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特許7095988異常監視システム、異常監視方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】異常監視システム、異常監視方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20220628BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20220628BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017250063
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019117464
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-06-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504103825
【氏名又は名称】株式会社KIS
(73)【特許権者】
【識別番号】514246336
【氏名又は名称】株式会社フュージョンテク
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】稲田 雅嘉
(72)【発明者】
【氏名】亜原理 有
(72)【発明者】
【氏名】松井 孝嘉
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】久保田 信也
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-19497(JP,A)
【文献】特開平10-251942(JP,A)
【文献】特開2006-65598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の子階層KPIにより、一以上の親階層KPIが構成されるデータを出力するシステムの異常監視を行う異常監視システムにおいて、
子階層KPIと親階層KPIの関係性が登録されたKPI関連図を記憶するKPI関連図データベースと、
前記子階層KPI及び前記親階層KPIに対応するデータを取得するKPIデータ取得手段と、
前記KPIデータ取得手段が取得した前記データに異常があった場合に、前記KPI関連図に基づいて、前記親階層KPI及びそれに関連した子階層KPIのKPIデータを出力する関連出力手段と、
前記KPIデータ取得手段が取得した前記データに異常があった場合に、前記KPI関連図に基づいて、前記異常に関するアラームが妥当であるか否かを判定するアラーム判定手段と、
前記KPIデータ取得手段が取得した前記データに異常があった場合に、前記異常があった前記親階層KPIの異常を解消する前記子階層KPIを判断し、判断した前記子階層KPIに関連する装置のパラメータを調整する指示を行い、当該子階層KPIに関するフィードバックを実行するフィードバック実行手段と、を備え、
前記異常に関するアラームが妥当ではないと判定した場合は、前記親階層KPIおよび前記子階層KPIのアラーム異常のアラームのみ出力する異常監視システム。
【請求項2】
前記KPI関連図は、子階層KPIと親階層KPIの前記関係性が、予め入力されることにより関係性が登録されている請求項1に記載の異常監視システム。
【請求項3】
子階層KPIと親階層KPIの前記関係性を、互いの相関性に基づいて登録する相関性登録手段と、を備え、
前記KPI関連図は、前記相関性登録手段により子階層KPIと親階層KPIの関係性が登録される請求項1に記載の異常監視システム。
【請求項4】
前記相関性登録手段は、前記親階層KPI、前記子階層KPIの区別なく、所定のKPIを所定の項目に分けて、その項目毎に総当り的に相関分析を行い、その相関分析の結果から親階層KPI、子階層KPIの関係性を登録する請求項3に記載の異常監視システム。
【請求項5】
前記関連出力手段は、異常があった場合に、当該異常に対応した親階層KPI及び子階層KPIに関するアラームを出力する請求項1に記載の異常監視システム。
【請求項6】
複数の子階層KPIにより、一以上の親階層KPIが構成されるデータを出力するシステムの異常監視を行う異常監視システムが実行する異常監視方法であって、
子階層KPIと親階層KPIの関係性が登録されたKPI関連図を記憶するステップと、
前記子階層KPI及び前記親階層KPIに対応するデータを取得するステップと、
前記データを取得するステップで取得した前記データに異常があった場合に、前記KPI関連図に基づいて、前記親階層KPI及びそれに関連した子階層KPIのKPIデータを出力するステップと、
前記データを取得するステップで取得した前記データに異常があった場合に、前記KPI関連図に基づいて、前記異常に関するアラームが妥当であるか否かを判定するステップと、
前記データを取得するステップで取得した前記データに異常があった場合に、前記異常があった前記親階層KPIの異常を解消する前記子階層KPIを判断し、判断した前記子階層KPIに関連する装置のパラメータを調整する指示を行い、当該子階層KPIに関するフィードバックを実行するステップと、を備え、
前記異常に関するアラームが妥当ではないと判定した場合は、前記親階層KPIおよび前記子階層KPIのアラーム異常のアラームのみ出力する異常監視方法。
【請求項7】
複数の子階層KPIにより、一以上の親階層KPIが構成されるデータを出力するシステムの異常監視を行う異常監視システムに、
子階層KPIと親階層KPIの関係性が登録されたKPI関連図を記憶するステップ、
前記子階層KPI及び前記親階層KPIに対応するデータを取得するステップ、
前記データを取得するステップで取得した前記データに異常があった場合に、前記KPI関連図に基づいて、前記親階層KPI及びそれに関連した子階層KPIのKPIデータを出力するステップ
前記データを取得するステップで取得した前記データに異常があった場合に、前記KPI関連図に基づいて、前記異常に関するアラームが妥当であるか否かを判定するステップ
前記データを取得するステップで取得した前記データに異常があった場合に、前記異常があった前記親階層KPIの異常を解消する前記子階層KPIを判断し、判断した前記子階層KPIに関連する装置のパラメータを調整する指示を行い、当該子階層KPIに関するフィードバックを実行するステップ、を実行させ、
前記異常に関するアラームが妥当ではないと判定した場合は、前記親階層KPIおよび前記子階層KPIのアラーム異常のアラームのみ出力するための異常監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常の監視対象となるシステムから生成される複数のデータ(数値)を取得して、このシステムの異常を監視する異常監視システム、異常監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、システムのIoT(Internet of Things)化に伴い、製造業のみならず、医療、農業、漁業、サービス業、等の様々な分野で、ビックデータが取得され、人工知能とともに、データの活用が行われている。例えば、製造業において各製造工程で取得したデータを機械学習とディープ・ラーニングを使って製造物の異常を検知する技術が知られている(非特許文献1)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】MONOist、“人工知能は製造現場でどう役に立つのか”、[online]、[平成29年11月12日検索]、インターネット<URL: http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1604/20/news060.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような異常監視は、製造工程において、局所的に得られた一つのデータを学習して予測するにすぎず、複数のデータを集めて総合的に異常監視するものではない。すなわち、非特許文献1は、一の製造工程において設置された一のセンサーの波形を学習して、波形の変形から異常を検知するといった検知方法にすぎない。
【0005】
ここで、製造業を例にすると、一般に、ものづくりは、複数の部門から構成され、これらの連携が必要とされる。すなわち、品質管理部門、製品技術部門、プロセス技術部門、生産計画部門、設備技術部門、製造管理部門等の各部門から各々異なるデータが取得できるが、非特許文献1の方法では、各部門内での局所的な異常しか検知できない。
【0006】
そこで、本発明者らは、異常を検知する対象となるシステムの各構成要素(部門)を超えた多数のデータの相関から、異常時に関連情報を出力する手法により、システム全体(又は部分)の異常を効率的にかつ適格に監視できるのではないかと着目した。
【0007】
本発明は、異常を監視する対象となるシステムの異常や故障で、出力数値が通常と違う際に、その数値を構成する様々な要素の関連性から、その異常に関連する情報を出力する又はアラームの妥当性を判定する異常監視システム、異常監視方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0009】
第1の特徴に係る発明は、複数の子階層KPIにより、一以上の親階層KPIが構成されるデータを出力するシステムの異常監視を行う異常監視システムにおいて、子階層KPIと親階層KPIの関係性が登録されたKPI関連図を記憶するKPI関連図データベースと、前記子階層KPI及び前記親階層KPIに対応するデータを取得するKPIデータ取得手段と、前記KPIデータ取得手段が取得した前記データに異常があった場合に、前記KPI関連図に基づいて、前記親階層KPI及びそれに関連した子階層KPIのKPIデータを出力する関連出力手段と、前記KPIデータ取得手段が取得した前記データに異常があった場合に、前記KPI関連図に基づいて、前記異常に関するアラームが妥当であるか否かを判定するアラーム判定手段と、前記KPIデータ取得手段が取得した前記データに異常があった場合に、前記異常があった前記親階層KPIの異常を解消する前記子階層KPIを判断し、判断した前記子階層KPIに関連する装置のパラメータを調整する指示を行い、当該子階層KPIに関するフィードバックを実行するフィードバック実行手段と、を備え、前記異常に関するアラームが妥当ではないと判定した場合は、前記親階層KPIおよび前記子階層KPIのアラーム異常のアラームのみ出力する異常監視システムを提供する。
【0010】
第1の特徴に係る発明によれば、複数の子階層KPIにより、一以上の親階層KPIが構成されるデータを出力するシステムの異常監視を行う異常監視システムにおいて、子階層KPIと親階層KPIの関係性が登録されたKPI関連図を記憶しておき、子階層KPI及び前記親階層KPIに対応するデータを取得して、取得したデータに異常があった場合に、KPI関連図に基づいて、前記親階層KPI及びそれに関連した子階層KPIのKPIデータを出力、KPI関連図に基づいて、異常に関するアラームが妥当であるか否かを判定し、取得した前記データに異常があった場合に、前記異常があった前記親階層KPIの異常を解消する前記子階層KPIを判断し、判断した前記子階層KPIに関連する装置のパラメータを調整する指示を行い、当該子階層KPIに関するフィードバックを実行し、前記異常に関するアラームが妥当ではないと判定した場合は、前記親階層KPIおよび前記子階層KPIのアラーム異常のアラームのみ出力する。
したがって、異常監視の対象から取得したデータが異常である場合に、KPIの関連性が登録されたKPI関連図データベースに基づいて異常に関連する情報を出力し、その異常に関するアラームの妥当性を判定するため、監視対象が、異常や故障で出力数値が通常と違う際に、その数値を構成する様々な要素の関連性からその異常を監視することが可能となる。
【0011】
ここで、第1の特徴に係る発明は、異常監視システムのカテゴリであるが、方法又はプログラム等の他のカテゴリにおいても、そのカテゴリに応じた同様の作用・効果を発揮する。
【0012】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、前記KPI関連図は、前記子階層KPIと親階層KPIの関係性が、予め入力されることにより登録されている異常監視システムを提供する。
【0013】
第2の特徴に係る発明によれば、第1の特徴に係る発明を前提として、KPI関連図において、前記子階層KPIと親階層KPIの関係性が、予め人によりマニュアル入力されて登録されている。
【0014】
第3の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、子階層KPIと親階層KPIの前記関係性を、互いの相関性に基づいて登録する相関性登録手段と、を備え、
前記KPI関連図は、前記相関性登録手段により子階層KPIと親階層KPIの関係性が登録される異常監視システムを提供する。
【0015】
第3の特徴に係る発明によれば、第1の特徴に係る発明であって、子階層KPIと親階層KPIの関係性を、互いの相関性に基づいて、人ではなく、異常監視システムの相関性登録手段がKPI関連図に登録する。
【0016】
第4の特徴に係る発明は、第3の特徴に係る発明であって、前記相関性登録手段は、前記親階層KPI、前記子階層KPIの区別なく、所定のKPIを所定の項目に分けて、その項目毎に総当り的に相関分析を行い、その相関分析の結果から親階層KPI、子階層KPIの関係性を登録する異常監視システムを提供する。
【0017】
第4の特徴に係る発明によれば、第3の特徴に係る発明を前提として、相関性登録手段がKPI関連図に登録する具体的な方法として、親階層KPI、子階層KPIの区別なく、所定のKPIを所定の項目に分けて、その項目毎に総当り的に相関分析を行い、その相関分析の結果から親階層KPI、子階層KPIの関係性を登録する。
【0018】
第5の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、前記関連出力手段は、異常があった場合に、当該異常に対応した親階層KPI及び子階層KPIに関するアラームを出力する異常監視システムを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、異常を監視する対象となるシステムの異常や故障で、出力数値が通常と違う際に、その数値を構成する様々な要素の関連性から、その異常に関連する情報を出力し、フィードバックすることができる。したがって、異常の監視において、監視の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、異常監視システムの進化を説明する図である。
図2図2は、KPI及びKPIの階層構造を説明する図である。
図3図3は、異常監視システム100、監視対象となるシステム10の機能ブロック図である。
図4図4は、異常監視システム100が実行する異常監視処理を示すフローチャートである。
図5図5は、KPI関連図を説明するための模式図である。
図6図6は、Auto-KPIを説明するための図である。
図7図7は、Auto-KPIを説明するための模式図である。
図8図8は、フィードバック処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0023】
[概要]
最初に、本発明について、図1に基づいて従来技術と比較して説明する。
【0024】
以下の実施形態では、本発明の異常監視システム100を半導体製造システムに適用して、監視する場合について説明を行う。しかし、本発明の適用範囲は、半導体製造や製造業に限定されることなく、異常を監視する対象からビックデータを取得可能であれば、どのようなシステムであっても適用可能である。例えば、農業、漁業、畜産業、金融業、サービス業、医療業、介護、情報通信、交通、流通、小売、観光、メディア、行政等のシステムであってもよいし、対象が、人間や動物、植物等の生物であって、病気等の異常を監視するために適用されてもよいし、機械、車両、ロボット、飛行機、ドローン、船舶、コンピュータ等の異常を監視するために適用されてもよい。
【0025】
図1は、通常のビックデータのシステムと本発明との相違を説明する模式図である。図のステップは、従来技術も含めた異常監視システムの発展の程度を示し、ステップ1は、通常のビックデータを収集するシステムを示し、ここからステップ6まで進化する。
【0026】
最初に、異常を監視する対象から複数のデータを収集する。これは、例えば、異常監視の対象の各構成要素が出力したデータ(時系列データ等)であってよく、対象が使用する各種データベースから取得したデータや、対象に備え付けられたIoT(Internet of Things)機器のセンサー等から取得したデータであってよい。まずは、監視対象となるシステムから複数のデータを収集し、データベースにデータを格納して、統計処理を行う。すなわち、収集したデータに対して、データとして有意にするために、ノイズを除去し、統計処理を行う。この統計処理後のデータが、KPI(key Performance Indicator)データとなる。
【0027】
KPIデータは、異常を監視する対象から取得された評価指標データであって、上述のようにビックデータとして取得されたデータから統計処理が行われたデータである。ステップ2の段階においては、この統計処理されたKPIデータをグラフ化して表示し、KPIデータの数値(親階層KPIデータ又は子階層KPIデータの数値)が、通常の閾値を超えた(又は閾値を満たさない)場合には、異常と判定し、アラームを出力する。これは、先の従来技術で説明した異常検知の方法であり、異常を検知する対象の一つの出力データの値から異常判定をする。仮に、この一の出力データから機械学習等を行っても、あくまで、一の出力データによる異常監視でしかないため、妥当性に欠ける場合もある。
【0028】
さらに進んだビックデータのシステムでは、ステップ3において、この判定した結果について、アラーム等の出力を行い、適宜、自動でレポートを作成し、担当者にレポートを含めたメールを送信する。
【0029】
本発明の好適な実施形態は、ステップ4以降の処理を備えるシステムである。すなわち、ステップ4以降では、ステップ1で生成されたKPIデータを取得し、KPI関連図データベース50に記憶されたKPI関連図に基づいて、異常に関連した情報(例えば、ステップ2で異常と判定されたKPIデータの子階層のKPIデータ等)を出力したり、異常と判定したステップ2のKPIアラームが妥当であるかを判定する。
【0030】
ステップ4では、KPIどうしの親子関係を利用して、KPI関連図をマニュアルで人が入力する。すなわち、あるKPIデータが親階層、子階層のいずれかになるかは予め人が決定しておきKPI関連図を生成する。一般的に、親階層のKPIデータは、人がその直接的に監視が必要なKPIデータ(例えば、生産数、歩留等)であって、子階層のKPIデータは、その親階層KPIデータを親ノードとして下位に木構造を形成する。
【0031】
図2を参照して、KPIの階層構造について、半導体製造システムの一例で説明する。ここで記載される「生産数」、「A工程」、「設備1」等は、半導体生産システムから取得された各項目のデータであって、KPIデータとなっているものである。例えば、図2の「生産数」の下に記載されたグラフ(生産数のKPIグラフ)は、横軸が時間で、縦軸が半導体の生産数となる。さらに、「A工程」の下に記載されたKPIのグラフ(A工程のKPIグラフ)は、横軸が時間で、縦軸がA工程の処理数となる。なお、KPIデータは2次元のデータに限定されることなく、1次元からn次元の任意の次元のデータであってよい。
【0032】
この半導体の生産は、一例として、A工程、B工程、C工程からなる。そのため、「生産数」のKPIデータは、A工程、B工程、C工程のそれぞれの生産数のKPIデータ(各工程の生産数)に対する親階層となり、A工程、B工程、C工程の生産数のKPIデータは、「生産数」のKPIデータの子階層となる。そして、このA工程は、設備1と設備2を使用するため、同様に、A工程の生産数のKPIデータは、設備1、設備2の生産数のKPIデータに対する親階層となり、設備1、設備2の生産数のKPIデータは、A工程の生産数のKPIデータに対する子階層となる。さらに、設備1は、部品1と部品2を使用して生産を行うため設備1の生産数のKPIデータは、部品1、部品2の使用数のKPIデータの親階層となり、部品1、部品2の使用数のKPIデータは、設備1の生産数のKPIデータに対する子階層となる。
【0033】
また、設備2は、部品3、部品4、その他の部品を使用するため、設備2の生産数のKPIデータは、部品3、部品4の使用数のKPIデータの親階層となる。さらに、B工程は、設備3やその他の設備を使用するため、B工程の生産数のKPIデータは、設備3とその他設備の生産数のKPIデータの親階層となる。このように、各KPIデータは、親階層、子階層の関係を形成して木構造となる。
【0034】
この木構造は、他のKGI(Key Goal Indicator)カテゴリにおいて、異なる木構造を形成する。すなわち、半導体の「歩留」は、KGIのカテゴリであるが、生産数の木構造とは別に、製造条件や品質等他(図示せず)のKPIデータと階層構造を形成する。ここで、図2とは異なり、「歩留」の子階層である「製造条件」が、「生産数」の木構造内のKPIデータと階層構造を形成してもよい。ここで、KGIカテゴリとは、監視されるシステムで、監視の鍵となる指標であって、木構造のトップとなる階層(図のように製造業では監視指標として重要な、生産数、歩留)である。
【0035】
この半導体製造システム全体から取得できる木構造の集合が、KPI関連図となり、KPI関連図データベース50に記憶される。この木構造は、ステップ4においては人が入力を行い、KPI関連図データベース50に登録されるが、ステップ5の異常監視システムでは、異常監視システムが自動でKPI関連図データベース50に登録する。
【0036】
図1のステップ4以降の説明に戻る。ステップ4にて、KPI関連図が予め登録されている状態で、半導体製造システムが製造を開始する。製造開始後、逐次、このシステムからデータを取得する。そして、一のKPIデータ(取得したデータをKPIデータに変換したデータ)が異常値である場合に、ステップ2にて、アラームが出力される。このアラーム出力されたKPIデータについて、KPI関連図により関連したKPIデータを抽出し、関連したKPIデータのグラフを出力したり、アラームを判定する。この出力により、根本的な原因解明を容易に調べることが可能になったり、アラームの判定により、アラームの精度を向上することができる。
【0037】
例えば、図5にて説明するように、親階層のKPIデータが「4 太さ測長」「C 品質情報」(KPI 4-C)であり、このKPIデータが閾値を超える又は閾値を満たさないことで、アラームが出た場合に、KPI関連図で関連している子階層のKPIデータとして「圧延の作業号機」のKPIデータ(KPI 2-A)のグラフ及びアラームが出力表示される。さらに、KPI関連図を辿って、子階層KPIデータ(KPI 2-A)の子階層のKPIデータ(KPI 2-X KPI 4-Cからは孫階層)のグラフ及びアラームを表示してもよい。また、子階層KPIデータの表示は、KPI関連図を辿った場合に、アラームが判定されているKPIデータのみ抽出して、そのグラフやアラームのみを表示してもよい。
【0038】
ここで、子階層のKPIデータの出力とともに(又は出力がなくとも)、異常を判定したステップ2のアラームが妥当であるか否かのアラーム判定を、KPI関連図を用いて行われてよい。すなわち、例えば、「4 太さ測長」「C 品質情報」(KPI 4-C)において「長さが閾値より小さい」というアラームがステップ2で出た場合に、KPI関連図を辿って、子階層の「圧延の作業号機」のKPIデータ(KPI 2-A)に閾値等の問題がないとする。この場合、「太さが閾値より小さい」という異常が発生したわけではなく、「太さ測長の品質情報」のアラーム出力に問題があると判定できる。これにより、「太さが閾値より小さい」というアラームに代わって、「太さ測長の品質情報」のアラーム異常のアラームを出力すべきと判定し、そのアラームのみを出力してもよい。
【0039】
図1のステップ5以降の説明に戻る。さらに、ステップ5では、KPI関連図を異常監視システム100が人からの入力ではなく、多変量解析によりKPIデータの相関性に基づいて自身で登録する。
【0040】
ここでは、監視対象となるシステムから取得したKPIデータ全てを総当り的に相関分析を行うことが望ましいが、計算量が大量になり、無駄な結果も増えるので、KPIデータのグルーピングを人が設定し、グルーピング内で相関分析を行う。結果として、相関係数の数値が高い関係を抽出してKPI関連図を生成し、KPI関連図データベース50に記憶する。
【0041】
最後に、ステップ6として、異常検知システムは、フィードバック制御を行う。すなわち、KPI関連図でアラームに関連したKPIデータを表示するのみではなく、これに関連したフィードバックのアクション(例えば、パラメータ調整、在庫調整)を行う。
以上で、図1の説明を終わる。
【0042】
[異常監視システム]
本発明の好適な実施形態について、図3に基づいて説明する。図3は、本発明の好適な実施形態である異常監視システム100の構成と各装置の機能ブロックを説明するための図である。異常監視システム100は、適宜、監視対象となるシステム10からデータの出力を受けて受信する。そして、異常監視システム100が、異常が発生したと判断した場合は、フィードバック制御の指令を監視対象となるシステム10に送り、フィードバック処理が行われる。ここで、監視対象となるシステム10は、上述のように半導体製造システムや製造業に限定されることはない。
【0043】
異常監視システム100は、1以上のコンピュータ、サーバから構成されるシステムである。便宜上、1台のコンピュータとして説明を行うが、下記で説明する各モジュールがそれぞれ異なるコンピュータ(互いにネットワークで接続されていることで)で実行されてもよい。異常監視システム100は、監視対象となるシステム10からビックデータ又はKPIデータを受信するために、公衆回線網、専用線、インターネット網等で通信可能に接続されている。
【0044】
ここで、異常監視システム100がデータを表示等の出力をする際には、自身が出力するのではなく、通信可能に接続された端末が出力することであってよい。すなわち、異常監視システム100は、通信可能に接続された端末がデータを出力するためにデータを送信する。これを受信した端末が所定のデータを出力してよい。さらに、異常監視システム100がデータの入力を人から受ける際には、自身が入力を受けるのではなく、通信可能に接続された端末が入力を受けることであってよい。すなわち、通信可能に接続された端末が、データの入力を受けて、異常監視システム100に入力されたデータを送信する。異常監視システム100が送信されたこのデータを受信する態様であってよい。
【0045】
異常監視システム100は、制御部として、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、通信部として、他の機器と通信可能にするためのデバイス、例えば、有線のLAN接続インターフェースや、IEEE802.11に準拠したWiFi(Wireless Fidelity)対応デバイス等を備える。さらに、異常監視システム100は、ハードディスクや半導体メモリ、記録媒体、メモリカード等によるデータのストレージ部及び、KPI関連図データベース50を備える。
【0046】
異常監視システム100において、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、通信部、記憶部等と協働して、後述する、KPIデータ取得モジュール11、関連出力モジュール12、アラーム判定モジュール13、フィードバック実行モジュール14、相関性登録モジュール15を実現する。
【0047】
[異常監視処理]
次に、図4に基づいて、異常監視システム100が実行する異常監視処理について、工程に基づいて説明する。
最初に、異常監視システム100は、KPI関連図の登録を行う(ステップ1)。KPI関連図は上述のように、人が手動で入力し、登録を行う場合と、異常監視システム100が自動で登録を行う場合との2通りがある。
【0048】
図5は、手動で、KPI関連図を登録する場合を説明する模式図である。監視対象となるシステム10である半導体製造システムにおいて、製造工程の一部が示されている。すなわち、製造工程として、(1)調合、(2)圧延、(3)カット、(4)太さ測長となる。これらを管理する生産データベース(半導体製造システムに設けられたデータベース)には、各工程の作業機械の号機、処理条件、品質情報毎のデータが蓄積され、異常監視システム100がこれらのデータを取得し、KPIデータとする。さらに、設備データベース(半導体製造システムに設けられたデータベース)には、部品履歴、センサーデータのデータが蓄積され、同様に、異常監視システム100がこれらのデータを取得し、KPIデータとする。
【0049】
KPIデータの親子関係の関連性を示すKPI関連図を人が予め入力することで、KPI関連図がKPI関連図データベース50に登録される。すなわち、異常監視システム100は、この監視対象となるシステム10を熟知した人間からKPI関連図の関連付けの入力を受け付ける。
【0050】
図5の例(既知のKPI関連図)では、太さ測長の品質情報(KPI 4-C)がこれらの工程内での最終的な出力結果(KGI)であり、KPI 4-Cを親階層として、子階層(ここでは、圧延の作業号機(KPI 2-A)と、カットの作業号機(KPI 3-A))が子階層で関連する、と人が判断するため、KPI関連図にこの関係性で登録する。さらに、図5のように、KPI 2-Aは、KPI 2-Xと親子関係となり、KPI 3-Aは、KPI 3-X、KPI 3-Yと親子関係と判断されて登録される。そして、登録されたKPI関連図がKPI関連図データベース50に記憶される。
【0051】
[Auto-KPI]
一方、KPI関連図の登録を手動ではなく、異常監視システム100の相関性登録モジュール15が実行する処理について説明する。図6に示すように、この処理では、取得したKPIデータの相関性を調べて相関が強いKPIデータ同士でネットワークを形成し、KPI関連図とする処理(Auto-KPI)である。
【0052】
図6図7を参照して、このAuto-KPIを説明する。図6は、Auto-KPIを説明するためのKPIの階層構造であって、図2のKPIの階層構造と同じ構造を示す。図7は、図5の半導体製造システムの工程と同じ工程が示される。図6のグラフに示すように、KPIの各階層同士で相関分析が行われる。この具体的な計算方法を図7を用いて説明する。
【0053】
図7の工程フローにおいて、各工程の「C:品質情報」のKPIデータを集めた群を大項目1とし、各工程の「Y:センサーデータ」のKPIデータを集めた群を大項目2とする。この大項目の選択は、原則的に、人が行う。ここで、大項目に該当するKPIデータは、親階層となるKPIデータ(すなわち、異常を直接的に監視したいKPIデータ)であったり、親階層に直接的に影響を与えると経験的にわかっている子階層のKPIデータである。
【0054】
相関性登録モジュール15は、大項目1、2としてKPIデータが区別された状態で、大項目内(ここでは、大項目1と大項目2のKPIデータ全て)のKPIデータで総当り的に相関分析を行う。図7の「総当り的相関分析」に示すように、縦軸に大項目1、横軸に大項目2として、各KPIデータについて総当りで相関係数を求める。そして、相関係数が所定値以上である(ここでは、0.7より大きい)KPIデータを抽出して、KPI関連図を生成する。すなわち、相関性登録モジュール15は、相関係数に基づいて、子階層KPI、親階層KPIの関係性を登録する。ここで、どちらが親子となるかは、予め人が決めておいてよい。すなわち、この例では、「C 品質情報」と「Y センサーデータ」がそれぞれ大項目であるが、最終的な半導体の「品質情報」を評価したいため、品質情報が親階層として、その品質のためのセンサーデータと解釈する。
【0055】
次に、図4に戻り、KPI関連図が登録されたことを前提に、ステップS02以降の説明を行う。異常監視システム100のKPIデータ取得モジュール11は、監視対象となるシステム10から、統計処理等が行われたKPIデータとなる前のデータ又はKPIデータを取得する(ステップS02)。すなわち、異常監視システム100は、監視対象となるシステム10からKPIデータそのものを受信してもよいし、統計処理やノイズ除去等の処理がされないデータを受信し、異常監視システム100が受信したデータをKPIデータに変換してもよい。
【0056】
KPIデータの取得処理は、異常監視をリアルタイムで行うために、監視対象となるシステム10が稼働しているときには、常にデータ(又はKPIデータ)を取得することが望ましい。ここで取得するKPIデータ(単にデータを取得している場合は統計処理等が行われKPIデータに変換されたデータ)は、KPI関連図で関連付けられている全てのKPIデータであることが好ましい。
【0057】
そして、異常監視モジュール12は、取得したデータが異常値であるかを判断する(ステップS03)。すなわち、図1のステップ2の段階での異常判定(例えば、所定のデータの数値が閾値を越える又は閾値以下になる)を行う。そして、異常が発生していると判断した場合には(ステップS03:「YES」)、ステップS04又はステップS05に移行する。異常が発生しない場合は(ステップS03:「NO」)、ステップS02に戻り、データの取得を継続する。
【0058】
次に、異常監視システム100は、ステップS04,S05のいずれか又は両方の処理を行う。この処理のいずれか又は双方を行うかは、予め人が設定しておいてよい。
【0059】
ステップS04において、異常監視システム100の関連出力モジュール12は、KPI関連図を参照し、これに基づいて、異常に関連した親階層KPI及びそれに関連した子階層KPIのKPIデータを上述のように出力する。ここで、関連出力モジュール12は、KPIデータをグラフ表示する出力を行ってもよいし、このKPIデータに関するアラームを表示してもよい。すなわち、子階層においても同様に閾値を越える又は閾値を満たさないことで、この子階層のアラームが発生している場合に、この子階層のアラームを出力してよい。さらに、この子階層の子階層のアラームについても同様に出力してよい。
【0060】
ステップS05において、異常監視システム100のアラーム判定モジュール13は、KPI関連図を参照し、これに基づいて、異常に関するアラームの妥当性を上述のように判定する。
【0061】
次に、ステップ6において、フィードバック実行モジュール14は、異常に対するフィードバック処理を実行する。フィードバック処理の一例を、図8を参照して説明する。半導体を製造する際に、歩留が通常よりも下がるといった異常が発生したとする。この歩留のKPIデータについて、KPI関連図を辿って、歩留を親階層として、子階層がA工程、その子階層が膜厚となる。この場合、膜厚を製造する機械のパラメータを調整することで、A工程の歩留が向上されると判断できれば、膜厚のパラメータを調整するように、フィードバック実行モジュール14が監視対象となるシステム10の所定の装置に指示を行う。このフィードバックが実行されることにより、自動的に歩留の異常が改善される。
【0062】
なお、他の実施形態として、異常監視システム100が、KPIデータの相関性を監視し、相関性に崩れが発生した際に、アラームを出力してもよい。すなわち、Auto-KPIにおいて、図7の総当り的相関分析をリアルタイムに計測し、相関係数の値が通常と異なる値である場合に、アラームを出力し、関連するKPIデータを出力してもよい。
【0063】
上述した手段、機能は、コンピュータ(CPU、情報処理装置、各種端末を含む)が、所定のプログラムを読み込んで、実行することによって実現される。プログラムは、例えば、フレキシブルディスク、CD(CD-ROMなど)、DVD(DVD-ROM、DVD-RAMなど)等のコンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。この場合、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記憶装置又は外部記憶装置に転送し記憶して実行する。また、そのプログラムを、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の記憶装置(記録媒体)に予め記録しておき、その記憶装置から通信回線を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
50 KPI関連図データベース
10 監視対象となるシステム
100 異常監視システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8