(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】隊列走行システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20220628BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20220628BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220628BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20220628BHJP
【FI】
B60W30/16
G08G1/09 H
G08G1/16 E
B60W50/14
(21)【出願番号】P 2018084287
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥山 宏和
(72)【発明者】
【氏名】小島 信彦
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 直
(72)【発明者】
【氏名】安井 博文
(72)【発明者】
【氏名】武田 政義
(72)【発明者】
【氏名】米村 修一
(72)【発明者】
【氏名】川原 禎弘
(72)【発明者】
【氏名】山川 知也
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-113400(JP,A)
【文献】特開平10-096626(JP,A)
【文献】特開2005-098868(JP,A)
【文献】特開平10-105885(JP,A)
【文献】特開2008-069827(JP,A)
【文献】特表2018-509705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動運転される先頭車両を含む複数の車両の各々に搭載される車両制御システムを有し、前記車両制御システムは先行車両との間の無線通信を通じて前記先行車両に自車両が追従するように自車両を制御する隊列走行システムであって、
前記車両制御システムは、自車両の状態を検出するセンサと、自車両の挙動を調節するアクチュエータと、自車両を統括的に制御する制御装置と、を備え、
隊列における前記先頭車両が運転者により手動で運転される場合、前記先頭車両の制御装置は、前記無線通信を通じて後続車両の状態を示す情報を含む状態信号が受信されるとき、自車両の前記アクチュエータを
通じて、前記後続車両の状態を自車両において模擬的に発生させることにより、前記後続車両の状態を自車両の運転者に対して体感的に報知する隊列走行システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の隊列走行システムにおいて、
前記状態信号は、前記後続車両に発生した異常を示す情報を含み、
前記先頭車両の制御装置は、自車両の前記アクチュエータを通じて、前記後続車両に発生した異常状態を自車両において模擬的に発生させる隊列走行システム。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載の隊列走行システムにおいて、
前記状態信号は、前記後続車両に発生した異常を示す情報を含み、
前記先頭車両の制御装置は、自車両の前記アクチュエータを通じて、前記後続車両において異常が発生した部位を自車両の運転者に対して体感的に報知する隊列走行システム。
【請求項4】
請求項
2または請求項
3に記載の隊列走行システムにおいて、
前記先頭車両の制御装置は、前記状態信号に含まれる前記後続車両に発生した異常を示す情報に基づき、前記後続車両と前記無線通信を通じて連携することにより、隊列全体としての運行を制限する隊列走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隊列走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば特許文献1に記載されるように、複数台の車両における車車間通信を利用した車間距離制御の実行を通じて、複数台の車両に隊列走行を行わせる技術が知られている。
【0003】
隊列の先頭車両は、運転者により手動で運転されることがある。手動運転される先頭車両と後続の無人車両とが車車間通信を通じて連携することにより隊列走行を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
隊列の先頭車両が手動運転される場合、先頭車両の運転者が後続車両の状況を把握しながら運行する必要がある。しかし、先頭車両の運転者が後続車両の状況を把握しきれないおそれがある。このため、たとえば後続車両に何らかの異常が発生した場合、先頭車両の運転者は、後続車両の異常に気付かないまま隊列の運行を継続するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、手動運転される先頭車両に後続車両の状態を適切に伝達することができる隊列走行システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成し得る隊列走行システムは、手動運転される先頭車両を含む複数の車両の各々に搭載される車両制御システムを有し、前記車両制御システムは先行車両との間の無線通信を通じて前記先行車両に自車両が追従するように自車両を制御する。前記車両制御システムは、自車両の状態を検出するセンサと、自車両の挙動を調節するアクチュエータと、自車両を統括的に制御する制御装置と、を備えている。前記先頭車両の制御装置は、前記無線通信を通じて後続車両の状態を示す情報を含む状態信号が受信されるとき、自車両の前記アクチュエータを動作させることにより後続車両の状態を自車両の運転者に対して体感的に報知する。
【0008】
この構成によれば、後続車両の状態を先頭車両の運転者に対して体感的に報知することにより、後続車両の状態を先頭車両の運転者に対して適切に伝達することができる。
上記の隊列走行システムにおいて、前記先頭車両の制御装置は、自車両の前記アクチュエータを通じて、後続車両の状態を自車両において模擬的に発生させることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、後続車両の状態を先頭車両の運転者に対してより明確に伝達することができる。
上記の隊列走行システムにおいて、前記状態信号は、前記後続車両に発生した異常を示す情報を含み、前記先頭車両の制御装置は、自車両の前記アクチュエータを通じて、前記後続車両に発生した異常状態を自車両において模擬的に発生させることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、後続車両の異常状態を先頭車両の運転者に対してより明確に伝達することができる。
上記の隊列走行システムにおいて、前記状態信号は、前記後続車両に発生した異常を示す情報を含み、前記先頭車両の制御装置は、自車両の前記アクチュエータを通じて、前記後続車両において異常が発生した部位を自車両の運転者に対して体感的に報知することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、後続車両において異常が発生した部位を、先頭車両の運転者に対してより明確に伝達することができる。
上記の隊列走行システムにおいて、前記先頭車両の制御装置は、前記状態信号に含まれる前記後続車両に発生した異常を示す情報に基づき、前記後続車両と前記無線通信を通じて連携することにより、隊列全体としての運行を制限することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、隊列の運行の安全性、あるいは隊列周辺の交通安全を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の隊列走行システムによれば、手動運転される先頭車両に後続車両の状態を適切に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】隊列走行システムの一実施の形態の概略を示す構成図。
【
図2】一実施の形態における車両制御システムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、隊列走行システムの一実施の形態を説明する。
図1に示すように、隊列走行システム10は、隊列を組む複数台(ここでは3台)の車両CS1,CS2,CS3にそれぞれ1つずつ搭載される車両制御システム11を有している。
【0016】
図2に示すように、車両制御システム11は、ECU(電子制御装置)20、前方監視センサ21、後方監視センサ22、側方監視センサ23、車速センサ24、加速度センサ25、GPS受信機26、車車間通信装置27および異常検出センサ28を有している。また、車両制御システム11は、スロットルアクチュエータ31、ブレーキアクチュエータ32、ステアリングアクチュエータ33、サスペンションアクチュエータ34、スピーカ35および表示装置36を有している。
【0017】
前方監視センサ21は、車両の前部に設けられて、自車両の前方を監視するとともに自車両の直前を走行する車両と自車両との車間距離を検出する。後方監視センサ22は、車両の後部に設けられて、自車両の後方を監視するとともに自車両の直後を走行する車両と自車両との車間距離を検出する。側方監視センサ23は、車両の側部に設けられて、自車両の側方を監視するとともに自車両の側方を走行する車両と自車両との車間距離を検出する。これら監視センサ(21,22,23)は、たとえばレーザーレーダまたはミリ波レーダ、およびカメラを含んでいる。
【0018】
車速センサ24は、自車両の走行速度を検出する。加速度センサ25は、自車両の前後方向の加速度を検出する。GPS受信機26は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの測位信号を受信し、当該受信される測位信号に基づき自車両の位置(緯度、経度)および方位を検出する。車車間通信装置27は、車両間において無線通信を行う。異常検出センサ28は、自車両における各部の異常を検出する。
【0019】
スロットルアクチュエータ31は、スロットル開度の調節を通じてエンジンへの燃料供給量を調節する。ブレーキアクチュエータ32は、ブレーキを通じて車両を減速させるための制動力を調節する。ステアリングアクチュエータ33は、ステアリングロッド(転舵軸)を軸方向に駆動させることにより左右の車輪を転舵する。サスペンションアクチュエータ34は、たとえばエアサスペンションを駆動させることにより車高を変化させる。スピーカ35は、音を発する。表示装置36は各種の情報を表示する。表示装置36は各種の警告灯、およびディスプレイを含んでいる。
【0020】
ECU20は、車両全体を統括して制御する。ECU20は、スロットルアクチュエータ31を通じてエンジンの出力を制御する。ECU20は、車両を加速させるときにはスロットルアクチュエータ31を通じてエンジンに対する燃料供給量を増大させる一方、車両を減速させるときにはスロットルアクチュエータ31を通じてエンジンに対する燃料供給量を減少させる。また、ECU20は、ブレーキアクチュエータ32を通じて車両の制動力を制御する。ECU20は、スロットルアクチュエータ31およびブレーキアクチュエータ32を通じて、車両の速度および車間距離を制御する。また、ECU20は、ステアリングアクチュエータ33を通じて車両の転舵角(タイヤの切れ角)を制御する。また、ECU20はサスペンションアクチュエータ34を通じて車高を制御する。
【0021】
ECU20は、車車間通信装置27を通じて、車車間通信装置27が搭載された他の車両との間で車両の走行データおよび識別情報(ID)などの情報を授受する。走行データは、自車両の走行状態に関する情報であって、たとえば自車両の位置、速度、加速度および方位(進行方向)などの情報を含む。識別情報は、自車両に固有の車両識別情報、および自車両が所属する隊列に固有の隊列識別情報を含んでいる。
【0022】
ECU20は、ACC(Adaptive Cruise Control)制御を実行する。ACC制御とは、前方監視センサ21を通じて直前の先行車両(一般車両を含む。)との距離を測定し、あらかじめ設定された車間距離と速度を維持しつつ前方車両の加減速および停止に追従して走行するための制御をいう。ACC制御では、前方監視センサ21(レーザーレーダ、カメラ)を通じて、先行車両と自車両との車幅方向のずれを検出し、その検出されるずれを無くすように自車両の操舵が制御される。
【0023】
ECU20は、たとえばACC制御の実行中に先行車両が検出されない場合、設定車速を維持して走行するように車両の走行制御を行う。また、ECU20は、設定車速よりも低速で走行する先行車両が検出される場合、その先行車両との車間距離をあらかじめ設定された車間距離に保つように追従制御を行う。ECU20は、先行車両との車間距離があらかじめ設定された車間距離よりも小さくならないように車両の加速度を制御する。すなわち、ECU20は、先行車両の車速が設定車速よりも低速である場合、自車の車速を低下させて車間距離を保つ。
【0024】
ECU20は、CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)制御を実行する。CACCとは、同一車線上の自車両前後の車両と無線通信を通じて連携して複数の車両が隊列走行するための制御をいう。隊列走行とは、車両制御システム11が搭載された複数の車両が、同一車線上において一般車両を間に挟むことなく、一定の車間距離および一定の速度を維持しながら隊列を組むように縦列走行することをいう。
【0025】
CACC制御では、車車間通信を通じて取得される隊列内の他の車両に関する情報に基づいて自車両の加速度が制御される。これにより、自車両は隊列内における直前の車両との車間距離を目標の車間距離に保つように追従する。隊列を組む車両CS1~CS3は、車車間通信装置27を通じて自車両のスペックおよび走行データなどの情報を相互に授受する。すなわち、隊列を組むすべての車両CS1~CS3の車両制御システム11は、隊列を組むすべての車両CS1~CS3のスペックおよび走行データなどの情報を共有する。
【0026】
たとえば、隊列の先頭車両においてブレーキが操作されたとき、隊列内のすべての車両にその情報が伝達される。隊列を組むすべての車両は、それぞれ車間距離を維持しながら適切なタイミングで自動的に減速する。先頭車両が加速したときには、先頭車両の加速の度合いが隊列内のすべての車両に伝達される。隊列を組むすべての車両は、それぞれ車間距離と速度とを隊列全体で維持するために自動的に加速する。
【0027】
<隊列走行システムの作用>
つぎに、隊列走行システムの作用を説明する。
図1に示すように、たとえば3台の車両CS1,CS2,CS3がCACC制御の実行を通じて隊列走行を行っている場合、先頭の車両CS1の走行状態に応じて、後続する2台の車両CS2,CS3の走行状態が制御される。先頭の車両CS1は、運転者により手動で運転されていてもよいし、ACC制御の実行を通じて設定車速を維持しながら走行していてもよい。後続する車両CS2,CS3のECU20は、先頭の車両CS1に追従するように車両CS2,CS3の走行状態を制御する。
【0028】
ちなみに、隊列の先頭の車両CS1以外の車両CS2,CS3は、自車両の1つ前を走行する車両の走行状態に基づいて、当該先行する車両に追従して走行するようにしてもよい。この場合、隊列の2番目の車両CS2は、先頭の車両CS1の走行状態に基づいて走行状態が制御される。隊列の3番目の車両CS3は、その直前の車両CS2の走行状態に基づいて走行状態が制御される。
【0029】
ここで、隊列における先頭の車両CS1が運転者により手動で運転される場合、つぎのようなことが懸念される。すなわち、先頭の車両CS1が手動運転される場合、車両CS1の運転者が後続する車両CS2,CS3の状況を把握しながら運行する必要がある。しかし、先頭の車両CS1の運転者が後続する車両CS2,CS3の状況を把握しきれないおそれがある。これは、隊列を組む車両の台数が増えるほど顕著である。
【0030】
そこで、隊列走行システム10は、つぎのようにして後続の車両CS2,CS3の状態を先頭の車両CS1の運転者に伝える。
たとえば、後続車両に何らかの異常が発生した場合、この異常は後続車両の異常検出センサ28を通じて検出される。後続車両のECU20は、車車間通信装置27を通じて自車両に異常が発生した旨示す状態信号Swを無線送信する。状態信号Swには、異常の内容を示す情報、異常の発生した部位、および異常が発生した車両の識別情報などが含まれる。
【0031】
ここで、異常検出センサ28を通じて検出される異常の一例は、つぎの通りである。
(a1)エンジンの異常
(a2)ステアリングの異常
(a3)ブレーキの異常
(a4)タイヤの異常
(a5)車両挙動の異常
先頭車両のECU20は、車車間通信を通じて状態信号Swが受信されるとき、この状態信号Swに含まれる情報に基づき、異常が発生した後続車両および異常の内容を把握する。そして先頭車両のECU20は、後続車両の異常を先頭車両に運転者に対して体感的に報知するために、第1の体感報知制御および第2の体感報知制御の少なくとも一を行う。
【0032】
第1の体感報知制御は、先頭車両の各種アクチュエータを通じて先頭車両に後続車両と同じ異常状態を模擬的に発生させるための制御である。先頭車両の運転者に後続車両と同じ異常状態を擬似的に体感させることにより、後続車両の異常をより確実に伝達することができる。
【0033】
ただし、後続車両に発生した異常の内容あるいは程度によっては、先頭車両において模擬的に発生させる異常状態の程度を運転に支障がない程度に抑えることが好ましい。
第1の体感報知制御の具体的な一例は、つぎの通りである。
【0034】
(b1)後続車両のエンジンに出力低下などの異常が発生した場合。
この場合、先頭車両のECU20は、スロットルアクチュエータ31を通じてエンジン出力を制限することにより、後続車両の状態を模擬的に発生させる。先頭車両の運転者は、エンジンに異常が発生した後続車両の車両挙動を擬似的に体感することにより、後続車両の異常に気付くことができる。
【0035】
(b2)後続車両に片輪パンクが発生した場合。
この場合、先頭車両のECU20は、ステアリングアクチュエータ33を通じてステアリングにトルクを付与することにより、片輪パンクが発生したときの操舵感触を擬似的に発生させる。先頭車両の運転者は、パンクなどが発生した後続車両の車両挙動を擬似的に体感することにより、後続車両の異常に気付くことができる。
【0036】
(b3)後続車両に衝撃が発生した場合。
この場合、先頭車両のECU20は、ブレーキアクチュエータ32、およびサスペンションアクチュエータ34などを通じて後続車両に発生した衝撃を模擬的に発生させる。先頭車両の運転者は、後続車両に発生した衝撃を擬似的に体感することにより、後続車両の異常に気付くことができる。
【0037】
(b4)後続車両に加速度が急激に変化するなどの車両挙動に異常が発生した場合。
この場合、先頭車両のECU20は、ブレーキアクチュエータ32を通じて後続車両に発生した加速度の変化を擬似的に発生させる。先頭車両の運転者は、後続車両に発生した加速度の変化を擬似的に体感することにより、後続車両の異常に気付くことができる。
【0038】
第2の体感報知制御は、後続車両で異常が発生した部位を先行車両の運転者に対して体感的に報知するための制御である。
第2の体感報知制御の具体的な一例は、つぎの通りである。
【0039】
(c1)後続車両にエンジンなどの車両を走行させるための部位に異常が発生した場合。
この場合、先頭車両のECU20は、スロットルアクチュエータ31を通じてアクセルペダルを振動させる。先頭車両の運転者は、アクセルペダルの振動を感じることにより、後続車両のエンジンなどに異常が発生したことに気付くことができる。
【0040】
(c2)後続車両にステアリングなどの車両の進行方向を変更するための部位に異常が発生した場合。
この場合、先頭車両のECU20は、ステアリングアクチュエータ33を通じてステアリングホイールを振動させる。先頭車両の運転者は、ステアリングホイールの振動を感じることにより、後続車両のステアリングなどに異常が発生したことに気付くことができる。
【0041】
(c3)後続車両にブレーキなどの車両の制動を行うための部位に異常が発生した場合。
この場合、先頭車両のECU20は、ブレーキアクチュエータ32を通じてブレーキペダルを振動させる。先頭車両の運転者は、ブレーキペダルの振動を感じることにより、後続車両のブレーキなどに異常が発生したことに気付くことができる。
【0042】
(c4)後続車両の足回りにパンクなどの異常が発生した場合。
この場合、先頭車両のECU20は、サスペンションアクチュエータ34を通じてサスペンションを振動させる。先頭車両の運転者は、サスペンションの振動を感じることにより、後続車両の足回りに異常が発生したことに気付くことができる。
【0043】
また、先頭車両のECU20は、後続車両に異常が検出されたとき、隊列の運行の安全性あるいは隊列周辺の交通安全を確保するための制御を実行するようにしてもよい。
たとえば先頭車両のECU20は、後続車両に発生した異常の内容に応じて、隊列全体としての運行速度に上限速度を設定する。また、先頭車両のECU20は隊列全体として減速し、後続車両の異常が検出される前の運行速度よりも遅い速度で走行するようにしてもよい。また、先頭車両のECU20は、後続車両に発生した異常の内容あるいは程度によっては、自動退避制御を実行するようにしてもよい。先頭車両のECU20は、自動退避制御の実行を通じて、自車両の運転者の運転状態にかかわらず、車車間通信を通じて後続車両と連携して隊列を、たとえば路肩などの安全な場所に寄せて自動停止させる。
【0044】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)後続車両の異常を先頭車両の運転者に体感的に報知することにより、後続車両の異常を先頭車両の運転者に対して適切に伝達することができる。
【0045】
(2)後続車両の異常は車車間通信を通じて直ちに先頭車両へ伝達される。このため、先頭車両の運転者は、後続車両に発生した異常に対して速やかに対応することができる。たとえば、先頭車両の運転者は、速やかに減速したり停止したりする。したがって、より安全な隊列の運行を実現することができる。隊列周辺の交通安全にも寄与する。
【0046】
(3)隊列の先頭の車両のECU20は、状態信号Swに含まれる後続車両に発生した異常を示す情報に基づき、後続車両と車車間通信を通じて連携することにより、隊列全体としての運行を制限する。これにより、隊列の運行の安全性、あるいは隊列周辺の交通安全を確保することができる。
【0047】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・後続車両の異常が検出されたとき、先頭車両のECU20は、自車両の運転者に後続車両の状態を体感的に報知することに加え、自車両の運転者の視覚あるいは聴覚に訴えることにより、後続車両の異常を自車両の運転者に知らせるようにしてもよい。たとえば、先頭車両のECU20は、自車両のスピーカ35を通じて警報音を発したり、表示装置36に警告を表示させたりする。
【0048】
・後続車両の異常が検出されたとき、先頭車両のECU20は、後続車両に発生した異常と同じ異常状態を模擬的に発生させなくてもよい。たとえば、先頭車両のECU20は、後続車両で異常が発生した部位と関係のない部位(たとえばシート)を振動させるなどして自車両の運転者に後続車両の異常を伝えてもよい。少なくとも先頭車両の運転者が体で感じることによって、後続車両に何らかの異常が発生したことに気づけばよい。
【0049】
・先頭車両のECU20は、後続車両に発生した異常だけでなく、異常が発生していない後続車両の状態を、先頭車両の運転者に体感的に報知するようにしてもよい。たとえば先頭車両のECU20は、後続車両の減速度合い、あるいは走行抵抗の増加などの状態変化を、ブレーキアクチュエータ32を通じて模擬的に発生させてもよい。先頭車両の運転者は、後続車両の状態を常に把握しながら隊列を運行することができる。
【符号の説明】
【0050】
10…隊列走行システム、11…車両制御システム、20…ECU(制御装置)、21…前方監視センサ、22…後方監視センサ、23…側方監視センサ、28…異常検出センサ、31…スロットルアクチュエータ、32…ブレーキアクチュエータ、33…ステアリングアクチュエータ、34…サスペンションアクチュエータ、CS1,CS2,CS3…車両(隊列を構成する)。