(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】蚊取線香
(51)【国際特許分類】
A01N 25/20 20060101AFI20220628BHJP
A01N 53/06 20060101ALI20220628BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20220628BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20220628BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A01N25/20 101
A01N53/06
A01P17/00
C11B9/00 V
C11B9/00 M
A01M1/20 V
(21)【出願番号】P 2017237120
(22)【出願日】2017-12-11
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】住田 一真
(72)【発明者】
【氏名】並木 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真也
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-148503(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110403(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
C11B
A01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)および(C)を含有し、
成分(A)の含有量が0.005重量%以上5重量%以下であり、
成分(B)の含有量が0.00025重量%以上5重量%以下であることを特徴とする
、30分以内の短時間燃焼型蚊取線香。
成分(A):Donovan法による25℃における蒸気圧が1×10
-5~1×10
-4mmHgの範囲のピレスロイド化合物
成分(B):2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル
、β-イオノン、アセチルセドレンおよびα-イソメチルイオノンから選択されるいずれか1種以上の香料成分
成分(C):線香基材
【請求項2】
下記成分(A)、(B)および(C)を含有し、
成分(A)の含有量が0.005重量%以上5重量%以下であり、
成分(B)の含有量が0.00025重量%以上5重量%以下であることを特徴とする、30分以内の短時間燃焼型蚊取線香(ただし、トランスフルトリン、ムスクケトン、バニリン、アリルヘプタノエートおよびシトロネロールを含有する蚊取線香を除く。)。
成分(A):Donovan法による25℃における蒸気圧が1×10
-5
~1×10
-4
mmHgの範囲のピレスロイド化合物
成分(B):3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-t-ブチルアセトフェノン
成分(C):線香基材
【請求項3】
全長が10mm以上50mm以下、厚みが2mm以上5mm以下および、重量が0.2g以上2g以下であり、さらに短時間燃焼型であることを特徴とする請求項1
または2に記載の
30分以内の短時間燃焼型蚊取線香。
【請求項4】
請求項1~3いずれかに記載の
30分以内の短時間燃焼型蚊取線香を屋内で使用して、少なくとも12時間、害虫防除効果と芳香が持続することを特徴とする、害虫防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蚊取線香に関し、詳しくは、特定のピレスロイド化合物と特定の香料成分を、それぞれ特定量含有する蚊取線香および、この蚊取線香を使用する害虫防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蚊取線香は、蚊、ハエ、ブユなどの飛翔害虫や吸血性害虫を防除する害虫防除剤として、古くから知られており、屋外での作業やキャンプ等においては、電気や電池の必要がなく手軽に優れた害虫防除効果が得られることから、広く使用されている。また、屋内の使用についても、蚊遣豚に代表される陶製の蚊遣器の使用や独特の香りや煙に風情を感じる使用者も多く、害虫防除効果が長時間得られ、その効果を実感できるため愛用されている。
蚊取線香は、燃焼により害虫防除成分を空間中に揮散させて害虫防除効果を得る仕組みのため、飛翔害虫や吸血性害虫が新たに侵入する屋内外の空間において害虫防除効果を長時間得るためには、連続して蚊取線香を燃焼する必要がある。しかしながら、近年の建物、特に都市部のオフィスビルやマンションは密閉性が高いため、建物の外から建物内に飛翔害虫や吸血性害虫が侵入する機会は減っている。このため、密閉性の高い空間においては、最初に飛翔害虫や吸血性害虫を駆除してしまえば、連続して蚊取線香を燃焼する必要はない場面もある。
このような密閉性の高い空間において、長時間にわたり飛翔害虫や吸血性害虫の害虫防除効果を得るために、空間における粒子径により害虫防除成分の気中残存率をコントロールする害虫駆除方法(特許文献1)や、壁などへの害虫防除成分付着効率を特定の噴霧粒子径により向上させる害虫防除用エアゾール剤(特許文献2)などが提案され、長時間にわたる害虫防除効果が得られている。一方で、使用者がその害虫防除効果を実感できる機会がないという欠点もあった。
【0003】
そこで本発明者は、6時間以上の連続燃焼を基本的な使用方法としてきた蚊取線香について、密閉性の高い空間での使用に適した新たな蚊取線香の開発に着手した。開発にあたり、密閉性の高い空間で使用する蚊取線香は、燃焼時に発生する煙や刺激臭の確実な抑制と、臭気のマスキング技術の向上が重要なポイントとなる。さらに、長時間にわたる害虫防除効果を使用者が実感できるように、害虫防除効果と同じく長時間にわたり芳香が得られることを、今回の開発における新たな課題とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-035569号公報
【文献】特開2015-027982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、密閉性の高い空間での使用に適した新たな蚊取線香の提供、特に、使用者が害虫防除効果を実感できるように、害虫防除効果と同じく長時間にわたり芳香が得られる蚊取線香の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の蒸気圧を有するピレスロイド化合物と特定の香料成分を、それぞれ特定量組み合わせることにより、密閉性の高い空間において短時間燃焼させるだけで、害虫防除効果を長時間持続することができ、かつ、害虫防除効果と同じく長時間にわたり芳香が得られる蚊取線香とし得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.下記成分(A)、(B)および(C)を含有し、
成分(A)の含有量が0.005重量%以上5重量%以下であり、
成分(B)の含有量が0.00025重量%以上5重量%以下であることを特徴する蚊取線香。
成分(A):Donovan法による25℃における蒸気圧が1×10-5~1×10-4mmHgの範囲のピレスロイド化合物
成分(B):2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-t-ブチルアセトフェノン、β-イオノン、アセチルセドレンおよびα-イソメチルイオノンから選択されるいずれか1種以上の香料成分
成分(C):線香基材
2.全長が10mm以上50mm以下、厚みが2mm以上5mm以下および、重量が0.2g以上2g以下であり、短時間燃焼型であることを特徴とする1.に記載の蚊取線香。
3.前記成分(A)が、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリンから選択される1種または2種以上のピレスロイド化合物であることを特徴とする、1.または2.に記載の蚊取線香。
4.1.~3.いずれかに記載の蚊取線香を屋内で使用して、少なくとも12時間、害虫防除効果と芳香が持続することを特徴とする、害虫防除方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蚊取線香は、成分(A)として、特定の蒸気圧を有するピレスロイド化合物を特定量含有していることにより、密閉性の高い空間において短時間燃焼させるだけで、害虫防除効果を長時間持続することができる。
本発明の蚊取線香は、成分(A)として特定の蒸気圧を有するピレスロイド化合物と、成分(B)として特定の香料成分を、それぞれ特定量組み合わせることにより、害虫防除効果と同じく長時間にわたり芳香が得られるため、使用者は、害虫防除効果を香りにより実感することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】殺虫活性持続性確認試験の試験方法における、試験実施室内の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の蚊取線香および、この蚊取線香を使用する害虫防除方法について詳細に説明する。
【0011】
本発明の蚊取線香は、成分(A)として特定の蒸気圧を有するピレスロイド化合物、成分(B)として特定の香料成分および成分(C)として線香基材を含有するものである。
<成分(A)について>
本発明における成分(A)は、論文:Journal of Chromatography A. Volume 749, Issues 1-2, 1996, Pages 123-129(New method for estimating vapor pressure by the use of gas chromatography)に記載された方法(以下、「Donovan法」という。)により求められる25℃の蒸気圧が1×10-5~1×10-4mmHgの範囲のピレスロイド化合物である。本発明における成分(A)に含まれるピレスロイド化合物は、例えば、メトフルトリン:2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メトキシメチルベンジル 3-(1-プロペニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(1.4×10-5mmHg)、プロフルトリン:2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メチルベンジル 3-(1-プロペニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(7.7×10-5mmHg)、トランスフルトリン:2,3,5,6-テトラフルオロベンジル 3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(2.6×10-5mmHg)、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メチルベンジル 3-(2-クロロ-2-フルオロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(4.9×10-5mmHg)、2-メチル-3-アリル-4-オキソ-2-シクロペンテン-1-イル 2,2,3,3-テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート(3.5×10-5mmHg)、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メチルベンジル 3-(2-メチル-1-プロペニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(3.1×10-5mmHg)、5-プロパルギル-2-フルフリル 3-(2-メチル-1-プロペニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(2.5×10-5mmHg)、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メトキシベンジル 3-メトキシイミノメチル-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(1.5×10-5mmHg)等を例示することができる。これらのピレスロイド化合物の中でも、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリンから選ばれる少なくとも1種以上が、本発明の成分(A)として好ましい。
【0012】
本発明の蚊取線香において、成分(A)を蚊取線香全量に対して、0.005重量%以上5重量%以下の範囲で含有することが、密閉性の高い空間において短時間燃焼させるだけで、害虫防除効果が長時間持続するためには重要である。中でも、成分(A)は蚊取線香全量に対して、0.01重量%以上2重量%以下の範囲が好ましく、特に、0.05重量%以上1重量%以下の範囲がより好ましい。
【0013】
<成分(B)について>
本発明における成分(B)は、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-t-ブチルアセトフェノン、β-イオノン、アセチルセドレンおよびα-イソメチルイオノンから選択されるいずれか1種以上の香料成分である。
2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリルは、グレープフルーツ、ゲラニウム、ローズフローラル様香気を有する。
3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-t-ブチルアセトフェノンは、ニトロムスクと呼ばれる初期の合成ムスクのムスクケトンである。天然ムスクによく似た香りを有する香料成分である。
β-イオノンは、化学名「4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)-3-ブテン-1-オン」の香料成分であり、ウッディー香の液体である。フローラル系調合香料に使用される香料成分である。
アセチルセドレンは、化学名「1-[(2,3,4,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,6,8,8,-テトラメチル-1H-3a,7-メタノアズレン)-5-イル]エタノンの香料成分であり、ムスク、アンバー、ウッディー様の香気の淡黄色液体である。ウッディー系調合香料などに大量に使用される香料成分である。また、セダーウッドオイル等から単離したセドレンをアセチル化することにより得ることができる。
α-イソメチルイオノンは、メチルイオノンの6種類存在する異性体の1つであり、優雅なスミレ香の液体である。
本発明の蚊取線香は、本発明の効果を損なわない範囲において、成分(B)以外の公知の香料成分を適宜配合することができる。
【0014】
本発明の蚊取線香は、成分(B)として、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリルおよび3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-t-ブチルアセトフェノンを含有すると良い。2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリルおよび3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-t-ブチルアセトフェノン以外に、公知の香料成分を適宜配合できるが、中でも、ジヒドロジャスモン酸メチル、リラール(4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセニルカルボアルデヒド)、リリアール(2-メチル-3-(4-t-ブチルフェニル)プロパナール)から選択される1種または2種以上の香料成分を配合すると良い。また、本発明の蚊取線香は、成分(B)として、β-イオノン、アセチルセドレンおよびα-イソメチルイオノンを含有すると良い。β-イオノン、アセチルセドレンおよびα-イソメチルイオノン以外に、公知の香料成分を適宜配合できるが、中でも、エチルバニリンを配合すると良い。
本発明の蚊取線香において、成分(B)を蚊取線香全量に対して、0.00025重量%以上5重量%以下の範囲で含有することが、密閉性の高い空間において短時間燃焼させるだけで、害虫防除効果と同じく長時間にわたり芳香が得られ、使用者が害虫防除効果を香りにより実感することが可能となるために重要である。中でも、成分(B)は蚊取線香全量に対して、0.0003重量%以上2重量%以下の範囲が好ましく、特に、0.0005重量%以上1重量%以下の範囲がより好ましく、さらに0.001重量%以上0.4重量%以下の範囲がより好ましい。
【0015】
<成分(C)について>
本発明における成分(C)は、線香基材である。本発明の蚊取線香における線香基材は、燃焼基材(支燃材)、粘結剤および増量剤に大別できる。
燃焼基材(支燃剤)としては、例えば、ビャクシン粉末、ビャクダン粉末、クスノキ粉末、モミノキ粉末、スギ粉末、ヒノキ粉末、ツガ粉末、マツ粉末、ヤナギ粉末、ウバメガシ粉末、カシ粉末、クヌギ粉末、ナラ粉末、イタヤカエデ粉末、ナラハリギリ粉末、ホオノキ粉末、シナノキ粉末、トウヒ粉末、イエローポプラ粉末、カツラ粉末、アカシア粉末、ヤマナラシ粉末、オオバボダイジュ粉末、オオバヤナギ粉末、サワグルミ粉末、ネズコ粉末、キリ粉末、シオジ粉末、バルサ粉末、ゴム粉末、ラワン粉末、シラカバ粉末、ミツマタ粉末、オガ粉末、タケ粉末、柑橘類粉末(オレンジ、ミカンの皮)、ヤシ科植物粉末(ココナッツ粉等)、キク科植物粉末、アカネ科植物粉末、スイカズラ科植物粉末、センダン科植物粉末、ジンチョウゲ科植物粉末、シソ科植物粉末、フトモモ科植物粉末、セリ科植物粉末、イネ科植物粉末、クワ科植物粉末、モクセイ科植物粉末、除虫菊抽出粉末(カス粉)等の植物乾燥粉末等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。中でも、原木の粉末である木粉やココヤシ果実の乾燥粉末であるココナッツ粉は、燃焼性、成形性の観点から燃焼基材(支燃材)として好適である。
燃焼基材(支燃材)の粒径は約40~350μmとするのが、製造時の舞い上がりがなく、線香の強度を確保できるため好ましい。また、燃焼基材(支燃剤)は、蚊取線香の組成中に20~60重量%の割合で混合することが好ましい。この配合割合で燃焼基材(支燃剤)を混合することにより、立ち消えが起こりにくく、成形しやすくなる効果を奏する。
粘結剤は、糊粉ともいわれ、燃焼基材(支燃剤)を結合する糊の役目のものであり、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類、タブノキ皮抽出粉やタブ粉、デンプン、スターチ等のデンプン類、アラビアゴム等の天然系高分子化合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子化合物等が挙げられる。中でも、クスノキ科タブノキ属の常緑高木の葉や樹皮の乾燥粉末であるタブ粉が好適である。
増量剤としては、例えば、炭酸カルシウム、珪藻土、ガラス粉末、カオリン、クレー、タルク等が挙げられる。
本発明の蚊取線香は、増量剤として配合される無機粉体を、蚊取線香全量に対して、30重量%以上70重量%以下の範囲で含有することが好ましく、中でも、40重量%以上60重量%以下の範囲で含有することがより好ましい。無機粉体の配合量を上記範囲内とすることにより、本発明の蚊取線香は、煙量を少なくすることができ、さらに、燃焼後の灰が固くなるため周囲に飛び散ることもなく好適である。
【0016】
本発明における成分(C)線香基材は、その他の成分として、乳化剤、防腐剤、殺虫・忌避剤、消臭剤、揮散率向上剤、着色剤等を配合することもできる。
乳化剤としては、例えば、モノステアリン酸ソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等の界面活性剤が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、PCMX、IPBC、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、またこれらの塩等が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、メタクリル酸ラウリル、ゲラニルクロトネート、カテキン、ポリフェノール、茶葉等が挙げられる。
揮散率向上剤としては、例えば、フェネチルイソチオシアネート、ハイミックス酸ジメチル、硝酸カリウム、二酸化マンガン等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、赤色106号、赤色102号、青色1号、青色2号、黄色5号、黄色4号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、橙色207号、黒色401号等の法定色素やマラカイトグリーンが挙げられる。
【0017】
本発明の蚊取線香は、従来公知の方法により製造することができるが、少なくとも、成分(A)、成分(B)および成分(C)を、水もしくは温水と混練する工程を有し、その後は、例えば、押出成形機、打抜機によって成形した後、乾燥して製造すればよい。
従来の蚊取線香は、燃焼時間が少なくとも6時間以上のものであるが、本発明の蚊取線香は、長くても30分以内に燃焼が終了することを1つの態様とするものであり、その燃焼時間は10分以上30分以下である。本発明の短時間燃焼とは、30分以内に燃焼が終了することを意味する。
短時間燃焼型の蚊取線香は、従来の蚊取線香と形状においても大きく異なる。従来の蚊取線香は、渦巻状の全長が700mm以上、厚みが5mm以上、重さが10g以上であるのに対し、本発明の1つの態様である短時間燃焼型の蚊取線香は、全長が10mm以上50mm以下の範囲、厚みが2mm以上5mm以下の範囲、重さが0.2g以上2g以下の範囲のものである。中でも、本発明の蚊取線香は、全長が20mm以上50mm以下の範囲、厚みが2.5mm以上4.5mm以下の範囲、重量が1g以上1.8g以下の範囲のものが好ましい。
線香の形状としては、棒状、渦巻き状、コーン状、プレート状(板状)等、使用目的に応じて適宜選択可能であるが、中でも、プレート状(板状)のものが好ましい。
【0018】
本発明の害虫防除方法は、本発明の蚊取線香を使用して、少なくとも12時間、害虫防除効果と芳香が持続することを特徴とするものであり、密閉性の高い空間での使用に適した方法である。本発明における害虫は特に限定されず、例えば、アカイエカ、ネッタイイエカ、チカイエカ、コガタアカイエカ等のイエカ類、トラフカクイカ等のカクイカ類、ヒトスジシマカ、ネッタイシマカ、トウゴウヤブカ、キンイロヤブカ、セスジヤブカ、オオクロヤブカ等のヤブカ類、アシマダラヌマカ等のヌマカ類、キンパラナガハシカ等のナガハシカ類、シナハマダラカ、コガタハマダラカ等のハマダラカ類、アシマダラブユ、キアシオオブユ等のブユ類、ウシアブ、イヨシロオビアブ等のアブ類、サシチョウバエ類、ヌカカ類、ツェツェバエ類等の吸血性や刺咬性害虫、セスジユスリカ、オオユスリカ、アカムシユスリカ、シマユスリカ、オオヤマチビユスリカ等のユスリカ類、ハチ類等が挙げられる。特に吸血性や刺咬性害虫が好適である。
【実施例】
【0019】
以下、製剤例および試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
【0020】
<殺虫活性持続性確認試験>
本発明の蚊取線香が、成分(A)、(B)および(C)を併用し、成分(A)、および(B)を特定量含有することにより、密閉性の高い空間において短時間燃焼させるだけで、害虫防除効果を長時間持続することができることを、アカイエカを使用した試験により示す。
(1)成分(B)香料成分
2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリルおよび3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-t-ブチルアセトフェノンを、香料全量に対してそれぞれ5重量%および2重量%を使用した。
(2)試験検体
木粉、ココナッツ粉およびタブ粉をよく混合したものを、成分(C)線香基材の燃焼基材(支燃材)として使用した。
次に成分(A)としてメトフルトリン0.4重量部、成分(B)として上記香料成分を含有する香料0.1重量部および成分(C)線香基材として、増量剤である炭酸カルシウム50重量部と上記燃焼基材(支燃材)を使用して全体量を100重量部とし、これに適量の温水を添加して均一になるまで練合した。練合物を押出成形機(エクストルーダー)を用いてシート状(帯状)に成形した後、打抜機によって板状に打ち抜いた。その後、一端の角度が36度、高さが40mmの二等辺三角形状に成形したものを、65℃の微風下において10時間乾燥して、1個あたり、重さ1.5g、厚み3mmの短時間燃焼型の蚊取線香を得た。これを試験検体として使用した。
【0021】
(3)試験方法
無換気8畳試験室(3.6m×3.6m×高さ2.4m≒31.1m
3)に、
図1に示すように、供試虫(アカイエカ)20頭を入れたポリエステル製ケージ(14メッシュ、23cm×23cmのPET製の網を二つ折りにして袋状としたもの)を試験室の床から0.75m、1.5mの高さに、各2個対角方向に合計4個を設置した。
設置は、供試虫のノックダウン数を観察するタイミングである、試験開始直後、6時間後、12時間後のそれぞれに行った。
試験開始は、一端に点火した試験検体を線香皿に立て、試験室の中央に設置した時点とした。試験検体の燃焼時間は15分であった。
試験開始直後、6時間後、12時間後のそれぞれにおいて、設置した4個のポリエステル製ケージ中の供試虫のノックダウン数を10分毎に計測した。
経時的な供試虫のノックダウン数(行動停止した頭数)からノックダウン率を算出し、時間経過にともなうノックダウン率からプロビット法によりKT
50値(供試虫の50%がノックダウンする時間:分)およびKT
90値(供試虫の90%がノックダウンする時間:分)を算出した。
また、設置した4個のポリエステル製ケージは、試験室内にそれぞれ、試験開始直後~2時間後、6~8時間後、12~14時間後の2時間放置した後、供試虫をプラスチック容器に移し、25℃の別室に移して砂糖水を与え、さらに24時間後の死虫数を計測し、24時間後の致死率(%)を算出した。
試験検体につき2回の試験を行い、KT
50値(分)、KT
90値(分)、24時間後の致死率(%)の平均値を表1に示す。
【0022】
【0023】
表1の結果より、本発明の蚊取線香は、試験開始(燃焼開始)から12~14時間経過後、すなわち半日が経過した状態であっても、KT50値が19.8分、KT90値が44.7分であり、燃焼時間が短時間であっても、密閉性の高い空間での使用において害虫防除効果が長時間持続することが確認された。
さらに、表1中の「24時間後の致死率」に示すように、ほぼ100%の致死率であることから、ノックダウン(行動停止した)供試虫もその後致死したことを確認することができ、本発明の蚊取線香は、密閉性の高い空間での使用において、高い殺虫効果を発揮することが明らかとなった。
【0024】
<芳香持続性確認試験>
本発明の蚊取線香が、成分(A)、(B)および(C)を併用し、成分(B)として特定の香料成分を含有することにより、密閉性の高い空間での使用において、害虫防除効果と同じく長時間にわたり芳香が得られることを、試験により示す。
(1)成分(B)香料成分
本発明の成分(B)として、以下の香料成分(b1)、(b2)、(b3)を使用した。
(b1):香料全量に対して、5重量%の2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリルおよび2重量%の3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-t-ブチルアセトフェノン
(b2):香料全量に対して、8重量%のβ-イオノン、5重量%のアセチルセドレンおよび5重量%のα-イソメチルイオノン
(b3):香料全量に対して、5重量%のα-イソメチルイオノン
(2)試験検体
木粉、ココナッツ粉およびタブ粉を乳鉢に入れて用いてよく混合したものを、成分(C)線香基材の燃焼基材(支燃材)として使用した。
次に成分(A)としてメトフルトリン0.4重量部、成分(B)として上記(b1)~(b3)いずれかの香料成分を含有する香料0.1重量部および成分(C)線香基材として、増量剤である炭酸カルシウム50重量部と上記の燃焼基材(支燃材)を使用して全体量を100重量部とし、これに適量の温水を添加して均一になるまで練合した。練合物を押出成形機(エクストルーダー)を用いてシート状(帯状)に成形した後、打抜機によって板状に打ち抜いた。その後、一端の角度が36度、高さが40mmの二等辺三角形状に成形したものを、65℃の微風下において10時間乾燥して、1個あたり、重さ1.5g、厚み3mmの短時間燃焼型の蚊取線香を得た。これを実施例1~3の試験検体として使用した。また、成分(B)を含有しない香料を使用すること以外は実施例と同じ試験検体を比較例として、使用した。試験に供した実施例1~3と比較例1~3の詳細は以下のとおりである。
実施例1:香料として上記香料成分(b1)を含有する試験検体
比較例1:香料として上記香料成分(b1)を含有しないこと以外は実施例1と同じ試験検体
実施例2:香料として上記香料成分(b2)を含有する試験検体
比較例2:香料として上記香料成分(b2)を含有しないこと以外は実施例2と同じ試験検体
実施例3:香料として上記香料成分(b3)を含有する試験検体
比較例3:香料として上記香料成分(b3)を含有しないこと以外は実施例3と同じ試験検体
(2)試験方法
一端に点火した試験検体(実施例1~3、比較例1~3)を線香皿に立て、無換気8畳試験室(3.6m×3.6m×高さ2.4m≒31.1m3)の床中央に設置し、無換気条件で12時間放置した。12時間後に、「煙臭さ」と「香り強度」について官能評価を実施した。
「煙臭さ」「香り強度」の2項目について、パネラー20名が下記5段階で点数評価し、各項目について平均点を算出し、下記[評価基準]に従い「煙臭マスキング評価」と「芳香評価」として表2に結果を示す。
「煙臭さ」
1点:煙臭い
2点:やや煙臭い
3点:普通
4点:あまり煙臭くない
5点:煙臭くない
「香り強度」
1点:香りが弱い
2点:香りがやや弱い
3点:普通
4点:香りが少し強い
5点:香りが強い
[評価基準]
A:評価平均点が3点以上
B:評価平均点が2以上3未満
C:評価平均点が1以上2未満
【0025】
【0026】
表2の結果より、本発明の蚊取線香(実施例1~3)は、「煙臭マスキング評価」「芳香評価」ともに、「3.0」以上のA評価であり、密閉性の高い空間での使用において、害虫防除効果と同じく12時間後も煙臭マスキング効果と芳香に優れることが確認された。一方、本発明の成分(B)を含有しない蚊取線香(比較例1~3)は、「煙臭マスキング評価」「芳香評価」ともに、「3.0」より低いBまたはC評価であり、煙臭マスキング効果と芳香に劣ることが確認された。
本発明の成分(B)は、蚊取線香の煙臭を長時間にわたりマスキングしながら、芳香を維持するという優れた効果を発揮する成分であることが、明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、成分(A)として特定の蒸気圧を有するピレスロイド化合物と、成分(B)として特定の香料成分を、それぞれ特定量組み合わせることにより、害虫防除効果と同じく長時間にわたり芳香が得られるため、使用者は、害虫防除効果を香りにより実感することが可能な蚊取線香とし得るため、有用である。さらに、芳香を害虫防除効果と連動させることで、香りの有無によって害虫防除効果の持続を使用者が認識できるようになると推測する。