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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】UAVを用いた標点マーキングシステム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/02 20060101AFI20220628BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220628BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G01C15/02
G01C15/00 104C
B64C39/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018053908
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019168229
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優人
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-145784(JP,A)
【文献】特開2012-040975(JP,A)
【文献】特開平08-285601(JP,A)
【文献】特開平04-039709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0163775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00 - 15/02
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量対象としてのプリズムと、着色溶液を噴射することで標点にマーキングが可能な噴射装置と、位置情報を取得可能な第1のGPSとを有し、遠隔操作可能な飛行体と、
位置情報を取得可能な第2のGPSと、前記プリズムに対して測距・測角を行うプリズム測量機能と、前記飛行体を遠隔操作する遠隔操作機能とを有する測量機と、
を備え、
前記測量機は、前記遠隔操作機能により所望の座標に前記飛行体を移動させ、前記プリズム測量機能で前記プリズムを測距・測角し、前記測量機能の結果および前記第2のGPSから取得した位置情報により前記飛行体の座標を把握し、前記飛行体を前記所望の座標に合わせ、着地させて、前記噴射装置により前記所望の座標にマーキングを行う、
ことを特徴とする標点マーキングシステム。
【請求項2】
前記飛行体は、前記噴射装置の溶液噴射方向に光軸を有する撮像装置を備え、
前記測量機に備えられた表示部には、前記撮像装置が取得した画像データが表示される、
ことを特徴とする請求項1に記載の標点マーキングシステム。
【請求項3】
前記第1のGPSと、前記噴射装置と、前記プリズムとは鉛直の同一軸上となるように配置されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の標点マーキングシステム。
【請求項4】
前記測量機はインターネットに接続可能であり、該測量機に備えられた表示部には、前記インターネットにより入手した地図データと共に、前記所望の座標、前記第1のGPSから取得した前記飛行体の位置情報、前記第2のGPSから取得した前記測量機の位置情報が表示される、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の標点マーキングシステム。
【請求項5】
前記測量機は、入力された複数の前記所望の座標から前記飛行体の飛行プログラムを作成し、前記飛行体は前記飛行プログラムに従って順次前記所望の座標まで移動して、各前記所望の座標ごとに前記噴射装置によるマーキングを行う、
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の標点マーキングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UAVを用いた高精度な標点マーキングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型の無人飛行体(UAV:Unmanned Air Vehicle)の進歩に伴って、UAVに各種装置を搭載して遠隔操作により、作業を行わせている。
【0003】
例えば特許文献1では、UAVにGPSやカメラを備えさせ、UAVの座標や姿勢を高精度に把握して、写真撮影による地表の三次元計測を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-37937号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現場では、測量への更なるUAVの積極的な利用が求められている。測量の現場で頻繁に行われる杭打ちは、まず測量を行い杭打ち点にマーキングし、そのマーキングした点に杭を打ち込む。複数の杭打ち点に対して測量、マーキングを繰り返すため作業量が多く、杭打ち点のマーキングにUAVを役立てたいというニーズがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、UAVを用いた高精度なマーキングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のある態様の標点マーキングシステムでは、測量対象としてのプリズムと、着色溶液を噴射することで標点にマーキングが可能な噴射装置と、位置情報を取得可能な第1のGPSとを有し、遠隔操作可能な飛行体と、位置情報を取得可能な第2のGPSと、前記プリズムに対して測距・測角を行うプリズム測量機能と、前記飛行体を遠隔操作する遠隔操作機能とを有する測量機とを備え、前記測量機は、前記遠隔操作機能により所望の座標に前記飛行体を移動させ、前記プリズム測量機能で前記プリズムを測距・測角し、前記測量機能の結果および前記第2のGPSから取得した位置情報により前記飛行体の座標を高精度に把握し、前記飛行体を前記所望の座標に高精度に合わせ、前記噴射装置により前記所望の座標にマーキングを行うよう構成した。
【0008】
この態様によれば、高精度に飛行体を所望の座標に合わせてマーキングを施すことが可能である。
【0009】
好ましくは、前記飛行体は、前記噴射装置の溶液噴射方向に光軸を有する撮像装置を備え、前記測量機に備えられた表示部には、前記撮像装置が取得した画像データが表示されるものとする。
【0010】
この態様によれば、作業者は遠隔地に居ながら飛行体周囲の状況や、噴射装置の標点を確認することができる。
【0011】
好ましくは、前記第1のGPSと、前記噴射装置と、前記プリズムとは鉛直の同一軸上となるように配置されているものとする。
【0012】
この態様によれば、第1のGPSから得られる位置情報と、プリズム測量から得られる位置情報と、射出装置の標点とが水平成分で一致し、位置情報を合わせることが容易となる。
【0013】
好ましくは、前記測量機はインターネットに接続可能であり、該測量機に備えられた表示部には、前記インターネットにより入手した地図データと共に、前記所望の座標、前記第1のGPSから取得した前記飛行体の位置情報、前記第2のGPSから取得した前記測量機の位置情報が表示されるものとする。
【0014】
この態様によれば、飛行体の位置や状況の把握でき、また飛行体の位置の微調整も容易になる。
【0015】
好ましくは、前記測量機は、入力された複数の前記所望の座標から前記飛行体の飛行プログラムを作成し、前記飛行体は前記飛行プログラムに従って順次前記所望の座標まで移動して、各前記所望の座標ごとに前記噴射装置によるマーキングを行うものとする。
【0016】
この態様によれば、飛行体を自動で複数の所望の場所を順次移動させマーキングを施すことができ、作業効率が向上する。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、UAVを用いた高精度なマーキングシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係る標点マーキングシステムを示す構成図である。
図2】同システムに備えられる飛行体の正面図である。
図3】同システムのブロック図である。
図4】表示部に表示される画像の例を示す図である。
図5】同システムの動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の測量機の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係る標点マーキングシステム1の構成図であり、図2は標点マーキングシステム1に備えられる飛行体2の正面図、図3は標点マーキングシステム1の制御系のブロック図である。
【0021】
標点マーキングシステム1は、飛行体2と測量機3で構成される。飛行体2は、例えばヘリコプタなどの自立飛行可能な無人飛行体(UAV:Unmanned Air Vehicle)である。飛行体2は入力された飛行計画(飛行プログラム)に従って自動操縦、または測量機3に備えられた遠隔操縦部43で手動操縦される。
【0022】
(飛行体2)
飛行体2は、IMU(慣性計測装置)5、プリズム9、噴射装置11、撮像装置13、飛行ユニット15、飛行体通信部16、飛行体記憶部17、飛行体演算制御部18、GPSユニット19を備える。
【0023】
IMU5は、飛行体2に内蔵されており、3軸ジャイロと3軸加速度センサを有し、飛行体2の3軸方向(ロール・ピッチ・ヨー)の角速度と加速度を取得する。IMU5は、飛行体2の姿勢を検出する姿勢検出装置として機能する。
【0024】
飛行ユニット15は、それぞれ同数で、4以上かつ偶数であるプロペラ6、プロペラフレーム7、プロペラモータ8、および着陸棒10から構成される。プロペラフレーム7は飛行体2から放射状に延出し、各プロペラフレーム7の先端にはプロペラモータ8が取り付けられている。プロペラモータ8の出力軸にはプロペラ6が取り付けられている。プロペラモータ8によりプロペラ6が回転し、飛行体2が飛行する様になっている。着陸棒10は、飛行体2の着陸時に接地して全体を支持する脚であり、プロペラフレーム7の先端から垂設されている。各着陸棒10の長さは、水平面に着陸した際、飛行体2が水平姿勢を維持するように調整されている。飛行ユニット15は、飛行体2の飛行装置および姿勢制御装置として機能する。
【0025】
噴射装置11は、着色されたマーキング用の溶液を先端のノズルから噴射し、標点にマーキングを行う。噴射装置11は、飛行体2が水平姿勢のときに溶液の噴射方向が鉛直下方向となるよう飛行体2の下部に固定されている。また、ノズル先端の高さは飛行体2が着地した状態で着地面より数cmの隙間を有するように固定されている。噴射装置11のノズルの先端を、飛行体2の基準点Oとする。飛行体2の座標はこの基準点Oの座標を指す。噴射装置11は標点マーキングシステム1のメイン装置であり、標点マーキングシステム1は噴射装置11を高精度に杭打ち点へ運ぶためのものである。
【0026】
プリズム9は、全方位から入射される光を再帰反射する光学特性を有している。測量機3のターゲットであり、プリズム9の光学中心(光学的な反射点)は噴射装置11の噴射方向と同一軸上となるように飛行体2の上部に固定されている。
【0027】
GPSユニット19は、噴射装置11の噴射方向と同一軸上となるように飛行体2の最上部に固定されており、GPS衛星から信号を受信し、UTC時刻・緯度・経度の位置データを取得する。取得された位置データは、飛行制御にリアルタイムに使用され、さらに後述の飛行体通信部16から測量機3へ送られる。
【0028】
噴射装置11の溶液噴射方向、GPSユニット19、プリズム9は全て同一軸(鉛直軸Z)上となるように設置されている。飛行体2が水平姿勢を維持した際の、GPSユニット19で取得した位置データ、測量機3でプリズム9を測距・測角して得た位置データ、および噴射装置11の標点が高さを除き一致するようになっている。各位置データを補正して合わせる作業が容易となる。
【0029】
撮像装置13は、噴射装置11の溶液の噴射方向の画像データ(動画含む)を取得するカメラであって、噴射装置11同様、飛行体2の下部に取付けられている。カメラの光軸は噴射装置11の噴射方向と平行である。撮像素子として、画素の集合体であるCCD、CMOSセンサなどが用いられ、各画素は撮像素子内での位置が特定できるようになっている。例えば、撮像装置13の光軸が通過する点を原点として光軸が通過する点を原点とする直交座標によって各画素の位置が特定される。
【0030】
飛行体通信部16は、測量機3の測量機通信部42との間で無線通信が可能なデータ送受信装置である。測量機3で飛行体2が手動操縦される場合に、測量機3の測量機通信部42からの操縦信号を受信し、その操縦信号を飛行体演算制御部18に入力する。自動操縦される場合には、飛行計画を受信し飛行体記憶部17に入力する。さらに、撮像装置13で撮像した画像データ、およびGPSユニット19で取得した位置データを、測量機通信部42に送信する。
【0031】
飛行体演算制御部18は、飛行体記憶部17に格納された所要のプログラムに基づき、飛行、画像データ習得、マーキング等、必要な制御を実施する。飛行体記憶部17には、自動操縦の場合には入力された飛行計画、手動操縦の場合には飛行体通信部16から受信した操縦信号、及びIMU5の検出結果に基づき、飛行に関する制御信号を演算し、飛行ユニット15(プロペラモータ8)に所要の状態に駆動するよう命令するプログラム、飛行体通信部16と測量機通信部42との間で撮像装置13の画像データの送信や命令の受信を行う通信プログラム、マーキング実施信号を受けて噴射装置11に溶液噴射を命令するプログラムが収納されている。
【0032】
飛行体2は、飛行計画に則り自動で杭打ち点を順次移動する。飛行体2の杭打ち点までの飛行は自動操縦で行われるが、飛行体2の着陸、杭打ち点との位置合わせのための微調整、およびマーキングは作業者が手動操縦で行う。手動操縦する場合は飛行体2から測量機3に操作信号を発信し、測量機3で手動操縦に切換える。手動操縦を終えた後、再度測量機3から自動操縦に切換える。
【0033】
まず作業者が自動操縦を開始させると、飛行体2は自動で離陸し最初の杭打ち点まで飛行し、到達するとその場でホバリングして水平姿勢を維持する。そこで作業者が手動に切り替えて、杭打ち点まで位置合わせを行い、飛行体2を着陸させ噴射装置11で杭打ち点にマーキングをする。作業者が、マーキングが正常に行われたことを確認し、自動操縦に切り替えると、飛行体2はそこから自動で離陸し、次にマーキングを施す杭打ち点まで飛行し、到着するとその場でホバリングする。これを全ての杭打ち点にマーキングを施すまで繰り返す。これにより飛行体2は所望の杭打ち点全てににマーキングを施すことができる。
【0034】
(測量機3)
次に地上に設置された測量機3を説明する。
【0035】
測量機3は、ターゲットを自動追尾可能なトータルステーションであり、水平回転する本体3aと、本体3aに鉛直回転可能に設けられた望遠鏡3bを有する。測量機3は、三脚で据え付けられている。本体3aには無線、又はケーブルによる有線により遠隔操縦部43が接続されている。
【0036】
測量機3は、水平角検出器32と、鉛直角検出器33と、水平回転駆動部34と、鉛直回転駆動部35と、操作部36と、表示部37と、GPSユニット31と、測量機記憶部38と、測距部39と、追尾部40と、測量機演算制御部41と、測量機通信部42と、遠隔操縦部43とを備える。
【0037】
水平回転駆動部34と、鉛直回転駆動部35は、モータであり、測量機演算制御部41に制御されて、それぞれ水平回転軸と鉛直回転軸を駆動する。
【0038】
表示部37と操作部36は、測量機3のインターフェースである。操作部36では各種の動作指示の入力が、表示部37では指令・設定や作業状況及び操作結果の確認が、それぞれ可能である。
【0039】
本実施形態では、飛行体2のインターフェースは、表示部37、操作部36、および遠隔操縦部43であり、表示部37と操作部36は、飛行体2のインターフェースも兼ねている。操作部36では飛行体2への自動操縦での飛行計画など指令の入力が、表示部37では飛行体2への指令・設定や飛行体2から送信されたデータ確認が、それぞれ可能である。
【0040】
遠隔操縦部43は、飛行体2を手動操縦する際に使用し、飛行体2の飛行、噴射装置11、撮像装置13の操作が可能である。本実施形態では操縦部43は作業者が操作し易いよう別体で構成されるが、本体3aと一体化して構成されても好ましい。
【0041】
GPSユニット31は、測量機3の上部に固定されており、GPSユニット19同様、GPS衛星から信号を受信し、測量機3の設置点の位置データを取得する。

水平角検出器32と、鉛直角検出器33は、アブソリュートエンコーダまたはインクリメンタルエンコーダである。水平角検出器32は、水平回転軸に対して設けられ、本体3aの水平方向の回転角を検出する。鉛直角検出器33は、鉛直回転軸に対して設けられ、望遠鏡3bの鉛直方向の回転角を検出する。検出結果は、測量機演算制御部41に入力される。
【0042】
追尾部40は、測距光とは異なる波長の赤外レーザ等を追尾光として検出する追尾送光系と、CCDセンサ又はCMOSセンサ等のイメージセンサを有する追尾受光系を有する。追尾部40は、追尾光を含む風景画像と追尾光を除いた風景画像を取得し、両画像を測量機演算制御部41に送る。測量機演算制御部41は、両画像の差分からターゲット像の中心を求め、ターゲット像の中心と望遠鏡3bの視軸中心からの隔たりが一定値内に収まる位置をターゲットの位置として検出し、常に望遠鏡3bがターゲットの方向を向くように、自動追尾する。
【0043】
測距部39は、赤外レーザ等の測距光をターゲットに出射する測距送光系と、フォトダイオード等で反射測距光を受光する測距受光系を有する。測距部39は、ターゲットからの反射測距光を測距受光系で受光するとともに、測距光の一部を分割して内部参照光として受光し、反射測距光と内部参照光との位相差に基づきターゲットまでの距離を測定する。また、水平角検出器32と鉛直角検出器の値から、ターゲットを測角する。
【0044】
測量機演算制御部41は、例えばCPU、ROM、RAM等を集積回路に実走したマイクロコントローラであり、回転駆動部34、35の制御、測距部39および追尾部28の制御、測量機通信部42や表示部37への命令の実行等、測量機3全体を制御する。測量機記憶部38には、上記演算処理のための各種プログラムが格納されている。プログラムには、飛行体2の飛行の制御や飛行計画の作成を行う飛行制御プログラムも含まれる。
【0045】
測量機通信部42は、無線通信でのデータ送受信装置であり、測量機演算制御部41の制御下で飛行体通信部16からの画像データやGPSユニット19の位置データ等の受信と命令の送信が可能である。受信した撮像データは、表示部37に表示される。
【0046】
測量機3はインターネットに接続可能であり、インターネット経由で地図データを入手し、測量機記憶部38に格納する。インターネット経由で入手した杭打ち点を含む設計図データも測量機記憶部38に格納される。測量機演算制御部41は、地図データに設計図データを参照して、杭打ち点の座標(グローバル座標)を算出し、これを基に飛行体2の飛行計画を作成する。飛行計画は各通信部を通して飛行体記憶部17に格納される。
【0047】
測量機3は飛行体2の地上基地であり、高精度な位置特定装置としての役割も有する。飛行体2の位置データは備えられたGPSユニット19からも取得できるが、プリズム9を測距・測角することで、より精密な位置データを取得することができる。GPSユニット19の位置データは主に飛行体2の飛行のために使用され、マーキングには測距・測角による高精度な位置データが使用される。
【0048】
具体的には、飛行体2が飛行している間、追尾部30で飛行体2を追尾させる。飛行体2は目的の杭打ち点に到達すると水平姿勢を維持したままホバリングする。ホバリングした状態で、測量機3によるプリズム9の測距・測角を行い、高精度なプリズム9の位置データを取得する。GPS31で取得した測量機3の座標およびこの位置データから、飛行体2の精密な座標(グローバル座標)を算出する。後述の表示部35に表示される3軸の数値や画像により、精密な飛行体2の座標を基に飛行体2の位置を微調整して、マーキングしたい杭打ち点に合わせ、飛行体2の着地点を確認しながら着陸させる。着陸させてから噴射装置11を使用することにより、安定した姿勢でマーキングを施すことができる。これにより、所望の位置に高精度なマーキングが可能となる。
【0049】
(表示部37の表示画面)
図4は、表示部37の表示結果の一例である。図4(A)は杭打ちのためのマーキングを施す作業現場の平面図である。測量機3は、自身周辺の地図データ、および設計図データをインターネット経由で入手し、設計図の基点や杭打ち点をグローバル座標に換算して両者を融合させ同時に表示する。平面図には、杭打ち点の座標P、P・・・、測量機3の座標PTS、飛行体2の座標PUAVが一緒に表示される。測量機3の座標PTSおよび飛行体2の座標PUAVは各GPSユニットから入手され、地図データ上にリアルタイムに表示される。
【0050】
図4(B)は図4(A)の画像を飛行体2の座標PUAV中心に表示したものであり、杭打ち点の座標P、P・・・のうち、次にマーキングを施す予定の目的座標Pが表示される。飛行体2の座標PUAVと目的座標Pとの差分(x方向、y方向、z方向、および水平距離Dxy)が数値として右側に表示される。目的座標Pまでの距離を、左側の画像から直感的に、右側の数値から具体的に把握できる。画面を確認しながら、飛行体2の座標PUAVと目標座標Pを合わせるための飛行体2の位置の微調整を行うことが可能である。
【0051】
図4(C)は、撮像装置13で撮像した画像データを噴射装置11の標点が画像の中心となるようシフト補正したものである。噴射装置11の標点が画面の中心として表示部37に表示され、目的座標Pも一緒に表示される。作業者は、飛行体2の飛行時の飛行体2の下方の状況や、着陸、および噴射装置11使用の際に地表の状態をリアルタイムに確認することが可能である。
【0052】
図4(A)~図4(C)はそれぞれ切替え可能である。
【0053】
(動作フロー)
次に、図5を参照して、標点マーキングシステム1の動作フローを説明する。
【0054】
まず、ステップS101で、作業場所に測量機3が設置され、GPSユニット31によって測量機3は自身の設置された座標PTS(グローバル座標)を取得する。さらに測量機3は、インターネット経由で座標PTS周辺の地図データを取得する。
【0055】
次に、ステップS102で、測量機3は、インターネット経由で、杭打ち点を含む設計図データを取得し、地図データと参照して、マーキングを施す杭打ち点の座標P、P…(グローバル座標)を算出する。
【0056】
次に、ステップS103で、作業者は杭打ち点でマーキングを施す順番を操作部36で指定する。測量機演算制御部41は、指定された順番に沿って飛行する飛行計画を作成し、各送信部を通して飛行体2に送信する。
【0057】
次に、ステップS104で、飛行計画に基づいて、最初の杭打ち点の座標が飛行体2の飛行の目的座標Pに設定される。
【0058】
次に、ステップS105で、作業者が自動運転を開始させると、飛行体2は自動で離陸し、目的座標Pまで飛行する。測量機3は、プリズム9を自動視準し、追尾部40が追尾する。飛行体2が目的座標Pまで到着するとホバリングしてその場で水平姿勢を維持する。表示部37には、地図データと共に飛行体2の現在の座標PUAVが表示される(図4(A)参照)。
【0059】
次に、ステップS106で、測量機3はプリズム9の測距・測角を行い、飛行体2の高精度な座標PUAVを取得する。この際、表示部37には、飛行体2の座標PUAVと目的座標Pが表示される(図4(B)参照)。
【0060】
次に、ステップS107で現在の飛行体2の座標PUAVと目的座標Pから二点の水平距離Dxyを算出する。この水平距離Dxyが10mm以内であれば、ステップS108に、10mm未満であれば、ステップS109へ進む。
【0061】
ステップS108で、飛行体2の座標PUAVを目的座標Pに近づけるため、作業者は手動で飛行体2を操作し水平方向に移動させ、微調整を行う。これが終了すると、ステップS105へ戻る。ステップS106~S108を水平距離Dxyが10mm以下となるまで繰り返す。
【0062】
ステップS109で、作業者は表示部37に撮像装置13からの画像データを表示させて(図4(C)参照)、高さ方向や着地点の様子を確認しながら飛行体2を現地点に着陸させる。噴射装置11でマーキング用の溶液を噴射させマーキングを行う。
【0063】
次に、ステップS110で、次のマーキングを施す杭打ち点があれば、ステップS111へ進み、無ければステップS112へ進む。
【0064】
ステップS111で、次の杭打ち点の座標が、目的座標Pに設定され、ステップ105に移動する。
【0065】
ステップS112で、飛行体2が自動操縦で最初に離陸したスタート地点へ戻ると、動作を終了する。
【0066】
上記動作により、飛行計画に基づき、飛行体2は杭打ち点に順次移動し、マーキングを施す。表示部37には飛行体2の現在位置が表示され、また表示の画像は随時撮像装置13で撮像した画像データにも切りかえ可能であり、作業者は飛行体2や着陸地点の様子を遠隔地から確認することができる。
【0067】
マーキング地点を安定させるため、基本的に着陸してからマーキングを行うが、着地点の状況によってはホバリングしたままマーキングを行ってもよい。
【0068】
(作用効果)
本実施形態によれば、プリズム9を測量機3で測距・測角することにより、飛行体2の座標を高精度に把握し微調整を行い、飛行体2を杭打ち点に合わせることで、飛行体2により杭打ち点に精度良くマーキングを行うことが可能である。また複数の杭打ち点への連続マーキングも可能である。
【0069】
従来は飛行体に搭載されたGPSユニットにより位置座標確認を行っていたため、飛行体の位置精度は数cm~1m程度であった。測量機3で飛行体2を測量することで、位置座標の精度を大幅に向上させた。
【0070】
通常は目標点まで作業者が赴いて、測量機で測量しながら目標点へマーキングして杭打ちをしなければならないが、作業者は測量機3前から移動する必要がなく、大幅に杭打ちの作業効率が向上した。
【0071】
表示部37でリアルタイムに飛行体2周囲の状況、位置を把握でき、ユーザーフレンドリーである。また噴射装置11のマーキング時の状態も確認でき、安全性も高い。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて変形させることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 標点マーキングシステム
2 飛行体
3 測量機
9 プリズム
11 噴射装置
13 撮像装置
15 飛行ユニット
19 GPSユニット
31 GPSユニット
37 表示部
39 測距部
41 測量機演算制御部
43 遠隔操縦部
、P… 杭打ち点座標
目標座標
UAV 飛行体2の座標
TS 測量機3の座標
図1
図2
図3
図4
図5