(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】スラブ板の運搬装置
(51)【国際特許分類】
B61D 3/12 20060101AFI20220628BHJP
E01B 37/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B61D3/12
E01B37/00 C
(21)【出願番号】P 2018107800
(22)【出願日】2018-06-05
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】福島 重美
(72)【発明者】
【氏名】仙▲台▼ 孝憲
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-039604(JP,U)
【文献】特開平06-255493(JP,A)
【文献】実開昭62-059245(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 3/12
E01B 37/00
B60P 3/00
B60P 3/16
B60P 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ軌道のスラブ板の運搬装置であって、
幅方向に延設すると共に、長手方向に沿って少なくとも2以上配置された横板と、該横板から所定の間隔で立設する櫛歯部とを備え、
前記櫛歯部は前記スラブ板を複数縦積可能に保持すると共に、幅方向に前記スラブ板を拘束する第1の拘束機構を備え
、
前記第1の拘束機構は、前記横板から立設すると共に上部に所定の傾斜角の斜面を有する下キャンバ部材と、前記斜面に対応する斜面を有する上キャンバ部材とを備え、前記下キャンバ部材と前記上キャンバ部材とを締結する締結手段を備えることを特徴とするスラブ板の運搬装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のスラブ板の運搬装置において、
前記横板には、前記スラブ板の側面に形成されたアンカ孔に挿入可能な第2の拘束機構を備えることを特徴とするスラブ板の運搬装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のスラブ板の運搬装置において、
前記横板には、前記スラブ板と当接する位置に弾性部材が取り付けられることを特徴とするスラブ板の運搬装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載のスラブ板の運搬装置において、
前記横板は、吊下げ部を有する架台フレームに取り付けられることを特徴とするスラブ板の運搬装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載のスラブ板の運搬装置において、
縦積された前記スラブ板の上方には、前記スラブ板を幅方向に拘束する第3の拘束機構を備えることを特徴とするスラブ板の運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ軌道敷設工事に用いられるコンクリート製のスラブ板を運搬する運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線等の高速鉄道に用いられる軌道は、軌道の精度や整備性を考慮してスラブ軌道が広く用いられている。
図9に示すように、スラブ軌道1は、下部路盤構造となる路盤コンクリート2上にセメントアスファルトモルタル等からなる緩衝部材3を介してスラブ板10が敷設されており、スラブ板10には、レール締結装置5によって軌道レール4が長手方向に沿って敷設されている。
【0003】
このようなスラブ軌道1の敷設工事は、あらかじめ工場でスラブ板10を製造し、敷設地点まで該スラブ板10を運搬して路盤コンクリート2にスラブ板10を敷設して行われる。スラブ板10の敷設作業は、スラブ板10の側面に形成されたアンカ孔11に吊下げ部材を挿入して、クレーンで吊るして敷設を行う。また、スラブ板10の運搬は、下記特許文献1及び2に記載されているように、軌道レール4の取付面12を上方にしてトラックに平積みで運搬することが標準化されている。このような平積み状態での運搬は、特殊な架台やフレームなどを必要とせずに簡易に実施することができるというメリットがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭49-64115号公報
【文献】実開昭48-39604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の運搬方法によると、平積みにされたスラブ板10は、スラブ板10の自重による自重反りに抵抗する断面係数や断面二次モーメントが小さいことから、平積み状態の最長継続時間は4日間までとされている。そのため、このような運搬方法では、長距離の運搬や船などを用いた国外への運搬を行うことができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、上述した最長継続時間を越えてスラブ板を運搬することができる運搬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスラブ板の運搬装置は、幅方向に延設すると共に、長手方向に沿って少なくとも2以上配置された横板と、該横板から所定の間隔で立設する櫛歯部とを備え、前記櫛歯部は前記スラブ板を複数縦積可能に保持すると共に、幅方向に前記スラブ板を拘束する第1の拘束機構を備え、前記第1の拘束機構は、前記横板から立設すると共に上部に所定の傾斜角の斜面を有する下キャンバ部材と、前記斜面に対応する斜面を有する上キャンバ部材とを備え、前記下キャンバ部材と前記上キャンバ部材とを締結する締結手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るスラブ板の運搬装置において、前記横板には、前記スラブ板の側面に形成されたアンカ孔に挿入可能な第2の拘束機構を備えると好適である。
【0010】
また、本発明に係るスラブ板の運搬装置において、前記横板には、前記スラブ板と当接する位置に弾性部材が取り付けられると好適である。
【0011】
また、本発明に係るスラブ板の運搬装置において、前記横板は、吊下げ部を有する架台フレームに取り付けられると好適である。
【0012】
また、本発明に係るスラブ板の運搬装置において、縦積された前記スラブ板の上方には、前記スラブ板を幅方向に拘束する第3の拘束機構を備えると好適である。
【0013】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスラブ板の運搬装置によれば、スラブ板を複数縦積可能に保持するので、スラブ板を平積みにした場合と比較して、自重反りに抵抗する断面係数や断面二次モーメントが大きくなるので、運搬の最長継続時間を大幅に伸ばすことができ、例えばスラブ板を国外に運搬することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るスラブ板の運搬装置の斜視図。
【
図2】本実施形態に係るスラブ板の運搬装置の構造を説明するための一部分解図。
【
図6】第1の拘束機構の作用を説明するための図であって、(a)は拘束前、(b)は拘束後を示す図。
【
図7】本実施形態に係るスラブ板の運搬装置の作業状態を説明するための図。
【
図8】本実施形態に係るスラブ板の運搬装置の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本実施形態に係るスラブ板の運搬装置の斜視図であり、
図2は、本実施形態に係るスラブ板の運搬装置の構造を説明するための一部分解図であり、
図3は、
図2における横板の拡大図であり、
図4は、
図3における横板の平面図であり、
図5は、
図3における第1の拘束機構の拡大図であり、
図6は、第1の拘束機構の作用を説明するための図であって、(a)は拘束前、(b)は拘束後を示す図であり、
図7は、本実施形態に係るスラブ板の運搬装置の作業状態を説明するための図であり、
図8は、本実施形態に係るスラブ板の運搬装置の上面図であり、
図9は、スラブ軌道の概要を説明するための斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るスラブ板の運搬装置20は、平板状のスラブ板10を取付面12を側方に向けた縦積状態で保持して運搬することができるように構成されており、クレーン等で吊下げ可能な吊下げ部41と、縦積されたスラブ板10を覆うように上枠45,縦枠44及び下枠46からなる架台フレーム40と、下枠46の長手方向に沿って少なくとも2以上配置された横板21を備えている。また、上枠45,縦枠44及び下枠46は、筋交いによる補強部43をそれぞれ備えている。
【0019】
上枠45,縦枠44,下枠46並びに横板21は、所定の強度を有する鋼材で構成されると好適であり、例えばH鋼がより好適に用いられる。
【0020】
図2及び3に示すように、架台フレーム40は、下方に幅方向に沿って延びる横板21が長手方向に沿って一対取り付けられている。横板21の上面には、縦積されたスラブ板10を保持する櫛歯部22が複数立設しており、縦枠44と近接する外側の櫛歯部22と縦枠44との間には木製ブロック24が取り付けられている。また、隣り合う櫛歯部22の間には弾性部材25が貼り付けられており、当該弾性部材25が縦積されたスラブ板10と当接することで、スラブ板10の損傷を防止している。なお、弾性部材25は、所定の弾性を有する材料で構成されれば、どのような材料を用いても構わないが、例えばゴムシートなどが好適に用いられる。
【0021】
図4に示すように、横板21には上述した弾性部材25と干渉しないように横板21の延設方向に沿って延びる長孔23が形成されている。該長孔23は、後述する第2の拘束機構を構成する栓部材26を挿入可能に形成されている。
【0022】
また、
図5に示すように、スラブ板10に形成されたアンカ孔11に横板21の下方から栓部材26を挿通して第2の拘束機構を構成している。この栓部材26をアンカ孔11へ挿通する第2の拘束機構によってスラブ板10を横板21の幅方向に移動不能に拘束している。
【0023】
また、
図5に示すように、櫛歯部22は、スラブ板10を横板21の延設方向に沿って拘束する第1の拘束機構30を備えている。第1の拘束機構30は、横板21から立設すると共に上部に所定の傾斜角の斜面を有する下キャンバ部材31と該斜面に対応するように当接する斜面を有する上キャンバ部材32とを備え、下キャンバ部材31と上キャンバ部材32とを締結する締結手段33を備えている。なお、締結手段33は、下キャンバ部材31と上キャンバ部材32のそれぞれに形成された貫通孔34a,34bに挿通されている。
【0024】
次に、第1の拘束機構30の動作について
図6を参照して説明を行う。まず、
図6(a)に示すように、第1の拘束機構30がスラブ板10を拘束していない状態では、締結手段33を緩めた状態であって、下キャンバ部材31と上キャンバ部材32は斜面同士が全面当接し、貫通孔34a,34bが同軸に配置されている。この状態では、隣り合う櫛歯部22の間隔はスラブ板10の厚みよりも若干広く形成されており、スラブ板10の着脱が容易に行うことができるように構成されている。
【0025】
これに対し、
図6(b)に示すように、締結手段33を締め付けると、上キャンバ部材32が斜面に沿って下降することで隣り合う櫛歯部22の間隔が狭まる。このとき、櫛歯部22の間にスラブ板10が載置されていると、上キャンバ部材32によってスラブ板10を保持するように上キャンバ部材32がスラブ板10に当接するので、スラブ板10を横板21の延設方向に移動不能に拘束することができる。なお、下キャンバ部材31および上キャンバ部材32は、スラブ板10に直接当接することでスラブ板10の損傷を防止するために例えば木製の部材で構成されると好適である。
【0026】
また、下キャンバ部材31および上キャンバ部材32に形成された貫通孔34a,34bは、締結手段33よりも大径に形成されており、
図6(b)に示すように、締結手段33を締め付けて上キャンバ部材32が下降して貫通孔34a,34bの軸がずれた場合でも締結手段33が傾斜することができる程度にゆとりをもって形成されている。
【0027】
なお、本実施形態に係るスラブ板の運搬装置20は、
図7に示すように、スラブ板10の上側を水平方向に拘束する第3の拘束機構を備えている。また、架台フレーム40の上方に横板21と略平行に延設された吊下げ枠47が取り付けられており、該吊下げ枠47には、吊下げ部41が取り付けられている。
【0028】
また、
図8に示すように、第3の拘束機構は、隣り合うスラブ板10の側面に形成されたアンカ孔11同士を連結する連結板42として構成されており、隣り合うスラブ板10の間には上述した第1の拘束機構30と同様の上キャンバ部材、下キャンバ部材及び締結手段からなるキャンバ部材が挟まれてスラブ板10が互いに緩衝しないように構成されている。ここで、連結板42は、スラブ板10の側面に二つ形成されたアンカ孔11のうち一方を用いて隣り合うスラブ板10同士が連結されており、さらに隣り合うスラブ板10の連結には、他方のアンカ孔11を用いて連結板42を取り付けている。
【0029】
なお、連結板42のアンカ孔11への取り付けは、ボルト等を用いて締結されると好適であるが、スラブ板10の運搬中に架台フレーム40等に変形が生じた際に、架台フレーム40の歪み変形に対する遊びの確保およびボルト等の緩み防止のために、ボルト等は丸ワッシャおよびばねワッシャを介して締結されていると好適である。
【0030】
また、キャンバ部材には、キャンバ部材の落下を防止するために、落下防止板34を介して連結板42に組み付けられている。ここで、落下防止板34は連結板42からキャンバ部材が落下しない程度に保持できればどのような部材を用いてもよく、例えば、合成樹脂製の板部材を用いると好適である。なお、落下防止板34の取付は、締結手段によって共締めされていると好適である。
【0031】
なお、
図7に示すように、本実施形態に係るスラブ板の運搬装置20は、架台フレーム40にスラブ板10を縦積に載置し、第1の拘束機構30および栓部材26を用いた第2の拘束機構によってスラブ板10を水平方向に拘束し、第3の拘束機構42を取り付けることで水平方向にスラブ板10を拘束することで荷揚げ及び荷下しの際に吊下げ部41をクレーンなどで吊下げた場合並びに輸送中に生じる振動や加速度を受けた場合であってもスラブ板10同士が接触したり、スラブ板10が架台フレーム40に接触することによるスラブ板10の損傷を防止してスラブ板10の確実な運搬及び輸送を行うことができる。
【0032】
このように本実施形態に係るスラブ板の運搬装置20によれば、スラブ板10を縦積にして運搬を行うことができるので、スラブ板10の自重反りに対向する断面係数や断面二次モーメントを確保して従来4日間までと限定されていた運搬の最長継続時間を超えてスラブ板10の運搬を行うことできるので、長距離の運搬や船などを用いた国外への運搬を行うことができる。
【0033】
また、上述した本実施形態に係るスラブ板の運搬装置20は、トラックに縦積できるサイズや重量を考慮してスラブ板10を4枚縦積にすることができるように櫛歯部22を5つ設けた場合について説明を行ったが、櫛歯部22の数や縦積できるスラブ板10の数は必要に応じて適宜増減しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0034】
1 スラブ軌道, 2 路盤コンクリート, 3 緩衝部材, 4 軌道レール, 5 レール締結装置, 10 スラブ板, 11 アンカ孔, 12 取付面, 20 スラブ板の運搬装置, 21 横板, 22 櫛歯部, 23 長孔, 24 木製ブロック, 25 弾性部材, 26 栓部材, 30 第1の拘束機構, 31 下キャンバ部材, 32 上キャンバ部材, 33 締結手段, 34 落下防止板, 34a,34b 貫通孔, 40 架台フレーム, 41 吊下げ部, 42 第3の拘束機構(連結板), 43 補強部, 44 縦枠, 45 上枠, 46 下枠、 47 吊下げ枠。