(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-27
(45)【発行日】2022-07-05
(54)【発明の名称】AC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
H02M7/12 F
H02M7/12 R
(21)【出願番号】P 2018108563
(22)【出願日】2018-06-06
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2017175111
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秦野 裕之
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-099261(JP,A)
【文献】特開2007-181255(JP,A)
【文献】特開平11-332231(JP,A)
【文献】特開2007-028894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0130339(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流入力電圧が印加される一次巻線と、
前記一次巻線に電磁結合された二次巻線と、
前記一次巻線に直列接続された双方向スイッチと、
前記双方向スイッチ及び前記一次巻線の少なくとも一方に並列接続された共振コンデンサと、
共振インダクタンス成分と、
前記二次巻線に生じる誘起電圧を全波整流する全波整流回路と、
前記全波整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、
を有し、
前記二次巻線からフォワード電圧とフライバック電圧の双方を取り出すことにより、前記交流入力電圧を直流出力電圧に直接変換するAC/DCコンバータであって、
前記一次巻線の巻数、または、前記一次巻線の巻数と前記共振コンデンサの容量値の双方を切り替える切替スイッチをさらに有
し、
前記一次巻線は、第1タップと第2タップとの間に第3タップを備えており、
前記切替スイッチは、前記第1タップと前記第3タップのいずれに前記交流入力電圧を印加するかを切り替えるものであって、
前記切替スイッチは、共通ノードが前記交流入力電圧の印加端に接続されて第1選択ノードが前記第1タップに接続された第1切替スイッチと、共通ノードが前記第1切替スイッチの第2選択ノードに接続されて第1選択ノードがオープンとされて第2選択ノードが前記第3タップに接続された第2切替スイッチを含み、
前記共振コンデンサは、前記第1切替スイッチの共通ノードと前記第2切替スイッチの共通ノードとの間に接続された第1共振コンデンサと、前記第2切替スイッチの共通ノードと前記第2タップとの間に接続された第2共振コンデンサを含む、
AC/DCコンバータ。
【請求項2】
交流入力電圧が印加される一次巻線と、
前記一次巻線に電磁結合された二次巻線と、
前記一次巻線に直列接続された双方向スイッチと、
前記双方向スイッチ及び前記一次巻線の少なくとも一方に並列接続された共振コンデンサと、
共振インダクタンス成分と、
前記二次巻線に生じる誘起電圧を全波整流する全波整流回路と、
前記全波整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、
を有し、
前記二次巻線からフォワード電圧とフライバック電圧の双方を取り出すことにより、前記交流入力電圧を直流出力電圧に直接変換するAC/DCコンバータであって、
前記一次巻線の巻数、または、前記一次巻線の巻数と前記共振コンデンサの容量値の双方を切り替える切替スイッチをさらに有し、
前記一次巻線は、第1タップと第2タップとの間に第3タップを備えており、
前記切替スイッチは、前記第1タップと前記第3タップのいずれに前記交流入力電圧を印加するかを切り替えるものであって、
前記切替スイッチは、共通ノードが前記交流入力電圧の印加端に接続されて第1選択ノードが前記第1タップに接続されて第2選択ノードが前記第3タップに接続されており、
前記共振コンデンサは、
前記切替スイッチの共通ノードと前記第3タップとの間に接続された第1共振コンデンサと、前記第3タップと前記第2タップとの間に接続された第2共振コンデンサを含む
、AC/DCコンバータ。
【請求項3】
交流入力電圧が印加される一次巻線と、
前記一次巻線に電磁結合された二次巻線と、
前記一次巻線に直列接続された双方向スイッチと、
前記双方向スイッチ及び前記一次巻線の少なくとも一方に並列接続された共振コンデンサと、
共振インダクタンス成分と、
前記二次巻線に生じる誘起電圧を全波整流する全波整流回路と、
前記全波整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、
を有し、
前記二次巻線からフォワード電圧とフライバック電圧の双方を取り出すことにより、前記交流入力電圧を直流出力電圧に直接変換するAC/DCコンバータであって、
前記一次巻線の巻数、または、前記一次巻線の巻数と前記共振コンデンサの容量値の双方を切り替える切替スイッチをさらに有し、
前記一次巻線は、第1の一次巻線と第2の一次巻線を含み、
前記双方向スイッチは、前記第1の一次巻線と前記第2の一次巻線との間に直列接続されている
、AC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記第1の一次巻線は、第1タップと第2タップとの間に第3タップを備えており、
前記双方向スイッチは、前記第1の一次巻線の第2タップと前記第2の一次巻線の第1タップとの間に接続されており、
前記切替スイッチは、共通ノードが前記交流入力電圧の印加端に接続されて第1選択ノードが前記第1の一次巻線の第1タップに接続されて第2選択ノードが前記第1の一次巻線の第3タップに接続された第1切替スイッチと、共通ノードが一次側コモンに接続されて第1選択ノードが前記第2の一次巻線の第2タップに接続されて第2選択ノードが前記第2の一次巻線の第1タップに接続された第2切替スイッチを含む
、請求項3に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記第1の一次巻線及び前記第2の一次巻線は、それぞれ、第1タップと第2タップとの間に第3タップを備えており、
前記双方向スイッチは、前記第1の一次巻線の第2タップと前記第2の一次巻線の第1タップとの間に接続されており、
前記切替スイッチは、共通ノードが前記交流入力電圧の印加端に接続されて第1選択ノードが前記第1の一次巻線の第1タップに接続されて第2選択ノードが前記第1の一次巻線の第3タップに接続された第1切替スイッチと、共通ノードが一次側コモンに接続されて第1選択ノードが前記第2の一次巻線の第2タップに接続されて第2選択ノードが前記第2の一次巻線の第3タップに接続された第2切替スイッチを含む
、請求項3に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記切替スイッチは、共通ノードが前記双方向スイッチに接続されて第1選択ノードが前記第2の一次巻線の第1タップに接続されて第2選択ノードが前記第2の一次巻線の第2タップに接続されている
、請求項3に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記双方向スイッチは、前記第1の一次巻線の第2タップと前記第2の一次巻線の第1タップとの間に接続されており、
前記切替スイッチは、共通ノードが一次側コモンに接続されて第1選択ノードが前記第2の一次巻線の第2タップに接続されて第2選択ノードが前記第2の一次巻線の第1タップに接続されている
、請求項3に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項8】
前記共振インダクタンス成分は、前記二次巻線のセンタータップと二次側コモンとの間に接続されたコイルである
、請求項1~7のいずれか一項に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項9】
前記双方向スイッチの両端間電圧またはその分圧電圧がゼロとなるタイミングで前記双方向スイッチをオンさせる制御回路をさらに有する
、請求項1~8のいずれか一項に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項10】
前記双方向スイッチの両端間電圧を容量分圧して前記分圧電圧を生成する容量分圧回路をさらに有する
、請求項9に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項11】
前記容量分圧回路は、前記双方向スイッチの両端間で互いに直列接続された第1コンデンサと第2コンデンサを含み、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサの接続ノードから前記分圧電圧を出力する
、請求項10に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項12】
前記第1コンデンサの一端は、前記制御回路の基準電位端に接続されている
、請求項11に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項13】
前記容量分圧回路は、前記第1コンデンサに並列接続された放電スイッチをさらに含む
、請求項12に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項14】
前記容量分圧回路は、前記放電スイッチに直列接続された電圧源をさらに含む
、請求項13に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項15】
前記共振インダクタンス成分は、電流の増加に伴ってインダクタンス値が減少するスインギングタイプである
、請求項1~14のいずれか一項に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項16】
前記双方向スイッチは、パルストランスを介して駆動される
、請求項1~15のいずれか一項に記載のAC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、AC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交流入力電圧を直流出力電圧に直接変換することのできるAC/DCコンバータが提案されている(例えば、本願出願人による特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のAC/DCコンバータにおいて、例えば、交流入力電圧が100Vから220Vに変わったときには、直流出力電圧が一定であるならば、入力電流が1/2以下となり、一次側スイッチのオン時間が約1/4となるので、スイッチング制御が非常に難しくなる。逆に、交流入力電圧が220Vから100Vに変わったときには、入力電流が2倍以上となり、一次側スイッチのオン時間が約4倍となるので、同様にスイッチング制御が非常に難しくなる。このように、上記従来のAC/DCコンバータでは、様々な交流入力電圧に対応することが困難であるという課題があった。
【0005】
また、上記従来のAC/DCコンバータでは、一次側スイッチのオン/オフ動作に伴うスイッチングノイズについても、さらなる改善の余地があった。
【0006】
そこで、本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記課題に鑑み、様々な交流入力電圧に対応することのできるAC/DCコンバータ、ないしは、スイッチングノイズを低減することのできるAC/DCコンバータを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されているAC/DCコンバータは、交流入力電圧が印加される一次巻線と、前記一次巻線に電磁結合された二次巻線と、前記一次巻線に直列接続された双方向スイッチと、前記双方向スイッチ及び前記一次巻線の少なくとも一方に並列接続された共振コンデンサと、共振インダクタンス成分と、前記二次巻線に生じる誘起電圧を全波整流する全波整流回路と、前記全波整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、を有し、前記二次巻線からフォワード電圧とフライバック電圧の双方を取り出すことにより、前記交流入力電圧を直流出力電圧に直接変換するAC/DCコンバータであって、前記一次巻線の巻数、または、前記一次巻線の巻数と前記共振コンデンサの容量値の双方を切り替える切替スイッチをさらに有する構成(第1の構成)とされている。
【0008】
なお、第1の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記一次巻線は、第1タップと第2タップとの間に第3タップを備えており、前記切替スイッチは、前記第1タップと前記第3タップのいずれに前記交流入力電圧を印加するかを切り替える構成(第2の構成)にするとよい。
【0009】
また、第2の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記切替スイッチは、共通ノードが前記交流入力電圧の印加端に接続されて第1選択ノードが前記第1タップに接続された第1切替スイッチと、共通ノードが前記第1切替スイッチの第2選択ノードに接続されて第1選択ノードがオープンとされて第2選択ノードが前記第3タップに接続された第2切替スイッチを含み、前記共振コンデンサは、前記第1切替スイッチの共通ノードと前記第2切替スイッチの共通ノードとの間に接続された第1共振コンデンサと、前記第2切替スイッチの共通ノードと前記第2タップとの間に接続された第2共振コンデンサを含む構成(第3の構成)にするとよい。
【0010】
また、第2の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記切替スイッチは、共通ノードが前記交流入力電圧の印加端に接続されて第1選択ノードが前記第1タップに接続されて第2選択ノードが前記第3タップに接続されており、前記共振コンデンサは、前記切替スイッチの共通ノードと前記第3タップとの間に接続された第1共振コンデンサと、前記第3タップと前記第2タップとの間に接続された第2共振コンデンサを含む構成(第4の構成)にしてもよい。
【0011】
また、本明細書中に開示されているAC/DCコンバータは、交流入力電圧が印加される一次巻線と、前記一次巻線に電磁結合された二次巻線と、前記一次巻線に直列接続された双方向スイッチと、前記双方向スイッチ及び前記一次巻線の少なくとも一方に並列接続された共振コンデンサと、共振インダクタンス成分と、前記二次巻線に生じる誘起電圧を全波整流する全波整流回路と、前記全波整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサとを有し、前記二次巻線からフォワード電圧とフライバック電圧の双方を取り出すことにより、前記交流入力電圧を直流出力電圧に直接変換するAC/DCコンバータであって、前記一次巻線は、第1の一次巻線と第2の一次巻線を含み、前記双方向スイッチは、前記第1の一次巻線と前記第2の一次巻線の間に直列接続された構成(第5の構成)とされている。
【0012】
なお、第5の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記共振コンデンサは、前記第1の一次巻線に並列接続された第1共振コンデンサと、前記第2の一次巻線に並列接続された第2共振コンデンサを含む構成(第6の構成)にするとよい。
【0013】
また、第5又は第6の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記二次巻線は、前記第1の一次巻線及び前記第2の一次巻線の双方と共通のコアを介して電磁結合されている構成(第7の構成)にするとよい。
【0014】
また、第5又は第6の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記二次巻線は、前記第1の一次巻線と電磁結合された第1の二次巻線と、前記第2の一次巻線と電磁結合された第2の二次巻線を含む構成(第8の構成)にしてもよい。
【0015】
また、本明細書中に開示されているAC/DCコンバータは、交流入力電圧が印加される一次巻線と、前記一次巻線に電磁結合された二次巻線と、前記一次巻線に直列接続された双方向スイッチと、前記双方向スイッチ及び前記一次巻線の少なくとも一方に並列接続された共振コンデンサと、共振インダクタンス成分と、前記二次巻線に生じる誘起電圧を全波整流する全波整流回路と、前記全波整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサとを有し、前記二次巻線からフォワード電圧とフライバック電圧の双方を取り出すことにより、前記交流入力電圧を直流出力電圧に直接変換するAC/DCコンバータであって、前記一次巻線の巻数、または、前記一次巻線の巻数と前記共振コンデンサの容量値の双方を切り替える切替スイッチをさらに有し、前記一次巻線は、第1の一次巻線と第2の一次巻線を含み、前記双方向スイッチは、前記第1の一次巻線と前記第2の一次巻線との間に直列接続されている構成(第9の構成)とされている。
【0016】
なお、第9の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記第1の一次巻線は、第1タップと第2タップとの間に第3タップを備えており、前記双方向スイッチは、前記第1の一次巻線の第2タップと前記第2の一次巻線の第1タップとの間に接続されており、前記切替スイッチは、共通ノードが前記交流入力電圧の印加端に接続されて第1選択ノードが前記第1の一次巻線の第1タップに接続されて第2選択ノードが前記第1の一次巻線の第3タップに接続された第1切替スイッチと、共通ノードが一次側コモンに接続されて第1選択ノードが前記第2の一次巻線の第2タップに接続されて第2選択ノードが前記第2の一次巻線の第1タップに接続された第2切替スイッチとを含む構成(第10の構成)にするとよい。
【0017】
また、第9の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記第1の一次巻線及び前記第2の一次巻線は、それぞれ、第1タップと第2タップとの間に第3タップを備えており、前記双方向スイッチは、前記第1の一次巻線の第2タップと前記第2の一次巻線の第1タップとの間に接続されており、前記切替スイッチは、共通ノードが前記交流入力電圧の印加端に接続されて第1選択ノードが前記第1の一次巻線の第1タップに接続されて第2選択ノードが前記第1の一次巻線の第3タップに接続された第1切替スイッチと、共通ノードが一次側コモンに接続されて第1選択ノードが前記第2の一次巻線の第2タップに接続されて第2選択ノードが前記第2の一次巻線の第3タップに接続された第2切替スイッチを含む構成(第11の構成)にしてもよい。
【0018】
また、第9の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記切替スイッチは、共通ノードが前記双方向スイッチに接続されて第1選択ノードが前記第2の一次巻線の第1タップに接続されて第2選択ノードが前記第2の一次巻線の第2タップに接続されている構成(第12の構成)にしてもよい。
【0019】
また、第9の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記双方向スイッチは、前記第1の一次巻線の第2タップと前記第2の一次巻線の第1タップとの間に接続されており、前記切替スイッチは、共通ノードが一次側コモンに接続されて第1選択ノードが前記第2の一次巻線の第2タップに接続されて第2選択ノードが前記第2の一次巻線の第1タップに接続されている構成(第13の構成)にしてもよい。
【0020】
また、第1~第13いずれかの構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記共振インダクタンス成分は、前記二次巻線のセンタータップと二次側コモンとの間に接続されたコイルである構成(第14の構成)にするとよい。
【0021】
また、第1~第14いずれかの構成から成るAC/DCコンバータは、前記双方向スイッチの両端間電圧またはその分圧電圧がゼロとなるタイミングで前記双方向スイッチをオンさせる制御回路をさらに有する構成(第15の構成)にするとよい。
【0022】
また、第15の構成から成るAC/DCコンバータは、前記双方向スイッチの両端間電圧を容量分圧して前記分圧電圧を生成する容量分圧回路をさらに有する構成(第16の構成)にするとよい。
【0023】
また、第16の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記容量分圧回路は、前記双方向スイッチの両端間で互いに直列接続された第1コンデンサと第2コンデンサを含み、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサの接続ノードから前記分圧電圧を出力する構成(第17の構成)にするとよい。
【0024】
また、第17の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記第1コンデンサの一端は、前記制御回路の基準電位端に接続されている構成(第18の構成)にするとよい。
【0025】
また、第18の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記容量分圧回路は、前記第1コンデンサに並列接続された放電スイッチをさらに含む構成(第19の構成)にするとよい。
【0026】
また、第19の構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記容量分圧回路は、前記放電スイッチに直列接続された電圧源を更に含む構成(第20の構成)にするとよい。
【0027】
また、第1~第20いずれかの構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記共振インダクタンス成分は、電流の増加に伴ってインダクタンス値が減少するスインギングタイプである構成(第21の構成)にするとよい。
【0028】
また、第1~第21いずれかの構成から成るAC/DCコンバータにおいて、前記双方向スイッチは、パルストランスを介して駆動される構成(第22の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0029】
本明細書中に開示されているAC/DCコンバータであれば、様々な交流入力電圧に対応すること、ないしは、スイッチングノイズを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】AC/DCコンバータの基本構成(比較例)を示す回路図
【
図1B】AC/DCコンバータの第1変形例を示す回路図
【
図1C】AC/DCコンバータの第2変形例を示す回路図
【
図3】トランスの入出力比と巻線比との関係を説明するための模式図
【
図4】交流入力電圧と動作モードとの関係を示す模式図
【
図5】第1動作モードでのスイッチオン期間における電流経路を示す回路図
【
図6】第1動作モードでのスイッチオフ期間における電流経路を示す回路図
【
図8】第2動作モードでのスイッチオン期間における電流経路を示す回路図
【
図9】第2動作モードでのスイッチオフ期間における電流経路を示す回路図
【
図11】AC/DCコンバータの第1実施形態を示す回路図
【
図12】AC/DCコンバータの第2実施形態を示す回路図
【
図13】AC/DCコンバータの第3実施形態を示す回路図
【
図14】AC/DCコンバータの第4実施形態を示す回路図
【
図15】AC/DCコンバータの第5実施形態を示す回路図
【
図17】AC/DCコンバータの第6実施形態を示す回路図
【
図18】AC/DCコンバータの第7実施形態を示す回路図
【
図19】AC/DCコンバータの第8実施形態を示す回路図
【
図20】AC/DCコンバータの第9実施形態を示す回路図
【
図21】AC/DCコンバータの第10実施形態を示す回路図
【
図22】AC/DCコンバータの第11実施形態を示す回路図
【
図23】AC/DCコンバータの第12実施形態を示す回路図
【
図24】AC/DCコンバータの第13実施形態を示す回路図
【
図25】AC/DCコンバータの第14実施形態を示す回路図
【
図26】スインギングチョーク+トランス(共振型)の総合特性を示す図
【
図27】AC/DCコンバータの第15実施形態を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0031】
<基本構成(比較例)>
図1Aは、AC/DCコンバータの基本構成(=後出の実施形態と対比される比較例に相当)を示す回路図である。本構成例のAC/DCコンバータ1は、一次回路系1p(GND1系)と二次回路系1s(GND2系)との間を電気的に絶縁しつつ、交流電源PWから供給される交流入力電圧Viを直流出力電圧Voに直接変換して負荷Zに供給する電源装置であり、トランス10と、双方向スイッチ20と、共振コンデンサ30と、全波整流回路40と、平滑コンデンサ50と、帰還回路60と、制御回路70と、センス抵抗80と、電力フューズ90と、フィルタ回路100と、を有する。
【0032】
トランス10は、一次回路系1pに設けられた一次巻線11と、二次回路系1sに設けられて一次巻線11に磁気結合された二次巻線12と、を含む。一次巻線11の第1タップT11は、フィルタ回路100と電力フューズ90を介して交流電源PWの第1端に接続されている。一次巻線11の第2タップT12は、双方向スイッチ20、センス抵抗80、及び、フィルタ回路100を介して交流電源PWの第2端に接続されている。二次巻線12の第1タップT21と第2タップT22は、それぞれ、全波整流回路40を介して直流出力電圧Voの出力端(=負荷Zの第1端)に接続されている。二次巻線12のセンタータップT23は、二次側コモンGND2(=負荷Zの第2端)に接続されている。
【0033】
特に、本構成例のAC/DCコンバータ1では、トランス10として、漏れインダクタンス11xを持つリーケージトランスないしは共振トランスが用いられている(その理由については後述)。なお、本図では、図示の便宜上、漏れインダクタンス11xが一次巻線11の第1タップT11側に付随しているものとして描写されている。
【0034】
双方向スイッチ20の第1端は、一次巻線11の第2タップT12に接続されている。双方向スイッチ20の第2端は、センス抵抗80の第1端と一次側コモンGND1にそれぞれ接続されている。このようにして接続された双方向スイッチ20は、制御回路70から入力される制御信号Sctrlに応じて、一次巻線11に流れる一次電流I1をオン/オフするための出力スイッチとして機能する。
【0035】
共振コンデンサ30は、双方向スイッチ20に並列接続されており、トランス10の一次巻線11及び漏れインダクタンス11xと共に、LLC共振回路を形成している。従って、トランス10としてリーケージトランスないしは共振トランスを用いたことに伴い、一次巻線11から二次巻線12に供給されない余剰エネルギが生じても、これを回生して利用することができるので、AC/DCコンバータ1の変換効率を低下させずに済む。
【0036】
また、共振コンデンサ30を設けることにより、双方向スイッチ20のオフ時におけるトランス10のエネルギ変動が緩やかとなる。従って、従来必須とされていたスナバ回路等のサージ吸収素子が不要となる上、高調波成分も軽減することが可能となる。
【0037】
なお、共振コンデンサ30の接続位置については、
図1Bで示したように、双方向スイッチ20に直列接続する構成(=共振コンデンサ30をトランス10の一次巻線11に並列接続する構成)としてもよいし、
図1Cで示したように、双方向スイッチ20に並列接続される共振コンデンサ30aと、双方向スイッチ20に直列接続される共振コンデンサ30bの双方を有する構成としてもよい。
【0038】
全波整流回路40は、二次巻線12に生じる誘起電圧(=フライバック電圧ないしはフォワード電圧、詳細は後述)を全波整流する回路部であり、ダイオード41及び42を含む。ダイオード41のアノードは、二次巻線12の第1タップT21に接続されている。ダイオード42のアノードは、二次巻線12の第2タップT22に接続されている。ダイオード41のカソードとダイオード42のカソードは、いずれも直流出力電圧Voの出力端に接続されている。
【0039】
なお、ダイオード41が順バイアスでダイオード42が逆バイアスであるときには、二次巻線12の第1タップT21からダイオード41を介して直流出力電圧Voの出力端に至る電流経路で二次電流I2が流れる。一方、ダイオード42が順バイアスでダイオード41が逆バイアスであるときには、二次巻線12の第2タップT22からダイオード42を介して直流出力電圧Voの出力端に至る電流経路で二次電流I2が流れる。
【0040】
また、二次巻線12のセンタータップT23を廃止した上で、全波整流回路40をダイオードブリッジ化してもよい。
【0041】
平滑コンデンサ50は、直流出力電圧Voの出力端と二次側コモンGND2との間に接続されており、全波整流回路40の出力を平滑化して直流出力電圧Voを生成する。
【0042】
帰還回路60は、直流出力電圧Voに応じた帰還信号Sfbを生成して制御回路70に出力する。なお、帰還信号Sfbを二次回路系1sから一次回路系1pへ伝達するためには、フォトカプラなどの絶縁伝達素子を用いればよい。
【0043】
制御回路70は、一次側コモンGND1を基準電位として動作し、双方向スイッチ20をオン/オフさせるための制御信号Sctrlを生成する。なお、制御回路70は、帰還回路60から入力される帰還信号Sfbを監視して、直流出力電圧Voが所望の目標値と一致するように双方向スイッチ20をオン/オフさせる機能(=出力帰還制御機能)を備えている。このような機能を具備することにより、負荷Zに対して一定の直流出力電圧Voを安定供給することが可能となる。
【0044】
また、制御回路70は、センス抵抗80の第2端に現れるセンス電圧Vcs(=一次電流I1に応じた電圧信号)を監視して、一次電流I1が所定の上限値を超えないように双方向スイッチ20をオン/オフさせる機能(=定電流制御機能)を備えている。このような機能を具備することにより、一次回路系1pに過大な一次電流I1が流れないので、AC/DCコンバータ1の安全性を高めることが可能となる。
【0045】
また、制御回路70は、共振コンデンサ30の両端間電圧(延いては双方向スイッチ20の両端間電圧)を監視し、その電圧値が0Vとなるタイミングを見計らって双方向スイッチ20をオンさせる機能(=ZVS[zero-volt switching]機能)を備えている。このような機能を具備することにより、双方向スイッチ20の寄生コンデンサや共振コンデンサ30によるスイッチング損失を低減することができるので、AC/DCコンバータ1の変換効率を高めることが可能となる。
【0046】
また、制御回路70は、帰還信号Sfbやセンス電圧Vcsを監視して力率が1に近付くように双方向スイッチ20をオン/オフさせる機能(=力率改善機能)を備えている。このような機能を具備することにより、別途の力率改善回路が不必要となるので、1コンバータ形式のAC/DCコンバータ1を実現することが可能となる。なお、力率改善精度を高めるためには、制御回路70において交流入力電圧Viも監視することが望ましい。
【0047】
センス抵抗80(抵抗値:R80)は、一次電流I1の流れる電流経路に挿入されており、一次電流I1に応じたセンス電圧Vcs(=I1×R80)を生成する。
【0048】
電力フューズ90は、定格以上の電流が流れたときに溶断して後段の回路を保護する。
【0049】
フィルタ回路100は、ディファレンシャルモードノイズ(またはノーマルモードノイズとも呼ばれる)を低減するためのXコンデンサや、コモンモードノイズを低減するためのコモンモードフィルタ(=環状コアとこれに同方向で巻き回された2本のコイル)を含み、交流入力電圧Viに重畳する種々のノイズ成分を除去する。フィルタ回路100の第1入力端は、電力フューズ90を介して交流電源PWの第1端に接続されている。フィルタ回路100の第2入力端は、交流電源PWの第2端に接続されている。フィルタ回路100の第1出力端は、一次巻線11の第1タップT11に接続されている。フィルタ回路100の第2出力端は、センス抵抗80の第2端に接続されている。
【0050】
図2は、トランス10の等価回路図である。本図の上段で示したように、トランス10の結合係数をKとした場合、トランス10の励磁インダクタンスはKLで表され、トランス10の漏れインダクタンスは(1-K)Lで表される。
【0051】
今、トランス10の二次側に接続される負荷Rが0Ωである場合(AC/DCコンバータ1の起動時や出力短絡時など)を考える。この場合には、本図の中段で示したように、励磁インダクタンスKLの両端間がショートされた形となる。従って、トランス10の等価インダクタンスは、本図の下段で示したように、(1-K2)Lとして表される。
【0052】
ここで、トランス10の結合係数Kが大きい場合(例えばK≒1である場合)には、トランス10の等価インダクタンス(1-K2)Lがほぼ0となる。従って、トランス10に極めて大きい電流が流れてしまう状態となり具合が悪い。
【0053】
そこで、本構成例のAC/DCコンバータ1では、トランス10として、結合係数Kの小さいリーケージトランスないしは共振トランス(例えばK=0.6~0.9)が用いられている。このような構成とすることにより、AC/DCコンバータ1の起動時や出力短絡時においても、トランス10の等価インダクタンス(1-K2)Lが小さくなり過ぎないので、上記の課題を解消することが可能となる。
【0054】
また、先にも述べたように、トランス10の漏れインダクタンス11xは、LLC共振回路の構成要素としても利用することができるので、AC/DCコンバータ1の変換効率向上にも寄与し得る。
【0055】
さらに、トランス10の漏れインダクタンス11xは、チョークコイルとしても機能する。従って、本構成例のAC/DCコンバータ1であれば、フライバック方式の回路構成でありながら、フライバック方式とフォワード方式を併用することが可能となる。
【0056】
なお、仮にトランス10として、結合係数Kの大きい密結合トランス(K=0.99程度)を用いた場合には、フォワード動作時における双方向スイッチ20のオン時間が短くなり過ぎるので、制御回路70によるスイッチング制御が非常に難しくなる。そのため、制御安定性の観点から考えても、トランス10として、結合係数Kの小さいリーケージトランスないしは共振トランスを用いることが重要であると言える。
【0057】
図3は、トランス10の入出力比と巻線比との関係を説明するための模式図である。一次巻線11の巻数をn1とし、二次巻線12の巻数(本構成例では、第1タップT21または第2タップT22からセンタータップT23までの巻数)をn2とし、一次巻線11の印加電圧をV1とし、二次巻線12の印加電圧をV2とした場合には、一般的に、次の(1)式が成立する。
【0058】
V2=(n2/n1)×V1×K … (1)
【0059】
ここで、フライバック方式のみを用いてトランス10を駆動するためには、次の(2)式を満たす必要がある。なお、(2)式中のV1maxは、一次巻線11の最大印加電圧を示している。
【0060】
n2/n1<V2/(V1max×K) … (2)
【0061】
これに対して、本構成例のAC/DCコンバータ1では、次の(3)式を成立させることにより、フライバック方式とフォワード方式の併用が実現されている。
【0062】
n2/n1≧V2/(V1max×K) … (3)
【0063】
図4は、交流入力電圧Vi(=一次巻線11の印加電圧V1)とAC/DCコンバータ1の動作モードとの相関関係を示す模式図である。本図で示したように、本構成例のAC/DCコンバータ1の動作モードは、交流入力電圧Viの周期的な変動に応じて、フライバック方式が単独で用いられる第1動作モード(電圧範囲(1)を参照)と、フライバック方式とフォワード方式が併用される第2動作モード(電圧範囲(2)を参照)のいずれか一方となる。
【0064】
具体的に述べると、-V1max<-Vth<0<+Vth<+V1maxとなるように、閾値電圧±Vthが設定されている場合、-Vth<Vi<+Vthとなる電圧範囲(1)では、フライバック方式が単独で用いられる第1動作モードとなる。一方、-V1max≦Vi≦-Vth、または、+Vth≦Vi≦+V1maxとなる電圧範囲(2)では、フライバック方式とフォワード方式が併用される第2動作モードとなる。
【0065】
図5は、第1動作モード(フライバック方式のみ)でのスイッチオン期間における電流経路を示す回路図である。双方向スイッチ20のオン期間には、一次回路系1pに一次電流I1が流れるので、一次巻線11にエネルギが蓄えられる。例えば、交流入力電圧Viが正(T11>T12)であるときには、本図中の太い実線矢印で示したように、交流電源PW→一次巻線11→双方向スイッチ20→交流電源PWという向きで、一次電流I1が流れる。一方、二次巻線12には何ら電流が流れない。
【0066】
図6は、第1動作モード(フライバック方式のみ)でのスイッチオフ期間における電流経路を示す回路図である。双方向スイッチ20のオフ期間には、一次巻線11と磁気結合された二次巻線12に誘起電圧(ここではフライバック電圧と呼ぶ)が生じるので、二次回路系1sに二次電流I2が流れる。例えば、交流入力電圧Viが正(T11>T12)の状態で一次巻線11にエネルギが蓄えられていた場合には、本図中の太い破線矢印で示したように、二次巻線12(第2タップT22)→ダイオード42→負荷Z→二次巻線12(センタータップT23)という向きで、二次電流I2が流れる。
【0067】
また、双方向スイッチ20がオフされると、一次回路系1pでは共振コンデンサ30によるLLC共振が生じる。その結果、本図中の太い実線矢印で示したように、直前のスイッチオン期間とは逆向きに一次電流I1が流れる。
【0068】
図7は、第1動作モード(フライバック方式のみ)での電流挙動を示す波形図である。実線は一次電流I1を示しており、破線は二次電流I2を示している。なお、本図は、交流入力電圧Viが正(T11>T12)であるときの電流挙動を描写したものである。
【0069】
本図で示したように、双方向スイッチ20がオンされている間、一次電流I1は、一次巻線11のインダクタンスに応じた正の傾きで直線的に増大していく。その後、双方向スイッチ20がオフされると、一次電流I1は減少に転じ、さらには負方向に流れ始める。
【0070】
一方、二次電流I2は、双方向スイッチ20がオンされている間には流れず、双方向スイッチ20がオフされたときに大きく跳ね上がる。このように、第1動作モードでは、従来のフライバック方式と同様、二次電流I2の波高値が比較的大きくなる。ただし、先の
図4でも示したように、AC/DCコンバータ1が第1動作モードとなるのは、-Vth<Vi<+Vthである期間に限られるので、大きな問題となることはない。
【0071】
図8は、第2動作モード(フライバック方式+フォワード方式)でのスイッチオン期間における電流経路を示す回路図である。双方向スイッチ20のオン期間には、第1動作モードと同様、一次回路系1pに一次電流I1が流れるので、一次巻線11にエネルギが蓄えられる。例えば、交流入力電圧Viが正(T11>T12)であるときには、本図中の太い実線矢印で示したように、交流電源PW→一次巻線11→双方向スイッチ20→交流電源PWという向きで、一次電流I1が流れる。
【0072】
また、第2動作モードでは、双方向スイッチ20のオン期間において、二次巻線12に誘起電圧(ここではフォワード電圧と呼ぶ)が生じるので、二次回路系1sに二次電流I2が流れる。具体的には、本図の太い破線矢印で示したように、二次巻線12(第1タップT21)→ダイオード41→負荷Z→二次巻線12(センタータップT23)という向きで、二次電流I2が流れる。
【0073】
図9は、第2動作モード(フライバック方式+フォワード方式)でのスイッチオフ期間における電流経路を示す回路図である。双方向スイッチ20のオフ期間には、第1動作モードと同様、一次巻線11と磁気結合された二次巻線12に誘起電圧(=フライバック電圧)が生じるので、二次回路系1sに二次電流I2が流れる。具体的には、本図中の太い破線矢印で示したように、二次巻線12(第2タップT22)→ダイオード42→負荷Z→二次巻線12(センタータップT23)という向きで、二次電流I2が流れる。
【0074】
また、双方向スイッチ20がオフされると、一次回路系1pでは共振コンデンサ30によるLLC共振が生じる。その結果、本図中の太い実線矢印で示したように、直前のスイッチオン期間とは逆向きに一次電流I1が流れる。この点についても、先の第1動作モードと同様である。
【0075】
図10は、第2動作モード(フライバック方式+フォワード方式)での電流挙動を示す波形図である。先の
図7と同様、実線は一次電流I1を示しており、破線は二次電流I2を示している。また、本図も、交流入力電圧Viが正(T11>T12)であるときの電流挙動を描写したものである。
【0076】
本図で示したように、一次電流I1の挙動については、第1動作モード(
図7)と基本的に同様である。すなわち、一次電流I1は、双方向スイッチ20のオン期間中には正方向に流れ、双方向スイッチ20のオフ期間中には負方向に流れる。
【0077】
一方、二次電流I2の挙動は、双方向スイッチ20のオフ期間中だけでなく、双方向スイッチ20のオン期間中にも流れるという点で、第1動作モード(
図7)と大きく異なっている。また、双方向スイッチ20のオン期間中に二次電流I2が流れることに伴い、一次巻線11に蓄えられるエネルギがその分だけ減少する。その結果、第1動作モード(
図7)と比べて、双方向スイッチ20がオフされたときに生じる二次電流I2の波高値が低く抑えられていることが分かる。
【0078】
このように、フライバック方式とフォワード方式を併用するAC/DCコンバータ1であれば、二次巻線12に現れるフォワード電圧とフライバック電圧の双方を出力として取り出すことができる。従って、二次電流I2の波高値が大きいというフライバック方式の欠点を解消し、中・大電力適用時にも高効率で交流入力電圧Viを直流出力電圧Voに直接変換することが可能となる。
【0079】
<第1実施形態>
図11は、AC/DCコンバータ1の第1実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1では、先出の基本構成(
図1A)をベースとしつつ、いくつかの変更が加えられている。そこで、先と同様の構成要素については、
図1Aと同一の符号を付すことにより重複した説明を割愛し、以下では、本実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。なお、本図では、帰還回路60と制御回路70の描写がそれぞれ省略されているが、実際にはAC/DCコンバータ1に組み込まれている。
【0080】
まず、基本構成(
図1)からの主たる変更点として、本実施形態のAC/DCコンバータ1は、一次巻線11の巻数を切り替える切替スイッチ200を有している。なお、切替スイッチ200は、1つの共通ノード(0)と、2つの選択ノード(1)及び(2)を備えている。また、一次巻線11は、第1タップT11と第2タップT12との間に、第3タップT13を備えている。
【0081】
切替スイッチ200は、共通ノード(0)が交流入力電圧Viの印加端(=フィルタ回路100の出力端)に接続されており、選択ノード(1)が一次巻線11の第1タップT11に接続されており、選択ノード(2)が一次巻線11の第3タップT13に接続されている。従って、切替スイッチ200は、一次巻線11の第1タップT11と第3タップT13のいずれに交流入力電圧Viを印加するかを切り替えることができる。
【0082】
例えば、比較的高い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC220V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ200の共通ノード(0)と選択ノード(1)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、n1:n2(ただし、n1は一次巻線11の第1タップT11から第2タップT12までの巻数、n2は二次巻線12の第1タップT21から第2タップT22までの巻数)となる。
【0083】
一方、比較的低い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC100V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ200の共通ノード(0)と選択ノード(2)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、n1’:n2(ただし、n1’は一次巻線11の第3タップT13から第2タップT12までの巻数であり、n1>n1’)となる。
【0084】
このように、交流入力電圧Viに応じて一次巻線11の巻数を切り替えることにより、交流入力電圧Viが変動しても、双方向スイッチ20のオン時間(ないしはスイッチング周波数)が変化しにくくなる。
【0085】
従って、様々な交流入力電圧Viへの対応(いわゆるマルチ電源対応)に際して、制御回路70(=コントローラIC)の共通化やトランス10及び周辺部品の小型化を図ることができるので、使い勝手の良いユニバーサル仕様のAC/DCコンバータ1を安価に提供することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、交流入力電圧Viが高いほど、一次巻線11の巻数を増やしてインダクタンス値Lを上げることができる。従って、交流入力電圧Viが高いほど、双方向スイッチ20の両端間電圧V20に現れる共振波形のQ値[quality factor](=√(L/C))が高まるので、ZVS動作が容易となる。
【0087】
なお、スイッチ200としては、手動スイッチを用いてもよいし、リレーなどの電動スイッチを用いてもよい。前者を採用する場合には、トランス10自体にスイッチ200を包含したもの(=タップ切替器付きトランス)を用いることが望ましい。一方、後者を採用する場合には、交流入力電圧Viを検出してスイッチ200を自動的に切り替える構成にすることが望ましい。
【0088】
次に、第2の変更点として、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、トランス10としてリーケージトランスないしは共振トランスが用いられておらず、二次巻線12のセンタータップT23と二次側コモンGND2との間に、共振インダクタンス成分(先の漏れインダクタンス11x)に相当する素子として、コイル120が接続されている。
【0089】
このような構成を採用することでも、先の基本構成と同様の作用・効果を享受することができるので、中・大電力適用時にも高効率で交流入力電圧Viを直流出力電圧Voに直接変換することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、その第2動作モード(フライバック方式+フォワード方式)において、双方向スイッチ20のオフ期間における二次電流I2をさらに引き下げることが可能となり、かつ、双方向スイッチ20のオン期間における二次電流I2をさらに引き上げることが可能となる。
【0091】
特に、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、その第2動作モード(フライバック方式+フォワード方式)において、双方向スイッチ20のオン期間における二次電流I2が0Aを下回らないようになるので、二次回路系1sを電流連続モードで動作させることが可能となる。
【0092】
なお、コイル120は、切替スイッチ200の共通ノードとフィルタ回路100の出力端との間、二次巻線12の第1タップT21ないし第2タップT22と全波整流回路40の入力端との間、若しくは、全波整流回路40の出力端と直流出力電圧Voの出力端との間に接続することも考えられる。ただし、上記の効果を最大限に享受するためには、二次巻線12のセンタータップT23と二次側コモンGND2との間にコイル120を接続することが望ましい、という知見がシミュレーションから得られている。
【0093】
次に、第3の変更点として、本実施形態のAC/DCコンバータ1は、容量分圧回路150をさらに有する。容量分圧回路150は、双方向スイッチ20の両端間電圧V20を容量分圧して分圧電圧Vswを生成する回路部であり、コンデンサ151及び152と、放電スイッチ153と、を含む。
【0094】
コンデンサ151及び放電スイッチ153それぞれの第1端は、いずれも、双方向スイッチ20の第2端(=制御回路70の基準電位端に相当する一次側コモンGND1)に接続されている。コンデンサ151及び放電スイッチ153それぞれの第2端とコンデンサ152の第1端は、いずれも、分圧電圧Vswの出力端に接続されている。コンデンサ152の第2端は、双方向スイッチ20の第1端(=一次巻線11の第2タップT12)に接続されている。
【0095】
このように、コンデンサ151及び152は、双方向スイッチ20の両端間で互いに直列接続されており、相互間の接続ノードから分圧電圧Vswを出力する。
【0096】
今、コンデンサ151の容量値をC151とし、コンデンサ152の容量値をC152とした場合、分圧電圧Vswは、次の(4)式で表される。
【0097】
Vsw=V20×C152/(C151+C152) … (4)
【0098】
従って、C152<<C151となるように、コンデンサ151及び152の各容量値を適宜選択すれば、制御回路70の入力ダイナミックレンジに収まる分圧電圧Vswを生成することが可能となる。
【0099】
AC/DCコンバータ1の共振動作時(=双方向スイッチ20のオフ時)において、双方向スイッチ20の両端間電圧V20は、一般に、数百V~1000Vを超えるほどの高電圧となる。従って、双方向スイッチ20の両端間電圧V20を制御回路70に直接入力して監視することは困難である。
【0100】
一方、容量分圧回路150で生成される分圧電圧Vswについては、先述の通り、その電圧値を制御回路70の入力ダイナミックレンジに収めることができるので、制御回路70に直接入力することが可能となる。
【0101】
特に、両端間電圧V20の波形と分圧電圧Vswの波形は、互いに相似している。従って、制御回路70において、分圧電圧Vswを監視することにより、双方向スイッチ20のオンタイミングを適切に検出することが可能となる。
【0102】
また、本構成例の容量分圧回路150であれば、検出信号の位相を進めてしまう抵抗が用いられていないので、別途の遅延回路が不要となる。また、抵抗での電力損失を生じることもない。
【0103】
さらに、本構成例の容量分圧回路150は、共振コンデンサ30とは別に設けられているので、共振コンデンサ30の容量値に依らず、任意に分圧比を設定することができる。
【0104】
なお、分圧電圧Vswの入力を受け付ける制御回路70は、分圧電圧Vswが0Vとなるタイミングを見計らって双方向スイッチ20をオンさせるソフトスイッチング機能(=ZVS機能)を備えている。このようなソフトスイッチング機能を具備することにより、先にも述べたように、双方向スイッチ20の寄生コンデンサや共振コンデンサ30によるスイッチング損失を低減することができるので、AC/DCコンバータ1の変換効率を高めることが可能となる。
【0105】
放電スイッチ153は、コンデンサ151に並列接続されている。放電スイッチ153は、制御回路70からの制御信号Sctrlに応じて、双方向スイッチ20と同期してオン/オフされる。より具体的に述べると、放電スイッチ153は、双方向スイッチ20のオン期間中にオンとなり、双方向スイッチ20のオフ期間中にオフとなる。
【0106】
すなわち、本構成例の容量分圧回路150であれば、双方向スイッチ20がオンされる毎にコンデンサ151の両端間がショートされて分圧電圧Vswが0Vに初期化される。従って、双方向スイッチ20がオンからオフに切り替わる際には、分圧電圧Vswが常に0Vを起点として変化するようになる。
【0107】
その結果、制御回路70では、共振動作に伴う分圧電圧Vswのオフセットを一切考慮することなく、分圧電圧Vswと所定の閾値電圧(0Vないしはその近傍値)とを単純に比較することにより、分圧電圧Vswのゼロクロスタイミング(延いては双方向スイッチ20のオンタイミング)を高精度に検出することが可能となる。
【0108】
<第2実施形態>
図12は、AC/DCコンバータ1の第2実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先の第1実施形態(
図11)をベースとしつつ、いくつかの変更が加えられている。そこで、先と同様の構成要素については、
図11と同一の符号を付すことにより重複した説明を割愛し、以下では、本実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0109】
第1の変更点として、共振コンデンサ30が一次巻線11に並列接続されている。これについては、
図1A及び
図1Bの関係と同様である。また、
図1Cと同じく、双方向スイッチ20と一次巻線11の双方に共振コンデンサ30を並列接続しても構わない。
【0110】
第2の変更点として、容量分圧回路150は、放電スイッチ153に直列接続された電圧源154をさらに含む。このような電圧源154を導入することにより、制御回路70の入力ダイナミックレンジを考慮して、分圧電圧Vswの基準値(=双方向スイッチ20のオン期間における分圧電圧Vswの電圧値)を適切にバイアスすることが可能となる。
【0111】
<第3実施形態>
図13は、AC/DCコンバータ1の第3実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先の第1実施形態(
図11)と第2実施形態(
図12)をベースとしつつ、一次巻線11の巻数と共振コンデンサ30の容量値の双方を同時に切り替えることのできる構成とされている。そこで、先と同様の構成要素については、
図11と同一の符号を付すことにより重複した説明を割愛し、以下では、本実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0112】
上記した巻数及び容量値の同時切替を実現すべく、本実施形態のAC/DCコンバータ1は、切替スイッチ200として、切替スイッチ201及び202を有するとともに、共振コンデンサ30として、共振コンデンサ30X及び30Y(容量値C30X及びC30Y)を有する。
【0113】
切替スイッチ201は、共通ノード(0)が交流入力電圧Viの印加端(=フィルタ回路100の出力端)に接続されており、選択ノード(1)が一次巻線11の第1タップT11に接続されている。切替スイッチ202は、共通ノードが切替スイッチ201の選択ノード(2)に接続されており、選択ノード(1)がオープンとされており、選択ノード(2)が一次巻線11の第3タップT13に接続されている。
【0114】
共振コンデンサ30Xは、切替スイッチ201の共通ノード(0)と切替スイッチ202の共通ノード(0)との間に接続されている。共振コンデンサ30Yは、切替スイッチ202の共通ノード(0)と一次巻線11の第2タップT12との間に接続されている。
【0115】
このような回路を構成することにより、切替スイッチ201及び202を用いて、一次巻線11の巻数と共振コンデンサ30の容量値を同時に切り替えることができる。
【0116】
例えば、比較的高い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC220V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ201及び202それぞれにおいて、共通ノード(0)と選択ノード(1)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、n1:n2となる。また、共振コンデンサ30の容量値は、C30X×C30Y/(C30X+C30Y)となる。
【0117】
一方、比較的低い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC100V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ201及び202それぞれにおいて、共通ノード(0)と選択ノード(2)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、n1’:n2となる。また、共振コンデンサ30の容量値は、C30Yとなる。
【0118】
このように、交流入力電圧Viに応じて一次巻線11の巻数と共振コンデンサ30の容量値を同時に切り替えることにより、先述の効果に加えて、電源投入時やZVS不能時に流れる双方向スイッチ20のピーク電流(I=CV/T)を抑えることができるので、AC/DCコンバータ1のスイッチング損失を低減することが可能となる。
【0119】
<第4実施形態>
図14は、AC/DCコンバータ1の第4実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先の第3実施形態(
図13)をベースとしつつ、切替スイッチ202を割愛した点に特徴を有する。そこで、先と同様の構成要素については、
図13と同一の符号を付すことにより重複した説明を割愛し、以下では、本実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0120】
スイッチ202を割愛するために、切替スイッチ201、並びに、共振コンデンサ30X及び30Yそれぞれの接続関係が変更されている。より具体的に述べると、切替スイッチ201は、共通ノード(0)が交流入力電圧Viの印加端(=フィルタ回路100の出力端)に接続されており、選択ノード(1)が一次巻線11の第1タップT11に接続されており、選択ノード(2)が一次巻線11の第3タップT13に接続されている。
【0121】
また、共振コンデンサ30Xは、切替スイッチ201の共通ノード(0)と一次巻線11の第3タップT13との間に接続されている。一方、共振コンデンサ30Yは、一次巻線11の第3タップT13と第2タップT12との間に接続されている。
【0122】
このような回路を構成することにより、切替スイッチ201のみを用いて、一次巻線11の巻数と共振コンデンサ30の容量値を同時に切り替えることができる。
【0123】
例えば、比較的高い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC220V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ201の共通ノード(0)と選択ノード(1)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、n1:n2となり、共振コンデンサ30の容量値は、C30X×C30Y/(C30X+C30Y)となる。
【0124】
一方、比較的低い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC100V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ201の共通ノード(0)と選択ノード(2)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、n1’:n2となり、共振コンデンサ30の容量値は、C30Yとなる。
【0125】
このように、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、切替スイッチ201を割愛しても、先の第3実施形態(
図13)と同様の作用効果を享受することができるので、AC/DCコンバータ1の小型化やコストダウンを図ることが可能となる。
【0126】
ただし、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、共振コンデンサ30X及び30Y相互間の接続ノードと一次巻線11の第3タップT13が常に短絡されている。従って、共振動作に支障を来さないように、共振コンデンサ30X及び30Yの容量比を適宜調整しておかなければならない。より具体的には、C30X:C30Y=n1”:n1’(ただし、n1”は一次巻線11の第1タップT11から第3タップT13までの巻数)としておくことが望ましい。
【0127】
<第5実施形態>
図15は、AC/DCコンバータ1の第5実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先出の基本構成(
図1A)をベースとしつつ、いくつかの変更が加えられている。そこで、先と同様の構成要素については、
図1Aと同一の符号を付すことにより重複した説明を割愛し、以下では、本実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0128】
まず、基本構成(
図1A)からの主たる変更点として、本実施形態のAC/DCコンバータ1は、一次巻線11として、一次巻線11X及び11Yを有するとともに、共振コンデンサ30として、共振コンデンサ30X及び30Yを有する。
【0129】
一次巻線11Xの第1タップT11Xは、交流入力電圧Viの印加端(=フィルタ回路100の出力端)に接続されている。一次巻線11Xの第2タップT12Xは、双方向スイッチ20の第1端に接続されている。一次巻線11Yの第1タップT11Yは、双方向スイッチ20の第2端に接続されている。一次巻線11Yの第2タップT12Yは、一次側コモンGND1に接続されている。このように、双方向スイッチ20は、一次巻線11Xと一次巻線1Yとの間に直列接続されている。
【0130】
なお、二次巻線12は、一次巻線11X及び11Yの双方と共通のコアを介して電磁結合されている。すなわち、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、一次巻線11X及び11Yと二次巻線12が単一のトランス10に含まれている。
【0131】
また、共振コンデンサ30Xは、一次巻線11Xの第1タップT11Xと第2タップT12Xとの間で、一次巻線11Xに並列接続されている。共振コンデンサ30Yは、一次巻線11Yの第1タップT11Yと第2タップT12Yとの間で、一次巻線11Yに並列接続されている。
【0132】
なお、一次側の巻線と共振コンデンサ、具体的には、一次巻線11X及び共振コンデンサ30Xと、一次巻線11Y及び共振コンデンサ30Yは、双方向スイッチ20に対して対称に設けられている。
【0133】
また、容量分圧回路150は、双方向スイッチ20の第1端側(=一次巻線11Xの第2タップT12X)に接続してもよいし、若しくは、双方向スイッチ20の第2端側(=一次巻線11Yの第1タップT11Y)に接続してもよい(図中の大破線を参照)。
【0134】
このような回路を構成することにより、双方向スイッチ20のオン/オフ動作に起因するスイッチングノイズを効果的に削減することができる。以下では、図面を参照しながらそのノイズ削減原理について説明する。
【0135】
図16は、ノイズ削減原理を説明するための図である。本図の上段には、先の基本構成(
図1A)において、双方向スイッチ20の両端間に現れる両端間電圧V20が描写されている。一方、本図の下段には、本実施形態のAC/DCコンバータ1において、双方向スイッチ20の第1端(一次巻線11X側)に現れるノード電圧V20a(実線)と、第2端(一次巻線11Y側)に現れるノード電圧V20b(破線)が描写されている。
【0136】
以下では、説明の前提として、共振コンデンサ30X及び30Yそれぞれの容量値が同値に設定されており、双方向スイッチ20がオンしているときには、V20a=V20b=Vi/2(以下では中点電圧と呼ぶ)になるものとする。
【0137】
例えば、先の基本構成(
図1A)において、双方向スイッチ20がオンからオフに切り替えられたとき、Vi>0では、両端間電圧V20が一次側コモンGND1を基準値として正方向に振れる。また、Vi<0では、両端間電圧V20が一次側コモンGND1を基準値として負方向に振れる。
【0138】
これに対して、本実施形態において、双方向スイッチ20がオンからオフに切り替えられたとき、Vi>0では、ノード電圧V20aが中点電圧Vi/2を基準値として正方向に振れると同時に、ノード電圧V20bが中点電圧Vi/2を基準値として負方向に振れる。また、Vi<0では、反対に、ノード電圧V20aが中点電圧Vi/2を基準値として負方向に振れると同時に、ノード電圧V20bが中点電圧Vi/2を基準値として正方向に振れる。
【0139】
すなわち、ノード電圧V20a及びV20bそれぞれの共振波形は、中点電圧Vi/2に対して正負対称の相似波形となる。従って、ノード電圧V20a及びV20bそれぞれの共振動作に起因して生じるスイッチングノイズが互いに相殺し合う形となるので、EMI[electro-magnetic interference]対策として、非常に有効であると考えられる。
【0140】
また、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、双方向スイッチ20のオン時に流れるピーク電流を抑えることも可能となる。
【0141】
さらに、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、ノード電圧V20a及びV20bそれぞれが中点電圧Vi/2まで戻りさえすれば、双方向スイッチ20のZVS動作を行うことができる。従って、先の基本構成(
図1A)と比べて、ZVS動作をより容易かつ確実に実施することが可能となる。
【0142】
なお、本実施形態のAC/DCコンバータ1において、基本構成(
図1A)からの変更点としては、コイル120や容量分圧回路150を有する点が挙げられる。ただし、これらの変更点については、先出の第1実施形態(
図11)で既に述べているので、重複した説明は割愛する。
【0143】
<第6実施形態>
図17は、AC/DCコンバータ1の第6実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1では、先出の第5実施形態(
図15)をベースとしつつ、トランス10がトランス10X及び10Yに分割されている。より具体的に述べると、トランス10Xは、一次巻線11Xと、これに電磁結合された二次巻線12Xを含む。一方、トランス10Yは、一次巻線11Yと、これに電磁結合された二次巻線12Yを含む。このように、単一のトランス10に代えて、複数のトランス10X及び10Yを用いてもよい。
【0144】
<第7実施形態>
図18は、AC/DCコンバータ1の第7実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先出の第6実施形態(
図17)をベースとしつつ、共振コンデンサ30が双方向スイッチ20に並列接続されている。このように、共振コンデンサ30は、必ずしも一次巻線11X及び11Yに並列接続する必要はなく、双方向スイッチ20に並列接続することも可能である。
【0145】
<第8実施形態>
図19は、AC/DCコンバータ1の第8実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、第1~第4実施形態(
図11~
図14)と、第5~第7実施形態(
図15~
図18)の組み合わせに相当し、例えば、第6実施形態(
図17)をベースとして考えると、一次巻線11X及び11Yそれぞれに第3タップT13X及びT13Yを設けた上で、切替スイッチ203及び204を追加した構成であると言える。
【0146】
一次巻線11Xの第1タップT11Xは、切替スイッチ203の選択ノード(1)に接続されている。一次巻線11Xの第2タップT12Xは、双方向スイッチ20の第1端に接続されている。一次巻線11Xの第3タップT13Xは、切替スイッチ203の選択ノード(2)に接続されている。切替スイッチ203の共通ノード(0)は、交流入力電圧Viの印加端(=フィルタ回路100の出力端)に接続されている。
【0147】
一次巻線11Yの第1タップT11Yは、双方向スイッチ20の第2端と切替スイッチ204の選択ノード(2)に接続されている。一次巻線11Yの第2タップT12Yは、切替スイッチ204の選択ノード(1)に接続されている。一次巻線11Yの第3タップT13Yは、オープンとされている。従って、第3タップT13Yは必須でない。切替スイッチ204の共通ノード(0)は、一次側コモンGND1に接続されている。
【0148】
なお、共振コンデンサ30Xは、切替スイッチ203の共通ノード(0)と一次巻線11Xの第2タップT12Xとの間に接続されている。一方、共振コンデンサ30Yは、一次巻線11Yの第1タップT11Yと切替スイッチ204の共通ノード(0)との間に接続されている。
【0149】
このような回路を構成することにより、切替スイッチ203及び204を用いて、一次巻線11の巻数と共振コンデンサ30の容量値を同時に切り替えることができる。
【0150】
例えば、比較的高い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC220V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ203及び204それぞれにおいて、共通ノード(0)と選択ノード(1)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1:N2(ただし、N1は一次巻線11Xの第1タップT11Xから第2タップT12Xまでの巻数と一次巻線11Yの第1タップT11Yから第2タップT12Yまでの巻数とを足し合わせた加算値、N2は二次巻線12Xの第1タップT21Xから第2タップT22Xまでの巻数と二次巻線12Yの第1タップT21Yから第2タップT22Yまでの巻数とを足し合わせた加算値)となる。また、共振コンデンサ30の容量値は、C30X×C30Y/(C30X+C30Y)となる。
【0151】
一方、比較的低い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC100V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ203及び204それぞれにおいて、共通ノード(0)と選択ノード(2)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1’:N2(ただし、N1’は一次巻線11Xの第3タップT13Xから第2タップT12Xまでの巻数であり、N1>N1’)となる。また、共振コンデンサ30の容量値は、C30Xとなる。
【0152】
このように、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、交流入力電圧Viに応じて一次巻線11の巻数を切り替えることができるので、先の第1~第4実施形態(
図11~
図14)と同じく、様々な交流入力電圧Viに対応することが可能となる。
【0153】
特に、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、一次巻線11の巻数と共振コンデンサ30の容量値を同時に切り替えることができるので、先の第3実施形態(
図13)や第4実施形態(
図14)と同じく、電源投入時やZVS不能時のピーク電流を抑えて、AC/DCコンバータ1のスイッチング損失を低減することも可能となる。
【0154】
また、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、双方向スイッチ20が一次巻線11Xと一次巻線11Yとの間に直列接続されているので、先の第5~第7実施形態(
図15~
図18)と同じく、スイッチングノイズの削減効果などを享受することが可能となる。
【0155】
<第9実施形態>
図20は、AC/DCコンバータ1の第9実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先の第8実施形態(
図19)をベースとしつつ、切替スイッチ204の接続に若干の変更が加えられている。
【0156】
より具体的に述べると、切替スイッチ204の選択ノード(2)が一次巻線11Yの第3タップT13Yに接続されている。このような変更を加えた場合、切替スイッチ203及び204を用いて、一次巻線11の巻数だけを切り替えることができる。
【0157】
例えば、比較的高い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC220V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ203及び204それぞれにおいて、共通ノード(0)と選択ノード(1)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1:N2となる。また、共振コンデンサ30の容量値は、C30X×C30Y/(C30X+C30Y)となる。
【0158】
一方、比較的低い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC100V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ203及び204それぞれにおいて、共通ノード(0)と選択ノード(2)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1”:N2(ただし、N1”は一次巻線11Xの第3タップT13Xから第2タップT12Xまでの巻数と一次巻線11Yの第1タップT11Yから第3タップT13Yまでの巻数とを足し合わせた加算値であり、N1>N1”)となる。また、共振コンデンサ30の容量値は、上記と同じく、C30X×C30Y/(C30X+C30Y)となる。
【0159】
<第10実施形態>
図21は、AC/DCコンバータ1の第10実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先の第8実施形態(
図19)や第9実施形態(
図20)と同じく、第1~第4実施形態(
図11~
図14)と、第5~第7実施形態(
図15~
図18)の組み合わせに相当し、例えば、第7実施形態(
図18)をベースとして考えると、切替スイッチ205が追加された構成であると言える。
【0160】
切替スイッチ205は、共通ノード(0)が双方向スイッチの第2端(=ノード電圧V20bの印加端)に接続されており、選択ノード(1)が一次巻線11Yの第1タップT11Yに接続されており、選択ノード(2)が一次巻線11Yの第2タップT12Yに接続されている。
【0161】
このような回路を構成することにより、切替スイッチ205を用いて、一次巻線11の巻数を切り替えることができる。
【0162】
例えば、比較的高い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC220V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ205の共通ノード(0)と選択ノード(1)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1:N2となる。
【0163】
一方、比較的低い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC100V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ205の共通ノード(0)と選択ノード(2)とを導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1''':N2(ただし、N1'''は一次巻線11Xの第1タップT11Xから第2タップT12Xまでの巻数であり、N1>N1''')となる。
【0164】
特に、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、単一の切替スイッチ205を用いて、先の第9実施形態(
図20)と同等の作用・効果を享受することが可能となる。
【0165】
<第11実施形態>
図22は、AC/DCコンバータ1の第11実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先の第10実施形態(
図21)をベースとしつつ、共振コンデンサ30として、共振コンデンサ30X及び30Yを有する。なお、共振コンデンサ30X及び30Yは、それぞれ、一次巻線11X及び11Yに並列接続されている。
【0166】
このような回路を構成することにより、切替スイッチ205を用いて、一次巻線11の巻数と共振コンデンサ30の容量値を同時に切り替えることができる。
【0167】
例えば、比較的高い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC220V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ205の共通ノード(0)と選択ノード(1)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1:N2となり、共振コンデンサ30の容量値は、C30X×C30Y/(C30X+C30Y)となる。
【0168】
一方、比較的低い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC100V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ205の共通ノード(0)と選択ノード(2)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1''':N2となり、共振コンデンサ30の容量値は、C30Xとなる。
【0169】
特に、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、単一の切替スイッチ205を用いて、先の第8実施形態(
図19)と同等の作用・効果を享受することが可能となる。
【0170】
<第12実施形態>
図23は、AC/DCコンバータ1の第12実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1では、先の第11実施形態(
図22)をベースとしつつ、共振コンデンサ30Yの接続位置に若干の変更が加えられている。
【0171】
具体的に述べると、共振コンデンサ30Yは、切替スイッチ205の共通ノード(0)がと次巻線11Yの第2タップT13Yとの間に接続されている。このような変更を加えた場合でも、切替スイッチ205を用いて、一次巻線11の巻数と共振コンデンサ30の容量値を同時に切り替えることができる。
【0172】
例えば、比較的高い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC220V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ205の共通ノード(0)と選択ノード(1)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1:N2となり、共振コンデンサ30の容量値は、C30X×C30Y/(C30X+C30Y)となる。
【0173】
一方、比較的低い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC100V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ205の共通ノード(0)と選択ノード(2)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1''':N2となり、共振コンデンサ30の容量値は、C30Xとなる。
【0174】
<第13実施形態>
図24は、AC/DCコンバータ1の第13実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1では、先出の第8実施形態(
図19)をベースとしつつ、切替スイッチ203が割愛されている。すなわち、一次巻線11Xの第1タップT11Xが交流入力電圧Viの印加端(=フィルタ回路100の出力端)に直接接続されている。このような変更を加えた場合でも、切替スイッチ204を用いて、一次巻線11の巻数と共振コンデンサ30の容量値を同時に切り替えることができる。
【0175】
例えば、比較的高い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC220V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ204の共通ノード(0)と選択ノード(1)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1:N2となり、共振コンデンサ30の容量値は、C30X×C30Y/(C30X+C30Y)となる。
【0176】
一方、比較的低い交流入力電圧Vi(例えばVi=AC100V)が入力されるアプリケーションでは、切替スイッチ204の共通ノード(0)と選択ノード(2)を導通するとよい。このとき、一次巻線11と二次巻線12との巻線比は、N1''':N2となり、共振コンデンサ30の容量値は、C30Xとなる。
【0177】
なお、第7~第13実施形態(
図18~
図24)では、いずれも、複数のトランス10X及び10Yを用いる構成を例を挙げたが、それぞれのコアを共通とすることにより、単一のトランス10としても構わない。
【0178】
<第14実施形態>
図25は、AC/DCコンバータ1の第14実施形態を示す回路図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先出の基本構成(
図1B)に容量分圧回路150(
図11など)を追加した上で、更にいくつかの変更が加えられている。そこで、既出の構成要素については、
図1Bや
図11等と同一の符号を付すことにより重複した説明を割愛し、以下では、本実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0179】
第1の変更点は、AC/DCコンバータ1の共振インダクタンス成分として、一次巻線11に対して直列にスインギング(チョーク)タイプのインダクタLsw(アモルファスチョークコイル、複合コアー型など)が接続されている点である。なお、トランス10については、結合度Kが比較的高いもの(例えばK=0.9)を用いてもよいし、結合度Kが比較的低い共振型を用いてもよい。また、インダクタLswを割愛して、トランス10の漏れインダクタンス11x(
図1Bなどを参照)をスインギング(チョーク)タイプとしてもよい。
【0180】
本構成の採用により享受される効果について説明する。共振コンデンサ30の電圧振幅は、トランス10の一次巻線11及びインダクタLswに流れる電流Iと、双方向スイッチ20の両端間電圧V20に現れる共振波形のQ値(=√(L/C))に比例する。従って、電流Iの増加に伴ってインダクタンス値Lが減少するスインギング(チョーク)タイプのインダクタLswを導入することにより、ZVSの最適化を図ることが可能となる。
【0181】
その結果、トランス10の一次巻線11に流れる無効電流を減らすことができるので、AC/DCコンバータ1の効率を改善することが可能となる。また、双方向スイッチ20(後述するトランジスタ21及び22)の耐圧も低く抑えることができる。
【0182】
図26は、スインギングチョーク+トランス(共振型)の総合特性を示す図であり、横軸は電流I[A]、縦軸はインダクタンスL[μH]を示している。本図上段には、トランス10(K=0.9)の励磁インダクタンスLm1(実線)、漏れインダクタンスLLk1(破線)、及び、スインギングチョークのインダクタンスLsw(一点鎖線)が描写されている。一方、本図下段には、トランス10の励磁インダクタンスLm=Lm1(実線)と、合成インダクタンスLLk=LLk1+Lsw(二点鎖線)が描写されている。
【0183】
本図から分かるように、スインギングチョークのインダクタンスLsw、及び、合成インダクタンスLLkは、I=2A~8Aの電流範囲において、自身に流れる電流Iの増加に伴い、それぞれのインダクタンス値Lが減少する。上述したように、共振コンデンサ30の電圧振幅は、電流Iが増えても漏れインダクタンスが下がることによりQ値が下がるので、一定に保たれる。また、電流Iの少ない領域では、逆に漏れインダクタンスが増加するので、共振コンデンサ30の電圧振幅が下がらず、ZVSの実現が容易になる。
【0184】
第2の変更点は、パルストランス140を介して双方向スイッチ20が駆動されている点である。本構成例の双方向スイッチ20は、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ21及び22を含む。制御回路70(本図では不図示)は、パルストランス140を介してトランジスタ21及び22(延いては双方向スイッチ20)を駆動する。パルストランス140は、一次巻線141と、これに同極性で電磁結合された二次巻線142を含む。なお、一次巻線141の第1タップT31と第2タップT32は、それぞれ制御回路70(本図では不図示)に接続されている。
【0185】
トランジスタ21のドレインは、双方向スイッチ20の第1端に相当し、トランジスタ22のドレインは、双方向スイッチ20の第2端に相当する。トランジスタ21及び22の両ゲートは、いずれも二次巻線142の第1タップT41に接続されている。トランジスタ21のソースとバックゲート、及び、トランジスタ22のソースとバックゲートは、いずれも二次巻線142の第2タップT42に接続されている。また、本図では明示していないが、トランジスタ21及び22のソース・ドレイン間には、それぞれ、寄生ダイオードが付随する。
【0186】
制御回路70から一次巻線141に正の制御電圧V141(T31>T32)が与えられると、二次巻線142にも正の誘起電圧V142(T41>T42)が生じる。その結果、トランジスタ21及び22のゲート・ソース間電圧がそれぞれのオンスレッショルド電圧よりも高くなるので、トランジスタ21及び22がオンする。この状態は、双方向スイッチ20がオンされている状態に相当する。
【0187】
一方、制御回路70から一次巻線141に負の制御電圧V141(T31<T32)が与えられると、二次巻線142にも負の誘起電圧V142(T41<T42)が生じる。その結果、トランジスタ21及び22のゲート・ソース間電圧がそれぞれのオンスレッショルド電圧よりも低くなるので、トランジスタ21及び22がオフする。この状態は、双方向スイッチ20がオフされている状態に相当する。
【0188】
このように、パルストランス140を介して双方向スイッチ20を駆動する構成であれば、高電圧が印加される一次回路系1pから制御回路70を絶縁することができるので、制御回路70の低耐圧化を実現することが可能となる。
【0189】
ただし、一次回路系1pにそれほど高い電圧が印加されない用途であれば、双方向スイッチ20として、PMOSFETとNMOSFETとを並列接続して成るCMOSアナログスイッチ(いわゆるCMOSトランスファゲート)を用いることも可能である。
【0190】
また、寄生ダイオードを持たないGaNパワーデバイスなどを用いれば、双方向スイッチ20を単一のスイッチ素子で構成することも可能である。
【0191】
<第15実施形態>
図27は、AC/DCコンバータ1の第15実施形態を示す回路図である。本実施形態は、先出の第6実施形態(
図17)をベースとしつつ、先出の第14実施形態(
図25)と同じく、一次巻線11X及び11Yに対してそれぞれ直列にスインギング(チョーク)タイプのインダクタLswX及びLswYが接続されている。従って、双方向スイッチ20のZVSを最適化してAC/DCコンバータ1の効率を改善するともに、双方向スイッチ20の低耐圧化を実現することが可能となる。
【0192】
なお、インダクタLswX及びLswYは、互いに電磁結合したトランスTRとして構成しておくとよい。また、トランスTRを割愛し、トランス10X及び10Yそれぞれの漏れインダクタンスをスインギング(チョーク)タイプとしてもよい。
【0193】
このように、共振インダクタンス成分をスインギング(チョーク)タイプとする点については、いずれの実施形態にも適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0194】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本明細書中に開示されているAC/DCコンバータは、例えば、一般電気機器や産業機器などの電源として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0196】
1 AC/DCコンバータ
1p 一次回路系
1s 二次回路系
10、10X、10Y トランス
11、11X、11Y 一次巻線
11x 漏れインダクタンス
12、12X、12Y 二次巻線
20 双方向スイッチ
21、22 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
30、30a、30b、30X、30Y 共振コンデンサ
40 全波整流回路
41、42 ダイオード
50 平滑コンデンサ
60 帰還回路
70 制御回路
80 センス抵抗
90 電力フューズ
100 フィルタ回路
120 コイル
140 パルストランス
141 一次巻線
142 二次巻線
150 容量分圧回路
151、152 コンデンサ
153 放電スイッチ
154 電圧源
200~205 切替スイッチ
Lsw、LswX、LswY インダクタ(スインギング(チョーク)タイプ)
PW 交流電源
TR トランス
Z 負荷