止材部)が得られる。
【0013】
本製造方法においては、上述のチップマウント工程の後、半導体プロセスシート上への封止剤の供給より前に、部分封止剤層を硬化させる硬化工程を行ってもよい。この場合、封止工程では、複数の半導体チップを包埋するように半導体プロセスシート上に供給された封止剤が硬化済み部分封止剤層上で硬化されて、封止材部が形成される。このような構成によると、半導体プロセスシートよる半導体チップの保持力が部分封止剤層の硬化によって強化された状態で、封止工程が行われる。したがって、当該構成は、封止工程において、封止剤の硬化時の収縮に起因する半導体チップの位置ずれを抑制するのに適する。このような半導体チップ位置ずれ抑制は、例えば、後の配線形成工程において半導体チップごとの配線を含む配線構造部を精度よく形成するうえで好ましい。
【0014】
デタッチ工程は、半導体プロセスシートにおける両面粘着シートの第2粘着面と封止材部との間を離隔させることを含む。デタッチ工程は、好ましくは、半導体プロセスシートにおける粘着力低減型粘着剤層に対する粘着力低減措置を含む。粘着力低減型粘着剤層が加熱発泡型粘着剤層である場合、粘着力低減措置は所定条件での加熱である。粘着力低減型粘着剤層が放射線硬化性粘着剤層である場合、粘着力低減措置は所定照射量での紫外線照射など放射線照射である。このようなデタッチ工程により、上述の支持体からチップ包埋封止材部を取り外すことができる。また、デタッチ工程の後、必要に応じて、封止材部内の各半導体チップのチップ電極を外部に露出させるための研削加工が封止材部に対して行われてもよい。
【0015】
配線形成工程では、半導体チップごとの配線を含む配線構造部が封止材部上に形成される。半導体チップごとの配線には、本製造方法によって半導体チップごとに製造されることとなる各半導体パッケージにおけるバンプ電極等の外部電極が含まれる。
【0016】
個片化工程では、封止材部および配線構造部が半導体チップごとに分割されて半導体パッケージが得られる。以上のようにして、半導体パッケージが製造されることとなる。
【0017】
本発明の第2の側面に係るこのような半導体パッケージ製造方法は、半導体パッケージを効率よく製造するのに適する。その理由は、以下のとおりである。
【0018】
部分封止剤層を備えない両面粘着シートよりなる従来型の半導体プロセスシートを使用して半導体パッケージを製造する場合、そのチップマウント工程では、一方面側が支持体に貼り合わせられている両面粘着シートの他方面に対して複数の半導体チップがマウントされる。このとき、半導体チップのチップ電極とは反対の側を両面粘着シートに接合するフェイスアップでのマウントが行われる。次に、両面粘着シート上において、複数の半導体チップを包埋する封止材部が形成される。次に、複数の半導体チップを包埋して伴う封止材部(従来型のチップ包埋封止材部)から両面粘着シートが剥離される(デタッチ工程)。従来型のチップ包埋封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面には各半導体チップのいわゆる裏面が露出している。次に、このような封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面に所定の樹脂シートが貼り合わせられる。封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面には上述のように各半導体チップの裏面が露出しており、当該封止材部の厚さ方向における対称性は低いので、当該封止材部は不可避的に反ってしまう。このような反りが生じた状態では後続のプロセスを適切に進めることができない。そのため、両面粘着シートよりなる従来型の半導体プロセスシートが使用される半導体パッケージ製造方法では、デタッチ工程の後、封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面に所定の樹脂シートを貼り合わせて、従来型のチップ包埋封止材部についていわゆるワーページ(反り)コントロールを行う必要があるのである。
【0019】
これに対し、本発明の第2の側面に係る半導体パッケージ製造方法では、デタッチ工程の後、チップ包埋封止材部についてのワーページコントロールのための特別の工程は必須ではない。本製造方法では、本発明の第1の側面に係る上述の半導体プロセスシートが使用されるからである。具体的には、チップマウント工程にて半導体プロセスシートの部分封止剤層に対して複数の半導体チップがマウントされ、封止工程では、複数の半導体チップを包埋するように設けられた封止剤と部分封止剤層または硬化済み部分封止剤層とから封止材部が形成され、このようにして形成されるチップ包埋封止材部は、上述の従来型のチップ包埋封止材部よりも厚さ方向における対称性が高く、反りを抑制するのに適するからである。チップ包埋封止材部のワーページコントロールのための工程が必須ではない本製造方法は、半導体パッケージを効率よく製造するのに適する。
【0020】
以上のように、本発明の第1の側面に係る半導体プロセスシートおよび第2の側面に係る半導体パッケージ製造方法は、半導体パッケージを効率よく製造するのに適するのである。
【0021】
本半導体パッケージ製造方法のチップマウント工程では、好ましくは、上記の各延出電極付き半導体チップが、そのチップ電極が部分封止剤層に突入するように、部分封止剤層に対してマウントされる(フェイスダウンでのマウント)。
【0022】
このようなフェイスダウンでのチップマウント工程では、好ましくは、半導体チップのチップ電極が半導体プロセスシートにおける部分封止剤層に突入し且つ両面粘着シートの第2粘着面に至るように、各半導体チップは部分封止剤層に対してマウントされる。この場合、後の配線形成工程では、封止材部の表面に既に露出しているチップ電極と電気的に接続される配線を含む配線構造部が形成される。これら構成によると、後述のようなフェイスアップでのチップマウント工程を経る場合に配線形成工程前に要する封止材部研削工程を行うことなく、配線構造部を適切に形成することができる。したがって、当該構成は、半導体パッケージを効率よく製造するうえで好ましい。
【0023】
本半導体パッケージ製造方法のチップマウント工程では、上記の各延出電極付き半導体チップが、そのチップ本体におけるチップ電極とは反対の側で部分封止剤層に接合されるように、部分封止剤層に対してマウントされてもよい。この場合、デタッチ工程の後に封止材部を研削して半導体チップのチップ電極を露出させる研削工程を本半導体パッケージ製造方法は更に含み、且つ、配線形成工程では、封止材部の表面に露出しているチップ電極と電気的に接続される配線を含む配線構造部が形成される。このような構成によると、配線構造部を適切に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一の実施形態に係る半導体プロセスシートの部分断面模式図である。
図2図1に示す半導体プロセスシートが使用される半導体パッケージ製造方法における一部の工程を表す。
図3図1に示す半導体プロセスシートが使用される半導体パッケージ製造方法における一部の工程を表す。
図4図1に示す半導体プロセスシートが使用される半導体パッケージ製造方法における一部の工程を表す。
図5図1に示す半導体プロセスシートが使用される半導体パッケージ製造方法における一部の工程を表す。
図6図1に示す半導体プロセスシートが使用される半導体パッケージ製造方法における一部の工程を表す。
図7図1に示す半導体プロセスシートが使用される半導体パッケージ製造方法における一部の工程を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一の実施形態に係る半導体プロセスシートXの部分断面模式図である。半導体プロセスシートXは、半導体パッケージの製造過程で使用することのできるものであり、両面粘着シート10および部分封止剤層20を備える。両面粘着シート10は、粘着面10aおよびこれとは反対の粘着面10bを有し、これら粘着面10a,10b間において、基材11と、粘着力低減型の粘着剤層12と、粘着剤層13とを含む積層構造を有する。部分封止剤層20は、両面粘着シート10における粘着面10b上に剥離可能に密着している。
【0026】
両面粘着シート10の基材11は、両面粘着シート10ないし半導体プロセスシートXにおいて支持体として機能する要素である。基材11は例えばプラスチック基材であり、当該プラスチック基材としてはプラスチックフィルムを好適に用いることができる。当該プラスチック基材の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフィド、アラミド、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、およびシリコーン樹脂が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ブテン共重合体、およびエチレン-ヘキセン共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。基材11は、一種類の材料からなってもよいし、二種類以上の材料からなってもよい。基材11は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。また、基材11は、プラスチックフィルムよりなる場合、無延伸フィルムであってもよいし、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。
【0027】
基材11における粘着剤層12側表面および粘着剤層13側表面のそれぞれは、粘着剤層との密着性を高めるための物理的処理、化学的処理、または下塗り処理が施されていてもよい。物理的処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、およびイオン化放射線処理が挙げられる。化学的処理としては、例えばクロム酸処理が挙げられる。
【0028】
基材11の厚さは、両面粘着シート10ないし半導体プロセスシートXにおける支持体として基材11が機能するための強度を確保するという観点からは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。また、両面粘着シート10ないし半導体プロセスシートXにおいて適度な可撓性を実現するという観点からは、基材11の厚さは、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0029】
両面粘着シート10の粘着剤層12は、粘着力低減型の粘着剤を含む。粘着力低減型粘着剤としては、例えば、加熱発泡型粘着剤や、放射線照射によって粘着力が半導体パッケージ製造プロセスにて利用できない程度に低下するタイプ(第1タイプ)の放射線硬化性粘着剤が、挙げられる。本実施形態の粘着剤層12においては、一種類の粘着力低減型粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着力低減型粘着剤が用いられてもよい。
【0030】
粘着剤層12に用いられうる加熱発泡型粘着剤は、例えば、粘着主剤と、加熱によって発泡や膨張をする成分とを少なくとも含有する。加熱発泡型の粘着剤層は、それに含有される発泡性成分や膨張性成分が充分な加熱を受けると、膨張し、その表面(粘着面)にて凹凸形状を生じる。所定の被着体に粘着面が貼着している状態で加熱発泡型粘着剤層がそのような加熱を受けると、当該粘着剤層が膨張してその粘着面にて凹凸形状を生じて被着体に対する接着総面積を減じ、当該被着体に対する粘着力が低下することとなる。
【0031】
加熱発泡型粘着剤用の粘着主剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、ゴム系粘着剤、およびシリコーン系粘着剤が挙げられる。
【0032】
アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマーは、好ましくは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多いモノマーユニットとして含む。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。
【0033】
アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステルなどの炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、およびエイコシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステルおよびシクロヘキシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルおよび(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすためのモノマーとして、一種類の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよい。(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性をアクリル系粘着剤において適切に発現させるうえでは、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における(メタ)アクリル酸エステルの割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
【0034】
アクリル系ポリマーは、その凝集力や耐熱性などを改質するために、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。そのような他のモノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルなどの官能基含有モノマーが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸が挙げられる。酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸および無水イタコン酸が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシドデシル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルが挙げられる。グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸メチルグリシジルが挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。
【0035】
アクリル系ポリマーは、そのポリマー骨格中に架橋構造を形成するために、(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマーと共重合可能な多官能性モノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。そのような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(即ちポリグリシジル(メタ)アクリレート)、ポリエステル(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリル系ポリマーのためのモノマーとして、一種類の多官能性モノマーが用いられてもよいし、二種類以上の多官能性モノマーが用いられてもよい。アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における多官能性モノマーの割合は、(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性をアクリル系粘着剤において適切に発現させるうえでは、好ましくは40質量%以下、好ましくは30質量%以下である。
【0036】
アクリル系ポリマーは、それを形成するための原料モノマーを重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。
【0037】
両面粘着シート10ないし半導体プロセスシートXの使用される半導体パッケージ製造方法における高度の清浄性の観点からは、両面粘着シート10内の各粘着剤層中の低分子量成分は少ない方が好ましく、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは10万以上、より好ましくは20万~300万である。アクリル系ポリマーの数平均分子量は、例えば、採用される重合手法や、用いられる重合開始剤の種類およびその使用量、重合反応の温度および時間、全モノマー成分中の各種モノマーの濃度、モノマー滴下速度などによって制御されうる。
【0038】
重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤や、過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤などが重合手法に応じて用いられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、および4,4'-アゾビス-4-シアノバレリアン酸が挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシドおよびtert-ブチルペルマレエートが挙げられる。
【0039】
アクリル系ポリマーの数平均分子量を高めるために例えば、粘着剤層形成用組成物には外部架橋剤が配合されてもよい。アクリル系ポリマーと反応して架橋構造を形成するための外部架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物(ポリフェノール系化合物など)、アジリジン化合物、およびメラミン系架橋剤が挙げられる。粘着主剤における外部架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、好ましくは6質量部以下、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0040】
加熱発泡型粘着剤用の、加熱によって発泡や膨張をする成分としては、例えば、発泡剤および熱膨張性微小球が挙げられる。
【0041】
加熱発泡型粘着剤用の発泡剤としては、種々の無機系発泡剤および有機系発泡剤が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、およびアジド類が挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタンやジクロロモノフルオロメタンなどの塩フッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリルやアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジドやジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジン系化合物、ρ-トルイレンスルホニルセミカルバジドや4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系化合物、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物、並びに、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンやN,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミドなどのN-ニトロソ系化合物が挙げられる。
【0042】
加熱発泡型粘着剤用の熱膨張性微小球としては、例えば、加熱によって容易にガス化して膨張する物質が殻内に封入された構成の微小球が挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、およびペンタンが挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質をコアセルベーション法や界面重合法などによって殻形成物質内に封入することによって、熱膨張性微小球を作製することができる。殻形成物質としては、熱溶融性を示す物質や、封入物質の熱膨張の作用によって破裂し得る物質を用いることができる。そのような物質としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリスルホンが挙げられる。
【0043】
粘着剤層12が加熱発泡型粘着剤よりなる粘着力低減型粘着剤層(加熱発泡型粘着剤層)である場合、当該粘着剤層12の厚さは例えば5~100μmである。
【0044】
粘着剤層12に用いられうる上記第1タイプの放射線硬化性粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマーなどのベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する、添加型の放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
【0045】
上記第1タイプの放射線硬化性粘着剤をなすためのアクリル系ポリマーとしては、加熱発泡型粘着剤中の粘着主剤をなすアクリル系ポリマーとして上述したものを採用することができる。
【0046】
上記第1タイプの放射線硬化性粘着剤をなすための放射線重合性モノマー成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。上記第1タイプの放射線硬化性粘着剤をなすための放射線重合性オリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系などの種々のオリゴマーが挙げられ、分子量100~30000程度のものが適当である。放射線硬化性粘着剤中の放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分の総含有量は、形成される粘着剤層12の粘着力を放射線照射によって適切に低下させ得る範囲で決定され、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して、例えば5~500質量部であり、好ましくは40~150質量部である。また、添加型の放射線硬化性粘着剤としては、例えば特開昭60-196956号公報に開示のものが用いられてもよい。
【0047】
粘着剤層12に用いられうる上記第1タイプの放射線硬化性粘着剤としては、例えば、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化性粘着剤も挙げられる。このような内在型の放射線硬化性粘着剤は、形成される粘着剤層12内での低分子量成分の移動に起因する粘着特性の意図しない経時的変化を抑制するうえで好適である。
【0048】
内在型の放射線硬化性粘着剤に含有されるベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。そのような基本骨格をなすアクリル系ポリマーとしては、加熱発泡型粘着剤中の粘着主剤をなすアクリル系ポリマーとして上述したものを採用することができる。アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素-炭素二重結合の導入手法としては、例えば、所定の官能基(第1の官能基)を有するモノマーを含む原料モノマーを共重合させてアクリル系ポリマーを得た後、第1の官能基との間で反応を生じて結合しうる所定の官能基(第2の官能基)と放射線重合性炭素-炭素二重結合とを有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応または付加反応させる方法が、挙げられる。
【0049】
第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基が挙げられる。これら組み合わせのうち、反応追跡の容易さの観点からは、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせや、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが、好適である。また、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製するのは技術的難易度が高いことから、アクリル系ポリマーの作製または入手のしやすさの点では、アクリル系ポリマー側の上記第1の官能基がヒドロキシ基であり且つ上記第2の官能基がイソシアネート基である場合が、より好適である。また、放射線重合性炭素-炭素二重結合と第2の官能基たるイソシアネート基とを併有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、およびm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートが挙げられる。
【0050】
粘着剤層12に用いられるうる放射線硬化性粘着剤は、好ましくは光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、およびアシルホスフォナートが挙げられる。α-ケトール系化合物としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、および2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1が挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびアニソインメチルエーテルが挙げられる。ケタール系化合物としては、例えばベンジルジメチルケタールが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系化合物としては、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。光活性オキシム系化合物としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、および3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、および2,4-ジイソプロピルチオキサントンが挙げられる。粘着剤層12に用いられうる放射線硬化性粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して例えば0.05~20質量部である。
【0051】
粘着剤層12のための放射線硬化性粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、またはX線の照射により硬化するタイプの粘着剤を用いることができ、紫外線照射によって硬化するタイプの粘着剤(紫外線硬化性粘着剤)を特に好適に用いることができる。
【0052】
粘着剤層12が上記第1タイプの放射線硬化性粘着剤よりなる粘着力低減型粘着剤層(放射線硬化性粘着剤層)である場合、当該粘着剤層12の厚さは例えば2~50μmである。
【0053】
粘着剤層12は、上述の各成分に加えて、粘着付与剤、老化防止剤、着色剤などを含有してもよい。着色剤としては、顔料および染料が挙げられる。また、着色剤は、放射線照射を受けて着色する化合物であってもよい。そのような化合物としては、例えばロイコ染料が挙げられる。
【0054】
両面粘着シート10の粘着剤層13は、粘着剤を含む。粘着剤層13用の粘着剤としては、例えば、感圧性粘着剤や、放射線照射によって粘着力が低下するものの半導体パッケージ製造プロセスにて利用できる程度に粘着力を維持するタイプ(第2タイプ)の放射線硬化性粘着剤が挙げられる。本実施形態の粘着剤層13においては、一種類の粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着剤が用いられてもよい。
【0055】
粘着剤層13に用いられうる感圧性粘着剤としては、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、ゴム系粘着剤、およびシリコーン系粘着剤が挙げられる。感圧性粘着剤用のアクリル系ポリマーとしては、加熱発泡型粘着剤中の粘着主剤をなすアクリル系ポリマーとして上述したものを採用することができる。
【0056】
粘着剤層13に用いられうる上記第2タイプの放射線硬化性粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマーなどのベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する、添加型の放射線硬化性粘着剤を用いることができる。この粘着剤を構成するための成分としては、例えば、粘着剤層12用の添加型の放射線硬化性粘着剤に関して上述した成分を用いることができる。添加型の放射線硬化性粘着剤における放射線照射による粘着力低下の程度については、例えば、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基の含有量、並びに、光重合開始剤の種類および配合量によって制御しうる。
【0057】
粘着剤層13に用いられうる上記第2タイプの放射線硬化性粘着剤としては、例えば、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化性粘着剤も挙げられる。この粘着剤を構成するための成分としては、例えば、粘着剤層12用の内在型の放射線硬化性粘着剤に関して上述した成分を用いることができる。内在型の放射線硬化性粘着剤における放射線照射による粘着力低下の程度については、例えば、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基の含有量、並びに、光重合開始剤の種類および配合量によって制御しうる。
【0058】
粘着剤層13の厚さは、例えば1~50μmである。
【0059】
粘着剤層13は、上述の各成分に加えて、粘着付与剤、老化防止剤、着色剤などを含有してもよい。着色剤としては、顔料および染料が挙げられる。また、着色剤は、放射線照射を受けて着色する化合物であってもよい。そのような化合物としては、例えばロイコ染料が挙げられる。
【0060】
本実施形態では、上述のように、粘着力低減型粘着剤層である粘着剤層12は基材11よりも粘着面10a側に位置し、且つ、粘着剤層13は基材11よりも粘着面10b側に位置する。半導体プロセスシートXの両面粘着シート10については、このような積層構成に代えて、粘着剤層12が基材11よりも粘着面10b側に位置し、粘着剤層13が基材11よりも粘着面10a側に位置してもよい。
【0061】
半導体プロセスシートXの両面粘着シート10は、以上のような基材11、粘着力低減型の粘着剤層12、および粘着剤層13に加えて他の層を積層構造中に含んでもよい。そのような他の層としては、例えば、粘着剤層12が加熱発泡型粘着剤層である場合の当該粘着剤層12上に設けられて粘着面をなす薄い粘着剤層や、粘着剤層12が加熱発泡型粘着剤層である場合の当該粘着剤層12と基材11との間に設けられるゴム状有機弾性層が挙げられる。
【0062】
加熱発泡型粘着剤層表面を被覆する薄い粘着剤層が所定の被着体に貼着している状態で、加熱によって加熱発泡型粘着剤層が膨張してその表面凹凸形状を変形させると、これに伴って当該薄い粘着剤層も変形し、その対被着体接着総面積を減じ、当該被着体に対する粘着力が低下することとなる。加熱発泡型粘着剤の粘着力低減機能を利用しつつ、薄い粘着剤層における所望の粘着力を利用することが可能なのである。このような加熱発泡型粘着剤層上の薄い粘着剤層の厚さは例えば2~30μmである。
【0063】
基材と加熱発泡型粘着剤層との間にゴム状有機弾性層を設けることにより、加熱によって加熱発泡型粘着剤層をその厚さ方向へ優先的に且つ均一性高く膨張させやすくなる。このようなゴム状有機弾性層は、例えば、ASTM D-2240に基づくショアD型硬度が50以下の天然ゴム、合成ゴム、または、ゴム弾性を有する合成樹脂により形成される。ゴム状有機弾性層用の合成ゴムや前記合成樹脂としては、例えば、ニトリル系やジエン系、アクリル系などの合成ゴム、ポリオレフィン系やポリエステル系などの熱可塑性エラストマー、並びに、エチレン-酢酸ビニル共重合体やポリウレタン、ポリブタジエン、軟質ポリ塩化ビニルなどのゴム弾性を有する合成樹脂が挙げられる。このようなゴム状有機弾性層の厚さは例えば1~500μmである。
【0064】
半導体プロセスシートXにおける部分封止剤層20は、上述のように、両面粘着シート10における粘着面10b上に剥離可能に密着している。部分封止剤層20の厚さは例えば1~300μmである。
【0065】
部分封止剤層20は、製造目的物の半導体パッケージの一要素である半導体チップのチップ電極を包埋するためのチップ電極包埋用接着剤層であってもよい。すなわち、半導体プロセスシートXは、部分封止剤層20に対してフェイスダウンで半導体チップがマウントされるタイプのものとして設計されてもよい。チップ電極包埋用接着剤層である部分封止剤層20の厚さは、好ましくは1~300μm、より好ましくは5~250μm、より好ましくは10~200μmである。また、包埋対象のチップ電極の高さに対するチップ電極包埋用接着剤層たる部分封止剤層20の厚さの比の値は、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~9である。
【0066】
部分封止剤層20は、例えば、樹脂成分として熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有する組成を有する。或いは、部分封止剤層20は、硬化剤と反応して結合を生じ得る熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を樹脂成分として含有する組成を有してもよい。このような部分封止剤層20が未硬化の状態で半導体プロセスシートXは半導体パッケージ製造プロセスに供される。
【0067】
部分封止剤層20が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有する組成を有する場合の当該熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂が挙げられる。部分封止剤層20は、一種類の熱硬化性樹脂を含有してもよいし、二種類以上の熱硬化性樹脂を含有してもよい。エポキシ樹脂は、半導体チップの腐食原因となりうるイオン性不純物等の含有量が少ない傾向にあることから、部分封止剤層20中の熱硬化性樹脂として好ましい。また、エポキシ樹脂に熱硬化性を発現させるための硬化剤としては、フェノール樹脂が好ましい。
【0068】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、およびテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、ヒダントイン型エポキシ樹脂、トリスグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、およびグリシジルアミン型エポキシ樹脂も挙げられる。また、部分封止剤層20は、一種類のエポキシ樹脂を含有してもよいし、二種類以上のエポキシ樹脂を含有してもよい。
【0069】
フェノール樹脂はエポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、そのようなフェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、およびノニルフェノールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。また、当該フェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂、および、ポリパラオキシスチレンなどのポリオキシスチレンも挙げられる。部分封止剤層20中のフェノール樹脂として特に好ましいのは、フェノールノボラック樹脂やフェノールアラルキル樹脂である。また、部分封止剤層20はエポキシ樹脂の硬化剤として、一種類のフェノール樹脂を含有してもよいし、二種類以上のフェノール樹脂を含有してもよい。
【0070】
部分封止剤層20がエポキシ樹脂とその硬化剤としてのフェノール樹脂とを含有する場合、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してフェノール樹脂中の水酸基が好ましくは0.5~2.0当量、より好ましくは0.8~1.2当量である割合で、両樹脂は配合される。このような構成は、部分封止剤層20の硬化にあたって当該エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の硬化反応を充分に進行させるうえで好ましい。
【0071】
部分封止剤層20における熱硬化性樹脂の含有割合は、部分封止剤層20を適切に硬化させるという観点からは、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0072】
部分封止剤層20中の熱可塑性樹脂は例えばバインダー機能を担うものであり、部分封止剤層20が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有する場合の当該熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ナイロンや6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびフッ素樹脂が挙げられる。部分封止剤層20は、一種類の熱可塑性樹脂を含有してもよいし、二種類以上の熱可塑性樹脂を含有してもよい。アクリル樹脂は、イオン性不純物が少なく且つ耐熱性が高いことから、部分封止剤層20中の熱可塑性樹脂として好ましい。
【0073】
部分封止剤層20が熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂を含有する場合の当該アクリル樹脂をなすアクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。当該アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、および(メタ)アクリル酸アリールエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、およびエイコシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステルおよびシクロヘキシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルおよび(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすためのモノマーとして、一種類の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよい。また、このようなアクリル系ポリマーは、それを形成するための原料モノマーを重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。
【0074】
アクリル系ポリマーは、その凝集力や耐熱性の改質のために、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。そのような他のモノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸が挙げられる。酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸および無水イタコン酸が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルが挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸メチルグリシジルが挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。
【0075】
部分封止剤層20が、熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む組成を有する場合、当該熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂を用いることができる。この熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすためのアクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。そのような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、部分封止剤層20に含有されるアクリル樹脂をなすためのアクリル系ポリマーの構成モノマーとして上記したのと同様の(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。一方、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすための熱硬化性官能基としては、例えば、グリシジル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、およびイソシアネート基が挙げられる。これらのうち、グリシジル基およびカルボキシ基を好適に用いることができる。すなわち、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂としては、グリシジル基含有アクリル系ポリマーやカルボキシ基含有アクリル系ポリマーを好適に用いることができる。また、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂における熱硬化性官能基の種類に応じて、それと反応を生じうる硬化剤が選択される。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂の熱硬化性官能基がグリシジル基である場合、硬化剤としては、エポキシ樹脂用硬化剤として上記したのと同様のフェノール樹脂を用いることができる。
【0076】
部分封止剤層20を形成するための組成物は、好ましくは熱硬化触媒を含有する。部分封止剤層形成用組成物への熱硬化触媒の配合は、部分封止剤層20の硬化にあたって樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めるうえで、好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、アミン系化合物、およびトリハロゲンボラン系化合物が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。トリフェニルフォスフィン系化合物としては、例えば、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリ(p-メチルフェニル)フォスフィン、トリ(ノニルフェニル)フォスフィン、ジフェニルトリルフォスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウム、およびベンジルトリフェニルホスホニウムクロライドが挙げられる。トリフェニルフォスフィン系化合物には、トリフェニルフォスフィン構造とトリフェニルボラン構造とを併有する化合物も含まれるものとする。そのような化合物としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、およびトリフェニルホスフィントリフェニルボランが挙げられる。アミン系化合物としては、例えば、モノエタノールアミントリフルオロボレートおよびジシアンジアミドが挙げられる。トリハロゲンボラン系化合物としては、例えばトリクロロボランが挙げられる。部分封止剤層形成用組成物は、一種類の熱硬化触媒を含有してもよいし、二種類以上の熱硬化触媒を含有してもよい。
【0077】
部分封止剤層20は、フィラーを含有してもよい。部分封止剤層20へのフィラーの配合は、部分封止剤層20の弾性率や、降伏点強度、破断伸度などの物性を調整するうえで好ましい。フィラーとしては、無機フィラーおよび有機フィラーが挙げられる。無機フィラーの構成材料としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、および非晶質シリカが挙げられる。無機フィラーの構成材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の単体金属や、合金、アモルファスカーボン、グラファイトなども挙げられる。有機フィラーの構成材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、およびポリエステルイミドが挙げられる。部分封止剤層20は、一種類のフィラーを含有してもよいし、二種類以上のフィラーを含有してもよい。当該フィラーは、球状、針状、フレーク状など各種形状を有していてもよい。部分封止剤層20がフィラーを含有する場合の当該フィラーの平均粒径は、好ましくは0.002~10μm、より好ましくは0.05~1μmである。当該フィラーの平均粒径が10μm以下であるという構成は、部分封止剤層20において充分なフィラー添加効果を得るとともに耐熱性を確保するうえで好適である。フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(商品名「LA-910」,株式会社堀場製作所製)を使用して求めることができる。また、部分封止剤層20がフィラーを含有する場合の当該フィラーの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。同含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは47質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0078】
部分封止剤層20は、本実施形態では着色剤を含有する。着色剤は、顔料であってもよいし、染料であってもよい。着色剤としては、例えば、黒系着色剤、シアン系着色剤、マゼンダ系着色剤、およびイエロー系着色剤が挙げられる。黒系着色剤としては、例えば、酸化銅、二酸化マンガン、アゾメチンアゾブラックなどアゾ系顔料、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色染料、およびアゾ系有機黒色染料が挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ソルベントブラック3、同7、同22、同27、同29、同34、同43、および同70も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、および同71も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同48、同52、同107、同109、同110、同119、および同154も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ディスパーズブラック1、同3、同10、および同24も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ピグメントブラック1および同7も挙げられる。部分封止剤層20は、一種類の着色剤を含有してもよいし、二種類以上の着色剤を含有してもよい。また、部分封止剤層20における着色剤の含有量は、例えば0.5重量%以上であり、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。同含有量は、例えば10重量%以下であり、好ましくは8重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0079】
部分封止剤層20は、必要に応じて、一種類の又は二種類以上の他の成分を含有してもよい。当該他の成分としては、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、および臭素化エポキシ樹脂が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-300」)、特定構造のリン酸ジルコニウム(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-100」)、ケイ酸マグネシウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード600」)、およびケイ酸アルミニウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード700」)が挙げられる。金属イオンとの間で錯体を形成し得る化合物もイオントラップ剤として使用することができる。そのような化合物としては、例えば、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、およびビピリジル系化合物が挙げられる。これらのうち、金属イオンとの間で形成される錯体の安定性の観点からはトリアゾール系化合物が好ましい。そのようなトリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-{N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル}ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-t-オクチル-6'-t-ブチル-4'-メチル-2,2'-メチレンビスフェノール、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-(1,2-ジカルボキシジエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2-エチルヘキシルアミノメチル)ベンゾトリアゾール、2,4-ジ-t-ペンチル-6-{(H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル}フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-ブチルフェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、およびメチル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートが挙げられる。また、キノール化合物や、ヒドロキシアントラキノン化合物、ポリフェノール化合物などの所定の水酸基含有化合物も、イオントラップ剤として使用することができる。そのような水酸基含有化合物としては、具体的には、1,2-ベンゼンジオール、アリザリン、アントラルフィン、タンニン、没食子酸、没食子酸メチル、およびピロガロールが挙げられる。
【0080】
以上のような半導体プロセスシートXにおいて、両面粘着シート10の粘着面10bと部分封止剤層20との間の、23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件での剥離試験における剥離粘着力(第1粘着力)に対する、両面粘着シート10の粘着面10aが23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件での剥離試験においてステンレス平面に対して示す剥離粘着力(第2粘着力)の比の値は、好ましくは0.003~3、より好ましくは0.004~2.5である。
【0081】
上記の第1粘着力については、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」,株式会社島津製作所製)を使用して測定することができる。その測定に供される試験片の作製手法および測定手法は、具体的には次のとおりである。まず、半導体プロセスシートXにおける部分封止剤層20側の表面に片面粘着テープ(商品名「BT-315」,日東電工株式会社製)を貼り合わせる。この貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行う。次に、この貼り合わせ体から、半導体プロセスシートX(両面粘着シート10,部分封止剤層20)と片面粘着テープとの積層構造を有する、幅20mm×長さ100mmのサイズの試験片を、切り出す。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」,株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件で当該試験片について剥離試験を行い、半導体プロセスシートXにおける両面粘着シート10の粘着面10bとその上の部分封止剤層20との間の剥離粘着力(第1粘着力)を測定する。
【0082】
上記の第2粘着力については、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」,株式会社島津製作所製)を使用して測定することができる。その測定に供される試験片の作製手法および測定手法は、具体的には次のとおりである。まず、部分封止剤層20を伴わない両面粘着シート10から幅20mm×長さ100mmのサイズの試験片を切り出す。次に、この試験片をその粘着面10aにてステンレス板に貼り合わせる。この貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行う。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」,株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件で当該試験片について剥離試験を行い、半導体プロセスシートXにおける両面粘着シート10の粘着面10aのステンレス板に対する剥離粘着力(第2粘着力)を測定する。
【0083】
以上のような構成を有する半導体プロセスシートXは、両面粘着シート10の粘着面10b上にて部分封止剤層20を形成することによって作製してもよいし、セパレータ上にて形成された部分封止剤層20を別途作製された両面粘着シート10の粘着面10b側に貼り合わせることによって作製してもよい。両面粘着シート10は、基材11上にて粘着剤層12,13を形成することによって作製してもよいし、セパレータ上にて形成された粘着剤層12および別のセパレータ上にて形成された粘着剤層13を基材11に対して貼り合わせることによって作製してもよい。各層は、例えば、層ごとに調製された所定の組成物の塗布および乾燥を経て形成することができる。
【0084】
図2から図7は、本発明の一の実施形態に係る半導体パッケージ製造方法を表す。本製造方法は、半導体プロセスシートXを使用して半導体パッケージを製造するための方法であって、本実施形態では以下のチップマウント工程、封止工程、デタッチ工程、配線形成工程、薄化工程、および個片化工程を含む。
【0085】
まず、チップマウント工程では、図2(a)および図2(b)に示すように、粘着面10a側が支持体Sに貼り合わせられている半導体プロセスシートXにおける部分封止剤層20に対して複数の半導体チップCがマウントされる。支持体Sは、例えば、金属製、ガラス製、または透明樹脂製である。半導体チップCは、チップ本体とこれから延出するチップ電極Eとを有する。本実施形態では、半導体チップCの有するチップ電極Eを部分封止剤層20に向けてのフェイスダウンでのマウントが行われる。好ましくは、半導体チップCのチップ電極Eが半導体プロセスシートXにおける部分封止剤層20に突入し且つ両面粘着シート10の粘着面10bに至るように、各半導体チップCは部分封止剤層20に対してマウントされる。
【0086】
次に、封止工程では、図3(a)に示すように、半導体プロセスシートX上において複数の半導体チップCを包埋するように封止剤30'が供給され、その後、図3(b)に示すように、封止剤30'および部分封止剤層20が硬化されて封止材部30が形成される。これにより、半導体チップCを包埋して伴う封止材部30としてのパッケージP(チップ包埋封止材部)が得られる。封止剤30'は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂など硬化剤、無機フィラー、硬化促進剤、および黒系着色剤を含む組成物であり、本封止工程において、液状組成物、パウダー、およびシートのいずれの形態で供給されてもよい。このような封止剤30'の構成材料としては、例えば、半導体プロセスシートXの部分封止剤層20の構成材料として上述したのと同様のものを用いることができる。本工程において、封止材部30を形成するための加熱温度は例えば150~185℃であり、加熱時間は例えば60秒~数時間である。
【0087】
本製造方法においては、図2を参照して上述したチップマウント工程の後、半導体プロセスシートX上への封止剤30'の供給より前に、図4(a)に示すように、部分封止剤層20を硬化させてもよい(硬化工程)。この場合、封止工程では、まず、図4(b)に示すように、半導体プロセスシートX上において複数の半導体チップCを包埋するように封止剤30'が供給され、この後、封止剤30'が硬化済み部分封止剤層20上で硬化されて、図3(b)に示すように封止材部30が形成される。このような構成によると、半導体プロセスシートXよる半導体チップCの保持力が部分封止剤層20の硬化によって強化された状態で、封止工程が行われる。したがって、当該構成は、封止工程において、封止剤30'の硬化時の収縮に起因する半導体チップCの位置ずれを抑制するのに適する。このような半導体チップ位置ずれ抑制は、例えば、後の配線形成工程において半導体チップCごとの配線を含む配線構造部を精度よく形成するうえで好ましい。
【0088】
次に、デタッチ工程では、図5(a)に示すように、支持体SによるパッケージPの支持状態が解除される。本工程では、例えば、半導体プロセスシートXと支持体Sとの間が離され、その後、両面粘着シート10ないしその粘着面10bがパッケージP(チップ包埋封止材部)から離される。或いは、支持体S上の両面粘着シート10からパッケージPが離された後、支持体Sから両面粘着シート10が剥離される。
【0089】
半導体プロセスシートXにおける両面粘着シート10の粘着剤層12(粘着力低減型粘着剤層)が加熱発泡型粘着剤層である場合、粘着力低減措置としての加熱によって当該粘着剤層12ないし粘着面10aの粘着力を低下させて、支持体Sと両面粘着シート10との間を離すことができる。そのための加熱温度は例えば170~200℃である。
【0090】
半導体プロセスシートXにおける両面粘着シート10の粘着剤層12(粘着力低減型粘着剤層)が上述の第1タイプの放射線硬化性粘着剤層である場合、粘着力低減措置としての紫外線照射など放射線照射によって当該粘着剤層12ないし粘着面10aの粘着力を低下させて、支持体Sと両面粘着シート10との間を離すことができる。そのための放射線照射が紫外線照射である場合、その照射量は例えば50~500mJ/cm2である。
【0091】
フェイスダウンでの上述のチップマウント工程において、半導体チップCのチップ電極Eが半導体プロセスシートXの両面粘着シート10の粘着面10bに至らない場合には、デタッチ工程の後、封止材部30内の各半導体チップCのチップ電極Eを外部に露出させるための研削加工が封止材部30に対して行われる。
【0092】
次に、配線形成工程では、図5(b)に示すように、半導体チップCごとの配線を含む配線構造部40が封止材部30上ないしパッケージP上に形成される。半導体チップCごとの配線には、本製造方法によって半導体チップCごとに製造されることとなる各半導体パッケージにおけるバンプ電極等の外部電極41が含まれる。
【0093】
次に、薄化工程では、図6(a)に示すように配線構造部40側にバックグラインドテープYが貼り合わされた後、図6(b)に示すように、封止材部30に対して研削加工が施されてパッケージPが薄化される。バックグラインドテープYは、配線構造部40の外部電極41を包埋可能な厚さの粘着層Yaを有する。本工程では、例えば、半導体チップCのいわゆる裏面が露出するように封止材部30に対して研削加工が施される。
【0094】
次に、図7(a)に示すように、バックグラインドテープYに保持されたパッケージPに対し、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムZが貼り合わせられる。ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムZは、粘着層を有するダイシングテープ50とその粘着層上の半導体チップ裏面保護用の硬化性のフィルム60とを備え、パッケージPの研削加工面に対してダイシングテープ一体型裏面保護フィルムZのフィルム60側が貼り合わせられる。半導体チップ裏面保護用のフィルム60は、黒系着色剤など着色剤が配合された接着剤フィルムである。フィルム60用の着色剤としては、例えば、部分封止剤層20用の着色剤として上述したのと同様のものを用いることができる。また、フィルム60は、熱硬化タイプの接着剤フィルムであってもよいし、例えば70℃程度の温度条件下で被着体に貼り合わせられることによって当該被着体に対して十分な密着力を発現することが可能な硬化レスタイプの接着剤フィルムであってもよい。
【0095】
次に、バックグラインドテープYが除かれる。フィルム60が熱硬化タイプの接着剤フィルムである場合には、バックグラインドテープYの除去の後、図7(b)に示すようにフィルム60が加熱硬化される。
【0096】
次に、個片化工程では、図7(c)に示すように、例えばブレードダイシングによって封止材部30および配線構造部40が半導体チップCごとに分割される(図7(c)では分割箇所を模式的に太線で表す)。こうして個片化された各半導体パッケージは、この後、ダイシングテープ50からピックアップされる。
【0097】
以上のようにして、半導体プロセスシートXを使用して半導体パッケージを製造することができる。このような半導体パッケージ製造方法は、半導体パッケージを効率よく製造するのに適する。その理由は、以下のとおりである。
【0098】
部分封止剤層20を備えない両面粘着シートよりなる従来型の半導体プロセスシートを使用して半導体パッケージを製造する場合、そのチップマウント工程では、一方面側が支持体Sに貼り合わせられている両面粘着シートの他方面に対して複数の半導体チップCがマウントされる。このとき、半導体チップCのチップ電極Eとは反対の側を両面粘着シートに接合するフェイスアップでのマウントが行われる。次に、両面粘着シート上において、複数の半導体チップCを包埋する封止材部が形成される。次に、複数の半導体チップCを包埋して伴う封止材部(従来型のチップ包埋封止材部)から両面粘着シートが剥離される(デタッチ工程)。従来型のチップ包埋封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面には各半導体チップCのいわゆる裏面が露出している。次に、このような封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面に所定の樹脂シートが貼り合わせられる。封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面には上述のように各半導体チップCの裏面が露出しており、当該封止材部の厚さ方向における対称性は低いので、当該封止材部は不可避的に反ってしまう。このような反りが生じた状態では後続のプロセスを適切に進めることができない。そのため、両面粘着シートよりなる従来型の半導体プロセスシートが使用される半導体パッケージ製造方法では、デタッチ工程の後、封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面に所定の樹脂シートを貼り合わせて、従来型のチップ包埋封止材部についていわゆるワーページ(反り)コントロールを行う必要があるのである。
【0099】
これに対し、本発明に係る半導体パッケージ製造方法では、図5(a)を参照して上述したデタッチ工程を経たパッケージP(チップ包埋封止材部30)についてのワーページコントロールのための特別の工程は必須ではない。本製造方法では、両面粘着シート10上に部分封止剤層20を伴う半導体プロセスシートXが使用されるからである。具体的には、図2を参照して上述したチップマウント工程にて半導体プロセスシートXの部分封止剤層20に対して複数の半導体チップCがマウントされ、その後の封止工程では、複数の半導体チップCを包埋するように設けられた封止剤30'と部分封止剤層20または硬化済み部分封止剤層20とから封止材部30が形成され、このようにして形成されるチップ包埋封止材部30(パッケージP)は、上述の従来型のチップ包埋封止材部よりも厚さ方向における対称性が高く、反りを抑制するのに適するからである。チップ包埋封止材部30ないしパッケージPのワーページコントロールのための工程が必須ではない本製造方法は、半導体パッケージを効率よく製造するのに適する。
【0100】
以上のように、半導体プロセスシートXおよびこれが使用される半導体パッケージ製造方法は、半導体パッケージを効率よく製造するのに適するのである。
【0101】
本実施形態のチップマウント工程では、上述のように、好ましくは、半導体チップCのチップ電極Eが半導体プロセスシートXにおける部分封止剤層20に突入し且つ両面粘着シート10の粘着面10bに至るように、各半導体チップCは部分封止剤層20に対してマウントされる。この場合、後の配線形成工程では、封止材部30の表面に既に露出しているチップ電極Eと電気的に接続される配線を含む配線構造部40が形成される。これら構成によると、後述のようなフェイスアップでのチップマウント工程を経る場合に配線形成工程前に要する封止材部30研削工程を行うことなく、配線構造部40を適切に形成することができる。したがって、当該構成は、半導体パッケージを効率よく製造するうえで好ましい。
【0102】
本発明の半導体パッケージ製造方法におけるチップマウント工程では、フェイスダウンでのマウントの代わりに、半導体チップCがそのチップ本体におけるチップ電極Eとは反対の側で部分封止剤層20に接合されるように、部分封止剤層20に対する半導体チップCのマウントが行われてもよい。この場合、図5(a)を参照して上述したデタッチ工程の後に封止材部30を研削して半導体チップCのチップ電極Eを露出させる研削工程を本半導体パッケージ製造方法は更に含み、且つ、図5(b)を参照して上述した配線形成工程では、封止材部30の表面に露出しているチップ電極Eと電気的に接続される配線を含む配線構造部40が形成される。このような構成によると、配線構造部40を適切に形成することができる。
【符号の説明】
【0103】
X 半導体プロセスシート
10 両面粘着シート
10a,10b 粘着面
11 基材
12 粘着剤層(粘着力低減型粘着剤層)
13 粘着剤層
20 部分封止剤層
30’ 封止剤
30 封止材部
40 配線構造部
41 外部電極
C 半導体チップ
P パッケージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7