(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】容器詰麦茶飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20220628BHJP
【FI】
A23L2/38 M
(21)【出願番号】P 2018044910
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】笹目 正巳
(72)【発明者】
【氏名】松本 延夫
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-261686(JP,A)
【文献】特開2014-128194(JP,A)
【文献】特開2017-184660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-2/84
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎麦抽出成分を含有する容器詰麦茶飲料の製造方法であって、
焙煎麦を水性溶媒にて洗浄して洗浄済焙煎麦を得(洗浄工程)、該洗浄済焙煎麦を水性溶媒にて抽出して抽出液を得(抽出工程)、当該抽出液を冷却及び濾過して濾過液としての麦茶飲料を得(冷却濾過工程)、前記麦茶飲料を容器に充填する(充填工程)ことを特徴とし、
該洗浄工程では、洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりのクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸及び酢酸の合計含有量(「有機酸含有量」と称する)を15.0~410.0mg/100gとなり、且つ、洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりのシュウ酸含有量が4.5~90.0mg/100gとなるように洗浄し、且つ、
容器に充填された麦茶飲料は、有機酸含有量が0.2~120.0mg/100mlであり、且つ、シュウ酸含有量が1.0~26.0mg/100mlであり、且つ、デンプン含有量が0.2~235.0mg/100mlであることを特徴とする容器詰麦茶飲料の製造方法。
【請求項2】
容器に充填された麦茶飲料は、アラビノキシラン含有量が5.0~240.0mg/100mlであることを特徴とする請求項1に記載の容器詰麦茶飲料の製造方法。
【請求項3】
前記洗浄工程では、洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりのデンプン含有量が2.0~800.0mg/100gとなるように洗浄することを特徴とする請求項1又は2に記載の容器詰麦茶飲料の製造方法。
【請求項4】
焙煎麦抽出成分を含有する容器詰麦茶飲料用の焙煎麦の洗浄方法であって、
焙煎麦を水性溶媒にて洗浄し、洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりの
クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸及び酢酸の合計含有量(「有機酸含有量」と称する)が15.0~410.0mg/100gとなり、洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりのシュウ酸含有量が4.5~90.0mg/100gとなるように洗浄することを特徴とする容器詰麦茶飲料の焙煎麦洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりのデンプン含有量が2.0~800.0mg/100gとなるように洗浄することを特徴とする請求項4に記載の容器詰麦茶飲料の焙煎麦洗浄方法。
【請求項6】
焙煎麦抽出成分を含有する容器詰麦茶飲料であって、
クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸及び酢酸の合計含有量(「有機酸含有量」と称する)が0.2~120.0mg/100mlであり、且つシュウ酸含有量が1.0~26.0mg/100mlであって、且つデンプン含有量が0.2~235.0mg/100mlであることを特徴とする容器詰麦茶飲料。
【請求項7】
前記焙煎麦抽出成分が、洗浄した焙煎麦(「洗浄焙煎麦」と称する)を抽出して得られる抽出成分であることを特徴とする請求項6に記載の容器詰麦茶飲料。
【請求項8】
アラビノキシラン含有量が5.0~240.0mg/100mlであることを特徴とする、請求項6又は7に記載の容器詰麦茶飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー代替飲料となり得る新規の清涼飲料、云わば“和風のオルゾー様飲料”を得ることができる容器詰麦茶飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本におけるコーヒー代替品は、戦時中に製造された大豆や麦を炒った穀物焙煎物が挙げられる。該穀物焙煎物の抽出液はコーヒーと同様に琥珀色の液体ではあったものの、コーヒーの独特な香りや味わいとは程遠いものであった。
【0003】
一方、海外に目を向けてみると、イタリアでは現在でも炒った大麦から作られる「オルゾー」が飲用されており、この「オルゾー」は、焙煎された大麦の強い芳ばしい香味が特徴の飲み物である。
【0004】
現在の日本においてコーヒー代替品は到底普及しているとはいえないのが現状である。上述した戦時中の「代替コーヒー」は、そのままでは現代人の味覚・嗜好には合わず、またイタリアの「オルゾー」はそのままでは必ずしも日本人の味覚・嗜好に合うとはいえない。特にRTD(Ready to Drink)形態としてのコーヒー代替飲料は現在まで普及していない。
一方で、日本で昔から飲用されている麦茶についても、現在ではRTD形態の容器詰飲料が普及し、夏場を中心に広く飲用されている。しかし、消費者の嗜好が多様化するにつれて、夏場に飲まれる止渇性飲料としてだけでなく、ノンカフェイン飲料として就寝前に飲用されたり、妊婦や子供、高齢者に好んで飲用されたりしている。また、冬場には加温状態で飲用されるなど嗜好的な飲み方が広がりつつあり、従来の止渇性飲料とは異なる消費者ニーズが高まっている。
【0005】
近年、焙煎麦の割砕物からなる麦茶飲料組成物をバッグ内に封入し、水などで簡易に抽出できるようにしたティーバッグ麦茶が普及している。
この種のティーバッグ麦茶に関しては、麦茶独特の香り、色、味を充分に引き出すことができる各種の麦茶抽出用麦の製法が開示されている。
【0006】
例えば特許文献1(特開2000-245411号公報)には、特にティーバッグ麦茶に適した麦の製造方法として、原料大麦を、極めて厳しい条件下で蒸気噴霧処理(蒸気噴霧時間5~60秒、蒸気流量20~60kg/h)した後、強い加熱条件下短時間(焙煎温度230~280℃、60秒~120秒)での一次焙煎を行なった後、引き続いて強い加熱条件下短時間(焙煎温度250~300℃、60秒~120秒)での二次焙煎を行なうようにした製造方法が開示されている。
【0007】
また近年、麦茶飲料をペットボトルなどの容器に充填してなる容器詰麦茶飲料も普及してきている。
この種の容器詰麦茶飲料に関しては、例えば特許文献2(特開2013-111031号公報)において、香味のバランスに優れ、収斂味があって間食などとともに飲用することにも適した容器詰麦茶飲料として、デンプン量とβグルカン量とを合わせた多糖類量(mg/100mL)が40~145であり、マルトース量(mg/L)が0.50~3.00であり、麦由来可溶性固形分(%)が0.15~0.65であり、マルトース量(mg/L)に対するカテキン8種量(mg/L)の比(カテキン/マルトース)が0.02~1.0であることを特徴とし、さらに、マルトース量(mg/L)に対するガレート型カテキン量(mg/L)の比(ガレート型カテキン/マルトース)が0.01~0.67である容器詰麦茶飲料が開示されている。
【0008】
特許文献3(特開2013-111030号公報)には、残粒感やえぐ味を感じにくく飲用感に優れ、香味のバランスにも優れた容器詰麦茶飲料として、デンプン量とβグルカン量とを合わせた多糖類量(mg/100mL)が80~220であり、マルトース量(mg/L)が1.00~4.00であり、麦由来可溶性固形分(%)が0.25~0.70であり、懸濁固形物の平均粒子径が10.0μm未満であることを特徴とする容器詰麦茶飲料が開示されている。
【0009】
また近年、病気予防などの健康のために多くの健康飲料が販売されており、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなどのミネラル成分が含まれている麦茶が市販されている。
例えば特許文献4(特開2002-142733号公報)には、海洋深層水を使用したことによって多くの天然微量元素(ミネラル)を含み、海洋深層水の持つミネラルバランスを再現した穀物茶の製造方法として、海洋深層水の濃縮水中に精白した原料穀物を所定時間浸漬してから蒸気で蒸す蒸着工程、乾燥工程、焙煎工程、冷却工程を実施して作製した穀物茶の製造方法が開示されている。
【0010】
特許文献5(特開2005-151981号公報)には、塩分を取り除いた海洋深層水を麦茶飲料に混合及び攪拌して、マグネシウムを麦茶飲料1リットルあたり2.5mg~20mg、カリウムを麦茶飲料1リットルあたり100mg~350mgになるように調整した、呈味を改善させた血流改善作用を有する麦茶飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2000-245411号公報
【文献】特開2013-111031号公報
【文献】特開2013-111030号公報
【文献】特開2002-142733号公報
【文献】特開2005-151981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のとおり、止渇性飲料としての麦茶については、呈味や健康性を向上させた飲料が検討されているものの、現代の味覚・嗜好に合った嗜好性麦茶飲料、特にコーヒー飲料の代替となり得る麦茶飲料については検討されていない。
【0013】
そこで本件課題は、コーヒー飲料の代替飲料となり得る新規の清涼飲料、 云わば“和風のオルゾー様飲料”を得ることができる新たな容器詰麦茶飲料及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、焙煎麦抽出成分を含有する容器詰麦茶飲料であって、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸及び酢酸の合計含有量(「有機酸含有量」と称する)が0.2~120.0mg/100mlであり、且つシュウ酸含有量が1.0~26.0mg/100mlであって、且つデンプン含有量が0.2~235.0mg/100mlであることを特徴とする容器詰麦茶飲料を提案する。
【0015】
本発明はまた、焙煎麦抽出成分を含有する容器詰麦茶飲料の製造方法であって、
焙煎麦を水性溶媒にて洗浄して洗浄済焙煎麦を得(洗浄工程)、該洗浄済焙煎麦を水性溶媒にて抽出して抽出液を得(抽出工程)、当該抽出液を冷却及び濾過して濾過液としての麦茶飲料を得(冷却濾過工程)、前記麦茶飲料を容器に充填する(充填工程)ことを特徴とし、
該洗浄工程では、洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりのクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸及び酢酸の合計含有量(「有機酸含有量」と称する)を15.0~410.0mg/100gとなり、且つ、洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりのシュウ酸含有量が4.5~90.0mg/100gとなるように洗浄し、且つ、
容器に充填された麦茶飲料は、有機酸含有量が0.2~120.0mg/100mlであり、且つ、シュウ酸含有量が1.0~26.0mg/100mlであり、且つ、デンプン含有量が0.2~235.0mg/100mlであることを特徴とする容器詰麦茶飲料の製造方法を提案する。
【0016】
本発明はまた、焙煎麦抽出成分を含有する容器詰麦茶飲料用の焙煎麦の洗浄方法であって、焙煎麦を水性溶媒にて洗浄し、洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりのクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸及び酢酸の合計含有量(「有機酸含有量」と称する)が15.0~410.0mg/100gとなり、洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりのシュウ酸含有量が4.5~90.0mg/100gとなるように洗浄することを特徴とする容器詰麦茶飲料の焙煎麦洗浄方法を提案する。
【発明の効果】
【0017】
そこで本件課題は、コーヒー飲料の代替飲料となり得る新規の清涼飲料、 云わば“和風のオルゾー様飲料”を得ることができる新たな容器詰麦茶飲料及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0019】
[本麦茶飲料]
本発明の実施形態の一例に係る容器詰麦茶飲料(「本麦茶飲料」と称する)は、焙煎麦の抽出成分(「焙煎麦抽出成分」とも称する)を含有する容器詰麦茶飲料であって、特に所定の容器中に封入され、そのままの状態で飲用可能な所謂RTD(Ready to Drink)形態の容器詰麦茶飲料であることが好ましい。
【0020】
本麦茶飲料は、焙煎麦抽出成分を0.10質量%以上含有するのが好ましい。
本麦茶飲料が焙煎麦抽出成分を0.10質量%以上含んでいれば、麦茶特有の香味を得ることができる。
かかる観点から、本麦茶飲料は、焙煎麦抽出成分を0.10質量%以上含むのが好ましく、中でも0.15質量%以上或いは0.50質量%以下、その中でも0.20質量%以上或いは0.40質量%以下の割合で含むのがさらに好ましい。
前記「焙煎麦抽出成分」の含有量は、抽出液の可溶性固形分(Bx)を測定して求めることができる。
【0021】
本麦茶飲料は、焙煎麦を抽出して得られる焙煎麦抽出成分の中で、本明細書で記載している成分(「示唆成分」とも称する)、すなわちデンプン、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、アラビノキシランなどの示唆成分以外の焙煎麦抽出成分(「示唆外成分」とも称する)については、焙煎麦を水で抽出して得られる通常の示唆外成分の組成と同様である。
【0022】
焙煎麦を水で抽出して得られる通常の示唆外成分の組成の一例として、グルコースを100.0~500.0ppm、フルクトースを5.0ppm未満、単糖を合計で100.0~500.0ppm、スクロースを5.0ppm未満、マルトースを200.0~500.0ppm、セロビオースを5.0ppm未満、二糖を合計で200.0~500.0ppm、ラフィノース(三糖)を5.0ppm未満、スタキオース(四糖)を5.0ppm未満、三糖以上の多糖を合計で10000~20000mg/100ml、βグルカンを500~3000mg/100ml、アミノ酸を合計で0.1~50ppm、リン酸を0.05~0.50質量%、カリウムを300.0~700.0mg/100ml、リンを50.0~500.0mg/100ml、マンガンを0.1~1.0mg/100ml、カルシウムを5.0~50.0mg/100ml、ナトリウムを5.0~200.0mg/100ml、マグネシウムを10.0~100.0mg/100ml含む例を挙げることができる。下記実施例及び比較例のいずれも、示唆外成分の組成はこの範囲に入ることを確認している。
【0023】
本麦茶飲料における可溶性固形分量は0.10~2.00質量%であるのが好ましい。
ここで、可溶性固形分量は、上記の焙煎麦抽出成分に相当する。
可溶性固形分量が0.10質量%以上であれば、本麦茶飲料の香味を十分に感じることができ、2.00質量%以下であれば、本麦茶飲料の香味を適度に感じることができるから、好ましい。
かかる観点から、本麦茶飲料において、可溶性固形分量は0.10~2.00質量%であるのが好ましく、中でも0.15質量%以上或いは1.00質量%以下、その中でも0.20質量%以上或いは0.50質量%以下であるのがさらに好ましい。
本麦茶飲料において、可溶性固形分量を上記範囲に調整するには、例えば原料の選択、混合、抽出条件、希釈水の量を調整すればよい。但し、この方法に限定するものではない。
【0024】
本麦茶飲料において、アラビノキシラン含有量は5.0~240.0mg/100mlであるのが好ましい。
アラビノキシラン含有量が5.0mg/100ml以上であれば、口に含んだ質感を十分に感じることができ、240.0mg/100ml以下であれば、口に含んだ質感を適度に感じることができるから、好ましい。
かかる観点から、本麦茶飲料において、アラビノキシラン含有量が5.0~240.0mg/100mlであるのが好ましく、中でも8.0mg/100ml以上或いは200.0mg/100ml以下、その中でも10.0mg/100ml以上或いは150.0mg/100ml以下であるのがさらに好ましい。
【0025】
なお、上記「アラビノキシラン(「Ax」と記載することもある。)」とは、多糖類に分類される水不溶食物繊維質のうち、セルロース以外の繊維分の総称である「ヘミセルロース」の一種の意味である。
アラビノキシラン含有量の分析及び測定方法は、当業者に公知の手法を採用することができ、例えばJ.Agri.Food Chem.2014,62,8319-8324に記載の直接酸加水分解法を用いて算出することができる。
【0026】
本麦茶飲料において、アラビノキシラン含有量を上記範囲に調整するには、例えば、原料である大麦を適宜選択することによって調整することができる。大麦におけるアラビノキシラン含有量は、品種や、収穫時期や給水量などの栽培条件によって左右されることが知られている。例えば、アラビノキシラン含有量は栽培初期の段階では少なく、栽培中期以降に増加する傾向がある。また、アラビノキシラン含有量は栽培期間中の給水量によっても調整することができ、例えば給水量を増加させるとアラビノキシラン含有量が増加する傾向がある。品種の観点からいえば、例えばハインドマーシュ、メトカルフ、スコープ、コマンダー、ほうしゅん、ミカモゴールデン等の二条麦品種は、アラビノキシラン含有量が高い傾向があり、他方、レガシー、シュンライ、ファイバースノウ、カシマムギ等のなどの六条麦品種は、アラビノキシラン含有量が低い傾向がある。
【0027】
本麦茶飲料は、デンプン含有量が0.2~235.0mg/100mlであるのが好ましい。
デンプン含有量が0.2mg/100ml以上であれば、甘味を十分に感じることができ、235.0mg/100ml以下であれば、甘味を適度に感じることができるから、好ましい。
かかる観点から、本麦茶飲料は、デンプン含有量が0.2~235.0mg/100mlであるのが好ましく、中でも1.0mg/100ml以上或いは200.0mg/100ml以下、その中でも10.0mg/100ml以上或いは100.0mg/100ml以下であるのがさらに好ましい。
本麦茶飲料において、デンプン含有量を上記範囲に調整するには、例えば焙煎麦の焙煎条件を調整するほか、抽出、乾燥などの加熱工程における加熱条件を制御することにより、調整することができるが、本件課題を解決する上では、和風オルゾー様飲料として最適な香味を得る観点から、特に抽出条件を制御することにより調整することが好ましい。
【0028】
本麦茶飲料は、シュウ酸含有量が1.0~26.0mg/100mlであるのが好ましい。
シュウ酸含有量が1.0mg/100ml以上であれば、後味の印象を適度に感じることができ、26.0mg/100ml以下であれば、後味の印象を過剰に感じることがないから、好ましい。
かかる観点から、本麦茶飲料において、シュウ酸含有量が1.0~26.0mg/100mlであるのが好ましく、中でも1.2mg/100ml以上或いは25.5mg/100ml以下、その中でも3.0mg/100ml以上或いは25.0mg/100ml以下であるのがさらに好ましい。
本麦茶飲料において、シュウ酸含有量を上記範囲に調整するには、例えばシュウ酸含有量の異なる焙煎麦を選択・混合したり、抽出条件を変更したりすることによって調整することができる。本件課題を解決する上では、和風オルゾー様飲料として最適な香味を得る観点から、特に焙煎麦を選択、混合することによって調整することが好ましい。また、抽出条件を制御することにより調整することもでき、例えば抽出温度を高くして抽出時間を長くすればシュウ酸含有量を高めることができる。但し、この方法に限定するものではない。
【0029】
本麦茶飲料は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸及び酢酸の合計含有量(「有機酸含有量」と称する)が0.2~120.0mg/100mlであるのが好ましい。
上記有機酸含有量が0.2mg/100ml以上であれば、苦味を適度に感じることができ、120.0mg/100ml以下であれば、苦味を過剰に感じることがないから、好ましい。
かかる観点から、本麦茶飲料において、前記有機酸含有量は0.2~120.0mg/100mlであるのが好ましく、中でも1.0mg/100ml以上或いは100.0mg/100ml以下、その中でも20.0mg/100ml以上或いは60.0mg/100ml以下であるのがさらに好ましい。
前記有機酸含有量を上記範囲に調整するには、例えば後述するように、焙煎麦を抽出する前に焙煎麦を洗浄すればよい。中でも、和風オルゾー様飲料として最適な香味を得る観点から、有機酸含有量は焙煎麦を洗浄することによって調整することが特に好ましい。また、抽出条件を制御したり、下焙煎麦を選択、混合したりすることによっても調整することができる。但し、この方法に限定するものではない。
【0030】
本麦茶飲料は、上記有機酸含有量に対するシュウ酸含有量の質量比率(シュウ酸/有機酸)が0.003~100.0であるのが好ましい。
シュウ酸/有機酸が0.003~100.0であれば、後味の印象と苦味のバランスを良好に感じることができるから、好ましい。
かかる観点から、本麦茶飲料において、有機酸含有量に対するシュウ酸含有量の質量比率(シュウ酸/有機酸)は0.003~100.0であるのが好ましく、中でも0.01以上或いは85.00以下、中でも0.10以上或いは65.0以下、その中でも0.50以上或いは10.0以下であるのがさらに好ましい。
本麦茶飲料において、前記有機酸含有量を上記範囲に調整するには、例えば後述するように、焙煎麦を抽出する前に焙煎麦を洗浄すればよい。中でも、和風オルゾー様飲料として最適な香味を得る観点から、有機酸含有量は焙煎麦を洗浄することによって調整することが特に好ましい。また、抽出条件を制御したり、下焙煎麦を選択、混合したりすることによっても調整することができる。但し、この方法に限定するものではない。
本麦茶飲料において、シュウ酸/有機酸を上記範囲に調整するには、例えば焙煎麦の洗浄条件を調整し、有機酸含有量を調整したり、シュウ酸含有量の異なる焙煎麦を選択したり、混合したりすることによって調整できる。また、抽出条件を制御することにより調整すればよい。但し、この方法に限定するものではない。
【0031】
本麦茶飲料は、上記有機酸含有量に対するデンプン含有量の質量比率(デンプン/有機酸)が0.003~770.0であるのが好ましい。
デンプン酸/有機酸が0.003~770.0であれば、甘味と苦味のバランスを良好に感じることができるから、好ましい。
かかる観点から、本麦茶飲料において、有機酸含有量に対するデンプン含有量の質量比率(デンプン/有機酸)は0.003~770.0であるのが好ましく、中でも0.01以上或いは280.0以下、その中でも1.50以上或いは200.0以下であるのがさらに好ましい。
本麦茶飲料において、デンプン/有機酸を上記範囲に調整するには、例えば焙煎麦の焙煎条件を調整するほか、抽出、乾燥などの加熱工程における加熱条件を制御することによりデンプン含有量を調整したり、或いは焙煎麦の洗浄条件を調整し、有機酸含有量を調整したりすればよい。但し、この方法に限定するものではない。
【0032】
なお、本麦茶飲料は、焙煎麦抽出成分以外に他の成分を含有していてもよい。当該他の成分としては、焙煎麦抽出成分以外のミネラル成分、ビタミン類、乳化剤、酸味料、酸化防止剤、甘味料、着色料、食物繊維やヘスペリジン等の機能性成分などを挙げることができる。
【0033】
[本製造方法]
次に、本麦茶飲料の製造方法の一例(「本製造方法」と称する)について説明する。但し、本麦茶飲料の製造方法がここで説明する本製造方法に限定されるものではない。
【0034】
本製造方法として、焙煎麦を水性溶媒にて洗浄して洗浄済焙煎麦を得(洗浄工程)、該洗浄済焙煎麦を水性溶媒にて抽出して抽出液を得(抽出工程)、当該抽出液を冷却及び濾過して濾過液としての麦茶飲料を得(冷却濾過工程)、前記麦茶飲料を容器に充填して(充填工程)、容器詰麦茶飲料を製造する方法を挙げることができる。
以下、各工程について説明する。
【0035】
<焙煎麦>
焙煎麦は、原料麦を焙煎して得ることができる。
原料麦としては、二条、四条、六条等の各皮麦・裸麦などの大麦、水浸漬や酵素加工による加工麦、βグルカン高含有麦、アミロースフリー麦、低ポリフェノール麦などの改良種大麦を挙げることができる。
なお、二条麦としては、例えばハインドマーシュ、メトカルフ、スコープ、コマンダー、ほうしゅん、ミカモゴールデン等の品種を挙げることができる。
他方、六条麦としては、例えばレガシー、シュンライ、ファイバースノウ、カシマムギ等の品種を挙げることができる。
【0036】
焙煎処理は、熱風焙煎、砂炒焙煎、遠赤外線焙煎、開放釜焙煎、回転ドラム式焙煎、媒体焙煎など、当業者に公知の方法を採用することができる。これらの方法を組み合わせて実施することもできる。
【0037】
焙煎条件を調整することにより、上述のように、デンプン含有量などを調整することができる。
よって、かかる観点も考慮して、焙煎条件の一例を挙げるならば、品温を150~400℃で10~96秒間維持するように焙煎するのが好ましく、中でも170~400℃で15秒~50秒間、その中でも170~390℃で20秒~40秒間、その中でも180~380℃で25~35秒間維持するように焙煎することがさらに好ましい。
【0038】
なお、焙煎前の処理として、原料穀物を水或いは蒸気と接触させ、原料穀物が水分を含有した状態とする膨化処理を行ってもよい。このように膨化処理を行えば、水分を含有した原料穀物を高温で焙煎することにより、膨化して割れるようになり、抽出効率をさらに向上させることができる。
膨化処理の方法としては、上述の通り、原料穀物を水と接触させる方法を挙げることができる。例えば、穀物を水に浸漬したり、直接水を散布したり、蒸気噴霧により水と接触させる方法等を例示することができる。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0039】
また、焙煎穀物の品質劣化を防ぐ観点から、焙煎した穀物は、焙煎後に冷却することが好ましい。冷却方法は特に限定されるものではない。例えば放冷、送風冷却、水冷却などを例示することができる。
【0040】
焙煎麦は、アラビノキシランを400~13000mg/100g含むものが好ましい。
焙煎麦におけるアラビノキシランの含有量が400~13000mg/100gで含有すれば、口に含んだ質感を適度な範囲に調整することが容易となるから好ましい。
かかる観点から、焙煎麦は、アラビノキシラン400~13000mg/100gの割合で含むものが好ましく、中でも500mg/100g以上或いは12500mg/100g以下、その中でも1300mg/100g以上或いは11000mg/100g以下の割合で含むものがさらに好ましい。
【0041】
<洗浄工程>
本工程では、焙煎麦を水性溶媒にて洗浄すればよい。
抽出の前段階で焙煎麦を洗浄することにより、特に表面に付着した、有機酸を取り除くことができる。
【0042】
洗浄方法としては、ニーダー式、ドリップ式、シャワー式などを挙げることができる。中でも、均一に全体的に洗浄することができる点では、ドリップ式が好ましい。
【0043】
洗浄に用いる水溶性溶媒としては、純水、天然水、市水、井水などを挙げることができる。
当該水溶性溶媒の温度は、25~100℃、中でも50℃以上或いは98℃以下、その中でも70℃以上或いは96℃以下であるのが好ましく、洗浄時間すなわち焙煎麦と水溶性溶媒との接触時間は10分~40分、中でも12分以上或いは30分以下、その中でも15分以上或いは20分以下であるのがさらに好ましい。
【0044】
本洗浄工程では、洗浄の程度を調整することにより、洗浄に用いた洗浄後の水溶性溶媒すなわち洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりの有機酸含有量が1.0~410.0mg/100gとなるように洗浄するのが好ましい。
洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりの有機酸含有量が1.0~410.0mg/100gであれば、本麦茶飲料において後味の印象を程よく感じることができるから、好ましい。
かかる観点から、洗浄済液における上記有機酸含有量が1.0~410.0mg/100gになるように洗浄するのが好ましく、中でも2.0mg/100g以上或いは390.0mg/100g以下、その中でも3.0mg/100g以上或いは140.0mg/100g以下となるように洗浄するのがさらに好ましい。
【0045】
本洗浄工程では、洗浄の程度を調整することにより、洗浄に用いた洗浄後の水溶性溶媒すなわち洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりのシュウ酸含有量が4.5~90.0mg/100gとなるように洗浄するのが好ましい。
洗浄済液における当該シュウ酸含有量が4.5~90.0mg/100gであれば本麦茶飲料において苦味を程よく感じることができるから、好ましい。
かかる観点から、洗浄済液における上記シュウ酸含有量が4.5~90.0mg/100gになるように洗浄するのが好ましく、中でも5.0mg/100g以上或いは90mg/100g以下、その中でも5.3mg/100g以上或いは85.0mg/100g以下となるように洗浄するのがさらに好ましい。
【0046】
さらに洗浄の程度を調整することにより、洗浄済液における可溶性固形分(Bx)1.0%当たりのデンプン含有量が2.0~800.0mg/100gとなるように洗浄するのがさらに好ましい。
洗浄済液における当該デンプン含有量が2.0~800.0mg/100gであれば本麦茶飲料において甘さを程よく感じることができるから、好ましい。
かかる観点から、洗浄済液における上記デンプン含有量が2.0~800.0mg/100gになるように洗浄するのが好ましく、中でも4.0mg/100g以上或いは500.0mg/100g以下、その中でも4.5mg/100g以上或いは280.0mg/100g以下となるように洗浄するのがさらに好ましい。
【0047】
洗浄の程度の調整方法としては、例えば洗浄方法、洗浄回数、洗浄時間、洗浄に用いる水溶性溶媒の種類及び温度などを適宜変更する方法を挙げることができる。但し、これに限定するものではない。
【0048】
<抽出工程>
本工程では、上記洗浄済焙煎麦を溶媒で抽出して麦抽出液を得ればよい。
【0049】
焙煎麦の抽出方法は、特に限定するものではない。例えば浸漬抽出、ドリップ抽出、シャワーリングによる抽出など、公知の方法を採用すればよい。
抽出に用いる溶媒としては、例えば純水、水道水、蒸留水、脱塩水、アルカリイオン水、湖水、海洋深層水、イオン交換水、脱酸素水、天然水、水素水或いは水溶性の有機化合物(例えば、アルコール類)や無機塩類を含む水などを用いることができる。
【0050】
抽出条件の調整によって、上述のように、有機酸などの調整を図ることができる。
よって、かかる観点も考慮して、焙煎麦の抽出は、具体的には60~120℃で10分~100分間抽出するのが好ましく、中でも80~115℃で20~90分間、その中でも95~100℃で40~80分間抽出するのがさらに好ましい。なお、当該抽出温度は抽出溶媒の温度の意味である。
【0051】
<冷却濾過工程>
上記のように抽出して得られた麦抽出液は、ただちに急冷し、その後ろ過するのが好ましい。
急冷することにより、濁り原因物質の沈殿乃至懸濁を一層促進させることができ、最終製品としての穀物茶飲料の懸濁及び沈殿の発生をより一層確実に防止できるばかりか、製造時間の短縮を図ることもできる。
急冷方法は、特に限定されない。冷却効率等を鑑みれば、例えばプレート式熱交換機などを用いて約5~30℃程度に急冷するのがよい。
【0052】
上記ろ過の方法としては、遠心分離ろ過と形状選別ろ過とを組合せて行うのが好ましく、特に形状選別ろ過を行うことが効果的である。
【0053】
上記冷却濾過工程で得られた濾過液は、必要に応じて、希釈するようにしてもよい。
また、必要に応じて、ミネラル成分など、各種添加剤を加えてもよい。
【0054】
<充填工程>
上記冷却濾過工程で得られた濾過液若しくは上記希釈液(これらを「麦茶飲料」と称する)を容器に充填する際、必要に応じて、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤、香料、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、乳化剤、保存料、甘味料、着色料、増粘安定剤、調味料、強化剤等の添加剤を単独又は組み合わせて配合してもよい。
【0055】
麦茶飲料を充填する容器としては、例えばガラス瓶、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、多層成形容器等のプラスチック容器、紙容器、金属容器等を挙げることができる。
【0056】
容器としてプラスチック容器を用いた場合は、25℃、湿度55%RHにおける容器の酸素透過量(cc/Day/500mLボトル)が、0.01~0.1であるのが好ましく、0.015~0.08がより好ましく、0.02~0.06がさらに好ましい。これにより、保管中に飲料と酸素が反応し、甘みを出すことができる。
【0057】
麦茶飲料を容器に充填する際、常温で充填するのが好ましい。また、窒素を充填しない方が好ましい。
【0058】
なお、製造工程のいずれかの段階で殺菌を行うことができる。
殺菌の条件は食品衛生法に定められた条件と同等の効果が得られる方法を選択すればよい。例えば、容器として耐熱容器を使用する場合にはレトルト殺菌を行えばよい。また、容器として非耐熱性容器を用いる場合、本容器詰麦茶飲料は、例えば、麦茶飲料を予めプレート式熱交換機等で高温短時間殺菌後、所定温度まで冷却し、熱時充填するか低温、たとえば10~50℃で無菌充填を行うことで製造することができる。
【0059】
[語句の説明]
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0061】
<実施例1>
大麦(品種レガシー)を蒸気噴霧処理して、含有水分量が約25重量%になるように調整した後、媒体としてカルシウム粒を用いた回転ドラム式媒体焙煎釜に投入し、一次焙煎256℃×90秒、二次焙煎276℃×90秒時間の条件で焙煎を行い、焙煎麦を得た。この焙煎麦は、シュウ酸を60.0mg/100g、デンプンを40000mg/100g、アラビノキシランを60000mg/100g含んでいた。
【0062】
上記焙煎麦200gを、50℃のイオン交換水1Lを入れたビーカー中に投入し、25分間、浸漬して洗浄し、洗浄済焙煎麦を取り出した。
残った洗浄済液の可溶性固形分(Bx)1.0%当たりの有機酸含有量、シュウ酸含有量及びデンプン含有量を測定し、それぞれ洗浄工程における「Bx1.0当り有機酸(mg/100g)」「Bx1.0当りシュウ酸(mg/100g)」「Bx1.0当りデンプン(mg/100g)」として示した。
【0063】
上記洗浄済焙煎麦200gを、ステンレス製ドリップ抽出容器(内径150mm×高さ150mm、容積約3120cm3)に高さが均一になるように投入し、抽出水として水(イオン交換水)を用いて麦抽出液を得た。
また、該抽出容器には、内容液を排出可能なコックと、内容液を濾過する80メッシュの金網が備えられている。この容器内に、95℃のイオン交換水2Lを注ぎ、30分間保持後、コックを開き、内容液を排出し、この排出液を25℃に冷却し、ステンレスメッシュ(235メッシュ)で濾過し、更にネルで濾過して濾過液を得た。
そして、この濾過液を冷却した後、遠心分離機(連続遠心機SA-1、ウエストファリア社製)にて比重選別し、比重選別後の液にビタミンC及び重曹を加えてpH調整を行い、5Lにメスアップし麦茶飲料を得た。
そして、麦茶飲料をUHTにて殺菌処理を行った後、ペットボトル製容器に充填して容器詰麦茶飲料を得た。
【0064】
<実施例2-30及び比較例1-18>
下記表1-3に示した製造条件に変更した以外、実施例1と同様に容器詰麦茶飲料を得た。
【0065】
<原料、中間物及び飲料の成分分析>
上記原料、中間物及び容器詰麦茶飲料の麦茶飲料について、以下の方法で分析・測定し、各成分値及び各物性値を算出した。
【0066】
(アラビノキシラン、Ax)
アラビノキシラン含有量は、塩酸による酸加水分解操作の後、HPLC糖分析装置を用いて定量し、得られた値をもとに算出した。
各実施例及び比較例の組成物200μlを2mlエッペンドルフチューブに入れ、1.5M HCl 200μlを添加した。これを加熱ブロック(90℃)で90分間インキュベートし加水分解した。この後、NaOH水溶液(5%水溶液)用いて中和し、さらに純水で希釈し総量を2000μLとして定量に供した(反応液)。
更に反応液、または検量線用の糖類標準品水溶液100μLに、内部標準液(2-Deoxyglucose 100ppm)100μLおよび超純水800μLを加えた混合溶液を、Bond Elute SAX(アジレント・テクノロジー社製)に通液して前処理し、分析用サンプルとした。
【0067】
続いて、分析用サンプルを以下の装置及び条件にて糖定量分析(内部標準法)に付し、得られたアラビノースとキシロースの合算値に0.88を乗じ、適宜サンプルの希釈率等を考慮し算出した値を以ってアラビノキシラン含有量とした。
装置: Thermo Scientific社 ICS-5000
カラム:Thermo Scientific社製 Carbopack PA1 φ4×250mm
(+ガードカラム φ4×50mm)
カラム温度:30℃
移動相:
A相: 200mM NaOH水溶液
B相: 1000mM 酢酸ナトリウム水溶液
C相: 超純水
流速: 1.0mL/分
注入量: 25μL
検出:パルスドアンペロメトリー法
グラジエントプログラム
【0068】
(有機酸)
各実施例及び比較例で得た麦茶飲料を、高速液体クロマトグラム(HPLC)を用いて検量線法によって各有機酸の含有量を測定し、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸及び酢酸の合計含有量を算出した。表には「有機酸」と記載してある。
【0069】
(シュウ酸)
各実施例及び比較例で得た麦茶飲料を、高速液体クロマトグラム(HPLC)を用い、検量線法によってシュウ酸含有量を測定した。
【0070】
(デンプン)
各実施例及び比較例で得た麦茶飲料0.1gに80%エタノール5ml加え80℃、5分間加熱し、80%エタノール5ml加え激しく振り混ぜ、遠心分離(8000rpm10分間20℃)を行い上澄み液を取り除いた。
得られた沈殿物に80%エタノール10mlを加え激しく振り混ぜ洗浄し、遠心分離(8000rpm10分間)を行い上澄み液を取り除き、この操作を3回繰り返した後アミラーゼ3mlを加え沸騰水浴中で5分間ごとに振り混ぜながら30分間加熱した。放冷後、アミログルコシダーゼ0.1mlを加え50℃水浴中で30分間加熱し、放冷後100mlに定容した。
検体の一部を取り出して遠心分離(3000rpm10分間20℃)を行い、上澄み液0.1mlを15ml容チューブに入れ、GOPOD試薬3ml加え50℃水浴中で20分間静置した後、510nmの吸光度を測定し次式により総デンプン量を求めた。表には「デンプン」と記載してある。
総デンプン量=510nm吸光度×0.9×F×(100ml÷サンプル量)
(F=100÷1.0mg/mlグルコース吸光度)
【0071】
<官能評価試験>
実施例・比較例で得た麦茶飲料について、麦茶飲料の製造に従事する4人のパネラーと、コーヒー飲料の製造に従事する3人のパネラーを選出し、以下の評価方法に基づいて実施し、合議の結果、最も多かった評価を採用することとし、総合評価についても合議による結果を採用した。
なお、コントロールには、実施例1で使用した焙煎麦400.0gを95℃のイオン交換水2Lを注ぎ40分間抽出したこと以外は、実施例1と同様に作成した麦茶飲料を用いた。
【0072】
先ず、事前にパネラーにコントロールを飲用してもらい、パネラー間でコントロールの香味についてディスカッションを行ってもらうことで、コントロールにおける「苦味」、「後味の印象」、「甘さ」及び「口に含んだ質感」の共通認識を持つようにした。
なお、それぞれの官能評価における評価項目は以下の通りであり、「苦味(ビターテイスト)」は麦茶飲料を口に含んだときの苦味を評価し、「後味の印象」(アフターテイスト)は麦茶飲料を飲み込んだ後で持続する風味を評価し、「甘さ(スイートネス)」は麦茶飲料を口に含んだときに感じる甘さを評価し、「口に含んだ質感(ボディ)」とは口に含んだ際の滑らかさの程度を評価した。
【0073】
(苦味)
5:非常に強く感じる 、コントロールと同等である
4:強く感じる
3:感じる
2:弱く感じる
1:非常に弱く感じる
【0074】
(後味の印象)
5:非常に強く感じる 、コントロールと同等である
4:強く感じる
3:感じる
2:弱く感じる
1:非常に弱く感じる
【0075】
(甘さ)
5:非常に強く感じる
4:強く感じる
3:感じる、コントロールと同等である
2:弱く感じる
1:非常に弱く感じる
【0076】
(口に含んだ質感)
5:非常に強く感じる
4:強く感じる
3:感じる、コントロールと同等である
2:弱く感じる
1:非常に弱く感じる
【0077】
(総合評価)
○:上記各評価において、「1」及び「5」の評価がなく、コーヒー代替飲料として適している、本件課題を解決している。
×:上記各評価において、「1」或は「5」の評価があり、コーヒー代替飲料として適していない、本件課題を解決していない。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
(考察)
上記実施例及び比較例の結果並びにこれまで本発明者が行ってきた試験結果から、有機酸の合計含有量、シュウ酸含有量及びデンプン含有量を所定範囲に規定することで、焙煎された大麦の強い芳ばしい香味と、適度な甘みを備えており、それでいて過剰な苦みやえぐみを抑えた“和風オルゾー様飲料”を得ることができることが分かった。