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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】通信装置及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20220628BHJP
   H04W 40/02 20090101ALI20220628BHJP
   H04W 4/00 20180101ALI20220628BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20220628BHJP
   H04H 20/59 20080101ALI20220628BHJP
【FI】
G08B27/00 C
H04W40/02 110
H04W4/00 110
G08B21/10
H04H20/59
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018059752
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019174932
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000102728
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100208410
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 寛司
(72)【発明者】
【氏名】山口 智孝
(72)【発明者】
【氏名】内山 武明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 暁
(72)【発明者】
【氏名】関屋 宏光
【審査官】西巻 正臣
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178521(JP,A)
【文献】再公表特許第03/015445(JP,A1)
【文献】特開2014-233010(JP,A)
【文献】特開2007-087287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B19/00-31/00
H04B7/24-7/26
H04H20/00-20/46
20/51-20/86
20/91-40/27
40/90-60/98
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話網を利用し携帯基地局を介して通信を行う第1の無線通信方式にて公的機関から送信された防災情報と、前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式にて他の通信装置から送信された防災情報と、を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した前記防災情報にて示される内容を過去に受信したか否か判定する唯一性判定手段と、
前記唯一性判定手段により過去に受信していないと判定したときに、前記防災情報を前記第2の無線通信方式を用いて前記他の通信装置に送信する送信手段と、
を備え
前記送信手段は、前記防災情報に含まれる文字列のうち予め定められた防災に関する文字列を符号化し、前記符号化した前記防災情報を送信し、
前記受信手段は、前記第2の無線通信方式にて前記他の通信装置から前記符号化した前記防災情報を受信し、前記符号化した前記防災情報を復号化して前記符号化がされる前の前記防災情報を復元する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記唯一性判定手段は、前記受信手段で受信した前記防災情報が前記第2の無線通信方式にて前記他の通信装置から送信された前記防災情報である場合、前記受信手段で受信するまでに経由した前記他の通信装置の数が閾値以下であるか否かをさらに判定し、
前記送信手段は、経由した前記他の通信装置の数が閾値以下であると前記唯一性判定手段が判定したときに、前記防災情報を前記第2の無線通信方式を用いて前記他の通信装置に送信する、
請求項に記載の通信装置。
【請求項3】
前記送信手段は、経由した通信装置の数を示すホップ数を付与して前記防災情報を送信する、
請求項に記載の通信装置。
【請求項4】
前記唯一性判定手段は、前記経由した前記他の通信装置の数が、前記防災情報にて示される内容の重要度に応じて異なる値となる前記閾値以下であるか否かを判定する、
請求項またはに記載の通信装置。
【請求項5】
前記送信手段は、前記防災情報にて示される内容の重要度に応じて、前記防災情報を繰り返し送信する、
請求項1からのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
携帯電話網を利用し携帯基地局を介して通信を行う第1の無線通信方式にて公的機関から送信された防災情報または前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式にて他の通信装置から送信された防災情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信した前記防災情報にて示される内容を過去に受信したか否か判定する唯一性判定ステップと、
前記唯一性判定ステップにおいて過去に受信していないと判定したときに、前記防災情報を前記第2の無線通信方式を用いて送信する送信ステップと、
を備え
前記送信ステップでは、前記防災情報に含まれる文字列のうち予め定められた防災に関する文字列を符号化し、前記符号化した前記防災情報を送信し、
前記受信ステップでは、前記第2の無線通信方式にて前記他の通信装置から前記符号化した前記防災情報を受信し、前記符号化した前記防災情報を復号化して前記符号化がされる前の前記防災情報を復元する、
ことを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の技術分野において、LPWA(Low Power Wide Area)による無線通信が提案されている。LPWAによる無線通信は、伝送速度は遅いものの、広範囲、高ノイズ耐性、低消費電力、低コストであるという特性を有する。
【0003】
例えば、非特許文献1には、LoRa(登録商標)変調を採用したLPWAによる無線通信技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「LoRaWAN What is it? A technical overview of LoRa and LoRaWAN」、[online]、(2015年11月)、LoRa Alliance、[2018年3月7日検索]、インターネット< URL:https://docs.wixstatic.com/ugd/eccc1a_ed71ea1cd969417493c74e4a13c55685.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなLPWAによる無線通信技術は、様々な分野おいて利用が期待される。例えば、LPWAによる無線通信を利用して、防災情報を広範囲に送信する防災無線システムを低コストで実現することが考えられる。
【0006】
しかし、このような防災無線システムにおいては、複数の通信装置が同一内容の防災情報を複数回受信し得るため、同一内容の防災情報を複数回送信することで同一内容の防災情報が錯綜してしまうおそれがある。そのため、防災情報を好適に送受信するという観点からすると不十分である。
【0007】
本発明の目的は、上記の事情に鑑み、防災情報を好適に送受信することができる通信装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る通信装置は、
携帯電話網を利用し携帯基地局を介して通信を行う第1の無線通信方式にて公的機関から送信された防災情報と、前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式にて他の通信装置から送信された防災情報と、を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した前記防災情報にて示される内容を過去に受信したか否か判定する唯一性判定手段と、
前記唯一性判定手段により過去に受信していないと判定したときに、前記防災情報を前記第2の無線通信方式を用いて前記他の通信装置に送信する送信手段と、
を備え
前記送信手段は、前記防災情報に含まれる文字列のうち予め定められた防災に関する文字列を符号化し、前記符号化した前記防災情報を送信し、
前記受信手段は、前記第2の無線通信方式にて前記他の通信装置から前記符号化した前記防災情報を受信し、前記符号化した前記防災情報を復号化して前記符号化がされる前の前記防災情報を復元する、
ことを特徴とする。
【0010】
前記唯一性判定手段は、前記受信手段で受信した前記防災情報が前記第2の無線通信方式にて前記他の通信装置から送信された前記防災情報である場合、前記受信手段で受信するまでに経由した前記他の通信装置の数が閾値以下であるか否かをさらに判定し、
前記送信手段は、経由した前記他の通信装置の数が閾値以下であると前記唯一性判定手段が判定したときに、前記防災情報を前記第2の無線通信方式を用いて前記他の通信装置に送信する、
ようにしてもよい。
【0011】
前記送信手段は、経由した通信装置の数を示すホップ数を付与して前記防災情報を送信する、
ようにしてもよい。
【0012】
前記唯一性判定手段は、前記経由した前記他の通信装置の数が、前記防災情報にて示される内容の重要度に応じて異なる値となる前記閾値以下であるか否かを判定する、
ようにしてもよい。
【0013】
前記送信手段は、前記防災情報にて示される内容の重要度に応じて、前記防災情報を繰り返し送信する、
ようにしてもよい。
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る通信方法は、
携帯電話網を利用し携帯基地局を介して通信を行う第1の無線通信方式にて公的機関から送信された防災情報または前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式にて他の通信装置から送信された防災情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信した前記防災情報にて示される内容を過去に受信したか否か判定する唯一性判定ステップと、
前記唯一性判定ステップにおいて過去に受信していないと判定したときに、前記防災情報を前記第2の無線通信方式を用いて送信する送信ステップと、
を備え
前記送信ステップでは、前記防災情報に含まれる文字列のうち予め定められた防災に関する文字列を符号化し、前記符号化した前記防災情報を送信し、
前記受信ステップでは、前記第2の無線通信方式にて前記他の通信装置から前記符号化した前記防災情報を受信し、前記符号化した前記防災情報を復号化して前記符号化がされる前の前記防災情報を復元する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、防災情報を好適に送受信できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る防災通信システムを示す構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係る放送装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る重要局放送装置の機能的構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施の形態に係る放送装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る放送装置の記憶部に格納される情報の一例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る放送装置が防災情報を受信した場合における動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態に係る放送装置による唯一性判定の動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態に係る放送装置によるデータ加工の動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の変形例に係る防災通信システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態)
以下、図面を参照しながら、本発明に係る通信装置を防災通信システムに適用した実施の形態について説明する。各図面においては、同一又は同等の部分には同一の符号を付す
【0018】
(防災通信システムの概要)
図1を参照しながら、本発明に係る通信装置を防災通信システム1に適用した実施の形態ついて説明する。防災通信システム1は、公的機関2と、センタ装置3と、キャリアゲートウェイ4と、基地局5と、放送装置10と、重要局放送装置11と、を備える。なお、放送装置10及び重要局放送装置11をまとめて「放送装置10等」と称することがある。放送装置10等は、本発明に係る通信装置の一例である。
【0019】
なお、図1には基地局5が1つのみ図示されているが、基地局5が複数あってもよい。また、放送装置10等の数も、図1に図示された数には限られない。
【0020】
防災通信システム1は、公的機関2が発報した防災情報を住民20に報知するためのシステムである。防災通信システム1によれば、公的機関2が発報した防災情報を、携帯電話用通信システムを利用した通信とLPWAによる無線通信とを利用して各放送装置10等に送信することができ、防災情報を受信した各放送装置10によって、防災情報の内容を音声にて住民20に報知することができる。また、防災通信システム1においては、携帯電話網NWの輻輳、基地局5の故障などを原因として携帯電話用通信システムに異常が生じた場合にも防災情報を報知可能とするために、バックアップ用有線回線による有線通信も利用される。
【0021】
なお、防災情報とは、例えば、災害に関する情報、武力攻撃に関する情報など、住民20の安全に関わる情報である。このような情報の例として、「15時13分 ○○県東部にて震度4」というような災害の内容を示す情報、「7時22分 ミサイルが発射」というような武力攻撃の内容を示す情報が挙げられる。
【0022】
また、防災通信システム1で利用されるLPWAによる無線通信として、例えばLoRa(登録商標)変調を利用した方式が採用可能である。当該方式において、周波数帯を920MHz帯、伝送速度を300bps程度とすると好適である。また、ネットワーク設計の簡素化のため、防災通信システム1において、放送装置10等は共通で1つのチャネルを使用してLPWAによる無線通信を行うものとする。なお、上記以外の方式としては、例えばSIGFOX(登録商標)による無線通信方式も採用可能である。
【0023】
(防災情報の伝達の流れ)
理解を容易にするため、防災通信システム1による防災情報の伝達の流れについて説明する。なお、図1に示す実線矢印は有線通信を表し、破線矢印は携帯電話用の無線通信を表し、一点鎖線矢印はLPWAによる無線通信を表し、太点線矢印は音声による報知を表す。
【0024】
(1)公的機関2は、発報した防災情報をセンタ装置3及びキャリアゲートウェイ4に送信する。
【0025】
(2)センタ装置3は、公的機関2から受信した防災情報を、パケット通信網経由で基地局5に送信する。また、センタ装置3は、受信した防災情報を、バックアップ用有線回線経由で重要局放送装置11に送信する。
【0026】
(3)キャリアゲートウェイ4は、公的機関2から受信した防災情報を、緊急速報メール網経由で基地局5に送信する。なお、上記の(2)と(3)は並行して行われる。
【0027】
(4)基地局5は、センタ装置3から受信した防災情報及びキャリアゲートウェイ4から受信した防災情報のいずれも、携帯電話用の無線通信によって放送装置10等に送信する。したがって、基地局5は、同一内容の防災情報を二度送信しうる。
【0028】
(5)放送装置10等は、基地局5から受信した防災情報を、LPWAによる無線通信により他の放送装置10等に送信する。また、放送装置10等は、受信した防災情報が示す内容を音声により住民20に報知する。
【0029】
(6)放送装置10等は、他の放送装置10等から受信した防災情報を、LPWAによる無線通信により他の放送装置10等に送信する。また、放送装置10等は、受信した防災情報が示す内容を音声により住民20に報知する。なお、上記の(5)と(6)は並行して行われる。
【0030】
(7)重要局放送装置11は、センタ装置3から受信した防災情報を、LPWAによる無線通信により他の放送装置10等に送信する。また、放送装置10等は、受信した防災情報が示す内容を音声により住民20に報知する。なお、上記の(7)は(5)及び(6)と並行して行われる。
【0031】
以上のような防災情報の伝達により、災害等に強い防災通信システムが実現できる。例えば災害を原因として一部の基地局5に異常が生じた場合にも、正常な基地局5から防災情報を受信した放送装置10等が、LPWAによる無線通信により防災情報を他の放送装置10等に送信できる。また、災害あるいは輻輳を原因として携帯電話網による通信そのものがダウンしてしまった場合にも、センタ装置3から防災情報を受信した重要局放送装置11が、LPWAによる無線通信により防災情報を他の放送装置10等に送信できる。
【0032】
上述のいずれの例の場合においても、LPWAによる無線通信により防災情報を受信した放送装置10等は、LPWAによる無線通信により他の放送装置10等に防災情報を送信することとなる。したがって、連鎖的に多数の放送装置10等に防災情報を伝達できる。
【0033】
なお、上記(5)から(7)において、放送装置10等は、同一内容の防災情報を複数回受信しうる。同一内容の防災情報を複数回受信した場合にも送信を行うと、防災情報の錯綜を招きうる。したがって、放送装置10等は、過去に受信した防災情報と同一内容の防災情報を受信した場合には、送信及び報知を行わない。
【0034】
(防災情報に含まれるデータ)
防災情報には、最低限、防災情報の内容を表すテキストデータが含まれている。テキストデータは、例えば、「15時13分 ○○県東部にて震度4」、「7時22分 ミサイルが発射」など文字列で防災情報の内容を表したデータである。
【0035】
また、センタ装置3が防災情報を送信する場合、防災情報は、テキストデータのみではなく、タイムスタンプ及び通し番号を含むものとなる。タイムスタンプ及び通し番号については後述する。
【0036】
また、放送装置10等がLPWAによる無線通信により防災情報を送信する場合、防災情報は、テキストデータのみではなく、ホップ数を含むものとなる。ホップ数については後述する。また、詳細は後述するが、この場合、防災情報は、タイムスタンプ及び通し番号を含む場合もあれば含まない場合もある。
【0037】
(各構成の概要)
以下、防災通信システム1の各構成の概要について説明する。
【0038】
公的機関2は、例えば気象庁、消防庁、地方自治体などである。公的機関2は、防災情報を発報し、キャリアゲートウェイ4及びセンタ装置3に送信する。防災情報の発報は、例えば、全国各所に設置された震度センサが一定以上の値を示した際、ミサイル発射検知システムがミサイルの発射を検知した際などに自動で行われる。あるいは、公的機関2の職員の人手により行われる。
【0039】
センタ装置3は、例えば防災通信システム1の管理者が所有する装置である。センタ装置3は、公的機関2から防災情報を受信する。センタ装置3は、パケット通信網経由で防災情報を基地局5に送信する。センタ装置3は、バックアップ用有線回線経由で防災情報を重要局放送装置11に送信する。センタ装置3は、防災情報を送信する際に、送信時間を示すタイムスタンプと、公的機関から送信された防災情報ごとに固有の番号である通し番号とを付与する。タイムスタンプ及び通し番号は、後述の唯一性の判定の際に使用される。
【0040】
キャリアゲートウェイ4は、例えば携帯電話キャリアが所有する装置である。キャリアゲートウェイ4は、公的機関2から防災情報を受信する。キャリアゲートウェイ4は、緊急速報メール網経由で防災情報を基地局5に送信する。キャリアゲートウェイ4は、センタ装置3とは異なり、防災情報を送信する際にタイムスタンプ及び通し番号の付与を行わない。緊急速報メール網は、地震速報等の防災情報を、輻輳を抑えつつ送信するための通信網であり、例えばエリアメール(登録商標)網である。
【0041】
基地局5は、例えば携帯電話キャリアが屋外に設置する携帯電話用基地局である。基地局5は、携帯電話網NWを経由して公的機関2から送信された防災情報を受信する。基地局5は、受信した防災情報を、携帯電話用の無線通信により、放送装置10及び重要局放送装置11に送信する。後述するように、防災情報は、緊急速報メール網及びパケット通信網のいずれからも経由して送信されうる。そのため、基地局5は、同一内容の防災情報を二度受信しうる。この場合、基地局5は同一内容の防災情報を二度送信することとなる。
【0042】
放送装置10は、例えば屋外に設置された防災柱に設けられた装置である。なお、防災柱全体が放送装置10であってもよい。放送装置10は、携帯電話用の無線通信によって基地局5から送信された防災情報を受信する。また、放送装置10は、他の放送装置10(重要局放送装置11も含む)からLPWAによる無線通信によって送信された防災情報を受信する。すなわち、放送装置10は、携帯電話用の無線通信、LPWAによる無線通信といった2種類の無線通信方式により受信することが可能である。放送装置10は、携帯電話用の無線通信およびLPWAによる無線通信のいずれかの無線通信により受信した防災情報を、LPWAによる無線通信によって他の放送装置10等に送信する。なお、この場合には、送信先である他の放送装置10等を特段指定せずに送信する。これにより、特定の放送装置10のみならず、複数の放送装置10に対して防災情報を送信する。さらに、放送装置10は、受信した防災情報を、音声によって出力することで住民に防災情報の内容を報知する。この実施の形態における放送装置10は、同一内容の防災情報を既に受信している場合には、当該防災情報の送信及び報知を行わない。同一内容の防災情報を再度送信あるいは報知すると、同一内容の防災情報の錯綜を招くからである。なお、放送装置10は、数百m程度の間隔で設置されていることが好ましく、各放送装置10の離間距離については予め定められていてもよい。放送装置10の機能的構成については後述する。
【0043】
重要局放送装置11は、バックアップ用有線回線によってセンタ装置3と接続されている他は、放送装置10と同様である。重要局放送装置11は、放送装置10が受信する防災情報に加え、バックアップ用有線回線経由でセンタ装置3から送信された防災情報を、さらに受信することが可能となっている。これにより、重要局放送装置11は、基地局5が災害等により機能停止となっても、バックアップ用有線回線経由で防災情報を受信することができ、LPWAによる無線通信によって他の放送装置10等に防災情報を送信できる。重要局放送装置11の機能的構成については後述する。
【0044】
(放送装置等の機能的構成)
図2を参照しながら、放送装置10の機能的構成について説明する。放送装置10は、受信部100と、制御部110と、記憶部120と、送信部130と、音声出力部140と、を備える。
【0045】
受信部100は、防災情報を受信する。受信部100は、受信した防災情報を制御部110に出力する。受信部100は、第1受信部101と、第2受信部102と、を備える。
【0046】
受信部100は、第1受信部101により、携帯電話用の無線通信により送信された防災情報を受信する。つまり、基地局5から送信された防災情報を受信する。
【0047】
受信部100は、第2受信部102により、LPWAによる無線通信により送信された防災情報を受信する。つまり、他の放送装置10や重要局放送装置11(他の放送装置10等という)から送信された防災情報を受信する。
【0048】
詳細は後述するが、他の放送装置10等から受信した防災情報は、符号化及びフレーム分割の適用により加工がなされた防災情報である。一方、基地局5から受信した防災情報には上記の加工がなされていない。これらを区別するために、上記の加工がなされた防災情報を「防災情報(加工済み)」とし、上記の加工がなされていない防災情報を「防災情報(未加工)」と記載する。第1受信部101は防災情報(未加工)を受信し、第2受信部102は防災情報(加工済み)を受信する、といえる。なお、防災情報(加工済み)に対してフレーム結合及び復号化を適用することにより、防災情報(未加工)を復元することができる。
【0049】
制御部110は、受信部100が受信した防災情報に基づいて、防災情報の送信、報知に必要な処理を実行する。制御部110は、データ復元部111と、唯一性判定部112と、データ加工部113と、を備える。
【0050】
制御部110は、受信部100から防災情報を取得する。詳細は後述するが、取得した防災情報が、第2受信部102が受信したものである場合、当該防災情報は加工済みである。そのため、この場合、制御部110は、データ復元部111により、防災情報(加工済み)に対してフレーム結合及び復号化を適用し、防災情報(未加工)を復元する。一方、取得した防災情報が、第1受信部101が受信したものである場合、当該防災情報をそのまま防災情報(未加工)として扱う。
【0051】
制御部110は、唯一性判定部112により、防災情報(未加工)が示す内容と同一内容の防災情報を過去に受信したか否かを判定する。これは、受信した防災情報が示す内容に唯一性があるか否かを判定することに相当する。具体的には、唯一性判定部112は、防災情報(未加工)に含まれるテキストデータの内容と、記憶部120に格納された情報に含まれるテキストデータの内容(例えば図5に示す「15時15分 ○○県南部で震度3」といった内容)とを比較したり、防災情報(未加工)に含まれるタイムスタンプ及び通し番号と、記憶部120に格納された情報に含まれるタイムスタンプ及び通し番号とを比較して、それらが一致するか否かにより、受信した防災情報が示す内容の唯一性を判定する。記憶部120に格納される情報については後述する。以下、唯一性の判定について、単に「唯一性があると判定したとき」などと記載する。
【0052】
制御部110は、唯一性があると判定したとき、防災情報(未加工)に含まれるテキストデータを、当該処理の実行日時と紐付けて記憶部120に格納する。また、防災情報(未加工)にタイムスタンプ、通し番号が含まれる場合はこれらも合わせて格納する。以下、上記の情報を格納することを単に「防災情報を格納する」と表現する。記憶部120に格納される情報は、例えば図5に示すようなものとなる。
【0053】
制御部110は、唯一性があると判定したとき、データ加工部113によって、防災情報(未加工)に対して、ホップ数の付与/増加と、符号化と、フレーム分割とを適用する。まず、データ加工部113は、防災情報(未加工)に対してホップ数の付与/増加を行う。ホップ数の付与/増加については後述する。データ加工部113は、ホップ数の付与/増加後の防災情報(未加工)に含まれるテキストデータを符号化し、さらに複数のフレームに分割することにより防災情報(加工済み)を作成する。制御部110は、防災情報(加工済み)を防災情報として送信部130に出力する。なお、詳細は後述するが、ホップ数とは、防災情報の送信の際に経由した放送装置10等の数である。
【0054】
制御部110は、唯一性があると判定したとき、防災情報(未加工)に含まれるテキストデータに基づいて音声データを作成して音声出力部140に出力する。音声データは、例えば、当該テキストデータを合成音声にて読み上げた音声のデータであればよい。
【0055】
記憶部120には、前述のとおり、図5に示すような情報が格納される。タイムスタンプ及び通し番号が含まれている情報と含まれていない情報の両方があるのは、パケットメール網経由で送信された防災情報にはタイムスタンプ及び通し番号が含まれている一方、緊急速報メール網経由で送信された防災情報にはこれらが含まれていないからである。
【0056】
送信部130は、唯一性があると判定されて制御部110から取得した防災情報(加工済み)を防災情報として、LPWAによる無線通信により搬送波に重畳して送信する。この送信は、相手方を特定しない送信である。したがって、当該搬送波を受信した放送装置10等は全て、当該搬送波に重畳された防災情報を受信することができる。制御部110は、唯一性があると判定したときのみ防災情報(加工済み)を送信部130に出力する。したがって、送信部130は、唯一性があると判定されたときのみ防災情報の送信を行うこととなる。
【0057】
また、送信部130は、当該防災情報を複数回繰り返し送信することが好ましい。この理由を以下に述べる。上述のとおり、放送装置10等によるLPWAの無線通信では、1つのチャネルが共通して使用されるため、複数の放送装置10が同時に防災情報を送信すると、無線信号が干渉してしまう。したがって、1回の送信では防災情報を正常に送信できていない可能性がある。そのため、複数回送信することによって、防災情報を送信できる可能性を高くする。ここで、一度送信してから再び送信するまでのタイミングは、ある程度ランダムであることが好ましい。このタイミングが一定だと、干渉が発生した場合に再び同時に放送装置10等から無線信号が発せられ、再び干渉が発生してしまう可能性が高いからである。繰り返し送信する回数は、例えば3回である。
【0058】
なお、この場合、他の放送装置10が、同一の放送装置10から同一内容の防災情報を複数回受信しうる。しかし、上述の通り、放送装置10は、同一内容の防災情報を既に受信している場合には、送信及び報知を行わない。そのため、同一の放送装置10から同一内容の防災情報を複数回受信しても問題は生じない。
【0059】
音声出力部140は、唯一性があると判定されて制御部110から取得した合成音声データが表す音声を発する。音声出力部140は、音声を発することにより防災情報を住民に報知する。制御部110は、唯一性があると判定されたときのみ当該合成音声データを音声出力部140に出力する。したがって、音声出力部140は、同一内容の防災情報を複数回報知することがない。
【0060】
以上、放送装置10の機能的構成について説明した。次に、重要局放送装置11の機能的構成について、図3を参照しながら、放送装置10との相違点に着目して説明する。重要局放送装置11は、受信部100Aが第3受信部103Aを備える点が放送装置10と異なる点である。第3受信部103Aは、バックアップ用有線回線経由でセンタ装置3から防災情報を受信する。そして、受信部100Aは、第3受信部103Aが防災情報を受信した場合には、当該防災情報を制御部110に出力する。その他の機能的構成については、放送装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
(放送装置等のハードウェア構成)
放送装置10のハードウェア構成の一例について、図4を参照しながら説明する。図4に示す放送装置10は、マイクロコントローラなどのコンピュータによって実現される。なお、図示する例では、理解を容易にするため、放送装置10に接続される周辺機器(携帯電話モデム装置1101、LPWAモデム装置1102及びスピーカ1200)についても示している。
【0062】
放送装置10は、バスBLを介して互いに接続された、プロセッサ1001と、メモリ1002と、インタフェース1003と、二次記憶装置1004と、を備える。また、インタフェース1003には、携帯電話モデム装置1101、LPWAモデム装置1102及びスピーカ1200が接続されている。
【0063】
プロセッサ1001は、例えばCPU(Central Processing Unit: 中央演算装置)である。プロセッサ1001が、二次記憶装置1004に記憶された専用プログラムをメモリ1002に読み込んで実行することにより、放送装置10の各機能が実現される。
【0064】
メモリ1002は、例えば、RAM(Random Access Memory)により構成される主記憶装置である。メモリ1002は、プロセッサ1001が二次記憶装置1004から読み込んだ専用プログラムを記憶する。また、メモリ1002は、プロセッサ1001が専用プログラムを実行する際のワークメモリとして機能する。
【0065】
インタフェース1003は、例えばシリアルポート、USB(Universal Serial Bus)ポートなどのI/O(Input/Output)ポートである。インタフェース1003には、携帯電話モデム装置1101、LPWAモデム装置1102及びスピーカ1200が接続されている。
【0066】
二次記憶装置1004は、例えば、フラッシュメモリである。二次記憶装置1004は、プロセッサ1001が実行する専用プログラムを記憶する。また、二次記憶装置1004により、記憶部120の機能が実現される。なお、二次記憶装置1004に記憶される専用プログラムは、OS(Operationg System)と協働して動作するものであってもよい。
【0067】
携帯電話モデム装置1101は、基地局5が送信した防災情報を受信する通信装置である。放送装置10が携帯電話モデム装置1101から防災情報を取得することにより、第1受信部101の機能が実現される。
【0068】
LPWAモデム装置1102は、放送装置10等がLPWAにより送信した防災情報を受信し、LPWAにより防災情報を送信する通信装置である。放送装置10が、LPWAモデム装置1102から防災情報を取得し、LPWAモデム装置1102に防災情報を出力することより、第2受信部102の機能及び送信部130の機能が実現される。
【0069】
スピーカ1200は、住民に対して音声による報知を行うための音声出力装置である。放送装置10が音声データをスピーカ1200に出力することにより、音声出力部140の機能が実現される。
【0070】
図4に示すハードウェア構成においては、放送装置10が二次記憶装置1004を備えている。しかし、これに限らず、二次記憶装置1004を放送装置10の外部に設け、インタフェース1003を介して放送装置10と二次記憶装置1004とが接続される形態としてもよい。この形態においては、USBフラッシュドライブ、メモリカードなどのリムーバブルメディアも二次記憶装置1004として使用可能である。なお、携帯電話モデム装置1101、LPWAモデム装置1102及びスピーカ1200といった周辺機器は、放送装置10に内蔵されていてもよい。
【0071】
また、図4に示すハードウェア構成に代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit: 特定用途向け集積回路)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いた専用回路により放送装置10を構成してもよい。また、図4に示すハードウェア構成において、放送装置10の機能の一部を、インタフェース1003に接続された専用回路により実現してもよい。
【0072】
以上、放送装置10のハードウェア構成の一例について説明したが、重要局放送装置11についても、概ね同様のハードウェア構成をとることができる。例えば、バックアップ用有線回線を重要局放送装置11のインタフェース1003に接続することにより、重要局放送装置11を構成できる。
【0073】
(放送装置の動作)
図6を参照しながら、放送装置10が受信部100により防災情報を受信した場合における動作について説明する。
【0074】
放送装置10は、受信した防災情報が、第2受信部102が受信したものであるか否かを制御部110により判定する(ステップS1)。第2受信部102が受信したものではない場合、第1受信部101が受信したものであるといえる。この判定は、受信した防災情報がLPWAによる無線通信によって送信されたものであるか、携帯電話用の無線通信によって送信されたものであるかを判定することに相当する。なお、この実施の形態では、第1受信部101と第2受信部102とでそれぞれ異なる通信方式にて送信された防災情報を受信する例を示しているが、受信部は1つであってもよく、この場合には、当該受信した防災情報に含まれる送信元の情報を確認することにより、ステップS1の処理を行えばよい。例えば、送信元が他の放送装置10等であれば、防災情報がLPWAによる無線通信によって送信されたものと判定すればよい。
【0075】
受信した防災情報が、第2受信部102が受信したものではない場合(ステップS1:No)、すなわち、受信した防災情報がLPWAによる無線通信によって送信されたものではない場合、放送装置10は、ステップS2およびS3の処理をスキップしてステップS4以降の動作を実行する。ステップS2及びS3は、受信した防災情報がLPWAによる無線通信によって送信されたものである場合にのみ必要な動作だからである。
【0076】
受信した防災情報が、第2受信部102が受信したものである場合(ステップS1:Yes)、受信した防災情報は加工済みなので、放送装置10は、データ復元部111により、受信した防災情報(加工済み)にフレーム結合及び復号化を適用して防災情報(未加工)を復元する(ステップS2)。なお、ステップS2の処理にて行われるフレーム結合及び復号化は、ステップS6のデータ加工の動作にて行われるフレーム分割及び符号化の対となる動作であるため、フレーム結合及び復号化の詳細については後述する。
【0077】
放送装置10は、防災情報(未加工)を復元したのち、制御部110により、防災情報(未加工)に含まれるホップ数が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS3)。防災情報(未加工)に含まれるホップ数が所定値以下ではない場合(ステップS3:No)、放送装置10は、防災情報を送信、報知することなく動作を終了する。防災情報(未加工)に含まれるホップ数が所定値以下である場合(ステップS3:Yes)、放送装置10は、ステップS4以降の動作を実行する。以下、ホップ数の説明をした上で、このような動作とする理由を述べる。
【0078】
ホップ数とは、防災情報の送信の際に経由した放送装置10等の数である。例えば、防災情報の伝送経路が、順に公的機関2、基地局5、1つ目の放送装置10、2つ目の放送装置10、3つ目の放送装置10となる場合、3つ目の放送装置10が防災情報を受信した時点でのホップ数は2となる。そして、3つ目の放送装置10が防災情報を送信する際、防災情報(未加工)に含まれるホップ数を3に増加して送信する。
【0079】
ホップ数が、例えば50など、非常に大きな値である場合、多数の放送装置10等を経由して当該放送装置10に防災情報が送信されているといえる。この場合、不必要なまでに広範囲に防災情報が送信されていると考えられる。例えば、ある地方で生じた災害に関する防災情報が、他の地方に設置された放送装置10にまで送信されていることが考えられる。したがって、受信した防災情報に含まれるホップ数が非常に大きな値である場合、当該防災情報は有用性が薄いことが考えられる。また、ホップ数による判定を行わない場合、防災情報が無限に連鎖して送信され、無駄な防災情報が送信され続けてしまう。そのため、ホップ数による判定を採用することで、無駄な防災情報を送信することを防止している。
【0080】
ステップS4では、放送装置10は、唯一性判定部112により、唯一性があるか否かを判定する。つまり、防災情報(未加工)が示す内容と同一内容の防災情報を過去に受信したか否かを判定する。唯一性判定の動作の詳細については後述する。
【0081】
唯一性がない場合(ステップS4:No)、放送装置10は、防災情報を送信、報知することなく動作を終了する。唯一性がある場合(ステップS4:Yes)、放送装置10は、制御部110により、防災情報を記憶部120に格納する。
【0082】
次に、放送装置10は、データ加工部113により、防災情報(未加工)を加工して防災情報(加工済み)を作成する(ステップS6)。データ加工の詳細については後述する。
【0083】
次に、放送装置10は、制御部110により防災情報(加工済み)を送信部130に出力し、送信部130により当該防災情報(加工済み)を防災情報として、LPWAによる無線通信にて送信する(ステップS7)。
【0084】
そして、放送装置10は、制御部110により、防災情報(未加工)に含まれるテキストデータに基づいて作成した音声データを音声出力部140に出力し、音声出力部140によって当該音声データが表す音声を発することにより、防災情報の内容を住民に報知する(ステップS8)。なお、ステップS7とS8の順序は逆でもよい。
【0085】
以上、放送装置10が受信部100により防災情報を受信した場合における動作について説明した。このような動作により、放送装置10は、受信した防災情報が示す内容に唯一性がある場合のみ、他の放送装置10に防災情報を送信し、音声により住民に防災情報を報知する。
【0086】
また、重要局放送装置11が受信部100Aにより防災情報を受信した場合における動作についても、放送装置10の場合とほぼ同様である。重要局放送装置11の場合、第3受信部103Aが防災情報を受信した場合にも、第1受信部101が防災情報を受信した場合と同様の動作となる。
【0087】
(唯一性判定の動作)
次に、図7を参照しながら、図6に示すステップS4における唯一性判定の動作について説明する。以下、唯一性判定部112を主体として説明する。
【0088】
まず、唯一性判定部112は、防災情報(未加工)に、センタ装置3が付与したタイムスタンプ及び通し番号が含まれているか否かを判定する(ステップS401)。タイムスタンプ及び通し番号が含まれていないとき(ステップS401:No)、唯一性判定部112は、ステップS403以降の動作を実行する。
【0089】
タイムスタンプ及び通し番号が含まれているとき(ステップS401:Yes)、唯一性判定部112は、防災情報(未加工)に含まれるタイムスタンプ及び通し番号と同一のタイムスタンプ及び通し番号を含む防災情報が記憶部120内に存在するか否かを判定する(ステップS402)。
【0090】
同一のタイムスタンプ及び通し番号を含む防災情報が記憶部120内に存在するとき(ステップS402:Yes)、唯一性判定部112は、唯一性がないと判定し、唯一性判定の動作を終了する。タイムスタンプ及び通し番号は、センタ装置3によって付与された、防災情報ごとに固有の情報である。よって、同一のタイムスタンプ及び通し番号を含む防災情報が記憶部120内に存在する場合、過去に同一内容の防災情報を受信済みであるといえる。
【0091】
同一のタイムスタンプ及び通し番号を含む防災情報が記憶部120内に存在しないとき(ステップS402:No)、唯一性判定部112は、ステップS403以降の動作を実行する。
【0092】
ステップS403では、唯一性判定部112は、防災情報(未加工)に含まれるテキストデータと同一のテキストデータを含む防災情報が記憶部120内に存在するか否かを判定する。例えば、防災情報の受信時において図5に示す4つの防災情報が記憶部120に記憶されているとすると、防災情報(未加工)に含まれるテキストデータの内容が「15時15分 ○○県南部で震度3」である場合、ステップS403の処理では、同一のテキストデータを含む防災情報が記憶部120内に存在すると判定する。一方、防災情報(未加工)に含まれるテキストデータの内容が「15時20分 ○○県南部で震度4」である場合、ステップS403の処理では、同一のテキストデータを含む防災情報が記憶部120内に存在しないと判定する。
【0093】
同一のテキストデータを含む防災情報が記憶部120内に存在しない場合(ステップS403:No)、唯一性判定部112は、唯一性があると判定し、唯一性判定の動作を終了する。
【0094】
同一のテキストデータを含む防災情報が記憶部120内に存在する場合(ステップS403:Yes)、唯一性判定部112は、記憶部120内に存在する当該防災情報に紐付けられた格納日時が現在日時から一定時間内であるか否かを判定する(ステップS404)。これは、当該格納日時が現在日時と大きく異なる場合には、防災情報(未加工)と記憶部120内に存在する当該防災情報とでテキストデータが同一であったとしても、異なる防災情報として扱われるべきだからである。例えば、テキストデータが共に「15時13分 ○○県東部にて震度4」であるが地震発生日が異なる場合、これらの防災情報は異なる情報として扱われるべきである。テキストデータが単に「ミサイルが発射されました」などの単純なものである場合も同様である。したがって、格納日時による判定を行う。上述の一定時間とは、例えば1時間であり、防災情報の内容に応じて異なる時間が予めユーザにより設定されていればよい。
【0095】
格納日時が現在日時から一定時間内である場合(ステップS404:Yes)、唯一性判定部112は、唯一性がないと判定し、唯一性判定の動作を終了する。格納日時が現在日時から一定時間内ではない場合(ステップS404:No)、唯一性判定部112は、唯一性があると判定し、唯一性判定の動作を終了する。
【0096】
(データ加工の動作)
次に、図8を参照しながら、図6に示すステップS6におけるデータ加工の動作の流れについて説明する。また、併せて、図6に示すステップS2におけるデータ復元についても簡単に説明する。以下、データ加工部113を主体として説明する。
【0097】
まず、データ加工部113は、受信した防災情報が、第1受信部101が受信したものか否かを判定する(ステップS601)。
【0098】
受信した防災情報が、第1受信部101が受信したものである場合(ステップS601:Yes)、ホップ数を1として防災情報(未加工)に付与する(ステップS602)。受信した防災情報が、第1受信部101が受信したものである場合、当該防災情報は携帯電話用の無線通信により基地局5から送信されたものであるため、防災情報(未加工)にはホップ数が含まれない。したがって、防災情報を送信する際には、ホップ数を1として付与することとなる。
【0099】
受信した防災情報が、第1受信部101が受信したものではない場合(ステップS601:No)、すでに防災情報(未加工)に含まれているホップ数を1増やす(ステップS603)。受信した防災情報が、第1受信部101が受信したものではない場合、当該防災情報は第2受信部102が受信したもの、つまりLPWAによる無線通信によって他の放送装置10等が送信したものである。したがって、防災情報(未加工)にはホップ数が含まれる。
【0100】
ステップS602によるホップ数の付与あるいはステップS603によるホップ数の増加を行ったのち、データ加工部113は、防災情報(未加工)に含まれるテキストデータを符号化する(ステップS604)。
【0101】
テキストデータの符号化とは、テキストデータに頻出する単語、定型文等の文字列を数ビット~十数ビット程度のデータに置換することにより、テキストデータを表すビット列のサイズを小さくすることである。上述のとおり、LPWAによる無線通信は低速であるため、テキストデータを表すビット列のサイズを小さくすることは非常に有用である。
【0102】
例えば、符号化の対象とする文字列を、各都道府県名、「地震」、「震度」、「マグニチュード」、「台風」、「竜巻」、「大雪」、「注意報」、「警報」、「この地震による津波の心配はありません。」、「ミサイルが発射されました。」などとし、これらの文字列を8ビットのデータで置換することを考える。
【0103】
このとき、例えば、テキストデータが「○○県南西沖でマグニチュード6.2の地震。この地震による津波の心配はありません。」(40字)であったとする。1字を16ビットで表現する場合、当該テキストデータを表すビット列のサイズは16×40=640ビットである。
【0104】
一方、当該テキストデータに上述の符号化を適用し、符号化した箇所を「*」で表すと、「*南西沖で*6.2の*。*」(9字と符号化データ4つ)となる。当該符号化後のビット列のサイズは16×9+8×4=176ビットとなる。したがって、符号化によりビット列のサイズが大幅に小さくなる。
【0105】
上記に関連するが、図6のステップS2で行われるデータ復元のうち、復号化とは、上記の符号化の逆の処理を行うことにより、符号化されたテキストデータを符号化される前のテキストデータに戻すことである。1の放送装置10が符号化したテキストデータを他の放送装置10が復号化するためには、全ての放送装置10で共通する符号化方式を予め定めておく必要がある。
【0106】
再び図8を参照する。ステップS604にて防災情報(未加工)に含まれるテキストデータを符号化したのち、データ加工部113は、符号化後に複数のフレームに分割して防災情報(加工済み)を作成し(ステップS605)、データ加工の動作を終了する。LPWAによる無線通信では、一度の無線信号の発信により送信可能な情報量が、例えば400ビット程度など、非常に小さくなるため、送信対象となる防災情報を複数のフレームに分割し、フレームごとに防災情報を送信する必要が生じうる。
【0107】
上記に関連するが、図6のステップS2で行われるデータ復元のうち、フレーム結合とは、上記のフレーム分割の逆の処理を行うことにより、分割された防災情報をフレーム分割前の防災情報に戻すことである。
【0108】
(効果)
以上、本発明に係る通信装置を適用した防災通信システム1について説明した。防災通信システム1によれば、携帯電話用通信システムを利用した通信とLPWAによる無線通信とを組み合わせることにより、災害等を原因として携帯電話用通信システムに異常が生じても、LPWAによる無線通信により連鎖的に各放送装置10等に防災情報を送信することが可能となる。したがって、防災通信システム1は、災害、武力攻撃等の異常事態に強い防災通信システムといえる。
【0109】
放送装置10等は同一内容の防災情報を複数回受信しうる。放送装置10等は、同一内容の防災情報を複数回受信しても、唯一性があると判定したときのみ、防災情報を送信及び報知する。したがって、放送装置10等によれば、防災情報の錯綜を防ぐことができるため、防災情報を好適に送受信できる。
【0110】
放送装置10等は、受信した防災情報に含まれるホップ数が所定値以下であるときにのみ防災情報を送信することにより、不必要なまでに広範囲に防災情報を送信することがなく、無限に連鎖して防災情報を送信することを防ぐことができる。したがって、放送装置10等によれば、防災情報を好適に送受信できる。
【0111】
防災通信システム1において、重要局放送装置11は、バックアップ用有線回線を経由してセンタ装置3から防災情報を受信する。このため、災害等を原因として携帯電話用通信システムがダウンしても、防災情報を受信でき、また、受信した防災情報を他の放送装置10等に送信できる。したがって、重要局放送装置11は、防災情報を好適に送受信できるといえる。
【0112】
(変形例)
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。例えば、放送装置10では、上記実施の形態で示した全ての技術的特徴を備えるものでなくてもよく、従来技術における少なくとも1つの課題を解決できるように、上記実施の形態で説明した一部の構成を備えたものであってもよい。また、下記の変形例それぞれについて、少なくとも一部を組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態に係る防災通信システム1は、公的機関2と、センタ装置3と、キャリアゲートウェイ4と、基地局5と、放送装置10と、重要局放送装置11と、を備える例を示したが、図9に示すように、防災通信システム1は、中継機12と、戸別受信機13と、をさらに備えてもよい。
【0113】
中継機12は、例えば人が存在しない区域に跨がって人が存在する区域に防災情報を送信する場合に、当該人が存在しない区域に設置される装置である。中継機12は、放送装置10等が送信した防災情報を受信して他の放送装置10に送信する装置である。中継機12は、例えば、放送装置10における第1受信部101及び音声出力部140を省略することによって構成できる。中継機12も放送装置10等と同様に、唯一性があると判定したときのみ防災情報を送信する。中継機12は、放送装置10等と比べてシンプルな構成であるため、低コストで構成可能である。そして、人が存在する区域には放送装置10等を設置し、人が存在しない区域には中継機12を設置することにより、比較的低コストで人が存在する区域に防災情報を送信することができる。すなわち、防災情報を送信すべき区域に対し好適に送信することができる。
【0114】
戸別受信機13は、例えば、地方自治体等から各住宅に貸与され、停電時には乾電池による動作も可能な小型の受信機である。戸別受信機13は、放送装置10等から防災情報を受信し、受信した防災情報を、音声によって住宅内の住民20に報知する。戸別受信機13は、例えば、放送装置10における第1受信部101、データ加工部113及び送信部130を省略することによって構成できる。戸別受信機13も放送装置10等と同様に、唯一性があると判定したときのみ防災情報を報知する。戸別受信機13は、放送装置10等と比べてシンプルな構成であるため、低コストで構成可能である。そして、地方自治体等が各住宅に戸別受信機13を貸与することにより、より確実に各住民20に防災情報を報知可能となる。
【0115】
このような変形例に係る防災通信システム1によれば、より柔軟に防災通信システムを構築することができる。
【0116】
また、図6に示すステップS3において、防災情報(未加工)に含まれるテキストデータの内容に基づいて、ホップ数の判定の際に使用される所定値を変更してもよい。例えば、テキストデータに「大津波警報」「震度7」「ミサイル発射」等の文字列が含まれる場合、広い範囲に送信すべき重要度の高い情報であるため、当該所定値を70などの大きい値とする。一方、テキストデータに「火災」「光化学スモッグ注意報」等の文字列が含まれる場合、必ずしも広い範囲には送信しなくてもよい重要度の低い情報といえるため、当該所定値を10などの小さい値とする。このように、テキストデータの内容に基づいて当該所定値を変動させることにより、重要度の低い情報の送受信を削減でき、無線通信における干渉の発生を抑えることができる。すなわち、防災情報の重要度に応じて送信すべき範囲を広範囲とするか低範囲とするかが変動するようにしてもよい。
【0117】
また、送信部130が防災情報を送信する際には、当該防災情報を複数回繰り返し送信することが好ましいことについて説明したが、当該繰り返し回数を重要度に応じて変更してもよい。例えば、重要度が低い場合は繰り返し回数を3回とする一方、重要度が高い場合は繰り返し回数を6回とすることが考えられる。これによれば、重要度が高い防災情報をより確実に送信することができる。
【0118】
また、重要度が高い防災情報を受信した場合、当該防災情報を確実に他の放送装置10等に送信するために、唯一性がないと判定される場合にも送信をする(報知はしない)ことが考えられる。ただし、無闇に送信すると上述のとおり、防災情報の錯綜を招く。そこで、唯一性がない場合には、図6に示すステップS3におけるホップ数の判定で使用される所定値を3などの小さい値とすることが考えられる。このようにすることで、重要度の高い防災情報を受信した放送装置10等は、より確実に近辺の他の放送装置10等に防災情報を送信でき、かつ無闇な送信を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0119】
1…防災通信システム、2…公的機関、3…センタ装置、4…キャリアゲートウェイ、5…基地局、10…放送装置、11…重要局放送装置、12…中継機、13…戸別受信機、20…住民、100、100A…受信部、101…第1受信部、102…第2受信部、103A…第3受信部、110…制御部、111…データ復元部、112…唯一性判定部、113…データ加工部、120…記憶部、130…送信部、140…音声出力部、1001…プロセッサ、1002…メモリ、1003…インタフェース、1004…二次記憶装置、1101…携帯電話モデム装置、1102…LPWAモデム装置、1200…スピーカ、BL…バス、NW…携帯電話網。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9