IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トキコテクノ株式会社の特許一覧 ▶ JX日鉱日石エネルギー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガス充填装置 図1
  • 特許-ガス充填装置 図2
  • 特許-ガス充填装置 図3
  • 特許-ガス充填装置 図4
  • 特許-ガス充填装置 図5
  • 特許-ガス充填装置 図6
  • 特許-ガス充填装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20220628BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/02 301Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018086740
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019190621
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓮仏 達也
(72)【発明者】
【氏名】福永 明彦
(72)【発明者】
【氏名】手塚 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】根岸 英二
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-245277(JP,A)
【文献】特開2016-169869(JP,A)
【文献】特開2016-200267(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159314(WO,A1)
【文献】特開2005-098474(JP,A)
【文献】特表2009-522519(JP,A)
【文献】特開2015-124830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを蓄える蓄圧器とガス供給系統を介して接続され、当該ガスを被充填タンクに充填するためのノズルと、
前記ガス供給系統に設けられ、前記被充填タンクへのガスの流通を制御する制御弁と、
前記ガス供給系統に設けられ、前記ノズルによって前記被充填タンクに充填される前記ガスを冷却する冷却器と、
前記被充填タンク内のガス圧力と前記ガス供給系統の前記制御弁よりも下流側のガス圧力とのうちのいずれか一方のガス圧力を検出する圧力検出手段と、
前記被充填タンクへガス充填を行う場合の前記圧力検出手段により検出されるガス圧力の圧力上昇率が予め定められた基準上昇率で上昇するように前記制御弁を開閉制御する制御手段と、を備えたガス充填装置において、
前記制御手段は、
前記被充填タンクにガスを供給することにより前記被充填タンクの初期圧力を測定するための初期圧測定充填を含む準備工程を行ってから、本充填を行い、
前記被充填タンクへの前記本充填を開始した時には前記圧力上昇率を前記基準上昇率よりも高い高上昇率で前記被充填タンクへのガス充填が行われるように前記制御弁を開閉制御し、
前記高上昇率でガス充填を行っているときの前記圧力検出手段により検出されるガス圧力と前記基準上昇率で充填を行う場合の前記圧力検出手段により検出されるガス圧力との差が所定圧力差に達した後は、前記圧力検出手段により検出されるガス圧力がガス充填を終了する目標終了圧力に達するまで、前記基準上昇率で、かつ、前記所定圧力差を維持しながら、前記被充填タンクへのガス充填が行われるように前記制御弁を開閉制御することを特徴とするガス充填装置。
【請求項2】
ガスを蓄える蓄圧器とガス供給系統を介して接続され、当該ガスを被充填タンクに充填するためのノズルと、
前記ガス供給系統に設けられ、前記被充填タンクへのガスの流通を制御する制御弁と、
前記ガス供給系統に設けられ、前記ノズルによって前記被充填タンクに充填される前記ガスを冷却する冷却器と、
前記被充填タンク内のガス圧力と前記ガス供給系統の前記制御弁よりも下流側のガス圧力とのうちのいずれか一方のガス圧力を検出する圧力検出手段と、
前記被充填タンクへガス充填を行う場合の前記圧力検出手段により検出されるガス圧力の圧力上昇率が予め定められた基準上昇率で上昇するように前記制御弁を開閉制御する制御手段と、
周囲温度を検出する外気温センサと、を備えたガス充填装置において、
前記制御手段は、
前記被充填タンクにガスを供給することにより前記被充填タンクの初期圧力を測定するための初期圧測定充填を含む準備工程を行ってから、本充填を行い、
前記被充填タンクへの前記本充填を開始した時から所定時間が経過するまで、または前記所定時間が経過した際に前記圧力検出手段により検出されると想定される想定圧力を前記圧力検出手段が検出するまでは、前記圧力上昇率を前記基準上昇率よりも高い高上昇率で前記被充填タンクへのガス充填が行われるように前記制御弁を開閉制御し、
前記所定時間が経過した後、または前記想定圧力を検出した後は、前記圧力検出手段により検出されるガス圧力がガス充填を終了する目標終了圧力に達するまで、
前記基準上昇率で、
かつ、
前記所定時間が経過したときの前記想定圧力と前記基準上昇率で充填を行う場合の前記所定時間が経過したときの前記圧力検出手段により検出されるガス圧力との圧力差を維持しながら、
前記被充填タンクへのガス充填が行われるように前記制御弁を開閉制御し、
さらに、前記制御手段は、
前記外気温センサで検出された外気温から前記基準上昇率を決定し、かつ、前記外気温と前記初期圧力とから前記目標終了圧力を決定することを特徴とするガス充填装置。
【請求項3】
周囲温度を検出する外気温センサをさらに備えており、
前記制御手段は、前記外気温センサで検出された外気温から前記基準上昇率を決定し、かつ、前記外気温と前記初期圧力とから前記目標終了圧力を決定することを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記圧力検出手段により検出されたガス圧力が所定の圧力値に達したときには前記被充填タンクへのガス充填が異常となっていることを検出する異常検出部を有することを特徴とする請求項1,2または3に記載のガス充填装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記異常検出部が前記被充填タンクへのガス充填が異常となっていることを検出した場合に前記被充填タンクへのガス充填を前記高上昇率から前記基準上昇率に切換えて制御することを特徴とする請求項4に記載のガス充填装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記異常検出部が前記被充填タンクへのガス充填が異常となっていることを検出した場合に前記被充填タンクへのガス充填を停止することを特徴とする請求項4に記載のガス充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水素ガスを車両の燃料タンクに充填するのに好適に用いられるガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水素ガスを燃料とする車両(4輪自動車等)の被充填タンク(燃料タンク)に水素ガスを充填するガス充填装置が知られている。この種のガス充填装置は、例えばコンプレッサ等の昇圧器を用いて蓄圧器内に高圧ガスを予め蓄圧(貯蔵)しておき、ガス供給管路に設けられた流量調整弁の弁開度を調整することで、高圧ガスを蓄圧器から燃料タンクに向けて充填するようにしている。この場合、ガス供給経路に設けられた冷却器(熱交換器)で水素ガスを冷却して、燃料タンク内のガス温度の上昇を抑制することにより、ガス充填時間の短縮を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-21573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来技術では、熱交換器よりも下流側のガス供給管路およびガス供給管路と燃料タンクとを接続する充填ホースは、待機中に環境温度(外気温)の影響により温度上昇する。特に、外気温が高い場合および前回のガス充填の終了から今回のガス充填の開始までの時間間隔が長い場合には、ガス供給管路および充填ホースが外気温と同等の温度となってしまう。このような状態でガス充填を開始すると、熱交換器で冷却された燃料ガスが温度上昇したガス供給管路および充填ホースとの間で熱交換されるので、燃料タンクに供給される燃料ガスを所定の温度に低下させるまでの時間が増大する虞がある。
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、燃料タンクに供給される燃料ガスの温度をより速く下げ、充填作業を効率的に行うことができるガス充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、ガスを蓄える蓄圧器とガス供給系統を介して接続され、当該ガスを被充填タンクに充填するためのノズルと、前記ガス供給系統に設けられ、前記被充填タンクへのガスの流通を制御する制御弁と、前記ガス供給系統に設けられ、前記ノズルによって前記被充填タンクに充填される前記ガスを冷却する冷却器と、前記被充填タンク内のガス圧力と前記ガス供給系統の前記制御弁よりも下流側のガス圧力とのうちのいずれか一方のガス圧力を検出する圧力検出手段と、前記被充填タンクへガス充填を行う場合の前記圧力検出手段により検出されるガス圧力の圧力上昇率が予め定められた基準上昇率で上昇するように前記制御弁を開閉制御する制御手段と、を備えたガス充填装置において、前記制御手段は、前記被充填タンクにガスを供給することにより前記被充填タンクの初期圧力を測定するための初期圧測定充填を含む準備工程を行ってから、本充填を行い、前記被充填タンクへの前記本充填を開始した時には前記圧力上昇率を前記基準上昇率よりも高い高上昇率で前記被充填タンクへのガス充填が行われるように前記制御弁を開閉制御し、前記高上昇率でガス充填を行っているときの前記圧力検出手段により検出されるガス圧力と前記基準上昇率で充填を行う場合の前記圧力検出手段により検出されるガス圧力との差が所定圧力差に達した後は、前記圧力検出手段により検出されるガス圧力がガス充填を終了する目標終了圧力に達するまで、前記基準上昇率で、かつ、前記所定圧力差を維持しながら、前記被充填タンクへのガス充填が行われるように前記制御弁を開閉制御することを特徴としている。
【0007】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、ガスを蓄える蓄圧器とガス供給系統を介して接続され、当該ガスを被充填タンクに充填するためのノズルと、前記ガス供給系統に設けられ、前記被充填タンクへのガスの流通を制御する制御弁と、前記ガス供給系統に設けられ、前記ノズルによって前記被充填タンクに充填される前記ガスを冷却する冷却器と、前記被充填タンク内のガス圧力と前記ガス供給系統の前記制御弁よりも下流側のガス圧力とのうちのいずれか一方のガス圧力を検出する圧力検出手段と、前記被充填タンクへガス充填を行う場合の前記圧力検出手段により検出されるガス圧力の圧力上昇率が予め定められた基準上昇率で上昇するように前記制御弁を開閉制御する制御手段と、周囲温度を検出する外気温センサと、を備えたガス充填装置において、前記制御手段は、前記被充填タンクにガスを供給することにより前記被充填タンクの初期圧力を測定するための初期圧測定充填を含む準備工程を行ってから、本充填を行い、前記被充填タンクへの前記本充填を開始した時から所定時間が経過するまで、または前記所定時間が経過した際に前記圧力検出手段により検出されると想定される想定圧力を前記圧力検出手段が検出するまでは、前記圧力上昇率を前記基準上昇率よりも高い高上昇率で前記被充填タンクへのガス充填が行われるように前記制御弁を開閉制御し、前記所定時間が経過した後、または前記想定圧力を検出した後は、前記圧力検出手段により検出されるガス圧力がガス充填を終了する目標終了圧力に達するまで、前記基準上昇率で、かつ、前記所定時間が経過したときの前記想定圧力と前記基準上昇率で充填を行う場合の前記所定時間が経過したときの前記圧力検出手段により検出されるガス圧力との圧力差を維持しながら、前記被充填タンクへのガス充填が行われるように前記制御弁を開閉制御し、さらに、前記制御手段は、前記外気温センサで検出された外気温から前記基準上昇率を決定し、かつ、前記外気温と前記初期圧力とから前記目標終了圧力を決定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料タンクに供給される燃料ガスの温度をガス充填の開始から所定時間以内に所定の温度に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態によるガス充填装置を模式的に示す全体構成図である。
図2図1中の制御装置によるガス供給の圧力制御を示す説明図である。
図3図1中の制御装置によるガス供給の制御処理を示す流れ図である。
図4図3中の本充填制御処理を示す流れ図である。
図5図4中の制御タイマ処理を示す流れ図である。
図6図5中のオフセット計算の制御処理を示す流れ図である。
図7】本発明の第2の実施形態によるオフセット計算の制御処理を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態によるガス充填装置を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0011】
図1ないし図6は、本発明の第1の実施形態を示している。図1中のガス充填装置1は、例えば車両2の燃料タンク2A(被充填タンク)に圧縮した燃料ガス(本実施形態では、水素ガス)を充填するように供給するため、一般にガス供給ステーションと呼ばれる設備等に設置されている。ガス充填装置1は、高圧に圧縮されたガスを貯蔵するガス貯蔵部3と、該ガス貯蔵部3からの燃料ガスを車両2の燃料タンク2Aに充填、供給するためのディスペンサユニット4と、ガス貯蔵部3からディスペンサユニット4のディスペンサ筐体4A内にわたって延びるガス供給管路5とを含んで構成されている。
【0012】
ガス供給系統としてのガス供給管路5は、ディスペンサ筐体4A内に配設され、蓄圧器6から加圧された燃料ガスが供給されるものである。このガス供給管路5は、蓄圧器6から後述の遮断弁18まで延びる上流側供給管路5Aと、遮断弁18から後述の充填ホース12まで延びる下流側供給管路5Bとにより構成されている。即ち、上流側供給管路5Aは、一端(上流端)側が蓄圧器6に接続され、他端(下流端)側が遮断弁18に接続されている。一方、下流側供給管路5Bは、一端(上流端)側が遮断弁18に接続され、他端(下流端)側が充填ホース12に接続されている。
【0013】
ガス充填装置1のガス貯蔵部3は、蓄圧器6と、昇圧器としてのコンプレッサ7とを含んで構成されている。蓄圧器6は、コンプレッサ7により圧縮された高圧の燃料ガスを蓄圧するための容器であり、例えば複数個のボンベを互いに並列に接続してなる圧力容器として形成されている。蓄圧器6は、その流入側がガス導管8を介してコンプレッサ7の吐出側に接続され、ガス導管8の途中には逆止弁9が設けられている。逆止弁9は、蓄圧器6内の燃料ガスがガス導管8内を逆流するのを防止している。
【0014】
コンプレッサ7は、例えば複数段で燃料ガスを圧縮する多段式の圧縮機からなり、その吸込管路10は、例えば水素ガスを貯蔵するガスタンク(または、水素ガスを生成する水素生成設備)と連通する中圧配管11に接続されている。燃料ガスは、中圧配管11から吸込管路10を介してコンプレッサ7により圧縮される。そして、昇圧した燃料ガスは、ガス導管8および逆止弁9を介して蓄圧器6に供給される。蓄圧器6には、コンプレッサ7よって昇圧された高圧の燃料ガスが満圧になるまで蓄圧して貯蔵される。
【0015】
充填ホース12は、基端側が下流側供給管路5Bに連通され、ディスペンサ筐体4Aの外部へと延びている。充填ホース12は、ガス供給管路5と共に本発明のガス供給系統を構成している。充填ホース12の先端側には、車両2に搭載された燃料タンク2Aの接続口2B(即ち、レセプタクル)に連結されるノズル13が設けられている。
【0016】
ノズル13は、燃料ガスを蓄える蓄圧器6とガス供給管路5および充填ホース12を介して接続され、燃料ガスを燃料タンク2Aに充填するためのものである。即ち、ノズル13は、例えば水素ガスからなる燃料を車両2の燃料タンク2Aに供給するため、燃料タンク2Aの接続口2Bに気密状態で着脱可能に接続される充填カップリングを構成している。
【0017】
ノズル13は、例えば水素ガスの充填中にガスの圧力によって燃料タンク2Aの接続口2Bから誤って外れることがないように、接続口2Bに対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)を備えている。これにより、ノズル13を燃料タンク2Aの接続口2Bに接続(ロック)した状態で、蓄圧器6内の高圧な燃料ガス(水素ガス)をガス供給管路5、充填ホース12、およびノズル13を通じて車両2の燃料タンク2Aに充填することができる。
【0018】
ディスペンサ筐体4A内のガス供給管路5には、上流側から下流側へと順に、1次圧力センサ14、流量計15、流量調整弁16、冷却器17、遮断弁18、2次圧力センサ19、および温度センサ20等が設けられている。なお、ガス供給管路5の上流側から下流側に向けて設けられている流量計15、流量調整弁16、冷却器17、遮断弁18、およびセンサ19,20等の取り付けの順番は、図1中に示した順番に限定されるものではない。
【0019】
1次圧力センサ14は、流量計15および流量調整弁16よりも上流側に位置して上流側供給管路5Aに設けられている。この1次圧力センサ14は、蓄圧器6から上流側供給管路5A内に供給される燃料ガスのガス圧力を検出するものである。1次圧力センサ14は、その検出値(圧力値)に応じた検出信号を制御装置28に向けて出力する。
【0020】
流量計15は、上流側供給管路5Aに設けられ、ガス供給管路5内を流通する被測流体の質量流量を計測するコリオリ式流量計等により構成されている。流量計15は、例えば流量調整弁16および遮断弁18等を介してガス供給管路5内を流れる燃料ガス、即ち水素ガスの流量(質量流量)を計測し、計測した流量に比例した数の流量パルスを後述の制御装置28へと出力する。
【0021】
これによって、制御装置28は、車両2の燃料タンク2Aに対する燃料(水素ガス)の充填量を演算により求めることができ、車両2に対する燃料の払出し量(給油量に相当)を表示装置(例えば、後述の表示器27またはこれ以外の表示部)等で表示し、例えば顧客等に表示内容を報知することができる。
【0022】
流量調整弁16は、上流側供給管路5Aに設けられ、車両2の燃料タンク2Aへの燃料ガスの流通を制御するものである。流量調整弁16は、例えばエア作動式となっており、エアの供給で開弁し制御信号で制御圧(エア圧)を制御して弁開度が調整される弁装置である。流量調整弁16は、後述の制御装置28の制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御され、ガス供給管路5内を流れる燃料ガスの流量、ガス圧を可変に制御するものである。流量調整弁16は、本発明の制御弁を構成している。
【0023】
冷却器17は、ガス供給管路5(上流側供給管路5A)内を流れる燃料ガスを冷却する装置である。この冷却器17は、ディスペンサ筐体4A外に設けられ冷媒を冷却する冷凍器(図示せず)を有するチラーユニット17Aと、流量調整弁16よりも下流側に位置して上流側供給管路5Aに設けられた熱交換器17Bと、チラーユニット17Aの冷凍器と熱交換器17Bとの間で冷媒を循環させるための冷媒管路17Cとを含んで構成されている。
【0024】
熱交換器17Bは、上流側供給管路5A内を流れる燃料を冷却するものである。即ち、熱交換器17Bは、燃料ガスが充填される車両2の燃料タンク2Aの温度上昇を抑制するために、ガス供給管路5の途中位置で燃料ガスを冷却するように配設されている。
【0025】
熱交換器17Bは、冷媒管路17Cを介してチラーユニット17Aに接続されている。チラーユニット17Aは、冷媒(例えば、エチレングリコール等を含んだ液体)を冷媒管路17Cに流通させて熱交換器17Bとの間に循環させる。これにより、熱交換器17Bは、冷媒と燃料ガスとを熱交換させて燃料ガス(水素ガス)の温度を規定温度(例えば、-33℃~-40℃)まで低下させる。
【0026】
この場合、熱交換器17Bは、例えば冷媒が流通する多数の冷媒流路(図示せず)が形成された第1層と、燃料ガスが流通する多数のガス流路(図示せず)が形成された第2層とが交互に積層され、複数の各層が一体的に形成された一体型積層構造熱交換器として構成されている。なお、熱交換器17Bは、一体型積層構造熱交換器に限らず、例えば冷却液化された冷媒(二酸化炭素)が充填された容器内に燃料ガスが流通するガス供給管路を配設することにより、燃料ガスを冷却してもよく、熱交換器17Bの構造についてはこれらに限るものではない。
【0027】
遮断弁18は、ガス供給管路5に設けられ、車両2の燃料タンク2Aへの燃料ガスの流通を制御するものである。この遮断弁18は、ガス供給管路5の途中部位(上流側供給管路5Aと下流側供給管路5Bとの間)に設けられたエア作動式または電磁式の弁装置である。遮断弁18は、後述する制御装置28からの制御信号で開,閉されることにより、燃料タンク2Aへの燃料ガスの供給、遮断を行うものである。
【0028】
2次圧力センサ19は、流量調整弁16、冷却器17、および遮断弁18よりも下流側に設けられている。即ち、2次圧力センサ19は、下流側供給管路5Bのうち充填ホース12側に設けられている。この2次圧力センサ19は、蓄圧器6から車両2の燃料タンク2Aに供給される燃料ガスのガス圧力を検出するものである。2次圧力センサ19は、本発明の圧力検出手段を構成するもので、ノズル13の近傍で下流側供給管路5B内のガス圧力(圧力値P)を測定し、測定した圧力値Pに応じた検出信号を制御装置28へと出力する。
【0029】
温度センサ20は、2次圧力センサ19よりも下流側に位置して下流側供給管路5Bに設けられている。即ち、温度センサ20は、下流側供給管路5Bのうち充填ホース12側に設けられている。この温度センサ20は、車両2の燃料タンク2Aに供給される燃料ガスの温度を検出するものである。温度センサ20は、ノズル13の近傍で下流側供給管路5B内の温度を測定し、測定した温度に応じた検出信号を制御装置28へと出力する。なお、温度センサ20は、2次圧力センサ19よりも上流側に設けていてもよい。
【0030】
脱圧管路21は、遮断弁18と充填ホース12との間に位置して下流側供給管路5Bの途中に分岐して設けられている。脱圧管路21は、車両2の燃料タンク2Aへの燃料ガスの供給が完了したときに、ノズル13側からガス圧力を脱圧するためのものである。そのために、脱圧管路21の途中には、例えば電磁弁または空圧駆動弁等の自動弁からなる脱圧弁22が設けられている。
【0031】
脱圧弁22は、ノズル13を用いた燃料タンク2Aへのガス充填作業が完了して遮断弁18が閉弁されたときに、制御装置28からの信号により開弁制御され、下流側供給管路5B内が減圧された後に閉弁制御される。脱圧弁22が開弁したときには、下流側供給管路5B内の燃料ガスが放散ライン23に放出されてノズル13の圧力が大気圧に減圧される。これにより、ノズル13と燃料タンク2Aの接続口2Bとの接続を解除することができる。
【0032】
載置部24は、ディスペンサ筐体4Aに設けられ、ノズル13を載置させるものである。この載置部24は、ノズル13が燃料ガスの充填を終了して戻される場合に、当該ノズル13を収納するものである。この場合、ノズル13は、気密状態を維持した状態で載置部24に収納される。車両2の燃料タンク2Aに燃料を充填するときには、図1中に二点鎖線で示す如く、ノズル13が載置部24から取外されて車両2(燃料タンク2A)の接続口2Bに連結される。そして、ノズル13を燃料タンク2Aに接続した状態で、蓄圧器6内の燃料ガスは、ガス供給管路5、充填ホース12、およびノズル13等を通じて車両2の燃料タンク2Aに充填される。
【0033】
外気温センサ25は、ディスペンサ筐体4A内に設けられ、ディスペンサ筐体4Aの周囲温度を検出するものである。この外気温センサ25は、測定した温度に応じた検出信号を後述の制御装置28へと出力する。外気温センサ25の検出値(外気温度)は、例えば燃料ガスを車両2の燃料タンク2Aに供給するときの圧力昇圧率(APRR)および目標終了圧力(Ptarget)等を設定するのに用いられる。
【0034】
操作部26は、ディスペンサ筐体4Aに設けられ、例えば充填開始スイッチ26A、充填停止スイッチ26B、およびプリセットスイッチ26Cとを含んで構成されている。充填開始スイッチ26Aは、例えば燃料供給所の作業者等が手動で操作可能な操作スイッチで、燃料ガスの充填を開始する場合に操作される。即ち、充填開始スイッチ26Aは、充填ホース12の先端に設けられたノズル13が燃料タンク2Aの接続口2Bに接続された後に、ガス充填作業(本充填)を開始させるために操作される充填開始用の操作スイッチである。
【0035】
充填停止スイッチ26Bは、ガス充填作業を停止する際に操作される充填停止用の操作スイッチで、ガス充填中に充填を停止させる場合に操作される。また、プリセットスイッチ26Cは、燃料ガスを燃料タンク2Aに充填する前に、ガス充填量およびガス圧力を設定するためのものである。操作部26の充填開始スイッチ26A、充填停止スイッチ26B、およびプリセットスイッチ26Cは、操作状態に応じた信号を後述の制御装置28にそれぞれ出力する。そして、制御装置28は、これらの信号に応じてエア作動式の空圧駆動弁または電磁弁等の自動弁からなる遮断弁18を開弁または閉弁させる。
【0036】
表示器27は、燃料ガスの充填作業を行う作業者が視認し易い位置でディスペンサ筐体4Aに設けられている。この表示器27は、燃料ガスの充填作業に必要な情報表示等を行う。表示器27は、後述の制御装置28が充填プロトコルに準拠した充填制御を行っているときに、制御装置28からの制御信号により、例えば車両2の燃料タンク2Aに対する燃料ガスの充填状態(高上昇率制御、基準上昇率制御、燃料ガス供給量、異常発生等)を表示する。
【0037】
制御装置28は、流量調整弁16および遮断弁18の制御を行うことにより車両2の燃料タンク2Aへの燃料ガスの供給を制御するもので、本発明の制御手段を構成している。この制御装置28は、例えばマイクロコンピュータ等を用いて構成され、その入力側が1次圧力センサ14、流量計15、2次圧力センサ19、温度センサ20、外気温センサ25、および操作部26等に接続されている。一方、制御装置28の出力側は、流量調整弁16、遮断弁18、脱圧弁22、および表示器27等に接続されている。
【0038】
制御装置28には、メモリ29に記憶されたガス充填制御処理用のプログラム(図3ないし図6)により燃料ガスの充填制御を行う充填制御部30と、充填制御部30により充填制御を行っている場合に2次圧力センサ19により検出されたガス圧力(圧力値)が所定の圧力値(例えば、許容上限圧力:Pupperまたは許容下限圧力:Plower)に達しているときに燃料タンク2Aへのガス充填が異常となっていることを検出する異常検出部31とを有している。
【0039】
制御装置28の充填制御部30は、車両2の燃料タンク2Aの接続口2Bにノズル13を接続した状態で、例えば操作部26の充填開始スイッチ26Aが閉成(ON)操作されたときに、流量調整弁16と遮断弁18とに開弁信号を出力して流量調整弁16と遮断弁18とを開弁させる。これにより、蓄圧器6内の燃料ガスを燃料タンク2A内に供給するガス充填作業が開始される。
【0040】
また、制御装置28の充填制御部30は、例えば流量計15、1次圧力センサ14、2次圧力センサ19、および温度センサ20の測定結果を監視しつつ、流量調整弁16の開度等を予め設定された制御方式(例えば、定圧上昇制御方式)で調整する。即ち、充填制御部30は、例えば燃料ガスの充填時に2次圧力センサ19により検出された圧力値から得られる圧力昇圧率(上昇率)が予め設定された所定の圧力上昇(昇圧)率に一致するように流量調整弁16の弁開度を制御する。
【0041】
これにより、制御装置28は、燃料タンク2A内に供給される燃料ガスの圧力、流量を適切な状態に制御することができる。このとき、制御装置28は、流量計15からの流量パルスを積算して燃料の充填量(質量)を演算し、2次圧力センサ19により検出された燃料ガスの圧力値が目標終了圧力(Ptarget)に達したときに、流量調整弁16および遮断弁18を閉弁させて燃料の充填を停止する。
【0042】
また、操作部26の充填停止スイッチ26Bが操作された場合には、例えば燃料ガスの充填量や圧力値が目標に達していなくても、充填動作を強制的に停止すべく流量調整弁16および遮断弁18が制御装置28からの信号により閉弁される。その後、制御装置28は、脱圧弁22を開弁させて下流側供給管路5B内の燃料ガスを放散ライン23に放出させ、下流側供給管路5B内およびノズル13を減圧した後に脱圧弁22を閉弁する。
【0043】
制御装置28のメモリ29は、例えば不揮発性メモリ、RAM、ROM等からなり、例えば図3ないし図6に示すガス充填制御処理用のプログラム等が格納されている。また、メモリ29には、基準上昇率(圧力昇圧率:APRR)および目標終了圧力(Ptarget)を決定するために用いられるルックアップテーブル(Lookup table)が格納されている。
【0044】
ルックアップテーブルは、充填圧力区分(例えば、70MPa級、35MPa級等)、供給燃料温度区分(例えば、-40℃、-20℃等)、および燃料タンク2Aの容量区分に応じて、基準上昇率と目標終了圧力とが外気温センサ25の検出値(外気温)と燃料タンク2Aの初期圧力(Pc0)に対応して設定されている。従って、基準上昇率は、外気温センサ25により検出された外気温(環境温度)からルックアップテーブルを参照することにより得ることができ、目標終了圧力は、外気温と燃料タンク2A内の初期圧力(Pc0)から得ることができる。
【0045】
図2中に二点鎖線で示す仮想線32は、仮に燃料タンク2Aの本充填初期圧力(Pc0)から目標終了圧力(Ptarget)まで基準上昇率で燃料タンク2Aに燃料ガスを供給した場合における燃料タンク2A内の圧力上昇となっている。なお、この仮想線32は、ガス充填中にバンク(蓄圧器6)の切換え等により非充填時間がある場合にはその間の圧力変化がないものとして示している。
【0046】
この場合、燃料タンク2A内の圧力上昇には、基準上昇率に対して圧力許容範囲が設定される。この圧力許容範囲は、仮想線32で示す基準上昇率を基準として供給燃料ガスの圧力管理を行うためのもので、圧力管理の上限となる許容上限圧力(Pupper)と、圧力管理の下限となる許容下限圧力(Plower)とが設定されている。
【0047】
許容上限圧力と許容下限圧力とは、それぞれ本発明の所定の圧力値を構成するもので、制御装置28の異常検出部31は、2次圧力センサ19により検出された充填圧力(Pm)がこの圧力許容範囲内で推移しているか否かを監視している。そして、制御装置28の充填制御部30は、異常検出部31により異常が検出された場合には高上昇率を基準上昇率に切換えたり、ガス充填を停止したりする昇圧率異常処理を行う。
【0048】
図2中の仮想線32よりも高い圧力側に位置する点線33は、許容上限圧力を示すもので、例えば仮想線32よりも7.0MPa高い圧力となっている。一方、図2中の仮想線32よりも低い圧力側に位置する点線34は、許容下限圧力を示すもので、例えば仮想線32よりも2.5MPa低い圧力となっている。なお、許容上限圧力(Pupper)と許容下限圧力(Plower)は、上述の7.0MPa高い圧力および2.5MPa低い圧力に限らず適宜設定することができる。
【0049】
ここで、本実施形態では、図2中の特性線35に示すように、充填初期には基準上昇率よりも高い高上昇率(特性線35A)で燃料ガスの供給を行い、主たる充填ガスの供給中(充填中期および後期)には基準上昇率(特性線35B)で充填を行う構成としている。そして、2次圧力センサ19で検出された圧力値が目標終了圧力(Ptarget)に達したときにガス充填を停止(終了)している。即ち、燃料タンク2Aへのガス充填を開始してからの経過時間(tc1)までは、高上昇率でガス充填を行い、時間(tc1)以降は目標終了圧力まで基準上昇率でガス充填を行う構成としている。
【0050】
これにより、ガス充填の開始から時間(tc1)までは、下流側供給管路5Bと充填ホース12とに流通するガス流量を増加させることができるので、外気温により温度上昇した下流側供給管路5Bと充填ホース12との温度を時間(tc1)以内に効率よく低下させることができる。従って、下流側供給管路5Bと充填ホース12とが温度上昇していた場合でも、時間(tc1)以降には冷却器17(熱交換器17B)で冷却制御された燃料ガスを燃料タンク2Aに供給させることができる。
【0051】
そのために、メモリ29には、サンプリングタイム毎に基準上昇率に加算する昇圧率(OPRR)、初期値(OS0)、および最大昇圧率上昇値(OSmax)が格納されている。この場合、昇圧率(OPRR)、初期値(OS0)、および最大昇圧率上昇値(OSmax)は、燃料タンク2Aに供給される燃料ガスを所定の温度とするために、時間(tc1)に基づき設定されている。
【0052】
一例を挙げると、時間(tc1)は、30秒程度に設定され、これに基づき昇圧率(OPRR)、初期値(OS0)、および最大昇圧率上昇値(OSmax)が実験、計算、シミュレーション等により設定される。図2においては、初期値(OS0)は「0」と設定されている。また、最大昇圧率上昇値(OSmax)は、基準上昇率でガス供給制御した場合の許容上限圧力(Pupper)以上とならない値に設定されている(OSmax≦Pupper=7.0MPa)。
【0053】
制御装置28の充填制御部30は、燃料タンク2Aへのガス充填を最大昇圧率上昇値(OSmax)で制御したときには高上昇率から基準上昇率に切換える。換言すると、図2に示すように、制御装置28の充填制御部30は、高上昇率でガス充填を行っているときの燃料タンク2A内のガス圧力(Pc2)と仮にガス充填開始から基準上昇率で充填を行う場合の燃料タンク2A内のガス圧力(Pc1)との差(Pc2-Pc1)が所定圧力差(即ち、最大昇圧率上昇値)に達した後は目標終了圧力に達する時間tc2まで基準上昇率で燃料タンク2Aへのガス充填を行う。
【0054】
本実施形態によるガス充填装置1は、上述の如き構成を有するものであり、次に、車両2の燃料タンク2Aに燃料ガス(水素ガス)を供給するための制御について説明する。
【0055】
作業者は、載置部24からノズル13を取外して、ノズル13を車両2の燃料タンク2Aの接続口2Bに連結する。そして、操作部26の充填開始スイッチ26Aが操作されることにより、流量調整弁16と遮断弁18とが開弁して蓄圧器6から燃料タンク2Aに燃料ガスが供給される。この場合、制御装置28の充填制御部30は、2次圧力センサ19により検出された圧力値から得られる圧力上昇率が予め設定された所定の圧力昇圧率に一致するように流量調整弁16の弁開度を制御する。
【0056】
そして、制御装置28は、流量計15からの流量パルスを積算して燃料の充填量(質量)を演算し、燃料の充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または2次圧力センサ19により検出した燃料ガスの圧力値が予め設定された目標終了圧力(Ptarget)に達したときに、流量調整弁16および遮断弁18を閉弁させて燃料の充填を停止する。また、操作部26の充填停止スイッチ26Bが操作された場合には、例えば燃料ガスの充填量および圧力値が目標値に達していなくても、充填動作を強制的に停止すべく流量調整弁16および遮断弁18が制御装置28からの信号により閉弁される。
【0057】
その後、制御装置28は、脱圧弁22を開弁させて下流側供給管路5B内の燃料ガスを放散ライン23に放出させ、下流側供給管路5B、充填ホース12、およびノズル13を減圧した後に脱圧弁22を閉弁する。これにより、下流側供給管路5B内の燃料ガスが放散ライン23に放出されてノズル13の圧力が大気圧に減圧される。その後、作業者は、ノズル13と燃料タンク2Aの接続口2Bとの接続を解除して、ノズル13を載置部24に戻す(収納する)。
【0058】
ところで、上述した従来技術では、熱交換器17Bよりも下流側のガス供給管路5(下流側供給管路5B)および充填ホース12は、待機中に環境温度(外気温)の影響により温度上昇する虞がある。この場合、燃料タンク2Aへの充填効率が低下しないようにするには、充填開始から所定時間以内(例えば、30秒以内)に燃料タンク2Aに供給される燃料ガスの温度を所定の温度以下にすることが望ましい。しかし、外気温が高い場合および前回の充填終了から今回の充填開始までの時間間隔が長い場合には、下流側供給管路5Bと充填ホース12との温度が上昇しているので、充填開始から所定時間以内に燃料タンク2Aに供給される燃料ガスの温度を所定の温度まで低下させることができずに充填時間が増加する虞がある。
【0059】
そこで、本実施形態では、図2中の特性線35に示すように、燃料ガスの充填初期は、外気温により設定された基準上昇率よりも高い上昇率である高上昇率(特性線35A)で車両2の燃料タンク2Aに燃料ガスを供給し、充填中期および後期は、基準上昇率(特性線35B)で燃料タンク2Aに燃料ガスを供給する構成としている。
【0060】
以下、制御装置28によるガス充填制御処理について、図3ないし図6を参照して説明する。この制御処理は、ガス充填装置1が起動している間に所定周期毎に繰り返し実行される。
【0061】
まず、図3に示すガス供給の制御処理について説明する。処理動作がスタートすると、ステップ1では、データ初期化が行われる。即ち、制御装置28は、例えば操作部26の充填開始スイッチ26AがON操作されたときに、前回のガス充填制御によるデータ(基準上昇率、目標終了圧等)の初期化を行う。次のステップ2では、初期圧測定充填等の準備工程が行われる。この初期圧測定充填等の準備工程は、燃料タンク2Aへのガス充填開始前に燃料タンク2Aに少量のガス供給を行うものである。制御装置28は、そのときのガス流量、ガス圧力等から燃料タンク2A内の初期圧力(Pc0)を推定演算する。なお、この準備工程の際に供給するガスの量(積算流量)は可能な限り多くすることが効果的であり、好ましくは50g以上、さらに好ましくは120g以上200g以下の量を供給することがより効果的である。
【0062】
次のステップ3では、ルックアップテーブルを参照して基準上昇率(圧力昇圧率:APRR)と目標終了圧力(Ptarget)とを決定する。即ち、制御装置28は、ルックアップテーブルを参照して、外気温センサ25により検出された外気温から基準上昇率を決定し、外気温と燃料タンク2A内の初期圧力(Pc0)から目標終了圧力を決定する。そして、次のステップ4では、燃料ガスの本充填が行われる。即ち、制御装置28の充填制御部30は、1次圧力センサ14、2次圧力センサ19、および温度センサ20等の検出値を監視して、車両2の燃料タンク2Aへのガス供給を行う。
【0063】
次に、図4に示す燃料ガスの本充填制御処理(図3中のステップ4の処理)について説明する。
【0064】
ステップ11では、本充填時間(tc)=0、本充填初期圧力(Pc0)=充填圧力(Pm)、目標更新要求=YESを設定する。本充填時間は、バンク(蓄圧器6)の切換え時間等の非充填時間を除く目標更新要求がYES中(目標更新要求がなされている場合)での昇圧率一定制御をしている時間である。本実施形態では、例えばサンプリングタイムとして、0.1秒を設定している。なお、サンプリングタイムは、0.1秒に限らず、適宜設定可能である。そして、燃料タンク2Aへの本充填開始時には、本充填時間=0(tc=0)と設定されている。
【0065】
充填圧力は、2次圧力センサ19で検出される検出値(圧力値)で本充填開始時には燃料タンク2A内の初期圧力となっている。目標更新要求は、昇圧率が一定で目標生成する場合は「YES」となり、バンク(蓄圧器6)の切換え等で目標圧力を更新しない場合は「NO」となる。従って、本充填開始時には、目標更新要求が「YES」となる。
【0066】
次のステップ12では、昇圧率上昇処理フラグ(OSf)=1、昇圧率上昇値(OS)=昇圧率上昇初期値(OS0)を設定する。昇圧率上昇処理フラグは、ルックアップテーブルを参照して外気温から得られた基準上昇率よりも高い圧力上昇率である高上昇率でガス充填制御を行うか否かを決定するものである。昇圧率上昇処理フラグは、例えば「1」のフラグが立つと高上昇率での制御ありとなり、「0」のフラグが立つと高上昇率での制御なしとなる。従って、本充填開始時には、高上昇率での制御を行うので、昇圧率上昇処理フラグ=1となる。昇圧率上昇値は、基準上昇率からの昇圧率上昇分として目標圧力に加算するオフセット量である。従って、本充填開始時には、昇圧率上昇値が昇圧率上昇初期値(例えば、OS0=0MPa)に設定される。
【0067】
次のステップ13では、制御タイマをスタートさせる。即ち、制御装置28の充填制御部30は、車両2の燃料タンク2Aへのガス充填を行うための制御タイマをスタートさせ、次のステップ14に進む。
【0068】
ステップ14では、制御タイマ処理を行うか否かを判定する。即ち、制御装置28の充填制御部30は、サンプリングタイムとして設定された時間(例えば、0.1秒)を経過したか否かを判定する。そして、ステップ14で「YES」、即ちサンプリングタイムとして設定された時間を経過したと判定された場合には、ステップ15に進む。一方、ステップ14で「NO」、即ちサンプリングタイムとして設定された時間を経過していないと判定された場合には、ステップ16に進む。
【0069】
ステップ15では、制御タイマ処理を行う。即ち、制御装置28の充填制御部30は、図5に示す制御タイマ処理を実行し、次のステップ16に進む。この制御タイマ処理については、後述で説明する。
【0070】
ステップ16では、充填圧力(Pm)が目標終了圧力(Ptarget)に達したか否か(Pm≧Ptarget)および充填率が目標充填率に達したか否か(SOC≧目標SOC)を判定する。即ち、制御装置28の充填制御部30は、ガス充填中に2次圧力センサ19で検出される充填圧力(Pm)が目標終了圧力(Ptarget)に達することにより、燃料タンク2A内に十分にガス充填が行われたか否かを判定する。また、燃料タンク2A内の充填率が予め設定された燃料タンク2A内の満タン状態を示す充填率に達したか否かを判定する。この場合、充填率は、例えば15℃での70MPaを100%として充填量を比率で表したものである。
【0071】
そして、ステップ16で「NO」、即ち充填圧力が目標終了圧力に達していないと判定された場合および充填率が目標充填率に達していないと判定された場合には、ステップ17に進む。一方、ステップ16で「YES」、即ち充填圧力が目標終了圧力に達したと判定された場合または充填率が目標充填率に達したと判定された場合には、ステップ18に進む。
【0072】
ステップ17では、異常ありか否かを判定する。即ち、制御装置28は、燃料タンク2Aへのガス充填中に異常が発生しているか否かを判定する。そして、ステップ17で「NO」、即ち異常が発生していないと判定された場合には、ステップ14に戻る。一方、ステップ17で「YES」、即ち異常が発生していると判定された場合には、ステップ18に進み、燃料タンク2Aへのガス充填を終了して、リターンする。
【0073】
次に、図5に示す制御タイマ処理(図4中のステップ15の処理)について説明する。
【0074】
ステップ21では、目標更新要求か否かを判定する。即ち、制御装置28の充填制御部30は、ガス供給の上昇率(昇圧率)を一定で目標生成するか否かを判定する。そして、ステップ21で「YES」、即ちガス供給の上昇率(昇圧率)を一定で目標生成すると判定された場合には、ステップ22に進む。一方、ステップ21で「NO」、即ち蓄圧器6の切換え等で目標圧力を更新しない場合にはステップ26に進む。
【0075】
ステップ22では、本充填時間にサンプリングタイムを加算(tc=tc+0.1)して、次のステップ23に進み、オフセット計算(OS)の制御処理が行われる。このオフセット計算の制御処理については、後で説明する。
【0076】
次のステップ24では、目標圧力(Ptc)の演算を行う。即ち、制御装置28の充填制御部30は、時々刻々(サンプリングタイム毎)の目標圧力(Ptc)を基準上昇率(APRR)、本充填時間(tc)、本充填初期圧力(Pc0)、昇圧率上昇値(OS)から下記の数1の式により演算して、次のステップ25に進む。
【0077】
【数1】
【0078】
次のステップ25では、許容上限圧力(Pupper)と許容下限圧力(Plower)とを決定する。即ち、制御装置28の充填制御部30は、上記数1式でOS=0とした場合の時々刻々の目標圧力(Ptc0)からガス充填制御中の圧力管理の上限値と下限値とを演算する。即ち、仮にガス充填開始から基準上昇率で圧力制御した場合(図2中の仮想線32)の時々刻々の目標圧力(Ptc0)から許容上限圧力(Pupper)と許容下限圧力(Plower)とを演算する。許容上限圧力は、例えば目標圧力(Ptc0)に7.0MPaを加算した値(Pupper=Ptc0+7.0)に設定することができる。一方、許容下限圧力は、Ptc0に2.5MPa減算した値(Plower=Ptc0-2.5)に設定することができる。
【0079】
次のステップ26では、充填制御が行われる。即ち、制御装置28の充填制御部30は、例えばPID制御により、2次圧力センサ19で検出される充填圧力(Pm)が目標圧力(Ptc)となるようにフィードバック制御を行い、次のステップ27に進む。
【0080】
ステップ27では、充填圧力(Pm)が許容上限圧力(Pupper)以上となっているか否かを判定する(Pm≧Pupper)。即ち、制御装置28の異常検出部31は、燃料ガスの充填制御中に2次圧力センサ19により検出された充填圧力(Pm)が目標圧力(Ptc)を越えて許容上限圧力(Pupper)以上となっているか否かを判定する。そして、ステップ27で「NO」、即ち充填圧力が許容上限圧力以上となっていないと判定された場合には、ステップ28に進む。一方、ステップ27で「YES」、即ち充填圧力が許容上限圧力以上となっていると判定された場合には、ステップ31に進む。
【0081】
ステップ28では、充填圧力(Pm)が許容下限圧力(Plower)以下となっているか否かを判定する(Pm≦Plower)。即ち、制御装置28の異常検出部31は、燃料ガスの充填制御中に2次圧力センサ19により検出された充填圧力(Pm)が目標圧力(Ptc)に到達せずに許容下限圧力(Plower)以下となっているか否かを判定する。そして、ステップ28で「NO」、即ち充填圧力が許容下限圧力以下となっていないと判定された場合には、ステップ29に進む。一方、ステップ28で「YES」、即ち充填圧力が許容限圧力以となっていると判定された場合には、ステップ31に進む。
【0082】
ステップ29では、目標圧力が目標終了圧力以上となったか否かを判定する(Ptc≧Ptarget)。即ち、制御装置28の充填制御部30は、ステップ24で演算された目標圧力(Ptc)がガス充填開始時に外気温と燃料タンク2Aの初期圧力(Pc0)とに基づきルックアップテーブルを参照して決定された目標終了圧力(Ptarget)以上となったか否かを判定する。そして、ステップ29で「YES」、即ち目標圧力が目標終了圧力以上となったと判定された場合には、ステップ30に進み、目標圧力(Ptc)を目標終了圧力(Ptarget)に設定する。また、目標圧力を更新させないために、目標更新要求を「NO」に設定して、リターンする。
【0083】
ステップ31では、昇圧率異常処理を行う。即ち、制御装置28の充填制御部30は、異常検出部31により異常が検出された場合(即ち、ガス充填制御に異常が発生している場合)の異常処理を行う。この昇圧率異常処理は、例えば燃料タンク2Aへのガス充填を高上昇率で制御している場合には、燃料タンク2Aへのガス充填を高上昇率から基準上昇率に切換える制御とすることができる。また、この昇圧率異常処理は、例えば燃料タンク2Aへのガス充填を停止する制御としてもよい。この場合、ディスペンサ筐体4Aに設けられた警報装置(図示せず)から警報音を発生させてもよいし、表示器27に異常が発生していることを表示してもよい。そして、昇圧率異常処理を行った後は、リターンする。
【0084】
次に、図6に示すオフセット計算処理(図5中のステップ23の処理)について説明する。
【0085】
ステップ41では、昇圧率上昇処理フラグ(OSf)を「1」にする。即ち、制御装置28の充填制御部30は、燃料タンク2Aへのガス充填開始時には基準上昇率よりも圧力上昇率を高くした高上昇率で制御するために、オフセットフラグを立ち上げ(OSf=1)、次のステップ42に進む。
【0086】
ステップ42では、昇圧率上昇値(OS)の演算を行う。即ち、制御装置28の充填制御部30は、時々刻々の目標圧力(Ptc)の演算に用いられる昇圧率上昇値(OS)を下記の数2の式により演算する。即ち、前回のサンプリングタイムの昇圧率上昇値に昇圧率(OPRR)を加算して今回の昇圧率上昇値を決定し、次のステップ43に進む。
【0087】
【数2】
【0088】
ステップ43では、昇圧率上昇値(OS)が最大昇圧率上昇値(OSmax)以上となったか否かを判定する(OS≧OSmax)。即ち、制御装置28の充填制御部30は、燃料タンク2Aへのガス供給時の時間経過(サンプリングタイム毎)に伴って加算される昇圧率上昇値が最大昇圧率上昇値に達したか否かを判定する。
【0089】
そして、ステップ43で「NO」、即ち昇圧率上昇値が最大昇圧率上昇値以上となっていないと判定された場合には、リターンする。一方、ステップ43で「YES」、即ち昇圧率上昇値が最大昇圧率上昇値以上となっていると判定された場合には、ステップ44に進む。
【0090】
ステップ44では、昇圧率上昇値(OS)を最大昇圧率上昇値(OSmax)に設定する(OS=OSmax)。また、昇圧率上昇処理フラグ(OSf)を「0」にする(OSf=0)。即ち、制御装置28の充填制御部30は、燃料タンク2Aへのガス供給を高上昇率から基準上昇率に切換えるために、昇圧率上昇処理フラグを「1」から「0」に切換える。そして、制御装置28の充填制御部30は、図5中のステップ24で演算される目標圧力(Ptc)の昇圧率上昇値(OS)を最大昇圧率上昇値(OSmax)に固定するために、昇圧率上昇値(OS)を最大昇圧率上昇値(OSmax)に設定して、リターンする。
【0091】
即ち、制御装置28の充填制御部30は、高上昇率で制御している場合には上記の数1の式での昇圧率上昇値(OS)が初期値(OS0)から最大昇圧率上昇値(OSmax)に向けてサンプリングタイム毎に昇圧率(OPRR)を加算して目標圧力(Ptc)を演算する。一方、制御装置28の充填制御部30は、高上昇率から基準上昇率に切換えて制御している場合には上記の数1の式での昇圧率上昇値(OS)を最大昇圧率上昇値(OSmax)で固定して目標圧力(Ptc)を演算する。
【0092】
かくして、本実施形態では、車両2の燃料タンク2Aへのガス充填初期には外気温により設定された基準上昇率よりも高い圧力上昇率である高上昇率でガス供給を行い、ガス充填中期および後期には基準上昇率でガス供給を行っている。これにより、燃料タンク2Aへのガス充填初期には、下流側供給管路5Bおよび充填ホース12に流通する燃料ガスを増加させることができるので、外気温の影響により温度上昇した下流側供給管路5Bおよび充填ホース12を効率よく冷却させることができる。その結果、燃料ガスの充填開始から所定時間以内に燃料タンク2Aへ供給される燃料ガスの温度を所定の温度以下にすることができるので、ガス充填の時間を短縮することができる。
【0093】
また、制御装置28の充填制御部30は、昇圧率上昇値(OS)が最大昇圧率上昇値(OSmax)に達したときに、高上昇率から基準上昇率への切換えを行っている。この場合、最大昇圧率上昇は、許容上限圧力(Pupper)以下に設定されているので、ガス充填を高上昇率で行っている場合でも許容上限圧力を越えるのを抑制して、燃料タンク2A、ガス供給管路5、および充填ホース12に過剰な圧力がかかるのを抑制している。
【0094】
また、制御装置28の異常検出部31は、2次圧力センサ19により検出された圧力値が所定の圧力値(例えば、許容上限圧力または許容下限圧力)に達したときには燃料タンク2Aへのガス充填が異常となっていることを検出している。そして、制御装置28の充填制御部30は、異常検出部31が異常を検出した場合に、高上昇率から基準上昇率に切換えたり、燃料タンク2Aへのガス充填を停止したりする。これにより、燃料タンク2A、ガス供給管路5、および充填ホース12に過剰な圧力がかかったり、燃料タンク2Aへのガス供給不足となったりするのを抑制することができる。
【0095】
次に、図7は、本発明の第2の実施形態を示すものである。第2の実施形態の特徴は、ガス充填の開始から所定の時間(tc1)経過した時に、高上昇率から基準上昇率へ切換えたことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0096】
この場合、第1の実施形態による図6のオフセット計算の制御処理に代えて、図7のオフセット計算の制御処理が用いられる。
【0097】
即ち、図7中のステップ51とステップ52とは、図6中のステップ41とステップ42と同様の制御がなされる。そして、ステップ53では、本充填時間(tc)が昇圧率上昇終了時間(tc1)を経過したか否かを判定する(tc≧tc1)。即ち、制御装置28の充填制御部30は、図5中のステップ22で加算される本充填時間が予め設定された昇圧率上昇終了時間(tc1)を経過したか否かを判定する。
【0098】
従って、昇圧率上昇終了時間は、昇圧率を上昇させたガス充填(高上昇率)を開始してから基準上昇率でのガス充填に切換える時までの時間として予め設定された時間(閾値)である。換言すると、昇圧率上昇終了時間は、ガス充填を高上昇率で開始してから終了するまでの時間としてメモリ29に予め格納(記憶)されている。
【0099】
昇圧率上昇終了時間は、高上昇率でガス充填中に2次圧力センサ19で検出されるガス圧力が許容上限圧力(Pupper)を越えないように、実験、計算、シミュレーション等により、例えば30秒程度(好ましくは、20~35秒、より好ましくは、25~30秒)に設定されている。
【0100】
そして、ステップ53で「NO」、即ち本充填時間(tc)が昇圧率上昇終了時間(tc1)を経過していないと判定された場合には、リターンする。一方、本充填時間(tc)が昇圧率上昇終了時間(tc1)を経過したと判定された場合には、ステップ54に進む。
【0101】
ステップ54では、昇圧率上昇処理フラグ(OSf)を「0」にする(OSf=0)。即ち、制御装置28の充填制御部30は、燃料タンク2Aへのガス供給を高上昇率から基準上昇率に切換えるために、昇圧率上昇処理フラグを「1」から「0」に切換える。また、本充填時間が昇圧率上昇終了時間に達した時の昇圧率上昇値(OS)が固定値として設定されて、それ以降(基準上昇率で制御中)は図5中のステップ24で目標圧力(Ptc)が演算され、リターンする。
【0102】
かくして、第2の実施形態についても第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。特に第2の実施形態では、燃料タンク2Aへのガス充填の開始からの時間経過により、高上昇率から基準上昇率に切換えている。これにより、燃料タンク2Aへのガス充填中に高上昇率で制御されているのか、基準上昇率で制御されているのかが分かり易い。
【0103】
なお、上述した第1の実施形態では、昇圧率上昇値(OS)、初期値(OS0)、および最大昇圧率上昇値(OSmax)が予めメモリ29に格納(記憶)されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば充填開始前に温度センサ20が検出した検出値(温度)および前回ガス供給してからの経過時間に対応したテーブルまたは演算式をメモリ29に格納しておき、その格納されたテーブルまたは演算式を参照して昇圧率上昇値(OS)、初期値(OS0)、および最大昇圧率上昇値(OSmax)を設定してもよい。このことは、第2の実施形態による昇圧率上昇終了時間(tc1)についても同様である。
【0104】
また、上述した第1の実施形態では、車両2の燃料タンク2Aとディスペンサユニット4とで通信制御を行わない非通信充填により、燃料タンク2Aへのガス充填を制御した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば車両2の燃料タンク2Aの状態をディスペンサユニット4に送信する通信制御としてもよい。即ち、第1の実施形態では、下流側供給管路5Bに設けられた2次圧力センサ19の検出値を用いて車両2の燃料タンク2A内のガス圧力を測定した場合を例に挙げて説明した。しかしこれに限らず、車両2の燃料タンク2Aに燃料タンク2A内のガス圧力を検出する圧力センサを設け、この圧力センサの検出値をディスペンサユニット4の制御装置28に送信してガス充填制御を行ってもよい。このことは、第2の実施形態についても同様である。
【0105】
また、上述した第1の実施形態では、制御装置28の異常検出部31は、2次圧力センサ19が検出する圧力値が許容上限圧力(Pupper)または許容下限圧力(Plower)に達した時に、燃料タンク2Aへのガス充填が異常であると判定した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば制御装置28の異常検出部31は、許容上限圧力よりも低い圧力(許容上限圧力と最大昇圧率上昇値での圧力値との間)を所定の圧力値として設定してもよい。同様に、許容下限圧力よりも高い圧力を所定の圧力値として設定してもよい。このことは、第2の実施形態についても同様である。
【0106】
また、上述した第1の実施形態では、制御装置28の充填制御部30は、異常検出部31が異常を検出した場合に、高上昇率から基準上昇率に切換える場合およびガス充填を停止する場合について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば制御装置28の充填制御部30は、まず高上昇率から基準上昇率に切換える制御を行い、その後2次圧力センサ19がさらに高い圧力値を検出した場合に、ガス充填の停止を行う制御を行ってもよい。このことは、第2の実施形態についても同様である。
【0107】
また、上述した第2の実施形態では、燃料タンク2Aへのガス充填をガス充填の開始から所定時間(tc1)が経過した時に、高上昇率から基準上昇率に切換えた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば高上昇率から基準上昇率へのガス充填の切換えは、燃料タンク2Aへのガス充填を開始してから所定時間(tc1)が経過した時とするのではなく、燃料タンク2Aへのガス充填を開始してから所定時間(tc1)が経過した際に2次圧力センサ19により検出されると想定される想定圧力を2次圧力センサ19が検出した時に行うようにしてもよい。
【0108】
この場合、想定圧力は、燃料タンク2Aへのガス充填を高上昇率から基準上昇率に切換える圧力閾値で、許容上限圧力(Pupper)を越えないように設定されている。即ち、想定圧力は、昇圧率上昇終了圧力としてステップ2の初期圧測定充填等の準備工程で演算された初期圧力(Pc0)により決定され、各初期圧力(Pc0)に対応して制御装置28のメモリ29に予め格納(記憶)されている。
【0109】
また、燃料タンク2Aへのガス充填を、上述した第1の実施形態ではガス充填の開始から所定時間(tc1)経過するまでの間、上述した第2の実施形態では燃料タンク2Aへのガス充填をガス充填の開始から所定時間(tc1)経過した際に前記圧力センサ19により検出されると想定される想定圧力を検出するまでの間は、高上昇率でガス充填を行い、この高上昇率でのガス充填を行っている際に、例えば、ガス充填の進行に伴い蓄圧器6内のガスの圧力が低下することにより高上昇率でのガス充填を保てなくなった結果、圧力センサ19により検出された圧力が下限圧力(Plower)まで低下した場合には、図5のステップ28において「YES」と判定されることによりステップ31の昇圧率異常処理に移行するように構成されている。しかし、上述のとおり、高上昇率でのガス充填を保てなくなった原因は蓄圧器6内のガスの圧力の低下によるものであり、ガス充填制御の異常ではないので、この場合には、図5のステップ28において「YES」と判定された場合であってもステップ29の処理に移行するように構成する。即ち、ステップ28の処理自体を省略する制御構成としてもよい。このような構成とすれば、蓄圧器6内のガスを燃料タンク2Aにより多く充填することができる。
【0110】
以上説明した実施形態に基づくガス充填装置として、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
【0111】
第1の態様としては、ガスを蓄える蓄圧器とガス供給系統を介して接続され、当該ガスを被充填タンクに充填するためのノズルと、前記ガス供給系統に設けられ、前記被充填タンクへのガスの流通を制御する制御弁と、前記ガス供給系統に設けられ、前記ノズルによって前記被充填タンクに充填される前記ガスを冷却する冷却器と、前記被充填タンク内のガス圧力と前記ガス供給系統の前記制御弁よりも下流側のガス圧力とのうちのいずれか一方のガス圧力を検出する圧力検出手段と、前記被充填タンクへガス充填を行う場合の前記圧力検出手段により検出されるガス圧力の圧力上昇率が予め定められた基準上昇率で上昇するように前記制御弁を開閉制御する制御手段とからなるガス充填装置において、前記制御手段は、前記被充填タンクへのガス充填を開始した時には前記圧力上昇率を前記基準上昇率よりも高い高上昇率で制御し、前記高上昇率でガス充填を行っているときの前記圧力検出手段により検出されるガス圧力と前記基準上昇率で充填を行う場合の圧力検出手段により検出されるガス圧力との差が所定圧力差に達した後は前記基準上昇率で前記被充填タンクへのガス充填が行われるように前記制御弁を開閉制御することを特徴としている。
【0112】
第2の態様としては、ガスを蓄える蓄圧器とガス供給系統を介して接続され、当該ガスを被充填タンクに充填するためのノズルと、前記ガス供給系統に設けられ、前記被充填タンクへのガスの流通を制御する制御弁と、前記ガス供給系統に設けられ、前記ノズルによって前記被充填タンクに充填される前記ガスを冷却する冷却器と、前記被充填タンク内のガス圧力と前記ガス供給系統の前記制御弁よりも下流側のガス圧力とのうちのいずれか一方のガス圧力を検出する圧力検出手段と、前記被充填タンクへガス充填を行う場合の前記圧力検出手段により検出されるガス圧力の圧力上昇率が予め定められた基準上昇率で上昇するように前記制御弁を開閉制御する制御手段とからなるガス充填装置において、前記制御手段は、前記被充填タンクへのガス充填を開始した時から所定時間が経過するまで、または前記圧力検出手段が前記被充填タンクへのガス充填を開始した時から所定時間が経過した際に前記圧力検出手段により検出されると想定される想定圧力を検出するまでは前記圧力上昇率を前記基準上昇率よりも高い高上昇率で前記被充填タンクへのガス充填が行われるように制御し、前記所定時間が経過した後、または前記想定圧力を検出するまでは前記基準上昇率で前記被充填タンクへのガス充填が行われるように制御することを特徴としている。
【0113】
第3の態様としては、第1,第2の態様において、前記制御手段は、前記圧力検出手段により検出されたガス圧力が所定の圧力値に達したときには前記被充填タンクへのガス充填が異常となっていることを検出する異常検出部を有することを特徴としている。
【0114】
第4の態様としては、第3の態様において、前記制御手段は、前記異常検出部が前記被充填タンクへのガス充填が異常となっていることを検出した場合に前記被充填タンクへのガス充填を前記高上昇率から前記基準上昇率に切換えて制御することを特徴としている。
【0115】
第5の態様としては、第3の態様において、前記制御手段は、前記異常検出部が前記被充填タンクへのガス充填が異常となっていることを検出した場合に前記被充填タンクへのガス充填を停止することを特徴としている。
【符号の説明】
【0116】
1 ガス充填装置
2 車両
2A 燃料タンク(被充填タンク)
5 ガス供給管路(ガス供給系統)
6 蓄圧器
13 ノズル
16 流量調整弁(制御弁)
17 冷却器
19 2次圧力センサ(圧力検出手段)
28 制御装置(制御手段)
31 異常検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7